(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
[第1実施形態]
<管状体の製造装置>
まず、本実施形態に係る冷却装置を用いた管状体の製造装置の一例として、第1実施形態の管状体製造装置について説明する。
図1は、1つの冷却部材からなる一体型の冷却装置を用いた管状体製造装置100の構成を概略的に示す断面図であり、
図2は、
図1に示した管状体製造装置100における冷却装置(冷却部)周辺の構成を拡大して概略的に示す断面図である。なお、以下に参照する図面は、本実施形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさの比を現すものではない。
【0021】
図1に示されるように、管状体製造装置100は、溶融(溶解)した熱可塑性樹脂を含む溶融体Fを口金20(環状ダイ)から管状に下方へ押し出す押出装置110と、口金20から管状に押し出された溶融体Fの内周面に、外周面34を接触させて、溶融体Fを冷却する冷却部材(冷却マンドレル)32からなる一体型の冷却装置30と、冷却装置30を支持する支持部材70と、を備えている。
【0022】
溶融体Fは、冷却部材32の外周面34のうち口金20に近い側の端である接触開始領域36において冷却部材32への接触を開始し、冷却部材32の外周面34のうち口金20から遠い側の端である接触終了領域38において冷却部材32への接触を終了する。
そして本実施形態では、冷却部材32の外周面34のうち、接触開始領域36における温度が、接触終了領域38における温度よりも高くなっている。
【0023】
なお、本実施形態では、接触開始領域36における溶融体Fの接触開始から接触終了領域38における溶融体Fの接触終了までの間は、溶融体Fの冷却部材32への接触が継続されるが、この形態に限られない。具体的には、例えば、接触開始領域36において溶融体Fが冷却部材32への接触を最初に開始した後、一旦前記接触を終了し、再度溶融体Fが冷却部材32への接触を開始し、接触終了領域38において最後に前記接触を終了してもよい。いずれにしても、冷却部材32の外周面34のうち、前記接触が最初に開始される領域が接触開始領域36であり、前記接触が最後に終了する領域が接触終了領域38である。
【0024】
また冷却部材32は、接触開始領域36を含み第1の温度に調整された第1の冷却部32Aと、接触終了領域38を含み第2の温度に調整された第2の冷却部32Bと、を含んで構成されている。
そして「接触開始領域36の温度」は、冷却部材32が有する複数の冷却部のうち、口金20に最も近い冷却部(本実施形態では上記第1の冷却部32A)の温度である。同様に「接触終了領域38の温度」は、冷却部材32が有する複数の冷却部のうち、口金20から最も遠い冷却部(本実施形態では上記第2の冷却部32B)の温度である。
なお、各領域の温度は、例えばシース型熱電対を、冷却部材32のうち測定対象である冷却部(具体的には、例えば、接触開始領域36の温度を測定する場合は後述する第1の空洞42の内壁面、接触終了領域38の温度を測定する場合は後述する第2の空洞52の内壁面等)に接触させて設け、測定する。
【0025】
(押出装置)
押出装置110は、
図1に示されるように、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料Pを溶融状態にして溶融体Fとする一軸押出機10と、一軸押出機10の先端部に取り付けられた口金20と、を備えている。
【0026】
一軸押出機10は、図示しないヒータを有し樹脂材料Pを加熱する加熱筒12と、加熱筒12に設けられ樹脂材料Pが投入される投入口11と、加熱筒12の内部に設けられ樹脂材料Pが溶融した溶融体Fを口金20へ搬送する搬送部材としてのスクリュー13と、を備えている。
【0027】
一軸押出機10では、投入口11から加熱筒12の内部に投入された樹脂材料Pが、加熱筒12のヒータにより、樹脂材料Pの融解温度以上の温度(通常、150〜450℃)で加熱かつスクリュー回転による発熱で溶融しつつ、スクリュー13によって口金20へ搬送(供給)されるようになっている。なお、一軸押出機10では、粒状に形成された樹脂材料P(ペレット)が、投入口11に投入されるようになっている。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、口金20には、一軸押出機10の加熱筒12の内部と通じ加熱筒12から流入した溶融状態の溶融体Fが通過する流路22と、流路22を通過した溶融状態の溶融体Fを管状に押し出すための環状(円形状)の出口孔23と、が形成されている。
【0029】
口金20では、溶融状態の溶融体Fが、加熱筒12の先端部から流路22へ流入して流路22を通過し、一軸押出機10のスクリュー13の回転による推進力(搬送力)によって、出口孔23から管状に押し出されるようになっている。
【0030】
(支持部材)
支持部材70は、
図2に示されるように、円柱状に形成されており、口金20に環状に形成された出口孔23の径方向中央部(中心)で口金20を貫通し、口金20の上方及び下方に突出するように支持されている。
【0031】
(冷却装置)
一体型の冷却装置30を構成する冷却部材32は、
図2に示されるように、例えば円筒状に形成されており、冷却部材32の内周面が支持部材70の外周面に接触するように支持部材70と同軸状に配置されている。そして冷却部材32は、冷却部材32の軸方向に貫通する支持部材70によって支持されている。
【0032】
そして前記の通り、冷却部材32は、接触開始領域36を含み第1の温度に調整された第1の冷却部32Aと、接触終了領域38を含み第2の温度に調整された第2の冷却部32Bと、を含んで構成されている。
【0033】
第1の冷却部32Aでは、冷却部材32の内部に第1の空洞42が設けられている。また第1の空洞42は、支持部材70の内部に支持部材70の軸方向に設けられた供給管44及び排出管46に接続され、供給管44及び排出管46は不図示の冷却機に接続されている。そして第1の冷媒が、前記不図示の冷却機によって冷却された後、供給管44を通って第1の空洞42に供給されて冷却部材32の第1の冷却部32Aを冷却することで、第1の冷却部32Aにおける温度(すなわち接触開始領域36の温度)が調整される。一方、第1の空洞42に供給されて第1の冷却部32Aを冷却した第1の冷媒は、排出管46を通って冷却部材32から排出され、前記不図示の冷却機に戻って再び冷却される。
【0034】
同様に第2の冷却部32Bでは、冷却部材32の内部に設けられた第2の空洞52が、支持部材70の内部に設けられた供給管54及び排出管56に接続され、さらに供給管54及び排出管56が前記不図示の冷却機に接続されている。そして、前記不図示の冷却機によって冷却された第2の冷媒が、供給管54を通って第2の空洞52に供給され、第2の冷却部32Bの温度(すなわち接触終了領域38の温度)を調整し、排出管56を通って前記不図示の冷却機に戻って再び冷却される。
【0035】
以上のようにして、第1の冷却部32Aの温度及び第2の冷却部32Bの温度をそれぞれ調整する。そして、第1の冷却部32Aの温度が第2の冷却部32Bの温度よりも高くなるように、それぞれの温度を調整することで、接触開始領域36の温度が接触終了領域38の温度よりも高くなる。
第1の冷却部32Aの温度が第2の冷却部32Bの温度よりも高くなるようにそれぞれの温度を調整する方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。具体的には、例えば、第1の空洞42に供給された第1の冷媒の温度が、第2の空洞52に供給された第2の冷媒の温度よりも高くなるように、前記不図示の冷却機において第1の冷媒及び第2の冷媒をそれぞれ冷却する方法が挙げられる。
【0036】
第1の冷媒及び第2の冷媒としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール又はプロピレングリコールの水浴液(ブライン)等が挙げられる。第1の冷媒と第2の冷媒として、同じ溶媒を用いてもよいし、異なる溶媒を用いてもよい。
【0037】
<管状体の製造方法>
次に、前述の管状体製造装置100を用いた、管状体の一例としての熱可塑性樹脂チューブを製造する製造方法について説明する。
【0038】
まず、一軸押出機10の投入口11から加熱筒12内部へ樹脂材料P(ペレット)を投入し(
図1参照)、当該樹脂材料Pを、加熱筒12の複数のヒータ(図示せず)により、樹脂材料Pの融解温度以上の温度(通常、150〜450℃)に加熱して溶融状態にし、溶融体Fを得る(加熱工程)。
【0039】
次に、
図1に示されるように、溶融状態の溶融体Fを、加熱筒12の内部のスクリュー13の推進力により、加熱筒12から口金20の流路22を通過させて、口金20の出口孔23から管状に押し出す(押出工程)。
【0040】
次に、口金20の出口孔23から管状に押し出された溶融体Fを、当該溶融体Fの内周面に冷却部材32の外周面34を接触させることにより、当該溶融体Fを冷却・硬化する(冷却工程)。
具体的には、口金20の出口孔23から管状に押し出された溶融体Fは、外周面34の接触開始領域36において冷却部材32との接触を開始し、接触開始領域36から接触終了領域38までの間は冷却部材32への接触を継続し、接触終了領域38において冷却部材32への接触を終了して冷却部材32から離れる。冷却部材32から離れた溶融体Fは冷却され、冷却部材32の接触終了領域38における外径に応じた内径を持つ管状に硬化した状態となっている。
【0041】
溶融体Fが冷却・硬化して得られた管状体は、例えば、不図示の巻取り機により連続的に巻き取られる。
このようにして、本実施形態では、熱可塑性樹脂チューブ(円筒状フィルム)である管状体が製造される。
【0042】
本実施形態では、前述のように、接触開始領域36の温度が接触終了領域38の温度よりも高くなっている。そのため、接触開始領域の温度が接触終了領域の温度と同じ又は低い場合に比べて、平面性が高い管状体が得られる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0043】
溶融した溶融体Fが冷却装置30によって冷却される際、前記のように、まず溶融体Fの内周面が冷却部材32の外周面34に接触して冷却される。このとき、接触開始領域において溶融体の冷却速度が速すぎると、例えば溶融体の外周面側が冷却されるよりもはやく溶融体の内周面側が固化する。この後、未硬化の外周面側が冷却する事により固化し収縮が発生するが、この応力(収縮力)に内側の固化層が負ける事で外周面に軸方向の凹凸(うねり)が発生することが考えられる。
また、溶融体Fが冷却部材32への接触を終了した時点で溶融体Fの冷却が不十分で硬化が完了していない場合は、例えば溶融体が冷却して得られた管状体を巻き取ることによる応力により、溶融体全体に歪みが発生する事により管状体が変形し、二軸で長架時の軸方向真直度が大きくなることが考えられる。
【0044】
一方本実施形態では、接触開始領域36の温度が接触終了領域38の温度よりも高いため、接触開始領域の温度が接触終了領域の温度と同じ又は低い場合とは異なり、溶融体Fは、冷却部材32に接触を開始してから終了するまでの間に徐々に冷却される。このように冷却されることにより、前記のように接触開始領域において冷却速度が速すぎる場合や、接触終了後も硬化が完了していない場合に比べ、溶融体を変形させる応力が発生しにくく、凹凸(うねり)や管状体の変形による軸方向真直度の悪化が抑制され、平面性が高い管状体が得られると推測される。
【0045】
そして、本実施形態の管状体を、例えば画像形成装置の中間転写ベルト等に用いた場合、管状体の平面性が高いことによって、管状体が感光体や記録媒体に接触させる際の圧力ムラが少なく転写性が向上する。また本実施形態の管状体は、平面性が高いため、クリーニング部材へ均一に接触し、クリーニング性が向上する。よって、本実施形態の管状体を用いた画像形成装置によって得られた画像は、濃淡ムラや画像抜けが抑制されたものとなる。
【0046】
ここで、平面性とは、管状体表面の軸方向凹凸及び管状体を二軸で張架時の軸方向真直度を示し、いずれも小さいほど優れている。
前記「凹凸(うねり)」とは、後述するように、表面粗さ計によって測定された値であり、凹凸(うねり)が小さいほど平面性が高いことを意味する。具体的には、前記うねりの値が0.2μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。
また、前記「二軸で張架時の軸方向真直度」とは、後述するように、例えば得られた管状体がベルトである場合、ベルトを2本のロールで張ってレーザ変位計で軸方向に表面位置を測定したときの差を示す値であり、二軸で張架時の軸方向真直度が小さいほど平面性が高いことを意味する。具体的には、前記二軸で張架時の軸方向真直度の値が2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。
【0047】
本実施形態では、溶融体Fに含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたとき、接触開始領域36の温度がTg−15(℃)以上Tg(℃)以下であり、かつ、接触終了領域38の温度がTg−15(℃)未満であることが好ましい。
接触開始領域36の温度が上記範囲であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べてうねりが小さく平面性の高い管状体が得られ、上記範囲よりも高い場合に比べて、二軸で張架時の軸方向真直度が小さく平面性の高い管状体が得られる。
また接触終了領域38の温度が上記範囲であることにより、上記範囲よりも高い場合に比べて、二軸で張架時の軸方向真直度が小さく平面性の高い管状体が得られる。
【0048】
なお、接触終了領域38の温度は、管状体温度がTg以下になる温度であり、かつ、接触開始領域36の温度よりも低い温度であれば何度でもよいが、Tg−20(℃)以下がより好ましく、Tg−30(℃)以下がさらに好ましい。
【0049】
本実施形態では、接触開始領域36と接触終了領域38との距離(溶融体Fの押出方向に沿った長さ)が、接触開始領域36における外周面34と溶融体Fの押出方向に垂直な面との交線の直径以上であることが好ましい。前記接触開始領域36と接触終了領域38との距離が前記交線の直径以上であることにより、前記交線の直径よりも短い場合に比べて、接触開始領域36の温度と接触終了領域38の温度との差を大きく調整しやすく、また外周面34を接触しながら移動する溶融体Fの温度変化を遅くしやすい。また、引き取り方向が安定するため、良好な平面性を得る事が出来る。
なお、前記接触開始領域36と接触終了領域38との距離は、前記交線の直径の1.0倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。
【0050】
ここで、本実施形態では、冷却部材32が円筒状であり、外周面34を溶融体Fに接触させる一体型のものである。そのため、前記交線は円形であり、前記交線の直径は冷却部材32の外径を意味するとともに、前記接触開始領域36と接触終了領域38との距離は冷却部材32の軸方向における長さを意味する。すなわち本実施形態では、冷却部材32の前記長さが、接触開始領域36における冷却部材32の外径以上であることが望ましい。
一方、内周面を溶融体に接触させる円筒状の冷却部材では、前記交線の直径は内径を意味する。また、前記交線が円形以外の形状である場合は、最も長い径を前記「交線の直径」とする。具体的には、例えば、前記交線が楕円形である場合は、前記交線の直径は長径を意味する。
【0051】
本実施形態では、第1の空洞42及び第2の空洞52にそれぞれ第1の冷媒及び第2の冷媒を供給することで、接触開始領域36の温度を接触終了領域38の温度よりも高く調整されているが、これに限られない。具体的には、例えば、一体型の冷却部材に3つ以上の空洞を設け、例えばそれぞれの空洞に異なる温度の冷媒を供給し、接触開始領域36から接触終了領域38に向かって段階的に温度が低くなるように設定してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、接触開始領域36の温度が接触終了領域38の温度よりも高く調整されていれば、冷却部材32の冷却手段は前記冷媒を用いる方法に限定されるものではない。
【0053】
また本実施形態では、溶融体Fの内周面に冷却部材32の外周面34を接触させて溶融体Fを冷却する形態であるが、これに限られず、例えば溶融体の外周面に冷却部材の内周面を接触させて溶融体を冷却する形態であってもよい。
【0054】
管状体製造装置100において用いられる樹脂材料Pに含まれる熱可塑性樹脂としては、特に限られず、具体的には、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレンエチレンブロック又はランダム共重合体、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、の1種またはこれらの混合物からなるものが使用される。その中でも特に好ましいのは、高弾性率なポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0055】
樹脂材料Pは、必要に応じて熱可塑性樹脂の他に、導電剤やその他の添加剤を含んでいてもよい。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボン繊維、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩、導電性高分子等から選ばれる少なくとも1種またはこれら数種の混合物からなるものが挙げられる。その中でも特に、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックがある。管状体の外観を損なわないために揮発分率の少ないカーボンブラックが好ましく、また抵抗安定性の点で小粒子径のカーボンブラックを用いる事が好ましい。
【0056】
その他の添加剤としては、例えば、熱安定性を改善させるための酸化防止剤、押出成形時の噛み込み防止のための滑剤等が挙げられ、管状体の特性を変化させない程度であれば添加してもよい。
【0057】
本実施形態の管状体製造装置で製造された管状体としては、例えば、静電複写方式の画像形成装置に用いる熱可塑樹脂製円筒状フィルムが挙げられ、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、転写体を搬送する円筒状部材、トナーを第1の保持体から第2の保持体へ転写する中間転写用円筒状部材等に用いられる。
【0058】
[第2実施形態]
<押出成形装置(管状体の製造装置)>
第2実施形態の押出成形装置は、上記第1実施形態の管状体製造装置100に備えられた冷却装置30の代わりに、第1の冷却部材62と第2の冷却部材64とで構成された冷却装置60を用いた形態である。なお、冷却装置が異なること以外の事項については、上記と同様であるため説明を省略する。
【0059】
図3は、本実施形態の管状体製造装置における冷却装置(冷却部)周辺の構成を拡大して概略的に示す断面図である。なお、第1実施形態に係る管状体製造装置100と同様な構成については、同様の符号を用いる。
【0060】
(冷却装置)
冷却装置60は、口金20よりも溶融体Fの押出方向下流側に設けられた第1の冷却部材62と、第1の冷却部材62よりも前記押出方向下流側に設けられた第2の冷却部材64と、で構成された分割型の冷却装置である。
第1の冷却部材62と第2の冷却部材64とは、
図3に示されるように、例えば、それぞれ円筒状に形成され、内周面が支持部材70の外周面に接触するように支持部材70と同軸状に配置されている。
【0061】
第1の冷却部材62の内部には、支持部材70の内部に設けられた供給管44及び排出管46に接続された第1の空洞72が設けられている。また第2の冷却部材64の内部には、支持部材70の内部に設けられた供給管54及び排出管56に接続された第2の空洞74が設けられている。
【0062】
そして第1の冷媒が、不図示の冷却機によって冷却された後、供給管44を通って第1の空洞72に供給されて第1の冷却部材62を冷却することで、第1の冷却部材62の外周面全体の温度が調整される。同様に、第2の冷媒が、不図示の冷却機によって冷却された後、供給管54を通って第2の空洞74に供給されて第2の冷却部材64を冷却することで、第2の冷却部材64の外周面全体の温度が調整される。
すなわち冷却装置60は、第1の温度に調整された第1の冷却部である第1の冷却部材62と、第2の温度に調整された第2の冷却部である第2の冷却部材64と、を含んで構成されている。
そして本実施形態では、第1の冷却部材62の外周面の温度が、第2の冷却部材64の外周面の温度よりも高くなるように調整される。
【0063】
口金20の出口孔23から管状に押し出された溶融体Fが冷却装置60によって冷却される際には、まず溶融体Fの内周面が、第1の冷却部材62の外周面のうち口金20に近い側の端である接触開始領域76に接触する。その後溶融体Fが、第1の冷却部材62の外周面のうち口金20から遠い側の端において第1の冷却部材62から離れ、前記溶融体Fの押出方向に移動した後、第2の冷却部材64の外周面のうち口金20に近い側の端において第2の冷却部材64への接触を開始し、さらに第2の冷却部材64の外周面のうち口金20から遠い側の端である接触終了領域78において第2の冷却部材64から離れる。
すなわち溶融体Fは、接触開始領域76において最初に冷却装置60への接触を開始し、冷却装置60への接触の終了及び再開を経たのちに、接触終了領域78において最後に冷却装置60への接触を終了する。
【0064】
本実施形態では、上記の通り、第1の冷却部材62の外周面の温度が第2の冷却部材64の外周面の温度よりも高い。すなわち、接触開始領域76の温度が接触終了領域78の温度よりも高いため、前記第1実施形態と同様に、平面性が高い管状体が得られる。
そして本実施形態では、分割型の冷却装置60を用いているため、一体型の冷却装置に比べて、接触面積が小さくなるため引き取り力が小さくて済み、ベルトの残留応力による平面性の悪化を防ぐ事が出来る。
【0065】
また本実施形態では、分割型の冷却装置60を用いているため、一体型の冷却装置を用いた場合に比べて、第1の冷却部材62と第2の冷却部材64との間で熱が伝わりにくい。そのため、接触開始領域76及び接触終了領域78の温度をそれぞれ異なる温度に調整しやすく、かつ、接触開始領域76の温度と接触終了領域78の温度との差を設けやすい。また、接触開始領域76と接触終了領域78との距離を調整しやすい。そして、接触開始領域76と接触終了領域78との距離を長くすることで、接触開始領域76の温度と接触終了領域78の温度との差を大きくしやすく、また溶融体Fの冷却速度を遅くすることで、より平面性が高い管状体が得られやすい。
【0066】
なお本実施形態では、分割型の冷却装置60を用いているため、例えば、第1の冷却部材62と第2の冷却部材64とで材質が異なるものとすることで、熱伝導率に差を設け、結果的に接触開始領域76の温度を接触終了領域78の温度よりも高いものとしてもよい。
【0067】
なお、本実施形態では、第1の冷却部材62の外周面全体の温度及び第2の冷却部材64の外周面全体の温度をそれぞれ調整しているが、接触開始領域76の温度が接触終了領域78の温度よりも高ければよく、それぞれの冷却部材の外周面において温度の勾配があってもよい。
また、本実施形態では、第1の冷却部材62及び第2の冷却部材64を用いているが、これに限られず、3つ以上の冷却部材を用いてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を交えて本発明を詳細に説明するが、以下に示す実施例のみに本発明は限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0069】
[樹脂ペレットの作製]
<樹脂ペレット1>
熱可塑性樹脂としてポリフェニレンサルファイド(トレリナT1881、東レ株式会社製、Tg:85℃)100部と、導電剤としてカーボンブラック(Monarch 880、キャボット社製)14部と、をヘンシェルミキサー(日本コークス製 FM10C)を用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出溶融混練機(L/D60(パーカーコーポレーション社製))により360℃で溶融混練し、φ5の孔より紐状に押出し、水槽中に入れて冷却固化後切断し、樹脂ペレット1を得た。
【0070】
<樹脂ペレット2>
熱可塑性樹脂としてポリエーテルイミド(Ultem 1000V、SABICイノベーティブプラスチックス社製、Tg:215℃)100部と、導電剤としてカーボンブラック(Monarch 880、キャボット社製)18部と、をヘンシェルミキサー(日本コークス製 FM10C)を用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出溶融混練機(L/D60(パーカーコーポレーション社製))により360℃で溶融混練し、φ5の孔より紐状に押出し、水槽中に入れて冷却固化後切断し、樹脂ペレット2を得た。
【0071】
[管状体の製造]
<無端ベルト1〜無端ベルト10(管状体)の製造>
表1に示す樹脂ペレット(上記樹脂ペレットの作製により得られた樹脂ペレット)を、表1に示す押出温度に設定した一軸溶融押出機(溶融押出装置、三葉製作所社製、型番:E−8001、L/D24)に投入し、溶融しながら環状ダイ(口金)とニップルの間隙(出口孔)から円筒状に押出した。押出された円筒状フィルムを引きとりながらフィルムの円筒形状と径を固定化するために、接触開始領域及び接触終了領域の温度を表1に示すように設定した一体型の冷却装置(サイジングダイ)へ円筒状フィルム内周面を接触させて冷却後、目的とする幅に切断し、φ160(内径160mm)、長さ232mm、膜厚100μmの無端ベルト1〜10を得た。
なお、用いた一体型の冷却装置は、外径160mmの円筒状の冷却部材からなるものであり、接触開始領域から接触終了領域までの長さ(冷却装置の長さ)は表1に示す通りである。
【0072】
<無端ベルト11(管状体)の製造>
上記一体型の冷却装置の代わりに、分割型の冷却装置を用いた以外は、無端ベルト2と同様にして、無端ベルト11を得た。
なお、用いた分割型の冷却装置は、2つの冷却部材で構成されており、いずれの冷却部材も外径160mm、長さ25mmの円筒状であり、設置間隔は110mmである。すなわち、上記分割型の冷却装置における接触開始領域から接触終了領域までの長さ(冷却装置の長さ)は160mmである。
【0073】
[管状体の評価]
<うねり(Wmax)の測定>
表面粗さ計を用い、測定長さ50mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.6mm/秒で測定した。前記測定を、無端ベルトの幅方向に3か所行い、その平均値をうねり(Wmax)とした。結果を表1に示す。
【0074】
うねり(Wmax)の評価基準は以下の通りである。
G1:うねりが0.1μm以下
G2:うねりが0.1μmより大きく0.2μm以下
G3:うねりが0.2μmより大きい
【0075】
<二軸で張架時の軸方向真直度の測定>
外径φ28の金属ロール二本を、得られた無端ベルト内に入れ、片側の金属ロールを固定し、張力が偏らないように注意しながら残りの片側を39.2Nの張力で支持する。
二本の金属ロール間の中央部分におけるベルト表面(外周面)の位置を、レーザ変位計を用いて軸方向に測定し、最大値と最小値との差を求めた。この測定をベルトの周方向に8箇所行い、前記差の最大値を二軸で張架時の軸方向真直度とした。結果を表1に示す。
【0076】
二軸で張架時の軸方向真直度の評価基準は以下の通りである。
G1:二軸で張架時の軸方向真直度が1.0mm以下
G2:二軸で張架時の軸方向真直度が1.0mmより大きく2.0mm以下
G3:二軸で張架時の軸方向真直度が2.0mmより大きい
【0077】
<転写性の評価>
得られた無端ベルトを画像形成装置(富士ゼロックス社製のDocuPrint CP200W)の中間転写ベルトとして組み込み、温度22℃湿度55%RHの環境下においてハーフトーン画像(マゼンタ40%をのせた画像)をA4縦用紙で3枚出力し、目視により下記評価基準で転写性の判定を行った。結果を表1に示す。
【0078】
−評価基準−
G1:画像に濃度ムラなし
G2:画像に軽い濃度ムラあり
G3:画像に濃度ムラあり
G4:画像抜けあり
【0079】
<クリーニング性の評価>
得られた無端ベルトを画像形成装置(富士ゼロックス社製のDocuPrint CP200W)の中間転写ベルトとして組み込み、温度22℃湿度55%RHの環境下において低濃度画像(マゼンタ5%画像)でA4縦用紙を連続1000枚出力後に、A4縦用紙の前半部分のみにハーフトーン画像(マゼンタ40%をのせた画像)を3枚出力してその3枚のA4縦用紙の後半部分にトナー汚れがあるかどうかを目視により確認した。
また、トナー汚れの無い場合については、無端ベルト表面を観察し、無端ベルト表面にトナーが付着しているかどうかも観察した。結果を表1に示す。
【0080】
−評価基準−
G1:記録媒体にトナー汚れもなく、無端ベルト表面のトナー付着もない
G2:記録媒体にトナー汚れはないが、無端ベルト表面にトナー付着あり
G3:記録媒体に微少なトナー汚れあり
G4:記録媒体にひどいトナー汚れあり
【0081】
【表1】
【0082】
上記表1の結果より、実施例では比較例に比べ、うねり及び二軸で張架時の軸方向真直度の値が低く、平面性の高い無端ベルトが得られていることがわかった。