【実施例1】
【0018】
実施例1は抵抗膜16を設けた例である。
図1(a)は実施例1に係る半導体装置100を例示する断面図である。
【0019】
図1(a)に示すように、半導体装置100は、半導体基板10、絶縁膜12、伝送線路13、及び抵抗膜16を備える。半導体基板10の上に絶縁膜12が設けられている。伝送線路13は、信号配線14及び基準層15により形成される擬似コプレーナラインである。基準層15は絶縁膜12の上面に設けられている。基準層15には、開口部15aが設けられており、開口部15aから絶縁膜12が露出する。信号配線14は、開口部15aと厚さ方向において重なる領域を通るように、絶縁膜12の中に設けられている。抵抗膜16は信号配線14を挟んで開口部15aに対向するように、半導体基板10と信号配線14との間に設けられている。
【0020】
半導体基板10は例えば窒化物半導体又は砒素系半導体を含み、半導体基板10にはFETが形成されている。高周波信号は伝送線路13を伝播し、半導体基板10に形成されたFETにおいて増幅される。信号配線14及び基準層15は例えば金(Au)などの金属により形成されている。絶縁膜12はポリイミド又はベンゾシクロブテン(Benzocychobutene:BCB)などの絶縁体により形成されている。抵抗膜16は例えばニッケル(Ni)とクロム(Cr)を含む合金であるニクロムなど、抵抗値が信号配線14より高い材質により形成されている。
【0021】
実施例1によれば、抵抗膜16が信号配線14に沿って設けられていることにより、伝送線路13を伝播する高周波信号は減衰する。このため半導体装置100はアッテネータとして機能する。半導体装置100に抵抗及びキャパシタなどからなるアッテネータ回路を設けなくてよいため、半導体装置100の小型化が可能である。
【0022】
信号配線14の幅W1を大きくすることで、電流容量を大きくすることができる。従って信号配線14に大きな電流を流すことができる。後述するように、基準層15に、信号配線14と重なる開口部15aが設けられているため、伝送線路13の特性インピーダンスを例えば50Ωなど所望の大きさとすることができる。
【0023】
抵抗膜の位置及び数を変更した例を説明する。実施例1の第1変形例は開口部15aの内側に抵抗膜を設けた例である。
図1(b)は第1変形例に係る半導体装置110を例示する断面図である。
【0024】
図1(b)に示すように、抵抗膜16が、開口部15aの一端から他端にかけて設けられ、基準層15と電気的に接続されている。つまり抵抗膜16は図中の横方向において開口部15aを埋める。第1変形例によれば、高周波信号は抵抗膜16により減衰する。従って、半導体装置110はアッテネータとして機能する。
【0025】
図1(c)は第2変形例に係る半導体装置120を例示する断面図である。
図1(c)に示すように、半導体基板10と信号配線14との間に抵抗膜16aが設けられ、開口部15aの内側には抵抗膜16bが設けられている。抵抗膜16a及び16bは厚さ方向において重なっており、信号配線14を挟む。第2変形例によれば、抵抗膜16a及び16bにより高周波信号は減衰する。抵抗膜が2つであるため、減衰量は大きくなる。
【0026】
第1変形例及び第2変形例においても信号配線14の幅W1(
図1(a)参照)を大きくすることで、電流容量を大きくすることができる。幅W1及び開口部15aの幅W2を調整することにより、伝送線路13の特性インピーダンスを例えば50Ωなど所望の大きさとすることができる。
【0027】
半導体装置110を例に半導体装置の平面的な構成について説明する。
図2は半導体装置110を例示する平面図であり、絶縁膜12、及び基準層15を透視している。
【0028】
図2に示すように、半導体装置110は、伝送線路13、FET24及び26、配線30及び32、キャパシタC1〜C3、抵抗R1及びR2を備える。また点線で示す複数のバンプ22が接続されている。実施例2において説明するように、バンプ22を用いて半導体装置110をフリップチップ実装する。
【0029】
複数のバンプ22のうち1つは入力端子In、1つは出力端子Outとして機能する。複数のバンプ22のうち2つは直流端子DC1及びDC2として機能する。入力端子Inと出力端子Outとの間に2つのFET24及び26が接続されている。基準層15は、入力端子In、出力端子Out,直流端子DC1及びDC2と離間している。信号配線14と同じ層に、配線30及び32が設けられている。
【0030】
信号配線14は、入力端子InとFET24との間、FET24とFET26との間、FET26と出力端子Outとの間を接続する。FET24及び26はフィンガー構造を有し、半導体基板10に形成されている。FET24のゲートG1は入力端子Inに接続され、FET24のドレインD1はキャパシタC3の一端に接続されている。キャパシタC3の他端はFET26(第1トランジスタ)のゲートG2に接続されている。FET26のドレインD2は出力端子Outに接続されている。ソースS1及びS2は接地されている。
【0031】
配線30は、信号配線14と直流端子DC1とを接続する。キャパシタC1の一端は信号配線14に接続され、他端は接地されている。抵抗R1の一端はキャパシタC1の一端に接続され、他端は直流端子DC1に接続されている。配線32は信号配線14と直流端子DC2とを接続する。キャパシタC2の一端は信号配線14に接続され、他端は接地されている。抵抗R2の一端はキャパシタC2の一端に接続され、他端は直流端子DC2に接続されている。高周波信号は入力端子Inから入力され、伝送線路13を伝播し、出力端子Outから出力される。バイアス電圧は、直流端子DC1を介してFET24のドレインD1に入力され、直流端子DC2を介してFET26のドレインD2に入力される。キャパシタC1及びC2はノイズカットキャパシタである。キャパシタC3はDCカットキャパシタである。
【0032】
基準層15のFET24からキャパシタC1までの領域、信号配線14とキャパシタC1との間の領域、信号配線14とキャパシタC2との間の領域には、開口部15a(
図2においては不図示)が形成され、開口部15aには抵抗膜16が設けられている。入力端子とFET24との間、キャパシタC3とFET26との間、FET26と出力端子Outとの間、キャパシタC1と直流端子DC1との間、キャパシタC2と直流端子DC2との間において、基準層15に開口部15aは形成されておらず、また抵抗膜16は設けられていない。
【0033】
信号配線14が開口部15a及び抵抗膜16と重なる部分を領域27、開口部15a及び抵抗膜16と重ならない部分を領域28とする。領域27における断面は
図1(b)、領域28における断面は後述する
図3(a)である。領域27における信号配線14の幅W1は、領域28における信号配線の幅W3より大きい
【0034】
FET24とFET26との間に抵抗膜16が設けられているため、FET24において増幅された高周波信号が減衰され、FET26のゲートG2に入力される。基準層15の配線30及び32に対向する領域に抵抗膜16が設けられているため、高周波信号が信号配線14から配線30及び32に流れ難い。このため、高周波信号が直流端子DC1及びDC2に漏れることが抑制される。抵抗膜16を、基準層15のFET24とFET26との間の領域、配線30及び32に対向する領域以外に設けてもよい。FET26と出力端子Outとの間には抵抗膜16が設けられていないことが好ましい。FET26と出力端子Outとの間において高周波信号の損失量が小さくなるためである。
【0035】
領域27においては、開口部15aの設けられた基準層15と幅W1の信号配線14とが伝送線路13(擬似コプレーナライン)を形成する。領域28においては、開口部15aの設けられていない基準層15と幅W3の信号配線14とが、伝送線路13(逆マイクロストリップライン)を形成する。領域27及び28において伝送線路13の特性インピーダンスは例えば約50Ωである。つまり伝送線路13の特性インピーダンスは整合している。幅W1が大きいため、信号配線14に大きな電流が流れ、FET26と出力端子Outとの間では損失量が小さい。このため、半導体装置110の高出力化が可能となる。半導体装置100の開口部15a及び抵抗膜16、半導体装置120の開口部15a、抵抗膜16及び17も、半導体装置110と同様に
図2の領域27、並びに配線30及び32と重なる位置に設けられている。
【0036】
比較例について説明する。
図3(a)は比較例1に係る半導体装置100Rを例示する断面図である。
図3(a)に示すように、基準層15に開口部15aは設けられておらず、基準層15は絶縁膜12の上面を覆う。信号配線14と基準層15とは、逆マイクロストリップラインである伝送線路13を形成する。半導体装置100Rにおける信号配線14の幅W3は半導体装置100における幅W1より小さいため、電流容量が小さくなる。電流容量を大きくするためには幅W3を大きくすればよいが、伝送線路13の特性インピーダンスが変化する。例えば幅W3を大きくすることで、特性インピーダンスが45Ωになり、所望の値である50Ωを得ることができない。
【0037】
図3(b)は比較例2に係る半導体装置200Rを例示する断面図である。
図3(b)に示すように、抵抗膜16は設けられておらず、基準層15に開口部15aが設けられている。信号配線14の幅はW1である。開口部15aを設けることで、信号配線14がW3よりも大きな幅W1を有しても特性インピーダンスを所望の値とすることができる。しかし損失量が小さいため、半導体装置120Rはアッテネータとして機能し難い。
【0038】
図3(c)は比較例3に係る半導体装置300Rを例示する断面図である。
図3(c)に示すように、開口部15aは設けられておらず、抵抗膜16が半導体基板10と信号配線14との間に設けられている。半導体装置300Rにおける信号配線14の幅はW3であり、半導体装置100における幅W1より小さいため、半導体装置110Rの電流容量は小さい。
【0039】
実施例1、第1及び第2変形例、比較例1〜3において信号の損失及び特性インピーダンスZを計算した。表1は計算結果を示す表である。半導体基板10はガリウム砒素(GaAs)など砒素系半導体により形成され、抵抗膜16及び17の抵抗値は100Ω/□とした。絶縁膜12は厚さ10.5μmのポリイミドにより形成されている。
【表1】
表1に示すように、実施例1における損失量は−1.13dB/mmであり、比較例1〜3における損失量より大きい。また第1変形例及び第2変形例における損失量は比較例1〜3における損失量の2倍以上である。また実施例1、第1及び第2変形例における信号配線14の幅W1は、比較例1及び3における幅W3より大きい。このように、実施例1、第1及び第2変形例によれば、電流容量の大きいアッテネータとして機能する半導体装置100、110及び120を得ることができる。伝送線路13の特性インピーダンスZは、各例において50Ωに近い値である。半導体装置を基板に実装したときの特性インピーダンスは後述する。
【実施例2】
【0040】
実施例2は半導体装置110を基板20に実装した電子装置200の例である。
図4(a)は実施例2に係る電子装置200を例示する模式的な断面図である。
図4(b)はアンダーフィル23を設けていない電子装置200を例示する断面図である。
【0041】
図4(a)に示すように、電子装置200は、
図1(b)及び
図2に示した半導体装置110と基板20とを備える。基板20の上面には基準層21が設けられている。基準層15が基準層21と対向するように、半導体装置110はバンプ22を用いて基板20にフリップチップ実装される。半導体装置110の基準層15と基板20の基準層21とは電気的に接続されている。
図2に示した半導体装置110の入力端子In、出力端子Out、直流端子DC1及びDC2は、基板20の対応する端子に電気的に接続されている。半導体装置110と基板20との間にはアンダーフィル23が設けられている。
【0042】
実施例2によれば、抵抗膜16が開口部15aの内側に設けられている。従って、アンダーフィル23の信号配線14への影響を抑制することができる。すなわち、
図4(a)のようにアンダーフィル23を設けた場合と、
図4(b)のようにアンダーフィル23を設けない場合とで、伝送線路13の特性インピーダンスが変化しにくい。
【0043】
特性インピーダンスの変化を抑制するためには、抵抗膜16が開口部15aの内側に設けられていればよい。
図1(c)に示した半導体装置120を基板20に実装してもよい。抵抗膜16が開口部15aの内側に設けられ、かつ抵抗膜16及び17が信号配線14を挟んでいるため、特性インピーダンスの変化を抑制し、損失量を大きくすることができる。信号配線14、基準層15及び21、配線30及び32は例えばAuなどの金属により形成されている。アンダーフィル23は例えばエポキシ系樹脂などの樹脂により形成されている。
【0044】
比較例について説明する。比較例4は
図3(a)に示した半導体装置100Rを備える電子装置の例であり、比較例5は
図3(b)に示した半導体装置200Rを備える電子装置の例である。
【0045】
図5(a)は比較例4に係る電子装置400Rを例示する断面図である。
図5(a)に示すように、半導体装置100Rが基板20にフリップチップ実装され、半導体装置100Rと基板20との間にアンダーフィル23が設けられている。
図5(b)は比較例5に係る電子装置500Rを例示する断面図である。
図5(b)に示すように、半導体装置200Rが基板20にフリップチップ実装され、半導体装置200Rと基板20との間にアンダーフィル23が設けられている。
【0046】
図3(a)において説明したように半導体装置100Rにおける信号配線14の幅W3は小さい。このため電子装置400Rの電流容量は小さい。電子装置500Rにおいては、幅W1が大きくかつ開口部15aが形成されているため、大きな電流容量と所望の特性インピーダンスとを得ることができる。しかしアンダーフィル23を設けた場合と、設けない場合との間において特性インピーダンスが変化してしまう。
【0047】
表2はアンダーフィル23を設けない場合、アンダーフィル23を設けた場合における信号の損失及び特性インピーダンスの計算結果を示す表である。表2のUF列はアンダーフィル23を設けない場合(UF無)、及び設けた場合(UF有)を表す。実施例2における抵抗膜16の抵抗値Rを100、300及び500Ω/□とした。各例における基準層15と基準層21との距離L1(
図4(a)参照)は100μmとした。
【表2】
表2に示すように、比較例4ではUF無及びUF有において特性インピーダンスZは50Ω付近である。比較例5ではアンダーフィル23の有無により特性インピーダンスZが大きく変化する。UF無においてZ=50.4Ωである。UF有においてZ=37.6Ωである。実施例2ではアンダーフィル23の有無により特性インピーダンスZはほとんど変化しない。例えばR=100Ωにおいて、UF無の場合はZ=48.9Ω、UF有の場合はZ=48.6Ωである。
【0048】
また比較例4及び5において損失量は−1.1dB/mm付近である。実施例2の損失量は比較例4及び5より大きい。R=100Ω/□において、UF無の場合−2.30dB/mm、UF有の場合−2.33dB/mmである。抵抗値Rが高くなるほど損失量は大きくなる。
【0049】
伝送線路13の特性インピーダンスは、アンダーフィル23だけでなく、基板20からの影響を受けることがある。実施例2及び比較例5において距離L1を変化させ、特性インピーダンス及び損失量の計算を行った。表3は特性インピーダンス及び損失量の計算結果を示す表である。なお表3の計算において、アンダーフィル23は設けていない。
【表3】
表3に示すように、比較例5において距離L1が100μmの場合はZ=50.4Ωであり、距離L1が5μmの場合Z=37.4Ωである。実施例2において距離L1が100μmの場合はZ=48.9Ωであり、距離L1が5μmの場合Z=44.8Ωである。実施例2によれば距離L1の変化による特性インピーダンスの変化が抑制される。
【0050】
抵抗膜は、例えば信号配線14の左側又は右側などに設けられてもよい。2つの抵抗膜が、左右から信号配線14を挟んでもよい。損失量増大のためには、
図1(a)から
図1(c)に示したように、抵抗膜が開口部15aに対応した位置に設けられていることが好ましく、特に開口部15aの内部に設けられていることが好ましい。FETは1つでもよいし、3つ以上でもよい。FET間の信号配線14に沿って抵抗膜を設けることで、半導体装置はアッテネータとして有効に機能する。半導体基板10にはFET以外のトランジスタが形成されてもよい。半導体基板10は、例えば砒素系半導体又は窒化物半導体を含む。砒素系半導体は砒素(As)を含む半導体であり、例えばガリウム砒素(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)及びインジウムガリウム砒素(InGaAs)などである。窒化物半導体とは、Nを含む半導体であり、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウム(InN)、及び窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)などである。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。