特許第6205967号(P6205967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205967感光性樹脂組成物、樹脂膜およびその製造方法、ならびに電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205967
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、樹脂膜およびその製造方法、ならびに電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20170925BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20170925BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20170925BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/004 501
   G03F7/038 601
   C08G65/40
【請求項の数】8
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-169565(P2013-169565)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-38560(P2015-38560A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】西村 功
(72)【発明者】
【氏名】内田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 融
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 克巳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 洋一郎
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−024831(JP,A)
【文献】 特開2009−098681(JP,A)
【文献】 特開2009−242756(JP,A)
【文献】 特開2009−242755(JP,A)
【文献】 特開2002−251014(JP,A)
【文献】 特開2000−275842(JP,A)
【文献】 特開2001−033964(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/109143(WO,A1)
【文献】 特開2011−075987(JP,A)
【文献】 特開2011−074314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(A1)で表される構造単位を有する重合体と、
(B)感光性酸発生剤と
を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(A1)中、Ar1は、芳香環を有し、かつ2つの結合手が芳香環構造にある2価の基であり;ただし、Ar1は、フェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を合計で2つ以上有し;R1は、アルカンジイル基、または前記アルカンジイル基が有する水素原子の1つ以上を、有機基(ただし、飽和脂肪族環を有する基、および芳香環を有する基を除く)に置き換えてなる2価の基である。]
【請求項2】
式(A1)中のAr1がフェノール性水酸基を2つ以上有する、請求項1の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(C)架橋剤
をさらに含有する、請求項1または2の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
架橋剤(C)が、−CH2ORで表される基(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアセチル基である)を少なくとも2つ有する架橋剤である、請求項3の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
重合体(A)において、式(A1)で表される構造単位の含有割合が、重合体(A)100質量%に対して、30質量%以上である、請求項1〜4のいずれか1項の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の感光性樹脂組成物から得られる樹脂膜。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項の感光性樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する工程、前記塗膜を露光する工程、アルカリ性現像液により前記塗膜を現像してパターンを形成する工程を有する、パターン化樹脂膜の製造方法。
【請求項8】
請求項の樹脂膜を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等が有する表面保護膜および層間絶縁膜等の形成に好適に用いられる感光性樹脂組成物、およびその含有成分として好適な重合体に関し;さらに、前記組成物から形成される樹脂膜およびその製造方法、ならびに前記樹脂膜を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的強度に優れたポリアリーレンエーテルを使用したフォトレジスト材料として、従来、様々な感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、フェノール性水酸基を有するポリフェニレンオキシド(A)と、光により酸を発生する化合物(B)とを含有するポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−275842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体集積回路等を製造する分野において、表面保護膜および層間絶縁膜等のパターンの微細化が進んでいる。この微細化には、パターン形成に用いられるフォトレジスト材料の高解像度化が必要となる。また、近年、スマートフォン等の電子機器を駆動させる集積回路(IC)が小型化している。IC中の絶縁膜の伸び物性が低いと、電子機器が落下した際の衝撃で絶縁膜にクラックが入り、製品の信頼性を確保できないおそれがある。そこで、伸び物性に代表される高い靭性を有する絶縁膜が求められている。
【0005】
本発明の課題は、解像性に優れた感光性樹脂組成物であって、かつ、伸び物性に優れた樹脂膜を形成することが可能な感光性樹脂組成物、この組成物の含有成分として好適な重合体、前記組成物から得られる樹脂膜、および前記樹脂膜を有する電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、以下の構成を有する感光性樹脂組成物を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば以下の[1]〜[9]である。
【0007】
[1](A)式(A1)で表される構造単位を有する重合体と、(B)感光性酸発生剤とを含有する感光性樹脂組成物。
【0008】
【化1】
[式(A1)中、Ar1は、芳香環を有し、かつ2つの結合手が芳香環構造にある2価の基であり;ただし、Ar1は、フェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を合計で2つ以上有し;R1は、アルカンジイル基、飽和脂肪族環を有する2価の基もしくは芳香環を有する2価の基、またはこれらの基において、前記アルカンジイル基、飽和脂肪族環もしくは芳香環が有する水素原子の1つ以上を、有機基(ただし、飽和脂肪族環を有する基、および芳香環を有する基を除く)に置き換えてなる2価の基である。]
【0009】
[2]式(A1)中のAr1がフェノール性水酸基を2つ以上有する、前記[1]の感光性樹脂組成物。
[3](C)架橋剤をさらに含有する、前記[1]または[2]の感光性樹脂組成物。
【0010】
[4]架橋剤(C)が、−CH2ORで表される基(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアセチル基である)を少なくとも2つ有する架橋剤である、前記[3]の感光性樹脂組成物。
[5]式(A1)で表される構造単位を有する重合体。
【0011】
【化2】
[式(A1)中、Ar1は、芳香環を有し、かつ2つの結合手が芳香環構造にある2価の基であり;ただし、Ar1は、フェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を合計で2つ以上有し;R1は、アルカンジイル基、飽和脂肪族環を有する2価の基もしくは芳香環を有する2価の基、またはこれらの基において、前記アルカンジイル基、飽和脂肪族環もしくは芳香環が有する水素原子の1つ以上を、有機基(ただし、飽和脂肪族環を有する基、および芳香環を有する基を除く)に置き換えてなる2価の基である。]
【0012】
[6]前記[1]〜[4]のいずれか1項の感光性樹脂組成物から得られる樹脂膜。
[7]前記[5]の重合体を含有する樹脂膜。
[8]前記[1]〜[4]のいずれか1項の感光性樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する工程、前記塗膜を露光する工程、アルカリ性現像液により前記塗膜を現像してパターンを形成する工程を有する、パターン化樹脂膜の製造方法。
[9]前記[6]または[7]の樹脂膜を有する電子部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、解像性に優れた感光性樹脂組成物であって、かつ、伸び物性に優れた樹脂膜を形成することが可能な感光性樹脂組成物、この組成物の含有成分として好適な重合体、前記組成物から得られる樹脂膜、および前記樹脂膜を有する電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について好適態様も含めて説明する。
〔感光性樹脂組成物〕
本発明の感光性樹脂組成物は、以下に説明する重合体(A)および感光性酸発生剤(B)を含有する。以下では、前記感光性樹脂組成物の含有成分として好適に用いられる、本発明の重合体(A)もあわせて説明する。
【0015】
〈重合体(A)〉
<重合体(A)の構造単位>
本発明の重合体(A)は、式(A1)で表される構造単位を有し、好ましくは式(A1)で表される繰返し構造単位を有する。以下、式(A1)で表される構造単位を、「構造単位(A1)」ともいう。
【0016】
【化3】
式(A1)中の記号の意味は以下のとおりである。
【0017】
Ar1は、芳香環を有し、かつ2つの結合手が芳香環構造にある2価の基である。すなわち、−R1−O−で表される2価の基中の当該Oが、Ar1中の芳香環を構成する炭素原子に結合している。
【0018】
ただし、Ar1はフェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を合計で2つ以上有し、好ましくはフェノール性水酸基を2つ以上有する。これらの酸性基は、重合体(A)に良好なアルカリ可溶性を付与し、組成物の解像性向上に寄与する。
【0019】
1は、アルカンジイル基、飽和脂肪族環を有する2価の基もしくは芳香環を有する2価の基、またはこれらの基において、前記アルカンジイル基、飽和脂肪族環もしくは芳香環が有する水素原子の1つ以上を有機基に置き換えてなる2価の基である。ただし、前記有機基からは、飽和脂肪族環を有する基、および芳香環を有する基を除く。
【0020】
また、R1の両端は、−C*H(CH3)−O−で表される基ではない。ここで、アスタリスクの付いた炭素原子が、−Ar1−O−の酸素原子と結合する。すなわち、R1は、−CH(CH3)−O−R−O−CH(CH3)−で表される基(Rは任意の有機基である)ではない。一例を挙げれば、R1からは、−CH(CH3)−O−(CH22−O−CH(CH3)−で表される基が除かれる。
【0021】
重合体(A)は、構造単位(A1)中のAr1がフェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を有することから、高いアルカリ現像性を有している。加えて、重合体(A)は、構造単位(A1)中にAr1同士のスペーサー部分となる2価の基(−O−R1−O−)を有することから、重合体(A)を含有する樹脂膜の伸び物性を向上させることができる。
【0022】
なお、樹脂膜の伸び物性を向上させるために重合体(A)の上記スペーサー部分(−O−R1−O−)を長くすると、重合体(A)1分子あたりのフェノール性水酸基数またはカルボキシル基数が相対的に小さくなり、感光性樹脂組成物の解像性が低下するおそれがある。しかしながら、本発明では、重合体(A)にフェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を合計で2つ以上有する部分(Ar1)を特に導入していることから、重合体(A)の上記スペーサー部分(−O−R1−O−)を長くしても、感光性樹脂組成物の解像性を確保することができる。すなわち本発明では、感光性樹脂組成物の解像性向上と、当該組成物から得られる樹脂膜の伸び物性向上とを両立することができる。
【0023】
《−Ar1−で表される2価の基》
Ar1は、芳香環を有し、かつ2つの結合手が芳香環構造にある2価の基であり;ただし、Ar1は、フェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を合計で2つ以上有する。
【0024】
式(A1)中のAr1の炭素数は、好ましくは6〜50であり、より好ましくは6〜30である。Ar1が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環等のベンゾ縮合環;複素環が挙げられる。これらの中でもベンゼン環が好ましい。
【0025】
Ar1としては、例えば、「フェノール性水酸基を2つ以上、好ましくは3つ以上22以下、より好ましくは4つ以上10以下、さらに好ましくは4つ以上8以下有するフェノール化合物(a1)」に由来する2価の基が挙げられる。フェノール化合物(a1)は、フェノール性水酸基数が2である場合は、カルボキシル基を2つ以上有し、フェノール性水酸基数が3である場合は、カルボキシル基を1つ以上有する。
【0026】
フェノール化合物(a1)をHO−Ar1−OHと表した場合、前記2つのヒドロキシル基は、フェノール化合物中に含まれる任意の2つのフェノール性水酸基であり;Ar1は、フェノール化合物から任意の2つのフェノール性水酸基を除いてなる2価の残基であり、フェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を合計で2つ以上有する。フェノール化合物(a1)において芳香環が複数ある場合、2つ以上の芳香環がフェノール性水酸基を有することが好ましい。
【0027】
このフェノール化合物(a1)に含まれるフェノール性水酸基のうち、後述するハロゲン化合物(a2)と反応しなかったフェノール性水酸基が、構造単位(A1)が有するAr1中に含まれるフェノール性水酸基となる。
【0028】
フェノール化合物(a1)としては、特開平5−027446号公報、特開平8−106159号公報、特開平7−120917号公報、特開平4−301851号公報、特開平5−027430号公報、特開平10−142783号公報、特開2003−064013号公報、および特開2005−266049号公報に記載のノボラック樹脂、フェノール樹脂、フェノール類、フェノール性化合物、フェノール化合物、ポリヒドロキシ化合物、ポリフェノールおよびポリビニルフェノールが挙げられる。
【0029】
具体的には、フェノール化合物(a1)としては、例えば、式(A1−1)〜式(A1−10)で表される化合物が挙げられる。以下、前記化合物をそれぞれ「化合物(a1−1)」〜「化合物(a1−10)」ともいう。
【0030】
式(A1−1)〜式(A1−10)の説明において、炭素数1〜15の2価の炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基としては、例えば、−(CH2i−および−C(CH32−等の炭素数1〜10のアルカンジイル基、−(CF2j−および−C(CF32−等の炭素数1〜10のハロアルカンジイル基、ジフェニルメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基が挙げられる。前記式中、iおよびjは1〜10の整数である。
【0031】
【化4】
式(A1−1)および式(A1−2)中の各記号の意味は以下のとおりである。
【0032】
4は、それぞれ独立に−OHまたは−COOHであり、ただし複数あるR4のうち少なくとも2つは−OHである。複数あるR4の全てが−OHであることが好ましい。芳香環が複数ある場合、2つ以上の芳香環がフェノール性水酸基を有することが好ましい。
【0033】
5は、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはアミノ基であり、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。
【0034】
1は、それぞれ独立に単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−COO−、−NHCO−、−NHCOO−、−SO−、−SO2−、−CH(CH2OH)−、炭素数1〜15の2価の炭化水素基、または炭素数1〜15の2価のハロゲン化炭化水素基であり;好ましくは炭素数1〜15の2価の炭化水素基である。
【0035】
nは、0〜3の整数である。
式(A1−1)中、a1は4〜6の整数であり、好ましくは4であり;b1は0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり;4≦a1+b1≦6を満たす。
【0036】
式(A1−2)中、a1、b1、a3およびb3は0〜5の整数であり、a2およびb2は0〜4の整数であり;0≦a1+b1≦5、0≦a2+b2≦4、かつ0≦a3+b3≦5を満たし;ただし、a1、a2およびa3の合計、すなわち−OHおよび−COOHから選ばれる酸性基の合計は4以上22以下の整数であり、好ましくは4以上12以下の整数である。
【0037】
【化5】
式(A1−3)〜式(A1−5)中、R4〜R5は式(A1−1)中の同一記号と同義であり;R6は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり;R7は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基またはアシロキシ基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。
【0038】
1は、それぞれ独立に単結合または酸素原子であり、好ましくは単結合である。
2は、単結合、酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは単結合である。
式(A1−3)および式(A1−5)中、a1〜a2およびb1〜b2は0〜4の整数であり;0≦a1+b1≦4、かつ0≦a2+b2≦4を満たし;ただし、a1およびa2の合計は4以上8以下の整数であり、好ましくは4以上6以下の整数である。
【0039】
式(A1−4)中、a1およびb1は0〜4の整数であり、a2およびb2は0〜5の整数であり;0≦a1+b1≦4、かつ0≦a2+b2≦5を満たし;ただし、a1およびa2の合計は4以上9以下の整数であり、好ましくは4以上6以下の整数である。
【0040】
【化6】
式(A1−6)〜式(A1−7)中、R4〜R5は式(A1−1)中の同一記号と同義であり;Z1は、−CO−または−SO2−である。
【0041】
式(A1−6)中、a1〜a2およびb1〜b2は0〜5の整数であり、a3およびb3は0〜4の整数であり;0≦a1+b1≦5、0≦a2+b2≦5、かつ0≦a3+b3≦4を満たし;ただし、a1〜a3の合計は4以上14以下の整数であり、好ましくは4以上9以下の整数である。
【0042】
式(A1−7)中、a1〜a3およびb1〜b3は0〜4の整数であり;0≦a1+b1≦4、0≦a2+b2≦4、かつ0≦a3+b3≦4を満たし;ただし、a1〜a3の合計は4以上12以下の整数であり、好ましくは4以上9以下の整数である。
【0043】
【化7】
式(A1−8)中、R4〜R5は式(A1−1)中の同一記号と同義であり;R8は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはアミノ基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜12のアルキル基である。
【0044】
2は、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−COO−、−NHCO−、−NHCOO−、−SO−、−SO2−、−CH(CH2OH)−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、炭素数1〜10のハロアルカンジイル基、または
【0045】
【化8】
で表される2価の基である。
【0046】
9は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはアミノ基である。X3およびX4は、それぞれ独立に単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−COO−、−CH(CH2OH)−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、または炭素数1〜10のハロアルカンジイル基である。
【0047】
式(A1−8)中、a1〜a3およびb1〜b3は0〜5の整数であり;0≦a1+b1≦5、0≦a2+b2≦5、かつ0≦a3+b3≦5を満たし;ただし、a1〜a3の合計は4以上15以下の整数であり、好ましくは4以上9以下の整数である。
【0048】
【化9】
式(A1−9)中、R4〜R5は式(A1−1)中の同一記号と同義であり;Aは、それぞれ独立に単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−COO−、−NHCO−、−NHCOO−、−SO−、−SO2−、−CH(CH2OH)−、炭素数1〜15の2価の炭化水素基、または炭素数1〜15の2価のハロゲン化炭化水素基である。
【0049】
式(A1−9)中、a1〜a3およびb1〜b3は0〜5の整数であり、a4およびb4は0〜3の整数であり;0≦a1+b1≦5、0≦a2+b2≦5、0≦a3+b3≦5、かつ0≦a4+b4≦3を満たし;ただし、a1〜a4の合計は4以上18以下の整数であり、好ましくは4以上12以下の整数である。
【0050】
【化10】
式(A1−10)中、R4〜R5は式(A1−1)中の同一記号と同義であり;R10は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはアミノ基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり;X5は、単結合、−CH(CH2OH)−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、炭素数1〜10のハロアルカンジイル基、またはフェニレン基である。
【0051】
式(A1−10)中、a1〜a4およびb1〜b4は0〜5の整数であり;0≦a1+b1≦5、0≦a2+b2≦5、0≦a3+b3≦5、かつ0≦a4+b4≦5を満たし;ただし、a1〜a4の合計は4以上20以下の整数であり、好ましくは4以上12以下の整数である。
フェノール化合物(a1)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0052】
【化11】
【0053】
【化12】
【0054】
【化13A】
【0055】
【化13B】
【0056】
【化14】
フェノール化合物(a1)の好適例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0057】
【化15】
式(1)中、mは4〜6の整数である。
式(2)中、Xはそれぞれ独立に単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−SO2−、−CH(CH2OH)−、−CH2−および−C(CH32−等の炭素数1〜10のアルカンジイル基、−CF2−および−C(CF32−等の炭素数1〜10のハロアルカンジイル基、またはジフェニルメチレン基であり;式(2)〜(4)中、mおよびnは0〜4の整数であり、かつm+nは2〜8の整数であり;式(6)中、mおよびnは0〜3の整数であり、かつm+nは2〜6の整数である。
【0058】
式(5)中、Xは式(2)中の同一記号と同義であり;Rは炭素数1〜12のアルキル基であり;lは0〜4の整数であり、mは0〜4の整数であり、nは0〜4の整数であり、かつl+m+nは2〜9の整数であり;oは0〜4の整数であり、かつm+oは0〜4の整数である。
【0059】
《−R1−で表される2価の基》
1は、アルカンジイル基、飽和脂肪族環を有する2価の基もしくは芳香環を有する2価の基、またはこれらの基において、“前記アルカンジイル基、飽和脂肪族環もしくは芳香環”が有する水素原子の1つ以上を有機基に置き換えてなる2価の基である。ただし、前記有機基からは、飽和脂肪族環を有する基、および芳香環を有する基を除く。前記有機基としては、例えば、シアノ基、アセチル基、ホルミル基、およびアルコキシ基が挙げられる。
【0060】
前記アルカンジイル基の炭素数は、通常2〜30、好ましくは2〜20である。
前記アルカンジイル基としては、例えば、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;前記例示の直鎖状アルカンジイル基に、炭素数1〜4のアルキル基からなる側鎖を1つまたは複数付加してなる分枝鎖状アルカンジイル基が挙げられる。
【0061】
前記飽和脂肪族環を有する2価の基の炭素数は、通常3〜30、好ましくは5〜20である。
前記飽和脂肪族環としては、例えば、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロデカンジイル基等のシクロアルカンジイル基が挙げられる。前記飽和脂肪族環を有する2価の基は、シクロアルカンジイル基であってもよく、前記飽和脂肪族環と共に、アルカンジイル基、−SO2−、−C(O)−O−、−C(O)−、および−S−等の2価の基(ただし、アセタール構造は除く)を有していてもよい。
【0062】
前記芳香環を有する2価の基の炭素数は、通常6〜30、好ましくは6〜20である。
前記芳香環としては、例えば、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環等のベンゾ縮合環;複素環が挙げられる。これらの中でもベンゼン環が好ましい。前記芳香環を有する2価の基は、アリーレン基であってもよく、前記芳香環と共に、アルカンジイル基、−SO2−、−C(O)−O−、−C(O)−、および−S−等の2価の基(ただし、アセタール構造は除く)を有していてもよい。
【0063】
例えば、式(A2):−R2−Ph−R3−で表される2価の基が挙げられる。式(A2)中、Phは、フェニレン基であり;R2およびR3は、それぞれ独立にアルカンジイル基である。具体例としては、−CH2−Ph−CH2−、−CH2−CH2−Ph−CH2−CH2−、−C(CH32−Ph−C(CH32−が挙げられる。
【0064】
1としては、アルカンジイル基、アリーレン基または式(A2)で表される2価の基が好ましく、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、−CH2−Ph−CH2−で表される2価の基がより好ましい。
【0065】
1としては、例えば、「ハロゲン原子を2つ有するハロゲン化合物(a2)」に由来する2価の基が挙げられる。ハロゲン化合物(a2)をX−R1−Xと表した場合、Xはそれぞれ独立にフッ素原子、臭素原子、塩素原子等のハロゲン原子であり;R1は式(A1)中の同一記号と同義である。
【0066】
ハロゲン化合物(a2)としては、例えば、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモヘキサン、1,10−ジブロモデカン、α,α’−ジクロロ−p−キシレン、α,α’−ジクロロ−m−キシレンが挙げられる。
【0067】
<重合体(A)のその他構造単位>
本発明の重合体(A)は、式(A1)で表される構造単位以外の構造単位を含有してもよい。例えば、式(A1)で表される構造単位中の−Ar1−で表される2価の基を、下記に示す、−Ar2−または−Ar3−で表される2価の基に置き換えた構造単位(式(A1’)で表される構造単位、式(A1”)で表される構造単位)が挙げられる。
【0068】
【化16】
Ar2は、芳香環を有し、かつ2つの結合手が芳香環構造にある2価の基であり;ただし、Ar2は、フェノール性水酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の基を合計で1つ有する基である。Ar2としては、例えば、HO−Ar2−OHで表されるフェノール化合物(a1’)に由来する2価の基が挙げられる。フェノール化合物(a1’)の具体例としては、前記フェノール化合物(a1)に挙げたフェノール化合物において、フェノール性水酸基の数を3つにし、カルボキシル基の数を0にした化合物、またはフェノール性水酸基の数を2つにし、カルボキシル基の数を1つにした化合物が挙げられる。
【0069】
Ar3は、芳香環を有し、かつ2つの結合手が芳香環構造にある2価の基であり、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有していない基である。Ar3としては、例えば、HO−Ar3−OHで表されるフェノール化合物(a1”)に由来する2価の基が挙げられる。フェノール化合物(a1”)の具体例としては、前記フェノール化合物(a1)に挙げたフェノール化合物において、フェノール性水酸基の数を2つにし、かつカルボキシル基の数を0にした化合物が挙げられる。
【0070】
1は、式(A1)中のR1と同義である。
また、重合体(A)は、フェノール性水酸基を3つ以上有するフェノール化合物に由来する構造であって、当該フェノール化合物が有するフェノール性水酸基の3つ以上が、ハロゲン化合物(a2)と反応して導かれる構造、すなわち分岐構造を有してもよい。
【0071】
《重合体(A)の構成》
重合体(A)において、構造単位(A1)の含有割合は、重合体(A)100質量%に対して、通常30質量%以上、好ましくは40〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%である。構造単位(A1)の含有割合が前記範囲にあると、感光性樹脂組成物の解像性、樹脂組成物から得られる樹脂膜の弾性率、クラック耐性が向上する傾向にある。重合体(A)の構造単位の含有量は、13C−NMRにより測定することができる。
【0072】
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量(Mw)は、感光性樹脂組成物の解像性、樹脂組成物から得られる樹脂膜の弾性率、クラック耐性の観点から、ポリスチレン換算で、通常1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは4,000〜50,000である。Mwの測定方法の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0073】
重合体(A)は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体(A)の含有量は、本発明の樹脂組成物から溶剤を除いた全成分の合計100質量%に対して、通常30〜95質量%、好ましくは40〜90質量%、さらに好ましくは50〜90質量%である。重合体(A)の含有量が前記範囲にあると、解像度が高く伸び物性に優れた樹脂膜を形成可能な樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0074】
《重合体(A)の製造方法》
本発明の重合体(A)は、例えば、HO−Ar1−OHで表されるフェノール化合物(a1)と、X−R1−Xで表されるハロゲン化合物(a2)とを用いて製造することができる。
【0075】
重合体(A)の合成では、例えば、アルカリ金属化合物の存在下、重合溶媒中でフェノール化合物(a1)とハロゲン化合物(a2)とを重合させる。フェノール化合物(a1)およびハロゲン化合物(a2)は、それぞれ1種用いてもよく、それぞれ2種以上用いてもよい。フェノール化合物(a1)とハロゲン化合物(a2)との使用量比は、例えば、フェノール化合物(a1)100モルに対して、ハロゲン化合物(a2)が30〜300モルである。
【0076】
アルカリ金属化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウムおよびカリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩および水酸化物が挙げられる。これらの中でも、炭酸塩および水酸化物が好ましく、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムがより好ましい。アルカリ金属化合物は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アルカリ金属化合物は、フェノール化合物(a1)またはハロゲン化合物(a2)のうち少ない方1モルに対して、通常1〜10モル、好ましくは1.5〜5モルの量で用いることができる。
【0077】
重合溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノン等の非プロトン性溶媒、ならびにプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルおよび水等のプロトン性溶媒が挙げられる。溶媒は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
また、重合反応で副生する水を除去するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の共沸溶媒を用いることができる。また、テトラブチルアンモニウムブロミド等の相間移動触媒を用いることができる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
反応温度は、特に限定されず、通常30〜250℃、好ましくは40〜180℃、より好ましくは60〜160℃である。
得られた重合体(A)は、公知の方法で精製することができる。例えば、得られた重合体(A)溶液から濾過によって無機塩を除去した後、濾別後の溶液を塩酸水溶液等に注いで重合体(A)を析出させる方法が挙げられる。
【0080】
また、本発明の効果を損なわない限り、重合体(A)の合成には、フェノール化合物(a1)以外の他のフェノール化合物や、ハロゲン化合物(a2)以外の他のハロゲン化合物を用いてもよい。他のフェノール化合物としては、例えば、フェノール化合物(a1’),(a1”)が挙げられる。
【0081】
〈感光性酸発生剤(B)〉
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性酸発生剤(B)を含有する。感光性酸発生剤(B)は、光照射により酸を発生する化合物である。本発明の感光性樹脂組成物から形成される塗膜に対する露光処理によって、感光性酸発生剤(B)に基づき露光部に酸が発生し、この酸の作用に基づき露光部のアルカリ水溶液への溶解性が変化する。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型またはネガ型のいずれであってもよい。感光性酸発生剤(B)の種類は、ポジ型の感光性樹脂組成物またはネガ型の感光性樹脂組成物に応じて、適宜選択することができる。
【0083】
感光性酸発生剤(B)としては、例えば、キノンジアジド基を有する化合物、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。以下、キノンジアジド基を有する化合物を「キノンジアジド化合物(B1)」ともいい、これ以外の前記例示の感光性酸発生剤を「他の酸発生剤(B2)」ともいう。
【0084】
キノンジアジド化合物(B1)は、光照射によりキノンジアジド基が分解してカルボキシル基を生じる化合物である。キノンジアジド化合物(B1)を含有する感光性樹脂組成物から得られる塗膜は、アルカリ性現像液に対して難溶な膜である。光照射により前記膜がアルカリ難溶の状態からアルカリ易溶の状態になることを利用することにより、ポジ型のパターンが形成される。
【0085】
他の酸発生剤(B2)は、光照射により酸を形成する化合物である。他の酸発生剤(B2)を含有する感光性樹脂組成物から得られる塗膜は、光照射により発生する前記酸が重合体(A)や架橋剤(C)等に作用することにより架橋構造が形成され、アルカリ難溶な膜となる。光照射により前記膜がアルカリ易溶の状態からアルカリ難溶の状態に変化することを利用することにより、ネガ型のパターンが形成される。
【0086】
《キノンジアジド化合物(B1)》
キノンジアジド化合物(B1)としては、例えば、ナフトキノンジアジド化合物が挙げられ、具体的には、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物と、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸または1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル化合物が挙げられる。
【0087】
フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物としては、例えば、式(B1−1)〜(B1−5)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
【化17】
式(B1−1)中、X1〜X10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である。X1〜X5の少なくとも1つは水酸基である。Aは直接結合、−O−、−S−、−CH2−、−C(CH32−、−C(CF32−、カルボニル基(−C(=O)−)またはスルホニル基(−S(=O)2−)である。
【0089】
【化18】
式(B1−2)中、X11〜X24はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である。X11〜X15の少なくとも1つは水酸基である。Y1〜Y4はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
【0090】
【化19】
式(B1−3)中、X25〜X39はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である。X25〜X29の少なくとも1つは水酸基であり、X30〜X34の少なくとも1つは水酸基である。Y5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
【0091】
【化20】
式(B1−4)中、X40〜X58はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である。X40〜X44の少なくとも1つは水酸基であり、X45〜X49の少なくとも1つは水酸基であり、X50〜X54の少なくとも1つは水酸基である。Y6〜Y8はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
【0092】
【化21】
式(B1−5)中、X59〜X72はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である。X59〜X62の少なくとも1つは水酸基であり、X63〜X67の少なくとも1つは水酸基である。
【0093】
キノンジアジド化合物(B1)としては、例えば、4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2',4'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エタンから選ばれる化合物と、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸または1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル化合物が挙げられる。
【0094】
キノンジアジド化合物(B1)は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物において、感光性酸発生剤(B)としてキノンジアジド化合物(B1)を用いる場合、キノンジアジド化合物(B1)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜30質量部、さらに好ましくは15〜30質量部である。キノンジアジド化合物(B1)の含有量が前記下限値以上であると、未露光部の残膜率が向上し、マスクパターンに忠実な像が得られやすい。キノンジアジド化合物(B1)の含有量が前記上限値以下であると、パターン形状に優れた樹脂膜が得られやすく、製膜時の発泡も防止できる傾向にある。
【0095】
《他の酸発生剤(B2)》
他の酸発生剤(B2)は、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物およびジアゾメタン化合物から選ばれる少なくとも1種である。
【0096】
オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩が挙げられる。好ましいオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0097】
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の具体例としては、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン;フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0098】
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物およびこれらの化合物のα−ジアゾ化合物が挙げられる。好ましいスルホン化合物の具体例としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタンが挙げられる。
【0099】
スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類が挙げられる。好ましいスルホン酸化合物の具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートが挙げられる。
【0100】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミドが挙げられる。
【0101】
ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾ
メタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)
ジアゾメタンが挙げられる。
【0102】
他の酸発生剤(B2)は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物において、酸発生剤(B)として他の酸発生剤(B2)を用いる場合、酸発生剤(B2)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。酸発生剤(B2)の含有量が前記下限値以上であると、露光部の硬化が充分となり、耐熱性が向上しやすい。酸発生剤(B2)の含有量が前記上限値以下であると、露光光に対する透明性が低下することなく、解像度が高いパターンが得られやすい。
【0103】
〈架橋剤(C)〉
本発明の樹脂組成物は、塗膜の硬化性を向上させるため、架橋剤(C)をさらに含有することができる。架橋剤(C)は、重合体(A)と反応する、または架橋剤同士で反応する架橋成分(硬化成分)として作用する。
【0104】
架橋剤(C)としては、例えば、−CH2ORで表される基(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアセチル基である)を少なくとも2つ有する架橋剤(C1)(以下「活性メチレン基含有架橋剤(C1)」ともいう。)、他の架橋剤(C2)が挙げられる。
【0105】
本発明の樹脂組成物において、架橋剤(C)を用いる場合、架橋剤(C)の全含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常1〜60質量部、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部である。架橋剤(C)の含有量が前記範囲にあると、解像度に優れた樹脂膜が形成される傾向にある。また、組成物の硬化性にも優れる。
【0106】
《活性メチレン基含有架橋剤(C1)》
活性メチレン基含有架橋剤(C1)は、−CH2ORで表される基を少なくとも2つ有する架橋剤である。式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアセチル基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。
【0107】
ここで、−CH2ORで表される基は活性メチレン基を有することから、熱、酸または塩基により活性メチレン基が重合体(A)の芳香環と求核反応し、架橋反応が進行する。ここで「活性メチレン基」とは、2個の電子供与性基に挟まれたメチレン基を意味する。
【0108】
架橋剤(C1)としては、例えば、式(c1−1)で表される基を2つ以上有する化合物、式(c1−2)で表される基を2つ以上有する化合物が挙げられる。
【0109】
【化22】
式(c1−1)および(c1−2)中、mは1または2であり、nは0または1であり、m+nは2であり、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアセチル基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、*は結合手である。
【0110】
架橋剤(C1)としては、例えば、ポリメチロール化メラミン、ポリメチロール化グリコールウリル、ポリメチロール化ベンゾグアナミン、ポリメチロール化ウレア等の窒素化合物;前記窒素化合物中の活性メチロール基(N原子に結合したCH2OH基)の全部または一部がアルキルエーテル化またはアセトキシ化された化合物が挙げられる。ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、これらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化またはアセトキシ化されていない活性メチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果、オリゴマー成分が形成されていてもよい。
【0111】
架橋剤(C1)としては、具体的には、ポリメチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のメラミン系架橋剤;ポリメチロール化グリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等のグリコールウリル系架橋剤が挙げられる。これらの中でも、メラミン系架橋剤が好ましい。
【0112】
架橋剤(C1)としては、そのほか、メチロール基含有フェノール化合物、アルキルメチロール基含有フェノール化合物、アセトキシメチル基含有フェノール化合物を挙げることもできる。具体的には、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0113】
【化23】
架橋剤(C1)は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
《他の架橋剤(C2)》
他の架橋剤(C2)としては、例えば、オキシラン環含有化合物、オキセタン環含有化合物、イソシアネート基含有化合物(ブロック化されたものを含む。)、オキサゾリン環含有化合物、アルデヒド基含有フェノール化合物が挙げられる。
【0115】
オキシラン環含有化合物としては、分子内にオキシラン環(オキシラニル基ともいう)が含有されていればよく、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール−キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール−キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール−ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0116】
オキシラン環含有化合物の具体例としては、例えば、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレン/ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレン/ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
架橋剤(C2)は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0117】
〈溶剤(D)〉
本発明の樹脂組成物は、溶剤(D)を含有していてもよい。このような溶剤(D)を用いることで樹脂組成物の取扱い性を向上させたり、保存安定性や粘度を調節したりすることができる。
【0118】
溶剤(D)としては、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ-ブチロラクン等のラクトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
が挙げられる。
【0119】
溶剤(D)は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物において、溶剤(D)の含有量は、当該組成物の用途・取扱性等の観点から適宜決定されるため特に限定されないが、当該組成物中の溶剤(D)以外の成分の合計100質量部に対して、通常40〜900質量部、好ましくは60〜400質量部である。
【0120】
〈その他添加剤〉
本発明の樹脂組成物には、その他、重合体(A)以外のアルカリ可溶性重合体、密着助剤、架橋微粒子、レベリング剤、界面活性剤、増感剤、無機フィラー、クエンチャー等の各種添加剤を、本発明の目的および特性を損なわない範囲で含有させることができる。
【0121】
〈樹脂組成物の調製方法〉
本発明の樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより調製できる。また、ゴミを取り除くために、各成分を均一に混合した後、得られた混合物をフィルター等で濾過してもよい。
【0122】
〔樹脂膜〕
本発明の樹脂膜は、例えば上述の感光性樹脂組成物から形成される。前記感光性樹脂組成物を用いることにより、伸び物性および解像度が高いパターン化樹脂膜を製造することができる。
【0123】
したがって、本発明の感光性樹脂組成物は、回路基板(半導体素子)、半導体パッケージまたは表示素子等の電子部品が有する、表面保護膜、層間絶縁膜および平坦化膜等の形成材料や、高密度実装基板用絶縁膜材料、感光性接着剤および感圧接着剤として好適に用いることができる。
【0124】
本発明の樹脂膜において、パターン化樹脂膜の製造例を以下に示す。この製造例は、本発明の感光性樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、所望のマスクパターンを介して前記塗膜を露光する工程(露光工程)、および、アルカリ性現像液により前記塗膜を現像して、ポジ型の場合は露光部を、ネガ型の場合は非露光部を溶解・除去することにより、支持体上に所望のパターンを形成する工程(現像工程)、ならびに必要に応じて、前記パターンを熱硬化させる工程(硬化工程)を有する。
【0125】
[1]塗布工程
塗布工程では、前記組成物を、最終的に得られる樹脂膜の膜厚が例えば0.1〜100μmとなるように、支持体上に塗布する。これをオーブンやホットプレートを用いて、通常、50〜140℃で10秒〜10分間加熱する。このようにして支持体上に塗膜を形成する。
【0126】
支持体としては、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、金属薄膜付きウエハ、ガラス基板、石英基板、セラミックス基板、アルミ基板、およびこれらの支持体の表面に半導体チップを有する基板が挙げられる。塗布方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法が挙げられる。
【0127】
[2]露光工程
露光工程では、所望のマスクパターンを介して、例えばコンタクトアライナー、ステッパーまたはスキャナーを用いて、上記塗膜に対して露光を行う。露光光としては、紫外線、可視光線などが挙げられ、通常、波長200〜500nmの光(例:i線(365nm))を用いる。活性光線の照射量は、感光性樹脂組成物中の各成分の種類、配合割合、樹脂膜の厚さなどによって異なるが、露光光にi線を使用する場合、露光量は通常100〜1500mJ/cm2である。
【0128】
また、ネガ型の感光性樹脂組成物を用いる場合は、露光後に加熱処理を行うこともできる。以下、この処理を「PEB処理」ともいう。PEB条件は、感光性樹脂組成物の各成分の含有量および塗膜の膜厚等によって異なるが、通常70〜150℃、好ましくは80〜120℃で、1〜60分間程度である。
【0129】
[3]現像工程
現像工程では、アルカリ性現像液により前記塗膜を現像して、ポジ型の場合は露光部を、ネガ型の場合は非露光部を溶解・除去することにより、支持体上に所望のパターンを形成する。現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等が挙げられる。現像条件は、通常、20〜40℃で1〜10分間程度である。
【0130】
アルカリ性現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、コリン等のアルカリ性化合物を、1〜10質量%濃度となるように水に溶解させたアルカリ性水溶液が挙げられる。前記アルカリ性水溶液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性の有機溶剤および界面活性剤などを適量添加することもできる。なお、アルカリ性現像液で塗膜を現像した後は、水で洗浄し、乾燥してもよい。
【0131】
[4]硬化工程
例えば硬化膜としての特性を充分に発現させるため、必要に応じて、上述の塗膜またはパターンを加熱により充分に硬化させることができる。硬化条件は特に限定されないが、硬化膜の用途に応じて、例えば100〜250℃の温度で30分〜10時間程度加熱する。硬化を充分に進行させたり、パターン形状の変形を防止したりするため、多段階で加熱することもできる。
【0132】
〔電子部品〕
本発明の感光性樹脂組成物を用いれば、上述の樹脂膜を有する電子部品、例えば表面保護膜、層間絶縁膜および平坦化膜から選択される1種以上の樹脂膜を有する、回路基板(半導体素子)、半導体パッケージまたは表示素子等の電子部品を製造することができる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」の意味で用いる。
【0134】
1.物性の測定方法
重合体(A)その他の重合体の重量平均分子量(Mw)の測定方法
下記条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にてMwを測定した。
・カラム:東ソー社製カラムのTSK−MおよびTSK2500を直列に接続
・溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド
・温度:40℃
・検出方法:屈折率法
・標準物質:ポリスチレン
【0135】
2.重合体の合成
重合体の合成に用いたフェノール化合物(a1-1)〜(a1’)を以下に示す。
【0136】
【化24】
【0137】
[実施例A1]
フラスコに、重合溶媒としてジメチルアセトアミドを208g、および共沸溶媒としてトルエンを11g装入した。このフラスコに、フェノール化合物として化合物(a1-1)を84g(0.24mol)、ハロゲン化合物として1,5−ジブロモペンタンを55g(0.24mol)、重合触媒として炭酸カリウムを72g(0.52mol)加えた。フラスコを130℃のオイルバスで6時間加熱しながら、トルエンと重合反応で副生する水とを共沸させた。その後、フラスコ内に生成した無機塩を濾別し、濾別後の溶液を塩酸水溶液(1N)に注いだ。析出した沈殿物を水洗し、重合体(A1)を得た。
【0138】
重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は28500であった。また、重合体(A1)の13C−NMR(DMSO−d6)において、1,5−ジブロモペンタンのハロゲン原子に直結している炭素のシグナル(3.5ppm)は消失し、酸素原子に直結している炭素のシグナル(4.0ppm)を確認できた。1H−NMR(DMSO−d6)において、フェノール性水酸基のピーク(8.7ppm)のピーク面積が、芳香環に結合した水素原子のピーク(6.0〜7.0ppm)のピーク面積の2.5倍であることから、フェノール化合物(a1-1)由来の構造中に平均して2.5個のフェノール性水酸基が存在していることが確認できた。
【0139】
[実施例A2〜A7、参考例A8〜A9、比較例A1]
実施例A1において、表1に示す種類および量のフェノール化合物、ハロゲン化合物、重合触媒、重合溶媒、共沸溶媒を用いたこと以外は実施例A1と同様にして、重合体(A2)〜(A10)を得た。
【0140】
【表1】
【0141】
3.感光性樹脂組成物の調製
感光性樹脂組成物の調製に用いた各成分を以下に示す。
感光性酸発生剤(B1):1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エタンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸との縮合物(モル比=1.0:2.0)
感光性酸発生剤(B2):2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン
【0142】
【化25】
溶剤(D1):乳酸エチル
【0143】
[実施例B1]
重合体(A1)100部、感光性酸発生剤(B1)20部、および架橋剤(C1−1)10部を、溶剤(D1)180部に25℃で溶解させ、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、下記評価を行った。
【0144】
[実施例B2〜B7、B10、参考例B8〜B9、比較例B1〜B2]
実施例B1において、表2に示すとおりに配合成分の種類および量を変更したこと以外は実施例B1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、下記評価を行った。
【0145】
4.評価
感光性樹脂組成物の評価方法は以下のとおりである。
4−1.解像度および残膜率
6インチのシリコンウエハに感光性樹脂組成物をスピンコートし、その後、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、厚さ10μmの均一な樹脂塗膜を作製した。次いで、アライナー(Suss Microtec社製、型式「MA−150」)を用い、高圧水銀灯からの紫外線を、パターンマスクを介して、波長350nmにおける露光量が500mJ/cm2となるように樹脂塗膜に照射した。次いで、樹脂塗膜を、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて23℃で120秒間、浸漬現像した。次いで、現像後の樹脂塗膜を、超純水にて30秒間洗浄し、エアーにて風乾した後、顕微鏡(オリンパス(株)社製、MHL110)にて観察し、解像した最小パターンのパターン寸法を解像度とした。また、現像前後の膜厚差から残膜率(100%×(現像後の膜厚/現像前の膜厚))を算出し、下記評価基準にて評価した。なお、実施例B10、比較例B2の場合にのみ、露光後にホットプレートを用いて110℃で3分間加熱した。
AA:残膜率90%以上
BB:残膜率80%以上90%未満
CC:残膜率80%未満
【0146】
4−2.伸び物性
離型材付き基板上に、感光性樹脂組成物20gを塗布し、その後、オーブンを用いて110℃で5分間加熱し、厚さ20μmの均一な樹脂塗膜を作製した。次いで、樹脂塗膜を、対流式オーブンを用いて200℃で1時間加熱した。
【0147】
離型材付き基板から、加熱後の樹脂塗膜を剥離し、5cm×0.5cmの短冊状に切断した。樹脂塗膜の破断伸びを引張圧縮試験機(SDWS−0201型、(株)今田製作所製)によって測定した。測定条件は、チャック距離=2.5cm、引張速度=5mm/分、測定温度=23℃とした。結果は、5回の測定値の平均値である。
以上の結果を表2に示す。
【0148】
【表2】