特許第6205874号(P6205874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6205874-離型フィルム 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205874
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20170925BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B32B27/00 L
   B32B27/42 102
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-120370(P2013-120370)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-237238(P2014-237238A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荘司 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 功
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘造
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−090647(JP,A)
【文献】 特開2012−224082(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/094441(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に離型層を有する積層フィルムであって、離型層を構成する樹脂が離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を50質量%以上含有し、離型層の厚みが、0.02μm以上0.1μm未満であり、離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが10μm以上80μm以下である離型フィルム。
【請求項2】
離型層表面のスキューネスRSkが0.9以上4.0以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
2倍伸長した後のスキューネスRSkの平均が0.9以上4.0以下である請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
離型層表面の静摩擦係数が1.2以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
150℃における2倍伸長時の長手方向、および幅方向の応力が5〜75MPaである請求項1〜4のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項6】
成形同時転写用途に使用される、請求項1〜5のいずれかに記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離安定性と耐熱性に優れる離型フィルムに関するものであり、更に詳しくは、成型加工後も良好で安定した剥離性を示す離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、従来から各種用途に使用されている。しかし、用途が多様化するにつれて、フィルムの加工条件や使用条件が多様化する傾向にある。一例として、成形同時転写箔用離型フィルムが挙げられる。当該離型フィルムを用いた転写箔の構成は一般的に、基材フィルムであるポリエステルフィルムの片面に離型層を設け、該離型層上に順次、図柄印刷層および接着層などの転写層を積層した構成からなる。目的に応じて、転写層にハードコート層や金属蒸着層等が積層される。さらには、これら離型層や転写層に帯電防止剤や抗菌剤等の機能性剤を加え、転写箔としての機能が付与される。
【0003】
上述の離型フィルムを用いた転写箔の転写方法は、転写箔を射出成形用の金型内にセットし、樹脂成形品を成形するのと同時にその表面に転写箔シートを一体化して接着し樹脂成形品に図柄を転写し装飾を施す成形同時転写法が広く一般的に知られている。
【0004】
このような転写方式は、基材フィルムであるポリエステルフィルムの表面上に接着層を含む複数の積層構成された転写箔を用い、接着層を介して被転写物に転写する方法であり、携帯電話機、電気製品、自動車部品、化粧容器、玩具類など多岐にわたる樹脂成形品の表面に装飾や表面保護等の表面加工を施す目的で広範囲の用途に使用されている。
【0005】
従来の離型フィルムを成形同時転写用途に用いると、射出された高温の樹脂が転写箔シートに触れた際、離型層もしくは基材フィルムが軟化し、インキ流れによる印刷ずれや、射出樹脂の流れ跡の転写による外観不良が発生するという課題がある。
【0006】
かかる課題に対し、特定の粗さや剥離性のある表面を持つ離型フィルム(特許文献1)や基材フィルムの融点や面配向係数を特定範囲とした離型フィルム(特許文献2)などが提案されている。また、100%伸長時にも欠点の少ない離型層を有する離型フィルム(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−194905号公報
【特許文献2】特開2010−247423号公報
【特許文献3】特開2000−255006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法で得られるフィルムは、耐熱性が不十分であり、高温の樹脂射出によるインキ流れが起きる問題がある。また、特許文献2の方法で得られるフィルムは、フィルムの寸法安定性が不十分であり、離型コート乾燥時にフィルムが大きく収縮するといった問題があった。また、特許文献3に記載のフィルムは、耐熱性を高めるために離型層の厚みを厚くしているため、成型延伸時に離型層が追従できず、断裂が生じることによって剥離が不安定化する問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を背景になされたものであり、剥離安定性と耐熱性に優れ、かつ成型延伸後に安定した剥離性を示す薄膜の離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は下記の特徴を有する。
(1)基材フィルムの少なくとも片面に離型層を有する積層フィルムであって、離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが10μm以上80μm以下である離型フィルム。
(2)離型層を構成する樹脂が離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を50質量%以上含有する(1)に記載の離型フィルム。
(3)離型層表面のスキューネスRSkが0.9以上である(1)または(2)に記載の離型フィルム。
(4)長手方向に2倍伸長した後の離型層表面のスキューネスRSkと、幅方向に2倍伸長した後の離型層表面のスキューネスRSkの平均が0.9以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の離型フィルム。
(5)離型層の厚みが、0.02μm以上0.1μm未満である、(1)〜(4)のいずれかに記載の離型フィルム。
(6)離型層表面の静摩擦係数が1.2以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載の離型フィルム。
(7)150℃における2倍伸長時の長手方向、および幅方向の応力が5〜75MPa以下である(1)〜(6)のいずれかに記載の離型フィルム。
(8)成形同時転写用途に使用される、(1)〜(7)のいずれかに記載の離型フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐熱性と剥離安定性に優れ、成型加工後も良好で安定した剥離性を示す薄膜離型フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】代表的な表面粗さ曲線を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に離型層を有する積層フィルムである。本発明者らは、離型フィルムを構成する基材フィルム、離型層について鋭意検討した結果、本発明を見出した。
【0015】
(I)基材フィルム
本発明に用いられる基材フィルムを構成する樹脂としては、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタンおよび環状オレフィン系樹脂等が使用できる。本発明において、基材フィルムは、ポリエステルを主成分とする樹脂から構成されることが、耐熱性、強度、生産性の点から好ましい。本発明において、ポリエステルを主成分とするとは、基材フィルムを構成する樹脂のうち、50質量%以上がポリエステルであることを示す。中でも、耐熱性、強度、生産性の点で二軸配向ポリエステルフィルムが最も好ましい。
【0016】
本発明の離型フィルムの基材フィルムに使用されるポリエステルは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子の総称であって、通常、ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。
【0017】
ここで使用するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などの各成分を挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体成分として、上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどの各成分を挙げることができる。本発明の基材フィルムを構成するポリエステル樹脂において、全ジカルボン酸成分中の、テレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸の割合は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上であることが耐熱性、生産性の点から好ましい。
【0018】
また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物など各成分が挙げられる。中でも、成形性、取り扱い性の点で、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの各成分が好ましく用いられる。本発明の基材フィルムを構成するポリエステル樹脂において、全ジオール成分中の、エチレングリコールの割合が、65モル%以上であると、耐熱性、生産性の点から好ましい。
【0019】
これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
【0020】
成形性、寸法安定性の観点から、基材フィルムを構成するポリエステル樹脂において、ポリエステル中の全ジカルボン酸成分中の、テレフタル酸の割合が95モル%以上、全グリコール成分中の、エチレングリコールの割合が65〜95モル%、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計の割合が5〜35モル%とすることが好ましい。より好ましくは、エチレングリコールの割合が75〜95モル%、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計の割合が5〜25モル%、さらに好ましくは、エチレングリコールの割合が80〜95モル%、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計の割合が5〜20モル%である。
【0021】
また、本発明の基材フィルムを構成する樹脂中には、重合反応時に添加する触媒の残渣などによって析出するいわゆる内部粒子や、無機粒子および/または有機粒子などの外部粒子の中から任意に選定される粒子を含有させることができる。基材フィルムを構成する樹脂中に粒子を含有させると、フィルムのすべり性を向上させることが可能となり、製造時の取り扱い性が良好となる。また、フィルム表面に低光沢感が求められる用途においては、基材フィルム中に粒子を含有せしめることにより、粒子がフィルム表面の平滑度を低下させ、光沢度を目的とする値に調整することが可能となる。基材フィルムを構成する樹脂に含有させる粒子の平均粒子径は、0.01〜10μmが好ましく、より好ましくは、0.5〜8μm、さらに好ましくは、1〜5μmである。ここで10μmを超える平均粒子径を有する粒子を含有すると、基材フィルムに欠陥が生じる場合があるため好ましくない。粒子としては、例えば湿式および/または乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子、スチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、エステル、ジビニルベンゼン等を重合したものを構成成分とする有機粒子等を使用することができる。なかでも、湿式および/または乾式シリカ、アルミナ等の無機粒子、スチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、エステル、ジビニルベンゼン等を重合したものを構成成分とする有機粒子等が好ましく使用される。粒子として、内部粒子、無機粒子、有機粒子をそれぞれ二種以上、または、内部粒子、無機粒子、有機粒子を組み合せて二種類以上併用してもよい。また、粒子の含有量は、基材フィルムを構成する樹脂組成物全体に対して、0.01〜5質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.03〜3質量%である。0.01質量%未満の場合、フィルム巻き取りが難しくなる可能性があり、5質量%を越えると粗大突起による光沢度の低下、透明性および製膜性の悪化などを引き起こす可能性が生じる。また、ここで言う平均粒子径とは、体積平均粒子径のことである。
【0022】
本発明の基材フィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸配向フィルムであることが好ましい。二軸配向させる方法としては、逐次二軸延伸方式、同時二軸延伸方式などが挙げられるが、生産性の観点から、逐次二軸延伸方式がより好ましく用いられる。
【0023】
二軸延伸の延伸倍率としては、長手方向、幅方向のそれぞれの方向に、3.0〜4.2倍とすることが好ましく、より好ましくは3.1〜4.0倍、さらに好ましくは3.3〜3.8倍である。この場合、長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。
【0024】
また、延伸速度は1,000%/分〜200,000%/分であることが好ましい。より好ましくは、1,500%/分〜50,000%/分、さらに好ましくは2,000%/分〜30,000%/分である。延伸速度を上記の範囲とすることにより、生産性が良好となり、また配向のコントロールを容易にすることができる。
【0025】
長手方向に延伸をした後、幅方向に延伸を行う逐次二軸延伸方法の場合、以下の条件で延伸を行うと、長手方向と幅方向の物性差を小さくすることができるため好ましい。延伸倍率は、長手方向の延伸倍率を3〜4.2倍とし、幅方向の延伸倍率を3〜4.2倍、好ましくは長手方向の延伸倍率を3.3〜3.8倍、幅方向の延伸倍率を3.3〜3.8倍とし、長手方向と幅方向の延伸倍率の差を0.5以下、より好ましくは、0.2以下とすることが好ましい。また、長手方向の延伸(以降縦延伸と称する場合がある)の予熱温度は80〜100℃、さらに好ましくは85〜95℃とすることが好ましい。縦延伸温度は80℃以上110℃以下であれば好ましく、85℃以上100℃以下であればさらに好ましく、85℃以上95℃以下であれば最も好ましい。幅方向の延伸(以降横延伸と称する場合がある)の予熱温度は70〜120℃、さらに好ましくは75〜110℃とすることが好ましい。横延伸温度は80℃以上165℃以下であれば好ましく、80℃以上150℃以下であればさらに好ましく、80℃以上145℃以下であれば最も好ましい。予熱温度が上記温度範囲以上の場合には、フィルム中の非晶部分の熱結晶化が進行し、延伸時に破れが発生しやすくなる場合がある。また、予熱温度が上記温度範囲以下である場合には、冷温延伸となり厚みムラが大きくなるとともに、フィルムの配向度が低下することで、機械強度が悪化する場合がある。延伸温度が上記範囲を上回る場合、ロール粘着やクリップ粘着等の工程トラブルが生じる場合がある。また、延伸温度が上記範囲を下回る場合には、延伸張力が急激に上昇し、破れやクリップはずれなどが生じることで、生産性が大幅に低下する場合がある。
【0026】
本発明の基材フィルムは、未延伸シートを二軸延伸した後に、熱処理を行うことにより得られることが好ましい。この熱処理は、オーブン中、あるいは、加熱されたロール上等、従来公知の任意の方法で行うことができる。熱処理は、フィルムの温度が120℃以上240℃以下となるような任意の温度とすることができるが、好ましくは200〜240℃である。さらに好ましくは225℃〜240℃である。また熱処理時間は任意の時間とすることができるが、好ましくは1〜60秒間行うのがよい。より好ましくは1〜30秒間である。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後、熱処理を行ってもよい。
【0027】
本発明の基材フィルムは、単層フィルムでもよく、2層以上の積層フィルムでもよい。3層構成とする場合は、生産性の観点から、両表層の組成を同じにすることが好ましい。さらに、生産性を向上させるために、両表層の積層厚みは等しくすることが好ましい。
【0028】
(II)離型層
本発明の離型層は、離型層を構成する樹脂全体に対して、メラミン樹脂が50質量%以上含有することが好ましい。メラミン樹脂を50質量%以上含むことにより、加熱時にメラミン樹脂の自己縮合が進行し、耐熱性が大幅に向上する。メラミン樹脂の濃度が50質量%未満の場合には、架橋反応が不十分となり、十分な耐熱性を示さなかったり、離型層の表面構造を特定の範囲にすることが困難となる場合がある。好ましくは、70質量%以上90質量%以下である。
【0029】
メラミン樹脂としては、メラミンホルムアルデヒド樹脂やメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ変性メラミンホルムアルデヒド樹脂等のメラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素メラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂などが挙げられるが、メラミンホルムアルデヒド樹脂が好ましく、適度な離型性を有することからメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂が特に好ましく用いられる。
【0030】
本発明の離型層は、バインダー樹脂を含むと、基材フィルムとの密着性が向上し、また、剥離させる対象物との剥離力を調整でき、或いは成形同時転写における成形時の延伸追従性を良好とすることができるため好ましい。バインダー樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、セルロース類、でんぷん類等が挙げられるが、延伸追従性、離型時の剥離力、および剥離安定性の観点からアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。
【0031】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体または共重合体、側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体があげられ、硬化性官能基としては水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などがあげられる。なかでもアクリルモノマーと側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有するアクリル酸エステルが共重合されたアクリルモノマー共重合体が好ましい。
【0032】
また、本発明の離型層は、目的とする耐熱性、成形延伸追従性を損なわない範囲で、離型剤を含有することが好ましい。離型剤を離型層の表面に均一に分散させると、離型層上に積層、剥離する被離型層との密着性、剥離性を適度な範囲とすることができる。離型剤としては、例えば、フッ素化合物、長鎖アルキル化合物およびワックスなどが挙げられる。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。
【0033】
本発明におけるフッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。本発明の離型フィルムを成形同時転写箔用途などに用いる場合、転写時に高い熱負荷がかかるため、耐熱性、汚染性を考慮すると、フッ素化合物は高分子化合物であることが好ましい。
【0034】
本発明における長鎖アルキル化合物とは、炭素数が6以上、特に好ましくは8以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。具体例としては、特に限定されるものではないが、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。長鎖アルキル化合物は高分子化合物であると、離型フィルム剥離時に貼り合わせている相手方基材表面への離型層由来の成分が転着することを抑制できるため好ましい。
【0035】
本発明におけるワックスとは、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
【0036】
これら離型剤を離型層の表面に均一に分散させることによって、離型層上に積層、剥離する被離型層との密着力、剥離力を適正な範囲とすることができる。離型剤としては、長鎖アルキル化合物を用いると、広範囲に剥離力を調整することが出来る点で、本発明の用途上好ましい。
【0037】
また、本発明の離型層を構成する樹脂は、離型層の固着性、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよい。不活性粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
【0038】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0039】
本発明では、メラミン化合物(A)を含有する樹脂組成物を基材フィルムの少なくとも片面の上に設け、その後に加熱し、基材フィルム上に離型層を形成させることが好ましい。特に加熱温度を200℃以上240℃以下の範囲で、温度の異なる2段以上の工程とすることにより、特定の表面形状を有する離型層を効率よく形成させることができるため好ましい。これによって、離型性、離型安定性、耐熱性に優れる離型フィルムを得ることができる。
【0040】
メラミン化合物を含有する樹脂組成物を基材フィルム上に設ける際に、溶媒を用いても良い。すなわち、メラミン化合物を溶媒に溶解または分散せしめて、塗液とし、これを基材フィルムに塗布しても良い。塗布後に、溶媒を乾燥させ、且つ加熱を施すことで離型層が積層されたフィルムを得ることができる。本発明では、溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、加熱工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な離型層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れている。
【0041】
ここで、水系溶媒とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。
【0042】
樹脂組成物の基材フィルムへの塗布方法はインラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができるが、好ましくはインラインコート法である。インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、基材フィルムを構成する樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)フィルム、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)フィルム、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)フィルムの何れかのフィルムに塗布する。
【0043】
本発明では、結晶配向が完了する前の未配向フィルム、一軸配向フィルムの何れかのフィルムに、樹脂組成物を塗布し、溶媒を蒸発させ、その後、基材フィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、加熱し、基材フィルムの結晶配向を完了させるとともに、離型層を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、基材フィルムの製膜と、樹脂組成物の塗布と溶媒の乾燥、および加熱(すなわち、離型層の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うために離型層の厚みをより薄くすることが容易である。
【0044】
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルムに、樹脂組成物を塗布し、溶媒を乾燥させ、その後、幅方向に延伸し、加熱する方法が好ましい。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、延伸工程が1回少ないため、延伸による離型層の欠陥や亀裂が発生を抑制することができる。
【0045】
一方、オフラインコート法とは、上記未延伸フィルムを一軸又は二軸に延伸し、加熱処理を施し基材フィルムの結晶配向を完了させた後のフィルム、または未延伸フィルムに、フィルムの製膜工程とは別工程で樹脂組成物を塗布する方法である。本発明では、上述した種々の利点から、インラインコート法により設けられることが好ましい。
【0046】
よって、本発明において最良の離型層の形成方法は、水系溶媒を用いた樹脂組成物を、基材フィルム上にインラインコート法を用いて塗布し、水系溶媒を乾燥させ、加熱することによって形成する方法である。
【0047】
樹脂組成物を含む塗液を作成する場合、溶媒は水系溶媒を用いることが好ましい。樹脂組成物を含む塗液は、必要に応じて水分散化または水溶化したメラミン化合物および水系溶媒を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。次いで必要に応じて易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、樹脂組成物により形成される離型層の特性を悪化させない範囲で任意の順番で混合、撹拌することができる。混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
【0048】
基材フィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
【0049】
本発明の離型フィルムの製造方法について、基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)フィルムを用いた例を挙げて説明する。まず、必要に応じて顔料、染料、有機又は無機の粒子を添加したPETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルムを作製する。このフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に3〜4.2倍延伸して一軸配向PETフィルムを得る。このフィルムの片面に所定の濃度に調製した、メラミン化合物を含む樹脂組成物を有する塗液を塗布する。この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、PETフィルム上への樹脂組成物の塗布性が向上するため、濡れ性を向上させ、樹脂組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
【0050】
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80〜130℃の予熱ゾーンへ導き、塗液の溶媒を乾燥させる。乾燥後100℃〜160℃の温度にて、幅方向に3〜4.2倍延伸する。引き続き200〜240℃の熱処理ゾーンへ導き1〜30秒間の1段階目の熱処理を行い、その後、1段階目の熱処理温度よりも高い温度かつ200〜240℃の範囲で2段階目の熱処理を1〜30秒間行い、結晶配向を完了させるとともに、離型層の形成を完了させる。この加熱工程(熱処理工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3〜15%の弛緩処理を施してもよい。
【0051】
本発明においては、離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以上80μm以下であることが必要である。ここでいうRSmは、JIS B 0601(2001年)に従って求められるものであり、基準長さにおける粗さ曲線要素間の長さの平均をあらわす。すなわち、図1における基準長さ(Lr)において、粗さ曲線のピーク数がm、各ピーク間の距離がW、W、W・・・Wとするとき、下記式(1)に示すようにW〜Wの長さの総和を粗さ曲線のピーク数mで除算することにより、RSmを求めることができる。RSmを上述の10μm以上80μm以下とすると、離型性、離型安定性を飛躍的に良好とすることができる。この効果について、本発明者らは、下記のように推定している。RSmは、離型層表面の凸凹の間隔をあらわすものであり、値が大きいほど凸凹間の距離が大きくなるため、表面の平均傾斜が緩やかとなる。一方、値が小さくなると、表面の凸凹のピッチが小さくなり、表面の平均傾斜が急となり、また、単位面積当たりの溝の数が増加する。RSmが80μmより大きいと、離型層表面の傾斜が過度に緩やかになり、離型層に積層した層と離型層表面の密着が不十分となる。一方、RSmを10μm未満とすると、表面の平均傾斜が急となり、また、単位面積当たりの溝の数が増加するため、安定した離型性を得ることが困難となる。RSmを10μm以上80μm以下とすることにより、離型層の表面に適度な間隔で凸凹が配列され、離型性、離型安定性の観点から最適な高さ勾配を形成するものと考えている。RSmは、好ましくは20μm以上75μm以下であり、30μm以上70μm以内であると最も好ましい。
【0052】
【数1】
【0053】
離型フィルムの特性を上記範囲とするための方法としては、下記のような条件で形成することが挙げられる。
・離型層を構成する樹脂組成物全体に対してメラミン樹脂を50質量%以上含有する樹脂組成物の塗液を、基材フィルムの少なくとも片面に塗布した後、乾燥工程にて溶媒を蒸発させ、その後、熱処理工程にて離型層を形成させる方法において、(i)〜(iii)を満たすようにすること。
(i)上記熱処理工程の温度を200〜240℃とすること。
(ii)上記乾燥工程から熱処理工程の間において、工程同士あるいは工程間の温度差が80℃以内となるようにすること。
(iii)離型層の厚みを0.02μm以上0.1μm未満となるようにすること。
【0054】
本発明の離型層を構成する樹脂組成物中のメラミン樹脂の含有量を上記の範囲とすることによって、(i)を満たす高温にて熱処理をした場合にも離型層表面が過度に荒れることなくRSmを適切な範囲に調整することが可能である。メラミン樹脂の含有量が50質量%未満の場合、200℃以上の高温での熱処理を行うと離型層表面の平滑性が低下しRSmが80μmを超えるとともに、離型層表面の耐熱性が低下する場合がある。離型層を構成する樹脂組成物中のメラミン樹脂の含有量は、好ましくは60質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上85質量%以下である。
【0055】
上記、熱処理温度を200℃以上240℃以下という高い温度で行うことにより、メラミン樹脂同士の自己縮合反応、あるいは、メラミン樹脂とバインダーの架橋反応が進行し、離型層の耐熱性を高めることができる。好ましくは225℃〜240℃である。また、メラミン樹脂同士の自己縮合反応、あるいは、メラミン樹脂とバインダー樹脂の架橋反応が進行することにより、離型層の延伸追従性が向上するため、コーティング後の延伸工程において離型層表面に断裂が生じにくくなり、RSmを好ましい範囲とすることができる。
【0056】
離型層を形成せしめる工程の中で、乾燥工程から熱処理工程の間において、工程同士あるいは工程間の温度差が80℃以内となるようにすることで、離型層中の樹脂の緩和、再分散が生じ、架橋反応および自己縮合反応が高度に進行することで、緻密な塗膜表面を形成し、離型層表面の耐熱性が高まる。さらに、平滑性の高いメラミン樹脂添加系においても、工程同士あるいは工程間の温度差が80℃以内とすることでバインダー樹脂が表面を被覆した状態となり表面の平滑度が上がりすぎることなく、RSmを好ましい範囲とすることが可能である。特に、離型層を構成する樹脂組成物中のメラミン樹脂の含有量が多い場合には、メラミン樹脂同士の自己縮合が進みすぎると表面が平滑になりすぎRSmが低くなる場合がある。例えば、離型層を形成せしめる工程において、延伸工程を120℃で実施した後、熱処理が200℃を超える温度で実施すると、高濃度に添加したメラミン樹脂の表面濃縮と自己縮合が起こり、表面が過度に平滑化し、RSmが目的の範囲とすることが困難となる場合がある。工程同士あるいは工程間の温度差を80℃以内とすることで、メラミン樹脂とバインダー樹脂との架橋反応とメラミン樹脂同士の自己縮合反応を適切に進行させることができ、RSmを目的の範囲とすることが可能となる。
【0057】
また、離型層の厚みが0.1μm以上の場合には、成型時の延伸追従性が低下し離型層にクラックが生じやすくなるため、離型層表面においてRSmが大きくなる場合があり、剥離が不安定になる場合がある。また、離型層の厚みが0.02μm未満では、均一なRSmを有する塗膜を得るのが難しく、剥離が不安定化する場合がある。離型層の厚みは、好ましくは、0.025μm以上0.08μmであり、最も好ましくは0.03μm以上0.6μmである。離型層の厚みは、離型フィルムの断面を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、光学顕微鏡などで500倍以上10000倍以下の倍率で観察することによって、厚みを測定することができる。
【0058】
上記三要件を簡便かつ経済的に満たす離型フィルムの製造方法として、フィルム製造工程内で離型層を設けるインラインコート法が挙げられる。ここでいうインラインコート法とは、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上に離型層組成物を水に分散させたものをメタリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法である。この工程の中で、フィルムの熱処理温度を200℃以上240℃以下とし、その前工程である延伸工程の最高温度を熱処理温度から80℃以内の温度とすることにより、必要とする乾燥工程の温度条件を達成することができる。また、離型層組成物塗布後に延伸処理を行うことにより、離型層の薄膜化が達成できる。このとき、離型層のメラミン樹脂による架橋反応を促進する観点から、熱処理時間は5秒以上25秒未満であることが好ましい。熱処理時間が5秒未満では離型層の架橋反応が十分進行せず、目的とする耐熱性を発現しない。また、熱処理時間が25秒より大きいと、基材フィルムの熱結晶化が進行し脆化するため、トリミング時にノッチが入るなど取り扱い上の問題が生じる。上記製造上の温度要件について具体的に示すと、例えば横延伸温度を150℃とし、熱処理温度を230℃とすることにより、工程間の温度変化を80℃とし、かつ高温での熱処理が実現される。
【0059】
本発明の離型層は、離型層表面のスキューネスRSkが0.9以上4.0以下であることが好ましい。ここでいうスキューネスRSkはJIS B 0601(2001年)にしたがって求められるものであり、表面の凹凸部の形状をあらわすものである。RSkが正に大きい場合には、尖った鋭角の凸部と丸みを帯びた凹部から構成された表面形状であることをあらわす。一方、RSkが負に大きい場合には、丸みを帯びた凸部と尖った鋭角の凹部から構成される表面形状であることをあらわす。RSkが0.9未満の場合、離型層表面の凹部が過度に鋭角となるため、被剥離層に対するアンカー効果が強くなりすぎることから、被離型層の重剥離化が顕著となる。一方で、RSkを0.9以上4.0以下とすることにより、適切な程度のアンカー効果を示す表面構造が得られるとともに、離型フィルムを延伸した際の表面構造の保持性も良好となる。また、RSkが4.0より大きい場合には、離型層が軽剥離化するとともに、耐擦過性が低下し、フィルム表面にキズがつきやすくなる場合がある。好ましくは、1.0以上2.5以下である。
【0060】
上記特性範囲については、例えば先述の3要件を満たすことによって成される。
【0061】
本発明の離型フィルムは、成型同時転写用途や熱プレス成形用途などに用いられる。中でも、深い形状の型に成形同時転写用途に用いられる場合、成形同時転写された後、すなわち離型フィルムは伸長された状態で離型性を有することが求められる。しかしながら、離型フィルムの離型層が伸長に追従できない場合は、離型層の表面に微小な亀裂が生じる場合があり、RSkは低下してしまう。そのため、本発明の離型フィルムは、長手方向に2倍伸長した後の離型層表面のスキューネスRSkと、幅方向に2倍伸長した後の離型層表面のスキューネスRSkの平均が0.9以上4.0以下であると、深い形状の型に成形した後においても、離型性に優れ、また離型安定性に優れるため好ましい。長手方向に2倍伸長した後の離型層表面のスキューネスRSkと、幅方向に2倍伸長した後の離型層表面のスキューネスRSkの平均は、好ましくは、1.0以上2.5以下である。長手方向に2倍伸長した後の離型層表面のスキューネスRSkと、幅方向に2倍伸長した後の離型層表面のスキューネスRSkの平均が0.9未満の場合は、成型時の延伸等で離型層の表面に微細な亀裂が入っている場合があり、剥離安定性に劣ったり、剥離の際に被剥離層に離型層が転写する場合がある。
【0062】
RSkは具体的には、以下の方法により求められる。図1における基準長さ(Lr)において、粗さ曲線の高さをzとしてz=Z(x)で表したとき、下記式(2)で示すように、Z(x)の三乗をx=0〜Lrまで積分して得た値をRqの三乗で除算することによる求められる。ここでRqはJIS B 0601(2001年)にしたがって求められる表面粗さのパラメータであり、Z(x)の二乗の平均値として求められる値である。すなわち、x=0〜Lrまでの範囲を測定したときには、下記式(3)で示すように、Z(x)の二乗をx=0〜Lrまで積分して得た値をLrで除算した値の平方根としてRqを得る。
【0063】
【数2】
【0064】
【数3】
【0065】
本発明の離型フィルムにおいて、離型層表面のRSkを上記の好ましい範囲にする方法としては、例えば離型層を形成させる方法において、(1)〜(3)を満たす条件とし、かつ離型層を構成する樹脂組成物中のメラミン樹脂の含有量を、離型層を構成する樹脂組成物全体に対して80質量%以下とすることが挙げられる。メラミン樹脂の濃度が80質量%より大きい場合には、離型層表面の延伸追従性が低下し、伸長時に表面へ亀裂が入ることでRSkが低下する場合がある。
【0066】
また、本発明の離型フィルムにおいて、任意の方向に2倍伸長した後の離型層表面のRSkを上記の好ましい範囲とする方法としては、バインダー樹脂としてアクリルモノマー共重合樹脂を用い、未伸長時のRSkを0.9以上とすることにより達成される。アクリルモノマー共重合樹脂の含有量としては、離型層中のメラミン樹脂以外の構成成分中に対して70質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは80質量%以上である。バインダー樹脂としてアクリルモノマー供重合樹脂を用いることにより、離型層の延伸追従性が向上し、フィルムを伸長した場合にも表面への亀裂の発生が抑制される。
【0067】
本発明の離型フィルムは、成型同時転写用途や熱プレス成形用途などに用いられるが、例えば成形同時転写用途に用いられる場合、成形される樹脂が離型フィルム表面上をスムーズに流動することが求められる。射出された樹脂の流動性が悪いと、インキ流れが悪化し、転写性を悪化させ、また離型性を悪化させる要因となる。特に深い形状の型を用いて成形同時転写を行う場合は、この問題が発生しやすい。そのため、本発明の離型フィルムは、離型層表面の静摩擦係数が1.2以下であることが好ましい。離型フィルムの離型層表面の静摩擦係数を1.2以下とすることにより、樹脂の流動性を良好にし、深い形状の型を用いても良好な転写性、離型性を得ることができる。好ましくは0.8以下であり、0.6以下であると最も好ましい。離型層表面の静摩擦係数を1.2以下とする方法としては、離型層を上述した構成にすることに加えて、基材フィルムの表層を構成する樹脂に粒子を0.001質量%以上0.5質量%以下添加する方法などが挙げられる。添加量が0.001質量%未満では効果が不十分であり、0.5質量%より大きい場合には、フィルム表面が低光沢化することにより転写後の外観に影響を与える可能性がある。
【0068】
本発明の離型層は、基材フィルムの片面、もしくは両面に積層することができる。片面に積層した場合には、離型層とは反対側の面に帯電防止層を積層してもよい。帯電防止層には、例えば、カーボンブラック、酸化スズ、酸化スズアンチモンドープ、ポリチオフェンおよびポリアニリンなどの帯電防止剤を含有させることができる。透明性を考慮すると、酸化スズ系の帯電防止剤が好ましい。
【0069】
(III)離型フィルム
本発明の離型フィルムは、成形同時転写に用いる際の深い形状への成形性の観点から、150℃において2倍伸長した際の長手方向および幅方向の応力(以下、それぞれF100MD、F100TDということがある)がいずれも5〜75MPaであることが好ましい。F100MD値、F100TD値のいずれかが5MPa未満であると、成形時の応力が低すぎるため、寸法安定性が低下し、成形時の予熱工程でフィルムが伸びてしまい、成形ムラが発生する場合がある。また、F100MD値、F100TD値のいずれかが75MPaより大きいと、成形時の応力が高いため、深い形状の成形が困難となる場合がある。寸法安定性、成形性の観点から、F100MD値、F100TD値はいずれも10〜45MPaであることがより好ましく、10〜35MPaであれば特に好ましい。ここで、F100MD値、F100TD値とは、試験長50mmの矩形型に切り出したフィルムサンプルを190℃に設定した恒温槽中で60秒間の予熱後、300mm/分のひずみ速度で引張試験を長手方向、幅方向にそれぞれ行った際の100%伸長時の応力である。
【0070】
本発明における離型フィルムのF100MD値、F100TD値を上記範囲とする好ましい手段としては、離型フィルムが基材フィルムと離型層とから構成され、該基材フィルムとしては、上記「(1)基材フィルム」に記載のような特徴を持った二軸配向ポリエステルフィルムを用いること、さらに、同時に「(2)離型層」内に記載のような特徴を持った離型層を「(2)離型層」に記載の塗布・乾燥条件で用いることが挙げられる。
【0071】
本発明の離型フィルムは、離型層の耐熱性が高いため、成型同時転写用途や熱プレス工程等の高温の加工工程を含む用途に適している。本発明の離型フィルムを成型同時転写用途に用いると、射出樹脂によるインキ流れが抑制され、かつ転写時の剥離力が安定するため好ましい。また、離型フィルムを延伸した後も、安定した剥離力と耐熱性を示すことから、成型同時転写用途に用いた場合、より深い形状の成型同時転写が可能となる。本発明の離型フィルムの厚みは、成形性、加工適性の点で、10〜300μmであることが好ましく、さらに好ましくは15〜200μmであり、特に好ましくは20〜100μmである。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお諸特性は以下の方法により測定、評価した。
【0073】
1.150℃における2倍伸長時の長手方向および幅方向の応力(F100MD値、F100TD値)
引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUCT−100)を用いて、長手方向および幅方向に切り出した幅10mmのサンプルフィルムをチャック間長さ50mm(初期試料長)となるようにセットし、温度150℃、湿度65%RHの条件に設定した恒温層中で60秒間の予熱後、引張速度300mm/分で引張試験を行い、2倍伸張時の応力をそれぞれF100MD値、F100TD値とした。測定数(以下、Nとする)は、長手方向、幅方向にそれぞれN=5で行い、その平均値を2倍伸張時の応力とした。
【0074】
なお、フィルムの長手方向や幅方向が分からない場合は、フィルムにおいて最大の屈折率を有する方向を長手方向、それに長手方向に直行する方向を幅方向とみなす。また、フィルムにおける最大の屈折率の方向は、フィルムの全ての方向の屈折率をアッベ屈折率計で測定して求めてもよく、例えば、位相差測定装置(複屈折測定装置)などにより遅相軸方向を決定することで求めてもよい。
【0075】
2.静摩擦係数
ASTM D1894B(1963)に従い、スリップテスターを用いて、静止摩擦係数を測定した。
【0076】
3.RSm、RSk、2倍伸長時のRSk
菱化システム社製、非接触表面・層断面形状計測システム、VertScan2.0を用いて測定した。測定条件は下記のとおり。5サンプルについて測定を実施し、その平均値をRSm、RSkとする。
測定長さ(Lr:基準長さ):1252μm
レンズ:10倍
2倍伸長時のRSkについては、引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUCT−100)を用いて、長手方向および幅方向に切り出した幅10mmのサンプルフィルムをチャック間長さ50mm(初期試料長)となるようにセットし、温度150℃、湿度65%RHの条件に設定した恒温層中で60秒間の予熱後、引張速度300mm/分で引張し、2倍に伸張したサンプルを未延伸サンプルのRSkの測定方法と同様にして測定を行った。長手方向に切り出したサンプルフィルムを2倍に伸長したサンプル、幅方向に切り出したサンプルフィルムを2倍に伸長したサンプルについて、それぞれ5サンプルについてRSkの測定を実施し、10サンプルの平均値を2倍伸長時のRSkとした。
【0077】
4.成形性、離型性、耐熱性
離型層に、順にトップコート層、インキ層、接着層をコーティングし、転写箔を作成した。トップコート層として、紫外線硬化型アクリル系樹脂(BASFジャパン(株)製“LAROMER”(登録商標) LR8983)(厚み60μm)、インキ層として、ポリウレタン系樹脂グラビアインキ(大日精化工業(株)製“ハイラミック”、主要溶剤:トルエン/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール、インキ:723B黄/701R白)(厚み70μm)を形成し、さらに、接着層として、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合樹脂フィルム(オカモト(株)製ABSフィルム“ハイフレックス”、厚み100μm)を塗布した。インキ層を硬化させるために40℃で72時間エージングを行った。次に、直径50mm、絞り比(深さ/底面直径)が0.2の円筒型の金型にセットして120℃で減圧成形を行い、ABS樹脂(東レ(株)製、ABS樹脂“トヨラック”(登録商標) 930)を用い、射出成形して、円筒型成形物を作成した。
【0078】
(1)成形性
S:円筒型成形物底側のコーナーがシャープに成形されている。
A:円筒型成形物底側のコーナーが丸みを帯びているが、成形されている。
B:成形されているが、白化している部分がある。
C:成形できていない。
A以上を合格とした。
【0079】
(2)離型性
さらに、転写箔を貼り付けたままトップコート層を紫外線硬化させるため波長365nmの紫外線を2000mJ/cm照射した後、外表面の成形転写用積層フィルムを剥離し、外表面からインキ層が見えるABS樹脂製箱型成形物を作成した。これを各水準につき10個作成し、評価に用いた。
S:10個全て問題なく剥離できた。
A:やや抵抗はあったが、10個全て剥離できた。
B:紫外線硬化前に剥がれてしまものがあった。
C:剥がれないものがあった。
A以上を合格とした。
【0080】
(3)耐熱性
S:転写箔、成形体ともに樹脂流れの跡が見られない。
A:転写箔にわずかに樹脂うち込み跡が見られるが、成形体には見られない。
B:成形体にわずかな樹脂流れの跡が見られる。
C:成形体に明らかな樹脂流れの跡が見られる。
A以上を合格とした。
【0081】
5.離型層中のメラミン樹脂含有量
離型層を構成する樹脂0.1gをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いてメラミン骨格から構成される樹脂の含有量を定量した。また、必要に応じてGPC(東ソー社製 HLC−8020)による分取操作を行い構成ポリマーを単離したのち、H−NMRおよび13C−NMR測定を行うことによりメラミン樹脂の含有量を特定した。
【0082】
6.フィルム厚み
打点式フィルム厚み計(Anritsu、K402B)を用い、フィルム幅方向の任意の場所50箇所、フィルム幅の中心付近の長手方向で任意の場所50箇所について厚みを測定し、全100箇所の数平均値をフィルム厚みとした。
【0083】
7.離型層厚み
離型層の厚みは、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を3000〜200000倍に拡大観察し、断面写真を撮影し、当該断面写真より離型層の厚みを測定した。なお、層構成を明確にするためにRuO染色法にて染色を行い、異なる樹脂層同士の染め分けを行った。なお、本発明のフィルムについては、フィルム表面の1平米当たりの塗布体積A(cm/m)を樹脂の比重を1g/cmとして塗剤の固形分濃度から算出し、このAを塗布厚み(μm)とした。
【0084】
(ポリエステルチップα)
テレフタル酸ジメチル100質量部、およびエチレングリコール70質量部の混合物に、0.09質量部の酢酸マグネシウムと0.03質量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行った。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020質量部のリン酸85質量%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行した。重合釜内で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で重縮合反応を行い、固有粘度0.65,副生したジエチレングリコール成分が、樹脂中のグリコール成分に対して、2モル%共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0085】
(ポリエステルチップβ)
1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が、ポリエチレンテレフタレートのグリコール成分に対して、33モル%共重合された共重合ポリエステルを使用した。
【0086】
(粒子マスターM)
上記ポリエステルチップαを製造する際、エステル交換反応後に平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、ポリマー中の粒子濃度2質量%の粒子マスターを作製した。
【0087】
(離型層形成用溶液)
以下に示す、架橋剤:バインダー樹脂:離型剤:粒子をそれぞれ表に記載の質量比で混合し、固形分が1%の質量比となるように純水で希釈して調整した。
・架橋剤I:メチル化メラミン/尿素共重合の架橋製樹脂((株)三和ケミカル製“ニカラック” (登録商標)「MW12LF」)
・架橋剤II:ブチル化メラミン/尿素共重合の架橋製樹脂(大日本インキ化学工業製“ベッカミン”(登録商標):「J101」)
・バインダー樹脂I:アクリルモノマー共重合体(日本カーバイド製)
・バインダー樹脂II:テレフタル酸25モル%、イソフタル酸24モル%、5−Naスルホイソフタル酸1モル%、エチレングリコール25モル%、ネオペンチルグリコール25モル%の混合重合物を25質量%に水で希釈した分散体。
・離型剤I:4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た粉末を8.6質量%となるように水で希釈した分散体。
・離型剤II:攪拌機、温度計、温度コントローラーを備えた内容量1.5Lの乳化設備に融点105℃、酸価16mgKOH/g、密度0.93g/mL、平均分子量5000の酸化ポリエチレンワックス300g、イオン交換水650gとデカグリセリンモノオレエート界面活性剤を50g、48%水酸化カリウム水溶液10gを加え窒素で置換後、密封し150℃で1時間高速攪拌した後130℃に冷却し、高圧ホモジナイザーを400気圧下で通過させ40℃に冷却し得られたワックスエマルション。
・離型剤III: ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF(CFCHCHOCOCH=CH(n=5〜11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C1633N(CHCl1.0gおよびC17O(CHCHO)H(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて得られた共重合体エマルション。
・粒子:数平均粒子径170nmのシリカ粒子(日産化学工業(株)製“スノーテックス”(登録商標)MP2040)を固形分濃度が40重量%となるように純水で希釈して得られた水分散体。
【0088】
(実施例1)
基材フィルムは3層積層フィルム(B層/A層/B層)とした。
ポリエステルチップα、ポリエステルチップβと粒子マスターMを真空乾燥機にてそれぞれ180℃4時間乾燥し水分を十分に除去した。その後、A層がポリエステルチップα:ポリエステルチップβ=60:40の質量比になるように、B層がポリエステルチップα:ポリエステルチップβ:粒子マスターM=88:10:2の質量比で原料をブレンドした。それぞれ別の単軸押出機に供給し、275℃で溶融し、別々の経路でフィルター、ギヤポンプを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った。その後、Tダイの上部に設置したフィードブロック内にてB層/A層/B層の厚み比が1/8/1になるように積層し、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、予熱温度を90℃、延伸温度を95℃で長手方向に3.3倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却した。その後、コロナ放電処理を施し、表に示した組成の離型層形成用溶液(水分散体)をメタリングバーを用いてウェット厚みが13.5μmとなるように塗布した。次いでテンター式横延伸機にて予熱前半温度(横延伸予熱温度1)100℃、予熱後半温度(横延伸予熱温度2)130℃、延伸温度150℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度230℃で8間の熱処理を行い、フィルム厚み50μmの離型フィルムを得た。
【0089】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが67μmであり、高い剥離安定性と耐熱性を示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0090】
(実施例2)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0091】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが68μmであり、高い剥離安定性と耐熱性を示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0092】
(実施例3)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0093】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが75μmであり、メラミン樹脂濃度を高めたことに起因した高い耐熱性を示したが、2倍伸長時のRSkが0.61と低下した。しかしながら、該フィルムは離型フィルムとしては十分な特性を有していた。
【0094】
(実施例4)
製膜条件を表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0095】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが50μmであり、熱処理温度を低くしたことに起因した耐熱性の低下、およびRSkの低下が見られたが、離型フィルムとしては十分な特性を示した。また、該離型フィルムは成形性にも優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0096】
(実施例5)
製膜条件を表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0097】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが70μmであり、熱処理温度を高くしたことにより高い耐熱性を示した。また、該離型フィルムは成形性にも優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0098】
(実施例6)
離型層の厚みを表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0099】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが75μmであり、離型層の厚みを低下させたことによる耐熱性の低下が見られたが、離型フィルムとしては十分な特性を示していた。また、該離型フィルムは成形性にも優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0100】
(実施例7)
離型層の厚みを表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0101】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが77μmであり、離型層の厚みを大きくしたことに起因した高い耐熱性を示した。また、該離型フィルムは成形性にも優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0102】
(実施例8)
離型層の厚みを表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0103】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが73μmであり、高い剥離安定性と耐熱性を示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0104】
(実施例9)
製膜条件を表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0105】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが50μmであり、熱処理時間を長くしたことによる脆化が確認された。しかしながら、該フィルムは離型性、耐熱性に優れ、また、高い成形性を示すことから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0106】
(実施例10)
製膜条件を表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0107】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが55μmであり、熱処理時間を長くしたことによる白化が確認された。しかしながら、該フィルムは離型性、耐熱性に優れ、また、高い成形性を示すことから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0108】
(実施例11)
製膜条件を表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0109】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが52μmであり、耐熱性と離型性に優れ、離型フィルムとして好適な特性を有していた。しかしながら、熱処理時間を短くしたことに起因する成形応力の上昇が確認された。
【0110】
(実施例12)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0111】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが52μmであり、耐熱性と離型性に優れ、離型フィルムとして好適な特性を有していた。しかしながら、離型層への粒子添加に起因したRSk、および2倍伸長時のRSkの低下により、成形延伸後の離型性が低下した。
【0112】
(実施例13)
基材フィルムと離型層形成用溶液中の固形分の組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0113】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが66μmであり、耐熱性と離型性に優れ、離型フィルムとして好適な特性を有していた。しかしながら、離型層への粒子添加に起因したRSk、および2倍伸長時のRSkの低下により、成形延伸後の離型性がやや低下したが離型フィルムとして有用なフィルムであった。
【0114】
(実施例14)
基材フィルムの組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0115】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが72μmであり、高い剥離安定性と耐熱性を示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0116】
(実施例15)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0117】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが68μmであり、高い剥離安定性示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0118】
(実施例16)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0119】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが54μmであり、高い剥離安定性示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0120】
(実施例17)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0121】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが45μmであり、高い剥離安定性示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0122】
(実施例18)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0123】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが45μmであり、高い剥離安定性示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0124】
(実施例19)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0125】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが73μmであり、バインダーポリマーの高いガラス転移温度に起因した高い耐熱性を示した。また、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。
【0126】
(実施例20)
基材フィルムの組成を表2のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0127】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが78μmであり、離型フィルムとして十分な特性を有していた。
【0128】
(実施例21)
基材フィルムを単層フィルム(A層のみの構成)とした。
【0129】
ポリエステルチップαと粒子マスターMを真空乾燥機にてそれぞれ180℃4時間乾燥し、水分を十分に除去した。その後、A層はポリエステルチップα:粒子マスターM=50:50の質量比でブレンドした。このブレンド原料を単軸押出機に供給し、275℃で溶融し、フィルター、ギヤポンプを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。その後は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0130】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが44μmであり、高い離型性と耐熱性を示し、離型フィルムとして十分な特性を有していた。しかしながら、成形応力が高いため、深い形状の型へ成形同時転写する用途にはやや不向きであった。
【0131】
(比較例1)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表3のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0132】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが72μmであるが、離型層のメラミン樹脂濃度が低いため、耐熱性が十分でなく、耐熱性の求められる離型フィルム用途には不向きであった。
【0133】
(比較例2)
離型層形成用溶液中の固形分の組成を表3のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0134】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが77μmであるが、離型層のメラミン樹脂濃度が低いため、耐熱性、および離型性が十分でなく、耐熱性の求められる離型フィルム用途には不向きであった。
【0135】
(比較例3)
製膜条件を表3のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0136】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが130μmと大きく、耐熱性、および離型性が不十分であり、耐熱性の求められる離型フィルム用途には不向きであった。
【0137】
(比較例4)
製膜条件を表3のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0138】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが112μmと大きく、耐熱性の求められる離型フィルム用途には不向きであった。
【0139】
(比較例5)
製膜条件を表3のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0140】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが91μmと大きく、離型性が不十分であり、離型フィルム用途には不向きであった。
【0141】
(比較例6)
離型層の厚みを表3のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0142】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが108μmと大きく、離型性が不十分であり、離型フィルム用途には不向きであった。
【0143】
(比較例7)
離型層の厚みを表3のとおりにした以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0144】
この離型フィルムは、離型層表面のRSmが78μmであり、離型層の厚みが0.012μmと小さいことから離型性にばらつきが生じ、離型フィルム用途には不向きであった。
【0145】
(比較例8)
基材フィルムを3層積層フィルム(B層/A層/B層)とした。
ポリエステルチップα、ポリエステルチップβと粒子マスターMを真空乾燥機にてそれぞれ180℃4時間乾燥し、水分を十分に除去した後、A層はポリエステルチップα:ポリエステルチップβ=60:40の質量比になるように、B層はポリエステルチップα:ポリエステルチップβ:粒子マスターM=88:10:2の質量比でブレンドしてそれぞれ別の単軸押出機に供給し、275℃で溶融し、別々の経路でフィルター、ギヤポンプを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイの上部に設置したフィードブロック内にてB層/A層/B層の厚み比が1/8/1になるように積層した後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度80℃、延伸温度90℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度230℃で5秒間の熱処理を行い、基材フィルムとしてフィルム厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
この基材フィルムのドラム面に対して、表3に示した離型層組成物をグラビアコート法にて塗布し、オーブンにて180℃で20秒間乾燥し、離型フィルムを得た。この離型フィルムのRSmは144μmと大きく、耐熱性、離型性ともに不十分であり、また、平面性が大きく悪化していることから、離型フィルム用途には不向きであった。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
表中の略称は下記のとおり。
α:ポリエステルチップα
β:ポリエステルチップβ
M:粒子マスターM
バインダーI:バインダー樹脂I
バインダーII:バインダー樹脂II
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の離型フィルムは、離型層の耐熱性が高いため、成型同時転写用途や熱プレス工程のような高温の加工が必要となる用途に適している。また、離型フィルムを延伸した後も、安定した剥離力と耐熱性を示すことから、成型同時転写用途に用いた場合、より深い形状の成型同時転写が可能となる。
【符号の説明】
【0151】
1:粗さ曲線
図1