(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1又は第2の設定値は、前記加熱部による前記シートの溶着が可能な溶着許容温度範囲内に設定されており、前記第2の設定値は、前記溶着許容温度範囲の上限および下限の中間の値である、請求項1に記載の溶着装置。
前記制御部は、前記溶着処理の開始後、前記温度センサーの検知温度の下降から上昇への変化を検出し、該変化の検出時点を前記第1の所定時間が経過した時点と判断する、請求項1又は2に記載の溶着装置。
前記制御部は、前記第2の設定値より低い第3の設定値をさらに保持しており、前記溶着処理の終了の第2の所定時間前の時点で、前記設定温度を前記第2の設定値から前記第3の設定値に変更する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶着装置。
前記制御部は、前記溶着処理の終了後、前記温度センサーの検知温度の上昇から下降への変化を検出し、該変化の検出時点を前記第3の所定時間が経過した時点と判断する、請求項7に記載の溶着装置。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化、高品質化、安全性が求められる中、電流の流れる端子間などを確実に絶縁する部材として、樹脂シートなどが用いられている。この樹脂シートの位置ズレや溶着不良は、ショートなど重度な事故の原因となる。このため、樹脂シートの位置合わせや溶着を確実に行うことが要求されている。
【0003】
特許文献1、2には、2枚以上の樹脂シートを重ね合わせて溶着することが開示されている。この樹脂シートの溶着には、例えば、樹脂シートを搬送する機構と、樹脂シート同士を溶着させる機構とが別々に設けられた溶着装置が用いられる。
【0004】
上記溶着装置では、搬送機構が樹脂シートを溶着位置まで搬送し、樹脂シートが搬送機構から離れた後に、溶着機構が樹脂シートを溶着する。
【0005】
しかし、上記溶着装置においては、樹脂シートが搬送機構から離れる際に、樹脂シートの位置ズレが生じることがあるため、樹脂シートの位置合せを高精度に行うことは困難である。また、搬送機構と溶着機構との切り替え動作は、生産性を低下させ、製造コストを増大させる。
【0006】
そこで、搬送機構と溶着機構を一体化したハンドラを備えた溶着装置が提案されている。この溶着装置では、ハンドラは、第1のステージ上の第1の樹脂シートを第2のステージ上まで移動し、第1の樹脂シートを第2のステージ上の第2の樹脂シートと位置合わせし、その後、第1の樹脂シートを第2の樹脂シートに重ねて溶着する。この場合、搬送機構と溶着機構とを切り替える必要がないため、上述した樹脂シートの位置ズレや生産性の低下の問題は生じない。
【0007】
なお、通常、上記溶着装置においては、ヒータの溶着性能を安定させるために、ヒータの温度が所定の設定温度になるように温度制御を行う。
【0008】
別の温度制御の例として、特許文献3には、間欠的に加熱処理を行うヒータの温度制御方法が記載されている。この温度制御方法では、加熱処理直後の温度上昇特性や自然放熱によるヒータの温度下降特性を予め求めておく。温度下降特性に基づいて、前回のシール処理の終了から今回のシール処理の開始までの期間におけるヒータの下降温度を予測し、温度上昇特性に基づいて、予測した下降温度から今回のシール処理の開始直前にシール適正温度に達するまでの加熱時間を求めて、ヒータを加熱する。
【0009】
特許文献3に記載の温度制御は、上記ハンドラを備えた溶着装置に適用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述のハンドラを備えた溶着装置においては、搬送時に生じる気流による冷却作用によりヒータが冷えたり、搬送停止後は、搬送時の気流による冷却作用がなくなるために、ヒータの温度が過剰に上昇したりする。このため、ヒータの温度が所定の設定温度になるように温度制御を行うだけでは、以下のような問題が生じる。
【0012】
図6は、製品を処理していないスタンバイ状態(ハンドラ停止中)から、複数の製品を連続で処理する製品処理(溶着処理)を実行し、再び、スタンバイ状態に戻るまでの間における温度制御を説明するための図である。
【0013】
図6において、製品処理中は、ハンドラは第1および第2のステージの間を往復して樹脂シートの溶着を繰り返す。ヒータ温度T3は、温度センサーにより検知したヒータの温度の変化を示す。温度上限および温度下限はそれぞれ、溶着許容温度範囲の上限および下限と対応する。ヒータ設定温度T4は、上限および下限の中間の値(規格中心)である。
【0014】
スタンバイ状態(ハンドラ停止中)では、ヒータの温度がヒータ設定温度T4になるように温度制御(フィードバック制御)を行う。これにより、ヒータ温度T3はヒータ設定温度T4で維持される。
【0015】
ところが、製品処理中は、ハンドラの搬送動作により生じた気流によりヒータが冷却されるため、ヒータ温度T3は溶着許容温度範囲の下限より低い温度まで一時的に下降する。その後、暫くするとフィードバック制御により、ヒータ温度T3は上昇する。ハンドラの往復動作が、ほぼ一定周期で規則的に行われていれば、気流による冷却作用とヒータの温度制御が均衡し、ヒータの温度はほぼヒータ設定温度T4で保たれる。その後、製品処理が終了し、ハンドラが停止すると、気流による冷却作用がなくなるため、ヒータ温度は一時的に上昇する。
【0016】
上記ヒータの温度変化では、製品処理開始直後、ヒータ温度が溶着条件の許容範囲の下限より低い温度まで低下するため、溶着不足状態になるといった問題を生じる。
【0017】
特許文献3に記載の温度制御を上記ハンドラを備えた溶着装置に適用した場合は、ハンドラの搬送動作により、ヒータの加熱条件や自然放熱の状態が変わるため、ヒータ単体の加熱や自然放熱特性だけでは、安定した溶着性能を得ることができない。
【0018】
なお、ヒータを小型化し、熱容量を小さくすることにより、温度制御の応答性を速めてヒータ温度の安定化を図ることができる。しかし、この場合は、樹脂シートのような広い溶着面積を網羅するためには、ヒータと熱電対などの温度測定機構、および温度を制御する機器が数多く必要となり、高価な機構となってしまう。
【0019】
本発明の目的は、上記問題を解決し、安定した溶着性能を提供することができる溶着装置および溶着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
加熱部を備え、シートを所定の位置まで搬送して前記加熱部により前記シートを溶着するハンドラと、
前記加熱部の温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーの検知温度が設定温度になるように前記加熱部の温度を調整するとともに、処理開始指示に応じて、前記ハンドラによるシートの搬送および溶着を繰り返し行わせる溶着処理を実行し、該溶着処理の開始前および終了後は、前記ハンドラを停止する制御部と、を有し、
前記制御部は、第1の設定値および該第1の設定値より低い第2の設定値を保持しており、前記溶着処理の開始前、および、前記溶着処理の開始から第1の所定時間が経過するまでは、前記設定温度を前記第1の設定値に設定し、前記第1の所定時間の経過後に、前記設定温度を前記第1の設定値から前記第2の設定値に変更する、溶着装置が提供される。
【0021】
また、本発明の別の態様によれば、
加熱部を備え、シートを所定の位置まで搬送して前記加熱部により前記シートを溶着するハンドラを有する溶着装置にて行われる溶着方法であって、
温度センサーにより前記加熱部の温度を検知し、
前記ハンドラを停止した状態で、前記温度センサーの検知温度が第1の設定温度になるように前記加熱部の温度を調整し、
前記調整により前記加熱部の温度が前記第1の設定温度で維持された状態で処理開始指示を受けると、前記ハンドラによるシートの搬送および溶着を繰り返し行わせる溶着処理を実行し、
前記溶着処理の開始から所定時間が経過するまでは、前記温度センサーの検知温度が前記第1の設定温度になるように前記加熱部の温度を調整し、
前記所定時間の経過後は、前記温度センサーの検知温度が前記第1の設定温度より低い第2の設定温度になるように前記加熱部の温度を調整する、溶着方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安定した溶着性能を提供することができ、溶着状態の品質安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態である溶着装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1を参照すると、溶着装置は、樹脂シート21が供給されるステージ7と、樹脂シート22が供給されるステージ8と、ステージ7上の樹脂シート21をステージ8まで搬送し、樹脂シート21と樹脂シート22とを正確に位置合わせして溶着するハンドラ1と、温度センサー3a〜3d(不図示)と、入力部40と、ステージ7、8およびハンドラ1を制御する制御部30とを有する。
【0027】
入力部40は、ボタンやキーボードなどの入力手段よりなり、操作者による入力操作に応じた信号を制御部30に供給する。制御部30は、入力部40を介して操作者による入力操作を受け付ける。例えば、操作者は、入力部40を使用して、溶着処理の開始を指示することができ、また、溶着処理に必要な情報(処理工数、溶着時間、ヒータの設定温度など)を含む様々な情報を入力することができる。
【0028】
ステージ7、8はそれぞれ、上面に吸着機構を有している。外部シート供給装置から樹脂シート21、22がステージ7、8に供給される。樹脂シート21はステージ7の吸着機構により吸着され、樹脂シート22はステージ8の吸着機構により吸着される。
【0029】
ハンドラ1は、XYZ方向に移動可能な搬送部1aと、シートを吸着する吸着部11と、搬送部1aの4つの側面に設けられた4つのヒータ2a〜2dとを有する。吸着部11は、底面にシートを吸着するための吸着機構を備える。
【0030】
図2に、ハンドラ1を正面(ヒータ2cの側)から見たときの外観図を示す。
【0031】
図2に示すように、吸着部11は可動部20を介して搬送部1aに取り付けられている。ヒータ2a、2b、2cはそれぞれ、可動部21a、21b、21cを介して搬送部1aに取り付けられている。なお、
図2には示されていないが、ヒータ2dも、可動部21dを介して搬送部1aに取り付けられている。
【0032】
可動部20、21a、21b、21c、21dは、例えばバネ状の可動手段よりなる。可動部20の可動方向は、吸着部11の底面に垂直な方向(Z方向)である。可動部21a〜21dの可動方向もZ方向である。可動部20により、吸着部11のZ方向における高さ(樹脂シートからの高さ)を調整することができ、可動部21a〜21dにより、ヒータ2a〜2dそれぞれのZ方向における高さ(樹脂シートからの高さ)を調整することができる。
【0033】
吸着部11およびヒータ2a〜2dの高さ関係は、吸着部11が最も低い。ヒータ2a、2b、2c、2dの高さは、略同じである。樹脂シートを溶着する際は、吸着部11およびヒータ2a〜2dの全てが樹脂シートに接触する高さまで搬送部1aが下降する。このとき、可動部20、21a、21b、21c、21dが縮むことで、吸着部11およびヒータ2a〜2dの全てが樹脂シートに接触することが可能となっている。この状態で、ヒータ2a〜2dにより樹脂シートを溶着する。
【0034】
ここで、樹脂シートを溶着する際のステージ7、8およびハンドラ1の動作について簡単に説明する。
【0035】
まず、搬送部1aがステージ7上に移動する。そして、搬送部1aは、吸着部11がシート21に接触する高さまで下降する。このとき、ヒータ2a、2b、2c、2dは、樹脂シート21と接触しない。
【0036】
搬送部1aの下降後、吸着部11が樹脂シート21を吸着する。吸着部11が樹脂シート21を吸着した後、ステージ7による樹脂シート21の吸着を解除する。これにより、樹脂シート21のハンドラ1への受け渡しが可能になる。
【0037】
ステージ7による樹脂シート21の吸着を解除した後、搬送部1aは上昇し、ステージ8上へ移動し、ステージ8上の樹脂シート22と吸着部11に吸着された樹脂シート21との位置合わせを行う。そして、樹脂シート21がステージ8上の樹脂シート22に重ね合わされ、かつ、吸着部11とヒータ2a、2b、2c、2dの全てが重ね合わされた樹脂シート21、22(以下、被溶着体とも呼ぶ)に接触する高さまで、搬送部1aが下降する。このとき、吸着部11は可動部20の縮みにより、ヒータ21a、21b、21c、21dはそれぞれ可動部21a、21b、21c、21dの縮みにより、被溶着体(樹脂シート21、22)に接触する。この状態で、ヒータ2a〜2dにより樹脂シート21、22を溶着する。溶着時のヒータ温度は、樹脂シートの材料によって決定されるが、生産性の観点から、例えば、溶着時間が数ms〜数百msといった短時間で溶着できるような温度に設定することが望ましい。
【0038】
ヒータ2a、2b、2c、2dと被溶着体との接触後から予め求めた溶着条件に基づいた溶着時間経過後、吸着部11による樹脂シート22の吸着を解除する。そして、吸着部11とヒータ2a、2b、2c、2dの全てが樹脂シート21と樹脂シート22の溶着体から離れる高さまで、搬送部1aが上昇する。
【0039】
ステージ8による樹脂シート22の吸着を解除する。これにより、樹脂シート21、22の溶着体の外部シート排出装置への受け渡しが可能となる。
【0041】
制御部30は、搬送部1aの移動制御、吸着部11の吸着および吸着解除、ヒータ2a〜2dの温度制御、ヒータ2a〜2dの溶着時間の測定と制御、ステージ7、8の吸着および吸着解除を行う。ヒータ2a〜2dの温度制御には、ヒータのオンオフ制御(通電時間の制御)を行う方式やヒータに供給される電力量(または電流量)を制御する方式などを適用することができる。前者の方式には、例えば、サーモスタットやサイリスタによる温度制御がある。
【0042】
図3に、ヒータの温度制御に係る構成の一例を示す。
【0043】
図3に示すように、温度センサー3a〜3dはそれぞれ、ヒータ2a〜2dの温度を検知し、検知温度を示す値を出力する。温度センサー3a〜3dの出力は、制御部30に供給されている。
【0044】
制御部30は、温調器31、記憶部32およびタイマ33を有する。記憶部32には、温度設定値S1〜S3(S1>S2>S3)が保持されている。温度設定値S1〜S3は、樹脂シート21、22の溶着条件を満たす溶着許容温度範囲内である。
【0045】
温度設定値S2は、例えば、溶着許容温度範囲の上限値および下限値の中間(規格中心)の値としてもよい。また、温度設定値S1は、溶着許容温度範囲の上限値からある程度マージンを持った値にすることが望ましい。同様に、温度設定値S3は、溶着許容温度範囲の下限値からある程度マージンを持った値にすることが望ましい。
【0046】
なお、樹脂シートの溶着では、溶着温度と溶着時間で決まる一定の許容範囲がある。溶着温度の許容範囲は、樹脂シート溶融温度以上であり、上限値は溶着時間によるが一般的には30℃〜50℃程度である。一方、溶着時間は、数十msから数秒の範囲である。一般的に高速な溶着処理を実現するためには、可能な限り高い溶着温度で短い溶着時間にすることが望ましい。
【0047】
制御部30は、温度センサー3a〜3dの検知温度がそれぞれ設定温度になるようにヒータ2a〜2dの温度制御を行うとともに、入力部40からの処理開始指示に応じて、ハンドラ1によるシートの搬送および溶着を繰り返し行わせる溶着処理を実行し、該溶着処理の開始前および終了後は、ハンドラ1を停止する。
【0048】
上記温度制御において、温調器31は、溶着処理の開始前に、設定温度を温度設定値S1に設定し、溶着処理の開始後、所定時間を経過した後に、設定温度を温度設定値S1から温度設定値S2に変更する。また、温調器31は、溶着処理の終了の所定時間前の時点で、設定温度を温度設定値S2から温度設定値S3に変更する。さらに、温調器31は、溶着処理の終了後、所定時間を経過した後に、設定温度を温度設定値S3から温度設定値S1に変更する。
【0049】
温調器31は、溶着処理の開始後の温度設定値S1から温度設定値S2への変更タイミングを、処理開始からの経過時間または溶着回数または温度センサーの出力の変化(微分値の変化)のいずれかから判断する。また、温調器31は、溶着処理の終了前の温度設定値S2から温度設定値S3への変更タイミングを溶着回数(処理工数)から判断する。また、温調器31は、溶着処理の終了後の温度設定値S3から温度設定値S1への変更タイミングを処理終了からの経過時間または温度センサーの出力の変化(微分値の変化)のいずれかから判断する。
【0050】
なお、制御部30は、温度センサー3a〜3d、ステージ7、8、ハンドラ1の動作(搬送部1aやヒータ2a〜2dの動作)を監視し、いずれかに異常が発生した場合は、アラームを発生するように構成されている。溶着処理中に、アラームを発生した場合は、温調器31は、アラームの発生(停止指示)に応じて、強制的に設定温度を温度設定値S1に設定する。また、溶着処理中に、入力部40または外部装置からハンドラ1を停止する旨の信号(停止指示)を受信した場合も、温調器31は、強制的に設定温度を温度設定値S1に設定する。
【0051】
以下に、上記温度制御を具体的に説明する。
【0052】
図4は、スタンバイ状態から、複数の製品を連続で処理する製品処理(溶着処理)を実行し、再び、スタンバイ状態に戻るまでの間における温度制御を説明するための図である。ここでは、ヒータ2aの温度制御を例に説明する。
【0053】
図4において、時間42は、製品処理を実行中の期間を示す。時間41は、製品処理開始前のスタンバイ状態の期間を示し、時間43は、製品処理終了後のスタンバイ状態になるまでの期間を示す。時間41および時間43の期間は、ハンドラ1が停止している。時間42の期間は、ハンドラ1による樹脂シートの搬送および溶着が繰り返し行われる。
【0054】
ヒータ温度T1は、ヒータ2aの温度の変化を示す。このヒータ2aの温度の変化は、温度センサー3aの出力の変化と対応する。矩形波状の太線で示したヒータ設定温度T2は、温度設定値S1〜S3の間の変更タイミングを示す。温度上限および温度下限はそれぞれ、溶着許容温度範囲の上限および下限と対応する。
【0055】
処理開始後時間44は、製品処理開始後の、温度設定値S1から温度設定値S2への変更タイミングを与えるための時間である。処理終了前時間45は、製品処理中の温度設定値S2から温度設定値S3への変更タイミングを与えるための時間である。処理終了後時間46は、製品処理終了後の、温度設定値S3から温度設定値S1への変更タイミングを与えるための時間である。
【0056】
なお、処理開始後時間44は、処理開始後、ヒータ温度T1が最小となる時間とするのが一般的である。また、処理終了前時間45は、処理中にヒータ出力を停止させた場合でも予熱により溶着条件を満たす最大の時間に設定するのが一般的である。また、処理終了後時間46は、ハンドラ1の停止後、ヒータ温度T1が上昇して下降に転じる時間を設定するのが一般的である。
【0057】
図4を参照すると、時間41の期間において、温調器31は、ヒータ2aの設定温度T2を温度設定値S1に設定する。そして、温調器31は、温度センサー3aの検知温度が温度設定値S1になるようにヒータ2aの温度を調整する。この調整により、ヒータ2aの温度T1が温度設定値S1に対応する温度で維持されたスタンバイ状態になる。
【0058】
上記スタンバイ状態において、制御部30は、処理開始指示を受け付けると、製品処理を開始する。製品処理中の期間が時間42である。温調器31は、処理開始タイミングでタイマ33を起動し、処理開始後からの経過時間を計測する。
【0059】
タイマ33により計測した経過時間が処理開始後時間44に達するまで、温調器31は、ヒータ2aの設定温度T2を温度設定値S1で維持する。この維持期間において、製品処理中は、ハンドラ1による樹脂シートの搬送および溶着のために、ヒータ2aが冷却される。この冷却作用により、ヒータ2aの温度T1が下降する。
【0060】
ヒータ2aの温度T1が温度下限に達する前に、タイマ33により計測した経過時間が処理開始後時間44に達する。経過時間が処理開始後時間44に達すると、温調器31は、ヒータ2aの設定温度T2を温度設定値S1から温度設定値S2に変更し、温度センサー2aの検知温度が温度設定値S2になるようにヒータ2aの温度を調整する。この制御により、ヒータ2aの温度T1が上昇し、温度設定値S2に対応する温度で維持される。
【0061】
製品処理の終了前、処理終了前時間45になったタイミングで、温調器31は、ヒータ2aの設定温度T2を温度設定値S2から温度設定値S3に変更し、温度センサー2aの検知温度が温度設定値S3になるようにヒータ2aの温度を調整する。この調整により、ヒータ2aの温度T1が下降する。
【0062】
なお、温調器31は、製品処理における処理工数(溶着回数)が予め与えられている。温調器31は、その処理工数(溶着回数)に基づいて製品処理が終了するまでの時間を予測し、タイマ33により計測した処理開始からの経過時間と予測した終了時間とに基づいて処理終了前時間45になるタイミングを判断することができる。
【0063】
処理終了前時間45の期間は、ヒータ2aの設定温度T2を温度設定値S3で維持するために、ヒータ2aの温度T1がさらに下降するが、ヒータ2aの温度T1が温度下限に達する前に、製品処理が終了する。
【0064】
製品処理が終了すると、温調器31は、タイマ33をリセットして再起動し、処理終了後からの経過時間を計測する。
【0065】
タイマ33により計測した経過時間が処理終了後時間46に達するまで、温調器31は、ヒータ2aの設定温度T2を温度設定値S3で維持する。この維持期間において、ハンドラ1は停止しているため、上述した樹脂シートの搬送および溶着による冷却作用は生じない。よって、ヒータ2aの温度T1が上昇する。
【0066】
ヒータ2aの温度T1が温度上限に達する前に、タイマ33により計測した経過時間が処理終了後時間46に達する。経過時間が処理終了後時間46に達すると、温調器31は、ヒータ2aの設定温度T2を温度設定値S3から温度設定値S1に変更し、温度センサー2aの検知温度が温度設定値S1になるようにヒータ2aの温度を調整する。この調整により、ヒータ2aの温度T1が下降し、温度設定値S1に対応する温度で維持されたスタンバイ状態になる。
【0067】
上記のヒータ2aの温度制御と同様に、温調器31は、ヒータ2b〜2dの温度制御を行う。
【0068】
なお、上述した温度制御において、温調器31は、タイマ33を用いずに、温度設定値S1〜S3の変更タイミングを決定することもできる。
【0069】
例えば、温調器31は、製品処理の開始後、温度センサーの検知温度の下降から上昇への変化を検出し、該変化の検出時点を処理開始後時間44の経過時点と判断し、設定温度T2を温度設定値S1に設定してもよい。
【0070】
また、ハンドラ1によるシートの搬送および溶着の繰り返しの工数(溶着回数)を記憶部32に保持させ、温調器31は、記憶部32に保持した工数と実行工数とから未処理の工数を算出し、未処理の工数が予め設定された値になった時点を処理終了前時間45になった時点と判断し、設定温度T2を温度設定値S1から温度設定値S2に変更してもよい。
【0071】
また、温調器31は、製品処理の終了後、温度センサーの検知温度の上昇から下降への変化を検出し、該変化の検出時点を処理終了後時間46の経過時点と判断し、設定温度T2を温度設定値S3から温度設定値S1に変更してもよい。
【0072】
次に、設定温度変更手順について具体的に説明する。
【0073】
図5は、設定温度変更手順を示すフローチャートである。以下、
図4および
図5を参照して設定温度変更手順を説明する。
【0074】
まず、温調器31は、設定温度T2を温度設定値S1に設定し、温度センサーの検知温度が温度設定値S1になるようにヒータの温度を調整する(ステップ60)。この調整により、ヒータの温度が温度設定値S1の温度で維持された状態(スタンバイ状態)になる。
【0075】
次に、制御部30は、処理開始指示を受け付けたか否かを判断する(ステップ61)。処理開始指示を受け付けていない場合は、ステップ60へ移行する。処理開始指示を受け付けた場合は、制御部30は、製品処理(溶着処理)を開始する。
【0076】
製品処理開始後、温調器31は、処理開始後時間44が経過したか否か(または、温度センサーの検知温度が下降から上昇へ切り替わった否か)を判断する(ステップ62)。
【0077】
ステップ62の判定結果が「Yes」の場合は、温調器31は、設定温度T2を温度設定値S2に設定し(温度設定値S1から温度設定値S2への変更)、温度センサーの検知温度が温度設定値S2になるようにヒータの温度を調整する(ステップ63)。
【0078】
次に、温調器31は、処理終了前時間45になったか否か(または、未処理の工数が所定値に達したか否か)を判断する(ステップ64)。
【0079】
ステップ64の判定結果が「Yes」の場合は、温調器31は、設定温度T2を温度設定値S3に設定し(温度設定値S2から温度設定値S3への変更)、温度センサーの検知温度が温度設定値S3になるようにヒータの温度を調整する(ステップ65)。ステップ64の判定結果が「Yes」の場合は、ステップ63へ移行する。
【0080】
製品処理が終了すると、温調器31は、処理終了後時間46が経過したか否か(または、温度センサーの検知温度が上昇から下降へ切り替わった否か)を判断する(ステップ66)。
【0081】
ステップ66の判定結果が「Yes」の場合は、ステップ60へ移行する。ステップ66の判定結果が「No」の場合で、次の製品処理の開始指示を受けると(ステップ67)、ステップ61へ移行する。
【0082】
なお、製品処理中に何らかの異常により処理が終了した場合には、直ちにステップ60に遷移する。ただし、この場合は、制御部30は、予め設定した時間が経過するまで、製品処理の開始を禁止する。予め設定した時間が経過後、制御部30は、製品処理を再開する。ここで、何らかの異常とは、アラームの発生(停止指示)や、入力部40または外部装置からの停止指示を含む。
【0083】
上述の設定温度変更手順は、ヒータ2a〜2dのそれぞれについて行われる。
【0084】
上述した本実施形態の溶着装置によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0085】
図6に示した温度制御では、製品処理開始直後に、ヒータ温度が溶着温度許容範囲の下限より低い温度まで低下するために、溶着不足になるといった問題がある。これに対して、本実施形態の溶着装置によれば、動作状況に応じて設定温度を適宜に切り替えることにより、ハンドラの搬送による冷却作用によるヒータ温度の変化を最小限に抑えることができるため、安定した溶着性能を提供することができる。これにより、最適な溶着条件で樹脂シートを溶着することができ、溶着状態の品質安定化を図ることができる。
【0086】
また、
図6に示した温度制御では、ハンドラ停止後に、ヒータ温度が溶着温度許容範囲の上限より高い温度まで上昇するため、製品処理終了直後に、製品処理を開始する、または、製品処理を一時停止した直後に製品処理を再開すると、溶着温度許容範囲の上限より高い温度で樹脂シートを溶着することなり、溶着過多の状態になるといった問題がある。これに対して、本実施形態の溶着装置によれば、ハンドラの停止後のヒータ温度の変化を最小限に抑えることができるため、製品処理終了直後に、製品処理を開始する、または、製品処理を一時停止した直後に製品処理を再開する場合でも、最適な条件で樹脂シートを溶着することができ、溶着状態の品質安定化を図ることができる。
【0087】
さらに、特別な機構を追加する必要もないので、低コスト化を図ることもできる。
【0088】
なお、本実施形態の溶着装置において、ハンドラ1の加熱部は4つのヒータ2a〜2dよりなるが、これに限定されない。加熱部のヒータの数は1つまたは複数である。
【0089】
また、制御部30は、入力部40からの開始指示に応じて溶着処理(製品処理)を実行するようになっているが、開始指示は、外部装置から供給されてもよい。
【0090】
さらに、ステージ7、8がそれぞれ、樹脂シート21、22が供給されると、その旨を示す信号(開始指示に対応するトリガー)を制御部30に供給し、制御部30が、ステージ7、8からの信号をともに受信すると、溶着処理(製品処理)を実行するようにしてもよい。
【0091】
また、4つのヒータ2a〜2dに対して4つの温度センサー3a〜3dを用いているが、これに限定されない。1つまたは複数のヒータに対して、1つまたは複数の温度センサーを設けてもよい。例えば、4つのヒータ2a〜2dのいずれかに対して、1つ温度センサーを設けてもよい。
【0092】
また、可動部20、21a、21b、21c、21dは、バネ状の可動手段に限定されない。例えば、エアシリンダ等、上下方向の移動が可能な手段であれば、どのような可動手段を用いてもよい。
【0093】
本発明は、溶着可能な部材(シート状のもの)を所定の位置まで搬送して溶着する装置全般に適用することができる。ただし、溶着可能な部材同士を溶着する場合は、それら部材はほぼ同じ融点を有することが望ましい。