特許第6205859号(P6205859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205859
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】半導体装置、及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L27/04 D
   H01L21/88 Z
   H01L21/60 311S
   H01L23/30 R
   H01L27/04 P
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-116310(P2013-116310)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-236100(P2014-236100A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】與那嶺 淳
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−287055(JP,A)
【文献】 特開2012−134627(JP,A)
【文献】 特開2003−273571(JP,A)
【文献】 特開平11−234063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/3205
H01L 21/60
H01L 21/768
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 23/522
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に設けられ、開口部を有し、基準電位に接続された基準層と、
前記開口部と重なる領域を通り、前記基準層と伝送線路を形成する信号配線と、
前記開口部に対応した位置に設けられた抵抗膜と、を具備し、
前記信号配線は前記開口部に重なる部分と、前記開口部に重ならない部分とを含み、
前記開口部と重なる部分における前記信号配線の幅は、前記開口部と重ならない部分における前記信号配線の幅より大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記抵抗膜は、前記開口部の内側に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記抵抗膜は、前記信号配線を挟んで前記開口部に対向する位置に設けられてなることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記抵抗膜は前記開口部の内側に設けられ、前記基準層と接続されていることを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板に複数のトランジスタが形成され、
前記複数のトランジスタは、出力端子に接続された第1トランジスタを含み、
前記伝送線路は、前記複数のトランジスタの間、及び前記第1トランジスタと出力端子との間を接続し、
前記第1トランジスタと出力端子との間において、前記抵抗膜は設けられておらず、
前記複数のトランジスタの間において、前記抵抗膜が設けられていることを特徴とする請求項1からいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記信号配線に接続され、直流電圧の印加される配線を具備し、
前記基準層の前記配線と重なる領域に、前記開口部が設けられ、
前記配線に沿って前記抵抗膜が設けられていることを特徴とする請求項1からいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
前記抵抗膜はニッケル及びクロムを含む合金により形成されていることを特徴とする請求項1からいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項8】
基板と、
半導体基板と、前記半導体基板の上に設けられ、開口部を有し、基準電位に接続された基準層と、前記開口部と重なる領域を通り、前記基準層と伝送線路を形成する信号配線と、前記開口部に対応した位置に設けられた抵抗膜と、を有し、前記基準層が前記基板と対向するように前記基板にフリップチップ実装される半導体装置と、
前記基板と前記半導体装置との間に設けられたアンダーフィルと、を具備し、
前記信号配線は前記開口部に重なる部分と、前記開口部に重ならない部分とを含み、
前記開口部と重なる部分における前記信号配線の幅は、前記開口部と重ならない部分における前記信号配線の幅より大きいことを特徴とする電子装置。
【請求項9】
前記アンダーフィルはエポキシ系樹脂により形成されていることを特徴とする請求項記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置、及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアンプ及びスイッチなどとして機能する半導体を搭載した半導体装置が利用されている。このような半導体装置においては、半導体を含む半導体基板と、半導体基板を保護する絶縁膜が形成される。絶縁膜には、半導体基板から引き出された配線などの導体層が設けられる。例えばストリップライン及びマイクロストリップラインなどのような、高周波信号を伝送するための伝送線路(伝送線路)を形成する。特許文献1には、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)、及び高周波信号が伝播する伝送線路を有する半導体装置が記載されている。伝送線路は信号配線と接地層とにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−299524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置には、高周波信号を減衰させるアッテネータが用いられる。また半導体装置の高出力化に伴い、配線の電流容量を大きくすることが求められている。本願発明は、上記課題に鑑み、電流容量が大きく、かつアッテネータとして機能する半導体装置及び電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、半導体基板と、前記半導体基板の上に設けられ、開口部を有し、基準電位に接続された基準層と、前記開口部と重なる領域を通り、前記基準層と伝送線路を形成する信号配線と、前記開口部に対応した位置に設けられた抵抗膜と、を具備する半導体装置である。
【0006】
上記構成において、前記抵抗膜は、前記開口部の内側に設けられてなる構成とすることができる。
【0007】
上記構成において、前記抵抗膜は、前記信号配線を挟んで前記開口部に対向する位置に設けられてなる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記抵抗膜は前記開口部の内側に設けられ、前記基準層と接続されている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記信号配線は前記開口部に重なる部分と、前記開口部に重ならない部分とを含み、前記開口部と重なる部分における前記信号配線の幅は、前記開口部と重ならない部分における前記信号配線の幅より大きい構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記半導体基板に複数のトランジスタが形成され、前記複数のトランジスタは、出力端子に接続された第1トランジスタを含み、前記伝送線路は、前記複数のトランジスタの間、及び前記第1トランジスタと出力端子との間を接続し、前記第1トランジスタと出力端子との間において、前記抵抗膜は設けられておらず、前記複数のトランジスタの間において、前記抵抗膜が設けられている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記信号配線に接続され、直流電圧の印加される配線を具備し、前記基準層の前記配線と重なる領域に、前記開口部が設けられ、前記配線に沿って前記抵抗膜が設けられている構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記抵抗膜はニッケル及びクロムを含む合金により形成されている構成とすることができる。
【0013】
本発明は、基板と、半導体基板と、前記半導体基板の上に設けられ、開口部を有し、基準電位に接続された基準層と、前記開口部と重なる領域を通り、前記基準層と伝送線路を形成する信号配線と、前記開口部に対応した位置に設けられた抵抗膜と、を有し、前記基準層が前記基板と対向するように前記基板にフリップチップ実装される半導体装置と、前記基板と前記半導体装置との間に設けられたアンダーフィルと、を具備する電子装置である。
【0014】
上記構成において、前記アンダーフィルはエポキシ系樹脂により形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電流容量が大きく、かつアッテネータとして機能する半導体装置及び電子装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は実施例1に係る半導体装置を例示する断面図である。図1(b)は第1変形例に係る半導体装置を例示する断面図である。図1(c)は第2変形例に係る半導体装置を例示する断面図である。
図2図2は半導体装置を例示する平面図である。
図3図3(a)は比較例1に係る半導体装置を例示する断面図である。図3(b)は比較例2に係る半導体装置を例示する断面図である。図3(c)は比較例3に係る半導体装置を例示する断面図である。
図4図4(a)は実施例2に係る電子装置を例示する模式的な断面図である。図4(b)はアンダーフィルを設けていない電子装置を例示する断面図である。
図5図5(a)は比較例4に係る電子装置を例示する断面図である。図5(b)は比較例5に係る電子装置を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1は抵抗膜16を設けた例である。図1(a)は実施例1に係る半導体装置100を例示する断面図である。
【0019】
図1(a)に示すように、半導体装置100は、半導体基板10、絶縁膜12、伝送線路13、及び抵抗膜16を備える。半導体基板10の上に絶縁膜12が設けられている。伝送線路13は、信号配線14及び基準層15により形成される擬似コプレーナラインである。基準層15は絶縁膜12の上面に設けられている。基準層15には、開口部15aが設けられており、開口部15aから絶縁膜12が露出する。信号配線14は、開口部15aと厚さ方向において重なる領域を通るように、絶縁膜12の中に設けられている。抵抗膜16は信号配線14を挟んで開口部15aに対向するように、半導体基板10と信号配線14との間に設けられている。
【0020】
半導体基板10は例えば窒化物半導体又は砒素系半導体を含み、半導体基板10にはFETが形成されている。高周波信号は伝送線路13を伝播し、半導体基板10に形成されたFETにおいて増幅される。信号配線14及び基準層15は例えば金(Au)などの金属により形成されている。絶縁膜12はポリイミド又はベンゾシクロブテン(Benzocychobutene:BCB)などの絶縁体により形成されている。抵抗膜16は例えばニッケル(Ni)とクロム(Cr)を含む合金であるニクロムなど、抵抗値が信号配線14より高い材質により形成されている。
【0021】
実施例1によれば、抵抗膜16が信号配線14に沿って設けられていることにより、伝送線路13を伝播する高周波信号は減衰する。このため半導体装置100はアッテネータとして機能する。半導体装置100に抵抗及びキャパシタなどからなるアッテネータ回路を設けなくてよいため、半導体装置100の小型化が可能である。
【0022】
信号配線14の幅W1を大きくすることで、電流容量を大きくすることができる。従って信号配線14に大きな電流を流すことができる。後述するように、基準層15に、信号配線14と重なる開口部15aが設けられているため、伝送線路13の特性インピーダンスを例えば50Ωなど所望の大きさとすることができる。
【0023】
抵抗膜の位置及び数を変更した例を説明する。実施例1の第1変形例は開口部15aの内側に抵抗膜を設けた例である。図1(b)は第1変形例に係る半導体装置110を例示する断面図である。
【0024】
図1(b)に示すように、抵抗膜16が、開口部15aの一端から他端にかけて設けられ、基準層15と電気的に接続されている。つまり抵抗膜16は図中の横方向において開口部15aを埋める。第1変形例によれば、高周波信号は抵抗膜16により減衰する。従って、半導体装置110はアッテネータとして機能する。
【0025】
図1(c)は第2変形例に係る半導体装置120を例示する断面図である。図1(c)に示すように、半導体基板10と信号配線14との間に抵抗膜16aが設けられ、開口部15aの内側には抵抗膜16bが設けられている。抵抗膜16a及び16bは厚さ方向において重なっており、信号配線14を挟む。第2変形例によれば、抵抗膜16a及び16bにより高周波信号は減衰する。抵抗膜が2つであるため、減衰量は大きくなる。
【0026】
第1変形例及び第2変形例においても信号配線14の幅W1(図1(a)参照)を大きくすることで、電流容量を大きくすることができる。幅W1及び開口部15aの幅W2を調整することにより、伝送線路13の特性インピーダンスを例えば50Ωなど所望の大きさとすることができる。
【0027】
半導体装置110を例に半導体装置の平面的な構成について説明する。図2は半導体装置110を例示する平面図であり、絶縁膜12、及び基準層15を透視している。
【0028】
図2に示すように、半導体装置110は、伝送線路13、FET24及び26、配線30及び32、キャパシタC1〜C3、抵抗R1及びR2を備える。また点線で示す複数のバンプ22が接続されている。実施例2において説明するように、バンプ22を用いて半導体装置110をフリップチップ実装する。
【0029】
複数のバンプ22のうち1つは入力端子In、1つは出力端子Outとして機能する。複数のバンプ22のうち2つは直流端子DC1及びDC2として機能する。入力端子Inと出力端子Outとの間に2つのFET24及び26が接続されている。基準層15は、入力端子In、出力端子Out,直流端子DC1及びDC2と離間している。信号配線14と同じ層に、配線30及び32が設けられている。
【0030】
信号配線14は、入力端子InとFET24との間、FET24とFET26との間、FET26と出力端子Outとの間を接続する。FET24及び26はフィンガー構造を有し、半導体基板10に形成されている。FET24のゲートG1は入力端子Inに接続され、FET24のドレインD1はキャパシタC3の一端に接続されている。キャパシタC3の他端はFET26(第1トランジスタ)のゲートG2に接続されている。FET26のドレインD2は出力端子Outに接続されている。ソースS1及びS2は接地されている。
【0031】
配線30は、信号配線14と直流端子DC1とを接続する。キャパシタC1の一端は信号配線14に接続され、他端は接地されている。抵抗R1の一端はキャパシタC1の一端に接続され、他端は直流端子DC1に接続されている。配線32は信号配線14と直流端子DC2とを接続する。キャパシタC2の一端は信号配線14に接続され、他端は接地されている。抵抗R2の一端はキャパシタC2の一端に接続され、他端は直流端子DC2に接続されている。高周波信号は入力端子Inから入力され、伝送線路13を伝播し、出力端子Outから出力される。バイアス電圧は、直流端子DC1を介してFET24のドレインD1に入力され、直流端子DC2を介してFET26のドレインD2に入力される。キャパシタC1及びC2はノイズカットキャパシタである。キャパシタC3はDCカットキャパシタである。
【0032】
基準層15のFET24からキャパシタC1までの領域、信号配線14とキャパシタC1との間の領域、信号配線14とキャパシタC2との間の領域には、開口部15a(図2においては不図示)が形成され、開口部15aには抵抗膜16が設けられている。入力端子とFET24との間、キャパシタC3とFET26との間、FET26と出力端子Outとの間、キャパシタC1と直流端子DC1との間、キャパシタC2と直流端子DC2との間において、基準層15に開口部15aは形成されておらず、また抵抗膜16は設けられていない。
【0033】
信号配線14が開口部15a及び抵抗膜16と重なる部分を領域27、開口部15a及び抵抗膜16と重ならない部分を領域28とする。領域27における断面は図1(b)、領域28における断面は後述する図3(a)である。領域27における信号配線14の幅W1は、領域28における信号配線の幅W3より大きい
【0034】
FET24とFET26との間に抵抗膜16が設けられているため、FET24において増幅された高周波信号が減衰され、FET26のゲートG2に入力される。基準層15の配線30及び32に対向する領域に抵抗膜16が設けられているため、高周波信号が信号配線14から配線30及び32に流れ難い。このため、高周波信号が直流端子DC1及びDC2に漏れることが抑制される。抵抗膜16を、基準層15のFET24とFET26との間の領域、配線30及び32に対向する領域以外に設けてもよい。FET26と出力端子Outとの間には抵抗膜16が設けられていないことが好ましい。FET26と出力端子Outとの間において高周波信号の損失量が小さくなるためである。
【0035】
領域27においては、開口部15aの設けられた基準層15と幅W1の信号配線14とが伝送線路13(擬似コプレーナライン)を形成する。領域28においては、開口部15aの設けられていない基準層15と幅W3の信号配線14とが、伝送線路13(逆マイクロストリップライン)を形成する。領域27及び28において伝送線路13の特性インピーダンスは例えば約50Ωである。つまり伝送線路13の特性インピーダンスは整合している。幅W1が大きいため、信号配線14に大きな電流が流れ、FET26と出力端子Outとの間では損失量が小さい。このため、半導体装置110の高出力化が可能となる。半導体装置100の開口部15a及び抵抗膜16、半導体装置120の開口部15a、抵抗膜16及び17も、半導体装置110と同様に図2の領域27、並びに配線30及び32と重なる位置に設けられている。
【0036】
比較例について説明する。図3(a)は比較例1に係る半導体装置100Rを例示する断面図である。図3(a)に示すように、基準層15に開口部15aは設けられておらず、基準層15は絶縁膜12の上面を覆う。信号配線14と基準層15とは、逆マイクロストリップラインである伝送線路13を形成する。半導体装置100Rにおける信号配線14の幅W3は半導体装置100における幅W1より小さいため、電流容量が小さくなる。電流容量を大きくするためには幅W3を大きくすればよいが、伝送線路13の特性インピーダンスが変化する。例えば幅W3を大きくすることで、特性インピーダンスが45Ωになり、所望の値である50Ωを得ることができない。
【0037】
図3(b)は比較例2に係る半導体装置200Rを例示する断面図である。図3(b)に示すように、抵抗膜16は設けられておらず、基準層15に開口部15aが設けられている。信号配線14の幅はW1である。開口部15aを設けることで、信号配線14がW3よりも大きな幅W1を有しても特性インピーダンスを所望の値とすることができる。しかし損失量が小さいため、半導体装置120Rはアッテネータとして機能し難い。
【0038】
図3(c)は比較例3に係る半導体装置300Rを例示する断面図である。図3(c)に示すように、開口部15aは設けられておらず、抵抗膜16が半導体基板10と信号配線14との間に設けられている。半導体装置300Rにおける信号配線14の幅はW3であり、半導体装置100における幅W1より小さいため、半導体装置110Rの電流容量は小さい。
【0039】
実施例1、第1及び第2変形例、比較例1〜3において信号の損失及び特性インピーダンスZを計算した。表1は計算結果を示す表である。半導体基板10はガリウム砒素(GaAs)など砒素系半導体により形成され、抵抗膜16及び17の抵抗値は100Ω/□とした。絶縁膜12は厚さ10.5μmのポリイミドにより形成されている。
【表1】
表1に示すように、実施例1における損失量は−1.13dB/mmであり、比較例1〜3における損失量より大きい。また第1変形例及び第2変形例における損失量は比較例1〜3における損失量の2倍以上である。また実施例1、第1及び第2変形例における信号配線14の幅W1は、比較例1及び3における幅W3より大きい。このように、実施例1、第1及び第2変形例によれば、電流容量の大きいアッテネータとして機能する半導体装置100、110及び120を得ることができる。伝送線路13の特性インピーダンスZは、各例において50Ωに近い値である。半導体装置を基板に実装したときの特性インピーダンスは後述する。
【実施例2】
【0040】
実施例2は半導体装置110を基板20に実装した電子装置200の例である。図4(a)は実施例2に係る電子装置200を例示する模式的な断面図である。図4(b)はアンダーフィル23を設けていない電子装置200を例示する断面図である。
【0041】
図4(a)に示すように、電子装置200は、図1(b)及び図2に示した半導体装置110と基板20とを備える。基板20の上面には基準層21が設けられている。基準層15が基準層21と対向するように、半導体装置110はバンプ22を用いて基板20にフリップチップ実装される。半導体装置110の基準層15と基板20の基準層21とは電気的に接続されている。図2に示した半導体装置110の入力端子In、出力端子Out、直流端子DC1及びDC2は、基板20の対応する端子に電気的に接続されている。半導体装置110と基板20との間にはアンダーフィル23が設けられている。
【0042】
実施例2によれば、抵抗膜16が開口部15aの内側に設けられている。従って、アンダーフィル23の信号配線14への影響を抑制することができる。すなわち、図4(a)のようにアンダーフィル23を設けた場合と、図4(b)のようにアンダーフィル23を設けない場合とで、伝送線路13の特性インピーダンスが変化しにくい。
【0043】
特性インピーダンスの変化を抑制するためには、抵抗膜16が開口部15aの内側に設けられていればよい。図1(c)に示した半導体装置120を基板20に実装してもよい。抵抗膜16が開口部15aの内側に設けられ、かつ抵抗膜16及び17が信号配線14を挟んでいるため、特性インピーダンスの変化を抑制し、損失量を大きくすることができる。信号配線14、基準層15及び21、配線30及び32は例えばAuなどの金属により形成されている。アンダーフィル23は例えばエポキシ系樹脂などの樹脂により形成されている。
【0044】
比較例について説明する。比較例4は図3(a)に示した半導体装置100Rを備える電子装置の例であり、比較例5は図3(b)に示した半導体装置200Rを備える電子装置の例である。
【0045】
図5(a)は比較例4に係る電子装置400Rを例示する断面図である。図5(a)に示すように、半導体装置100Rが基板20にフリップチップ実装され、半導体装置100Rと基板20との間にアンダーフィル23が設けられている。図5(b)は比較例5に係る電子装置500Rを例示する断面図である。図5(b)に示すように、半導体装置200Rが基板20にフリップチップ実装され、半導体装置200Rと基板20との間にアンダーフィル23が設けられている。
【0046】
図3(a)において説明したように半導体装置100Rにおける信号配線14の幅W3は小さい。このため電子装置400Rの電流容量は小さい。電子装置500Rにおいては、幅W1が大きくかつ開口部15aが形成されているため、大きな電流容量と所望の特性インピーダンスとを得ることができる。しかしアンダーフィル23を設けた場合と、設けない場合との間において特性インピーダンスが変化してしまう。
【0047】
表2はアンダーフィル23を設けない場合、アンダーフィル23を設けた場合における信号の損失及び特性インピーダンスの計算結果を示す表である。表2のUF列はアンダーフィル23を設けない場合(UF無)、及び設けた場合(UF有)を表す。実施例2における抵抗膜16の抵抗値Rを100、300及び500Ω/□とした。各例における基準層15と基準層21との距離L1(図4(a)参照)は100μmとした。
【表2】
表2に示すように、比較例4ではUF無及びUF有において特性インピーダンスZは50Ω付近である。比較例5ではアンダーフィル23の有無により特性インピーダンスZが大きく変化する。UF無においてZ=50.4Ωである。UF有においてZ=37.6Ωである。実施例2ではアンダーフィル23の有無により特性インピーダンスZはほとんど変化しない。例えばR=100Ωにおいて、UF無の場合はZ=48.9Ω、UF有の場合はZ=48.6Ωである。
【0048】
また比較例4及び5において損失量は−1.1dB/mm付近である。実施例2の損失量は比較例4及び5より大きい。R=100Ω/□において、UF無の場合−2.30dB/mm、UF有の場合−2.33dB/mmである。抵抗値Rが高くなるほど損失量は大きくなる。
【0049】
伝送線路13の特性インピーダンスは、アンダーフィル23だけでなく、基板20からの影響を受けることがある。実施例2及び比較例5において距離L1を変化させ、特性インピーダンス及び損失量の計算を行った。表3は特性インピーダンス及び損失量の計算結果を示す表である。なお表3の計算において、アンダーフィル23は設けていない。
【表3】
表3に示すように、比較例5において距離L1が100μmの場合はZ=50.4Ωであり、距離L1が5μmの場合Z=37.4Ωである。実施例2において距離L1が100μmの場合はZ=48.9Ωであり、距離L1が5μmの場合Z=44.8Ωである。実施例2によれば距離L1の変化による特性インピーダンスの変化が抑制される。
【0050】
抵抗膜は、例えば信号配線14の左側又は右側などに設けられてもよい。2つの抵抗膜が、左右から信号配線14を挟んでもよい。損失量増大のためには、図1(a)から図1(c)に示したように、抵抗膜が開口部15aに対応した位置に設けられていることが好ましく、特に開口部15aの内部に設けられていることが好ましい。FETは1つでもよいし、3つ以上でもよい。FET間の信号配線14に沿って抵抗膜を設けることで、半導体装置はアッテネータとして有効に機能する。半導体基板10にはFET以外のトランジスタが形成されてもよい。半導体基板10は、例えば砒素系半導体又は窒化物半導体を含む。砒素系半導体は砒素(As)を含む半導体であり、例えばガリウム砒素(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)及びインジウムガリウム砒素(InGaAs)などである。窒化物半導体とは、Nを含む半導体であり、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウム(InN)、及び窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)などである。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 半導体基板
12 絶縁膜
13 伝送線路
14 信号配線
15、21 基準層
15a 開口部
16、16a、16b、17 抵抗膜
20 基板
23 アンダーフィル
24、26 FET
27、28 領域
30、32 配線
100、110、120 半導体装置
100、200 電子装置
In 入力端子
Out 出力端子
図1
図2
図3
図4
図5