(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被走査面に対峙され、かつ予め定めた走査方向に沿って配置された複数の発光素子を画像情報に基づいて時分割に発光させることで前記被走査面に画像を書き込む発光素子群を、前記走査方向に沿って複数個配列することで1走査領域を分割して走査する走査ユニットと、
前記各発光素子群においてそれぞれ繰り返し実行される走査間に発生する非書込み期間中に実行され、前記発光素子群の発光消費電力に対応する電力を消費させる電力消費手段と、
を有する光走査装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(全体構成)
図1には本発明が適用された画像形成装置のエンジン部10における全体構成概略図が示されている。
図1に示すように、エンジン部10は、
図1の矢印A方向に定速回転する感光体ドラム12を備えている。
【0022】
この感光体ドラム12の周囲には、感光体ドラム12の回転方向(
図1の矢印Aで示す時計回り方向)に沿って、帯電器14、LEDプリンタヘッド(LPH)16、現像器18、転写ローラ20、クリーナ22、イレーズランプ24が順に配設されている。
【0023】
すなわち、感光体ドラム12は、帯電器14によって表面が一様に帯電された後、LPH16によって光ビームが照射されて、感光体ドラム12上に潜像が形成される。なお、LPH16はLPH駆動部26と接続されており、LPH駆動部26によって発光制御されて、画像データに基づいて光ビームを出射するようになっている。
【0024】
前記光ビームによって感光体ドラム12上に形成された潜像には、現像器18によってトナーが供給されて、当該感光体ドラム12上にトナー像が形成される。
【0025】
感光体ドラム12上のトナー像は、転写ローラ20によって、図示しない用紙トレイから搬送されてきた用紙28に転写される。転写後に感光体ドラム12に残留しているトナーはクリーナ22によって除去され、イレーズランプ24によって除電された後、再び帯電器14によって帯電されて、同様の処理を繰り返す。
【0026】
一方、トナー像が転写された用紙28は、加圧ローラ30Aと加熱ローラ30Bからなる定着器30に搬送されて定着処理が施される。これにより、トナー像が定着されて、用紙28上に所望の画像が形成される。画像が形成された用紙28は装置外へ排出される。
【0027】
また、感光体ドラム12の周囲で、且つ現像器18と転写ローラ20の間には、感光体ドラム12に対向して濃度検出回路32が備えられている。濃度検出回路32は、例えば濃度パッチパターン(濃度見本)を形成した際に、感光体ドラム12上のトナー像の濃度を検出するようになっている。この濃度検出回路32の出力は、露光コントロール部162に接続され、露光コントロール部162は、LPH16を駆動するためのLPH駆動部26と接続され、LPH駆動部26はLPH16と接続されている。
【0028】
なお、上記濃度パッチパタ−ンとしては、数100μm×数100μm程度の極めて小さいサイズのパッチパターンが用いられる。この技術は、特開2003−156929号公報により周知であるため、詳細な説明は省略するが、この濃度パッチパターンを用いることで、用紙28に濃度パッチパターンをプリントせず、感光体ドラム12に対峙された濃度検出センサ32によって検出することが可能となっている。
【0029】
また、濃度検出回路32は、主走査方向に移動可能な移動機構に取り付けられており、主走査方向にわたる濃度パッチパターンの濃度が検出可能である。
【0030】
(エンジン部制御系)
図2は、エンジン部10における画像形成のための制御系のブロック図である。
【0031】
メイン電源管理部150には、図示しない商用電源が接続されており、LVPS(低電圧電源)及びHVPS(高電圧電源)を生成し、電源供給ラインを介して各部へ電源を供給する。
【0032】
メインコントローラ152には、ユーザインターフェイス154が接続され、ユーザの操作によって画像形成等に関する指示がなされると共に、画像形成時等の情報をユーザへ報知するようになっている。
【0033】
また、このメインコントローラ152には、図示しない外部ホストコンピュータとのネットワークラインが接続されており、画像データが入力されるようになっている。
【0034】
画像データが入力されると、メインコントローラ152では、例えば、画像データに含まれるプリント指示情報と、イメージデータとを解析し、エンジン部10に適合する形式(例えば、ビットマップデータ)に変換し、MCUの一部として機能する画像形成処理制御部156へ画像データを送出する。
【0035】
画像形成処理制御部156では、入力されたイメージデータに基づいて、画像形成処理制御部156と共に、それぞれMCUとして機能する駆動系コントロール部158、帯電コントロール部160、露光コントロール部162、転写コントロール部166、定着コントロール部168、除電コントロール部170、クリーナコントロール部172、現像コントロール部164のそれぞれを同期制御し、画像形成を実行する。
【0036】
前記LPH駆動部26は、前記露光コントロール部162に設けられた発光時間制御部・駆動部162Aによって制御されるようになっている。
【0037】
画像形成処理制御部156には、状態管理部176が接続されており、エンジン部10の稼動状態(例えば、処理モード中、スリープモード中、スリープモードからの立ち上げ中、処理中等)を判別するようになっている。状態管理部176で判別した前記稼動状態は、メインコントローラ152へ送出されるようになっている。
【0038】
また、前記メイン電源管理部150には、電源投入監視センサ178が接続され、この電源投入監視センサ178によって電源の投入時を検出し、その電源投入時情報を状態管理部176を介してメインコントローラ52へ送出するようになっている。
【0039】
さらに、メインコントローラ152には、温度センサ180、湿度センサ182等が接続されている。この温度センサ180、湿度センサ182では、エンジン部10内の環境温度・湿度を検出する。
【0040】
(LPHの詳細構成)
次に、LPH16の構成を詳細に説明する。LPH16は、
図3に示すように、LEDアレイ50と、LEDアレイ50を支持するとともに、LEDアレイ50の駆動を制御する各種信号を供給するための回路とが形成されたプリント基板52と、セルフォック(登録商標)レンズアレイ(SLA)54を備えている。
【0041】
プリント基板52は、LEDアレイ50の取り付け面を感光体ドラム12に対向させて、ハウジング56内に配設され、板バネ58によって支持されている。
【0042】
図4に示される如く、感光体ドラム12の軸線方向に沿って複数のLED60が配列されたSLEDチップ62が、さらに所謂千鳥状に配列されており、感光体ドラム12の軸線方向に、所定の解像度で光ビームを照射することができるようになっている。
【0043】
図5(A)に示される如く、前記千鳥状に配列されたSLEDチップ62は、それぞれのSLEDチップ62毎に走査が繰り返され(主走査)、かつ感光体ドラム12が軸線を中心に回転される(副走査)。
【0044】
言い換えれば、感光体ドラム12上の主走査ラインは、
図5(B)に示される如く、千鳥状に配列されたそれぞれのSLEDチップ62から走査される、同時期の主走査線が一体化して、1ラインの主走査線として形成されるようになっている。なお、これらの一体化する主走査線は、ミクロ的にみると所謂ノコギリ状であるが、1ページの画像の主走査線という条件の下では、直線とみなしても問題ない。
【0045】
なお、
図5(B)の太線矢印は、感光体ドラム12を露光する書込み期間を示し、
図5(B)の点線は各主走査間のインタバルであり、感光体ドラム12を露光しない非書込み期間(休止期間)を示す。
【0046】
ここで、本実施の形態では、非書込み期間(相対的に前の走査終了から後の走査開始までの期間)において、SLEDチップ62の各LED60を感光体ドラム12が露光されない程度の光量で発光(させるようになっている。なお、書込み期間の画像データに基づく発光制御、並びに非書込み期間の強制発光制御についての詳細は後述する。
【0047】
(発光時間制御部・駆動部)
図6に従い、露光コントロール部162に設けられた発光時間制御部・駆動部162Aの詳細について説明する。
【0048】
発光時間制御部・駆動部162Aは、各画素の発光時間を濃度むら補正データに基づいて補正し、各画素のLED60を発光するための制御信号を生成する。
【0049】
図6(A)に示される如く、発光時間制御部・駆動部162Aは、プリセッタブルデジタルワンショットマルチバイブレータ(PDOMV)260、直線性補正部262、及びAND回路270を備えている。AND回路270には、画像データが1(ON)のときにはトリガ信号が入力し、画像データが0(OFF)のときにはトリガ信号が入力しないようになっている。
【0050】
PDOMV260には、AND回路270からのトリガ信号に同期して濃度むら補正データ及び基準クロックが入力され、発光パルス信号を発生する。
【0051】
直線性補正部262は、各ドライバ出力の発光開始時間のバラツキを補正するために、PDOMV260からの発光パルス信号を補正して出力する。
【0052】
詳細には、直線性補正部262は、複数の遅延回路264(本実施の形態では8個、付番264−の番号(0〜7)は各々の遅延回路264を識別するものとする)、遅延選択レジスタ266、遅延信号選択部265、AND回路267、OR回路268、及び発光信号選択部269を有している。
【0053】
遅延回路264(遅延回路264−0〜遅延回路264−7)は、PDOMV260と接続されており、各々異なる時間分PDOMV260からの発光パルス信号を遅延させる。
【0054】
遅延選択レジスタ266は遅延信号選択部265及び発光信号選択部と接続されており、遅延選択レジスタ266には、各ドライバ毎の遅延選択データ、及び発光信号選択データが格納されている。
【0055】
各ドライバ毎の遅延選択データ、及び発光信号選択データは予め計測し、図示しないEEPROMやフラッシュROMなどの不揮発性メモリに格納しておく。EEPROMに格納した場合には、マシン電源投入時に遅延選択データが遅延選択レジスタ266にダウンロードされ、フラッシュROMに格納した場合には、フラッシュROM自体を遅延選択レジスタ266として機能する。
【0056】
遅延信号選択部265は、AND回路267及びOR回路268と接続されており、遅延選択レジスタ266に格納された遅延選択データに基づいて、遅延回路264−0〜264−7からの出力のいずれか1つを選択する。
【0057】
AND回路267は、PDOMV260からの発光パルス信号と遅延信号選択部265により選択された遅延発光パルス信号の論理積、すなわち、遅延前の発光パルス信号と遅延後の発光パルス信号の両方が発光状態であれば発光パルスを出力する。
【0058】
OR回路268は、PDOMV260からの発光パルス信号と遅延信号選択部265により選択された遅延発光パルス信号の論理和、すなわち、遅延前の発光パルス信号と遅延後の発光パルス信号の少なくとも一方が発光状態であれば発光パルスを出力する。
【0059】
発光信号選択部269は、遅延選択レジスタ266に格納された発光選択データに基づいて、AND回路267またはOR回路268からの出力のいずれか一方を選択する。
【0060】
発光信号選択部269は、画像データ発光信号出力部272に接続されている。画像データ発光信号出力部272としては、MOSFET272Aが適用可能である。
【0061】
画像データ発光信号出力部272では、予め定められた光量に基づき、画像データに応じた発光時間が形成され、信号切替部273を介してSLEDチップ62の駆動回路に送出され、発光制御信号(I)として適用される。
【0062】
ここで、信号切替部273には、強制発光信号出力部275が接続されており、この強制発光信号出力部275から信号切替部273に向けて、常に発光信号を出力している。
【0063】
また、信号切替部273には、水平同期信号が入力され、この水平同期信号に基づいて、発光制御信号(I)として適用する出力源を、画像データ発光信号出力部272又は強制発光信号出力部275の何れかに切替えるようになっている。なお、強制発光信号出力部275に入力される発光信号は、予め露光しない程度の露光量に制限されている。
【0064】
(SLED駆動回路)
次に、
図7を参照して、SLEDチップ62の各LED60を駆動するために設けられたSLEDチップ62内部の回路構成について説明する。
【0065】
SLEDチップ62では、当該SLED62内に配列されている複数(例えば、128個)のLED60の各々に対して、サイリスタ90が設けられており、各サイリスタ90のアノード側はSUB端子80と接続されている。
【0066】
初段のサイリスタ90のゲート側と接続する点P(1〜128/点Pに続く数字は、複数配列されたLED60の順番を示す)は、ΦS入力端子88と接続されており、SLEDチップ62のLED60を発光させるトリガとして、スタート信号ΦS(電圧)が点P(1〜128)に印加されるようになっている。
【0067】
また、各段のサイリスタ90のゲート側と接続する点P(1〜128)は、ダイオード92を介して直列接続されている。また、各段の点P(1〜128)は、それぞれ抵抗94を介して、VGA端子78と接続するベース線96に接続されている。ベース線96は、初段で所定の電圧を維持し、各段に行くに従い、所定電位(Vf)ずつ低下するようになっている。
【0068】
また、点P(1〜128)は、LED60のアノード側に接続されており、LED60のカソード側は、各段の発光制御信号(I)となるパルス波を出力する発光制御信号線98を介してΦI入力端子82に接続されている。この発光制御信号がローレベル(L)のときに、点P(1〜128)をゲートとするサイリスタ90がONしていれば、LED60は発光する。
【0069】
また、奇数段のサイリスタ90のカソード側は第1の転送線100に接続され、偶数段のサイリスタ90のカソード側は第2の転送線102に接続されており、各々転送信号CK1、CK2が供給される。この転送信号CK1、CK2に従って、前記点P(1〜128)の電位が所定電位(Vf)ずつ上昇されるようになっている。すなわち、点Pの電位が、初段の点P1から後段へと順に、LED60を発光可能な所定電位に到達し、SLEDチップ62の自己走査が可能となる。
【0070】
(強制発光制御)
図8(A)に示される如く、各SLEDチップ62による主走査線は、感光体ドラム12が定速回転することで、nライン→n+1ライン→n+2ライン→・・・→n+iラインの順に副走査される。
【0071】
この場合、
図8(B)に示される如く、各主走査ラインでは、書込み期間のインタバルとして非書込み期間が存在する。書込み期間はLED60が発光するが、非書込み期間はLED60を発光する必要がないため、書込み期間と非書込み期間との間で電圧変動が発生し、
図8(A)の期間Aで示される如く、書込み期間の立ち上がりに前記電圧変動に起因する光量不足が発生し、筋状のむらを発生させることがあった(
図9の点線(比較例)参照)。
【0072】
そこで、本実施の形態では、非書込み期間(休止期間)においても、LED60を露光しない程度の露光量で強制発光することで、LED60を発光しない場合よりも電圧変動を抑制することで(
図9の実線(本実施の形態)参照)、各SLEDチップ62の立ち上がりの光量不足を解消させた。
【0073】
上記のように非書込み期間中にLED60を強制発光させる手段として、本実施の形態では、発光時間制御部・駆動部162Aの端末に、信号切替部273を設け、水平同期信号に基づいて、発光制御信号(I)として適用する出力源を、画像データ発光信号出力部272又は強制発光信号出力部275の何れかに切替えている。
【0074】
より具体的には、信号切替部273では、水平同期信号に基づいて、前述した書込み期間中(
図8参照)は画像データ発光信号出力部272を出力源とするように切り替え、前述した非書込み期間中(
図8参照)は強制発光信号出力部275を出力源とするように切り替える。強制発光信号出力部275に入力される発光信号は、予め露光しない程度の露光量に制限されている。この結果、発光制御信号Iが、
図9の点線で示す比較例から、
図9の実線で示す本実施の形態に変更され、非書込み期間(休止期間)でも電力消費が継続されることになり、電圧変動が抑制される。
【0075】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0076】
(画像形成動作)
感光体ドラム12の周囲では、周知の電子写真方式による各色毎の画像形成(印字)プロセスが次のように行われる。
【0077】
まず、感光体ドラム12はそれぞれ所定の回転速度で回転駆動される。
【0078】
そして、感光体ドラム12の表面は、
図1に示すように、帯電器14により所定の帯電レベルの直流電圧(或いは、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧)を印加することによって、所定レベルに一様に帯電される。
【0079】
次に、一様な表面電位とされた感光体ドラム14の表面に、LPH16によってLED60からの光ビームが照射され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。なお、LED60の発光制御については後述する。
【0080】
上記LED60の発光により、感光体ドラム12の光ビームによる露光部位の表面電位は所定レベルにまで変位する。
【0081】
そして、感光体ドラム14の表面に形成された静電潜像は対応する現像器18によって現像され、感光体ドラム12上にトナー像として可視化される。
【0082】
すなわち、現像器18では、現像カートリッジから二成分現像剤を持ち出し、静電潜像に対して、現像ロールからトナーを飛翔させ感光体ドラム12の表面に付着させる。
【0083】
このときの現像は、トナーを搬送する役目を有するキャリアは現像ロールに残り、トナーのみが感光体ドラム12へ転移する。
【0084】
次に、各感光体ドラム12上に形成された各色のトナー像は、転写ローラ20によって用紙搬送路を通る用紙28に転写される。当該用紙28は、転写の後、用紙28上に形成されたトナー像が、定着器30によって加熱、加圧搬送されることで、トナーが溶融、凝固して記録用紙Pに定着される。また、定着後、記録用紙Pは、排紙ロールによって排紙され、画像形成プロセスが終了する。
【0085】
(発光制御)
「信号生成」
発光時間制御部・駆動部162AのAND回路270へは、トリガ信号と画像データが入力される。AND回路270では、画像データがオンの場合にのみトリガ信号をPDOMV260へ出力する。PDOMV260へは、濃度むら補正データ、基準クロック、及びトリガ信号が入力される。PDOMV260では、画像データがオンのとき、濃度むら補正データに対応した基準クロック数分の発光パルスを生成する。
【0086】
発光パルスは、AND回路267及びOR回路268に出力されると共に、分岐されて遅延回路264−0へ出力され、遅延回路264−0で所定時間遅延され、遅延信号選択部265へ出力される。また、遅延回路264−0での遅延後の発光パルスCKiは、遅延回路264−1へも出力される。以下遅延回路264−1〜264−7には、前の連番の遅延回路264からの発光パルスCKiが入力され、所定時間当該発光パルスを遅延させて遅延信号選択部265へ出力するとともに、後の連番の遅延回路264へも遅延後の発光パルスを出力する。ただし、遅延回路264−7では、後の連番の遅延回路264への出力は行なわない。
【0087】
遅延信号選択部265では、予め遅延選択レジスタ266に格納されている遅延選択データに基づいて、遅延回路264−0〜264−7から出力された発光パルスCKiの出力のいずれか1つを選択する。選択された発光パルスはAND回路267及びOR回路268へ出力される。
【0088】
AND回路267では、遅延前の発光パルスと遅延後の発光パルスの論理積の発光パルスCK1を生成して発光信号選択部269へ出力する。
【0089】
OR回路168では、遅延前の発光パルスと遅延後の発光パルスの論理和の発光パルスCK2を生成して発光信号選択部269へ出力する。
【0090】
発光信号選択部269では、予め遅延選択レジスタ266に格納されている発光選択データに基づいて、AND回路267からの出力またはOR回路268からの出力のいずれか一方を選択する。選択された発光パルス(発光制御信号I)は、信号切替部273が、画像データ発光信号制御部272側に切替えられていることを条件に、MOSFET272を介してLPH16へと出力される。
【0091】
「SLEDチップ動作制御」
次に、
図10及び
図11のタイミングチャートを参照して、LPH16のSLEDチップ62の動作について説明する。
【0092】
図10及び
図11に示されるように、スタート信号ΦS(CKS)をハイレベル(H)とすることで、点P1電位がHとなり、点P1からダイオード92を通じて接続されている点P2の電位は、P2=Φs−Vf(LEDの電圧降下による)となる。同様に、点P3の電位は、P3=P2−Vf、点P4の電位は、P4=P3−Vf、…、点PNの電位は、PN=P(N−1)−Vfとなる。但し、Φga電位で飽和するため、Φga以下には下がらない。
【0093】
ここで、CK1がLになると、P1のサイリスタ90がオンし、このとき、点P1の電位はΦS→0V、CK1の電位はΦ1→−Vfとなる。ここで、点P1と同等、すなわち奇数段目の点Pは、2Vf単位で電位が下がっているため、オンしない。
【0094】
この状態でΦIをH→Lとすることで、1段目のLED60が発光する。また、ΦIをL→Hとすることで、1段目のLED60は消灯し、このとき、ΦIの電位は−Vfとなる。
【0095】
次に、CK2をLにすることで、P2のサイリスタ90がオンし、P2=0V、P3=−Vf、P4=−2Vfとなる。このとき、CK2の電位Φ2が−Vfとなるため、P4以降の偶数段目のサイリスタ90はオンしない。
【0096】
P2のサイリスタ90がオンしたところで、CK1→Hとすることで、次のデータ信号で1段目のLED60が発光しないように、P1のサイリスタ90をオフする。
【0097】
この状態で、ΦIをH→Lとすることで、2段目のLED60が発光する。このとき、ΦIの電位は−Vfとなる。その後、ΦIをL→Hとすることで、2段目のLED60が消灯する(ΦIの電位が0V)。
【0098】
以下、CK1は奇数段目のサイリスタ90(及びLED60)のオン(発光)を制御し、CK2は偶数段目のサイリスタ90(LED60)のオン(発光)を制御するとともに、発光制御信号ΦIによって各LED60による露光量がされる。
【0099】
(強制発光制御)
ここで、
図8(A)に示される如く、各SLEDチップ62により、nライン→n+1ライン→n+2ライン→・・・→n+iラインの順に副走査される場合、各主走査ラインでは、書込み期間のインタバルとして非書込み期間が存在する。
【0100】
書込み期間はLED60が発光するが、非書込み期間はLED60を発光する必要がないため、書込み期間と非書込み期間との間で電圧変動が発生し、各SLEDチップ62のつなぎ目において、副走査方向に沿って筋状のむらを発生させることがあった(
図9の点線(比較例)参照)。
【0101】
そこで、本実施の形態では、非書込み期間(休止期間)においても、LED60を強制発光することで、LED60を発光しない場合よりも電圧変動を抑制することで(
図9の実線(本実施の形態)参照)、各SLEDチップ62の立ち上がりの光量不足を解消するように制御している。
【0102】
図12は、
図6に示す信号切替部273において実行される、発光信号切替制御ルーチンを示すフローチャートである。なお、フローチャートを用いて処理の流れを示すが、所謂ソフト的に発光信号の切替制御に限定されるものではなく、処理速度の関係からスイッチング回路を含む電子部品を用いて論理回路を構築し、ハード的に発光信号の切替制御を実行することも可能である。
【0103】
図12のフローチャートは、書込み処理に同期して実行が開始され、ステップ300では1ライン分の書込みが終了したか否かが判断され、肯定判定されるまでループする。このループ期間中は、
図8に示す書込み期間中であり、各SLEDチップ62により主走査が実行される。
【0104】
ステップ300で肯定判定されると、ステップ302へ移行して発光信号の出力源を強制発光信号出力部275側に切り替え、ステップ304へ移行する。この切り替えにより、非書込み期間中において、LED60が強制発光する。なお、このLED60の強制発光は、露光しない程度の露光量に制限されているため、画質に影響を及ぼすものではない。
【0105】
次のステップ304では、水平同期信号(の立ち上がり)を検出したか否かが判断され、肯定判定されると、ステップ306へ移行して発光信号を出力源を画像データ発光信号出力部273側に切り替え、ステップ308へ移行する。
【0106】
ステップ308では、予め定めたライン数の走査、例えば、1ページ分が走査が終了したか否かが判断され、否定判定された場合は、ステップ300へ戻り、上記肯定を繰り返す。また、ステップ308で肯定判定されると、このルーチンは終了する。
【0107】
上記切替制御によれば、信号切替部273では、書込み期間中(
図5参照)は画像データ発光信号出力部272を出力源とするように切り替え、非書込み期間中(
図5参照)は強制発光信号出力部275を出力源とするように切り替えられる。
【0108】
この結果、発光制御信号Iが、
図9の点線で示す比較例から、
図9の実線で示す本実施の形態に変更され、非書込み期間(休止期間)でも電力消費が継続されることになり、電圧変動が抑制することが可能となる。
【0109】
(変形例)
本実施の形態では、非書込み期間中の電圧変動を抑制するために、LED60を露光しない程度に強制発光させるようにしたが、電圧変動の抑制する手段としては、LED60の強制発光以外にも、以下のような手段が適用し得る。
【0110】
「変形例1」
SLEDチップ62の駆動回路において、非書込み期間中は、他に影響を及ぼさない転送サイリスタ(サイリスタ90)や、図示は省略したが、発光したLED60を消灯するためのリセットサイリスタを駆動(連続オン、オンオフの繰り返し)させる。
【0111】
「変形例2」
発光時間制御部・駆動部162AやSLEDチップ62の駆動回路に用いられるASICの消費電力(電流)を増やす。例えば、発光時間制御部・駆動部162Aの場合、PDOMV260で生成するクロックを速くする、或いは、遅延信号選択部265での演算処理において、意図的に無駄な演算処理をさせることが考えられる。