(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。
【0014】
はじめに、本実施形態における金属張積層板の構成について説明する。
図1は、本実施形態における金属張積層板100の構成の一例を示す断面図である。また、
図7は、本実施形態における金属張積層板の絶縁層のL
0、L
1およびL
2を説明するための模式図である。
金属張積層板100は、エポキシ樹脂組成物(E)と繊維基材とを含む絶縁層101を有し、絶縁層101の両面に金属箔103を備えている。エポキシ樹脂組成物(E)は、エポキシ樹脂(A)、ビスマレイミド化合物(B)、および無機充填材(C)を含む。
そして、金属張積層板100は、エッチングにより両面の金属箔103を除去後、熱機械分析装置を用いて、(1)30℃から260℃までの昇温過程と260℃から30℃までの降温過程とからなる一回目の熱機械分析測定(1stRun)と、(2)30℃から260℃までの昇温過程と260℃から30℃までの降温過程とからなる二回目の熱機械分析測定(2ndRun)と、を続けておこなったとき、一回目の熱機械分析測定前の絶縁層101(
図7(a))の縦方向105の長さを基準長L
0とし、二回目の昇温過程における30℃での絶縁層101(
図7(b))の縦方向105の長さの基準長L
0からの変形量をL
1とし、二回目の降温過程における30℃での絶縁層101(
図7(c))の縦方向105の長さの基準長L
0からの変形量をL
2とした場合、(L
2−L
1)/L
1が0.03以上0.10以下であり、好ましくは0.03以上0.08以下であり、より好ましくは0.03以上0.07以下であり、特に好ましくは0.04以上0.06以下である。ただし、L
1は0ではない。また、L
1およびL
2について二回目の熱機械分析測定で算出している理由は、半導体装置内の絶縁層は半導体装置の作製においてリフロー工程などの260℃レベルの加熱工程を経ているため、二回目の熱機械分析測定の際の絶縁層の状態の方が、実際の半導体装置内の絶縁層の状態に近いからである。
ここで、(L
2−L
1)/L
1は、30℃から260℃の範囲における金属張積層板100の寸法変化のヒステリシスの度合いを示す指標である。(L
2−L
1)/L
1が小さいほど、30℃から260℃の範囲における金属張積層板100の寸法変化のヒステリシスが小さいことを意味する。なお、絶縁層101の縦方向105は絶縁層101の搬送方向(いわゆるMD)を指す。
(L
2−L
1)/L
1を上記範囲内とすることで、温度変化の繰り返しによる絶縁層101の寸法の経時的変化を抑制することができる。これにより、温度変化が激しい状況に長期間置かれても、半導体素子とプリント配線基板間で発生する応力を低減することができる。その結果、金属張積層板100により得られる半導体装置について、半導体素子のプリント配線基板に対する位置ずれを抑制でき、半導体素子とプリント配線基板との間の接続信頼性を高めることができる。
このような(L
2−L
1)/L
1を達成するためには、エポキシ樹脂組成物(E)および繊維基材について適切なものを選択し、金属張積層板の製造条件を適切に設定することが重要となる。
【0015】
ここで、(L
2−L
1)の絶対値は、好ましくは0.10
μm以上1.0
μm以下であり、より好ましくは0.10
μm以上0.50
μm以下であり、特に好ましくは0.15
μm以上0.45
μm以下である。
【0016】
また、金属張積層板100の両面の金属箔103をエッチングにより除去し、金属箔103を除去した絶縁層101から4mm×20mmの試験片を切り出したとき、この試験片について、L
1は、通常は−7.5μm以上−6.5μm以下であり、好ましくは−7.3μm以上−6.7μm以下であり、L
2は、通常は−8.0μm以上−6.8μm以下であり、好ましくは−7.8μm以上−7.0μm以下である。
【0017】
絶縁層101の面方向における線膨張係数α
1は、好ましくは1.0ppm/℃以上6.0ppm/℃以下であり、より好ましくは2.0ppm/℃以上5.0ppm/℃以下である。α
1は二回目の昇温過程における30℃から150℃の範囲において算出した平均線膨張係数である。
【0018】
また、絶縁層101の面方向における線膨張係数α
2は、好ましくは1.0ppm/℃以上9.0ppm/℃以下であり、より好ましくは2.0ppm/℃以上8.0ppm/℃以下である。α
2は二回目の昇温過程における30℃から260℃の範囲において算出した平均線膨張係数である。
【0019】
また、平均線膨張係数α
1に対する平均線膨張係数α
2の比が好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.6以下であり、特に好ましくは1.5以下である。
金属張積層板100は、平均線膨張係数α
1と平均線膨張係数α
2との比が従来の基準よりも小さい。そのため、絶縁層101のガラス転移温度を超えるような大きな温度変化が生じても、絶縁層101の線膨張係数の変化は小さいため、金属張積層板100により得られる半導体装置について、半導体素子とプリント配線基板の間に生じる応力をより一層低減することができる。これにより、環境温度に大きな変化が生じても半導体素子とプリント配線基板との間の接続信頼性をより一層高めることができる。
【0020】
このような平均線膨張係数α
1およびα
2を達成するためには、エポキシ樹脂組成物(E)および繊維基材について適切なものを選択し、金属張積層板の製造条件を適切に設定することが重要となる。
【0021】
また、本実施形態の金属張積層板100は、昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件での動的粘弾性測定により測定される、絶縁層101のガラス転移温度が、好ましくは180℃以上250℃以下であり、より好ましくは190℃以上240℃以下である。
金属張積層板100は、絶縁層101のガラス転移温度が上記範囲を満たすと、絶縁層101の剛性が高まり、金属張積層板100の反りをより一層低減できる。その結果、金属張積層板100により得られる半導体装置について、半導体素子のプリント配線基板に対する位置ずれをより一層抑制でき、半導体素子とプリント配線基板との間の接続信頼性をより一層高めることができる。
このようなガラス転移温度を達成するためには、エポキシ樹脂、硬化剤、ビスマレイミド化合物の化学構造を適宜選択し、樹脂の架橋密度等を適宜調整すればよい。
【0022】
また、本実施形態の金属張積層板100は、絶縁層101の250℃での貯蔵弾性率E'が好ましくは0.8GPa以上2.0GPa以下であり、より好ましくは0.9GPa以上1.5GPa以下である。
金属張積層板100は、絶縁層101の250℃での貯蔵弾性率E'が上記下限値以上であると、絶縁層101の剛性が高まり、絶縁層101の反りをより一層低減できる。また、金属張積層板100は、絶縁層101の250℃での貯蔵弾性率E'が上記上限値以下であると、金属張積層板100により得られる半導体装置について、半導体素子とプリント配線基板間との膨張収縮差に起因して発生する応力をより一層緩和することができる。これらにより、絶縁層101の250℃での貯蔵弾性率E'を上記範囲内とすることにより、半導体素子のプリント配線基板に対する位置ずれをより一層抑制でき、半導体素子とプリント配線基板との間の接続信頼性をより一層高めることができる。
このような貯蔵弾性率E'を達成するためには、エポキシ樹脂、硬化剤、ビスマレイミド化合物の化学構造を適宜選択し、樹脂の架橋密度等を適宜調整したり、無機充填剤の配合量を適宜調整したりすればよい。
【0023】
本実施形態における絶縁層101の厚さは、例えば、0.025mm以上0.1mm以下である。絶縁層101の厚さが上記範囲内であると、機械的強度および生産性のバランスがとくに優れ、薄型のプリント配線基板に適した金属張積層板100を得ることができる。
【0024】
つづいて、本実施形態における金属張積層板100の製造方法について説明する。金属張積層板100は、エポキシ樹脂組成物(E)と繊維基材とを含むプリプレグ(P)を加熱硬化することによって得られる。
【0025】
本実施形態における金属張積層板100を実現するためには、以下の条件を適切に調整することが重要である。
(1)エポキシ樹脂組成物(E)を構成する各材料の組み合わせ
(2)プリプレグ作製時の繊維基材の張力
(3)金属張積層板作製の圧力および加圧条件
【0026】
より具体的には、以下のような条件が好ましい。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)金属張積層板100を構成する材料としてはエポキシ樹脂(A)、ビスマレイミド化合物(B)、および無機充填材(C)を選択する。
(2)プリプレグ作製時において、繊維基材の張力を均一に高く掛ける。
(3)金属張積層板100作製時の圧力は高圧力に設定する。また、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続する。
【0027】
ここで、プリプレグ(P)の製造方法について詳細に説明する。
本実施形態のプリプレグ(P)は、繊維基材にエポキシ樹脂組成物(E)からなる樹脂層をラミネートし、その後、半硬化させて得られるシート状の材料である。また、本実施形態では、プリプレグ(P)を硬化してなる層が絶縁層101である。
【0028】
本実施形態では、繊維基材の両面から支持基材付き樹脂層で繊維基材をラミネートすることにより、エポキシ樹脂組成物(E)からなる樹脂層を繊維基材に含浸させる。これにより、寸法変化のヒステリシスに優れた金属張積層板100を得ることができる。なお、支持基材付き樹脂層をラミネートする場合、真空のラミネート装置等を用いることがより好ましい。
【0029】
繊維基材の両面から支持基材付き樹脂層で繊維基材をラミネートする方法を用いたプリプレグ(P)の製造工程について、
図2を用いて説明する。
【0030】
まず、材料として、キャリア材料5a、キャリア材料5b、繊維基材11を用意する。また、装置として、真空ラミネート装置60および熱風乾燥装置62を用意する。キャリア材料5aは、第一エポキシ樹脂組成物(P1)からなる樹脂層で構成される。キャリア材料5bは、第二エポキシ樹脂組成物(P2)からなる樹脂層で構成される。キャリア材料5a、5bは、例えばキャリアフィルムに第一エポキシ樹脂組成物(P1)、第二エポキシ樹脂組成物(P2)の樹脂ワニスを塗工する方法等により得ることができる。
【0031】
次いで、真空ラミネート装置60を用いてキャリア材料5a、繊維基材11およびキャリア材料5bをこの順で接合した接合体を形成する。真空ラミネート装置60は、キャリア材料5aを巻き取ったロール、キャリア材料5bを巻き取ったロール、繊維基材11を巻き取ったロールおよびラミネートロール61を備える。減圧下で、繊維基材11の両面に、各ロールから送り出されたキャリア材料5aおよびキャリア材料5bを重ね合わせる。そして、例えば、真空中、加熱60℃以上150℃以下で、重ね合わせた積層体をラミネートロール61で接合する。これにより、キャリア材料5a、繊維基材11およびキャリア材料5bから構成される接合体が得られる。
【0032】
このような接合工程には、例えば真空ボックス装置、真空ベクレル装置等の他の装置を用いることができる。
【0033】
次いで、熱風乾燥装置62を用いて、接合体を構成する各キャリア材料5a、5bを構成するエポキシ樹脂組成物の溶融温度以上の温度で加熱処理する。熱処理する他の方法は、例えば赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置等を用いて実施することができる。
【0034】
キャリア材料5a、5bを繊維基材11にラミネートした後、キャリアフィルムを剥離する。この方法により、繊維基材11にエポキシ樹脂組成物(E)が担持され、エポキシ樹脂組成物と繊維基材11とを含むプリプレグ(P)ができる。
【0035】
また、ラミネート時における加圧する他の方法としては、とくに限定されないが、例えば油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式など、所定の圧力を加えることができる従来公知の方式を採用することができる。
これらの中でも、上記接合したものに実質的に圧力を作用させることなく実施する方法が好ましい。この方法によれば、樹脂成分を過剰に流動させることがないので、所望とする絶縁層厚みを有し、かつ、この絶縁層厚みにおいて高い均一性を有したプリプレグ(P)を効率良く製造することができる。
また、樹脂成分の流動に伴って繊維基材11に作用する応力を最小限とすることができるので、内部歪を非常に少ないものとすることができる。さらには、樹脂成分が溶融した際に、実質的に圧力が作用していないので、この工程における打痕不良の発生を実質的になくすことができる。
【0036】
そのため、ラミネート圧力は、とくに限定されないが、10KPa以上500KPa以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、生産性をより一層向上することができ、金属張積層板100をより一層効率良く得ることができる。
【0037】
ここで、支持基材付き樹脂層を繊維基材にラミネートするときに繊維基材にかける張力は、90N/m以上500N/m以下の範囲内であることが好ましく、150N/m以上400N/m以下の範囲内であることがより好ましい。張力を上記範囲内とすることにより、プリプレグ内部に発生する歪が緩和され、その結果、寸法変化のヒステリシスが小さい金属張積層板100を得ることができる。
【0038】
つづいて、上記で得られたプリプレグ(P)を用いた金属張積層板100の製造方法について説明する。プリプレグ(P)を用いた金属張積層板100の製造方法は、例えば以下の通りである。
プリプレグ(P)またはプリプレグ(P)を2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔103を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグ(P)の外側の上下両面または片面に金属箔103を重ねる。また、プリプレグ(P)を2枚以上積層するときは、積層したプリプレグ(P)の最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔103を重ねる。
次いで、プリプレグ(P)と金属箔103とを重ねた積層体を加熱加圧成形することで金属張積層板100を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
【0039】
上記の加熱加圧成形するときの加熱温度は、120℃以上250℃以下が好ましく、150℃以上240℃以下がより好ましい。
また、上記の加熱加圧成形するときの圧力は、0.5MPa以上5MPa以下が好ましく、2.5MPa以上5MPa以下の高圧がより好ましい。
【0040】
また、加熱加圧成形後に、必要に応じて、恒温槽などで後硬化をおこなってもよい。後硬化の温度は、好ましくは150℃以上300℃以下であり、より好ましくは250℃以上300℃以下である。
【0041】
また、この金属張積層板100をコア基板として用いてプリント配線基板100を得ることができる。
【0042】
以下、金属張積層板100を製造する際に使用する各材料について詳細に説明する。
金属箔103を構成する金属としては、例えば、銅および銅系合金、アルミおよびアルミ系合金、銀および銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金、鉄および鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバーまたはスーパーインバーなどのFe−Ni系の合金、WまたはMoなどが挙げられる。これらの中でも、金属箔103を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔103としては、銅箔が好ましい。
また、金属箔103としては、キャリア付金属箔なども使用することができる。
金属箔103の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上18μm以下である。
【0043】
エポキシ樹脂組成物(E)は、エポキシ樹脂(A)と、ビスマレイミド化合物(B)と、無機充填材(C)とを含む。
【0044】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂,縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0045】
エポキシ樹脂(A)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上とそれらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0046】
エポキシ樹脂(A)の中でも、得られるプリント配線基板の耐熱性および絶縁信頼性をより一層向上できる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、アリールアルキレン型エポキシ樹脂,縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0047】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の「エピコート828EL」および「YL980」等を用いることができる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の「jER806H」および「YL983U」、DIC社製の「EPICLON 830S」等を用いることができる。2官能ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」および「HP4032SS」等を用いることができる。4官能ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC社製の「HP4700」および「HP4710」等を用いることができる。ナフトール型エポキシ樹脂としては、新日鐵化学社製の「ESN−475V」、日本化薬社製の「NC7000L」等を用いることができる。アリールアルキレン型エポキシ樹脂としては、日本化薬社製の「NC3000」、「NC3000H」、「NC3000L」および「NC3100」等を用いることができる。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の「YX4000」、「YX4000H」、「YX4000HK」および「YL6121」等を用いることができる。アントラセン型エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の「YX8800」等を用いることができる。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂としては、DIC社製の「HP6000」、「EXA−7310」、「EXA−7311」、「EXA−7311L」および「EXA7311−G3」等を用いることができる。
【0048】
エポキシ樹脂(A)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0049】
これらエポキシ樹脂(A)の中でもとくにアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、絶縁層101の吸湿半田耐熱性および難燃性をさらに向上させることができる。
【0050】
アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(IV)で示すことができる。
【0052】
上記一般式(IV)で示されるビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。nの下限は、とくに限定されないが、1以上が好ましく、とくに2以上が好ましい。nが上記下限値以上であると、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の結晶化を抑制でき、汎用溶媒に対する溶解性が向上するため、取り扱いが容易となる。nの上限は、とくに限定されないが、10以下が好ましく、とくに5以下が好ましい。nが上記上限値以下であると、樹脂の流動性が向上し、成形不良などの発生を抑制することができる。
【0053】
上記以外のエポキシ樹脂(A)としては縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。
【0054】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、およびテトラフェン、その他の縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂である。縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、複数の芳香環が規則的に配列することができるため低熱膨張性に優れる。また、ガラス転移温度も高いため耐熱性に優れる。さらに、繰返し構造の分子量が大きいため従来のノボラック型エポキシ樹脂に比べ難燃性に優れる。
【0055】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、フェノール類化合物とアルデヒド類化合物、および縮合環芳香族炭化水素化合物から合成された、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したものである。
【0056】
フェノール類化合物は、とくに限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール類、2,3,5トリメチルフェノールなどのトリメチルフェノール類、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノールなどのエチルフェノール類、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノールなどのアルキルフェノール類、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどのナフタレンジオール類、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フルオログルシンなどの多価フェノール類、アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルハイドロキノンなどのアルキル多価フェノール類が挙げられる。これらのうち、コスト面および分解反応に与える効果から、フェノールが好ましい。
【0057】
アルデヒド類化合物は、とくに限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシアルデヒドパラホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0058】
縮合環芳香族炭化水素化合物は、とくに限定されないが、例えば、メトキシナフタレン、ブトキシナフタレンなどのナフタレン誘導体、メトキシアントラセンなどのアントラセン誘導体、メトキシフェナントレンなどのフェナントレン誘導体、その他テトラセン誘導体、クリセン誘導体、ピレン誘導体、誘導体トリフェニレン、およびテトラフェン誘導体などが挙げられる。
【0059】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、とくに限定されないが、例えば、メトキシナフタレン変性オルトクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ブトキシナフタレン変性メタ(パラ)クレゾールノボラックエポキシ樹脂、およびメトキシナフタレン変性ノボラックエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、下記式(V)で表される縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0061】
(式中、Arは縮合環芳香族炭化水素基であり、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素、フェニル基、ベンジル基などのアリール基、およびグリシジルエーテルを含む有機基から選ばれる基で、n、p、およびqは1以上の整数であり、またp、qの値は、繰り返し単位毎に同一でも、異なっていてもよい。)
【0063】
(式(V)中のArは、式(VI)中の(Ar1)〜(Ar4)で表される構造であり、式(VI)中のRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素、フェニル基、ベンジル基などのアリール基、およびグリシジルエーテルを含む有機基から選ばれる基である。)
【0064】
さらに上記以外のエポキシ樹脂(A)としてはナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂などのナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、絶縁層101の耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。また、ベンゼン環に比べナフタレン環のπ−πスタッキン効果が高いため、特に、低熱膨張性、低熱収縮性に優れる。更に、多環構造のため剛直効果が高く、ガラス転移温度が特に高いため、リフロー前後の熱収縮変化が小さい。ナフトール型エポキシ樹脂としては、例えば下記一般式(VII−1)、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂としては下記式(VII−2)、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂としては下記式(VII−3)(VII−4)(VII−5)、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(VII−6)で示すことができる。
【0065】
【化4】
(nは平均1以上6以下の数を示し、Rはグリシジル基または炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。)
【0068】
【化7】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2はそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アラルキル基、ナフタレン基、またはグリシジルエーテル基含有ナフタレン基を表し、oおよびmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつoまたはmの何れか一方は1以上である。)
【0069】
エポキシ樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の下限は、とくに限定されないが、Mw500以上が好ましく、とくにMw800以上が好ましい。Mwが上記下限値以上であると、プリプレグ(P)にタック性が生じるのを抑制することができる。Mwの上限は、とくに限定されないが、Mw20,000以下が好ましく、とくにMw15,000以下が好ましい。Mwが上記上限値以下であると、絶縁層101作製時、繊維基材への含浸性が向上し、より均一な絶縁層101を得ることができる。エポキシ樹脂のMwは、例えばGPCで測定することができる。
【0070】
エポキシ樹脂組成物(E)中に含まれるエポキシ樹脂(A)の含有量は、その目的に応じて適宜調整されれば良くとくに限定されないが、エポキシ樹脂組成物(E)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、7.0質量%以上20.0質量%以下が好ましく、さらに8.0質量%以上18.0質量%以下が好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量が上記下限値以上であると、ハンドリング性が向上し、絶縁層101を形成するのが容易となる。エポキシ樹脂(A)の含有量が上記上限値以下であると、絶縁層101の強度や難燃性が向上したり、絶縁層101の線膨張係数が低下し金属張積層板100の反りの低減効果が向上したりする場合がある。
【0071】
本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物(E)は、必須成分としてビスマレイミド化合物(B)を含んでいる。ビスマレイミド化合物のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、エポキシ樹脂組成物(E)は、ビスマレイミド化合物(B)を含むことにより、得られる絶縁層101の線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることができる。
【0072】
ビスマレイミド化合物(B)としては、分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するビスマレイミド化合物(B−1)が好ましい。
ビスマレイミド化合物(B−1)としては、例えば、4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N'−エチレンジマレイミド、N,N'−ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する化合物、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する化合物等が挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらのビスマレイミド化合物(B)の中でも、低吸水率である点などから、4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミドが好ましい。
【0073】
また、ビスマレイミド化合物(B)としては、ビスマレイミド化合物(B−1)とアミン化合物との反応物を用いることもできる。アミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物およびモノアミン化合物から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0074】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、o−ジアニシジン、o−トリジン、3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4'−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等があげられる。
【0075】
モノアミン化合物としては、例えば、o‐アミノフェノール、m‐アミノフェノール、p‐アミノフェノール、o‐アミノ安息香酸、m‐アミノ安息香酸、p‐アミノ安息香酸、o‐アミノベンゼンスルホン酸、m‐アミノベンゼンスルホン酸、p‐アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン、o‐アニリン、m‐アニリン、p‐アニリン、o‐メチルアニリン、m‐メチルアニリン、p‐メチルアニリン、o‐エチルアニリン、m‐エチルアニリン、p‐エチルアニリン、o‐ビニルアニリン、m‐ビニルアニリン、p‐ビニルアニリン、o‐アリルアニリン、m‐アリルアニリン、p‐アリルアニリン等が挙げられる。
【0076】
ビスマレイミド化合物(B−1)とアミン化合物との反応は、有機溶媒中で反応させることができる。反応温度は、例えば70〜200℃であり、反応時間は、例えば0.1〜10時間である。
【0077】
ビスマレイミド化合物(B)の含有量は、とくに限定されないが、エポキシ樹脂組成物(E)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、13.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以上25.0質量%以下がより好ましい。ビスマレイミド化合物(B)の含有量が上記下限値以上であると、弾性率が向上する。ビスマレイミド化合物(B)の含有量が上記上限値以下であると、ピール強度が向上する。
【0078】
本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物(E)は、必須成分として無機充填材(C)を含んでいる。これにより、絶縁層101の貯蔵弾性率E'を向上させることができる。さらに、得られる絶縁層101の線膨張係数を小さくすることができる。
無機充填材(C)としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などを挙げることができる。
これらの中でも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。無機充填材(C)としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0079】
無機充填材(C)の平均粒子径は、とくに限定されないが、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。無機充填材(C)の平均粒子径が上記下限値以上であると、ワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、絶縁層101作製時の作業性を向上させることができる。また、無機充填材(C)の平均粒子径は、とくに限定されないが、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。無機充填材(C)の平均粒子径が上記上限値以下であると、ワニス中で無機充填材(C)の沈降などの現象を抑制でき、より均一な絶縁層101を得ることができる。また、プリント配線基板100の回路寸法L/Sが20/20μmを下回る際には、配線間の絶縁性に影響を与えるのを抑制することができる。
無機充填材(C)の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D
50)を平均粒子径とすることができる。
【0080】
また、無機充填材(C)は、とくに限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。
【0081】
無機充填材(C)は、平均粒子径5.0μm以下のシリカ粒子が好ましく、平均粒子径0.01μm以上2.0μm以下のシリカ粒子がより好ましく、0.05μm以上1.0μm以下のシリカ粒子が特に好ましい。これにより、無機充填材(C)の充填性をさらに向上させることができる。
【0082】
無機充填材(C)の含有量は、とくに限定されないが、エポキシ樹脂組成物(E)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、30質量%以上79.9質量%以下が好ましく、50質量%以上75質量%以下がより好ましい。無機充填材(C)の含有量が上記範囲内であると、得られる絶縁層101をとくに低熱膨張、低吸水とすることができる。
【0083】
無機充填材(C)はシリカナノ粒子をさらに含むことが好ましい。
シリカナノ粒子の平均粒子径は1nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、10nm以上70nm以下が特に好ましい。
特に、平均粒子径0.1μm以上5.0μm以下のシリカ粒子と組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、シリカをエポキシ樹脂組成物(E)に高濃度で均一に含有させることができる。
なお、上記シリカナノ粒子の平均粒子径は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。粒子を水中で超音波により分散させ動的光散乱法式粒度分布測定装置(HORIBA製、LB−550)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D
50)を平均粒子径とする。
【0084】
上記シリカナノ粒子としては、NSS−5N(トクヤマ社製)、Sicastar43−00−501(Micromod社製)等の市販品を用いることもできる。
また、上記シリカナノ粒子の含有量は、無機充填材(C)100質量%に対し、1.0質量%以上7.0質量%以下が好ましい。
【0085】
このほか、必要に応じて、エポキシ樹脂組成物(E)には硬化剤、カップリング剤を適宜配合することができる。
【0086】
硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(2P4MZ)、2−フェニルイミダゾール(2PZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;BF
3錯体などのルイス酸などの触媒型の硬化剤が挙げられる。
また、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4'−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などの重付加型の硬化剤;2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン等のフェノール系化合物も用いることができる。
【0087】
さらに、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などの縮合型の硬化剤も用いてもよい。
フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量4×10
2〜1.8×10
3が好ましく、5×10
2〜1.5×10
3がより好ましい。重量平均分子量を上記下限値以上とすることでプリプレグにタック性が生じるなどの問題がおこりにくくなり、上記上限値以下とすることで、プリプレグ作製時、繊維基材への含浸性が向上し、より均一な製品が得ることができる。
【0088】
上記硬化剤の含有量は、とくに限定されないが、エポキシ樹脂組成物(E)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、0.01質量%以上15質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましい。硬化剤の含有量が上記下限値以上であると、硬化を促進する効果を十分に発揮することができる。硬化剤の含有量が上記上限値以下であるとプリプレグの保存性をより向上できる。
【0089】
さらに、エポキシ樹脂組成物(E)は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤の使用により、無機充填材(C)と各樹脂との界面の濡れ性を向上させることができる。したがって、カップリング剤を使用することは好ましく、絶縁層101の耐熱性を改良することができる。
【0090】
カップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤などのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
これにより、繊維機材とエポキシ樹脂組成物(E)の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって絶縁層101の耐熱性をより向上させることができる。
【0091】
カップリング剤の添加量は、無機充填材(C)の比表面積に依存するのでとくに限定されないが、エポキシ樹脂組成物(E)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、エポキシ樹脂組成物(E)を十分に被覆することができ、絶縁層101の耐熱性を向上させることができる。また、カップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、反応に影響を与えるのを抑制でき、絶縁層101の曲げ強度などの低下を抑制することができる。
【0092】
さらに、エポキシ樹脂組成物(E)には、本発明の目的を損なわない範囲で、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤などの上記成分以外の添加物を添加してもよい。
【0093】
顔料としては、カオリン、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青などの無機顔料、フタロシアニンなどの多環顔料、アゾ顔料などが挙げられる。
【0094】
染料としては、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、インジゴイド、オキサジン、キナクリドン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン、フタロシアニン、アゾメチンなどが挙げられる。
【0095】
エポキシ樹脂組成物(E)は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N−メチルピロリドン等の有機溶剤中で、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶解、混合、撹拌して樹脂ワニス(I)とすることができる。
樹脂ワニス(I)の固形分は、とくに限定されないが、40質量%以上80質量%以下が好ましく、とくに50質量%以上70質量%以下が好ましい。これにより、樹脂ワニス(I)の繊維基材への含浸性をさらに向上させることができる。
【0096】
以上のエポキシ樹脂組成物(E)において、各成分の割合はたとえば、以下のようである。
エポキシ樹脂組成物(E)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、好ましくは、エポキシ樹脂(A)の割合が7.0質量%以上20.0質量%以下であり、ビスマレイミド化合物(B)の割合が13.0質量%以上30.0質量%以下であり、無機充填材(C)の割合が30.0質量%以上79.9質量%以下である。
より好ましくは、エポキシ樹脂(A)の割合が8.0質量%以上18.0質量%以下であり、ビスマレイミド化合物(B)の割合が15.0質量%以上25.0質量%以下であり、無機充填材(C)の割合が50.0質量%以上75.0質量%以下である。
【0097】
繊維基材としては、とくに限定されないが、ガラスクロス、ガラス不織布などのガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維などのポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維などのポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維のいずれかを主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、あるいはリンターとクラフトパルプの混抄紙などを主成分とする紙基材などの有機繊維基材などが挙げられる。これらのうち、いずれかを使用することができる。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、低吸水性で、高強度、低熱膨張性の絶縁層101を得ることができる。
【0098】
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上60μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中のエポキシ樹脂組成物(E)の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマなどのレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、金属張積層板100の反りを抑制できたりする。
【0099】
本実施形態で用いる繊維基材としては、坪量(1m
2あたりの繊維基材の重量)が4g/m
2以上150g/m
2以下であることが好ましく、8g/m
2以上110g/m
2以下であることがより好ましく、12g/m
2以上60g/m
2以下であることがさらに好ましく、12g/m
2以上30g/m
2以下であることがさらに好ましく、12g/m
2以上24g/m
2以下であることがとくに好ましい。
【0100】
坪量が上記上限値以下であると、繊維基材中のエポキシ樹脂組成物(E)の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマなどのレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、坪量が上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上できる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、金属張積層板100の反りを抑制できたりする。
【0101】
また、本実施形態における絶縁層101に含まれる繊維基材の含有量は、絶縁層101の全量を100質量%としたとき、好ましくは20質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは30.0質量%以上60.0質量%以下である。繊維基材の含有量が上記範囲を満たすと、繊維基材への樹脂の含浸性、成形性のバランスをとりながら、金属張積層板100の剛性が高まり、実装時の金属張積層板100の反りをより一層低減できる。
【0102】
ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスなどからなるガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0103】
次に、本実施形態に係るプリント配線基板300について説明する。
図3および
図4は、本発明に係る実施形態のプリント配線基板300の構成の一例を示す断面図である。
【0104】
プリント配線基板300は、ビアホール307が設けられた絶縁層301と、絶縁層301の少なくとも一方の面に設けられた金属層303とを少なくとも有する。なお、本実施形態において、ビアホール307とは層間を電気的に接続するための孔であり、貫通孔および非貫通孔いずれでもよい。
【0105】
本実施形態に係るプリント配線基板300は、
図3に示すように、片面プリント配線基板であってもよいし、両面プリント配線基板または多層プリント配線基板であってもよい。両面プリント配線基板とは、絶縁層301の両面に金属層303を積層したプリント配線基板である。また、多層プリント配線基板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法などにより、絶縁層301上に、層間絶縁層(ビルドアップ層とも呼ぶ。)を介して金属層303を2層以上積層したプリント配線基板である。
ここで、本実施形態に係るプリント配線基板300は、絶縁層301が本実施形態に係るプリプレグ(P)を硬化して得られたものであり、金属張積層板100の絶縁層101に相当する。
【0106】
金属層303は、例えば、回路層であり、無電解金属めっき膜308と、電解金属めっき層309とを有する。
【0107】
金属層303は、例えば、回路層である。プリント配線基板300が、
図4に示すような多層プリント配線基板の場合は、金属層303は、コア層311またはビルドアップ層317中の回路層である。
【0108】
金属層303は、例えば、薬液処理またはプラズマ処理された絶縁層301の面上に、SAP(セミアディティブプロセス)法により形成される。絶縁層301上に無電解めっき膜308を施した後、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより電解金属めっき層309付けを行い、めっきレジストの除去とフラッシュエッチングによる無電解金属めっき膜308の除去により、絶縁層301上に金属層303を形成する。
【0109】
金属層303の回路寸法は、ラインアンドスペース(L/S)で表わすとき、25μm/25μm以下とすることができ、特に15μm/15μm以下とすることができる。回路寸法を小さくし、微細配線にすると、密着性の低下、配線間の絶縁信頼性が低下する。しかし、本実施形態に係るプリント配線基板300は、ラインアンドスペース(L/S)15μm/15μm以下の微細配線が可能であり、ラインアンドスペース(L/S)10μm/10μm程度までの微細化を達成できる。
【0110】
金属層303の厚みは、特に限定されないが、通常は5μm以上25μm以下である。
【0111】
ビルドアップ層317中の絶縁層305は、絶縁性の材料により構成されていれば特に限定されないが、たとえば、樹脂フィルム、プリプレグのいずれか等により構成することができる。これらの中でも、プリプレグはシート状材料であり、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性などの各種特性に優れ、プリント配線基板用のビルドアップ層317の製造に適しており好ましい。
プリプレグとしては、前述したプリプレグ(P)が特に好ましい。
【0112】
コア層311中の絶縁層301(ビルドアップ層317を含まないプリント配線基板300中の絶縁層301も含む。)の厚さは、好ましくは0.025mm以上0.1mm以下である。絶縁層301の厚さが上記範囲内であると、機械的強度および生産性のバランスがとくに優れ、薄型プリント配線基板に適した絶縁層301を得ることができる。
【0113】
ビルドアップ層317中の絶縁層305の厚さは、好ましくは0.015mm以上0.05mm以下である。絶縁層305の厚さが上記範囲内であると、機械的強度および生産性のバランスがとくに優れ、薄型プリント配線基板に適した絶縁層305を得ることができる。
【0114】
つづいて、プリント配線基板300の製造方法の一例について説明する。ただし、本実施形態に係るプリント配線基板300の製造方法は、以下の例に限定されない。
【0115】
はじめに、金属張積層板100を準備する。
次いで、エッチング処理により、金属箔103を除去する。
【0116】
次いで、絶縁層301にビアホール307を形成する。ビアホール307は、例えば、ドリル機やレーザー照射を用いて形成することができる。レーザー照射に用いるレーザーは、エキシマレーザー、UVレーザーおよび炭酸ガスレーザーなどが挙げられる。ビアホール307を形成後の樹脂残渣等は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより除去してもよい。
なお、エッチング処理による金属箔103の除去前に、絶縁層301にビアホール307を形成してもよい。
【0117】
次いで、絶縁層301の表面に対して、薬液処理またはプラズマ処理を行う。
薬液処理としては、特に限定されず、有機物分解作用を有する酸化剤溶液等を使用する方法などが挙げられる。また、プラズマ処理としては、対象物となるものに直接酸化作用の強い活性種(プラズマ、ラジカル等)を照射して有機物残渣を除去する方法などが挙げられる。
【0118】
次に、金属層303を形成する。金属層303は、例えば、セミアディティブプロセスにより形成することができる。以下、具体的に説明する。
【0119】
はじめに、無電解めっき法を用いて、絶縁層301の表面およびビアホール307に無電解金属めっき膜308を形成する。プリント配線基板300の両面の導通を図る。またビアホール307は、導体ペースト、または樹脂ペーストで適宜埋めることができる。無電解めっき法の例を説明する。例えば、まず絶縁層301の表面上に触媒核を付与する。この触媒核としては、特に限定されないが、例えば、貴金属イオンやパラジウムコロイドを用いることができる。引き続き、この触媒核を核として、無電解めっき処理により無電解金属めっき膜308を形成する。無電解めっき処理には、例えば、硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウム等を含むものを用いることができる。なお、無電解めっき後に、100〜250℃の加熱処理を施し、めっき被膜を安定化させることが好ましい。120〜180℃の加熱処理が酸化を抑制できる被膜を形成できる点で、特に好ましい。また、無電解金属めっき膜308の平均厚さは、例えば、0.1〜2μm程度である。
【0120】
次いで、無電解金属めっき膜308上に所定の開口パターンを有するめっきレジストを形成する。この開口パターンは、例えば回路パターンに相当する。めっきレジストとしては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、液状およびドライフィルムを用いることができる。微細配線形成の場合には、めっきレジストとしては、感光性ドライフィルム等を用いることが好ましい。感光性ドライフィルムを用いた一例を説明する。例えば、無電解金属めっき膜308上に感光性ドライフィルムを積層し、非回路形成領域を露光して光硬化させ、未露光部を現像液で溶解、除去する。硬化した感光性ドライフィルムを残存させることにより、めっきレジストを形成する。
【0121】
次いで、少なくともめっきレジストの開口パターン内部かつ無電解金属めっき膜308上に、電気めっき処理により、電解金属めっき層309を形成する。電気めっき処理としては、特に限定されないが、通常のプリント配線基板で用いられる公知の方法を使用することができ、例えば、硫酸銅等のめっき液中に浸漬させた状態で、めっき液に電流を流す等の方法を使用することができる。電解金属めっき層309は単層でもよく多層構造を有していてもよい。電解金属めっき層309の材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田のいずれか1種以上を用いることができる。
【0122】
次いで、アルカリ性剥離液や硫酸または市販のレジスト剥離液等を用いてめっきレジストを除去する。
【0123】
次いで、電解金属めっき層309が形成されている領域以外の無電解金属めっき膜308を除去する。例えば、ソフトエッチング(フラッシュエッチング)等を用いることにより、無電解金属めっき膜308を除去することができる。ここで、ソフトエッチング処理は、例えば、硫酸および過酸化水素を含むエッチング液を用いたエッチングにより行うことができる。これにより、金属層303を形成することができる。金属層303は無電解金属めっき膜308および電解金属めっき層309で構成されることになる。
【0124】
さらに、プリント配線基板300上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返すことにより、多層にすることができる。
【0125】
以上により、本実施形態のプリント配線基板300が得られる。
【0126】
本実施形態に係るプリント配線基板300は、絶縁層301の寸法変化のヒステリシスが小さいため、温度変化の繰り返しによる絶縁層301の寸法の経時的変化を抑制することができる。これにより、温度変化が激しい状況に長期間置かれても、半導体素子とプリント配線基板間で発生する応力を低減することができる。その結果、プリント配線基板300により得られる半導体装置について、半導体素子のプリント配線基板に対する位置ずれを抑制でき、半導体素子とプリント配線基板との間の接続信頼性を高めることができる。
【0127】
つづいて、本実施形態に係る半導体装置400について説明する。
図5および
図6は、本発明に係る実施形態の半導体装置400の構成の一例を示す断面図である。プリント配線基板300は、
図5および
図6に示すような半導体装置400に用いることができる。半導体装置400の製造方法としては、とくに限定されないが、例えば以下のような方法がある。
【0128】
まず、金属層303上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返す。そして、必要に応じてソルダーレジスト層401をプリント配線基板300の両面または片面に積層する。
【0129】
ソルダーレジスト層401の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストをラミネートし、露光、および現像することにより形成する方法、または液状レジストを印刷したものを露光、および現像により形成する方法によりなされる。
【0130】
つづいて、リフロー処理を行なうことによって、半導体素子407を配線パターンの一部である接続端子上に半田バンプ410を介して固着させる。その後、半導体素子407、半田バンプ410等を封止材413で封止することによって、
図5および
図6に示す様な半導体装置400が得られる。
【0131】
本実施形態に係る半導体装置400は、絶縁層301の寸法変化のヒステリシスが小さいため、温度変化の繰り返しによる絶縁層301の寸法の経時的変化を抑制することができる。これにより、温度変化が激しい状況に長期間置かれても、半導体素子とプリント配線基板間で発生する応力を低減することができる。その結果、半導体素子のプリント配線基板に対する位置ずれを抑制でき、半導体素子とプリント配線基板との間の接続信頼性を高めることができる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えば、本実施形態では、プリプレグが一層の場合を示したが、プリプレグを2層以上積層したものを用いて金属張積層板100を作製してもよい。
また、上記実施形態では、半導体素子407と、プリント配線基板300とを半田バンプ410で接続したが、これに限られるものではない。例えば、半導体素子407とプリント配線基板300とをボンディングワイヤで接続してもよい。
以下、参考形態の例を付記する。
(付記1)
エポキシ樹脂組成物と繊維基材とを含む絶縁層の両面に金属箔を有する金属張積層板であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド化合物、および無機充填材を含み、
エッチングにより当該金属張積層板両面の前記金属箔を除去後、
熱機械分析装置を用いて、
30℃から260℃までの昇温過程と260℃から30℃までの降温過程とからなる一回目の熱機械分析測定(1stRun)と、
30℃から260℃までの昇温過程と260℃から30℃までの降温過程とからなる二回目の熱機械分析測定(2ndRun)と、
を続けておこなったとき、
一回目の前記熱機械分析測定前の前記絶縁層の縦方向の長さを基準長とし、
二回目の前記昇温過程における30℃での前記絶縁層の縦方向の長さの前記基準長からの変形量をL1とし、
二回目の前記降温過程における30℃での前記絶縁層の縦方向の長さの前記基準長からの変形量をL2とした場合、
(L2−L1)/L1が0.03以上0.10以下である、金属張積層板。
(付記2)
付記1に記載の金属張積層板において、
(L2−L1)の絶対値が0.10μm以上1.0μm以下である、金属張積層板。
(付記3)
付記1または2に記載の金属張積層板において、
前記絶縁層の面内方向における、
二回目の前記昇温過程における30℃から150℃の範囲において算出した平均線膨張係数α1が1.0ppm/℃以上6.0ppm/℃以下である、金属張積層板。
(付記4)
付記3に記載の金属張積層板において、
前記絶縁層の面内方向における、
二回目の前記昇温過程における30℃から260℃の範囲において算出した平均線膨張係数α2が1.0ppm/℃以上9.0ppm/℃以下である、金属張積層板。
(付記5)
付記4に記載の金属張積層板において、
前記平均線膨張係数α1に対する前記平均線膨張係数α2の比が1.8以下である、金属張積層板。
(付記6)
付記1乃至5いずれか一つに記載の金属張積層板において、
昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件での動的粘弾性測定により測定される、前記絶縁層のガラス転移温度が180℃以上250℃以下である、金属張積層板。
(付記7)
付記1乃至6いずれか一つに記載の金属張積層板において、
前記絶縁層の250℃での貯蔵弾性率E'が0.8GPa以上2.0GPa以下である、金属張積層板。
(付記8)
付記1乃至7いずれか一つに記載の金属張積層板において、
前記ビスマレイミド化合物が4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、およびポリフェニルメタンマレイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種である、金属張積層板。
(付記9)
付記1乃至8いずれか一つに記載の金属張積層板において、
前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、金属張積層板。
(付記10)
付記1乃至9いずれか一つに記載の金属張積層板において、
前記無機充填材がタルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である、金属張積層板。
(付記11)
付記1乃至10いずれか一つに記載の金属張積層板において、
前記繊維基材が、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスからなる群から選ばれる少なくとも一種からなるガラス繊維基材である、金属張積層板。
(付記12)
付記1乃至11いずれか一つに記載の金属張積層板において、
前記無機充填材の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物の全固形分100質量%に対し、30質量%以上79.9質量%以下である、金属張積層板。
(付記13)
付記1乃至12いずれか一つに記載の金属張積層板において、
前記繊維基材の含有量が、前記絶縁層100質量%に対し、20質量%以上70質量%以下である、金属張積層板。
(付記14)
付記1乃至13いずれか一つに記載の金属張積層板において、
前記絶縁層の厚みが、0.1mm以下である、金属張積層板。
(付記15)
付記1乃至14いずれか一つに記載の金属張積層板を回路加工してなる、プリント配線基板。
(付記16)
付記15に記載のプリント配線基板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【実施例】
【0133】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例では、部はとくに特定しない限り質量部を表す。また、それぞれの厚みは平均膜厚で表わされている。
【0134】
(実施例1)
樹脂ワニス(A)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)17.5質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L、エポキシ当量230、上記式(VII−1)で示されるエポキシ樹脂でn=1.7、Rがグリシジル基)14.1質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)7.8質量部、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(大内新興化学製ノクラックNS−30)0.3質量部、エポキシシランカップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、A187)0.2質量部、シリカ粒子(アドマテックス社製、SO25R、平均粒子径0.5μm)57.0質量部、シリカナノ粒子(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒子径70nm)3.0質量部にN−メチルピロリドンを加え不揮発分65%となるように調整し、高速撹拌装置を用い撹拌して樹脂ワニス(A)を調製した。
【0135】
(2)樹脂層付フィルムの作製
(1)で得られた樹脂ワニス(A)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステル社製、SFB−38、厚さ38μm、幅480m)の片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後(半硬化後)の樹脂層の厚さが15μmとなるように塗工した。次いで、これを120℃の乾燥装置で10分間乾燥して、樹脂層付フィルム(B)を作製した。
【0136】
(3)プリプレグの製造
繊維基材としてガラスクロス(クロスタイプ♯1015、幅360mm、厚さ15μm、Tガラス、坪量17g/m
2)を用い、真空ラミネート装置および熱風乾燥装置によりプリプレグを製造した。
具体的には、ガラスクロスの両面に樹脂層付フィルム(B)がガラスクロスの幅方向の中心に位置するように、それぞれ重ね合わせ、1330Paの減圧条件下で、80℃のラミネートロールを用いて接合した。ガラスクロスにかかる張力は、200N/mであった。
ここで、ガラスクロスの幅方向寸法の内側領域においては、樹脂層付フィルム(B)の樹脂層をガラスクロスの両面側にそれぞれ接合するとともに、ガラスクロスの幅方向寸法の外側領域においては、樹脂層付フィルム(B)の樹脂層同士を接合した。
次いで、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理して、厚さ35μm(ただし、PETフィルムの厚みを除く)(樹脂層:10μm、繊維基材:15μm、樹脂層:10μm)の両面PETフィルム付きのプリプレグを得た。
【0137】
(4)金属張積層板の作製
(3)で得られた両面PETフィルム付きのプリプレグの両面のPETフィルムを剥離した。次いで、そのプリプレグを2枚重ね、その両面に2μmの銅箔(日本電解社製、NSAP−2B)をそれぞれ重ね合わせた。次いで、その積層体を平滑な金属板に挟み、温度220℃、圧力4MPaの条件で2時間加熱加圧成形した。次いで、圧力4MPaを維持したまま、5℃/分の降温速度で30℃まで冷却し、金属張積層板を得た。得られた金属張積層板の絶縁層(銅箔を除く部分)の厚みは、0.07mmであった。
【0138】
(5)多層積層板の作製
(4)で得られた金属張積層板の両面をセミアディティブ法により回路パターン形成(残銅率70%、L/S=25/25μm)し、プリント配線基板を得た。
次いで、(3)で得られた両面PETフィルム付きのプリプレグの片側のPETフィルムを剥離したものを、プリント配線基板の表裏に、プリプレグのPETフィルムを剥離した側を内側にして両面重ね合わせた。次いで、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度130℃、圧力0.2MPa、時間20秒で真空加熱加圧成形し、多層積層板を得た。
【0139】
得られた多層積層板から外側のPETフィルムを剥離し、多層積層板の両面に、銅箔(「MT18SD−H」、厚さ3μm(18μmキャリア付き)、三井金属鉱業社製)を配置した。次いで、その積層体を平滑な金属板に挟み、温度220℃、圧力4MPaの条件で2時間加熱加圧成形した。次いで、圧力4MPaを維持したまま、5℃/分の降温速度で30℃まで冷却し、両面にキャリア付き銅箔を有する金属張多層積層板を得た。
【0140】
(6)プリント配線基板の作製
(5)の金属張多層積層板のキャリア銅箔を剥離し、更に銅箔をエッチング除去した。次いで炭酸レーザーによりスルーホール(貫通孔)を形成した。次にスルーホール内および絶縁層表面を、80℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に5分浸漬後、中和して粗化処理を行った。
これを脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜を約1μm、めっきレジスト形成、無電解銅めっき皮膜を給電層としパターン電気メッキ銅を12μm形成させL/S=12/12μmの微細回路加工を施した。次に、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った後、フラッシュエッチングで給電層を除去した。
次に、ソルダーレジスト(太陽インキ製造社製、PSR−4000 AUS703)を印刷し、半導体素子搭載パッド等が露出するように、所定のマスクで露光し、現像、キュアを行い、回路上のソルダーレジスト層厚さが12μmとなるように形成した。
最後に、ソルダーレジスト層から露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層3μmと、さらにその上へ、無電解金めっき層0.1μmとからなるめっき層を形成し、プリント配線基板を得た。
【0141】
(7)半導体装置の作製
半導体装置は、(6)で得られたプリント配線基板上に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ8mm×8mm、厚み0.1mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4160G)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。なお、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。上記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。最後に14mm×14mmのサイズにルーターで個片化し、半導体装置を得た。
【0142】
(8)変形量、平均線膨脹係数
(4)で得られた金属張積層板の金属箔をエッチングにより除去し、金属箔を除去した絶縁層から4mm×20mmの試験片を作製した。この試験片について、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製,Q400)を用いて、温度範囲30〜260℃、10℃/分、荷重5gの条件で熱機械分析(TMA)を2サイクル測定した。1サイクル目の熱機械分析測定前の絶縁層の縦方向の長さを基準長L
0とし、2サイクル目の昇温過程における30℃での絶縁層の縦方向の長さの基準長L
0からの変形量をL
1とし、2サイクル目の降温過程における30℃での絶縁層の縦方向の長さの基準長L
0からの変形量をL
2とした。得られたTMAチャートからL
1およびL
2を算出した。得られたL
1およびL
2により、(L
2−L
1)/L
1および(L
2−L
1)の絶対値を算出した。
線膨脹係数は、2サイクル目の30〜150℃および30〜260℃における平面方向(XY方向)の平均線膨張係数(CTE)を測定した。
【0143】
(9)ガラス転移温度、貯蔵弾性率
(4)で得られた金属張積層板の金属箔をエッチングにより除去し、金属箔を除去した絶縁層から6mm×25mmの試験片を作製した。この試験片について、DMA装置(TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置DMA983)を用いて5℃/分(周波数1Hz)で昇温し、250℃での貯蔵弾性率E'を測定した。またtanδのピーク位置をガラス転移温度とした。
【0144】
(10)ピール強度
(4)で得られた金属張積層板から銅箔をエッチング除去し、60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に5分浸漬後、中和して粗化処理を行った。これを脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜を約1μm、電気メッキ銅を30μm形成させ、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った。JIS−C−6481に基づき100mm×20mmの試験片を作製し、23℃におけるピール強度を測定した。
【0145】
(11)細線加工性評価
(6)において、L/S=12/12μmの微細回路パターンを形成した後のプリント配線基板について、レーザー顕微鏡で細線の外観検査および導通チェックにより評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:形状、導通ともに問題なし
○:ショート、配線切れはなく、実質上問題ない
×:ショート,配線切れあり
【0146】
(12)絶縁信頼性評価
(6)で得られたプリント配線基板のL/S=12/12μmの微細回路パターン上に、ソルダーレジストの代わりにビルドアップ材(住友ベークライト社製、BLA−3700GS)を積層、硬化した試験サンプルを作製した。この試験サンプルを用いて、温度130℃、湿度85%、印加電圧3.3Vの条件で連続湿中絶縁抵抗を評価した。なお、抵抗値10
6Ω以下を故障とした。評価基準は以下の通りである。
◎:300時間以上故障なし
○:150時間以上300時間未満で故障あり
×:150時間未満で故障あり
【0147】
(13)半導体装置の反り評価
(7)で得られた半導体装置の常温(23℃)および260℃での反りを温度可変レーザー三次元測定機(日立テクノロジーアンドサービス社製、形式LS220−MT100MT50)を用いて評価した。上記測定機のサンプルチャンバーに半導体素子面を下にして設置し、高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。評価基準は以下の通りである。
常温(23℃)
◎ :反り量が150μm未満
○ :反り量が150μm以上200μm未満
× :反り量が200μm以上
260℃
◎ :反り量が100μm未満
○ :反り量が100μm以上150μm未満
× :反り量が150μm以上
【0148】
(14)ヒートサイクル試験
(7)で得られた半導体装置4個を60℃、60%の条件下で40時間処理後、IRリフロー炉(ピーク温度:260℃)で3回処理し、大気中で、−55℃(15分)、125℃(15分)で500サイクル処理した。つぎに、超音波映像装置(日立建機ファインテック社製、FS300)を用いて、半導体素子、半田バンプに異常がないか観察した。
◎:半導体素子、半田バンプともに異常なし。
○:半導体素子および/または半田バンプの一部にクラックが見られるが実用上問題なし。
△:半導体素子および/または半田バンプの一部にクラックが見られ実用上問題あり。
×:半導体素子、半田バンプともにクラックが見られ使用できない。
【0149】
(実施例2)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を23.7質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)8.2質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)7.6質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0150】
(実施例3)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を14.3質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)17.3質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)8.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0151】
(実施例4)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を16.1質量部、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−3000H,エポキシ当量285)16.1質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)7.2質量部とし、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0152】
(実施例5)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を17.2質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)13.8質量部、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン(イハラケミカル社製キュアハードMED アミン当量70.5)を8.5質量部質量部とし、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0153】
(実施例6)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を18.3質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)14.8質量部、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(東京化成社製、アミン当量49.5)を6.4質量部とし、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0154】
(実施例7)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を17.6質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)14.2質量部、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン社製4,4'−DAS アミン当量62)を7.7質量部とし、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0155】
(実施例8)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を16.4質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)13.2質量部、4,4'−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン(三井化学ファイン社製BISANILINE−P アミン当量86)を9.9質量部とし、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0156】
(実施例9)
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を15.6質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)12.6質量部、2,2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(和歌山精化製BAPP アミン当量103)を11.3質量部とし、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0157】
(実施例10)
ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(ケイアイ化成製BMI−70、二重結合当量221)を15.1質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)15.7質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)8.7質量部とし、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0158】
(実施例11)
4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイアイ化成製BMI−H、二重結合当量179)を13.2質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)16.9質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)9.3質量部とし、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0159】
(実施例12)
ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成製BMI−2300、二重結合当量179)を13.2質量部、ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)16.9質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)9.3質量部とし、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成社製BMI−80、二重結合当量285)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0160】
(実施例13)
4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の代わりに2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(大内新興製ノクラック200)を0.3質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0161】
(実施例14)
シリカナノ粒子を用いずにシリカ粒子(アドマテックス社製、SO25R、平均粒子径0.5μm)60.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0162】
(実施例15)
シリカナノ粒子を用いずにシリカ粒子(アドマテックス社製、SO25R、平均粒子径0.5μm)55.0質量部、タルク(富士タルク社製、LMS−300、平均粒子径4.8μm)5.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0163】
(比較例1)
ナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)31.0質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)8.5質量部とし、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0164】
(比較例2)
ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−3000H,エポキシ当量285)32.3質量部、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬製カヤハードA−A アミン当量63.5)7.2質量部とし、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンおよびナフトール変性ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000L,エポキシ当量230)を用いない以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、金属張積層板、多層積層板、プリント配線基板、および半導体装置を得た。
【0165】
以上の結果を表1に示す。
【0166】
【表1】