(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を伴って説明する。
図1は本発明に係る電磁接触器の第1の実施形態を示す斜視図、
図2は外装ケースを取り外した状態の斜視図、
図3は
図1のA−A線上の断面図である。
図中、10は電磁接触器であり、この電磁接触器10は
図2に示すように接点機構を配置した接点装置100と、この接点装置100を駆動する電磁石ユニット200とが一体化された電磁接触器本体300と、この電磁接触器本体300を覆う外装ケース400とで構成されている。
【0013】
電磁接触器本体300を構成する接点装置100の具体的構成は、
図3に示すように、下端面を開放した接点収納ケース101を有する。この接点収納ケース101は、上下端面を開放した金属製の角筒体102と、この角筒体102の上端面を閉塞する例えばセラミックス製の天板103と、角筒体102の内周面に配設された上端を開放した有底角筒体104とで構成されている。
【0014】
接点収納ケース101内には接点機構105が収納されている。この接点機構105は、左右一対の固定接触子106aおよび106bと、これら固定接触子106aおよび106bの接点に接離可能に配置された可動接触子120とを備えている。
左右一対の固定接触子106aおよび106bのそれぞれは、所定間隔を保って左右対象に配置された断面U字状に形成された接点部107aおよび107bと、これら接点部107aおよび107bの上端に接合された外部接続端子108aおよび108bとで構成されている。接点部107aの下板部を除く側板部および上板部の内周面が絶縁カバー109aおよび109bで覆われている。
【0015】
可動接触子120は、後述する電磁石ユニット200の可動プランジャ215に固定された連結軸131に支持された接点板部121を有し、この接点板部121の左右端部が固定接触子106aおよび106bの接点部107aおよび107bの上板部および下板部間に挿入されている。連結軸131は、上端に外方に突出するフランジ部131aが形成されている。この連結軸131に下端側から接触スプリング132を挿通し、次いで可動接触子120の貫通孔133を挿通して、接触スプリング132の上端をフランジ部131aに当接させこの接触スプリング132で所定の付勢力を得るように可動接触子120を例えばCリング134によって位置決めする。
【0016】
この可動接触子120は、釈放状態で、両端の接点部120aと固定接触子106aおよび106bの接点部107aおよび107bとが所定間隔を保って離間した状態となる。また、可動接触子120は、投入位置で、両端下面に形成された接点部120aが固定接触子106a及び106bの接点部107aおよび107bの下板部118にある接点110aに、接触スプリング132による所定の接触圧で接触するように設定されている。
【0017】
電磁石ユニット200は、
図3に示すように、側面から見て扁平なU字形状の磁気ヨーク201を有し、この磁気ヨーク201の底板部201aの中央部に円筒状補助ヨーク203が固定されている。この円筒状補助ヨーク203の外側にスプール204が配置されている。
このスプール204は、円筒状補助ヨーク203を挿通する中央円筒部205と、この中央円筒部205の下端部から半径方向外方に突出する下フランジ部206と、中央円筒部205の上端から半径方向外方に突出する上フランジ部207とで構成されている。そして、中央円筒部205、下フランジ部206及び上フランジ部207で構成される収納空間に励磁コイル208が巻装されている。
【0018】
そして、磁気ヨーク201の開放端となる上端間に上部磁気ヨーク210が固定されている。この上部磁気ヨーク210は、中央部にスプール204の中央円筒部205に対向する貫通孔210aが形成されている。
また、スプール204の中央円筒部205内に、底部と後述するキャップの底部との間に復帰スプリング214を配設した可動プランジャ215が上下に摺動可能に配設されている。この可動プランジャ215には、上部磁気ヨーク210から上方に突出する上端部に半径方向外方に突出する周鍔部216が形成されている。
【0019】
さらに、上部磁気ヨーク210の上面に、例えば外形が方形で円形の貫通孔220aを有して環状に形成された永久磁石220が可動プランジャ215の周鍔部216を囲むように固定されている。この永久磁石220は上下方向すなわち厚み方向に上端側を例えばN極とし、下端側をS極とするように着磁されている。
そして、永久磁石220の上端面に、永久磁石220と同一外形で可動プランジャ215の周鍔部216の外径より小さい内径の貫通孔224を有する補助ヨーク225が固定されている。この補助ヨーク225の下面に可動プランジャ215の周鍔部216が当接されている。
【0020】
なお、永久磁石220の形状は上記に限定されるものではなく、円環状に形成することもでき、要は内周面が周鍔部216の形状に合わせた形状であれば外形は円形、多角形等の任意形状とすることができる。
また、可動プランジャ215の上端面には上述した可動接触子120を支持する連結軸131が螺着されている。
そして、可動プランジャ215が非磁性体製で有底筒状に形成されたキャップ230で覆われ、このキャップ230の開放端に半径方向外方に延長して形成されたフランジ部231が上部磁気ヨーク210の下面にシール接合されている。また、接点収納ケース101の角筒体102の底面が上部磁気ヨーク210の上面にシール接合されている。
【0021】
これによって、接点装置100と電磁石ユニット200とが一体化されているとともに、接点収納ケース101及びキャップ230が上部磁気ヨーク210の貫通孔210aを介して連通される気密室240が形成されている。そして、接点収納ケース101及びキャップ230で形成される気密室240内に水素ガス、窒素ガス、水素及び窒素の混合ガス、空気、SF
6等のガスが封入されている。
【0022】
また、磁気ヨーク201は、底板部201aと、この底板部201aの前後端部から上方に直角に折り曲げられた側板部201bおよび201cとで扁平なU状に形成されている。側板部201bおよび201cは、
図2に示すように、底板部201aに連接する幅狭部201dとこの幅狭部201dの上端に連接する幅狭部201dより幅広に形成された幅広部201eとで構成されている。
【0023】
そして、幅広部201eの左右端面すなわち下部ケース400aの内周面に対向する端面にそれぞれ係止凹部201fが形成されている。この係止凹部201fは、
図2及び
図4に示すように、幅広部201eの下端部に近い位置に形成されている。係止凹部201fは、端面と直角な底辺部201gと、この底辺部201gの内側端から上方に延長する垂直辺部201hとこの垂直辺部201hから斜め上方に端部まで延長する傾斜辺部201iとで構成されている。
【0024】
一方、外装ケース400は、
図2及び
図4に示すように、電磁石ユニット200を収容する上端を開放した下部ケース400aと、この下部ケース400aの上端に装着される上部ケース400bとで構成されている。
下部ケース400aは、上端面を開放した有底角筒状に形成されている。この下部ケース400aには、少なくとも外面の前端面下部に
図1に示すようにネジ挿通孔が下部ケース400aの長手方向に形成された取付用板部401が形成され、内周面には
図4に示すように電磁石ユニット200の磁気ヨーク201の側板部201b及び201cの端面に対向する位置にそれぞれ係止凹部201fに係止される係止凸部402が形成されている。この係止凸部402は係止凹部201fの底辺部201gに係止される内周面から内方に直角に係止凹部201fの底辺部201gよりは短く突出する底辺部402aと、この底辺部402aの突出端から上方に係止凹部201fの垂直辺部201hより短く延長する垂直辺部402bと、この垂直辺部402bの上端から斜め上方に内周面まで延長する傾斜辺部402cとで構成されている。
【0025】
また、下部ケース400aの底板部の上面には電磁石ユニット200の磁気ヨーク201の底板部201aの底面と接触するシート弾性体としての弾性シート403が配置されている。さらに、左右側板部404aおよび404bの上端側における前後端部寄り位置に4つの係合孔405が形成されている。
そして、下部ケース400aの上方側から接点装置100を一体化した電磁石ユニット200を挿入すると、下部ケース400aの内周面に形成された左右一対の係止凸部402の傾斜辺部402cに電磁石ユニット200の磁気ヨーク201における幅広部201eの下端面の角部が当接する。
この状態で、電磁石ユニット200をさらに下方に押し込むと、磁気ヨーク201の幅広部201eの下端面が下方に移動するに従って下部ケース400aの側板部404a及び404bが
図4において矢印Xで示すように外方に撓み、磁気ヨーク201の幅広部201eの下方への移動を許容する。
【0026】
さらに、電磁石ユニット200を下方に押し込むと、磁気ヨーク201の幅広部201eの角部が係止凸部402の垂直辺部402bに接触しながら下降する。その後、弾性シート403を弾性変形させながら、磁気ヨーク201の幅広部201eに形成した係止凹部201fの底辺部201gが係止凸部402の底辺部402aに対向する位置となると、下部ケース400aの外方への弾性変形が解消されて係止凹部201f内に係止凸部402が挿入される係合状態となる。この係合状態で、電磁石ユニット200の下方への押圧を解除すると電磁石ユニット200の磁気ヨーク201における底板部201aが弾性シート403の弾性によって上方に付勢され、係止凹部201fの底辺部201gが係止凸部402の底辺部402aに当接して電磁石ユニット200の上方への移動が停止されて、係止状態となる。この係止状態では、電磁石ユニット200の下部ケース400aからの上方への離脱が確実に阻止される。
【0027】
一方、上部ケース400bは、
図4に示すように、下端面を開放した角筒状に形成され、上板部411aには、接点装置100の外部接続端子108aおよび108bを外部に望ませる貫通孔412が形成され、左右側板部411bおよび411cには前後端部寄り位置にそれぞれ下方に突出する係合板部413が突出形成されている。この係合板部413は、
図4に示すように、下端側の内面に内方に突出するフック部414が形成されている。
【0028】
そして、上部ケース400bを、
図4に示すように、接点装置100を一体化させた電磁石ユニット200を嵌合固定した下部ケース400aに上方から装着する。このとき、接点装置100の外部接続端子108aおよび108bを、貫通孔412を通じて外部に突出させるとともに、係合板部413のフック部414を下部ケース400aの係合孔405に係合させることにより、上部ケース400bを下部ケース400aに固定することができる。
【0029】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、固定接触子106aの接点部107aに接続された外部接続端子108aが例えば大電流を供給する電力供給源に接続され、固定接触子106bの接点部107bに接続された外部接続端子108bが負荷に接続されているものとする。
この状態で、電磁石ユニット200における励磁コイル208が非励磁状態にあって、電磁石ユニット200で可動プランジャ215を下降させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。この釈放状態では、可動プランジャ215が復帰スプリング214によって、上部磁気ヨーク210から離れる上方向に付勢される。これと同時に、永久磁石220の磁力による吸引力が補助ヨーク225に作用されて、可動プランジャ215の周鍔部216が吸引される。このため、可動プランジャ215の周鍔部216の上面が補助ヨーク225の下面に当接している。
【0030】
この釈放状態から、電磁石ユニット200の励磁コイル208を励磁すると、この電磁石ユニット200で励磁力を発生させて、可動プランジャ215を復帰スプリング214の付勢力及び環状永久磁石220の吸引力に抗して下降させる。この可動プランジャ215の下降が、周鍔部216の下面が上部磁気ヨーク210の上面に当接することにより停止される。
このように、可動プランジャ215が下降することにより、可動プランジャ215に連結軸131を介して連結されている可動接触子120も下降し、その接点部120aが固定接触子106a及び106bの接点110aに接触スプリング132の接触圧で接触する。
【0031】
このため、外部電力供給源の大電流が固定接触子106a、可動接触子120、及び固定接触子106bを通じて負荷に供給される閉極状態となる。
この接点機構の閉極状態から、負荷への電流供給を遮断する場合には、電磁石ユニット200の励磁コイル208の励磁を停止する。
これによって、電磁石ユニット200で可動プランジャ215を下方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ215が復帰スプリング214の付勢力によって上昇し、周鍔部216が補助ヨーク225に近づくに従って環状永久磁石220の吸引力が増加する。
【0032】
この可動プランジャ215が上昇することにより、連結軸131を介して連結された可動接触子120が上昇する。これに応じて接触スプリング132で接触圧を与えている間は可動接触子120が固定接触子106a及び106bに接触している。その後、接触スプリング132の接触圧がなくなった時点で可動接触子120が固定接触子106a及び106bから上方に離間する開極状態となる。
【0033】
この開極開始状態となると、固定接触子106a及び106bの接点110aと可動接触子120の接点120aとの間にアークが発生し、このアークによって電流の通電状態が継続される。このとき、固定接触子106a及び106bの接点部107a及び107bの上板部及び側板部を覆う絶縁カバー109a及び109bが装着されているので、アークを固定接触子106a及び106bの接点110aと可動接触子120の接点120aとの間のみに発生させることができる。このため、アークが固定接触子106a及び106bの接点部107a及び107bの上板部及び側板部上を動くことを確実に防止してアークの発生状態を安定させることができ、消弧性能を向上させることができる。しかも、固定接触子106a及び106bの接点部107a及び107bの上板部及び側板部の両側面も絶縁カバー109a及び109bで覆うことにより、アークの先端が短絡することも確実に防止することができる。
アークは固定接触子106a及び106bの接点部107a及び107bの左右両側に引き伸ばされて消弧される。
【0034】
以上が電磁接触器10の動作であるが、電磁接触器10に外部から衝撃力が作用されたり、共振が発生したりして、電磁石ユニット200に対して下部ケース400aから上方に抜け出す力が作用したものとする。
このとき、電磁石ユニット200の磁気ヨーク210の側板部201b及び201cにおける幅広部201eに形成された係止凹部201fに下部ケース400aの内周面に形成された係止凸部402が係止され、係止凹部201fの底辺部201gが係止凸部402の底辺部402aに当接されている。
【0035】
したがって、電磁石ユニット200が下部ユニット400aから上方に離脱することを確実に阻止することができる。
しかも、この電磁石ユニット200の下部ケース400aからの抜け出しを、電磁石ユニット200の磁気ヨーク201に形成した係止凹部201f内に下部ケース400aの内周面に突出形成した係止凸部402を係止させるだけで確実に防止することができる。したがって、抜け出し防止のために新たな部品を追加したり重量増となったりすることがなく、全体を小型且つ軽量化することができる。
【0036】
さらに、下部ケース400aの底面に弾性シート403が配置され、この弾性シート403によって、電磁石ユニット200が上方に付勢させて係止凹部201fの底辺部201gと下部ケース400aの係止凸部402の底辺部402aとが確実に当接して下部ケース400aと電磁石ユニット200との間にガタが生じることなく、下部ケース400aに伝達される振動によって異音を発生することを防止することができる。
【0037】
さらに、下部ケース400aの上端に上部ケース400bを装着したときに、上部ケース400bに形成した係合板部413が下部ケース400aの外側に係合することから、この係合板部413によって、下部ケース400aの外側への撓みが抑制される。このため、下部ケース400aが外側へ撓むことにより、係止凸部402が係止凹部201fから外側に外れることを確実に防止することができる。
【0038】
ちなみに、係止凹部201f及び係止凸部402を設けない場合には、電磁石ユニット200と下部ケース400aとを連結するために、
図5に示すように、電磁石ユニット200と下部ケース400aとの連結部に合成樹脂材や接着剤等の充填材450を充填する必要があり、この充填材450の充填に手間が掛かり、組み立て作業を効率良く行うことができないとともに、重量も増加することになり、小型化・軽量化を図ることができない。
【0039】
しかしながら、本実施形態では、上述したように、電磁石ユニット200に形成した係止凹部201f内に下部ケース400aの係止凸部402に係止させるだけでよく、簡易な構成で電磁石ユニット200と下部ケース400aとを強固に一体化することができる。
なお、上記実施形態においては、下部ケース400aの底面に弾性シート403を配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、
図6に示すように、下部ケース400aの底面に弾性を有し上に凸となる弾性湾曲部460を一体形成するようにしてもよく、要は電磁石ユニット200を上方に付勢可能な弾性体を配置すればよいものである。
【0040】
また、上記実施形態においては、接点装置100及び電磁石ユニット200について一例を説明したに過ぎず、接点装置100及び電磁石ユニット200の内部構成は任意の構成とすることができる。
また、上記実施形態においては、下部ケース400aの前後方向の下部側に取付用板部401が形成されて下部ケースが取付面に対して直角な方向に延長する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ネジ挿通孔が下部ケース400aの長手方向と直行する方向となるように形成するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、電磁石ユニット200に係止凹部201fを形成し、下部ケース400aに係止凸部402を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電磁石ユニット200に係止凸部を形成し、下部ケース400aに係止凹部を形成するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、接点収納ケース101及びキャップ230で気密室240を構成し、この気密室240内にガスを封入する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、遮断する電流が低い場合にはガス封入を省略するようにしてもよい。
【0042】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、外装ケース400を下部ケース400a及び上部ケース400bで分割構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、下部ケース400aと上部ケース400bとを一体化して、上端面又は下端面を開放した角筒状に形成し、上端面又は下端面を閉塞する閉塞板部を設けるようにしてもよい。