特許第6206005号(P6206005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206005
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】媒体処理装置および自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20170925BHJP
   B65H 31/30 20060101ALI20170925BHJP
   G06K 13/12 20060101ALI20170925BHJP
   G06K 13/14 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G07D9/00 436A
   B65H31/30
   G06K13/12 D
   G06K13/14 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-180453(P2013-180453)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-49660(P2015-49660A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069615
【弁理士】
【氏名又は名称】金倉 喬二
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 光永
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−038260(JP,A)
【文献】 特開2011−103016(JP,A)
【文献】 実開平06−033257(JP,U)
【文献】 実公昭49−043579(JP,Y1)
【文献】 特開平09−022489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
B65H 31/30
G06K 13/12
G06K 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する媒体搬送路と、
前記媒体搬送路から顧客が取り忘れた前記媒体を搬送して取り込む媒体取り込み部とを備え、
前記媒体取り込み部は、前記媒体を収納する媒体収納部を有し、
前記媒体収納部は、前記媒体取り込み部に対して回動可能に配置され、収納した前記媒体を載置する底面部と、回動したときに前記媒体の落下を防止する壁面部とを有することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体処理装置において、
前記媒体収納部は、回動軸設けられ、前記回動軸を中心に回動することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体処理装置において、
前記回動軸は、前記媒体を搬送する方向に対して直交する方向に配置されることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の媒体処理装置において、
前記媒体を取り込むための媒体取り込み口側を前面とし、
前記回動軸は、前記媒体収納部の後面側に配置され、
前記壁面部は、前記媒体収納部の前面側に配置されていることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項5】
媒体を搬送する媒体搬送路と、
前記媒体搬送路から顧客が取り忘れた前記媒体を搬送して取り込む媒体取り込み部とを備え、
前記媒体取り込み部は、前記媒体を収納する媒体収納部を有し、
前記媒体収納部は、前記媒体取り込み部に対して回動軸に回動可能に配置され、前記媒体を搬送する方向に対して直交する方向に配置された前記回動軸を中心に回動し、
さらに、前記媒体収納部は、収納した前記媒体を載置する底面部を有し、
前記底面部は、該底面部から上方に向かって突出する突出部が配置されていることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項6】
請求項に記載の媒体処理装置において、
記突出部は、前記媒体を搬送する方向に対して直交する方向に稜線が伸びるように配置されていることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の媒体処理装置において、
前記媒体収納部は、前記回動軸を設けた側の端部に突き当て部を有し、
前記突き当て部と前記底面部との接線から前記稜線までの距離は、前記媒体の前記回動軸側の前記先端部から前記媒体の重心までの距離より長くしたことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の媒体処理装置において、
前記媒体収納部は、回動したときに収納した前記媒体を前記突出部が係止することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項9】
請求項から請求項8のいずれか1項に記載の媒体処理装置において、
前記底面部は、孔部を有していることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の媒体処理装置を有し、
前記媒体処理装置が引き出された場合に、前記媒体収納部は回動可能に設けられることを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客が取り忘れた通帳を収納する媒体処理装置、その媒体処理装置を備えた自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、銀行、信用金庫、郵便局等の金融機関に配設されたATM(Automatic Teller Machine)等である自動取引装置は、保守される面で大別すると、接客面である前面から保守する前面保守機と、接客面の裏面である後面から保守する後面保守機との2種類が存在する。この2種類の自動取引装置のうち、主に設置場所の都合に応じて前面保守機か後面保守機のいずれかが設置される。これらの自動取引装置のうち、前面保守機においては装置前面側に設けられたフロントパネルが開けられて、係員や保守員などにより点検や修理等の保守作業が行われる。
【0003】
このような自動取引装置は、通帳の記帳や通帳繰越に伴う新規発行などの処理を行うための媒体処理装置としての通帳記帳装置を有している。
従来の通帳記帳装置は、通帳の記帳などの処理が完了し、通帳挿入排出口へ排出した通帳を顧客が取り忘れたときに、次の顧客が取引を開始できるようにするため、前に取引を行った顧客が取り忘れた通帳を通帳挿入排出口から搬送し、装置の後面側に配置されている媒体取り込み部に収納するようにするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−43427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前面保守機である自動取引装置に備えた従来の通帳記帳装置においては、係員が自動取引装置前面に開閉可能に設置されたフロントパネルを開けるのみならず、通帳記帳装置を前面側に引き出し、引き出した通帳記帳装置の後面に配置された開口部に手を伸ばして手探りで収納された取り忘れ通帳を取り出すようになっている。そのため、取り忘れた通帳を取り出すまでに時間がかかるという問題がある。また、係員が開口部から媒体取り込み部を視認することが構造的に困難であり、係員は収納された通帳を手探りで取り出さなければならない。そのため、装置内部の危険な箇所に手を触れてしまう可能性があり、作業の安全性の確保が不十分となるという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、前面保守機における媒体処理装置の媒体取り込み部に収納された通帳を取り出す作業の効率を向上させ、かつ、作業の安全性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明は、媒体を搬送する媒体搬送路と、前記媒体搬送路から顧客が取り忘れた前記媒体を搬送して取り込む媒体取り込み部とを備え、前記媒体取り込み部は、前記媒体を収納する媒体収納部を有し、前記媒体収納部は、前記媒体取り込み部に対して回動可能に配置され、収納した前記媒体を載置する底面部と、回動したときに前記媒体の落下を防止する壁面部とを有することを特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
このようにした本発明は、前面保守機における媒体処理装置の媒体取り込み部に収納された通帳を取り出す作業の効率を向上させ、かつ、作業の安全性を確保することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施例における自動取引装置の概略側面図
図2】第1の実施例における通帳記帳装置の概略側面図
図3】第1の実施例における取り忘れ収納部の斜視図
図4】第1の実施例における自動取引装置から通帳記帳装置が引き出された状態の説明図
図5】第1の実施例における後面保守機の説明図
図6】第2の実施例における収納トレイの形状の説明図
図7】第2の実施例における取り忘れ収納部の斜視図
図8】第2の実施例における収納トレイの形状と通帳の重心の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明による媒体処理装置および自動取引装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、第1の実施例における自動取引装置の概略側面図である。
図1において、自動取引装置1は、通帳記帳装置2と、フロントパネル3と、紙幣入出金部4と、操作表示部5とにより構成されており、主にフロントパネル3側から装置点検や保守作業などが行われる前面保守機である。
なお、本実施例においては、フロントパネル3、紙幣入出金部4、操作表示部5が配置されている自動取引装置1の側面を前面という。
【0011】
自動取引装置1は、例えば銀行、信用金庫、郵便局等の金融機関に配設されたATMであって、金融機関の顧客が自ら操作して入金、出金、通帳記帳、残高照会、振込、振替、送金等の金融サービスを利用するための装置である。
なお、本実施例での顧客とは、金融機関に自己の口座を開設し、金融サービスを利用する者である。
媒体処理装置としての通帳記帳装置2は、顧客により挿入された通帳に記帳し、また、新規に通帳を発行する機能を有する。また、通帳記帳装置2は自動取引装置1のフロントパネル3が開けられると、自動取引装置1の前面側に引き出すことができるように設置されている。
【0012】
また、通帳記帳装置2は、内部の後面側に回動可能な取り忘れ収納部100を有している。この取り忘れ収納部100は、顧客が取り忘れた通帳を通帳挿入排出口11から搬送して、取り忘れ収納部100に収納し、次の取引が開始できるようにするものである。通帳の取り忘れは、通帳記帳などの処理が完了し、後述する通帳挿入排出口11へ通帳を搬送し、顧客が引き抜くことができる状態としてから所定の時間が経過すると、顧客が通帳を取り忘れたものと判定し、取り忘れ収納部100に収納する。なお、通帳記帳装置2の取り忘れ収納部100に収納された通帳の取り出しについては後述する。
【0013】
フロントパネル3は、自動取引装置1の前面に開閉可能に設置され、取り忘れ収納部100に収納された通帳を取り出す作業のほか、通帳の装填、詰まった通帳の除去、点検、修理等の作業が行われる際に係員や保守員により開けられる。
紙幣入出金部4は、顧客が投入した取引媒体としての紙幣を受け入れ、これを鑑別および計数して収納し、また顧客に支払う紙幣を計数して顧客に引き渡す。
操作表示部5は、タッチパネル等の入力装置の機能を併せ持つ表示装置であり、顧客に対する案内表示を行い、また、顧客の操作を受け付ける。
また、図示しないカード取扱部は、挿入された顧客のキャッシュカード等の磁気ストライプに記録されている口座番号等の口座情報の読み取りおよび書き込みを行う。
【0014】
図2は、第1の実施例における通帳記帳装置の概略側面図である。
図2において、通帳記帳装置2は、上述した取り忘れ収納部100と、通帳挿入排出口11と、通帳搬送路12と、搬送ローラ対13と、磁気データリードライト部14と、光学読み取り部15と、ページめくり部16と、印字部17と、通帳発行用カセット18と、切り替えブレード19とにより構成されている。
図中矢印Aは、前面側に配置された通帳挿入排出口11から後面側に配置された取り忘れ収納部100に通帳搬送路12を介して顧客が取り忘れた通帳10を搬送する方向を示している。
【0015】
なお、本実施例の媒体としての通帳10は、中紙用紙および表紙用紙を中綴じとした構成とされており、表紙用紙には顧客の口座番号等の通帳情報を記憶する磁気ストライプが設けられている。また、中紙用紙の各ページには、ページ数を示すバーコード等のページマークがあらかじめ印刷されている。
図3は、第1の実施例における取り忘れ収納部の斜視図である。
図3において、媒体取り込み部としての取り忘れ収納部100は、顧客が取り忘れた通帳10を収納するものである。この取り忘れ収納部100は、通帳10を収納する収納トレイ101と、収納トレイ101に設けられた回動軸102の軸受である図示せぬ孔とから構成されている。
【0016】
媒体収納部としての収納トレイ101は、ページが開かれた状態の通帳を収納できる大きさの箱形状のものである。この収納トレイ101は、後面側に通帳を搬送する方向(図2中または図3中の矢印Aが示す方向)に対して直交する方向に回動軸102が配置され、通帳記帳装置2が自動取引装置1から引き出されたときに、回動軸102を支点として回動可能に設けられている。
収納トレイ101は、壁面部101aと、底面部101bと、突き当て部101dと、上述した回動軸102とにより構成されている。
【0017】
壁面部101aは、箱形状の収納トレイ101を構成する部材であり、収納トレイ101の回動軸102を設けた側の端部の反対側の端部に配置される前面側の壁面として用いられる。この壁面部101aは、係員が収納トレイ101に収納された通帳10を取り出すために収納トレイ101を回動させたときに、通帳10の落下を防止することができる高さで設けられている。
【0018】
底面部101bは、収納した通帳10を載置する平板状のものであり、収納トレイ101が通帳記帳装置2に対してロックされた状態であっても係員が収納された通帳を視認可能にする孔部101c(図に示すような円形ではなく細長い単数あるいは複数の隙間でもよい)が複数設けられている。
突き当て部101dは、収納トレイ101の回動軸102を設けた側の端部に配置されており、図中矢印Aが示す方向に搬送され取り込まれた通帳10が突き当てられる。
回動軸102は、取り忘れ収納部100の後面側に、図中矢印Aが示す方向に対して直交する方向に配置され、収納トレイ101を回動可能とするものである。
【0019】
図2の説明に戻り、図中1点鎖線で示した収納トレイ101は閉じられた状態を表している。
収納トレイ101は、図示しない回動を規制するロック機構により図中1点鎖線で示した状態でロックされている。手動でロック機構を操作して解除すると、図中実線で示した状態まで図中矢印Bで示す方向に自重で回動することで、通帳10が取り出し可能な角度まで開くことができるものである。
係員が収納された通帳10を取り出すために図中矢印Bで示す方向へ収納トレイ101を回動させると、図中実線で示したように収納トレイ101は開かれた状態となる。
【0020】
このようにして、係員は通帳10が収納された収納トレイ101を図中矢印Bで示す方向へ回動させて開き、自動取引装置1の前面側から図中矢印Eで示す方向へ通帳10を取り出す作業を行うことが可能となる。
通帳挿入排出口11は、顧客により通帳10が挿入され、取引内容が記帳された通帳10を排出する。もしくは通帳挿入排出口11は、新規に発行した通帳10を排出する。
【0021】
媒体搬送路としての通帳搬送路12は、通帳挿入排出口11と接続されており、顧客により通帳挿入排出口11に挿入された通帳10を搬送ローラ対13により搬送する経路である。
磁気データリードライト部14は、通帳10の磁気ストライプに記憶されている顧客の口座番号等の通帳情報の読み取りおよび書き込みを行う。
光学読み取り部15は、ページマークおよび印字済みの行を光学的に読み取る。
【0022】
ページめくり部16は、光学読み取り部15が読み取ったページマークおよび印字済みの行に基づいて通帳10のページをめくる。
印字部17は、通帳10に取引内容を印字する。
通帳発行用カセット18は、未使用の通帳の束20を収容し、新規に発行する場合には通帳10を通帳搬送路12に繰り出す。
【0023】
切り替えブレード19は、搬送ローラ対13が図中矢印Aで示す方向に搬送する取り忘れた通帳10を、通帳搬送路12から搬送方向を切り替えて取り忘れ収納部100に案内する。この切り替えブレード19と搬送ローラ対13により媒体取り込み口が形成されている。
また、通帳記帳装置2は、CPU(Central Processing Unit)等の制御部およびメモリ等の記憶部により構成され、記憶部に格納された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて制御部により通帳記帳装置2全体の制御を行う。
なお、前面保守機の通帳記帳装置に用いる取り忘れ収納部として説明したが、それに限られることなく、後面保守機の通帳記帳装置に用いる取り忘れ収納部としてもよい。
【0024】
例えば、図5は第1の実施例における後面保守機の説明図であり、自動取引装置1の後面に開閉可能に設置されているリア扉6を開けた状態を示しており、この後面保守機においてはリア扉6が開けられて、係員や保守員などにより点検や修理等の保守が行われる。
図5において、後面保守機の場合では、取り忘れ収納部に収納された通帳を取り出すときに、取り忘れ収納部が通帳記帳装置の後面側に配置されていることにより、係員が自動取引装置の後面の扉を開けるのみで、通帳記帳装置の後面に配置した開口部から収納された通帳を視認してから手を入れて取り出すことができるため、作業の効率および安全性はよい。
【0025】
それゆえ、収納された通帳10を係員が取り出すときには、リア扉6を開け、収納した通帳10を通帳記帳装置2の後面に配置した開口部21から係員が手を入れて容易に取り出すことができるため、前面保守機のような問題はないが、本実施例の前面保守機の通帳記帳装置に用いる取り忘れ収納部を用いることができるため、後面保守機の取り忘れ収納部を新たに設計する手間をなくすことができる
上述した構成の作用について説明する。
まず、通帳記帳装置2が行う通帳10の記帳処理について図2を参照しながら説明する。
【0026】
取引を開始した顧客が通帳10を通帳挿入排出口11に挿入すると、搬送ローラ対13は、挿入された通帳10を図中矢印Aが示す方向に搬送する。
磁気データリードライト部14は、搬送ローラ対13により搬送された通帳10の磁気ストライプに記憶されている顧客の口座番号等の通帳情報の読み取りを行う。
光学読み取り部15は、通帳10に印刷されたページマークと、印字済みの行とを光学的に読み取る。
【0027】
印字部17は、光学読み取り部15により読み取ったページマークおよび印字済みの行に基づいて取引内容を印字する。
印字部17の印字によりページが満たされたとき、ページめくり部16は通帳10の次のページを開く。また、異なるページに印字する指示があるとき、ページめくり部16は所定のページを開く。
その後、印字部17は、ページめくり部16が開いた通帳10のページに印字を行う。
印字部17により取引内容の印字が完了し、通帳10の磁気ストライプに記憶させる磁気データを更新するときには、磁気データリードライト部14は磁気データの書き込みを行う。
【0028】
搬送ローラ対13は、磁気ストライプの磁気データを更新された通帳10、もしくは新規に発行された通帳10を通帳挿入排出口11へ排出し、顧客が通帳10を引き抜くことができる状態にする。
顧客が通帳10を通帳挿入排出口11から引き抜いた場合、通帳記帳装置2は取引を完了し、次の取引まで待機する。
一方、顧客が通帳10を通帳挿入排出口11から引き抜かずに、通帳10が通帳挿入排出口11へ搬送されてから所定の時間が経過した場合、通帳記帳装置2は、顧客が通帳10を取り忘れたと判定する。
【0029】
顧客が通帳10を取り忘れたと判定した通帳記帳装置2は、通帳10を搬送ローラ対13により図中矢印Aで示す方向に搬送し、切り替えブレード19を取り忘れ収納部100へ導く方向に切り替える。
切り替わった切り替えブレード19に導かれた通帳10は、取り忘れ収納部100の突き当て部101dに通帳10が突き当たり、ほぼ突き当て部201dの位置に揃えられた状態で収納トレイ101に収納される。
その後、通帳記帳装置2は、取引を完了し、次の取引まで待機する。
【0030】
次に、係員により行われる収納トレイ101に収納された通帳10を取り出す作業について図4に基づき、図2を参照しながら説明する。
図4は、第1の実施例における自動取引装置から通帳記帳装置が引き出された状態の説明図である。
図4において、自動取引装置1は、収納トレイ101に収納した通帳10を係員が取り出す際に、フロントパネル3が図中矢印Cで示す方向に開けられ、通帳記帳装置2が図中矢印Dで示す方向(前面側)に引き出された状態となる。
【0031】
前面側に通帳記帳装置2が引き出された状態で、図2に示すように収納トレイ101は係員により手動でロック機構が解除され、回動軸102を中心として図2中の矢印Bで示す方向に回動する。
また、収納トレイ101が回動したとき、収納した通帳10は壁面部101aに当接するため、落下しない。
収納された通帳10は、係員が回動させた収納トレイ101の前面側から取り出される。
【0032】
以上説明したように、第1の実施例では、収納トレイに通帳を搬送する方向に対して直交する方向に回動軸を設け、収納トレイを回動可能とする構造としたことにより、係員が収納トレイの前面側から通帳を視認して取り出すことができるため、前面保守機における媒体処理装置の媒体取り込み部に収納された通帳を取り出す作業の効率を向上させ、かつ、作業の安全性を確保することができるという効果が得られる。
また、後面保守機においても、第1の実施例の前面保守機の媒体処理装置に用いる媒体取り込み部を用いることができるため、後面保守機の媒体取り込み部を新たに設計する手間をなくすことができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0033】
本実施例においては、第1の実施例の収納トレイ101の前面側に壁面部101aを設けないようにしたことにより、係員が収納トレイを開いて通帳を取り出す際に手を入れる範囲が広くなるとともに通帳が視認性しやすくなるため、通帳記帳装置の取り忘れ収納部に収納された通帳を取り出す作業の効率を向上させ、かつ、作業の安全性を確保することができるようにする。さらに、収納トレイを開いたときに、通帳が落下しないように通帳の重心を考慮に入れて底面部に突出部を配置させている。
【0034】
図6は、第2の実施例における収納トレイの形状の説明図であり、図6(a)は第1の実施例における収納トレイ101の形状、図6(b)は第2の実施例における収納トレイ201の形状であり、収納トレイ201が閉じられた状態を示したもの、図6(c)は第2の実施例における収納トレイ201の形状であり、収納トレイ201が開かれた状態を示したものである。
【0035】
なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
また、通帳10の重心が回動軸側から最も離れた状態、つまり通帳10が収納トレイ201から最も落ちやすい状態を示すため、便宜上、通帳10は平板状に開かれた状態で示している。
まず、第1の実施例における収納トレイ101の形状の問題点を図6(a)に基づきながら説明する。
【0036】
図6(a)に示すように、第1の実施例における収納トレイ101の形状は、箱形状であり、前面側に壁面部101aを有している。
この壁面部101aは、係員が収納された通帳10を取り出すために収納トレイ101を回動させたときに、収納された通帳10の落下を防止する利点がある。一方で、図中矢印Eで示す通帳を取り出す方向に壁面部101aが存在することから、通帳10を取り出す方向に動かす際の障害となるため、通帳10を取り出す作業の効率は十分ではない。また、壁面部101aの存在により収納トレイ101に収納された通帳10を視認しにくいため、収納された通帳10の視認性も十分ではない。
【0037】
そこで、本実施例においては図6(c)に示すように、壁面部201aを収納トレイ201に設けていないことにより、通帳10を取り出す方向に動かす際の障害とならないため、通帳10を取り出す作業の効率が向上するとともに、収納トレイ201に収納された通帳10の視認性を向上させて作業の安全性を確保する。さらに、通帳10を取り出すときに収納された通帳10の落下を防止するため、底面部201bの形状を変更する。
第1の実施例における壁面部101aは箱形状の収納トレイ101を構成する前面側の部材としたが、本実施例における壁面部201aは収納トレイ201から分離させ、通帳記帳装置2に固定されているものとする。
【0038】
また、第1の実施例における底面部101bは平板状の形状としたが、本実施例における底面部201bは収納した通帳10を載置する平板状の底面部に図2中の矢印Aで示す通帳を搬送する方向に対して直交する方向に稜線が伸びる突出部201eが配置されており、収納トレイ201を開いたときに収納された通帳10の落下を防止する。突出部201eの設置位置については後述する。
なお、図7は第2の実施例における取り忘れ収納部の斜視図であり、図7に示すように第2の実施例の底面部201bについては、第1の実施例の底面部101bと同様に、収納された通帳10を係員が視認するための孔部201cが設けられている。なお、壁面部201aは収納トレイ201から分離させたため、図7には図示していない。
【0039】
図6(b)に示すように、切り替わった切り替えブレード19に導かれた通帳10は、収納トレイ201の突き当て部201dに突き当たり、突き当て部201dに通帳10が当接した状態で収納トレイ201に収納される。
収納トレイ201が開いたときに、図6(c)に示すように、壁面部201aが収納トレイ201と一体になって構成されていないことにより、通帳10を取り出すときに手を入れる範囲が第1の実施例より広くなり、かつ、通帳10を視認しやすくすることができる。
【0040】
次に、収納トレイ201が開いたとき、収納された通帳10の落下を防止する突出部201eの設置位置について説明する。
ここでは、係員が収納トレイ201を開いたとき、収納トレイ201から最も落下しやすい状態にある通帳10の重心の位置に基づいて、通帳10の落下を防止できる突出部201eの設置位置を求める。
図8は、第2の実施例における収納トレイの形状と通帳の重心の説明図であり、図8(a)は中央のページを開いた通帳10の重心を示したものであり、図8(b)は表紙用紙10dのみを開いた通帳10の重心を示したものであり、図8(c)は収納トレイ201に収納され、収納トレイ201を開いたときの表紙用紙10dのみを開いた通帳10の重心を示したものである。
【0041】
まず、図8(a)に示すように、中央のページから開いた通帳10の場合、通帳10の回動軸側の一端である先端部10aから綴じ目部を挟んだ他端である先端部10bまでの長さをLとすると、通帳10の重心Gは、通帳10の先端部10aから先端部10b側にL/2の位置、つまり先端部10aと先端部10bの中央の綴じ目部となる。これは、先端部10a側と先端部10b側とのページ数が同一であるためである。
次に、先端部10aから最も遠い位置であり、収納トレイ201から最も落下しやすい通帳10の重心の位置を求めると、図8(b)に示すように、通帳10の表紙のみを開いた場合、重心Gは、中紙用紙10cの重心G1と表紙用紙10dの重心G2から求めることができる。
【0042】
中紙用紙10cは先端部10b側に綴じ目部から半分に折りたたんだ状態であるため、中紙用紙10cの重心G1の位置は、先端部10aから先端部10b側にL/2+L/4の位置となる。
表紙用紙10dは開いた状態であるため、表紙用紙10dの重心G2の位置は、通帳10の先端部10aから先端部10b側にL/2の位置となる。
ここで、中紙用紙10cの重量をW1とし、表紙用紙10dの重量をW2とすると、重心Gの通帳10の綴じ目部からの距離Nは、
N=W1/(W1+W2)×L/4
となる。よって、先端部10aからの通帳10の重心Gの距離は、
N+L/2
となる。
【0043】
このときの通帳10の重心Gの位置は、収納トレイ201から最も落下しやすい通帳10の重心の位置となる。
そこで、通帳10の重心Gの位置が収納トレイ201から最も落下しやすい通帳10の重心の位置であっても、収納トレイ201を開いたときに、突き当て部201dと底面部201bとの接線から突出部201eの稜線までの距離を、通帳10の回動軸側の先端部10aから通帳10の重心までの距離より長くすることで、収納された通帳10の落下を突出部201eが係止することで防止する。
【0044】
なお、通帳10の回動軸側の先端部10aから通帳10の重心までの距離に、通帳10が突き当て部201dから離れ得る距離を実験的に求めたものを加えてもよい。
つまり、図8(c)に示すように、通帳10の先端部10aから突出部201eまでの直線距離をXとすると、重心Gの位置がXの位置より回動軸102側とすることにより、通帳10に突出部201eの稜線を回動軸とした図中時計回りの方向のモーメントが働くため、通帳10は収納トレイ201から落下しない。
【0045】
上述した構成の作用について説明する。
通帳記帳装置2が行う通帳10の記帳処理については、第1の実施例と同様であるため説明を省略する。
また、顧客が取り忘れた通帳10を収納トレイ201に収納し、取引を完了し、次の取引まで待機する動作についても第1の実施例の動作と同様であるため説明を省略する。
【0046】
次に、収納トレイ201に収納された通帳10を取り出す作業について図4および図8を参照しながら説明する。
図4と同様に前面側に引き出された通帳記帳装置2の収納トレイ201は、係員により手動でロック機構が解除され、図8(c)の矢印Bに示す方向に回動する。
収納トレイ201が回動したときに、図8(c)に示すように、収納された通帳10の重心Gは、突出部201eより先端部10a側に位置するため、通帳10は収納トレイ201から落下しない。
収納された通帳10は、係員が回動させた収納トレイ201から視認され、取り出される。
【0047】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加えて、壁面部が収納トレイと一体になって構成されていないことにより、収納トレイを開いたときに、係員が通帳を取り出すときに手を入れる範囲が広くなるとともに通帳の視認性が向上するため、前面保守機における媒体処理装置の媒体取り込み部に収納された通帳を取り出す作業の効率を向上させ、かつ、作業の安全性を確保することができるという効果が得られる。
【0048】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、媒体処理装置として通帳を取り扱う通帳記帳装置について説明したが、それに限られるものでなく、磁気カードやレシート等の媒体を扱う装置であってもよい。
また、第1の実施例および第2の実施例では、本発明をATMの通帳記帳装置に適用する例で説明したが、それに限られるものでなく、例えば紙幣や硬貨の入出金を行う現金自動預払機、乗車券、航空券、チケット等を発券する自動発券機、または商業施設や店舗等に設置される多機能端末装置等に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 自動取引装置
2 通帳記帳装置
3 フロントパネル
4 紙幣入出金部
5 操作表示部
6 リア扉
10 通帳
10a、10b 先端部
10c 中紙用紙
10d 表紙用紙
11 通帳挿入排出口
12 通帳搬送路
13 搬送ローラ対
14 磁気データリードライト部
15 光学読み取り部
16 ページめくり部
17 印字部
18 通帳発行用カセット
19 切り替えブレード
20 通帳の束
21 開口部
100、200 取り忘れ収納部
101、201 収納トレイ
101a、201a 壁面部
101b、201b 底面部
101c、201c 孔部
101d、201d 突き当て部
201e 突出部
102 回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8