(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0015】
本発明の(A)成分のオキシアルキレン系重合体における架橋性珪素基は珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。代表例としては、式(1):
【0017】
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはR
23SiO−(R
2は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を示し、3個のR
2は同じであっても異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R
1が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2を、それぞれ示す。またn個の式(2):
【0018】
【化2】
におけるbは同一である必要はない。nは0〜19の整数を示す。但し、a+(bの和)≧1を満足するものとする。)で表わされる基があげられる。
【0019】
該加水分解性基や水酸基は1個の珪素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、a+(bの和)は1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性珪素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
架橋性珪素基を形成する珪素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合等により連結された珪素原子の場合には、20個程度あってもよい。
なお、式(3):
【0022】
(式中、R
1,X,aは前記と同じ)で表わされる架橋性珪素基が、入手が容易である点から好ましい。また、式(3)の架橋性珪素基においてaが2又は3である場合が好ましい。aが3の場合、aが2の場合よりも硬化速度が大きくなる。
【0023】
上記R
1の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、R
23SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が好ましい。
【0024】
上記Xで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、たとえば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等があげられる。これらの中では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基がさらに好ましい。加水分解性が穏やかで取扱やすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものの方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほどに反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常メトキシ基やエトキシ基が使用される。式(3)で示される架橋性珪素基の場合、硬化性を考慮するとaは2以上が好ましい。
【0025】
架橋性珪素基の具体的な例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、−Si(OR)
3、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基、−SiR
1(OR)
2、があげられる。ここでRはメチル基やエチル基のようなアルキル基である。
【0026】
また、架橋性珪素基は1種で使用しても良く、2種以上併用してもかまわない。架橋性珪素基は、主鎖または側鎖あるいはいずれにも存在しうる。硬化物の引張特性等の硬化物物性が優れる点で架橋性珪素基が分子鎖末端に存在するのが好ましい。
【0027】
(A)成分のオキシアルキレン系重合体において架橋性珪素基は重合体1分子中に平均して1.0個以上5個以下、好ましくは1.1〜3個存在するのがよい。分子中に含まれる架橋性珪素基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、また多すぎると網目構造があまりに密となるため良好な機械特性を示さなくなる場合がある。
【0028】
本発明に用いる(A)成分のオキシアルキレン系重合体は本質的に式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0029】
【化4】
(式中、R
3は2価の有機基)
【0030】
式(4)におけるR
3は、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好ましい。式(4)で示される繰り返し単位の具体例としては、例えば、
【0032】
等があげられる。オキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特にオキシプロピレンを主成分とする重合体から成るのが好ましい。
【0033】
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体の数平均分子量は、3,000〜50,000、さらには5,000〜20,000が好ましい。なお、本発明でいう数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量をいう。数平均分子量が3,000未満の場合、破断強度が十分でない場合があり、50,000を超えると組成物の粘度が大きくなり作業性が低下することがある。架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体は直鎖状でもよくまたは分岐を有してもよい。
【0034】
オキシアルキレン系重合体の合成法としては、たとえばKOHのようなアルカリ触媒による重合法、たとえば特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−215623号に示されるような有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる、有機アルミニウム−ポルフィリン錯体触媒による重合法、たとえば特公昭46−27250号および特公昭59−15336号などに示される複金属シアン化物錯体触媒による重合法等があげられるが、特に限定されるものではない。有機アルミニウム−ポルフィリン錯体触媒による重合法や複金属シアン化物錯体触媒による重合法によれば数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0035】
上記オキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中にはウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。ウレタン結合成分としては、たとえばトルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートと水酸基を有するポリオキシアルキレン類との反応から得られるものをあげることができる。
【0036】
オキシアルキレン系重合体への架橋性珪素基の導入は、分子中に不飽和基、水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させることにより行うことができる。この方法(以下、高分子反応法という)はオキシアルキレン系重合体に好適に使用される。オキシアルキレン系重合体は通常分子鎖末端に水酸基を有しているので、末端に架橋性珪素基を導入しやすいためである。
【0037】
高分子反応法の具体例として、不飽和基含有オキシアルキレン系重合体に架橋性珪素基を有するヒドロシランや架橋性珪素基を有するメルカプト化合物を作用させてヒドロシリル化やメルカプト化し、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を得る方法をあげることができる。不飽和基含有オキシアルキレン系重合体は水酸基を有するオキシアルキレン系重合体に、不飽和ハロゲン化合物のような、この水酸基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0038】
また、高分子反応法の他の具体例として、末端に水酸基を有するオキシアルキレン系重合体とイソシアネート基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる方法や末端にイソシアネート基を有するオキシアルキレン系重合体と水酸基やアミノ基等の活性水素基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる方法をあげることができる。イソシアネート化合物を使用すると、容易に架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0039】
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の具体例としては、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同57−164123号、特公平3−2450号、特開2005−213446号、同2005−306891号、国際公開特許WO2007−040143号、米国特許3,632,557号、同4,345,053号、同4,960,844号等の各公報に提案されているものをあげることができる。
【0040】
本発明の組成物には硬化物の耐久性、基材への接着性あるいは耐薬品性を改善するために架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を添加することができる。架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は本質的に式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0041】
【化6】
(式中、R
4は水素原子またはメチル基、R
5はアルキル基を示す)
【0042】
式(5)におけるR
5はアルキル基であり、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。R
5は直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、ハロゲン原子やフェニル基等を有する置換アルキル基でもよい。R
5の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等をあげることができる。
【0043】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の分子鎖は本質的に式(5)の単量体単位からなるが、ここでいう本質的にとは該重合体中に存在する式(5)の単量体単位の合計が50質量%をこえることを意味する。式(5)の単量体単位の合計は好ましくは70質量%以上である。
【0044】
式(5)以外の単量体単位の例としては、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位があげられる。
【0045】
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体をオキシアルキレン系重合体と混合して使用する場合、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体との相溶性が大きい点で、架橋性珪素基を有し分子鎖が、下記式(6):
【0046】
【化7】
(式中、R
4は前記に同じ、R
6は炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記式(7):
【0047】
【化8】
(式中、R
4は前記に同じ、R
7は炭素数6以上のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体が好ましい。
【0048】
前記式(6)のR
6としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜5、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2のアルキル基があげられる。なお、R
6は一種でもよく、2種以上混合していてもよい。
【0049】
前記式(7)のR
7としては、たとえば2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素数6以上、通常は7〜30、好ましくは8〜20の長鎖のアルキル基があげられる。なお、R
7は一種でもよく、2種以上混合したものであってもよい。また、式(6)の単量体単位と式(7)の単量体単位の存在比は、質量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40がさらに好ましい。
【0050】
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをラジカル共重合して得ることができる。また、架橋性珪素基を有する開始剤や架橋性珪素基を有する連鎖移動剤を使用すると分子鎖末端に架橋性珪素基を導入することができる。
【0051】
特開2001−040037号公報、特開2003−048923号公報および特開2003−048924号公報には架橋性珪素基を有するメルカプタンおよびメタロセン化合物を使用して得られる架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。また、特開2005−082681号公報合成例には高温連続重合による架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。
【0052】
特開2000−086999号公報等にあるように、架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体であって架橋性珪素基が分子鎖末端に高い割合で導入された重合体も知られている。このような重合体はリビングラジカル重合によって製造されているため、高い割合で架橋性珪素基を分子鎖末端に導入することができる。本発明では以上に述べたような(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を使用することができる。
【0053】
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体やこの重合体と架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の混合物の具体例は、特開昭59−122541号、同63−112642号、同特開平6−172631号等の各公報に記載されている。また、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報には、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行い、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の混合物を得る方法が記載されている。
【0054】
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の混合物を使用する場合、オキシアルキレン系重合体100質量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を5〜200質量部使用することが好ましく、5〜50質量部使用することがさらに好ましい。
【0055】
本発明の接着剤組成物には架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体に加えて、上記した(メタ)アクリル酸エステル系重合体以外の架橋性珪素基を有する有機重合体を添加してもよい。使用される架橋性珪素基を有する有機重合体の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができる。具体的には、エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル、および/またはスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸、テレフタル酸、琥珀酸等の多塩基酸とビスフェノールA、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールとの縮合重合体やラクトン類の開環重合体等のポリエステル系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;ポリサルファイド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。
【0056】
本発明では(B)成分として架橋性珪素基及びアミノ基を有する化合物あるいはこの化合物のイミン誘導体(アミノシラン類)を使用する。これらは接着性付与剤として作用する。また、(A)成分の硬化触媒(シラノール縮合触媒)としても作用する。なお、本発明でいうイミンとはアルジミン及びケチミンの両者をいうものとする。(B)成分における架橋性珪素基は(A)成分における架橋性珪素基と同様のものを使用することができる。架橋性珪素基としては加水分解性基がメトキシ基やエトキシ基のようなアルコキシ基であるアルコキシシリル基が好ましい。
【0057】
架橋性珪素基及びアミノ基を有する化合物の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等をあげることができる。
【0058】
イミン誘導体はこれらの架橋性珪素基及びアミノ基を有する化合物のアミノ基をカルボニル化合物でケチミン化等して得ることができる。カルボニル化合物としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ジエチルアセトアルデヒド、グリオキサール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;シクロペンタノン、トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、トリメチルシクロヘキサノン等の環状ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類;アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸メチルエチル、ジベンゾイルイルメタン等のβ−ジカルボニル化合物;などが使用できる。イミン誘導体にイミノ基(=NH基)が存在する場合には、イミノ基をスチレンオキサイド;ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル;グリシジルエステルなどと反応させてもよい。(B)成分としてイミン誘導体を使用すると硬化性組成物の保存中に(D)成分のエポキシ化合物と反応しないので一成分型硬化性組成物にすることができる。
【0059】
(B)成分はKBE−9103(信越化学工業株式会社製)やサイラエースS340(チッソ株式会社製)、Z−6860(東レ・ダウコーニング株式会社製)、X−12−812H(信越化学工業株式会社製)等として市販されている。
【0060】
(B)成分の使用量は、(A)成分の重合体100質量部に基づいて0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。(B)成分は、2種以上併用して使用しても差し支えがない。
【0061】
本発明では有機錫系シラノール縮合触媒として(C)4価の錫化合物を使用する。(B)成分もシラノール縮合触媒として作用するが、有機錫系シラノール縮合触媒が(A)成分の重合体の主たる硬化触媒である。一成分形の接着剤(硬化性組成物)に関しては、アルキル基等の有機基が錫原子とSn−C結合により結合している4価の錫化合物を用いることにより貯蔵安定性を向上させることができる。4価の錫化合物の例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫塩とテトラエトキシシランとの反応生成物をあげることができる。(C)成分の使用量は(A)成分100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲、好ましくは0.2〜7質量部の範囲で使用するのが良い。
【0062】
また、4価の錫化合物以外のシラノール縮合触媒を併用して使用してもよい。4価の錫化合物以外のシラノール縮合触媒の例としては、2価の錫化合物等の他の有機錫化合物、アルキルチタン酸塩、有機珪素チタン酸塩等のチタン化合物、ビスマストリス2−エチルヘキソエート等のビスマス化合物、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の如きカルボン酸の錫塩:ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等の如きアミン塩をあげることができる。
【0063】
本発明では(D)成分として分子中に1個のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物を使用する。(D)成分の使用した本発明の木質床材用硬化性接着剤組成物を用いて床材を接着すると床材間の目隙を小さくすることができる。(D)の例としてはシクロヘキサンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル、
【0065】
などの脂環式エポキシ化合物があげられる。(D)成分は分子中に架橋性珪素基を有しないことが好ましい。(D)成分の分子中に1個のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物の使用量は(A)成分の重合体100質量部に対して0.1〜100質量部、好ましくは1〜50質量部、さらに好ましくは1〜40質量部、特に好ましくは2〜30質量部の範囲である。
【0066】
本発明の硬化性接着剤組成物には、さらに可塑剤、充填剤、安定剤、脱水剤、タレ防止剤、接着付与剤、滑剤、顔料、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤などを必要に応じて添加することができる。
【0067】
可塑剤の具体例としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪族エステル類;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル等のリン酸エステル類;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類等のポリエステル系可塑剤類;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン−ナフテン系混合炭化水素等の炭化水素系可塑剤類;塩素化パラフィン類;低分子量のアクリル酸エステル重合体等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。特にアクリル酸エステル重合体を使用すると硬化物の耐久性を改善することができる。
【0068】
可塑剤を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、通常10〜200質量部の範囲、好ましくは20〜100質量部の範囲で使用されるのが良い。可塑剤の使用量が10質量部未満の場合には組成物の粘度が高くなりすぎる場合があり、また200質量部を越える場合は硬化物からの可塑剤の染み出しなどが生じる場合があるため好ましくない。
【0069】
充填剤の例としては、フュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、硬化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華などの如き充填剤;ガラスバルーン、シラスバルーンなどの如き中空充填剤;石綿、ガラス繊維およびフィラメントの如き繊維状充填剤等が使用できる。
【0070】
これらの充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にフュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤を使用すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどから選ばれる充填剤を使用すれば好ましい結果が得られる。もちろんこれらの充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0071】
充填剤を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、通常1〜700質量部の範囲、好ましくは5〜500質量部の範囲、さらに好ましくは5〜350質量部で使用するのが良い。
【0072】
安定剤の例としてはヒンダードフェノールやヒンダードアミンをあげることができる。本発明の接着剤組成物にヒンダードアミンが含まれると、床材と温水式床暖房パネルの接着に用いられたときに、ポリエチレン製温水配管と接着剤組成物とが接触し、ポリエチレンが劣化することがあるがこれを防止することができる。ヒンダードアミンの例としては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N´−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミン等との重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲で使用するのが良い。
【0073】
脱水剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシラン化合物類、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等の加水分解性エステル化合物類が挙げられ、これらは単独または2種以上を併用して使用することができる。
【0074】
タレ防止剤の例としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0075】
接着付与剤としては、各種シランカップリング剤、例えば、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルメトキシシランなどのアミノシラン類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン類、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネートシラン類などが挙げられる。上記接着付与剤は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0076】
本発明の接着剤組成物は、接着剤組成物を構成する材料を、必要に応じて、プラネタリミキサーや3本ロール等で分散することにより得ることができる。本発明の接着剤組成物は一成分型接着剤組成物であり、配合成分や組成物中の水分をできるだけ除去することが望ましい。本発明の接着剤組成物は常温湿気硬化性であり、常温により湿気で硬化可能であるが、必要に応じて加熱し、硬化を促進してもよい。
【0077】
本発明の硬化性接着剤組成物は下地材に木質床材を接着するために使用される。接着方法としては、床材の裏面の短手方向に数か所ビード状に塗工し、下地材に押し付けて養生する方法を例示することができる。下地材が床暖房ユニットの場合、本発明の硬化性接着剤組成物は木質床材と床暖房ユニットを好適に貼り合わせることができる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0079】
(実施例1〜2、比較例1〜3)
表1に示した(A)成分の架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体として、市販の重合体、充填剤及び可塑剤を表1に示した量割合で仕込み、加熱減圧混合撹拌を110℃にて2時間行い、配合物質の脱水を行った。さらに、(B)成分の架橋性珪素基及びアミノ基を有する化合物又はイミン誘導体、(C)成分の4価の錫化合物、(D)成分の分子中に1個のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物を所定量添加し、撹拌配合して硬化性接着剤組成物を調製した。これらの硬化性接着剤組成物を使用し、貯蔵安定性、床材に使用した場合の目隙の大きさ、初期及び熱暴露後のせん断接着強さ及び初期及び熱暴露後のダンベルを使用した引張特性(破断強度、破断時伸び)を測定した。結果を表1に示す。表中、CFは接着剤自体の凝集破壊を示す。また、特性の評価方法は後記のとおりである。
【0080】
【表1】
【0081】
表1において各配合物質の配合量は質量部で示される。各配合物質の詳細は下記の通りである。
*1:(株)カネカ製、架橋性珪素基含有オキシプロピレン重合体
*2:信越化学工業(株)製、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
*3:信越化学工業(株)製、MIBK(メチルイソブチルケトン)と3−アミノプロピルトリメトキシシランの反応物
*4:日東化成(株)製、ジブチル錫塩とテトラエトキシシランとの反応性生物
*5:日東化成(株)製、スタナスオクトエート
*6:新日本理化(株)製、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル
*7:三菱化学(株)製、液状エポキシ樹脂、分子量370、エポキシ当量184〜194(g/eq)
*8:白石カルシウム(株)製、重質炭酸カルシウム
*9:白石カルシウム(株)製、脂肪酸処理膠質炭酸カルシウム
*10:住友スリーエム(株)製、ガラス微小中空球
*11:三井化学(株)製、ポリプロピレンエーテルジオール 分子量 3000
*12:コルコート(株)製、テトラエトキシシラン
*13:(株)アデカ製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤
【0082】
(貯蔵安定性試験)
接着剤組成物の調製直後(貯蔵前)、及び密閉容器内で50℃の条件で7日経過後(貯蔵後)の23℃での粘度をそれぞれ測定し、増粘率を算出した。また、同様の条件で貯蔵前後の23℃50%RH下16時間養生後の硬化性を、ポリエチレン製容器に充填した接着剤の表面を指触により確認した。接着剤が指に付着しなければ硬化、付着すれば未硬化とした。貯蔵安定性(増粘率及び硬化性)は下記評価基準により評価した。
×:増粘率2倍超え又は貯蔵前後のいずれかもしくは両方で未硬化、△:増粘率2〜1.5倍及び貯蔵前後の両方で硬化、○:増粘率1.5倍未満及び貯蔵前後の両方で硬化。
【0083】
(床材の接着に使用した場合の目隙の大きさ)
床材10(フローリング材、朝日ウッドテック製ニューフォルテフロア 長さ910mm×幅303mm×厚さ12mm)の短手方向に接着剤14を約300mm間隔で幅10mmのビード状に4か所塗布した後、下地針葉樹合板18(長さ1820mm×幅910mm×厚さ28mm)上に
図1のように積層した。フローリング材のオス実側を300mm間隔でフロアタッカー12(マックス製38mmフロアステープル(438フロア))で固定した後、23℃50%RH下で1週間養生しフローリング材長手方向の長さをノギスにて測定した。この試験体を60℃で3日間乾燥させた後、同様にフローリング材の長さを測定し、60℃3日間乾燥前後でのフローリング材の収縮長さ(1820mmあたり)を算出した。なお、下地針葉樹合板はあらかじめ60℃で1週間乾燥しておき経時的に収縮しないようにした。
【0084】
(せん断接着強さ)
JIS K6851接着剤の木材引張りせん断接着強さ試験方法に準じて測定した。試験片(被着体18、米栂 長さ70mm×幅25mm×厚さ5mm)の接着面に
図2のように厚さ0.5mmのスペーサー20を固定後、接着剤14を塗布し圧締した。塗布長さと幅はそれぞれ25mmとした。23℃50%RH環境下で1週間養生後、試験速度3mm/minにて引張せん断接着強さを測定した。また、破壊状態が接着剤破壊(CF)か界面剥離(AF)か材料(木材)破壊(MF)かを目視で確認した。また、熱暴露試験として23℃50%RH下にて1週間養生後の試験片をさらに80℃1週間加熱した後、同様に引張せん断接着強さを測定した。
【0085】
(ダンベル引張物性)
離型紙状に2mm厚の接着剤フィルムを作成し、23℃50%RH環境下にて1週間養生した。JIS K6251に規定するダンベル状2号型試験片を作成し、試験速度50mm/minにて引張試験を行い、破断強度及び破断時伸びを測定した。また、熱暴露試験として23℃50%RH下にて1週間養生後の試験片をさらに80℃1週間加熱した後、同様に引張試験を行い、破断強度及び破断時伸びを測定した。
【0086】
実施例1〜2と比較例1との比較から明らかなように、(D)成分の分子中に1個のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物を含有する硬化性接着剤組成物は床材に使用した場合の目隙の大きさが小さくなることがわかる。実施例1と比較例1では配合がほとんど同じであり、接着剤自体の硬化物(ダンベル)の特性やせん断接着強度にあまり差がないにもかかわらず、目隙の大きさが小さくなることから(D)成分が特異な効果を有しているものと考えられる。また触媒として(C)成分の代わりに2価の錫化合物を用いた比較例2及び(D)成分の代わりにエポキシ樹脂を用いた比較例3では貯蔵安定性が悪かった。