(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、
図1〜
図6を参照して、燃料電池のガス流路形成部材及び燃料電池を具体化した第1実施形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、固体高分子型の燃料電池は、複数のセル10が積層されることによって構成されている。なお、
図1において、最も上に位置するセル10では後述する水流路33,133が示される位置で切断された断面形状が示される一方、最も下に位置するセル10では後述するガス流路32,132が示される位置で切断された断面形状が示されている。
【0015】
セル10は、いずれも矩形枠状をなす第1フレーム11及び第2フレーム12を備えており、これらフレーム11、12の内部には膜電極接合体15が設けられている。この膜電極接合体15の外周縁が第1フレーム11と第2フレーム12とによって挟持されている。
【0016】
各セル10のフレーム11、12及びセパレータ23、24には、図示しない燃料ガス供給源からの燃料ガスをガス流路32へ供給するための供給通路R1と、発電に供されなかった燃料ガスを外部に排出するための排出通路R2が形成されている。
【0017】
また、各セル10のフレーム11、12及びセパレータ23、24には、図示しない酸化剤ガス供給源からの酸化剤ガスをガス流路32へ供給するための供給通路M1と、発電に供されなかった酸化剤ガスを外部に排出するための排出通路M2が形成されている。
【0018】
膜電極接合体15のカソード側(同図の下側)の面には、酸化剤ガスが流通する第1ガス流路形成部材31が設けられている。また、膜電極接合体15のアノード側(同図の上側)の面には、燃料ガス(水素ガス)が流通する第2ガス流路形成部材131が設けられている。
【0019】
第1ガス流路形成部材31における膜電極接合体15とは反対側(同図の下側)には、金属板材からなる平板状の第1セパレータ23が設けられている。また、第2ガス流路形成部材131における膜電極接合体15とは反対側(同図の上側)には、金属板材からなる平板状の第2セパレータ24が設けられている。従って、ガス流路形成部材31、131はそれぞれ膜電極接合体15とセパレータ23、24との間に介設されている。
【0020】
膜電極接合体15は固体高分子電解質膜16を有しており、同固体高分子電解質膜16はそれぞれ第1電極触媒層17及び第2電極触媒層18によってカソード側及びアノード側から挟持されている。また、第1電極触媒層17の表面には第1ガス拡散層19が設けられており、第2電極触媒層18の表面には第2ガス拡散層20が設けられている。
【0021】
次に、ガス流路形成部材31、131の構造について説明する。なお、本実施形態では第1ガス流路形成部材31と第2ガス流路形成部材131とは互いに同一な構成とされている。このため、以降においては、第1ガス流路形成部材31の構成について説明し、第2ガス流路形成部材131の構成については第1ガス流路形成部材31の各部の符号にそれぞれ「100」を加算した符号「13*」を付すことによって重複する説明を省略する。また、第1ガス流路形成部材31及び第1セパレータ23をそれぞれ単にガス流路形成部材31及びセパレータ23と略称する。
【0022】
図2に示すように、ガス流路形成部材31は全体として断面略波形状をなしており、一枚の金属板材をプレス成形することによって形成されている。このため、ガス流路形成部材31における膜電極接合体15に対向する側(同図における上側)には、膜電極接合体15に当接する複数の内側突条31aが列設されており、互いに隣接する内側突条31aの間には酸化剤ガスが流通するガス流路32が形成されている。また、ガス流路形成部材31におけるセパレータ23に対向する側(同図における下面)には、第1セパレータ23に当接する複数の外側突条31bが列設されており、互いに隣接する外側突条31bの間には膜電極接合体15において生成された水(以下、生成水と称する)を排出する水流路33が形成されている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、ガス流路形成部材31には、各突条31a,31bの延設方向Lに対して直交する方向に沿って延びる複数のリブ37が形成されている。リブ37は、各突条31a,31bの一部を剪断曲げ加工することによって形成されている。
【0024】
図3(a)、(b)に示すように、ガス流路形成部材31には、リブ37を打ち抜くことによって連通路36、38が形成されている。すなわち、リブ37は、水流路33内に位置する外側部37aと、ガス流路32内に位置する内側部37bとを有している。
【0025】
図1及び
図3(b)に示すように、外側突条31bにおけるリブ37の内側部37bの直下には、互いに隣接する水流路33を連通する外側連通路38が形成されている。また、内側突条31aにおけるリブ37の外側部37aの直上には、ガス流路32と水流路33とを連通する内側連通路36が形成されている。
【0026】
図2及び
図3(a)、(b)に示すように、リブ37は、ガス流路形成部材31の厚さ方向(
図3(a)、(b)の上下方向)において内側突条31aの頂部よりも外側突条31bの頂部に近接して形成されている。このため、
図3(a)、(b)に示すように、外側部37aの流路断面積は内側部37bの流路断面積よりも大きい。従って、それぞれリブ37が存在しない位置でのガス流路32と水流路33とが互いに同一な流路断面積とされていても、水流路33全体における圧力損失は、ガス流路32全体における圧力損失よりも大きくなる。よって、酸化剤ガスは主に圧力損失の小さいガス流路32を流れることとなる。
【0027】
また、内側連通路36の形状及び大きさは、同連通路36における圧力損失がガス流路32における圧力損失よりも大きくなるように設定されている。
図2に示すように、上記延設方向Lにおいて互いに隣接する内側連通路36(リブ37の外側部37a)の間隔は、互いに隣接するリブ37の内側部37b(外側連通路38)の間隔の2倍とされている。また、上記延設方向L及び同延設方向Lに直交する方向において、リブ37の内側連通路36(外側部37a)はリブ37の内側部37b(外側連通路38)に対して一つおきに形成されている。
【0028】
図2、
図3及び
図4(a)に示すように、ガス流路形成部材31における水流路33の出口開口33aを含む出口部34の流路断面積S2は、水流路33の出口部34における酸化剤ガスの流れ方向の上流側に隣接する上流部35の流路断面積S1に比べて大きくされている。
図2に示すように、この出口部34は、各内側突条31aにおける最も下流側に位置する内側連通路36から出口開口33aまでの部位全体に形成されている。従って、水流路33の出口部34の流路断面積S2は上流部35に対してステップ状に大きくされている。
【0029】
図5(a)に示すように、ガス流路形成部材31における水流路33の出口開口33aの縁部は面取りされている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0030】
図1の下側に示すように、燃料ガスが供給通路R1を通じてガス流路132内に供給されると、同燃料ガスはガス流路132を通じて第2ガス拡散層20に流入する。そして、燃料ガスは第2ガス拡散層20を通過する際に拡散されて第2電極触媒層18に供給される。
【0031】
また、供給通路M1を通じて酸化剤ガスがガス流路32内に供給されると、同酸化剤ガスは第1ガス拡散層19を通過する際に拡散されて第1電極触媒層17に供給される。
このようにして膜電極接合体15に対して燃料ガスと酸化剤ガスとが供給されると、同膜電極接合体15での電極反応によって発電が行なわれる。このとき、発電に伴って生成した生成水はカソード側の第1ガス流路形成部材31のガス流路32に流入する。
【0032】
図6(a)、(b)に示すように、この生成水の一部は、ガス流路32を流れる酸化剤ガスの流動圧力によって同ガス流路32内を流れる。そして、生成水は排出通路M2を通じて外部に排出される。前述したように、内側連通路36における圧力損失はガス流路32における圧力損失よりも大きくされている。このため、
図6(b)に示すように、酸化剤ガスは主にガス流路32を流れることとなる。このため、ガス流路32に存在する生成水Wの多くは酸化剤ガスによって押されながら排出通路M2に向けてガス流路32内を移動する。また、一部の生成水は内側連通路36を通じて水流路33に流入する。そして、水流路33に存在する生成水は同水流路33を流れる酸化剤ガスによって押されながら排出通路M2に向けて同水流路33内を移動する。
【0033】
図4(b)に、比較例の第1ガス流路形成部材における水流路の出口部の端面構造を示す。同図に示すように、比較例の第1ガス流路形成部材431における水流路433の流路断面積は同水流路433の延設方向の全体にわたって同一とされており、比較例の出口開口433aの流路断面積は本実施形態の上流部35の流路断面積S1と同一とされている。
【0034】
水流路33の出口開口33aにおける生成水の液滴の大きさは同出口開口33aの流路断面積に応じて大きくなる。
本実施形態の第1ガス流路形成部材31では、水流路33の出口部34の流路断面積S2が上流部35の流路断面積S1に比べて大きくされている。このため、
図4(a)、(b)に二点鎖線にて示すように、比較例の構成に比べて、出口開口33aにおける生成水の液滴の大きさが大きくなる。
【0035】
更に、
図5(a)に示すように、本実施形態の第1ガス流路形成部材31では、水流路33の出口開口33aの縁部が面取りされている。このため、同図に二点鎖線にて示すように、水流路533の出口開口533aの縁部が面取りされていない比較例の第1ガス流路形成部材531(
図5(b))に比べて、水流路33の出口開口33aにおける生成水の液滴の大きさが大きくなる。
【0036】
これらのことから、生成水の液滴の表面張力、すなわち、当該液滴と水流路33の出口開口33aの縁部との間に働く凝着力が低減される。従って、水流路33の出口開口33aを通じて液滴を押し出すために必要な圧力が小さくなり、より低い流量、より流動圧力の低い酸化剤ガスであっても水流路33を通じて生成水を外部に排出することができる。
【0037】
なお、発電に伴って生成された生成水の一部は第2電極触媒層18、第2ガス拡散層20を通じてアノード側の第2ガス流路形成部材131のガス流路132に流入する。本実施形態では、第2ガス流路形成部材131が第1ガス流路形成部材31と同一な構成とされている。このため、アノード側のガス流路132及び水流路133においてもカソード側のガス流路32及び水流路33と同様な作用が奏される。
【0038】
以上説明した本実施形態に係る燃料電池のガス流路形成部材及び燃料電池によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)ガス流路形成部材31は、膜電極接合体15に対向する面に列設されて酸化剤ガスが流通する複数のガス流路32と、セパレータ23に対向する面において互いに隣接するガス流路32の間に形成されて生成水を排出する水流路33と、ガス流路32と水流路33とを連通する内側連通路36と、を備えている。水流路33の出口開口33aを含む出口部34の流路断面積S2は、水流路33の出口部34における酸化剤ガスの流れ方向の上流側に隣接する上流部35の流路断面積S1に比べて大きくされている。
【0039】
こうした構成によれば、水流路33の出口開口33aを通じて液滴を押し出すために必要な圧力が小さくなり、より低い流量、より流動圧力の低い酸化剤ガスであっても水流路33を通じて生成水を外部に排出することができる。また、水流路33の上流部35は、出口部34とは異なり、流路断面積が大きくされていないため、ガス流路32におけるガスの圧力損失の増大を抑制することができる。従って、生成水の排出性能を高めることができるとともに、ガス流路32におけるガスの圧力損失の増大を抑制することができる。よって、ガス流路32へ生成水が溢れることを抑制することができ、燃料ガス及び酸化剤ガスの拡散を促進することができ、電池性能を向上させることができる。
【0040】
(2)水流路33の出口開口33aの縁部が面取りされているため、面取りされていないものに比べて更に水流路33の出口開口33aにおける生成水の液滴の大きさが大きくなる。このため、生成水の液滴と水流路33の出口開口33aの縁部との間に働く凝着力を一層低減することができ、より低い流量、より低い圧力損失のガスであっても生成水を排出することができる。
【0041】
<第2実施形態>
以下、
図7〜
図9を参照して、第2実施形態について説明する。
本実施形態では、ガス流路形成部材の構成が第1実施形態と相違している。以下、相違点について説明する。なお、
図7〜
図9において、第1実施形態の構成と同一の構成については同一の符号を付し、第1実施形態の構成と対応する構成についてはそれぞれ「200」を加算した符号「2**」、「3**」を付すことによって重複する説明を省略する。
【0042】
本実施形態においても第1ガス流路形成部材231と第2ガス流路形成部材331とは互いに同一な構成とされている。このため、以降においては、第1ガス流路形成部材231の構成について説明し、第2ガス流路形成部材331の構成については第1ガス流路形成部材231の各部の符号にそれぞれ「100」を加算した符号「33*」、「34*」を付すことによって重複する説明を省略する。また、第1ガス流路形成部材231及び第1セパレータ23をそれぞれ単にガス流路形成部材231及びセパレータ23と略称する。
【0043】
図7及び
図8に示すように、第1ガス流路形成部材231は金属板材を剪断曲げ加工することによって形成されており、平板状の基部231aに、膜電極接合体15に向けてそれぞれ突出する複数の第1突部236及び複数の第2突部238が形成されている。
【0044】
図8に示すように、第2突部238は、図示しない供給通路M1から排出通路M2に向かう酸化剤ガスの流れ方向(以下、ガス流れ方向Pと称する。)に沿って所定間隔毎に形成されている。また、第2突部238の列は、ガス流れ方向Pに直交する方向(以下、直交方向Q)に沿って所定間隔毎に形成されている。第2突部238は、直交方向Qにおいて隣接する第2突部238に対してガス流れ方向Pにおいて半ピッチずらして配置されている。
【0045】
第1突部236は、直交方向Qにおいて互いに隣接する第2突部238の間の間隙に同直交方向Qに沿って2つ形成されている。また、第1突部236は、直交方向Qにおいて隣接する第1突部236に対してガス流れ方向Pにおいて半ピッチずらして配置されている。
【0046】
図7に示すように、第1突部236及び第2突部238は膜電極接合体15に当接しており、基部231aと膜電極接合体15との間に酸化剤ガスが流通する複数のガス流路232が形成されている。
【0047】
図8に示すように、このガス流路232は、ガス流れ方向Pに沿って延びる主流路h1と、直交方向Qにおいて互いに隣接する主流路h1同士を連通する副流路h2とによって構成されている。
【0048】
図7〜
図9に示すように、第1ガス流路形成部材231における第1セパレータ23に対向する側には複数の突起240が形成されている。突起240は、ガス流れ方向Pにおいて第1突部236及び第2突部238の上流側の端にそれぞれ形成されている。
【0049】
突起240は第1セパレータ23に当接しており、基部231aと第1セパレータ23との間には水流路233が形成されている。基部231aと第1セパレータ23との間の間隔は約数十μmとされている。
【0050】
図8に示すように、第1突部236及び第2突部238の両側面にはそれぞれ連通孔237、239が形成されており、これら連通孔237、239を通じてガス流路232と水流路233とが連通されている。
【0051】
本実施形態では、
図9に示すように、ガス流れ方向Pにおいて水流路233の出口開口233aに近接した突起240aの高さが、同出口開口233aから離間した突起240bの高さよりも高くされている。このため、水流路233の流路断面積はガス流れ方向Pにおいて下流側(同図の左側)ほど大きくされている。従って、水流路233における出口開口233aを含む出口部234の流路断面積が、同水流路233における出口部234の上流側に位置する上流部235の流路断面積に比べて大きくされている。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る燃料電池のガス流路形成部材及び燃料電池によれば、第1実施形態の効果(1)に準じた効果が得られるようになる。
なお、本発明に係る燃料電池のガス流路形成部材及び燃料電池は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0053】
・上記第1実施形態では、水流路33の出口部34の流路断面積S2が上流部35に対してステップ状に大きくされたものについて例示したが、水流路の出口開口を含む部分の流路断面積が同出口開口に向けて徐々に大きくされたものとすることもできる。
【0054】
・上記各実施形態では、膜電極接合体15の両側にガス流路形成部材31、131(231、331)を設けるようにしたが、これに代えて、膜電極接合体15の片側のみに本発明に係るガス流路形成部材を設けるようにしてもよい。