(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206069
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20170925BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20170925BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20170925BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20170925BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20170925BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20170925BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K47/02
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/14
A61P29/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-213319(P2013-213319)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-97973(P2014-97973A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-231304(P2012-231304)
(32)【優先日】2012年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大樹
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 靖生
【審査官】
幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−106973(JP,A)
【文献】
特開2011−68645(JP,A)
【文献】
特開2009−242365(JP,A)
【文献】
特開2006−328000(JP,A)
【文献】
特開2006−52210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61P 29/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)乾燥水酸化アルミニウムゲル、及び(c)乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる無機塩を1種以上配合したことを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
ロキソプロフェン又はその塩がロキソプロフェンナトリウム水和物である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
(a)成分1質量部に対して、(b)成分を0.35〜5.6質量部、(c)成分を0.01〜2.0質量部を配合したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
固形製剤の剤形がカプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又は錠剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する固形製剤に関するものである。さらに詳しくは、ロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲル配合時に外観変化を抑制できる固形製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンはそのナトリウム塩が医療用医薬品として高い実績を誇るフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛剤である。本成分は消炎鎮痛剤として医療用での使用実績が高く、胃障害などの副作用が比較的軽いといった特徴を有している。
ロキソプロフェンはその優れた薬理作用から、様々な薬物と配合された検討が既になされている。例えば、ケトチフェンフマル酸塩との配合による解熱作用の増強(特許文献1)や、チキジウム臭化物の配合による胃障害の軽減(特許文献2)、プソイドエフェドリン塩酸塩との配合によるくしゃみ防止(特許文献3)などが挙げられる。
【0003】
一方、乾燥水酸化アルミニウムゲルは制酸剤としての機能を有しており、解熱鎮痛薬や胃腸薬に用いられる薬物である。そのため、乾燥水酸化アルミニウムゲルはロキソプロフェン又はその塩と併せて添加された事例が既に知られている(特許文献4〜6)。
【0004】
解熱鎮痛成分は制酸剤との配合時に相互作用を生じることが知られており(特許文献7)、その製剤化にあたってはこれら化合物間の相互作用を留意した製剤設計をする必要があった。
その例として、2価又は3価の金属塩からなる制酸剤をPKa=5以下の酸又はその塩を用いて造粒した後、酸型のカルボキシ基を有する解熱鎮痛成分と配合する方法(特許文献7)が知られている。しかしながら、この方法では、解熱鎮痛成分と制酸剤を隔離するだけでなく、さらに制酸剤をPKa=5以下の酸又はその塩を用いて造粒しないと配合変化を抑制できず、安定した製剤を製造するためには煩雑な製法を採用する必要があった。また、別の例として、配合変化を生じる成分同士を同一顆粒中に配合して安定化する方法(特許文献8)が報告されているが、ロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲルを隔離せずに外観変化を防ぐことは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004―83579号公報
【特許文献2】特開2000―26313号公報
【特許文献3】特開2004−2362号公報
【特許文献4】特開2006−52210号公報
【特許文献5】特開2012−51949号公報
【特許文献6】特開2012−51950号公報
【特許文献7】特開2011−68645号公報
【特許文献8】特開2006−328000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ロキソプロフェン又はその塩及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する医薬用製剤を開発するため、まずはこれら混合品を製剤化させて保存安定性について検討したところ、これらの化合物の間に相互作用が生じて褐色状への変色が認められ、商品価値の低下を招くおそれがあった。
【0007】
従って、本発明はロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲルを配合時にも、これら化合物間を物理的に隔離せず簡便な方法にて外観変化を抑制できる固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々検討した結果、ロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に特定の成分を共存するよう配合させることにより、これら化合物間を物理的に隔離しなくても上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)乾燥水酸化アルミニウムゲル、及び(c)乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる無機塩を1種以上配合したことを特徴とする固形製剤、
(2)ロキソプロフェン又はその塩がロキソプロフェンナトリウム水和物である、(1)に記載の固形製剤、
(3)(a)成分1質量部に対して、(b)成分を0.35〜5.6質量部、(c)成分を0.01〜2.0質量部を配合したことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の固形製剤、
(4)固形製剤の剤形がカプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又は錠剤である、(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医薬製剤は、ロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲルを物理的に隔離せず、簡便な方法で相互作用を抑制できる。従って、長期にわたって製剤の着色が防止されたロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する固形製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1〜4の錠剤を65℃条件下に2週間保存したときの外観である。
【
図2】比較例1〜4の錠剤を65℃条件下に2週間保存したときの外観である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の医薬製剤に用いられるロキソプロフェン又はその塩には、ロキソプロフェンの
みならず、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらには水やアルコール等との溶媒
和物が含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販
のものを用いることができる。本発明において、ロキソプロフェン又はその塩としては、
ロキソプロフェンナトリウム水和物(化学名:Monosodium 2-[4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl]propanoate dihydrate)が好ましい。
【0012】
本発明の固形製剤中におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で3.0〜80.0質量%が好ましく、さらに好ましくは5.0〜70.0質量%、特に好ましくは6.0〜60.0質量%、最も好ましいのは7.0〜50.0質量%である。
【0013】
本発明の固形製剤中における乾燥水酸化アルミニウムゲルの含有量は、固形製剤全質量に対して10.0〜60.0質量%が好ましく、さらに好ましくは15.0〜50.0質量%である。
【0014】
本発明の固形製剤中における乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる無機塩の含有量は、固形製剤全質量に対して0.3〜40.0質量%、好ましくは0.5〜35.0質量%である。
【0015】
本発明のロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲルとの配合比は、ロキソプロフェン又はその塩1質量部に対して下限値は0.35質量部が好ましい。相互作用により外観変化を起こすからである。また、上限値は、5.6質量部が好ましい。さらに好ましくは、ロキソプロフェン又はその塩1質量部に対する乾燥水酸化アルミニウムゲルとの配合量は、0.70〜4.0質量部である。また、本発明のロキソプロフェン又はその塩と乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる無機塩との配合比は、ロキソプロフェン又はその塩1質量に対して0.01〜2.0質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部が着色抑制の面で好ましい。
【0016】
本発明の固形製剤の剤形としては散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤(フィルムコーティング錠、糖衣錠、積層錠を含む)、カプセル剤、ドライシロップ剤、トローチ剤等の経口製剤や外用剤などの非経口製剤が挙げられるが、特にカプセル剤、錠剤又は散剤が好ましい。
【0017】
本発明の固形製剤は、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではないが、(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)乾燥水酸化アルミニウムゲル、及び(c)乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる無機塩を隔離せずに接触するように配合してもその相互作用が抑制されることから、これら3種の成分を共存するように配合することが、本発明を実施する上で意義が大きい。
上記固形製剤の具体的形態として、例えば以下の形態が挙げられる。
1.(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)乾燥水酸化アルミニウムゲル、及び(c)乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる無機塩1種以上を混合して得た散剤、顆粒剤等及びこれを被覆した製剤。
2.(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)乾燥水酸化アルミニウムゲル、及び(c)乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる無機塩を1種以上混合し、造粒して得た散剤、顆粒剤等及びこれを被覆した製剤。
3.1または2の製剤を含む錠剤、及びこれを被覆した製剤。
【0018】
本発明の固形製剤の製造方法としては具体的には、その剤形に応じて任意の慣用方法例えば、直接打錠法、湿式造粒法、乾式造粒法及び溶融造粒法などの方法により製造するのが好ましい。
【0019】
本発明の医薬製剤には、ロキソプロフェン又はその塩と、乾燥水酸化アルミニウムゲルと乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる無機塩以外にも、本発明の効果を損なわない質的・量的範囲で、他の公知の添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤等を混合してもよい。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づきさらに詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜7、比較例1〜5及び参考例1)
【0021】
(1)製剤(錠剤)の製造方法
下記表1の配合比に従い、各種原料(ステアリン酸マグネシウムを除く)を100錠分ビニールで混合した後、篩を通した。実施例1〜7、比較例1〜5の湿式造粒法の場合、篩通過後の粉体に対して精製水を加えて乳鉢で練合させ、50℃条件下に2時間静置して十分乾燥させた後に、錠剤製造用の顆粒を得た。乾燥後、得た顆粒にステアリン酸マグネシウムを添加・混合し、卓上簡易錠剤成型機(商品名:HANDTAB;市橋精機)を用いて錠剤径10mmの錠剤を得た。参考例1の直接打錠法の場合、篩通過後の粉体に対してステアリン酸マグネシウムを添加・混合し、卓上簡易錠剤成型機を用いて錠剤径10mmの錠剤を得た。得た錠剤は、25℃60%RH条件下に1日静置させた後にガラス瓶に入れて密閉し、65℃条件下に2週間保存させた後に製剤の外観評価を行った。
【0022】
(2)官能評価
実施例、比較例及び参考例で得られた錠剤について、官能評価によって専門パネラー2名による外観評価を実施した。製剤の外観の評価は、65℃環境下に2週間保存したサンプルと直後品との相対比較により行い、以下に記す5段階評価することによって行った。外観変化の許容の判定基準を平均値「2.0」以下と設定した。
官能評価結果を表1に示す。
【0023】
《判定基準》
0:変化なし
1:わずかに変化を認める
2:変化を認めるが許容できる
3:明らかな変化を認める(許容できない)
4:著しい変化を認める
【0024】
(3)色差測定
実施例,比較例及び参考例で得られた錠剤について、直後品をコントロールとして65℃条件下に2週間保存させたサンプルの色差測定を実施した。色差の測定には分光測色計(商品名:SE6000;日本電色工業)を用い、以下の[数1]により算出した。各ポイントにつき3錠のサンプルの表面・裏面について色差を測定し、ΔE
*(ab)が低いほど色調が変化していないことを示す。
【0025】
【数2】
ΔL
*=65℃2週間保存品のL
*値−直後品のL
*値(L
*:明度 +は白方向,−は黒方向)
Δa
*=65℃2週間保存品のa
*値−直後品のa
*値(a
*:色度 +は赤方向,−は緑方向)
Δb
*=65℃2週間保存品のb
*値−直後品のb
*値(b
*:色度 +は黄方向,−は青方向)
【0026】
【表1】
【0027】
試験結果から明らかなように、ロキソプロフェンナトリウムを含有する粉体に乾燥水酸化アルミニウムゲルを配合しないで製した錠剤はやや変色する程度であったが(参考例1)、ロキソプロフェンナトリウムと乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する錠剤の色差結果及び官能評価結果は高い値を示し、錠剤表面が褐色状への著しい変色が認められた(比較例1)。これに対し、実施例1〜7に示した乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウムを含有する錠剤の色差結果及び官能評価結果は低い値を示し、外観変化が抑制された錠剤であった。特に、炭酸ナトリウム及び乳酸カルシウムを配合した場合には著しい変色抑制効果が認められた。一方、別の無機塩である水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及び塩化カリウムを含有する錠剤については褐色状への変色を抑制することができなかった(比較例2〜5)。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、ロキソプロフェン又はその塩と乾燥水酸化アルミニウムゲルとの相互作用の抑制が可能となった。従って、保存安定性が優れた、ロキソプロフェン又はその塩及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含む固形製剤を提供することが可能となった。