(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記ロック部材が前記停止位置決め凹部の前記傾斜面の端縁に到達した時点で、前記停止推力荷重の付加を停止する請求項2記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
前記制御装置は、前記停止推力荷重付加後、前記高歯が前記クラッチ後歯に到達する所定の時機に、前記高歯および前記クラッチ後歯の端面同士の当接で生じる摩擦力に抗して前記高歯および前記クラッチ後歯の相対回転を確保する相対回転確保推力荷重を前記高歯に付加する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1にある変速制御方法では、スリーブが遊転ギヤのドグクラッチに係合することができないと判定するのにタイマーを使用しており、一定時間経過しても所定の係合位置まで到達しない場合に、再度スリーブを遊転ギヤに係合させる再突入制御を行なっている。そのため、タイマーによる再突入前の突入制御終了時間を、正常に所定の位置まで移動する時間(スリーブがドグクラッチに撥ねられることなく係合する時間)以上の値に設定する必要がある。これによって、スリーブを遊転ギヤのドグクラッチに係合できないと判断された時点で、すでにドグクラッチはスリーブに押付けられてスリーブと遊転ギヤの相互の差回転数は微小になって、次に係合できる位置まで時間がかかってしまうか、連れ回ってしまって次に係合するまでの時間が長くなる。このようにして、変速時間が長くかかってしまうというおそれがあった。
【0007】
そのため、発明者らは、特願2013−017265において、スリーブ歯(スプライン)がドグ前歯(クラッチ前歯)前端部からドグ後歯(クラッチ後歯)前端部まで前進する回転合わせ範囲において、スリーブ歯とドグ後歯の端面同士の当接によって生じる摩擦力に抗して、相対回転を確保できる推進荷重であって、スリーブ歯がドグ後歯前端部に撥ねられた場合に、回転合わせ範囲から後退することのない推力荷重で、スリーブを前進させる制御方法を提案した。
【0008】
しかし、スリーブ歯がドグ後歯前端部に撥ねられた場合に、スリーブ回転数が落ち、差回転が減少するため、スリーブ歯がドグ前歯側面に当接し回転同期が行なわれるまでの時間が延び、変速動作に要する時間が長くなるおそれがあった。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、変速時にスリーブを移動させてドグクラッチに係合する場合に、迅速な変速動作を可能とする自動変速機用ドグクラッチ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の特徴は、自動変速機の入力軸および出力軸の一方に回転連結され軸線回りに回転可能に軸承された回転軸と、前記回転軸に回転可能に支承され前記入力軸および出力軸の他方に回転連結されたクラッチリング、前記回転軸に前記クラッチリングと隣接して固定されたクラッチハブ、前記クラッチハブとスプラインで相対回転を規制さ
れ軸線方向に移動可能に嵌合されたスリーブ、シフトフォークにより前記スリーブを
前記軸線方向に移動させる軸動装置、前記クラッチリングの前記スリーブ側に突出した噛合部に形成され前記スリーブの軸動に応じて前記スプラインと係脱可能に噛合するドグクラッチ部、および前記スリーブの前記軸線方向の移動位置を検出するストローク位置センサを有し、前記スプラインは、複数の高歯が残りの低歯より歯丈が高く形成され、前記ドグクラッチ部は、外径が前記高歯の内径より大きくかつ前記低歯の内径より小さいクラッチ前歯が、前記高歯と対応する位置で前記
ドグクラッチ部の前端面から前記ドグクラッチ部の後端位置まで延在して形成され、前記スプラインの歯溝と噛合可能なクラッチ後歯が、前記ドグクラッチ部の前端面より所定量後退した位置から前記ドグクラッチ部の後端位置まで延在して形成されているドグクラッチ変速機構と、前記ストローク位置センサの所定時刻における検出位置に基づいて前記スリーブの移動速度を演算する演算部を有し、前記ストローク位置センサの検出位置および前記スリーブの移動速度に基づいて前記軸動装置の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記高歯が前記クラッチ後歯の端面に当接する前に前記高歯の前進を停止させる停止推力荷重を、前記高歯が前記クラッチ前歯の面取位置を過ぎた後に付加することである。
【0011】
これによると、制御装置は、前記高歯が前記クラッチ前歯の面取位置を過ぎた後に付加する停止推力荷重により、前進する高歯をクラッチ後歯端面に当接する前で停止させるので、高歯がクラッチ後歯端面に撥ねられず、クラッチ後歯が高歯を撥ねる際のスリーブ回転数の失速を生じさせない。そのため、スリーブとクラッチリングとの相対回転数(差回転)を減少させることなく高い相対回転数を維持し、高歯をクラッチ前歯側面に迅速に当接させる。そして、クラッチ前歯の側面をガイドとして高歯をクラッチ後歯とクラッチ前歯との間に嵌入することを可能とする。これによって、迅速な変速動作を行なうことができる。
【0012】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、前記軸動装置は、対向して隣接する傾斜面により凹状に形成されて前記高歯が前記クラッチ後歯の端面に当接する前の位置に前記高歯を位置決めする停止位置決め凹部が外周面に刻設され、ハウジングに軸線方向に摺動可能に支承され、前記シフトフォークが固定されたフォークシャフトと、前記ハウジングに設けられ、付勢部材によって前記フォークシャフトと直角な方向に付勢され、前記停止位置決め凹部に嵌入されるロック部材と、を有するシフトディテント機構を、さらに備える請求項1記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置である。
【0013】
これによると、ロック部材の付勢力が傾斜面に与える推力によって、フォークシャフトを軸線方向に移動させて、スリーブの高歯を、前記クラッチ後歯の端面に当接する前の位置に確実に位置決めすることができる。これによって、高歯がクラッチ後歯に撥ねられるのを防止し、スリーブとクラッチリングとの差回転が減少するのを防止するので、クラッチ後歯に到達した高歯がクラッチ前歯の側面に到達する時間を短縮することができ、迅速な変速動作を可能とする。
【0014】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、前記制御装置は、前記ロック部材が前記位置決め凹部の前記傾斜面の端縁に到達した時点で、前記停止推力荷重の付加を停止する請求項2記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置である。
【0015】
これによると、ロック部材が傾斜面の端縁に到達した時点で軸動装置による推力荷重を停止することで、ロック部材が傾斜面に与える小さな推力のみによってスリーブの高歯を前進させる。そして、このスリーブの高歯がクラッチ後歯に向かう速度は微少となる。このようにスリーブの高歯の速度を微少とすることで撥ねられるのを防止し、撥ねられたとしても撥ねられる量を低減し、差回転の減少を低減することができる。
【0016】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、前記制御装置は、前記停止推力荷重付加後、前記高歯が前記クラッチ後歯に到達する所定の時機に、前記高歯および前記クラッチ後歯の端面同士の当接で生じる摩擦力に抗して前記高歯および前記クラッチ後歯の相対回転を確保する相対回転確保推力荷重を前記高歯に付加する請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置である。
【0017】
これによると、前記停止推力荷重付加後の所定の時機にクラッチ後歯に到達した高歯は、相対回転を確保できる推力荷重が加えられることで、クラッチ後歯との連れ回り等を生じることなくクラッチ前歯の側面まで迅速に移動することができるので、スリーブとクラッチリングとを迅速に噛合させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例1)
以下、本発明による自動変速機用ドグクラッチ制御装置を備えた自動変速機を車両に適用した第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1はその車両の構成を示す概要図である。
車両Mは、
図1に示すように、エンジン11、クラッチ12、自動変速機13、ディファレンシャル装置14、駆動輪(左右前輪)Wfl,Wfrを含んで構成されている。エンジン11は、燃料の燃焼によって駆動力を発生させるものである。エンジン11の駆動力は、クラッチ12、自動変速機13、およびディファレンシャル装置14を介して駆動輪Wfl,Wfrに伝達されるように構成されている(いわゆるFF車両である)。
【0020】
クラッチ12は、制御装置(ECU)10の指令に応じて自動で断接されるように構成されている。自動変速機13は、ドグクラッチ変速機構を組み込んで例えば前進6段、後進1段を自動的に選択するものである。ディファレンシャル装置14は、ファイナルギヤおよびディファレンシャルギヤの両方を含んで構成されており、自動変速機13と一体的に形成されている。
【0021】
自動変速機13は、
図2に示すように、ハウジング22、入力シャフト(回転軸)24、第1入力ギヤ26、第2入力ギヤ28、第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30、第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32、クラッチハブ(ハブ)34、スリーブ36、ストローク位置センサ38、軸動装置40、出力シャフト(出力軸)42、第1クラッチリング(第1出力ギヤ)44、第2クラッチリング(第2出力ギヤ)46、第3出力ギヤ48および第4出力ギヤ50を含んで構成されている。そして、第1クラッチリング(第1出力ギヤ)44、第2クラッチリング(第2出力ギヤ)46、クラッチハブ(ハブ)34、スリーブ36、軸動装置(図略)等により第1のドグクラッチ変速機構が構成され、第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30、第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32、クラッチハブ(ハブ)34、スリーブ36、ストローク位置センサ38、および軸動装置40等により第2のドグクラッチ変速機構が構成される。また、前述の第1および第2のドグクラッチ変速機構と制御装置10等とによって自動変速機用ドグクラッチ制御装置が構成される。
【0022】
ハウジング22は、ほぼ有底円筒状に形成された本体22a、本体22aの底壁である第1壁22b、および本体22a内を左右方向に区画する第2壁22cを含んで構成されている。
【0023】
入力シャフト24は、ハウジング22に回転自在に支承されている。すなわち、入力シャフト24の一端(左端)が軸受22b1を介して第1壁22bに軸承され、入力シャフト24の他端(右端)側が軸受22c1を介して第2壁22cに軸承されている。入力シャフト24の他端は、クラッチ12を介してエンジン11の出力軸に回転連結されている。よって、エンジン11の出力はクラッチ12が接続されているときに入力シャフト24に入力される。入力シャフト24が本願発明の回転軸である。なお、本実施形態における入力シャフト(回転軸)24は、自動変速機13の入力軸に直結して回転連結され、軸線SCL回りに回転可能に軸承されるものである。
【0024】
入力シャフト24には、第1入力ギヤ26、第2入力ギヤ28、第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30、および第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32が設けられている。第1および第2入力ギヤ26,28は、スプライン嵌合等で入力シャフト24に対して相対回転不能に固定されている。第3入力ギヤは、入力シャフト24に対して回転自在に支承される第3クラッチリング30の外周に形成されている。第4入力ギヤは入力シャフト24に対して回転自在に支承される第4クラッチリング32の外周に形成されている。さらに、入力シャフト24には、第3クラッチリング30と第4クラッチリング32との間にこれらと隣接して、クラッチハブ(ハブ)34がスプライン嵌合等で相対回転不能に固定されている。第3入力ギヤ(第3クラッチリング)30は後述する第3出力ギヤと噛合し、第4入力ギヤ(第4クラッチリング)32は、後述する第4出力ギヤと噛合する。
入力シャフト24の近傍には、回転数検出センサ39が設けられ、入力シャフト24の回転数よりスリーブ36の回転数を検出する。
【0025】
ハウジング22には入力シャフト24と平行して出力シャフト42が設けられている。出力シャフト(出力軸)42は、ハウジング22に回転自在に支承されている。すなわち、出力シャフト42の一端(左端)が軸受22b2を介して第1壁22bに軸承され、出力シャフト42の他端(右端)が軸受22c2を介して第2壁22cに軸承されている。
【0026】
出力シャフト42には、第1クラッチリング(第1出力ギヤ)44、第2クラッチリング(第2出力ギヤ)46、第3出力ギヤ48、第4出力ギヤ50および第5出力ギヤ52が設けられている。第1クラッチリング(第1出力ギヤ)44は第1入力ギヤ26と噛合するものであり、外周面には第1入力ギヤ26と噛合するヘリカルギヤが形成されている。第2クラッチリング(第2出力ギヤ)46は第2入力ギヤ28と噛合するものであり、外周面には第2入力ギヤ28と噛合するヘリカルギヤが形成されている。第3出力ギヤ48は第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30と噛合するものであり、外周面には第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30と噛合するヘリカルギヤが形成されている。第4出力ギヤ50は第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32と噛合するものであり、外周面には第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32と噛合するヘリカルギヤが形成されている。第5出力ギヤ は、ディファレンシャル装置14の入力ギヤ(図示省略)と噛合するものであり、外周面にはその入力ギヤと噛合するヘリカルギヤが形成されている。
【0027】
出力シャフト42の近傍には、例えばロータリエンコーダからなる回転数検出センサ49が設けられ、出力シャフト42の回転数の検出することで、入力シャフト24における第3クラッチリング30等の回転数を検出する。
【0028】
第1クラッチリング44と第2クラッチリング46との間にこれらと隣接して、クラッチハブ(ハブ)34がスプライン嵌合等で出力シャフト42に固定されている。第1クラッチリング44、第2クラッチリング46およびクラッチハブ34等の構成は、入力シャフト24における第3クラッチリング30、第4クラッチリング32およびクラッチハブ34と同様であるので説明を省略する。第3出力ギヤ48、第4出力ギヤ50および第5出力ギヤ52は、スプライン嵌合等で出力シャフト42に固定されている。エンジン11の駆動力は、入力シャフト24から入力し、出力シャフト42に伝達し最終的に第5出力ギヤ52を介してディファレンシャル装置14に出力される。
【0029】
入力シャフト24の第2のドグクラッチ変速機構と出力シャフト42の第1のドグクラッチ変速機構とは同様の構成なので、入力シャフト24の第2のドグクラッチ変速機構を代表して説明する。
【0030】
入力シャフト24には、クラッチハブ34がスプライン嵌合(図略)によって一体回転可能に支持されている。クラッチハブ34は、
図4および
図6に示すように、入力シャフト24と嵌合する嵌合穴を有するとともに、平たい円柱状に形成され、クラッチハブ34の外周面にはスプライン歯34aが形成されている。スプライン歯34aは円周方向に同一のピッチで12本形成され、各スプライン歯34aは同一の歯先円の径で形成されている。スプライン歯34aの歯底円の径は、スリーブ36の高歯36a1および低歯36a2が、共に噛合可能な深さの噛合溝34a1となるよう、すべて同一に形成されている。クラッチハブ34のスプライン歯34aにはスリーブ36の内歯(スプライン)36aがスライド自在に係合される。
【0031】
スリーブ36は略円環状に形成され、スリーブ36の外周には軸動装置40のシフトフォーク40a(
図2参照)が摺動可能に係合する外周溝36bが円周方向に形成されている。スリーブ36の内周に形成された内歯36aは、
図4および
図7に示すように、歯底円の径が同一に形成されるとともに、円周方向に同一のピッチで合計12本形成されている。内歯36aは歯丈の異なる高歯36a1と低歯36a2とを備え、歯丈の高い高歯36a1は円周上に180度で対向して一対形成されている。その他10本の低歯36a2は同一の歯丈で高歯36a1よりも低い歯丈で形成されている。スリーブ36の第3および第4クラッチリング30,32に対向する端面(前端面36a4)であって、高歯36a1および低歯36a2の軸線SCLに直角な面が回転方向の前後に有する角には、回転方向に対して45度の面取面36a3が形成されている(
図7参照)。これによって、第3、第4クラッチリング30,32の後述するドグクラッチ歯との衝撃で角部が欠落しないようになっている。隣り合う高歯36a1と低歯36a2との間、および隣り合う低歯36a2の間には歯溝36a5が形成されている。これらの歯溝36a5には、後述する第3クラッチリング30のクラッチ前歯30b1およびクラッチ後歯30b2が嵌合する。スリーブ36の高歯36a1および低歯36a2が前記クラッチハブ34の噛合溝34a1に係合する。
【0032】
入力シャフト24にはクラッチハブ34に隣接する両側には第3クラッチリング30および第4クラッチリング32が設けられている。なお、第3クラッチリング30と第4クラッチリング32とは、対応するドグクラッチ部がクラッチハブ34を中心にして略対称の構造なので、第3クラッチリング30について代表して説明する。
【0033】
第3クラッチリング30は、
図4および
図5に示すように、入力シャフト24にベアリング(図略)を介して相対回転自在かつ軸線SCL方向の相対移動不能に設けられている(
図2参照)。第3クラッチリング30の外周面に形成された第3入力ギヤは、入力シャフト24に対して相対回転自在に回転する遊転ギヤを構成する。第3クラッチリング30のクラッチハブ34と対向する面(噛合部)にはリング状の第3ドグクラッチ部30aが形成されている。第3ドグクラッチ部30aの外周にはスリーブ36の内歯36aと噛み合う複数のドグクラッチ歯30bが形成されている。ドグクラッチ歯30bは、歯丈の異なる2種類のクラッチ前歯30b1およびクラッチ後歯30b2を備えている。また、ドグクラッチ歯30bは、それぞれ同一の歯底円の径で、かつ円周方向に同じピッチで形成されている。クラッチ前歯30b1は、円周方向に180度回転する対向位置に一対(2本)設けられている。クラッチ前歯30b1は、歯先円の外径が、前記スリーブの高歯36a1の歯先円の内径より大きく、かつ、低歯36a2の歯先円の内径より小さく形成されている。クラッチ前歯30b1は、噛合部を構成する第3ドグクラッチ部30aの前端面FEより軸線SCL方向に第3ドグクラッチ部30aの後端位置REまで延在して形成される。クラッチ前歯30b1のスリーブ36側の両側面30b9には、回転方向より45度傾斜する面取部30b3が形成されている。第3クラッチリング30に対してスリーブ36が相対回転しながら接近した場合に、クラッチ前歯30b1は、スリーブ36の高歯36a1と係合し、低歯36a2とは係合しないようになっている。クラッチ前歯のスリーブ36側の前端面30b5および面取部30b3によって、クラッチ前歯30b1の前端部が構成される。
【0034】
クラッチ後歯30b2は、
図4および
図5に示すように、2本のクラッチ前歯30b1間の位相位置に各5本ずつ合計10本配設され、各歯先円の外径がスリーブ36の低歯36a2の歯先円の内径より大きく形成されている。クラッチ後歯30b2は、噛合部を構成する第3ドグクラッチ部30aの前端面FEより軸線SCL方向にスリーブ36側より所定量t後退した位置から第3ドグクラッチ部30aの後端位置REまで延在して形成される。クラッチ後歯30b2のスリーブ36側の両側面30b7には、回転方向に45度傾斜する面取部30b4が設けられている。第3クラッチリング30に対してスリーブ36が相対回転しながら接近した場合に、第3クラッチリング30の所定量t後退した位置まで高歯36a1および低歯36a2が進入すると、クラッチ後歯30b2はスリーブの高歯36a1および低歯36a2と係合するようになっている。クラッチ後歯30b2がスリーブの高歯36a1および低歯36a2と係合することにより、大きな回転トルクを安全かつ確実に伝達するようになっている。
【0035】
ストローク位置センサ38として、例えば光位置センサやリニアエンコーダ等の各種位置センサを使用する。スリーブ36と第3クラッチリング30との相対位置検出およびシフトディテント機構58の各停止位置検出をおこなう。
【0036】
制御装置10は、
図3に示すように、記憶部10a、演算部10bおよび制御部10cを有し、ストローク位置センサ38が検出したスリーブ36の先端(高歯36a1の前端面36a4)の第3ドグクラッチ部30aの前端面FEに対する位置、クラッチ後歯30b2の前端部およびドグクラッチ部30aの後端位置RE等に対する相対位置信号に基づいて、軸動装置40を駆動させるリニアアクチュエータ40iの推力荷重値F1〜F4および高歯36a1の前端面36a4の移動位置を制御する。また、所定時間における複数の検出位置間の移動距離に応じて、演算部によりスリーブ36の移動速度を演算し、演算された移動速度の値に基づいて高歯36a1に付加する相対回転確保推力荷重F2を制御する。また、スリーブ回転数検出センサ39およびクラッチリング回転数検出センサ49により検出されるデータに基づいて、推力荷重値F1〜F4の制御が可能となっている。
【0037】
軸動装置40は、スリーブ36を軸線方向に沿って往復動させるものであり、スリーブ36を第3クラッチリング30または第4クラッチリング32に押圧させている際に、第3クラッチリング30または第4クラッチリング32から反力が加わった場合に、スリーブ36がその反力によって移動することを許容するように構成されている。
【0038】
軸動装置40は、フォーク40a、フォークシャフト40bおよび駆動装置40cを含んで構成されている。フォーク40aの先端部は、スリーブ36の外周溝36bの外周形状にあわせて形成されている。フォーク40aの基端部は、フォークシャフト40bに固定されている。フォークシャフト40bは、ハウジング22に軸線方向に沿って摺動自在に支承されている。すなわち、フォークシャフト40bの一端(左端)が軸受22b3を介して第1壁22bに支承され、フォークシャフト40bの他端(右端)側がブラケット40dに固定され、ブラケット40dは第2壁22cより軸線方向に突出するガイド部材(回り止め)40eによって摺動可能であるとともに、ナット部材40fに相対回転不能に固定されている。ナット部材40fは駆動装置40cを備えた駆動シャフト40hに進退可能に螺合されている。駆動シャフト40hは軸受22c3を介して第2壁22cに支承されている。
【0039】
駆動装置40cは、リニアアクチュエータ40iを駆動源とするリニア駆動装置であり、リニアアクチュエータ40iとしては、例えば、ボールねじ式のリニアアクチュエータがある。これは例えば、円筒状に形成され内周方向に複数のコイルをステータ(図略)として配設させたハウジングと、ステータに対して回転自在に設けられ該ステータと磁気的空隙を設けて対向する複数のN極磁石とS極磁石とが外周に交互に配設されたロータ(図略)と、ステータの回転軸線を中心にロータとともに一体回転する駆動シャフト40h(ボールねじ軸)と、駆動シャフト40hに螺合されるボールナットからなるナット部材40fとから構成される。駆動シャフト40hはナット部材40fに複数のボール(図略)を介して相対回転可能に螺入されている。ステータの各コイルへの通電を制御することで、駆動シャフト40hが正逆双方向に任意に回転し、ナット部材40fおよびフォークシャフト40bを往復動させるとともに、任意の位置に位置決め固定させる。また、この駆動装置40cは、前記ボールねじ軸のリードを長く形成することで、第3クラッチリング30または第4クラッチリング32から反力が加わった場合に、スリーブ36がその反力によって移動することを許容するように構成されている。
【0040】
フォークシャフト40bの第1壁22b付近には、シフトディテント機構58が設けられている。シフトディテント機構58は、図略の付勢部材(コイルばね)でフォークシャフト40bの軸線に直角な方向に付勢されているロック部材62を備え、ロック部材62がフォークシャフト40bに軸線に沿って複数設けられている位置決め凹部(三角溝)60に、ばね力で嵌まり込むことにより、フォークシャフト40bの軸線方向の摺動を任意の位置に位置決め可能に構成される。クラッチリング30,32に対するスリーブ36の位置を、スリーブ36のスプライン(高歯)36aが第3クラッチリング30および第4クラッチリング32のドグクラッチ部30a(クラッチ前歯30b1)に接触しない中立位置、スリーブ36のスプライン36aと第3クラッチリング30または第4クラッチリング32のドグクラッチ部30a等とが噛合する噛合位置とに位置決めする。
【0041】
なお、本実施形態では、駆動装置としてボールねじ式リニアアクチュエータを採用したが、スリーブ36を第3クラッチリング30または第4クラッチリング32に押圧させている際に、第3クラッチリング30または第4クラッチリング32から反力が加わった場合に、スリーブ36がその反力によって移動することを許容するように構成されているものであれば、他の駆動装置であるソレノイド式駆動装置や油圧式駆動装置でもよい。
【0042】
次に、上述した自動変速機用ドグクラッチ装置の作動について、
図8および
図9に基づき以下に説明する。ここで例えばシフトアップにおいて、スリーブ36が高速かつ小さい慣性モーメントで回転し、第3クラッチリング30(第3入力ギヤ)が低速かつ大きい慣性モーメントで回転している場合には、スリーブ36は減速される。一方、シフトダウンにおいてスリーブ36が低速かつ小さい慣性モーメントで回転し、第3クラッチリング30が高速かつ大きい慣性モーメントで回転している場合、スリーブ36は増速される。以下の動作ではシフトアップするときのスリーブ36の減速動作を説明する。
【0043】
まず、スリーブ36は、第3クラッチリング30および第4クラッチリング32の間に位置し、スリーブ36のスプライン(内歯)36aが第3クラッチリング30および第4クラッチリング32のいずれのドグクラッチ歯30b等と係合していないニュートラル(中間位置)に位置決めされている。この場合、シフトディテント機構58のロック部材62は、中立位置決め凹部60Nに嵌入した状態となっている。
【0044】
また、
図9に示すように、第3クラッチリング30のクラッチ前歯30b1の面取部30b3とクラッチ前歯30b1の側面30b9との境界辺を第1ストローク位置S1とする。第3クラッチリング30のクラッチ後歯30b2の面取部30b4とクラッチ後歯30b2の側面30b7との境界辺を第2ストローク位置S2とする。クラッチ後歯30b2の後端位置(第3ドグクラッチ部30aの後端位置RE)を第3ストローク位置S3とする。また、クラッチ後歯の前端面30b6を第4ストローク位置S4とする。
【0045】
スリーブ36の高歯36a1の第3クラッチリング30側の端面(前端面36a4)が移動する範囲を、ニュートラル位置から第1ストローク位置S1まで、第1ストローク位置S1から第2ストローク位置S2まで、第2ストローク位置S2から第3ストローク位置S3までの3つの移動範囲に区分するとともに、第1ストローク位置S1から第4ストローク位置S4との間の所定位置でおこなうスリーブ36の移動速度による区分を加え、軸動装置40により付加する推力荷重をF1〜F4の四段階で制御する(
図9参照)。
【0046】
制御装置10は、変速開始の信号を受けて、軸動装置40のリニアアクチュエータ40iに所定の推力荷重が付加される制御電流を印加する(
図8におけるステップS101、以下「S101」と記載する。)。リニアアクチュエータ40iにより駆動シャフト40hを伸長させることで、フォークシャフト40bを移動させ、フォーク40aによりスリーブ36を第3クラッチリング30側にスライドさせる。スリーブ36は第3クラッチリング30に対して回転差分だけ相対回転しながら接近する。この際、制御装置10は、一定の推力荷重F1を付加する(S102)。
【0047】
そして、制御装置10は、ストローク位置センサ38により、スリーブ36の高歯36a1の位置を検出する。高歯36a1の前端面36a4が、クラッチ前歯30b1の前端面30b5又は面取部30b3に接触したが、ストローク位置S1まで至らずに撥ねられたときには(
図9におけるA点)、推力荷重F1によりスリーブ36を再び第3クラッチリング30に接近させる。この推力荷重F1は、スリーブ36と第3クラッチリング30との相対回転による相互の位相が、高歯36a1が第3ドグクラッチ部30aの所定のクラッチ前歯30b1を係合することなく超えてしまった後、該第3ドグクラッチ部30aおよび該スリーブ36がさらに相対回転して次のクラッチ前歯30b1に到達する間の時間に、高歯36a1が隣り合うクラッチ前歯30b1の間に進入することが可能な速度を生じさせる推力荷重である。具体的には、スリーブ36および第3ドグクラッチ部30aの外径、噛合する各歯のピッチ、スリーブ36と第3ドグクラッチ部30aの相対回転速度等によって適宜演算されて制御される。
【0048】
次に、スリーブ36を第3クラッチリング30に接近させることで、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第1ストローク位置S1に到達したことが検出された場合(S103)、制御装置10は軸動装置40により付加する推力荷重を停止推力荷重F4に変更する(S104)。停止推力荷重F4は、前進する方向に移動していたスリーブ36を停止直前まで制動する荷重であり、
図9に示すように、多くの場合マイナスの推力荷重がかけられる。ステップ103において、第1ストローク位置S1に到達していないと判定される場合には、推力荷重F1を付加した状態で、ストローク位置Sを検出する動作を繰り返す。
【0049】
次に、制御装置10は、高歯36a1の移動速度を演算し、停止推力荷重F4による制動により減少するスリーブ36(高歯36a1)の移動速度が所定速度Vaに至ったか否かを判定する(S105)。この所定速度Vaは、高歯の移動が停止する直前の速度(0でもよい)であり、第4ストローク位置S4との位置関係により予め定められる。高歯36a1が第4ストローク位置S4に達する前に、スリーブ36の移動速度Vを所定速度Vaまで減少させることで、高歯36a1がクラッチ後歯30b2の前端面30b6に撥ねられることを防止する。ステップ105において所定速度Vaに至っていないと判定される場合には、停止推力荷重F4を付加した状態で、スリーブ36の移動速度Vを演算する動作を繰り返す。
【0050】
ステップ105において、スリーブ36の移動速度Vが、所定速度Vaまで減少したと判定されたとき、制御装置10は、スリーブ36に相対回転確保推力荷重F2を付加する(S106)。付加される相対回転確保推力荷重F2は、当接した高歯36a1の端面(前端面36a4)とクラッチ後歯30b2の端面(前端面30b6)との間に生じる摩擦力に抗して、スリーブ36と第3ドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重である。これによって、少ない回転差分の相対速度で移動する(或いは、高歯36a1がクラッチ後歯30b2に当接した状態で連れ回る)のを防止して、迅速な変速動作を実現させることができる。
【0051】
なお、スリーブ36を第3クラッチリング30側に移動させた場合、高歯36a1がクラッチ前歯30b1の側面30b9をガイドとしないで、ドグクラッチ歯30bのいずれかの歯溝30b8,30b10(
図5参照)に嵌入させることは可能であるが、高歯36a1(および低歯36a2)がクラッチ後歯30b2の間の歯溝30b8に嵌入しようとすると、隣接するクラッチ後歯30b2の歯間距離は短いので、クラッチ後歯30b2に撥ねられることが多いと考えられる。そのため、迅速に高歯36a1をドグクラッチ歯30bと噛み合わせるため、高歯36a1をクラッチ前歯30b1の側面30b9でガイドして、クラッチ前歯30b1に隣接する歯溝30b10に高歯36a1を嵌入することが有効と考えられる。
【0052】
次に、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第2ストローク位置S2に到達したことが検出された場合(または、スリーブ回転数検出センサ39によるスリーブ36の回転数が大きく減少した場合)(S107)、制御装置10は、高歯36a1および低歯36a2がクラッチ後歯30b2との噛合を開始したと判断し、軸動装置40により付加する推力荷重をF3に変更する(S108)。このときに付加される推力荷重F3は、スリーブ36を第3クラッチリング30にスライドさせる際に、高歯36a1および低歯36a2とクラッチ前歯30b1およびクラッチ後歯30b2との間に生じる摩擦力に抗して、スリーブ36の内歯(スプライン)36aをドグクラッチ歯30bに進入させることが可能な推力荷重である。このF3の推力荷重により、クラッチ前歯30b1の側面30b9でガイドして、クラッチ前歯30b1とクラッチ後歯30b2との間に高歯36a1を嵌入する。ステップ107においてストローク位置Sが第2ストローク位置S2に到達していないと判定される場合には、相対回転確保推力荷重F2を付加した状態で、ストローク位置Sを検出する動作を繰り返す。
【0053】
このときスリーブ36の低歯36a2は、第3クラッチリング30のクラッチ後歯30b2を含むすべてのドグクラッチ歯30bと同時に噛合する。
【0054】
さらに、スリーブ36を第3クラッチリング30に接近させることで、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第3ストローク位置(後端位置RE)S3に到達したことが検出された場合(S109)、制御装置10はスリーブ36と第3クラッチリング30が完全に噛合したと判定し、軸動装置40による推力荷重の付加を停止する(S110)。
【0055】
なお、例えばシフトダウンするときのように、スリーブ36が低速かつ小さい慣性モーメントで回転し、第3クラッチリング30が高速かつ大きい慣性モーメントで回転している場合、スリーブ36は増速され、スリーブ36と第3クラッチリング30との相対回転は上記と逆となる。そのため、高歯36a1が嵌入するクラッチ前歯30b1の歯溝30b10は、クラッチ前歯30b1に対して逆の位置の歯溝(
図9におけるクラッチ前歯30b1に隣接する右側の歯溝)となる。その他の作用は、スリーブ36が減速する場合と同様である。
【0056】
上述の説明から明らかなように、本実施形態の自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、制御装置10は、高歯36a1がクラッチ前歯30b1の面取位置(第1ストローク位置S1)を過ぎた後に付加する停止推力荷重F4により、前進する高歯36a1をクラッチ後歯30b2の前端面30b6に当接する前で停止させるので、高歯36a1がクラッチ後歯30b2の前端面30b6に撥ねられず、クラッチ後歯30b2が高歯36a1を撥ねる際のスリーブ回転数の失速を生じさせない。そのため、スリーブ36と第3クラッチリング30との相対回転数(差回転)を減少させることなく高い相対回転数を維持し、高歯36a1をクラッチ前歯30b1の側面30b9に迅速に当接させる。そして、クラッチ前歯30b1の側面30b9をガイドとして高歯36a1をクラッチ後歯30b2とクラッチ前歯30b1との間に嵌入することを可能とする。これによって、迅速な変速動作を行なうことができる。
【0057】
(実施例2)
以下、本発明による自動変速機用ドグクラッチ制御装置を備えた自動変速機を車両に適用した第2の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の自動変速機用ドグクラッチ制御装置のシフトディテント機構58には、スリーブ36を中立位置に位置決めする中立位置決め凹部60Nおよびスリーブ36を噛合位置に位置決めする左右の噛合位置決め凹部60R,60Lに加えて、スリーブ36の高歯36a1を第3および第4クラッチリング30,32のクラッチ後歯30b2の前端面30b6等の手前で停止させる2つの停止位置決め凹部60SR,60SLを有している点で第1の実施形態と相違する。以下、
図10に基づいて詳説する。その他の構成については同様であるので、同じ符号を添付して説明を省略する。
【0058】
シフトディテント機構58は、フォークシャフト40bの第1壁22b近傍に設けられている。シフトディテント機構58は、
図10に示すように、フォークシャフト40bの外周に設けられる位置決め凹部60(60N,60L,60R,60SL,60SR)と、位置決め凹部60に嵌入するロック部材(ロックボール)62と、ロック部材62の進退をガイドするガイド部材64と、ロック部材62をフォークシャフト40bに接近する方向に付勢する付勢部材(コイルばね)66とを主に備えている。
【0059】
位置決め凹部60は、
図10に示すように、フォークシャフト40bの外周面に軸線方向に複数並べて設けられている。各位置決め凹部60は、対向して隣接する傾斜面61a,61bによって凹状に形成され、両側に噛合位置決め凹部60R,60L、中央に中立位置決め凹部60N、左右の噛合位置決め凹部60R,60Lと中立位置決め凹部60Nとの間に左右の停止位置決め凹部60SR,60SLが設けられている。
【0060】
中立位置決め凹部60Nは、スリーブ36が第3クラッチリング30及び第4クラッチリング32に接触しない中立位置(ニュートラル位置)で停止する停止位置に停止するときにロック部材62が嵌入する。ロック部材62が嵌入する位置が、高歯36a1が停止する各停止位置に対応する。
図10おいて右側の右噛合位置決め凹部60Rにロック部材62が嵌入するときに、スリーブ36が第3クラッチリング30のドグクラッチ部30aと噛合する第3噛合位置(後端位置REに該当)で停止する。
図10において左側の左噛合位置決め凹部60Lにロック部材62が嵌入するときに、スリーブ36が第4クラッチリング32のドグクラッチ部(図略)と噛合する第4噛合位置(図略)で停止する。
【0061】
中立位置決め凹部60Nと右噛合位置決め凹部60Rとの間に設けられた右停止位置決め凹部60SRにロック部材62が嵌入するときに、第3クラッチリング30のクラッチ後歯30b2の前端面30b6の前の停止位置にスリーブ36の高歯36a1が停止する。中立位置決め凹部60Nと左噛合位置決め凹部60Lとの間に設けられた左停止位置決め凹部60SLにロック部材62が嵌入するときに、第4クラッチリング32のクラッチ後歯(図略)の端面の前の停止位置にスリーブ36の高歯(図略)が停止する。
【0062】
ガイド部材64は、円筒状に形成され、ガイド部材64の基端部はブラケット部64aによって例えば複数のビス68によりハウジング22に固定されている。ガイド部材64には付勢部材(コイルばね)66が押圧状態で嵌設され、付勢部材66の先端にはスチール製のロック部材(ロックボール)62が相対回転可能に組み付けられている。ロック部材62は、付勢部材66によってフォークシャフト40bに向かって直角な方向から付勢される。付勢によってガイド部材64の先端部より進出してフォークシャフト40bの位置決め凹部60に嵌入するとともに、付勢部材66の付勢力に抗する外力によってガイド部材64の中に後退するようになっている。フォークシャフト40bが軸線SCL方向にスライドすると、ロック部材62は嵌入している位置決め凹部60の縁部(傾斜面61a,61bの端縁(頂部)70)に乗り上げ、隣の位置決め凹部60に移動して該隣の位置決め凹部60に嵌入する。嵌入した位置でフォークシャフト40bの軸線SCL方向の移動を規制する。
その他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0063】
次に、上述した自動変速機用ドグクラッチ装置の作動について、
図10〜
図15に基づき以下に説明する。
まず、スリーブ36は、第1の実施形態と同様に、第3クラッチリング30および第4クラッチリング32の間に位置し、スリーブ36のスプライン(内歯)36aが第3クラッチリング30および第4クラッチリング32のいずれのドグクラッチ歯30b等と係合していないニュートラル(中間位置)に位置決めされている。
【0064】
また、
図12に示すように、クラッチ後歯30b2の前端面30b6の前の位置を、第5ストローク位置S5とする。この第5ストローク位置S5は、シフトディテント機構58における中立位置決め凹部60Nと噛合位置決め凹部60L,60Rとの間にある凸部の頂部70に対応し、ロック部材62が頂部70を乗越えると、ロック部材62が当接するフォークシャフト40bの傾斜面61a,bの傾斜が逆に切替わるので、付勢部材66の付勢力が傾斜面61bに及ぼす押圧力による推力の方向が、フォークシャフト40bを第3クラッチリング30側(スリーブ36を第3ドグクラッチ部30a側)に移動させる方向に切替わる。また、第4ストローク位置S4は、左停止位置決め凹部60SLに対応して設けられ、左停止位置決め凹部60SLにロック部材62が嵌入したときに、第4ストローク位置S4のわずか手前(例えば0.5mm手前)で、高歯36a1の前端面36a4が停止するよう設定されている。その他のストローク位置Sは第1の実施形態と同様である。
【0065】
制御装置10は、変速開始の信号を受けて、軸動装置40のリニアアクチュエータ40iに所定の推力荷重が付加される制御電流を印加する(
図11におけるステップS201、以下「S201」と記載する。)。リニアアクチュエータ40iにより駆動シャフト40hを伸長させることで、フォークシャフト40bを移動させ、フォーク40aによりスリーブ36を第3クラッチリング30側にスライドさせる。スリーブ36は第3クラッチリング30に対して回転差分だけ相対回転しながら接近する。この際、制御装置10は、一定の推力荷重F1を付加する(S202)。
【0066】
そして、制御装置10は、ストローク位置センサ38により、スリーブ36の高歯36a1の位置を検出する。高歯36a1の前端面36a4が、クラッチ前歯30b1の前端面30b5又は面取部30b3に接触したが、ストローク位置S1まで至らずに撥ねられたときには(
図12におけるA点)、推力荷重F1によりスリーブ36を再び第3クラッチリング30に接近させる。この推力荷重F1は、スリーブ36と第3クラッチリング30との相対回転が、高歯36a1が第3ドグクラッチ部30aの所定のクラッチ前歯30b1を係合することなく超えてしまった後、該第3ドグクラッチ部30aおよび該スリーブ36がさらに相対回転して次のクラッチ前歯30b1に到達する間の時間に、回転合わせ範囲まで進入することが可能な速度を生じさせる推力荷重である。具体的には、スリーブ36および第3ドグクラッチ部30aの外径、噛合する各歯のピッチ、スリーブ36と第3ドグクラッチ部30aの相対回転速度等によって適宜演算されて制御される。
【0067】
次に、スリーブ36を第3クラッチリング30に接近させることで、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第1ストローク位置S1に到達したことが検出された場合(S203)、制御装置10は軸動装置40により付加する推力荷重を停止推力荷重F4’に変更する(S204)。停止推力荷重F4’は、前進する方向に移動していたスリーブ36を停止直前まで制動する荷重であり、多くの場合マイナスの推力荷重がかけられる。
【0068】
さらに、スリーブ36を第3クラッチリング30に接近させることで、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第5ストローク位置S5に到達したことが検出された場合(S205)、軸動装置40の推力荷重をゼロにする。高歯36a1の前端面36a4が、第5ストローク位置S5に到達した場合、
図13に示すように、ロック部材62が傾斜面61bの端縁(頂部70)に到達している。
【0069】
軸動装置40の推力荷重がゼロとなった後は、ロック部材62がフォークシャフト40bの外周の傾斜面61bを押圧する際に生じる軸線方向成分の推力のみによって、スリーブ36を前進させる(
図14参照)。高歯36a1は、ロック部材62が左停止位置決め凹部60SLに至るまで付勢力によって移動する。そして、スリーブ36の速度Vは所定速度Va(例えばゼロ)以下に至ったかが判定される(S207)。ロック部材62が左停止位置決め凹部60SLに至ったときには、ロック部材が凹部に嵌まり込むため、スリーブ36の軸線方向SCLの速度Vはゼロとなる(
図15参照)。
【0070】
ステップ207において、スリーブ36の速度Vが所定速度Va以下であると判定されたとき、制御装置10は、スリーブ36に相対回転確保推力荷重F2を付加する(S208)。
【0071】
次に、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第2ストローク位置S2に到達したことが検出された場合(または、スリーブ回転数検出センサ39によるスリーブ36の回転数が大きく減少した場合)(S209)、制御装置10は、高歯36a1および低歯36a2がクラッチ後歯30b2との噛合を開始したと判断し、軸動装置40により付加する推力荷重をF3に変更する(S210)。このF3の推力荷重により、クラッチ前歯30b1の側面30b9でガイドして、クラッチ前歯30b1とクラッチ後歯30b2との間に高歯36a1を嵌入する。このときスリーブ36の低歯36a2は、第3クラッチリング30のクラッチ後歯30b2を含むすべてのドグクラッチ歯30bと同時に噛合する。
【0072】
さらに、スリーブ36を第3クラッチリング30に接近させることで、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第3ストローク位置(後端位置RE)S3に到達したことが検出された場合(S211)、制御装置10はスリーブ36と第3クラッチリング30が完全に噛合したと判定し、軸動装置40による推力荷重の付加を停止する(S212)。
【0073】
上述の説明で明らかなように、本実施形態における自動変速機用ドグクラッチ制御によると、ロック部材62の付勢力が傾斜面61bに与える反力(推力)によって、フォークシャフト40bを軸線SCL方向に移動させて、スリーブ36の高歯36a1を、クラッチ後歯30b2の前端面30b6に当接する前の位置に確実に位置決めすることができる。これによって、高歯36a1がクラッチ後歯30b2に撥ねられるのを防止し、スリーブ36と第3クラッチリング30との差回転が減少するのを防止するので、クラッチ後歯30b2に到達した高歯36a1がクラッチ前歯30b1の側面30b9に向かう時間を短縮することができ、迅速な変速動作を可能とする。
【0074】
また、ロック部材62が傾斜面61bの端縁(頂部)70に到達した時点で軸動装置40による推力荷重を停止することで、ロック部材62が傾斜面61bに与える小さな反力(軸動装置40のリニアアクチュエータ40iによる推力よりも小さな力)のみによってスリーブ36の高歯36a1を前進させる。そして、このスリーブ36の高歯36a1がクラッチ後歯30b2に向かう速度は微少となる。このようにスリーブ36の高歯36a1の速度を微少とすることで撥ねられるのを防止し、撥ねられたとしても撥ねられる量を低減し、差回転の減少を低減することができる。
【0075】
また、停止推力荷重F4’付加後の所定の時機にクラッチ後歯30b2に到達した高歯は、相対回転を確保できる相対回転確保推力荷重F2が加えられることで、クラッチ後歯30b2との連れ回り等を生じることなくクラッチ前歯30b1の側面30b9まで迅速に移動することができるので、スリーブ36と第3クラッチリング30とを迅速に噛合させることができる。
【0076】
なお、上記実施形態において、相対回転確保推力荷重F2を付加する条件として、スリーブ36の速度Vが所定速度Vaまで減少することとしたが、これに限定されず、例えば、ストローク位置Sがクラッチ後歯の端面または端面付近に到達したこと、また、停止推力荷重F4、F4’付加後、タイマーによって所定時間経過したことであってもよい。
【0077】
また、シフトディテント機構58には、スリーブ36を中立位置に位置決めする中立位置決め凹部60Nおよびスリーブ36を噛合位置に位置決めする左右の噛合位置決め凹部60R,60Lに加えて、スリーブ36の高歯36a1を第3および第4クラッチリング30,32のクラッチ後歯30b2の前端面30b6等の手前で停止させる2つの停止位置決め凹部60SR,60SLを有しているものとしたが、これに限定されず、例えば、中立位置決め凹部60Nおよび左右の噛合位置決め凹部60R,60Lがなく、2つの停止位置決め凹部60SR,60SLのみが外周に設けられているものでもよい。
【0078】
また、本実施形態におけるクラッチ前歯は、クラッチリングの円周上に対向して2本のものとしたが、これに限定されず、例えば、クラッチリングの円周上に互いに均等な距離で3本或いはそれ以上配置されるものでもよい。
【0079】
また、ドグクラッチ変速機構として、スリーブ、第3クラッチリングおよび第4クラッチリング等より構成されるものとしたが、これに限定されず、例えば、スリーブ、第1クラッチリング(第1出力ギヤ)および第2クラッチリング(第2出力ギヤ)等より構成するものでもよい。
【0080】
また、回転軸を、クラッチ12を介してエンジン11の出力軸に回転連結される自動変速機の入力シャフト(入力軸)22としたが、これに限定されず、例えば自動変速機より駆動輪側に回転トルクを伝達する出力シャフトを回転軸としてもよい。具体的には、エンジンの出力軸にクラッチを介して連結される自動変速機の入力軸と、該入力軸に対して平行に設けられるとともに伝達ギヤを介して回転連結されるカウンタシャフトと、該カウンタシャフトに対して平行な回転軸線を有し、前記カウンタシャフトに設けられた複数の伝達ギヤに噛合する複数の遊転ギヤが設けられた出力シャフトとを有する自動変速機の構造において、この出力シャフトを回転軸としてもよい。この場合、スリーブ側が大きな慣性モーメントを有し、クラッチリング側が小さな慣性モーメント(フリー状態)を有するものとなる。
【0081】
また、自動変速機の入力軸に回転連結する回転軸とは、本実施形態のように回転軸が入力軸に直結している場合を含むものであり、自動変速機の出力軸に回転連結する回転軸とは、回転軸が出力軸(出力シャフト)に直結している場合を含むものである。
【0082】
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。