(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベースフィルムの一方の面に、離型層と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層と、接着層とをこの順序で備え、前記ベースフィルムのもう一方の面に、凹凸形成層が設けられているインモールド転写箔において、前記凹凸形成層が紫外線硬化性樹脂からなり、前記ハードコート層と前記凹凸形成層との間に紫外線遮断層があることを特徴とするインモールド転写箔。
前記紫外線遮断層は、水酸基及び紫外線吸収性の官能基を有するアクリルポリマーとイソシアネート化合物との硬化物であることを特徴とする請求項3または4に記載のインモールド転写箔。
請求項1乃至6に記載のインモールド転写箔を製造するための製造方法であって、前記凹凸形成層を架橋硬化させるための紫外線照射を、前記ベースフィルムの凹凸形成層を形成する面側から行なうことを特徴とするインモールド転写箔の製造方法。
請求項1乃至6に記載のインモールド転写箔を用いて、インモールド射出成形法で製造された加飾成形品の表面に紫外線を照射して、前記ハードコート層を完全硬化させることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【背景技術】
【0002】
インモールド転写箔を用いた成形品は、日用品や生活用品などの機器本体、食品や各種物品の容器類、電子機器や事務用品などの筐体類などに用いられる。
【0003】
インモールド転写箔とは、基材となるベースフィルム上に、たとえば、離型層、印刷層、接着層を形成したプラスチック加飾成形用の転写箔である。インモールド成形は、一対の射出成形用金型間に該転写箔を供給し、該射出成形用金型によって形成されるキャビティに加熱加圧した成形樹脂を充填後、ベースフィルム及び離型層を剥離して、成形樹脂に印刷層を転写して装飾を行う成形方法である。
【0004】
表面強度の高い成形品を得るためのインモールド転写箔としては、離型層の表面上に紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を形成し、さらにその上に印刷層、接着層などを形成したものがある。この場合、加飾成形前のインモールド転写箔に紫外線を照射しハードコート層を硬化させてしまうと、成形性が損なわれることから、加飾成形後に成形品に紫外線を照射し、ハードコート層を硬化させることが望ましい。
【0005】
加飾印刷層としては、従来のインモールド転写箔は、文字や絵柄等をベースフィルム上に平面的に印刷しただけの構造であるため、成形品表面の立体感が乏しいという問題があった。成形品表面に立体感を持たせる方法として、成形時にキャビティを構成する一対の射出成形用金型の内側のベースフィルムが対接する側に、予め凹凸を設けておく方法がある。しかし、このような凹凸形成方法では、1つの射出成形用金型に対して、1つの凹凸模様にしか対応できず、多様な凹凸模様に対応するには、多数の射出成形用金型を用意する必要があるため、コストが高くなるといった問題が生じる。また、インモールド転写箔の供給位置によって凹凸模様位置が決まるので、インモールド転写箔の絵柄と凹凸模様を対応させることが難しい。
【0006】
そこで、成形品表面に凹凸を形成する方法として、ベースフィルムの一方の面に、離型層、印刷層、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層を備えると共に、上記ベースフィルムのもう一方の面に、印刷による凹凸形成層を設けるといった方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この凹凸形成層を熱硬化性樹脂により形成し、転写層としては紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層を有するインモールド用転写箔も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
ところで、工業製品は長期にわたる使用や、過酷な環境での使用が予想されるため、工業製品の加飾に用いるインモールド転写箔としては転写後の成形品の表面強度が高いことが求められる。そこで、離型層の上にハードコート層を形成し、さらにその上に印刷層、接着層などを形成したインモールド転写箔を、工業製品の加飾に用いることが望ましい。しかし、インモールド転写箔で用いられるハードコート層の多くは紫外線硬化性樹脂から形成されており、ベースフィルムの離型層とは反対の面に凹凸形成層を設ける際に、該凹凸形成層の樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いてしまうと、凹凸形成層を硬化させるために加飾成形前にインモールド転写箔に紫外線を照射しなければならなくなる。その際、紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層自体も硬化させてしまうため、インモールド転写箔の成形性が損なわれ、クラックなどの不良品が発生しやすいといった問題が生じる。
また、特許文献2のように凹凸形成層に熱硬化性樹脂を使用する場合、硬化時の熱による凹凸形状の変形や、硬化に数時間から数日かかることで、硬化時の熱及び経時で形状が変形するといった問題があった。また、熱硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂に比べて無溶剤で使用できるものが少なく、溶剤で希釈して使用するため、厚盛が困難であり、立体感が乏しいといった問題があった。
一方、予め凹凸形成層を設けておいたベースフィルムに対して、離型層、ハードコート層、さらにその上に印刷層、接着層などを順に形成する方法もあるが、凹凸形成層の凹凸によってシワや印刷不良が発生してしまうため、インモールド転写箔を製造すること自体が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、成形品表面に凹凸を形成しつつ、且つ、高い表面強度を有する成形品を提供することのできるインモールド転写箔、およびこれを用いた成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を達成するために、以下の様な手段を講じる。
第1の発明は、ベースフィルムの一方の面に、離型層と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層と、接着層とをこの順序で備え、前記ベースフィルムのもう一方の面に、凹凸形成層が設けられているインモールド転写箔において、前記凹凸形成層が紫外線硬化性樹脂からなり、前記ハードコート層と前記凹凸形成層との間に紫外線遮断層があることを特徴とするインモールド転写箔である。
第2の発明は、前記ベースフィルムが紫外線遮断層であることを特徴とする請求項1に記載のインモールド転写箔である。
第3の発明は、前記紫外線遮断層が、前記ベースフィルムと前記凹凸形成層との間にあることを特徴とする請求項1に記載のインモールド転写箔である。
第4の発明は、前記紫外線遮断層が、前記ベースフィルムと前記離型層との間にあることを特徴とする請求項1に記載のインモールド転写箔である。
第5の発明は、前記紫外線遮断層は、水酸基及び紫外線吸収性の官能基を有するアクリルポリマーとイソシアネート化合物との硬化物であることを特徴とする請求項3または4に記載のインモールド転写箔である。
第6の発明は、前記ハードコート層と前記接着層との間に、所定の絵柄パターンを有する印刷層があることを特徴とする請求項1乃至5に記載のインモールド転写箔である。
第7の発明は、請求項1乃至6に記載のインモールド転写箔を製造するための製造方法であって、前記凹凸形成層を架橋硬化させるための紫外線照射を、前記ベースフィルムの凹凸形成層を形成する面側から行なうことを特徴とするインモールド転写箔の製造方法である。
第8の発明は、請求項1乃至6に記載のインモールド転写箔を用いて、インモールド射出成形法で製造されてなることを特徴とする加飾成形品である。
第9の発明は、請求項1乃至6に記載のインモールド転写箔を用いて、インモールド射出成形法で製造された加飾成形品の表面に紫外線を照射して、前記ハードコート層を完全硬化させることを特徴とする加飾成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の転写箔によれば、紫外線硬化性樹脂からなる凹凸形成層を形成する際に照射する紫外線が、紫外線遮断層によって遮断されるため、ハードコート層の架橋硬化を進行させることがない。従って、優れた成形性(耐クラック性など)を保持することができるとともに、転写時において、凹凸形成層を構成する樹脂の厚みにより、その凹凸パターンに従った凹凸形状を成形品の表面に形成することができる。
また、本発明の転写箔によれば、射出成形用金型の表面に凹凸形状を付与することなく、成形品表面に凹凸形状を形成することができるため、種々の凹凸パターンを有する金型を作製する必要がなく経済的である。
さらに、紫外線硬化性樹脂からなる凹凸形成層を設けた基材の反対面に、転写層として紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層を架橋硬化させることなく設けることができるので、優れた成形性を有するだけでなく、転写後に成形品表面に紫外線を照射することで高い表面強度を付与し、かつ、立体感に優れた成形品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
インモールド射出成形法とは、(1)インモールド転写箔を準備する工程、(2)該インモールド転写箔を射出成形用金型内へ挿入する工程、(3)該射出成形用金型へ樹脂を射出し密着させることで、該樹脂の表面にインモールド転写箔の転写層を転写する工程、(4)冷却後、該射出成形用金型を開放し、ベースフィルム及び離型層を剥離して成形品を取り出す工程、の4つの工程からなる射出成形法である。なお、本発明において、紫外線とUVは同じ意味である。
【0014】
本発明のインモールド転写箔について、代表的な3つの形態に分類して説明する。
まず、第一形態について説明する。
図1に示した第一形態は、請求項2に代表される形態であり、紫外線遮断能を有するベースフィルム2と、該ベースフィルム2の一方の面に離型層3と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層4と、接着層6とを設け、該ベースフィルム2のもう一方の面に紫外線硬化性樹脂からなる凹凸形成層1を備える構成である。なお、ハードコート層4と接着層6の間には、アンカー層や色インキによる加飾層、金属蒸着層などが形成されていても良く、
図1には印刷層5が形成されている場合を図示してある。
【0015】
紫外線遮断能を有するベースフィルム2としては、紫外線遮断能を有し、製造および成形工程で必要な耐熱性、機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用でき、紫外線遮断能を有する材料と種々のポリマーとの混合又は合成した材料によって、紫外線遮断能を有するベースフィルム2が作製可能である。紫外線遮断能とは、光の波長として200〜380nmの範囲の光を吸収若しくは反射することで、紫外線の透過を遮断若しくは減少させる性能である。
紫外線遮断能の目安としては、i線(波長365nm)の透過率が10%未満であることが望ましい。なぜなら、紫外線硬化性樹脂により凹凸形成する際には、凹凸形成層に対して500〜1000mJ/cm
2の光量の紫外線を照射する必要があり、この時、形成されているハードコート層に対して、射出成形前に凡そ100mJ/cm
2以上の紫外線が照射されてしまうと、架橋反応の進行により射出成形時の延伸に追従できず、ハードコート層にクラックが発生してしまうからである。
紫外線遮断能を有する材料としては、アルミニウムに代表される金属フィラーや酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セシウムなどの金属酸化物、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤などの有機紫外線吸収剤、カーボンブラックなどの有色顔料が使用できる。ここで、凹凸形成層1の凹凸パターンと印刷層5との位置合わせが必要な場合においては、可視光域で透明性を有する金属酸化物や有機系紫外線吸収剤、又はこれらの紫外線吸収剤を共有結合させた樹脂が好適に用いられる。
ベースフィルム2を構成するポリマーとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、などが挙げられるが、耐熱性や機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂がコストの面から見ても好適に用いられる。
【0016】
離型層3の材料としては、必要な離型性を備えた樹脂であれば特に限定されないが、本発明のインモールド用転写箔では、オレフィン変成したアクリルメラミン樹脂やアクリルウレタン樹脂を用いることが好ましい。離型層3の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【0017】
ハードコート層4は、転写後にベースフィルム2を剥離した際に、成形品の最表面層となる層である。ハードコート層4の材料としては、紫外線で硬化する紫外線硬化性樹脂を用いることができ、例えばアクリロイル基またはメタクリロイル基を少なくとも含有する樹脂などが挙げられる。このような紫外線硬化性のハードコート層であれば、紫外線照射によって直ちに成形品表面を硬化させることができ、成形品の生産効率を向上させることができる。また、本発明の転写箔によれば、ハードコート層4が未硬化の状態で成形し、成形後に完全硬化させる工程を踏むため、成形性向上と表面物性向上の両立が可能である。ハードコート層4の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【0018】
印刷層5の材料としては、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いる。印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法などの周知の印刷法を用いることが出来る。この中でも、多色刷りや階調表現が可能で、且つ、大量生産に適しているという点から、グラビア印刷法で印刷するのが好ましい。また、ハードコート層4との密着性を向上させるために、印刷層5とハードコート層4との間にアンカー層(図示せず)を設けても良い。アンカー層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来るが、膜厚や生産性の点からグラビア印刷法で印刷するのが望ましい。
【0019】
接着層6は、成形品の表面に上述の各層を接着するものである。接着層6の材料としては、成形樹脂7に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。接着層6の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来るが、膜厚や生産性の点から、グラビア印刷法で印刷するのが望ましい。なお、印刷層5が成形品に対して充分接着性を有しており、接着層としての効果も備えている場合には、接着層6を設けなくても良い。
【0020】
ベースフィルム2の離型層形成面とは反対側に設けられる凹凸形成層1は、UV厚盛インキによるスクリーン印刷法やUVインクジェット法、あるいは、離型性凹凸フィルムとベースフィルムとで液状紫外線硬化性樹脂を挟み、離型性凹凸フィルム側からUV照射することで該液状紫外線硬化性樹脂を硬化させ、その後離型性凹凸フィルムを剥離することによってベースフィルム上に凹凸形成層を設ける方法、といった各種形成方法により形成可能である。また、凹凸形成層1の材料としてはハードコート層4と同様の紫外線硬化性樹脂を用いることができ、例えばアクリロイル基またはメタクリロイル基を少なくとも含有する樹脂などを使用できる。
これらの紫外線硬化性樹脂を使用した凹凸形成方法によれば、熱硬化性樹脂を使用した場合と比較して凹凸形状再現性が良好となり、また製造時間の短縮が可能となる。
【0021】
次に、第二形態について説明する。
図2に示した第二形態は、請求項3に代表される形態であり、ベースフィルム9と、該ベースフィルム9の一方の面に離型層3と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層4と、接着層6とを備え、該ベースフィルム9のもう一方の面に、紫外線遮断層10と、紫外線硬化性樹脂からなる凹凸形成層1を備える構成である。なお、ハードコート層4と接着層6の間には、アンカー層や色インキによる加飾層、金属蒸着層などが形成されていても良く、
図2には印刷層5が形成されている場合を図示してある。
【0022】
ベースフィルム9としては、製造および成形工程で必要な耐熱性、機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用でき、構成するポリマーとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、などが挙げられるが、耐熱性や機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂がコストの面から見ても好適に用いられる。
【0023】
離型層3の材料としては、必要な離型性を備えた樹脂であれば特に限定されないが、本発明のインモールド用転写箔では、オレフィン変成したアクリルメラミン樹脂やアクリルウレタン樹脂を用いることが好ましい。離型層3の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【0024】
ハードコート層4は、転写後にベースフィルム9を剥離した際に、成形品の最表面層となる層である。ハードコート層4の材料としては、紫外線で硬化する紫外線硬化性樹脂を用いることができ、例えばアクリロイル基またはメタクリロイル基を少なくとも含有する樹脂などが挙げられる。このような紫外線硬化性のハードコート層であれば、紫外線照射によって直ちに成形品表面を硬化させることができ、成形品の生産効率を向上させることができる。また、本発明の転写箔によれば、ハードコート層4が未硬化の状態で成形し、成形後に完全硬化させる工程を踏むため、成形性向上と表面物性向上の両立が可能である。ハードコート層4の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【0025】
印刷層5の材料としては、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いる。印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法などの周知の印刷法を用いることが出来る。この中でも、多色刷りや階調表現が可能で、且つ、大量生産に適しているという点から、グラビア印刷法で印刷するのが好ましい。また、ハードコート層4との密着性を向上させるために、印刷層5とハードコート層4との間にアンカー層(図示せず)を設けても良い。アンカー層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来るが、膜厚や生産性の点からグラビア印刷法で印刷するのが望ましい。
【0026】
接着層6は、成形品の表面に上述の各層を接着するものである。接着層6の材料としては、成形樹脂7に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。接着層6の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来るが、膜厚や生産性の点から、グラビア印刷法で印刷するのが望ましい。なお、印刷層5が成形品に対して充分接着性を有しており、接着層としての効果も備えている場合には、接着層6を設けなくても良い。
【0027】
ベースフィルム9の離型層形成面とは反対側に設けられる紫外線遮断層10としては、ベースフィルム9及び凹凸形成層1と密着性を有する材料であって、光の波長として200〜380nmの範囲の光を吸収若しくは反射することで、紫外線の透過を遮断若しくは減少させる性能を持つ材料が使用できる。
このような紫外線遮断能を有する材料としては、アルミニウムに代表される金属フィラーや酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セシウムなどの金属酸化物、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤などの有機紫外線吸収剤、カーボンブラックなどの有色顔料が使用できる。ここで、凹凸形成層1の凹凸パターンと印刷層5との位置合わせが必要な場合においては、可視光域で透明性を有する金属酸化物や有機系紫外線吸収剤、又はこれらの紫外線吸収剤を共有結合させた樹脂が好適に用いられる。
しかし、紫外線吸収剤は一般的に低分子である場合が多く、凹凸形成層1への移行が懸念される。紫外線吸収剤の移行が起こると、凹凸形成時のUV硬化が不十分となり、凹凸形成層1の密着性不良やブロッキング、射出成形時の熱による凹凸形状の変形を引き起こすことがある。
そのため、紫外線遮断層10に使用する樹脂としては、分子内に紫外線吸収性の官能基を有するポリマー(紫外線吸収性ポリマー)を使用することが好ましい。具体的には、ベンゾトリアゾール型アクリル系紫外線吸収ポリマーなどが使用できる。さらに、ベースフィルム9及び凹凸形成層1との密着性の観点から、紫外線遮断層10は、水酸基及び紫外線吸収性の官能基を有するアクリルポリマーとイソシアネート化合物との硬化物とすることが好ましい。
このように、紫外線遮断層10を2液硬化系アクリル樹脂とすることで、射出成形時の熱変形に耐えるだけでなく、凹凸形成層との親和性の高さから密着性が良くなり、更には、イソシアネート化合物は、ベースフィルム表面でも反応して共有結合を形成するため、ベースフィルムとの密着性も確保できる。
ここで、イソシアネート化合物とは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及び、これらのプレポリマーを指す。
紫外線遮断能の目安としては、i線(波長365nm)の透過率が10%未満であることが望ましい。なぜなら、紫外線硬化性樹脂により凹凸形成する際には、凹凸形成層に対して500〜1000mJ/cm2の光量の紫外線を照射する必要があり、この時、形成されているハードコート層に対して、射出成形前に凡そ100mJ/cm2以上の紫外線が照射されてしまうと、架橋反応の進行により射出成形時の延伸に追従できず、ハードコート層にクラックが発生してしまうからである。
【0028】
凹凸形成層1は、UV厚盛インキによるスクリーン印刷法やUVインクジェット法、あるいは、離型性凹凸フィルムとベースフィルムとで液状紫外線硬化性樹脂を挟み、離型性凹凸フィルム側からUV照射することで該液状紫外線硬化性樹脂を硬化させ、その後離型性凹凸フィルムを剥離することによってベースフィルム上に凹凸形成層を設ける方法、といった各種形成方法により形成可能である。また、凹凸形成層1の材料としてはハードコート層4と同様の紫外線硬化性樹脂を用いることができ、例えばアクリロイル基またはメタクリロイル基を少なくとも含有する樹脂などを使用できる。
これらの紫外線硬化性樹脂を使用した凹凸形成方法によれば、熱硬化性樹脂を使用した場合と比較して凹凸形状再現性が良好となり、また製造時間の短縮が可能となる。
【0029】
次に、第三形態について説明する。
図3に示した第三形態は、請求項4に代表される形態であり、ベースフィルム9と、該ベースフィルム9の一方の面に紫外線遮断層11と、離型層3と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層4と、接着層6とを備え、該ベースフィルム9のもう一方の面に紫外線硬化性樹脂からなる凹凸形成層1を備える構成である。なお、ハードコート層4と接着層6の間には、アンカー層や色インキによる加飾層、金属蒸着層などが形成されていても良く、
図3には印刷層5が形成されている場合を図示してある。
【0030】
ベースフィルム9としては、製造および成形工程で必要な耐熱性、機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用でき、構成するポリマーとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、などが挙げられるが、耐熱性や機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂がコストの面から見ても好適に用いられる。
【0031】
紫外線遮断層11としては、ベースフィルム9及び離型層3と密着性を有する材料であって、光の波長として200〜380nmの範囲の光を吸収若しくは反射することで、紫外線の透過を遮断若しくは減少させる性能を持つ材料が使用できる。
このような紫外線遮断能を有する材料としては、アルミニウムに代表される金属フィラーや酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セシウムなどの金属酸化物、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤などの有機紫外線吸収剤、カーボンブラックなどの有色顔料が使用できる。ここで、凹凸形成層1の凹凸パターンと印刷層5との位置合わせが必要な場合においては、可視光域で透明性を有する金属酸化物や有機系紫外線吸収剤、又はこれらの紫外線吸収剤を共有結合させた樹脂が好適に用いられる。
しかし、紫外線吸収剤は一般的に低分子である場合が多く、インモールド用転写箔の製造工程中に紫外線吸収剤が他の層へ移行し、不具合を起こすことがある。例えば、ハードコート層4に移行すると硬化不良となる。また、接着層6まで移行して表面にブリードアウトすることで成形樹脂との密着不良が発生する。また、射出成形時の樹脂温度領域(200℃〜300℃)では液状となってしまうため、ゲート付近での印刷柄流れ(ウォッシュアウト)の原因になる。そのため、紫外線遮断層11に使用する樹脂としては、分子内に紫外線吸収性の官能基を有するポリマー(紫外線吸収性ポリマー)を使用することが好ましい。具体的には、ベンゾトリアゾール型アクリル系紫外線吸収ポリマーなどが使用できる。さらに、ベースフィルム9及び離型層3との密着性の観点から、紫外線遮断層11は、水酸基及び紫外線吸収性の官能基を有するアクリルポリマーとイソシアネート化合物との硬化物とすることが好ましい。
このように、紫外線遮断層11を2液硬化系アクリル樹脂とすることで、射出成形時の熱変形に耐えるだけでなく、離型層3(アクリル系樹脂)との親和性の高さから密着性が良くなり、更には、イソシアネート化合物は、ベースフィルム表面及び、離型層の水酸基と反応して共有結合を形成するため、各層との密着性も確保できる。
ここで、イソシアネート化合物とは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及び、これらのプレポリマーを指す。
紫外線遮断能の目安としては、i線(波長365nm)の透過率が10%未満であることが望ましい。なぜなら、紫外線硬化性樹脂により凹凸形成する際には、凹凸形成層に対して500〜1000mJ/cm2の積算光量の紫外線を照射する必要があり、この時、形成されているハードコート層に対して、射出成形前に凡そ100mJ/cm2以上の紫外線が照射されてしまうと、架橋反応の進行により射出成形時の延伸に追従できず、ハードコート層にクラックが発生してしまうからである。
【0032】
離型層3の材料としては、必要な離型性を備えた樹脂であれば特に限定されないが、本発明のインモールド用転写箔では、オレフィン変成したアクリルメラミン樹脂やアクリルウレタン樹脂を用いることが好ましい。離型層3の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【0033】
ハードコート層4は、転写後にベースフィルム9を剥離した際に、成形品の最表面層となる層である。ハードコート層4の材料としては、紫外線で硬化する紫外線硬化性樹脂を用いることができ、例えばアクリロイル基またはメタクリロイル基を少なくとも含有する樹脂などが挙げられる。このような紫外線硬化性のハードコート層であれば、紫外線照射によって直ちに成形品表面を硬化させることができ、成形品の生産効率を向上させることができる。また、本発明の転写箔によれば、ハードコート層4が未硬化の状態で成形し、成形後に完全硬化させる工程を踏むため、成形性向上と表面物性向上の両立が可能である。ハードコート層4の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【0034】
印刷層5の材料としては、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いる。印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法などの周知の印刷法を用いることが出来る。この中でも、多色刷りや階調表現が可能で、且つ、大量生産に適しているという点から、グラビア印刷法で印刷するのが好ましい。また、ハードコート層4との密着性を向上させるために、印刷層5とハードコート層4との間にアンカー層(図示せず)を設けても良い。アンカー層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来るが、膜厚や生産性の点からグラビア印刷法で印刷するのが望ましい。
【0035】
接着層6は、成形品の表面に上述の各層を接着するものである。接着層6の材料としては、成形樹脂7に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。接着層6の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来るが、膜厚や生産性の点から、グラビア印刷法で印刷するのが望ましい。なお、印刷層5が成形品に対して充分接着性を有しており、接着層としての効果も備えている場合には、接着層6を設けなくても良い。
【0036】
ベースフィルム9の離型層形成面とは反対側に設けられる凹凸形成層1は、UV厚盛インキによるスクリーン印刷法やUVインクジェット法、あるいは、離型性凹凸フィルムとベースフィルム9とで液状紫外線硬化性樹脂を挟み、離型性凹凸フィルム側からUV照射することで該液状紫外線硬化性樹脂を硬化させ、その後離型性凹凸フィルムを剥離することによってベースフィルム9上に凹凸形成層を設ける方法、といった各種形成方法により形成可能である。また、凹凸形成層1の材料としてはハードコート層4と同様の紫外線硬化性樹脂を用いることができ、例えばアクリロイル基またはメタクリロイル基を少なくとも含有する樹脂などを使用できる。
これらの紫外線硬化性樹脂を使用した凹凸形成方法によれば、熱硬化性樹脂を使用した場合と比較して凹凸形状再現性が良好となり、また製造時間の短縮が可能となる。
【0037】
各層を上述のように積層して、本発明に係るインモールド転写箔を準備する。これらのインモールド転写箔を用いて、インモールド射出成形することにより、表面に凹凸形状を有する成形品を製造することができる。また、第一形態から第三形態までの各実施形態においては、ハードコート層と接着層との間に、所定の絵柄パターンを有する印刷層がある場合を示したが、印刷層の他に、アルミニウム、スズ、インジウム、クロムなどの金属蒸着層や、酸化チタン、硫化亜鉛などの透明反射層、多層反射膜、又は熱圧エンボスなどによって設けられるホログラムなどのエンボス層があってもよい。
【0038】
次に、インモールド射出成形の工程について、第一形態のインモールド転写箔を用いた例で説明する。
インモールド射出成形は、該インモールド転写箔を射出成形用金型8内へ挿入し、該インモールド転写箔の印刷層5側から該射出成形用金型8のキャビティ内へ成形樹脂7を射出成形することで、該成形樹脂7の表面にインモールド転写箔の転写層を転写し、冷却後、射出成形用金型8を開放し、インモールド転写箔のベースフィルム2及び離型層3を剥離して成形品を取り出すという公知の順序で行なうことが出来る。
射出成形用金型8のキャビティ内へ成形樹脂7を射出した際、金型内に挿入されたインモールド転写箔に圧力がかかることで、該インモールド転写箔に設けられた凹凸形成層1の形状に対応した変形がベースフィルムおよび転写層に生じる(
図4参照)。その結果、金型を開放して成形品を取り出した際に、成形品の加飾層側表面に凹凸形成層1のパターンに対応した凹凸形状が付与されることになる(
図5参照)。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
<実施例1>
紫外線遮断能を有するベースフィルムとして、紫外線吸収性を有するポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(帝人デュポンフィルム製HB)を用い、ベースフィルムの上にメラミン樹脂系離型層、紫外線硬化性のアクリル樹脂系ハードコート層を形成した後、印刷層としてウレタン系インキ、接着層としてアクリル系樹脂を用いてグラビア印刷法にて各層を形成した。
次に、ベースフィルムの離型層形成面とは反対側に、凹凸形成層として、帝国インキ製紫外線硬化性樹脂(UVFIXスクリーンインキ)を使用して、スクリーン印刷により凹凸を形成した。その後、凹凸形成層を形成した面側から紫外線を照射(高圧水銀灯 積算光量800mJ/cm2)して凹凸形成層を架橋硬化し、本発明のインモールド転写箔を得た。
このインモールド転写箔を射出成形用金型内に挿入し、型締めしてPC(ポリカーボネート)/ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂を用いて射出成形した。冷却後、射出成形用金型を開放し、該インモールド転写箔のベースフィルムを離型層とともに成形品から剥離した後、成形品表面に対して、高圧水銀灯を用いて積算光量1000mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を架橋硬化させた。これにより、成形品表面に凹凸を形成しつつ、高い表面強度を有する成形品を得た。
【0041】
<実施例2>
ベースフィルムとしてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、実施例1と同様にして、ベースフィルム上に離型層、ハードコート層、印刷層、接着層を形成した。
次に、ベースフィルムの離型層形成面とは反対側に、紫外線遮断層として、2液硬化型紫外線吸収ポリマー(新中村化学製バナレジンUVA−55MHB)、硬化剤として日本ポリウレタン製コロネートLを使用して、紫外線遮断層を形成した。
次に、この紫外線遮断層上に凹凸形成層として、帝国インキ製紫外線硬化性樹脂(UVFIXスクリーンインキ)を使用して、スクリーン印刷により凹凸を形成した。その後、凹凸形成層を形成した面側から紫外線を照射(高圧水銀灯 積算光量800mJ/cm2)して凹凸形成層を架橋硬化し、本発明のインモールド転写箔を得た。
このインモールド転写箔を射出成形用金型内に挿入し、型締めしてPC/ABS樹脂を用いて射出成形した。冷却後、射出成形用金型を開放し、該インモールド転写箔のベースフィルムを離型層とともに成形品から剥離した後、成形品表面に対して、高圧水銀灯を用いて積算光量1000mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を架橋硬化させた。これにより、成形品表面に凹凸を形成しつつ、高い表面強度を有する成形品を得た。
【0042】
<実施例3>
ベースフィルムとしてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、ベースフィルム上に、紫外線遮断層、メラミン樹脂系離型層、紫外線硬化性のアクリル樹脂系ハードコート層を形成した。ここで、紫外線遮断層としては、2液硬化型紫外線吸収ポリマー(新中村化学製バナレジンUVA−55MHB)、硬化剤として日本ポリウレタン製コロネートLを使用した。離型層、ハードコート層については、実施例1と同様にして形成した。また、この後、印刷層、接着層を実施例1と同様にグラビア印刷法にて形成した。
次に、ベースフィルムの離型層形成面とは反対側に、凹凸形成層として、UVインクジェット法を使用して凹凸を形成した。なお、使用したUVインクジェット装置の紫外線の光源はLEDであり、凹凸形成層を形成した面側から紫外線を照射して凹凸形成層を架橋硬化させた。このようにして、本発明のインモールド転写箔を得た。
このインモールド転写箔を射出成形用金型内に挿入し、型締めしてPC/ABS樹脂を用いて射出成形した。冷却後、射出成形用金型を開放し、該インモールド転写箔のベースフィルムを離型層とともに成形品から剥離した後、成形品表面に対して、高圧水銀灯を用いて積算光量1000mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を架橋硬化させた。これにより、成形品表面に凹凸を形成しつつ、高い表面強度を有する成形品を得た。
【0043】
<比較例1>
ベースフィルムとしてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東レ製50T60)を用い、ベースフィルム上にメラミン樹脂系離型層、紫外線硬化性のアクリル樹脂系ハードコート層を形成した後、印刷層としてウレタン系インキ、接着層としてアクリル系樹脂を用いてグラビア印刷法にて各層を形成した。
次に、ベースフィルムの離型層形成面とは反対側に、実施例1と同様にして凹凸形成層を形成し、比較用のインモールド転写箔を得た。
このインモールド転写箔を用いて、実施例1〜3と同様に射出成形、および成形品への紫外線の照射を行ない、比較用の成形品を得た。
この成形品の外観を検査したところ、実施例1〜3では観察されなかった成形品コーナー部のクラックが大きく発生していた。また、成形品の端部では部分的に転写できていない箇所があり、凹凸の転写性も悪いものであった。