(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、紙容器に使用する積層シートは、紙を基材とし、内側面および外側面をヒートシール性に優れたポリオレフィン系樹脂とする構成で、これに、内容物の成分によっては、ガスバリア性を付与する層を加えられていた。例えば、ジュースや酒類では、〔容器外側〕ポリエチレン/紙/ポリエチレン/無機酸化物蒸着層/ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)フィルム/ポリエチレン〔容器内側〕構成のような積層シート5からなる。このような構成は、保香性が必要なものや、酸化し易い内容物を充填する容器として広く使用されている。
通常、このような積層シート5を抜き加工した後、ゲーブルトップ型、いわゆる三角形状の上面を有する四角柱に成形した容器や、フラット型、上面が平らに成形した容器に成形
して用いられる。
紙容器は容量に対して、がさばらないが、内容物を排出した後も同じ体積になっているので、分解して、資源回収をし易くする必要がある。
しかし、紙容器に内容物が収納されている間は、落下強度や座屈強度が必要である。その為に、従来、内面や外面の融着部には融着強度の高い素材を使用し、容易に剥離しにくい強度のある容器だったので、紙容器を分解するには、鋏などで切断するなど、手間が掛かっていた。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1では、外面から順に熱可塑性樹脂層と紙層と接着樹脂層とガスバリアー層と熱可塑性樹脂層が積層された積層体からなり、前面板と後面板と両側面板と頂部形成板と底部形成板からなるゲーベルトップ型紙容器であって、前記紙容器の前記頂部形成板の外面同士が接触するすべての領域及び前記底部形成板の外面同士が接触するすべての領域に部分的に接着強度調整層が形成された構成からなることを特徴とする液体用紙容器を提案している。
しかし、この容器は、部分的に接着調整層が形成された領域の形状、位置が明確にされておらず、単に、四角形等の形状で、接着強度調整層の面積が、前記紙容器の前記底部形成板及び前記頂部形成板の外面同士が接触する領域の面積の10%以上という面積範囲という事しか提示していない。
【0004】
この特許で示すように、折り畳む場合には、無理して剥離するのではないので、大きな力で融着部を剥離するような融着強度は要らず、問題はない。
しかし、剥離して、紙の繊維を再利用する場合には、剥離部を一度に剥離する強度測定をする場合ならばいざしらず、実際にはきっかけを作った一方から他方に向けて剥離するので、大きな融着面積の中央に接着強度調整層のような低い融着強度部分があっても、融着部周囲が同じであれば、剥離を開始するのに大きな変化はなく、剥離しやすくはならない問題がある。
特に大きな2リットルや3リットルなどの清酒用紙容器では、融着強度も大きく、積層シートにも腰があって、このような特許文献1の方法では、剥離にくさについては、効果が出ない問題があった。
【0005】
特許文献2では、板紙層を基材層とし表面層及び裏面層に熱融着層をもつ積層板からなるブランクを折り畳み成形した頂部が切妻屋根形の液体用紙容器において、前記ブランクの左側パネル及び右側パネルのトップシール部の表面の中心より片側部分に剥離ニス塗膜を部分的に形成し、且つ、表パネル及び裏パネルのトップシール部の裏面にイージーピールテープを貼着したことを特徴とする液体用紙容器を提案している。
この剥離ニスとイージーピールテープを使用した場合、融着面に段差が生じ、そのため剥離強度の低下が著しく、落下強度や座屈強度が低下し、多段の積載で破損が発生するなどの問題が発生してくる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の紙容器の実施の形態例について、図を用いて詳細に説明する。
実施形態例に使用される紙容器本体のひとつはゲーベルトップの紙容器で、
図1に示すような、直方体形状の先に山形の屋根がついたようになった容器である。積層シートを使用し、胴部は一側面角部、トップ部と底部は、トップ部の上側面、底側の一側面角部のそれぞれで貼り合わせ、さらに四方のトップ部と底部同士をそれぞれ折り込ませて融着する事で、直方体形状の先に山形の屋根のようになった容器本体3を持つ紙容器になっている。山形形状になったトップ面の表上面部323には口栓取り付け孔2が開いており、口栓取り付け孔部分に注出口栓1を突設した紙容器になっている。
積層シートのトップ面の右上面部、左上面部324は、トップの表上面部323と裏上面部の間に折り込まれて融着されている。
【0022】
実施形態例に使用される紙容器本体の二つ目は、
図2に示すような、フラットトップの紙容器で、直方体形状をしているので、段積みをしても、無駄がなく輸送効率の高い容器である。この紙容器も積層シートを使用し、胴部は一側面角部を合わせるように融着し、同じようにトップ面と底面の側面シール部を合わせるように融着する。
トップ面は、トップ側の右上面部322と左上面部それぞれの内面同志を折り畳んで、表上面部323、裏上面部321の内面同士が合掌するように融着し、右上面部322と左上面部はそれぞれ、右側面部312と左側面部に融着する。
また、底側は、右底面部と左底面部それぞれを折り込んで、表底面部、裏底面部の間に挟みこんで、それぞれで貼り合わせ、さらに四方の底部同士をそれぞれ合わせて融着する事で、直方体形状の容器本体30を持つ紙容器になっている。
トップ面は平らな形状となっており、トップ面の表上面部323には口栓取り付け孔2が開いており、口栓取り付け孔部分に注出口栓1を突設した紙容器になっている。
【0023】
図3−1は、
図1のゲーベルトップ型紙容器のブランクの内面側から見た図で、本発明の第1
参考例として示す紙容器の展開図である。
この容器に使用する積層シート5は、積層シートの製造時に、予め、トップ部接着阻害ニス塗布部81と、ボトム部接着阻害ニス塗布部82を印刷で塗布しておく。
図3−2は、融着範囲を示した図で、トップ部の融着範囲cは、ブランク内面において、裏上面部321、右上面部322、表上面部323、左上面部324の上に位置する帯線上の部分である。また、この帯線上部分に加えて、トップ内側融着範囲c1として、右上面部322、左上面部324のうち、折り込まれる三角形状の部分を除く部分と、それに対応して面を合わせる裏上面部321、表上面部323の左右とを、融着範囲としても良い。
図3−1では、帯線状の部分のトップ部の融着範囲cを融着範囲としている。
また、ボトム部の融着範囲dは、ブランク内面において、裏底面部331、右底面部332、表底面部333、左底面部334の下に位置する帯線状の部分である。また、これに加えて、右底面部332、左底面部334のうち、折り込まれる三角形状の部分を除く部分と、それに対応して面を合わせる裏底面部331、表底面部333の左右とを、融着範囲としても良い。
図3−1では、帯線状の部分に加えて、右底面部332、左底面部334のうち、折り込まれる三角形状の部分を除く部分と、それに対応して面を合わせる裏底面部331、表底面部333の左右とを、融着範囲としている。
また、側面の胴部融着範囲eは、裏側面部311、裏上面部321、裏底面部331の外周側に設けた帯線状の部分がある。
また、側面折り返し融着範囲fとして、側面折り返し融着部410、上面折り返し融着部420、底面折り返し融着部430と、上側面合わせ部42の上側とトップ部の融着範囲cに隣接する部分や、底側面合わせ部43の下側のボトム部の帯線状の融着範囲に隣接する部分がある。さらに、これに加えて、左上面部324と左底面部334で折り込まれる三角形状の部分を除く部分と対応して面を合わせる上側面合わせ部42中央の台形部分と、底側面合わせ部43中央の台形部分を、融着範囲としても良い。
【0024】
第1
参考例の接着阻害ニス塗布部は、融着範囲において、融着範囲の周縁に平行に、かつ、一定の範囲を除いた融着面に、部分的に接着阻害ニス8を塗布する。この
図3では、特に、融着範囲の外周周縁aに平行に設ける接着阻害ニス8の非塗布部を、外周周縁から2〜3ミリメートルとした外周融着部51を設け外周端部近傍を確実に融着し、そのほかの融着範囲に接着阻害ニス8を塗布している。
外周融着部51を周縁から2〜3ミリメートルとするのは、2ミリメートル以下の場合、印刷時の位置ずれのばらつきによって、狭くなり過ぎ、融着部が剥離して開封してしまう恐れがあるためである。
また、外周融着部51を周縁から3ミリメートル以上の場合、開封するための力が急激に高くなり、開封性が著しく低下するためである。
【0025】
ここで、接着阻害ニス8は、エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩素化エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、環化ゴム、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキッド系樹脂の単体、ないし、これらの混合物からなるニスである。
【0026】
ブランクの積層シート5は、谷折り線6と山折り線7に沿って折れ線処理がされ、外形は抜き刃で抜いている。
紙容器組み立ての製造方法は、注出口栓1を備える紙容器の場合、まず、口栓取り付け孔2に注出口栓1を融着する。その後、胴部一側面角部の側面合わせ部41と側面折り返し融着部410の間の折れ線部分を、上側面合わせ部42と上側面折り返し融着部420の間の折れ線部分や、底側面合わせ部43と底側面折り返し融着部430の間の折れ線と共に、折り曲げ、それぞれに対応した外面側同士をシールする。すなわち、この側面折り返し融着部410、上側面折り返し融着部420,底側面折り返し融着部430をそれぞれ、311,321,331の側面融着部e内面に融着する。このことで、折り返し部は、積層シートの端面を容器内部に出さないようにできる。その後、ボトム部分の融着を行い、内容物を充填し、トップ部分を融着して終了する。
このように、接着阻害ニス8を塗布する工程以外、従来の紙容器の製造と同じで、そのまま、従来の製造ラインが使用可能である。
【0027】
図4は、
図1のゲーベルトップ型紙容器のブランクの内面側から見た図で、本発明の第2
参考例として示す紙容器の展開図である。
内面シーラント層の融着範囲内周周縁bから平行で、かつ、一定幅で塗布部分と未塗布部分を交互に設けたストライプ状に、接着阻害ニス8を塗布したことを特徴としている。
接着阻害ニス8の塗布部分と未塗布部分の幅は、ほぼ1ミリメートルずつにすることが好ましい。
このストライプ状に接着阻害ニス8を塗布する紙容器は、融着範囲の内周周縁から平行に未塗布部分があるので、内容物の漏れはなく、一定の剥離強度を持っており、落下強度や
積載強度が保てる設計になっている。
【0028】
図5−1は、
図1のゲーベルトップ型紙容器のブランクの内面側から見た図で、本発明の第
1例として示す紙容器の展開図である。
図5−2、
図5−3で示すように、第
1例の接着阻害ニス8塗布部は、内面シーラント層の融着範囲
のうち、外周周縁から平行な外周部51と、
山折り線7からなる罫線近傍71と、
内側折り曲げ部63の谷折り線6からなる罫線近傍の外周側から内側折り曲げ部の谷折り線6からなる罫線の長さの半分以上の範囲と、端面融着部64の前記内側折り曲げ部63の谷折り線6からなる罫線近傍に融着される部分の外周側から前記内側折り曲げ部63の谷折り線6からなる罫線の長さの半分以上の範囲と、を除いた内面シーラント層の融着範囲とする。
そして、折り曲げられた内側折り曲げ部63
の谷折り線6からなる罫線近傍と、内側折り曲げ部
63の谷折り線6からなる罫線近傍と融着する端面融着部64
の部分とは、
内側折り曲げ部
63の谷折り線6からなる罫線の長さ範囲の2分の1を越えない範囲で、内側折り曲げ部接着阻害ニス塗布部83と内側折り曲げ部端面接着阻害ニス塗布部830をほぼ同じ長さになるよう、塗布する。
【0029】
図6−1は、
図1のゲーベルトップ型紙容器のブランクの内面側から見た図で、本発明の比較例2に用いる紙容器の展開図である。
図6−2で示すように、融着範囲において、底部は、外周周縁部と罫線近傍のみ、0.5ミリメートル幅の接着阻害ニス未塗布部を設け、トップ部は、トップ折り曲げ線34に平行な外周周縁部のみ、0.5ミリメートル幅の接着阻害ニス未塗布部を設けている。
【0030】
図7−1、
図7−2は、積層シートの構成を断面で示している。
図7−1は表裏に接着阻害ニス8を塗布した例で、基材の紙91の表面にシーラント層92をコーティングしている。基材の紙91の裏面側には、酸化珪素蒸着付きポリエチレンテレフタレートフィルム層94が低密度ポリエチレン層93を介してラミネートされていて、さらに内面に厚めのシーラント層95が貼られている。
シーラント層92の表面側に印刷した例になっている。表面側に印刷するのは、原紙の生産ロットが小さな場合でも対応しやすいなどのメリットがある場合である。
裏接着阻害ニス層97と表接着阻害ニス層98とを塗布しているのは、接着阻害ニス8が印刷で透けた状態で印刷され、しかも、接着阻害ニス層の土台になっているシーラント層の溶融によって融着するので、層表面が容易に変形して融着しようとするので、多少阻害物質があっても、強固に融着してしまう恐れがある。そこで、確実に強固な融着を阻害したい場所には、表裏同じ位置に接着阻害ニス8を塗布する。
表裏同じ位置に接着阻害ニス8を塗布すると、同じ版を裏返して使用できるメリットもあるが、表面側は、融着されない所も多いので、あくまで、外側にも融着する部分だけに限る対応が好ましい。
【0031】
図7−2は、基材の紙91表面に印刷層96を設け、その上にシーラント層92を設けた例である。そして、内面側にエクストルーダーラミネーションにより、低密度ポリエチレン層93を介して酸化珪素蒸着付きポリエチレンテレフタレートフィルム層94を貼り合わせ、さらに内層にシーラント層95を貼り合わせている。その上に、内面へ裏接着阻害ニス層97を印刷している。
接着阻害ニス層が10〜30パーセント程度の融着力低下を招けばよい場合は、このように、内面のみ接着阻害ニス層だけで対応できる。
【0032】
図8は、内面シーラント層の融着範囲の内周周縁bから4〜6ミリメートル幅に非塗布部分を設け、その外側に接着阻害ニス8を塗布した第3
参考例の紙容器である。
落下強度や座屈強度が必要とする容量の大きい紙容器の場合には、底部は多めに非塗布部
の幅を持たせ、融着範囲の内周周縁から6〜15ミリメートル幅に非塗布部分を設ける。内容物に接する部分が強固に融着させることで、内容物の浸透が遮断され、長期に保存する内容物や、浸透しやすい内容物にも対応ができる。
また、外側に接着阻害ニス8を塗布することで、紙容器を分解する時に、剥離のきっかけを作りやすいので、分解しやすいメリットがある。
しかし、逆に、内側に折り曲げた部分近傍は反発力が大きく、反発力に逆らって融着させるので、強度のある融着幅を狭くしにくい問題がある。
【0033】
図9は、
図8の紙容器よりも、より落下強度や座屈強度を上げた紙容器のブランクの内面展開図である。
図9−2、
図9−3で示すように、第4
参考例の接着阻害ニス8塗布部は、内面シーラント層融着範囲の内周周縁から4〜6ミリメートル幅に非塗布部分を設け、その外側に接着阻害ニス8を塗布した紙容器である。
接着阻害ニス8塗布部は、内面シーラント層融着範囲
のうち、内周周縁から平行な内
周部52と、
山折り線7からなる罫線近傍
71と、
内側折り曲げ部63の谷折り線6からなる罫線近傍の内周側から内側折り曲げ部の谷折り線6からなる罫線の長さの半分以上の範囲と、端面融着部64の前記内側折り曲げ部63の谷折り線6からなる罫線近傍に融着される部分の内周側から前記内側折り曲げ部63の谷折り線6からなる罫線の長さの半分以上の範囲と、を除いた内面シーラント層の融着範囲とする。
そして、折り曲げられた内側折り曲げ部63
の谷折り線6からなる罫線近傍と、内側折り曲げ部
63の谷折り線6からなる罫線近傍と融着する端面融着部64
の部分とは、
内側折り曲げ部63
の谷折り線6からなる罫線の長さ範囲の2分の1を越えない範囲で、内側折り曲げ部接着阻害ニス塗布部(第4
参考例)831を設け、内側折り曲げ部端面接着阻害ニス塗布部(第4
参考例)832も、内側折り曲げ部接着阻害ニス塗布部
831とほぼ同じ位置にまで、塗布するように設定する。
落下強度や座屈強度が必要とする容量の大きい紙容器の場合には、底部は多めに非塗布部の幅を持たせ、融着範囲の内周周縁から6〜15ミリメートル幅に非塗布部分を設けるのは第3例と同じである。
また、罫線近傍
71の外周部分に、わずかに接着阻害ニスを塗工しておいてある。これは、剥離を連続的に行われやすいようにするもので、1〜3ミリメートル前後あればよい。
【0034】
図10は、フラットトップの紙容器のブランクで、
図10−1は、融着範囲の内周に接着阻害ニス塗布部を設けた例、
図10−2は、融着範囲の外周に接着阻害ニス塗布部を設けた例である。
底面はゲーベルトップと同じで、トップ近傍の形状がフラットトップの形状に変わっているが、ほぼ、ゲーベルトップと同じように開封しやすい紙容器ができる。
【0035】
図11は、本紙容器の底面における外観図である。
図11−1は、本発明の紙容器における通常の底の状態を示している。底の右底面部332,左底面部334が内側に折り込まれ、裏底面部331と表底面部333の先端内面同士が融着した底面融着部43を形成する。そして、図では表底面部333が折り返され、底面折り返し融着部430を形成している。
図11−2は、底面融着部3310の折り返さない裏底面部331先端に開封しやすくするように、未融着の開封用鍔3311を設けている。この開封用鍔3311は、内面に接着阻害ニス8を塗布しても良いが、確実に融着させないように非融着処理を施すことが好ましい。
図11−3に、中心よりわずかに332方向にずらした断面を示した。
また、開封にあたって、開封用鍔431が切れてしまわないよう、強度の高い形状として、根元に円弧を設ける、幅を広く取るなどの対応が必要である。
【0036】
本発明の紙容器に使用する積層シート5の構成は、最外面と最内面に熱可塑性樹脂を用い、基材として、紙を使用したものでもかまわないが、内容物の保存性能を高めるように、層構成中にポリエチレンテレフタレート層、または、酸化珪素やアルミニウムなどの蒸着層を持つポリエチレンテレフタレートフィルムを含有する層を有する構成や、そのポリエチレンテレフタレート層の内側にシーラント層を設けている構成であってもよい。
たとえば、ポリエチレン/紙/ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート/剥離ニス(一部)/シーラント、
ポリエチレン/紙/ポリエチレン/無機酸化物蒸着ポリエチレンテレフタレート/剥離ニス(一部)/シーラント、
ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート/剥離ニス(一部)/シーラント、
ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミ箔/ウレタン接着剤/ポリエチレンテレフタレート/剥離ニス(一部)/シーラント、
などの構成が考えられる。
【0037】
紙容器の積層シート5における表側の熱可塑性樹脂には、高圧法低密度ポリエチレンの他、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などが使用できる。
また、基材の紙は、容器容量によって厚みを調整し、紙容器容量が大きいほど厚くする。通常、紙の厚みである坪量は、200g/m
2から500g/m
2の範囲で使用可能である。
【0038】
紙容器の積層シート5における紙とシーラント層の間には、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、酸化アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムや、エチレンービニルアルコール共重合体フィルム、アルミ箔とポリエチレンテレフタレートのラミネートフィルムなどを使用し、その厚みは5μmから25μmなどが使用できる。
【0039】
紙容器の積層シート5におけるバリア層と基材の紙とは、通常、エクストルーダーラミネート機でバリア層と紙との間に溶融樹脂を押し出しながら、溶融樹脂を接着剤として積層することで、融着させる。使用する溶融樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレンの他、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレンーメチルアクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などが使用できる。このラミネーションに使用される溶融樹脂は、紙の表面性や腰の強さにもよるが、10μmから50μm、好ましくは20μmから40μmの厚みで使用する。
【0040】
紙容器の積層シート5におけるバリア層と最内層のシーラント層の間には、ドライラミネーション用接着剤を使用して接着してもよい。ドライラミネーションする時に使用される接着剤の塗布量としては、1g/m
2から5g/m
2にするとよい。また、バリア層と最内層のシーラント層の間にも、エクストルーダーラミネート機で溶融樹脂を押し出しながら積層することで、融着させてもよい。この溶融樹脂として、高圧法低密度ポリエチレンの他、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレンーメチルアクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などが使用できる。このラミネーションに使用される溶融樹脂は、10μmから40μmの厚みで使用する。
【0041】
紙容器の積層シート5における最内層のシーラント層として、高圧法低密度ポリエチレ
ンの他、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などが使用できる。さらに、最内層の一部、又は全部の層に、イージーピールシーラント層を使用して、開封性を向上させることも可能である。このイージーピールシーラント層は、高圧法低密度ポリエチレン、または、直鎖状低密度ポリエチレンに、ポリブテン−1、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、タックファイアーなどの異種材料を混合させた樹脂層で、低温で融着しやすく、かつ、開封させることも容易な樹脂層である。そして、このイージーピールシーラント層を、高圧法低密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂でバリア層側に積層したり、最内面側に積層したり、表裏から積層したりして使用できる。
同じように、基材の紙の外側にも同様の熱可塑性樹脂層を設ける。その場合、印刷は表面側熱可塑性樹脂の外側、または表面側熱可塑性樹脂の内側に行う。
最内層に使用するシーラント層の厚みは20μm〜80μm好ましくは30μm〜70μmが適当であり、最外層の表面側熱可塑性樹脂の厚みは5μm〜60μm好ましくは10μm〜40μmで貼り合わせる。
【0042】
注出口栓1の材質は、容器本体に使用されているシーラント層との融着性が良好で、耐ストレスクラッキング性も高く、内容物からの影響を受けにくい材料で、かつ、剛性が適度にあり、キャッピングしやすい事が必要である。
さらに、注出口栓1にプルリングが形成される場合は、引っ張り強度も高い必要があり、かつ、環状薄肉脆弱線では一定の引張り強度で破断する多様な特質を持っている必要がある。特に、ヒンジキャップのようなキャップと一体型の注出口栓にする場合は、溶融時の流動性(MIF)も高い必要がある。
そこで、注出口栓1に使用可能な材料は、高圧法の低密度ポリエチレンの他、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度と高密度ポリエチレンの混合樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体を上記に添加、混合した樹脂などである。その中でも、直鎖状の低密度ポリエチレンが好ましい。実際に使用する場合は、各種樹脂を用いて成形した後、紙容器本体に融着し、充填予定の内容物を使用して、環境ストレスクラッキング試験を実施し、判断する。
以上の注出口栓1の材料は、射出成形で成形され、紙容器の側面端部が成形されたスリーブ状態における口栓取り付け孔2に、融着される。
【0043】
先に示したように、本発明でトップシール部やボトムシール部などに使用される接着阻害ニス8は、エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩素化エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、環化ゴム、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキッド系樹脂の単体、ないし、これらの混合物からなるニスである。この接着阻害ニス8の塗工は、グラビア印刷機やシルクスクリーン印刷機などを使って、パターンを塗工する。
この時、接着阻害ニス8をわずかに着色しておくと、次工程で位置確認しやすい。
【0044】
以下に、本発明の具体的な実施例、比較例について説明する。
(実施例1)積層シートは、外側から下記構成で作成した。
第1層:低密度ポリエチレン20μm
第2層:320g/m
2の紙(絵柄印刷済み品)
第3層:低密度ポリエチレン30μm
第4層:ポリエチレンテレフタレート12μm
第5層:アルミ蒸着層:ポリエチレンテレフタレートフィルムに蒸着で20nm
第6層:ドライラミ接着剤3g/m
2
第7層:低密度ポリエチレン50μm
第8層:エチレンー酢酸ビニル共重合体の接着阻害ニス0.5g/m
2
製造工程は下記1)〜6)の順で作成した。
1)アルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートと第7層の低密度ポリエチレンとをドライラミネーション機で接着剤を用いて貼り合わせる。
2)1)で貼り合わせたフィルムと絵柄印刷済みの紙を、低密度ポリエチレンで介して押し出しラミネート機により貼り合わせる。
3)紙の上に低密度ポリエチレンを押し出しラミネート機によって貼り合わせる。
4)最外層と最内層の低密度ポリエチレンに接着阻害ニス8を印刷する。
5)抜き刃で外形を抜くと共に、罫線の折目を設ける。
6)貼り合わせながら紙容器形状に成形する。
接着阻害ニス8の印刷パターン、及び罫線、外形の抜きパターンは、
図5のブランク形状とした。
【0045】
(
参考実施例
1)積層シートは、実施例1と同じものとした。
接着阻害ニス8の印刷パターン、及び罫線、外形の抜きパターンは、
図4のブランク形状とした。
【0046】
(比較例1)積層シートは、実施例1と同じものとした。
ただし、接着阻害ニス8は全く印刷しないで、罫線、外形の抜きパターンは、
図5のブランク形状とした。
【0047】
(比較例2)積層シートは、実施例1と同じものとした。
接着阻害ニス8の印刷パターン、及び罫線、外形の抜きパターンは、
図6のブランク形状とした。
【0048】
<評価方法>
成形性は、紙容器の成形機に掛け、成形性を確認した。
易解体性は、5人のパネラーが紙容器を素手で解体し、解体しやすさを容易2点、中間1点、難しい0点で官能的に評価して、その合計点で確認した。(満点は10点)
容器水蒸気透過度は、容器の内部に塩化カルシウムを封入し、気温40℃、相対湿度90%の環境下で、重量変化を測定した。
【0049】
<評価結果>
本発明の実施例1、
参考実施例
1共、成形性、易解体性は良く、容器水蒸気透過度も接着阻害ニス8をしなかった比較例1紙容器と同等であった。
比較例1は、易解体性が著しく悪く、人手では容易に開封できなかった。
比較例2は、易解体性は良好であったが、成形性が劣り、容器水蒸気透過度は著しく大きく、内容物保護性能に問題があった。
【0050】
【表1】
本発明の紙容器は、以上のようなもので、ブランクを製造する時に、予め、必要な箇所にだけ、接着阻害ニスを印刷しておくことで、落下強度、座屈強度、密封性などを保持しながら、解体する時には、容易に解体しやすいように、設計された紙容器である。
このような解体しやすい紙容器を提供できれば、紙容器の再利用も図りやすくなると共に、紙容器の利便性が向上し、より、紙容器の普及が図られることになると期待される。