特許第6206075号(P6206075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206075
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】熱電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/32 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 35/16 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 35/08 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 35/10 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L35/32 A
   H01L35/16
   H01L35/08
   H01L35/10
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-215679(P2013-215679)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2015-79839(P2015-79839A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176876
【弁理士】
【氏名又は名称】各務 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】尾上 勝彦
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−101086(JP,A)
【文献】 特開2009−206113(JP,A)
【文献】 特開2003−031859(JP,A)
【文献】 特開2004−343146(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3082678(JP,U)
【文献】 特開2011−049501(JP,A)
【文献】 特開2009−141079(JP,A)
【文献】 特開2007−317865(JP,A)
【文献】 特開2004−111631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/00−37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配設される一対の基板と、
前記一対の基板の対向面に形成される複数の配線と、
対向する前記複数の配線間に架設され、電気的に直列接続される複数の半導体素子と、
前記半導体素子を外部に電気的接続する一対の電極と
を備える熱電モジュールであって、
前記一対の電極が、それぞれ前記一対の基板のうちの一方の基板の対向面側に垂設されるポスト電極からなり、それぞれ平面視で他方の基板の投影面内に配設され、前記ポスト電極の側面にリード線が接続されている又はワイヤーボンドされていることを特徴とする熱電モジュール。
【請求項2】
前記一対のポスト電極が、前記一対の基板のいずれかの端辺に沿って配設される請求項1に記載の熱電モジュール。
【請求項3】
前記一対の基板が平面視で略同一の大きさで、かつ前記一対の基板における一方の基板の略全体と他方の基板の略全体とが重畳している請求項1又は請求項2に記載の熱電モジュール。
【請求項4】
前記ポスト電極が前記他方の基板と離間して配設されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の熱電モジュール。
【請求項5】
前記ポスト電極と前記他方の基板との間に断熱材を有している請求項1、請求項2又は請求項3に記載の熱電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
対向する2枚の基板の対向面に配線を形成し、この配線にP型半導体素子及びN型半導体素子を交互かつ電気的に接続して得られる熱電モジュールは、2枚の基板間に温度差を与えることでゼーベック効果を発現し、電力を発生させることができる。また、熱電モジュールは、P型半導体素子及びN型半導体素子に電流を流すことでペルチェ効果を発現し、一方の基板から他方の基板に熱を移動させることができる。
【0003】
従来の熱電モジュールを図5に示す。図5の熱電モジュール11は、対向して配設される下基板12及び上基板13と、複数のP型半導体素子15a及びN型半導体素子15bを含む半導体素子15と、下基板12及び上基板13上に形成され、複数の半導体素子15を電気的に直列接続する複数の配線電極14とを備えている。また、下基板12には、直列接続された複数の半導体素子15を外部の電気回路の端子に電気的接続する一対の電極16が設けられている。
【0004】
このような熱電モジュール11では、下基板12に設けられた電極16に外部の電気回路の端子が接続できるように、電極16が平面視で上基板13の投影面外に配設されている。このため、熱電モジュール11において下基板12を上基板13よりも大きくする必要があり、熱電モジュール11の平面視での面積に対する半導体素子15を配設できる面積(以下、この面積を熱電変換有効面積ということがある)の比率(以下、この比率を熱電変換有効面積率ということがある)が低くなる。このことにより、熱電モジュール11を用いゼーベック効果によって発電する場合には、熱電モジュール11の面積当たりの発電効率が低くなり、ペルチェ効果によって吸熱する場合には熱電モジュール11の面積当たりの吸熱効率が低くなるという不都合を有する。
【0005】
また、図6に示すように、下基板22と上基板23とを略同一の大きさとした熱電モジュール21が知られている(特開平6−151980号公報参照)。このような熱電モジュール21においては、電極26を配設した箇所を除いた領域に半導体素子25及び配線電極24が配設可能であるため熱電変換有効面積率が高くなる。しかしながら、下基板22と上基板23との間において電極26に外部の電気回路の端子を接続する作業が必要となるため、生産性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−151980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、半導体素子の配設効率を高めることができ、かつ電極と電気回路の端子との接続が容易な熱電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る熱電モジュールは、対向配設される一対の基板と、前記一対の基板の対向面に形成される複数の配線と、対向する前記複数の配線間に架設され、電気的に直列接続される複数の半導体素子と、
前記半導体素子を外部に電気的接続する一対の電極とを備える熱電モジュールであって、前記一対の電極が、それぞれ前記一対の基板のうちの一方の基板の対向面側に垂設されるポスト電極からなり、それぞれ平面視で他方の基板の投影面内に配設されていることを特徴とする。
【0009】
当該熱電モジュールにおいては、一対のポスト電極が前記他方の基板の投影面内に配設されている。つまり、一対の基板の面に無駄なスペースを形成することなく半導体素子の配設数を最大化することができる。従って、当該熱電モジュールは、半導体素子の配設効率を高めることができる。また、当該熱電モジュールは、ポスト電極の側面に電気回路部の端子を接続することができるので、一対の基板に挟まれた空間での端子接続作業が不要となり電気回路の端子と容易に接続することができる。
【0010】
当該熱電モジュールにおいては、前記一対のポスト電極が、前記一対の基板のいずれかの端辺に沿って配設されることが好ましい。これにより、当該熱電モジュールの一方の側面方向から電気回路部の端子を接続することができる。
【0011】
当該熱電モジュールにおいては、前記一対の基板が平面視で略同一の大きさで、かつ前記一対の基板における一方の基板の略全体と他方の基板の略全体とが重畳していることが好ましい。このような構成にすることで、前記一対の基板の平面視での大きさが異なる場合や、平面視で前記一対の基板の一部同士が重畳している場合と比べ、熱電モジュールの平面視での面積が小さくなり、熱電変換有効面積率が高くなる。その結果、当該熱電モジュールの単位面積当たりのゼーベック効果又はペルチェ効果をさらに向上させることができる。
【0012】
当該熱電モジュールにおいては、前記ポスト電極が前記他方の基板と離間して配設されていることが好ましい。このようにポスト電極が前記他方の基板と離間していることにより、ポスト電極を介しての一対の基板間の熱伝導性を小さくすることができる。このことにより、当該熱電モジュールのゼーベック効果又はペルチェ効果をさらに向上させることができる。
【0013】
当該熱電モジュールにおいては、前記ポスト電極と前記他方の基板との間に断熱材を有していることが好ましい。このように当該熱電モジュールがポスト電極と前記他方の基板との間に断熱材を有することによってもポスト電極を介しての一対の基板間の熱伝導性を小さくすることができる。このことにより、当該熱電モジュールのゼーベック効果又はペルチェ効果をさらに向上させることができる。
【0014】
「一対のポスト電極がそれぞれ平面視で他方の基板の投影面内に配設されている」とは、一対の基板の一方の基板における他方の基板の投影面に含まれる領域にポスト電極が配設されていることを意味する。また、「一対の基板が平面視で略同一の大きさ」とは、一対の基板が平面視で完全に同一の大きさである場合だけでなく、一対の基板の一方の基板の平面視での投影面積が、他方の基板の平面視での投影面積の90%以上110%以下の場合も含む意である。また、「一対の基板における一方の基板の略全体と他方の基板の略全体とが重畳している」とは、平面視での一方の基板全体と、平面視での他方の基板全体とが重なっている場合だけでなく、平面視での一方の基板の面積の90%以上を占める部分と、平面視での他方の基板の面積の90%以上を占める部分とが重畳している場合も含む意である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る熱電モジュールは、熱電モジュールの平面視での面積に対する半導体素子を配設できる面積の比率を高くすることができる。このことにより、熱電モジュールが発現する単位面積当たりのゼーベック効果、又はペルチェ効果を向上させることができる。また、ポスト電極を使用しているので、熱電モジュールの電極と電気回路の端子との接続が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る熱電モジュールの模式的平面図(a)、模式的側面図(b)、図1(b)のA−A線での模式的断面図(c)及び図1(b)のB−B線での模式的断面図(d)
図2】本発明のその他の実施形態に係る熱電モジュールの模式的平面図
図3】本発明の実施形態に係る熱電ユニットの模式的側面図
図4】本発明の実施例における熱電モジュールの最大吸熱量を測定する装置の概略図
図5】従来の熱電モジュールの模式的平面図(a)、模式的側面図(b)
図6図5とは異なる従来の熱電モジュールの模式的平面図(a)、模式的側面図(b)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[熱電モジュール]
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の熱電モジュールの実施の形態を詳説する。
【0018】
図1の熱電モジュール1は、対向配設される一対の基板である下基板2及び上基板3と、この下基板2及び上基板3の対向面に形成された複数の配線電極4と、対向する複数の配線電極4間に架設され、電気的に直列接続される複数のP型半導体素子5a及びN型半導体素子5b(P型半導体素子5aとN型半導体素子5bとを総称する場合は半導体素子5という)と、これら複数の半導体素子5を外部に電気的接続する一対の電極部6とを備える。電極部6は、膜電極6aと、下基板2の対向面側に垂設されるポスト電極6bとから構成されており、一対のポスト電極6bと少なくとも一個の前記半導体素子5とが下基板2のいずれか一つの端辺に沿って配設されている。また、一対のポスト電極6bの全体が、平面視で、上基板3の下基板2における投影面内に含まれている。このポスト電極6bの全体が投影面内に含まれているとは、ポスト電極6bの平面視での投影面積の99%以上の部分が上基板3の投影面内に含まれていることを意味する。以下、この熱電モジュール1の構造を具体的に説明する。なお、図1(a)において、簡略化のために配線電極4は記載していない。
【0019】
下基板2及び上基板3は、板状体であって平面視で略矩形であり、かつ平面視で略同一の大きさである。この略矩形とは、完全な矩形だけでなく、四つの内角がそれぞれ80度以上100度以下のものも含む意である。また、平面視で下基板2の略全体と上基板3の略全体とが重畳している。なお、図1(a)及び(b)において、見易くするために上基板3の大きさを下基板2よりも若干小さく表している。下基板2及び上基板3は、互いに対向して略平行に配設され、対向する面に配線電極4が付設されている。配線電極4は、図1(c)及び(d)に示すように、長方形状に形成された膜体状の配線である。上基板3に形成される配線電極4及び下基板2に形成される配線電極4は、直方体状に形成され、下基板2及び上基板3間に架設されるP型半導体素子5a及びN型半導体素子5bを交互に直列接続する。1つの配線電極4には、P型半導体素子5aとN型半導体素子5bとが1つずつ接続されている。電極部6は、下基板2の上面に付設され、外部の電気回路の端子と接続される。一対の電極部6は、一方にはP型半導体素子5aのみ、他方にはN型半導体素子5bのみが接続され、熱電モジュール1の端子(プラス極及びマイナス極)を形成している。このように、P型半導体素子5aとN型半導体素子5bとが直列に接続されているので、下基板2及び上基板3間に温度差を与えることでゼーベック効果を発現し、また、一対のポスト電極6b間に電圧を印加することでペルチェ効果を発現できる。
【0020】
下基板2と上基板3との距離(対向面間距離)は特に限定されず、例えば300μm以上2000μm以下とすることができる。
【0021】
下基板2及び上基板3の材質としては、電気的絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、熱伝導率の高いセラミックを用いることが好ましい。このようなセラミックとしては、例えばアルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素等を挙げることができる。
【0022】
配線電極4の材質としては、電気伝導性を有するものであれば特に限定されず、例えば白金、アルミニウム、ニッケル、タングステン、鉄、金、銀、銅、パラジウム、クロム、あるいはこれらの合金等を挙げることができるが、安価で電気伝導性に優れる銅が好ましい。また、半田作業をし易くするために、銅製の配線電極の上にはニッケルや金がメッキされることが好ましい。配線電極の厚さとしては、銅とその上に形成されるニッケルや金メッキを含めて50μm程度にすることが好ましい。
【0023】
P型半導体素子5a及びN型半導体素子5bは、公知の半導体を用いることができ、例えばBiTe系の半導体素子を用いることができる。
【0024】
半導体素子5及び配線電極4の個数は、熱電モジュール1に求められる発電電圧や吸熱量に応じて適宜設計することができる。配線電極4は、例えばメッキ法、ダイレクトボンディング法、ロウ付け法等によって形成することができる。また、配線電極4及び半導体素子5の接続は、特に限定されないが、例えば半田付けによって接続することができる。
【0025】
電極部6は、前述したように膜電極6aとポスト電極6bとから構成されており、ポスト電極6bは、平面視で上基板3の投影面内に配設されている。下基板2は、プラス極側及びマイナス極側の膜電極6aを1つずつ有する。膜電極6aにはP型半導体素子5a又はN型半導体素子5bのどちらか一方と、ポスト電極6bとが接続され、ポスト電極6bは下基板2に対して略垂直に直立している。膜電極6aは、配線電極4と同じ方法で形成することができる。膜電極6aの材質としては特に限定されないが、配線電極4と同時に形成可能なように配線電極4と同じ材質を用いることが好ましい。
【0026】
ポスト電極6bは、外部の電気回路の端子を接続する部位であり、柱状体の電気伝導性を有する部材で形成されている。当該熱電モジュール1は、ポスト電極6bの側面に外部の電気回路の端子を接続することができる。端子の接続に際し、ポスト電極6bの側面が曲面であるよりは平面である方が接続し易いので、ポスト電極6bの平面視での形状は、例えば矩形等の角形状が好ましい。ポスト電極6bは、例えば金属製の円柱又は角柱の芯材にニッケルや金等の導電性材料を例えばメッキにより被覆することで形成される。この芯材に用いる金属としては、膜電極6aと同様のものを用いることができ、電気伝導性及び加工性に優れる銅、ニッケル、又は真鍮が好ましい。また、ポスト電極6bは、平面視で膜電極6a内に配設されていることが接続強度の面から好ましいが、ポスト電極6bの一部が膜電極6a外にはみ出して配設されていてもよい。
【0027】
ポスト電極6bは上基板3と離間して配設されている。このようにポスト電極6bと上基板3とが離間していることにより、ポスト電極6bを介しての上基板3と下基板2との間の熱伝導性を小さくすることができる。このことにより、熱電モジュール1のゼーベック効果又はペルチェ効果が向上する。ポスト電極6bと上基板3との離間距離は小さいほうが好ましい。具体的には、前記離間距離の下限としては、10μmが好ましく、50μmがより好ましい。前記離間距離が前記下限値未満であると、ポスト電極6bと上基板3とが接触し、上基板3と下基板2との間の熱伝導性が大きくなるおそれがある。
【0028】
下基板2の上面からポスト電極6bの上端までの高さは、下基板2の上面から上基板3の下面までの高さ未満である。下基板2の上面からポスト電極6bの上端までの高さは大きいほうが好ましい。この高さが大きいほど外部の電気回路の端子の接続が容易になるからである。
【0029】
一対のポスト電極6bは、図1(a)に示すように、下基板2の一つの端辺に沿って配設されている。そして、この一対のポスト電極6bに挟まれて2個の半導体素子5が配設されている。換言すれば、一対のポスト電極6bと2個の半導体素子5とが、下基板2の一つの端辺に沿って配設されている。この一対のポスト電極6bの全体と2個の半導体素子5とは、平面視で上基板3の投影面内に含まれている。この一対のポスト電極6bは、全ての半導体素子5と共に、図1(c)及び(d)に示す配線電極4によって直列に電気的に接続されている。
【0030】
当該熱電モジュール1においては、下基板2及び上基板3が平面視で略矩形であり、また、一対のポスト電極6b及び半導体素子5が下基板2のいずれか一つの端辺に沿って配設され、かつ上基板3の投影面内に配設され、このポスト電極6bの全体が上基板3の投影面内に含まれている。つまり、下基板2の上面に無駄なスペースを形成することなく半導体素子5の配設数を最大化することができる。従って、当該熱電モジュール1は、半導体素子5の配設効率を高めることができる。
【0031】
また、当該熱電モジュール1は、ポスト電極6bを用いているので、ポスト電極6bの側面に外部の電気回路の端子を容易に接続することができる。そのため、下基板2と上基板3との間において電極に外部の電気回路の端子を接続する作業が必要ないので生産性に優れる。
【0032】
また、当該熱電モジュール1は、一対のポスト電極6bが下基板2の一つの端辺に沿って配設されている。このことにより、ポスト電極6bに接続される外部の電気回路の端子の接続方向を同一にすることができるので、接続が容易になる。
【0033】
さらに、当該熱電モジュール1は、ポスト電極6bの全体が平面視によって上基板3の投影面内に含まれている。このことにより、ポスト電極6bを覆っている上基板3がポスト電極6bの保護の役目をするので、ポスト電極6bの汚染や破損等のおそれが少なくなる。また、ポスト電極6bの全体が平面視で上基板3の投影面内に含まれていない場合に比べて熱電モジュール1の平面視での面積が小さくなるので、半導体素子5の配設効率がより高くなる。
【0034】
さらに、当該熱電モジュール1は、ポスト電極6bに金属を用いているので、ポスト電極6bの熱伝導性が大きい。このことにより、外部の電気回路の端子の半田付け時に短時間で加熱されるので、容易に半田付けすることができる。
【0035】
<その他の実施形態>
本発明の熱電モジュール1は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では、上基板3とポスト電極6bとの間を空隙としたが、上基板3とポスト電極6bとの間に断熱材を有するようにしてもよい。このことにより、上基板3とポスト電極6bとの間の熱伝導性が小さくなるので、熱電モジュール1のゼーベック効果又はペルチェ効果が向上する。また、上基板3とポスト電極6bとの間に断熱材を有することによりポスト電極6bが支持され、ポスト電極6bの強度を高めることができる。前記断熱材としては、特に限定されず、例えばアルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等のセラミックやセラミックファイバーモールド等を用いることができる。なお、当該熱電モジュール1では、熱伝導の面から好ましくはないが、上基板3とポスト電極6bとが接していてもよい。
【0036】
また、前記実施形態においては、ポスト電極6bの材質を金属としたが、例えばカーボン樹脂等の導電性樹脂を用いてもよい。
【0037】
また、前記実施形態においては、ポスト電極6bの全体が平面視で上基板3の投影面内に含まれていたが、平面視でポスト電極6bの一部が上基板3の投影面内に含まれなくてもよい。つまり、平面視でポスト電極6bの一部が上基板3の投影面外に突出しており、外部の電気回路の端子をその投影面外に出ているポスト電極6bの一部の上面、又は側面に接続するようにしてもよい。
【0038】
また、前記実施形態においては、ポスト電極6bを下基板2に対して略垂直に直立するように配設しているが、外部の電気回路の端子を半田付けやワイヤーボンディングによって接続し易いようにポスト電極6bを傾けて配設してもよい。
【0039】
また、前記実施形態においては、下基板及び上基板が平面視で略同一の大きさであるとしたが、例えば図2に示す熱電モジュール31のように、下基板32が上基板33よりも大きくてもよい。この場合でも、ポスト電極36bが上基板33の投影面内に配設されていることにより、ポスト電極36bが上基板33の投影面内に配設されていない場合に比べて、熱電モジュール31の熱電変換有効面積率が高くなる。
【0040】
また、前記実施形態においては、一対のポスト電極6bを下基板2の一つの端辺に沿って配設しているが、一対のポスト電極6bを下基板2の一つの端辺に沿って配設しない熱電モジュールも本発明の意図する範囲内である。
【0041】
また、前記実施形態においては、一対のポスト電極6bの両方を下基板2に配設したが、一対のポスト電極6bの両方を上基板3に配設してもよいし、また一方のポスト電極6bを下基板2に配設し、他方のポスト電極6bを上基板3に配設してもよい。
【0042】
また、前記実施形態においては、下基板2及び上基板3を平面視で略矩形としたが、下基板2及び上基板3は、平面視で多角形、円、楕円、半円等の直線又は曲線を組み合わせた任意の形状としてもよい。
【0043】
[熱電ユニット]
次に、適宜図面を参照しつつ本発明の熱電ユニットの実施の形態を詳説する。
【0044】
図3に示す熱電ユニット7は、図1の熱電モジュール1と、この熱電モジュール1と電気的接続される電気回路部8とを備えている。熱電モジュール1によってペルチェ効果を発現する場合には、電気回路部8には給電回路を有するものが用いられる。また、熱電モジュール1によってゼーベック効果を発現する場合には、電気回路部8には電力を受電する回路を有するものが用いられる。
【0045】
電気回路部8の端子9は、熱電モジュール1のポスト電極6bの側面に接続される。接続方法としては、半田付けによってリード線を接続してもよいし、ワイヤーボンディングによって金ワイヤーを接続してもよい。このとき端子9には、それぞれの接続方法に適した材料を用いればよい。また、端子9を例えばピン形状にし、例えば端子9と電気回路部8との間に取り付けられたバネによってピンの先端がポスト電極6bの側面に付勢され、ポスト電極6bと端子9とが電気的接続されるようにしてもよい。
【0046】
当該熱電ユニット7は、当該熱電モジュール1を備えているので、熱電変換有効面積率が高い。また、ポスト電極6bの側面に電気回路部8の端子9が接続されるため、生産性に優れる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例]
図1に示す熱電モジュール1を用い、ポスト電極6bに後述する測定方法で用いる外部の電気回路を接続し、下記の条件でペルチェ効果を発現した場合の最大吸熱量と、ゼーベック効果を発現した場合の発電電圧とを測定した。なお、図1(a)において、紙面上下方向をY軸方向と呼び、このY軸に直行する左右方向をX軸方向と呼ぶ(後述する図5及び図6において同じ)。また、基板の材料はセラミックであるアルミナを用いた。
(1)下基板2の大きさは、X方向長さを5mmとし、Y方向長さを4mmとした。
(2)上基板3の大きさは、X方向長さを5mmとし、Y方向長さを4mmとした。
(3)配設した半導体素子5の数を18個とした。
【0049】
[比較例1]
図5に示す熱電モジュール11を用い、電極16に後述する測定方法で用いる外部の電気回路を接続し、下記の条件で、ペルチェ効果を発現した場合の最大吸熱量と、ゼーベック効果を発現した場合の発電電圧とを測定した。つまり、比較例1は、実施例1と異なり、上基板13の大きさを下基板12よりも小さくし、電極16が平面視で上基板13の投影面外に配設されている。また、ポスト電極を設けずに、一対の膜状の電極16に後述の測定方法で用いる外部の電気回路に接続した。また、基板の材料はセラミックであるアルミナを用いた。
(1)下基板12の大きさは、X方向長さを5mmとし、Y方向長さを4mmとした。
(2)上基板13の大きさは、X方向長さを4mmとし、Y方向長さを4mmとした。
(3)配設した半導体素子15の数を16個とした。
【0050】
[比較例2]
図6に示す熱電モジュール21を用い、電極26に後述する測定方法で用いる外部の電気回路を接続し、下記の条件で、ペルチェ効果を発現した場合の最大吸熱量と、ゼーベック効果を発現した場合の発電電圧とを測定した。つまり、比較例2は、実施例1と異なり、ポスト電極を設けずに、下基板22と上基板23との間の空間において一対の膜状の電極26に後述の測定方法で用いる外部の電気回路に接続した。また、基板の材料はセラミックであるアルミナを用いた。
(1)下基板22の大きさは、X方向長さを5mmとし、Y方向長さを4mmとした。
(2)上基板23の大きさは、X方向長さを5mmとし、Y方向長さを4mmとした。
(3)配設した半導体素子25の数を18個とした。
【0051】
[比較例3]
比較例1の熱電モジュール1の電極16をポスト電極とし、他の構成は比較例1と同様にした。また、基板の材料はセラミックであるアルミナを用いた。
【0052】
比較例1の熱電モジュールでの最大吸熱量及び発電電圧を1とした場合の、実施例、比較例2、及び比較例3の熱電モジュールにおける最大吸熱量及び発電電圧の比率を表1に示す。なお、上基板と下基板との距離は、1.2mm、1.0mm及び0.8mmの3条件とした。また、端子の取り付けは半田付けで行ったが、比較例3での基板間距離が1.0mm及び0.8mmの条件では半田付けに手間を要し、実際の製造は不可と判断した。
ここでいう基板間距離とは、一対のセラミックスからなるアルミナ基板が対向する面の間の距離をさす。

【表1】
【0053】
最大吸熱量の測定方法を、図4を参照して説明する。最大吸熱量を測定する被測定熱電モジュール101を2枚の銅板E1及びE2によって挟み、排熱用ヒートシンクE3の上に載置された温調用熱電モジュールE4の上に載せる。被測定熱電モジュール101の上基板に接している銅板E1にはT1(吸熱側温度)測定用熱電対E5を備え、銅板E1の上にはヒーターE6を載置する。また、被測定熱電モジュール101の下基板に接している銅板E2にはT2(放熱側温度)測定用熱電対E7を備える。このような構成の試験装置において、温調用熱電モジュールE4を用いてT2測定用熱電対E7の指示値T2を27℃に制御する。そして、ヒーターE6に電力を投入して発熱させると共に、T1測定用熱電対E5の指示値T1とT2測定用熱電対E7の指示値T2とがT1=T2となるよう被測定熱電モジュール101に電流を流す。続いて、ヒーターE6の出力を徐々に増加させながら、被測定熱電モジュール101に流す電流を増加させ、T1=T2(=27℃)を維持するように調節する。そして、被測定熱電モジュール101に流す電流を増加させてもT1=T2とならなくなったときのヒーターE6の出力を、被測定熱電モジュール101の最大吸熱量とする。
【0054】
また、発電電圧は、各熱電モジュールの電極に電圧計の端子を接続し、上基板温度を25℃、下基板温度を50℃としたときの発電電圧を測定した。
【0055】
<評価>
実施例の熱電モジュールは、比較例1及び3の熱電モジュールに比べ最大吸熱量比率及び発電電圧比率に優れた。また、実施例の熱電モジュールは、比較例2のように外部の電気回路の端子との接続が困難になることもなく、端子との接続性に優れた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の熱電モジュールは、熱電モジュールの平面視での面積に対する半導体素子を配設できる面積の比率を高くすることができ、また電極と電気回路の端子との接続性に優れるので、発電機やクーラーとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1、31 熱電モジュール
2、32 下基板
3、33 上基板
4 配線電極
5、35 半導体素子
5a、35a P型半導体素子
5b、35b N型半導体素子
6、36 電極部
6a、36a 膜電極
6b、36b ポスト電極
7 熱電ユニット
8 電気回路部
9 端子
11、21 熱電モジュール
12、22 下基板
13、23 上基板
14、24 配線電極
15、25 半導体素子
15a、25a P型半導体素子
15b、25b N型半導体素子
16、26 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6