特許第6206043号(P6206043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206043
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】複合半透膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/70 20060101AFI20170925BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20170925BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20170925BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B01D71/70
   B01D69/12
   B01D69/10
   C08F220/26
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-203121(P2013-203121)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66494(P2015-66494A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高田 皓一
(72)【発明者】
【氏名】峰原 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】中辻 宏治
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/136029(WO,A1)
【文献】 特開2012−210582(JP,A)
【文献】 特開昭59−148727(JP,A)
【文献】 特開平08−155281(JP,A)
【文献】 特開平08−276122(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/122560(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/029985(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/077619(WO,A1)
【文献】 特開平09−099228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00− 71/82
C02F 1/44
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に形成された分離機能層とを備え、
前記分離機能層は、化合物(A)の有する加水分解性基の縮合、および化合物(A)と化合物(B)および(C)との重合により形成される重合物を含有し、さらに前記分離機能層は、重合していない前記化合物(B)および前記化合物(C)を含有し、
下記化合物(B)および(C)がそれぞれ1個以上のエチレン性不飽和基を有する複合半透膜。
(A)ケイ素原子と、前記ケイ素原子に直接結合したエチレン性不飽和基を有する反応性基と、前記ケイ素原子に直接結合した加水分解性基と、を有するケイ素化合物
(B)1個以上の酸性基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)1個以上の塩基性基を有する、前記化合物(A)および前記化合物(B)以外の四級アンモニウム塩
【請求項2】
化合物(A)の加水分解性基がアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子およびソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基である請求項1に記載の複合半透膜。
【請求項3】
化合物(A)が下記一般式(a)で表される請求項1または請求項2に記載の複合半透膜。
Si(R1)(R2)(R3)4−m−n ・・・(a)
(R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。R2はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、イソシアネート基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R3は水素およびアルキル基の少なくとも一方を表す。m、nは整数であり、m+n≦4、m≧1、およびn≧1を満たす。mが2以上である場合、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく,(4−m―n)が2以上である場合、R3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記化合物(B)の酸性基がカルボキシル基、スルホン酸基、およびホスホン酸基のうちから選ばれる少なくとも1種の官能基である、請求項1〜に記載の複合半透膜。
【請求項5】
微多孔性支持膜と分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
(a)前記微多孔性支持膜を準備する工程と、
(b)前記微多孔性支持膜上に前記分離機能層を形成する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、
(b1)下記化合物(A)および下記化合物(B)および下記化合物(C)の混合物を微多孔性支持膜上に塗布するステップと、
(b2)化合物(A)が有する加水分解性基を縮合させるステップと、
(b3)化合物(A)と化合物(B)および(C)とを重合させるステップと、
を含み、
下記化合物(B)および(C)がそれぞれ1個以上のエチレン性不飽和基を有する複合半透膜の製造方法。
(A)ケイ素原子と、前記ケイ素原子に直接結合したエチレン性不飽和基を有する反応性基と、前記ケイ素原子に直接結合した加水分解性基と、を有するケイ素化合物
(B)1個以上の酸性基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)塩基性基を1個以上する、前記化合物(A)および前記化合物(B)以外の四級アンモニウム塩
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性分子に対する分離性能に優れた耐酸化剤性を有する複合半透膜およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶解物成分の透過を阻止する水処理分離膜として、微多孔性支持膜と、微多孔性支持膜上に設けられた分離機能層とを備える複合半透膜が知られている。市販されている複合半透膜の大部分は、分離機能層として、微多孔性支持膜上での界面重縮合により形成されたポリアミドからなる層を備える。
【0003】
しかしながら、ポリアミド層を備える複合半透膜は、主鎖にアミド結合を有するので、酸化剤に対する耐久性が不十分である。また、膜の殺菌に用いられる塩素、過酸化水素などにより、ポリアミド層を備える複合半透膜の脱塩性能および選択的な分離性能が著しく劣化することが知られている。
【0004】
膜の分離機能層の酸化剤に対する耐久性を向上した技術の例としては、耐酸化剤性の高いシラン化合物と、原料の選択性の幅も広いエチレン性不飽和化合物を重合した分離機能層有する複合膜が特許文献1および特許文献2に開示されている。特許文献1および特許文献2には、耐薬品性の高いシラン化合物と、エチレン性不飽和化合物を重合して形成された分離機能層を有することで酸化剤に対する耐性が向上されると記載されている。特許文献1および特許文献2に開示された複合半透膜は、塩除去性能と耐酸化剤性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/029985号
【特許文献2】国際公開第2012/077619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水処理の目的または処理の対象となる水によっては、塩だけでなく、中性分子の除去が望まれることがある。本発明では、中性分子の除去性能を向上し、中性分子に対する除去性能に優れ、かつ耐酸化剤性を有する複合半透膜およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、下記(1)〜(8)のいずれかの構成を備える。
【0008】
(1)微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に形成された分離機能層とを備え、
前記分離機能層は、化合物(A)の有する加水分解性基の縮合、および化合物(A)と化合物(B)または(C)の少なくとも一方との重合により形成される重合物を含有し、前記重合物が前記化合物(B)または前記化合物(C)を含有しないときは、前記分離機能層は、重合していない前記化合物(B)または前記化合物(C)を含有し、
下記化合物(B)および(C)の少なくとも一方が1個以上のエチレン性不飽和基を有する複合半透膜。
(A)ケイ素原子と、前記ケイ素原子に直接結合したエチレン性不飽和基を有する反応性基と、前記ケイ素原子に直接結合した加水分解性基と、を有するケイ素化合物
(B)1個以上の酸性基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)1個以上の塩基性基を有する、前記化合物(A)および前記化合物(B)以外の化合物
(2)前記分離機能層は、下記化合物(A)の加水分解性基の縮合および前記化合物(A)と前記化合物(D)と前記化合物(E)との重合により形成される重合物を含有し、
前記化合物(B)および(C)が1個以上のエチレン性不飽和基を含有する請求項1に記載の複合半透膜。
(3)化合物(A)の加水分解性基がアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子およびソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基である上記(1)または(2)に記載の複合半透膜。
(4)化合物(A)が下記一般式(a)で表される上記(1)〜(2)のいずれかの複合半透膜。
Si(R1)(R2)(R3)4−m−n ・・・(a)
(R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。R2はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、イソシアネート基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R3は水素およびアルキル基の少なくとも一方を表す。m、nは整数であり、m+n≦4、m≧1、およびn≧1を満たす。mが2以上である場合、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく,(4−m―n)が2以上である場合、R3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
(5)化合物(B)の酸性基がカルボキシル基、スルホン酸基、およびホスホン酸基のうちから選ばれる、少なくとも1種である、上記(1)〜(4)に記載の複合半透膜。
(6)化合物(C)の塩基性基が第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基および複素環基のうちから選ばれる、少なくとも1種である、上記(1)〜(5)に記載の複合半透膜。
(7)微多孔性支持膜と分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
前記微多孔性支持膜を準備する工程(a)と、
前記微多孔性支持膜上に前記分離機能層を形成する工程(b)と、
を備え、
前記分離機能層を形成する工程(b)は、
化合物(A)および化合物(B)および化合物(C)の混合物を微多孔性支持膜上に塗布するステップ(b1)と、
化合物(A)が有する加水分解性基を縮合させるステップ(b2)と、
化合物(A)と化合物(B)または(C)の少なくとも一方とを重合させるステップ(b3)と、
を含み、
下記化合物(B)および(C)の少なくとも一方が1個以上のエチレン性不飽和基を有する複合半透膜の製造方法。
(A)ケイ素原子と、前記ケイ素原子に直接結合したエチレン性不飽和基を有する反応性基と、前記ケイ素原子に直接結合した加水分解性基と、を有するケイ素化合物
(B)1個以上の酸性基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)塩基性基を1個以上する、前記化合物(A)および前記化合物(B)以外の化合物
(8)前記化合物(B)および(C)は1個以上のエチレン性不飽和基を含有し、
前記ステップ(b3)において、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)とを重合させる、
上記(7)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば酸性基を有する化合物と塩基性基を有する化合物とを用いることで、中性分子の除去性能を向上した膜を得ることができる。中性分子の除去性能の向上により、農薬および医薬品中間体などの電荷を持たない微小な溶解物成分に対しても高い分離性能を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.複合半透膜]
以下に説明される複合半透膜は、溶質を溶媒から分離する機能を有する分離機能層と、その分離機能層を支持する微多孔性支持膜とを備える。
【0011】
(1−1)微多孔性支持膜
微多孔性支持膜は、分離機能層を支持することで、複合半透膜に強度を与える。分離機能層は微多孔性支持膜の少なくとも片面に設けられる。
【0012】
基材の上に微多孔性支持膜を設け、さらにその微多孔性支持膜の上に分離機能層を設けることができる。また、基材の上に分離機能層を設け、さらにその分離機能層の上に微多孔性支持膜を設けることもできる。微多孔性支持膜に複数の分離機能層を設けても良いが、通常、片面に1層の分離機能層があれば十分である。なお、膜の支持性、目詰まりの防止および透水性の確保という理由から、目の粗い層から目の細かい層の順に積層するのが一般的である。そこで、基材の上に微多孔性支持膜を設け、さらにその微多孔性支持膜の上に分離機能層を設ける構成が採用されることが多い。
【0013】
本発明で用いる微多孔性支持膜の表面の細孔径は1nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。微多孔性支持膜表面の細孔径がこの範囲であれば、表面において欠陥が十分に少ない分離機能層を形成することができる。また、得られる複合半透膜が高い純水透過流束を有し、加圧運転中に分離機能層が支持膜孔内に落ち込むことなく構造を維持できる。
【0014】
ここで、微多孔性支持膜の表面の細孔径は、電子顕微鏡写真により算出できる。微多孔性支持膜の表面を電子顕微鏡写真により撮影し、観察できる細孔すべての直径を測定し、算術平均することにより細孔径を求めることができる。細孔が円状でない場合、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることができる。別の手段としては、微小な細孔内にある水は通常の水に比べて融点が低くなるという原理を利用して、示差走査熱量測定(DSC)により細孔径を求めることができる。文献(石切山他、ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェイス・サイエンス、171巻、p103、アカデミック・プレス・インコーポレーテッド(1995))等にその詳細が記載されている。
【0015】
微多孔性支持膜の厚みは、1μm以上5mm以下の範囲内にあると好ましく、10μm以上100μm以下の範囲内にあるとより好ましい。厚みが小さいと微多孔性支持膜の強度が低下しやすく、その結果、複合半透膜の強度が低下する傾向にある。厚みが大きいと微多孔性支持膜およびそれから得られる複合半透膜を曲げて使うときなどに取り扱いにくくなる。また、複合半透膜の強度を上げるため、微多孔性支持膜は布、不織布、紙などで補強されていてもよい。これら補強する材料の好ましい厚みは通常50μm以上150μm以下である。
【0016】
微多孔性支持膜に用いる素材としては特に限定されない。たとえばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーが使用できる。これらのポリマーを単独で、またはブレンドして用いることができる。上記のうち、セルロース系ポリマーとしては、酢酸セルロース、硝酸セルロースなどが例示される。ビニル系ポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが好ましいものとして例示される。中でも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーやコポリマーが好ましい。さらに、これらの素材の中でも、化学的安定性、機械的強度、熱安定性が高く、成型が容易であるポリスルホン、ポリエーテルスルホンを用いることが特に好ましい。
【0017】
(1−2)分離機能層
本発明の複合半透膜における分離機能層の厚みは5nm以上500nm以下の範囲内にあると好ましい。下限としてはより好ましくは10nmである。上限としてより好ましくは200nmである。薄膜化した分離機能層は透水性を向上させることができる。
【0018】
分離機能層は、化合物(A)の加水分解性基の縮合および、化合物(A)と化合物(B)または化合物(C)の少なくとも一方との重合により形成される重合物を含有する。化合物(B)または(C)は、分離機能層に、重合物としてではなく、重合していない化合物として含まれてもよい。つまり、化合物(B)または化合物(C)は、重合性基を持たない化合物であってもよく、重合性基を持たない(B)または(C)が重合していない化合物として分離機能層に含有されていてもよい。
【0019】
化合物(A)はケイ素原子と、前記ケイ素原子に直接結合したエチレン性不飽和基を有する反応性基と、前記ケイ素原子に直接結合した加水分解性基と、を有するケイ素化合物である。化合物(B)は、1個以上の酸性基を有し、かつ前記化合物(A)以外の化合物である。化合物(B)はさらにエチレン性不飽和基を1個以上有していてもよい。化合物(C)は、1個以上の塩基性基を有すると共に、前記化合物(A)以外の化合物であって、かつ前記化合物(B)以外の化合物である。化合物(C)は、さらにエチレン性不飽和基を1個以上有していてもよい。
【0020】
上述のとおり、分離機能層内では、化合物(B)と化合物(C)とが共存する。分離機能層において、化合物(B)および(C)は、酸性基もしくは塩基性基に由来する高い親水性を有しており、単独で用いたときには高い親水性に起因して凝集構造を形成する。これら化合物(B)および(C)を共存させると、酸性基および塩基性基は互いに中和し、有機物同士の塩を形成することで酸性基および塩基性基は互いにキャッピングされ、親水性が低下する。これにより、高い親水性に由来していた凝集構造の形成が抑制される。
化合物(B)または化合物(C)が有機物と無機物との塩である場合、塩の組み換えが起こることで有機物同士の塩が形成され、同様に凝集構造が抑制される。
凝集構造部位は細孔となるので、凝集構造の形成を抑制することにより、分離機能層を緻密化できる。この緻密化により、従来のシロキサン化合物含有複合半透膜よりも高い中性分子の除去性能が実現される。
【0021】
溶液中から除去が望まれる中性分子として、残留農薬や医薬品が上げられる。残留農薬や医薬品は微量でも生体への影響が大きいので、中性分子に対して高い除去性能を有する膜は、水処理に好適に用いられる。
【0022】
また、分離機能層が化合物(B)および化合物(C)を含有することで、化合物(B)の酸性基および化合物(C)の塩基性基によって適度な透水性が実現される。
【0023】
まず、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)について説明する。
【0024】
エチレン性不飽和基を有する反応性基はケイ素原子に直接結合している。このような反応性基としては、ビニル基、アリル基、メタクリルオキシエチル基、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシエチル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が例示される。重合性の観点から、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が好ましい。
【0025】
加水分解性基としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子およびイソシアネート基が例示される。アルコキシ基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数1または2のものである。アルケニルオキシ基としては炭素数2以上10以下のものが好ましく、さらには炭素数2以上4以下、さらには3のものが好ましい。カルボキシ基としては、炭素数2以上10以下のものが好ましく、さらには炭素数2のもの、すなわちアセトキシ基が好ましい。ケトオキシム基としては、メチルエチルケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基が例示される。アミノヒドロキシ基は、酸素を介してアミノ基が酸素原子を介してケイ素原子に結合しているものである。このようなものとしては、ジメチルアミノヒドロキシ基、ジエチルアミノヒドロキシ基、メチルエチルアミノヒドロキシ基が例示される。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましく採用される。
【0026】
分離機能層の形成にあたっては、上記加水分解性基の一部が加水分解し、シラノール構造をとっている化合物も使用できる。
【0027】
化合物(A)としては下記一般式(b):
Si(R1)(R2(R34−m−n ・・・(a)
(R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基を表す。R2はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、イソシアネート基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R3は水素およびアルキル基の少なくとも一方を表す。m、nは整数であり、m+n≦4、m≧1、およびn≧1を満たす。mが2以上である場合、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく,(4−m―n)が2以上である場合、R3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるものであることが好ましい。
【0028】
R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基であるが、上で説明したとおりである。R2は加水分解性基であるが、これは上で説明したとおりである。R3となるアルキル基の炭素数としては1以上10以下のものが好ましく、さらに1または2のものが好ましい。
【0029】
加水分解性基としては、分離機能層の形成にあたって、反応液が製膜に適した粘度とポットライフを有することからアルコキシ基が好ましく用いられる。
【0030】
このような化合物(A)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(アクリロキシメチル)フェネチルトリメトキシシランが例示される。
【0031】
化合物(A)の他、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有しないが、加水分解性基を有する化合物を併せて使用することもできる。このような化合物は、下記一般式(c):
Si(R4)(R5)4−a ・・・一般式(c)
(R4はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子およびイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R5は水素原子およびアルキル基の少なくとも一方を表す。aは1≦a≦4を満たす整数である。aが2以上である場合、R4は互いに同一であっても異なっていてもよく(4−a)が2以上である場合、R5は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表すことができ、このようなケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチレンビストリメトキシシラン、メチレンビストリエトキシシラン、エチレンビストリメトキシシラン、エチレンビストリエトキシシラン、フェニルビストリメトキシシラン、フェニルビストリエトキシシランが例示される。
【0032】
次に、酸性基を有しており、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有していても良い化合物(B)について説明する。
化合物(B)は複合半透膜を水溶液の分離などに用いたときに水の選択的透過性を高め、塩の阻止率を上げるために、酸性基を有するアルカリ可溶性の化合物である。化合物(B)は有機化合物であることが好ましい。化合物(B)は、カルボキシル基、スルホン酸基、およびホスホン酸基のうちから選ばれる少なくとも1種の酸性基を有することが好ましい。つまり、化合物(B)として、好ましくは、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸およびスルホン酸が挙げられる。化合物(B)は、酸、エステル化合物、および金属塩のいずれの状態で存在してもよい。これらの化合物(B)は、2つ以上の酸性基を含有し得るが、中でも1個〜2個の酸性基を含有する化合物が好ましい。
【0033】
さらに、化合物(B)は付加重合性を有するエチレン性不飽和基を有していてもよい。エチレン性不飽和基を有する化合物としてはエチレン、プロピレン、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体が例示される。
【0034】
上記の化合物(B)の中でカルボン酸基を有する化合物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシン、4−ビニル安息香酸、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−メチルプロパン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシ安息香酸、ベンゼンカルボン酸、フタル酸、3−フェニルアクリル酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ピルビン酸およびこれらの塩が例示される。
【0035】
上記の化合物(B)の中でホスホン酸基を有する化合物としては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステル、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、デシルホスホン酸ホスホン酸、1−メチルエチルホスホン酸、1−メチルプロピルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1,2−エチレンジホスホン酸、1,8−オクタンジホスホン酸、およびこれらの塩が例示される。
【0036】
上記の化合物(B)の中でリン酸エステルを有する化合物としては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェート、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル、リン酸デシル、フェニルリン酸、リン酸1−ナフチル、リン酸2−ナフチル、リン酸ジメチル、リン酸エチルメチル
およびこれらの塩が例示される。
【0037】
上記の化合物(B)の中でスルホン酸基を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−(アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、4‐メタクリルアミドベンゼンスルホン酸、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸、3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、デカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、4−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸、5−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,8−オクタンジスルホン酸およびこれらの塩が例示される。
【0038】
次に、塩基性基を有しており、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有していても良い化合物(C)について説明する。
化合物(C)は、複合半透膜を水溶液の分離などに用いたときに水の選択的透過性を高め、塩の阻止率を上げるために、塩基性基を有する酸可溶性の化合物である。化合物(C)は有機化合物であることが好ましい。ここでいう塩基性基とは、水中における塩基解離定数(pKb)がその共役酸の酸解離定数(pKa)よりも小さい官能基を指す。好ましい塩基性基の構造としては、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、及び複素環基である。これらの化合物(C)は、2つ以上の塩基性基を含有し得るが、中でも1個〜2個の塩基性基を含有する化合物が好ましい。
【0039】
さらに、化合物(C)は付加重合性を有するエチレン性不飽和基を有していてもよい。エチレン性不飽和基を有する化合物としてはエチレン、プロピレン、メタアクリル酸、アクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体が例示される。
【0040】
上記の塩基性基およびエチレン性不飽和基をそれぞれ1個以上有する化合物としては、アリルアミン、N−メチルアリルアミン、4−アミノスチレン、N,N−ジメチルアリルアミン、4−ビニルベンジルアミンなどの下記一般式(1)で表されるアミン化合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノブチルメタクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノブチルメタクリレート、ジエチルアミノブチルアクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、4−ビニルイミダゾール、5−ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾール、2−ビニル−2−オキサゾリン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジラウリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、N−メチルブチルアミン、N−エチルブチルアミン、N−エチルヘキシルアミン、N−エチルラウリルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリラウリルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン、4−メチルベンジルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジ−2−メチルシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、N,N−ジ−4−メチルベンジルアミン、N−シクロヘキシル−2−エチルヘキシルアミン、N−シクロヘキシルベンジルアミン、N−ステアリルベンジルアミン、トリベンジルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ブタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−シクロヘキシル−N−メチルアミノエタノール、N−ベンジル−N−プロピルアミノエタノール、N−ヒドロキシエチルピロリジン、N−ヒドロキシエチルピペラジン、N−ヒドロキシエチルモルホリン、エチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N−シクロヘキシル−1,3−プロパンジアミン、N−デシル−1,3−プロパンジアミン、N−イソトリデシル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メトキシフェニルピペラジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、
ピリジン、1−メチルピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、1−エチルピリジン、1−デシルピリジン、
イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、5−メチルイミダゾール1−エチルイミダゾール、1−デシルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、
1−オキサゾリン、2−メチルオキサゾ−ル、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、4,5−ジヒドロ−2−フェニルオキサゾール、4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリン、2,4,5−トリメチルオキサゾール、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン
およびこれらの塩、
および、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、
トリエチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルエチルアンモニウムクロリド、ジメチルジエチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、3−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド
、N,N−ジメチルピロリジニウムクロリド、N,N−ジメチルピペリジニウムクロリド、N,N−ジメチルモルホリニウムクロリド、
1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムクロリド
N−メチルピリジニウムクロリド、N−エチルピリジニウムクロリド、N−プロピルピリジニウムクロリド、N−ブチルピリジニウムクロリド、
が例示される。
【0041】
本発明の複合半透膜では、分離機能層を形成するために、(A)のケイ素化合物以外に、一個以上酸性基を有している(A)以外の化合物(B)、および、塩基性基を有している(A)および(B)以外の化合物(C)が使用される。加水分解性基を縮合することに加えて、エチレン性不飽和基を有する化合物の重合によって、これら化合物を高分子量化することが必要である。
【0042】
(A)のケイ素化合物を単独で縮合させた場合、ケイ素原子に架橋鎖の結合が集中し、ケイ素原子周辺とケイ素原子から離れた部分との密度差が大きくなるため、分離機能層中の孔径が不均一となる傾向がある。一方、(A)のケイ素化合物自身の高分子量化および架橋に加え、化合物(A)と化合物(B)または(C)のうち少なくとも一方を共重合させることで、加水分解性基の縮合による架橋点とエチレン性不飽和基の重合による架橋点が適度に分散される。このように適度に架橋点を分散させることで、均一な孔径を有する分離機能層が構成され、透水性能と除去性能のバランスが取れた複合半透膜を得ることができる。この際、エチレン性不飽和基を有する化合物は、低分子量だと複合半透膜使用時に溶出し膜性能低下を引き起こす可能性があるため、高分子量化していることが必要である。
つまり、分離機能層は、化合物(A)と化合物(B)または(C)の少なくとも一方との重合物を含有し、化合物(A)の官能基を介した縮合反応により架橋した重合物を含有する。
【0043】
そして、本発明では、化合物(B)と化合物(C)を共存させることが重要である。化合物(B)および(C)は、酸性基もしくは塩基性基に由来する高い親水性を有しており、単独で用いたときには高い親水性に起因して凝集構造を形成している。(B)および(C)を共存させると、酸性基および塩基性基は互いに中和し、有機物同士の塩を形成することで酸性基および塩基性基は互いにキャッピングされ、親水性が低下する。これにより、高い親水性に由来していた凝集構造の形成が抑制される。化合物(B)もしくは化合物(C)が無機物との塩である場合、塩の組み換えが起こることで有機物同士の塩が形成され、同様に凝集構造が抑制される。
【0044】
(1−3)基材
複合半透膜の強度、寸法安定性等の観点から、複合半透膜本体は基材を有してもよい。基材としては、強度、凹凸形成能および流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。
【0045】
基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は、優れた製膜性を有するので、高分子重合体の溶液を流延した際に、その溶液が過浸透により裏抜けすること、多孔性支持層が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、及びピンホール等の欠点が生じることを抑制できる。また、基材が熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布と比べて、高分子溶液流延時に繊維の毛羽立ちによって起きる不均一化および膜欠点の発生を抑制することができる。さらに、複合半透膜は、連続製膜されるときに、製膜方向に対し張力がかけられるので、寸法安定性に優れる長繊維不織布を基材として用いることが好ましい。
【0046】
長繊維不織布は、成形性、強度の点で、微多孔性支持膜とは反対側の表層における繊維が、微多孔性支持膜側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造によれば、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現される。複合半透膜にエンボス加工等によって凹凸を付与する場合に、基材が長繊維不織布であれば、微多孔性支持膜と基材とを含む積層体の成形性も向上し、複合半透膜表面の凹凸形状が安定するので好ましい。
【0047】
より具体的には、長繊維不織布の、微多孔性支持膜とは反対側の表層における繊維配向度は、0°以上25°以下であることが好ましく、また、微多孔性支持膜の表層における繊維配向度との配向度差が10°以上90°以下であることが好ましい。
【0048】
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性支持層または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において、収縮は顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と微多孔性支持膜の表層における繊維配向度との差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することもできるので好ましい。
【0049】
ここで、繊維配向度とは、微多孔性支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標である。具体的には、繊維配向度とは、製膜方向(Machine direction:つまり不織布の長手方向)と、不織布基材を構成する繊維の長手方向との間の角度の平均値である。つまり、繊維の長手方向が製膜方向と平行であれば、繊維配向度は0°である。また、繊維の長手方向が、製膜方向に直角であれば、すなわち不織布の幅方向に平行であれば、その繊維の配向度は90°である。従って、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
【0050】
繊維配向度は以下のように測定される。まず、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取する。次に、そのサンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影する。撮影像の中で、各サンプルあたり10本の繊維を選び、不織布の長手方向(縦方向かつ製膜方向)を0°としたときの、繊維の長手方向の角度を測定する。また、不織布の長手方向は、多孔性支持層の製膜方向に一致する。こうして、1枚の不織布あたり計100本の繊維について、角度を測定する。こうして得られた100本の繊維の角度について平均値を算出する。得られた平均値の小数点以下第一位を四捨五入して得られる値が、繊維配向度である。
【0051】
[2.製造方法]
上述の複合半透膜は、微多孔性支持膜上に分離機能層を形成する工程を備える製造方法によって製造可能である。
【0052】
微多孔性支持膜上に分離機能層を形成する工程とは、微多孔性支持膜上で、エチレン性不飽和基を介して化合物(A)と化合物(B)および化合物(C)の少なくとも一方を重合する工程とは微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基を介した縮合を行う工程を含む。
【0053】
重合を行う工程と縮合を行う工程は、どちらが先に行われてもよいし、並行して行われてもよい。
【0054】
分離機能層を形成する工程は、具体的には、化合物(A)、(B)および(C)を含有する反応液を微多孔性支持膜に塗布するステップおよび溶媒を除去するステップをさらに備えてもよい。
【0055】
以下に、分離機能層の製造工程をより具体的に説明する。
まず、化合物(A)、(B)および(C)を含有する反応液を微多孔性支持膜に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有している。かかる溶媒は微多孔性支持膜を破壊せず、化合物(A)、(B)および(C)、並びに必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。
本発明の製造方法において、(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し10重量部以上であることが好ましく、さらに好ましくは20重量部〜50重量部である。ここで、反応液に含有される固形分とは、反応液に含有される全成分のうち、溶媒や留去成分を除いた、本発明の製造方法によって得られた複合半透膜に最終的に分離機能層として含まれる成分のことを指す。(A)のケイ素化合物量が少ないと、架橋度が不足する傾向があるので、膜ろ過時に分離機能層が溶出し分離性能が低下するなどの不具合が発生するおそれがある。(A)の化合物の含有量がこれらの範囲にあるとき、得られる分離機能層は架橋度が高くなるため、分離機能層が溶出することなく安定に膜ろ過ができる。
【0056】
(B)の酸性基を有し、エチレン性不飽和基を有していてもよい化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し90重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは5重量部〜80重量部である。
(C)の塩基性基を有し、エチレン性不飽和基を有していてもよい化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し90重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは5重量部〜80重量部である。
【0057】
次に、本発明の複合半透膜の製造方法における、分離機能層を多孔質支持膜上に形成する方法について説明する。
【0058】
分離機能層を形成する方法として、例えば、化合物(A)、(B)および(C)とを含有する反応液を塗布する工程、溶媒を除去する工程、エチレン性不飽和基を重合させる工程、加水分解性基を縮合させる工程を備える方法が挙げられる。各工程は、この順に実行可能である。また、エチレン性不飽和基を重合させる工程において、加水分解性基が同時に縮合してもよい。
【0059】
まず、化合物(A)および(B)および(C)を含有する反応液を微多孔性支持膜に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有する溶液であるが、かかる溶媒は微多孔性支持膜を破壊せず、化合物(A)および(B)および(C)、および必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。この反応液には、ケイ素化合物(A)のモル数に対して1〜10倍モル量、好ましくは1〜5倍モル量の水を無機酸または有機酸と共に添加して、ケイ素化合物(A)の加水分解を促すことが好ましい。
【0060】
反応液の溶媒としては、水、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および、これらを混ぜ合わせたものが好ましい。例えば、アルコール系有機溶媒として、メタノール、エトキシメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2−メトキシエタノール)、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシブタノール等が挙げられる。また、エーテル系有機溶媒として、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等が挙げられる。また、ケトン系有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
【0061】
また、溶媒の添加量としては、反応液の全重量に対して50重量%以上99重量%以下が好ましく、さらには80重量%以上99重量%以下が好ましい。溶媒の添加量が多すぎると膜中に欠点が生じやすい傾向があり、少なすぎると得られる複合半透膜の透水性が低くなる傾向がある。
【0062】
微多孔性支持膜と反応液との接触は、微多孔性支持膜面上で均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、反応液をスピンコーター、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレー、などの塗布装置を用いて微多孔性支持膜にコーティングする方法があげられる。また微多孔性支持膜を、反応液に浸漬する方法を挙げることができる。
【0063】
浸漬させる場合、微多孔性支持膜と反応液との接触時間は、0.5分間以上10分間以下の範囲内であることが好ましく、1分間以上3分間以下の範囲内であるとさらに好ましい。反応液を微多孔性支持膜に接触させたあとは、膜上に液滴が残らないように十分に液切りすることが好ましい。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、反応液接触後の微多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の反応液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、反応液の溶媒分の一部を除去することもできる。
【0064】
ケイ素の加水分解性基を縮合させる工程は、微多孔性支持膜上に反応液を接触させた後に加熱処理することによって行われる。このときの加熱温度は、微多孔性支持膜が溶融する温度より低いことが好ましい。縮合反応を速やかに進行させるために通常0℃以上で加熱を行うことが好ましく、20℃以上がより好ましい。また、前記縮合反応温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。反応温度が0℃以上であれば、加水分解および縮合反応が速やかに進行し、150℃以下であれば、加水分解および縮合反応の制御が容易になる。また、加水分解または縮合を促進する触媒を添加することで、より低温でも反応を進行させることが可能である。さらに本発明では分離機能層が細孔を有するよう加熱条件および湿度条件を選定し、縮合反応を適切に行うようにする。
【0065】
化合物(A)、(B)および(C)のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射により行うことができる。ここで電磁波とは紫外線、X線、γ線などを含む。重合方法は適宜最適な選択をすればよいが、ランニングコスト、生産性などの点から電磁波照射による重合が好ましい。電磁波の中でも紫外線照射が簡便性の点からより好ましい。実際に紫外線を用いて重合を行う際、これらの光源は選択的に紫外線の波長域の光のみを発生する必要はなく、紫外線の波長域の電磁波を含むものであればよい。しかし、重合時間の短縮、重合条件の制御のしやすさなどの点から、これらの紫外線の強度がその他の波長域の電磁波に比べて高いことが好ましい。
【0066】
電磁波は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、水銀灯などから発生させることができる。電磁波のエネルギーは重合できれば特に制限しないが、中でも紫外線の薄膜形成性が高い。このような紫外線は低圧水銀灯、エキシマーレーザーランプにより発生させることができる。本発明に係る分離機能層の厚み、形態はそれぞれの重合条件によっても大きく変化することがある。電磁波による重合であれば、電磁波の波長、強度、被照射物との距離、処理時間により本発明に係る分離機能層の厚み、形態は大きく変化することがある。そのためこれらの条件は適宜最適化を行う必要がある。
【0067】
重合速度を速める目的で分離機能層形成の際に重合開始剤、重合促進剤等を添加することが好ましい。ここで、重合開始剤、重合促進剤は特に限定されるものではなく、用いる化合物の構造、重合手法などに合わせて適宜選択されるものである。
【0068】
重合開始剤を以下例示する。電磁波による重合の開始剤としては、ベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシドもしくはビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントレンキノン)、ジアセチルキノン、フリルキノン、アニシルキノン、4,4’−ジクロロベンジルキノンおよび4,4’−ジアルコキシベンジルキノン、およびショウノウキノンが、例示される。熱による重合の開始剤としては、アゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)もしくはアゾビス−(4−シアノバレリアン酸)、または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチルもしくはジ−(tert−ブチル)ペルオキシド)、さらに芳香族ジアゾニウム塩、ビススルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アルキルリチウム、クミルカリウム、ナトリウムナフタレン、ジスチリルジアニオンが例示される。なかでもベンゾピナコールおよび2,2’−ジアルキルベンゾピナコールは、ラジカル重合のための開始剤として特に好ましい。
【0069】
過酸化物およびα−ジケトンは、重合開始を加速するために、好ましくは、芳香族アミンと組み合わせて使用される。この組み合わせはレドックス系とも呼ばれる。このような系の例としては、過酸化ベンゾイルまたはショウノウキノンと、アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチル−アミノ安息香酸エチルエステルまたはその誘導体)との組み合わせである。さらに、過酸化物を、還元剤としてのアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸と組み合わせて含有する系も重合開始を加速するために好ましい。
【0070】
次いで、これを約100〜200℃で10分〜3時間程度加熱処理すると重縮合反応により、化合物(A)同士の間で共有結合が形成される。こうして、微多孔性支持膜表面に分離機能層が形成された本発明の複合半透膜を得ることができる。加熱温度は微多孔性支持膜の素材にもよるが、高すぎると溶解が起こり微多孔性支持膜の細孔が閉塞するため、複合半透膜の造水量が低下する。一方、加熱温度が低すぎる場合には、重縮合反応の進行が不十分となり、その結果、共有結合の形成が不十分となるので、分離機能層の溶出により塩の除去率が低下するようになる。
【0071】
なお上述したとおり、エチレン性不飽和基を有する反応性基の重合工程は、加水分解性基間での共有結合形成工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。
【0072】
このようにして得られた複合半透膜はこのままでも使用できるが、使用する前に例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0074】
以下の実施例において、複合半透膜の溶質除去率の初期性能は次の数式(I)で計算されるものである。
【0075】
溶質除去率(%)={1−(透過液の溶質濃度)/(供給液の溶質濃度)}×100・・・(I)
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート不織布上にポリスルホンの15.7重量%ジメチルホルムアミド溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストした。キャスト後、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜を作製した。このようにして得られた微多孔性支持膜の表面の細孔径は21nmであり、厚みは150μmであった。
【0076】
イソプロピルアルコールの50重量%水溶液中に、化合物(A)に該当する3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを80mM、化合物(B)に該当する4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウムを53mM、化合物(C)に該当する2−(アクリロイルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアンモニウムクロリドを27mM、光重合開始剤2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを8.5mMの濃度で溶解させ、製膜溶液を調製した。
【0077】
この溶液に、前記の微多孔性支持膜を接触させ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な溶液を取り除き微多孔性支持膜上に前記溶液の層を形成した。次いで365nmの紫外線が照射できるUV照射装置を用い、紫外線積算光量計を用いた際の照射強度が40mW/cmとなるように設定し、紫外線を照射して、分離機能層を微多孔性支持膜表面に形成した複合半透膜を作製した。
【0078】
次に、得られた複合半透膜を150℃の熱風乾燥機中で2時間保持して加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物を縮合させ、微多孔性支持膜上に分離機能層を有する乾燥複合半透膜を得た。その後、乾燥複合半透膜をイソプロピルアルコール水溶液に浸漬して親水化を行った。このようにして得られた複合半透膜に、pH6.5に調整した1500ppmグルコース水溶液またはpH6.5に調整した1500ppmMgSO水溶液を、0.75MPa、25℃の条件下で供給して加圧膜ろ過運転を行った。運転開始時から3時間後に透過水と供給水の水質を測定することにより、式(I)から計算した膜のグルコース溶質除去率を表1に示す。なお、MgSO除去率は89.0%であった。
【0079】
(実施例2)
実施例1の製膜溶液において、化合物(B)の4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウムの濃度を40mM、化合物(C)の2−(アクリロイルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアンモニウムクロリドの濃度を40mMとした点以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。なお、MgSO除去率は87.5%であった。
【0080】
(実施例3)
実施例1の製膜溶液において、化合物(B)の4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウムの濃度を27mM、化合物(C)の2−(アクリロイルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアンモニウムクロリドの濃度を53mMとした点以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。なお、MgSO除去率は68.9%であった。
【0081】
(実施例4)
実施例1の製膜溶液において、化合物(B)の4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウム濃度を80mM、化合物(C)の2−(アクリロイルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアンモニウムクロリド40mMを2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド40mMとした点以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。なお、MgSO除去率は86.3%であった。
【0082】
(実施例5)
実施例1の製膜溶液において、化合物(B)の4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウム80mMをメタクリル酸ナトリウム53mMとした点以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。なお、MgSO除去率は75.7%であった。
【0083】
(比較例1)
実施例1の製膜溶液において、化合物(B)の、4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウム濃度を80mMとし、化合物(C)の2−(アクリロイルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアンモニウムクロリドを添加しない点以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
【0084】
(比較例2)
実施例1の製膜溶液において、化合物(B)の4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウムを添加せず、化合物(C)の2−(アクリロイルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアンモニウムクロリドを80mMとする点以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
表1において、グルコースの除去率を比べると、実施例1〜5で示された複合半透膜は、比較例1、2で得られた複合半透膜と比べて、グルコースの除去率が大きく、酸性基と塩基性基を共存させたことにより、中性分子の除去率が向上していることが分かる。実施例1〜5において、小角X線散乱法(SAXS)による凝集構造の測定の結果、いずれも比較例1、2よりも凝集構造が小さくなっていることを確認した。SAXSによる凝集構造サイズの確認は、下記引用文献1などにおいて採用されている手法である。
【0085】
以上より、化合物(B)および化合物(C)を共存させることで溶質除去率の向上に有効であることが分かる。
引用文献1:M. Fujimura, et al., Macromoleculesx 14(1981) 1309−1315
【0086】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の複合半透膜は、固液分離、液体分離、ろ過、精製、濃縮、汚泥処理、海水淡水化、飲料水製造、純水製造、廃水再利用、廃水減容化、有価物回収などの水の処理の分野に利用できる他、浸透圧発電の分野にも利用できる。