(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
実施の形態に係る画像表示装置として、車両のダッシュボード内に設置して使用されるヘッドアップディスプレイ10を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ10の設置態様を模式的に示す図である。ヘッドアップディスプレイ10は、光学ユニット100と制御装置50とを含む。
図1は、車両の進行方向(
図1における左方向)を基準として左側のダッシュボード内に光学ユニット100を配置して使用する場合を示す図であり、以下の実施の形態は、左ハンドル車における運転者向けにヘッドアップディスプレイ10が配置されている例を示している。なお、右ハンドル車用とするため、車両の進行方向を基準として光学ユニット100の内部構成を左右反転させればよい。以下
図1を参照して、ヘッドアップディスプレイ10の概要を説明する。
【0012】
制御装置50は図示しないCPU(Central Processing Unit)を備え、光学ユニット100に表示させるための画像信号を生成する。制御装置50はまた、図示しない外部入力インタフェースを備えており、ナビゲーション装置やメディア再生装置などの外部装置から出力された画像信号が入力され、その入力された信号に対して所定の処理を行った後、光学ユニット100に出力することもできる。
【0013】
光学ユニット100は、制御装置50が生成した画像信号をもとに、ウィンドシールド610に虚像450として表示させる画像表示光を生成する。このため光学ユニット100は、筐体110の内部に画像投射部210、中間鏡350、中間像形成部360、コールドミラー400、およびコールドミラー放熱部410を備える。
【0014】
画像投射部210には、光源、画像表示素子、及び各種光学レンズなどが収納される。画像投射部210は制御装置50が出力した画像信号をもとに画像表示光を生成して投射する。なお、本実施形態では画像表示素子として反射型液晶表示パネルであるLCOS(Liquid crystal on silicon)を用いる場合を例示する。画像投射部210が投射する画像表示光は、ユーザEに提示するための光であるため、当然ながら可視光を含む。
【0015】
画像投射部210が投射した画像表示光は中間鏡350で反射される。中間鏡350で反射された画像表示光は、中間像形成部360に結像される。中間像形成部360で結像した実像に係る画像表示光は、中間像形成部360を透過し、コールドミラー400に投射される。
【0016】
コールドミラー400は凹面鏡であり、中間像形成部360を透過した画像表示光はコールドミラー400によって拡大されてウィンドシールド610に投射される。この意味で、コールドミラー400は光学ユニット100の投射鏡として機能する。ウィンドシールド610に投射された画像表示光は、虚像提示面となるウィンドシールド610によってユーザに向かう光路へ変更される。運転者であるユーザEは、ウィンドシールド610で反射された画像表示光を虚像450として、ウィンドシールド610よりも視線方向の前方に認識する。
【0017】
なおコールドミラー400は、画像表示光のような可視光は反射するが、可視光よりも波長の長い赤外光は透過する性質を持つ鏡である。コールドミラー400には、画像表示光の反射面に対する裏面に、コールドミラー400を透過した赤外光による熱を放熱するためのコールドミラー放熱部410が配置されている。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態に係る光学ユニット100の内部構成を示す図である。以下、
図2を参照して、光学ユニット100の内部構成を説明する。
【0019】
上述したように、光学ユニット100は、筐体110の内側に画像投射部210、中間鏡350、中間像形成部360、コールドミラー400、およびコールドミラー放熱部410(
図2には不図示)を備える。詳細は後述するが、画像投射部210は、赤色、緑色、または青色の光をそれぞれ発生する3種類の異なる光源を備える。光源はLED(Light Emitting Diode)や半導体レーザー光源を用いて実現できるが、本実施の形態では、光源としてLEDを用いる場合について説明する。
【0020】
光源は使用時に熱を発生する。このため、光学ユニット100は、光源を冷却するためのヒートシンクを備える。光源は3種類あるため、それらの光源を冷やすために、光学ユニット100の筐体110の外側に、赤色の光源と接続するヒートシンク120a、緑色の光源と接続するヒートシンク120b(図示せず)、および青色の光源と接続するヒートシンク120cを備える。
【0021】
筐体110はアルミ製のダイキャストである。ここで、緑色の光源および青色の光源をそれぞれ放熱するためのヒートシンク120bおよびヒートシンク120cはともに、筐体110と一体に構成されている。これに対し、赤色の光源を冷やすためのヒートシンク120aは、ヒートシンク120bおよびヒートシンク120cから空間的に離れた場所に設置されるとともに、筐体110とは分離して外付けされている。このため、赤色の光源が発生する熱は、ヒートパイプ25を介してヒートシンク120aまで運ばれる。
【0022】
次に、
図3および
図4を参照してヘッドアップディスプレイ10の光学系について説明する。
図3は、画像投射部210の内部構成を画像表示光の光路とともに模式的に示す図である。
図4は、中間鏡350、中間像形成部360およびコールドミラー400を介してウィンドシールド610に投射される画像表示光の光路を示す図である。
【0023】
まず、
図3を参照して画像投射部210の内部構成を説明する。画像投射部210は、照明部230a、230b、230c(以下総称して照明部230ともいう)、ダイクロイッククロスプリズム244、反射鏡236、フィールドレンズ237、偏光ビームスプリッタ238、位相差板239、検光子241、及び投射レンズ群242を備える。なお、
図3では第1照明部230a、第3照明部230cの内部構成の記載を省略し、第2照明部230bの内部構成のみを示すが、それぞれの照明部230は、同様の構成を有する。
【0024】
照明部230は、光源231、コリメートレンズ232、UV−IR(UltraViolet-Infrared Ray)カットフィルタ233、偏光子234、フライアイレンズ235を備える。光源231は赤色、緑色、青色のいずれかの色の光を発する発光ダイオードからなる。第1照明部230aは、光源として赤色の光を発する発光ダイオードを有する。第2照明部230bは、光源231として緑色の光を発する発光ダイオードを有する。第3照明部230cは、光源として青色の光を発する発光ダイオードを有する。
【0025】
光源231は、光源取付部243に取り付けられる。光源取付部243は、図示しないヒートシンクと熱的に結合され、光源231の発光に伴い発生する熱を放熱する。光源231が発光した光は、コリメートレンズ232によって平行光に変えられる。UV−IRカットフィルタ233は、コリメートレンズ232を通過した平行光から紫外光及び赤外光を吸収し除去する。偏光子234は、UV−IRカットフィルタ233を通過した光を乱れのないP偏光へと変える。そしてフライアイレンズ235が、偏光子234を通過した光の明るさを均一に整える。
【0026】
それぞれの照明部230のフライアイレンズ235を透過した光は、ダイクロイッククロスプリズム244に異なる向きから入射される。ダイクロイッククロスプリズム244に入射した赤色、緑色、青色の光は、三色が合成された白色光となって反射鏡236へ向かう。反射鏡236は、ダイクロイッククロスプリズム244により合成された白色光の光路を90度変更する。反射鏡236で反射された光は、フィールドレンズ237によって集光される。フィールドレンズ237が集光した光は、P偏光を透過する偏光ビームスプリッタ238及び位相差板239を介して、画像表示素子240に照射される。
【0027】
画像表示素子240は、画素毎に赤色、緑色、及び青色のカラーフィルタを備えている。画像表示素子240に照射された光は、各画素に対応する色となり、画像表示素子240の備える液晶組成物によって変調が施され、S偏光の画像表示光となって偏光ビームスプリッタ238に向けて出射される。出射されたS偏光の光は偏光ビームスプリッタ238で反射され、光路を変えて検光子241を通過した後に投射レンズ群242へ入射される。投射レンズ群242を透過した画像表示光は、画像投射部210を出て中間鏡350に入射する。
【0028】
次に、
図4を参照して中間鏡350から中間像形成部360およびコールドミラー400を介してウィンドシールド610に投射される画像表示光の光路について説明する。画像投射部210の投射レンズ群242から出射された画像表示光の光路は、中間鏡350によってコールドミラー400に向かう光路へ変更される。その途中で、中間鏡350で反射された画像表示光に基づく実像が中間像形成部360で結像する。
【0029】
中間像形成部360は、拡散スクリーン362と、凹レンズ364を有する。拡散スクリーン362は、中間像形成部360を透過する画像表示光に基づく実像を結像させるとともに、コールドミラー400へと向かう画像表示光の配向角ψを制御する。凹レンズ364は、コールドミラー400へと向かう画像表示光の主光線の方向を制御し、中間像形成部360を透過する前後の画像表示光がなす角度θを調整する。
【0030】
中間像形成部360を透過した画像表示光は、コールドミラー400により反射されウィンドシールド610に投射される。ウィンドシールド610に投射された画像表示光は、ウィンドシールド610によってユーザに向かう光路へ変更される。これにより、ユーザは上述したように、ウィンドシールド610を介して画像表示光に基づく虚像を前方に視認することができる。
【0031】
以上の構成とすることで、ユーザは、制御装置50から出力された画像信号に基づく虚像を、ウィンドシールド610を介して現実の風景に重畳して視認することができる。
【0032】
続いて、実施の形態に係る光学ユニット100における放熱について説明する。
【0033】
図5(a)−(b)は、実施の形態に係る画像投射部210の外観を示す図である。具体的に、
図5(a)は、画像投射部210の投射方向に向かって右側から画像投射部210を俯瞰した場合の外観を示す図である。また
図5(b)は、画像投射部210の投射方向に向かって左側から画像投射部210を俯瞰した場合の外観を示す図である。
【0034】
上述したとおり、照明部230として、赤色、緑色、青色のそれぞれの色の光を発する第1照明部230a、第2照明部230b、および第3照明部230cの3つが存在する。
図5(a)には、第1照明部230aにおける光源取付部243と、第2照明部230bにおける光源取付部243とが図示されている。一方、
図5(b)には、第2照明部230bにおける光源取付部243と、第3照明部230cにおける光源取付部243とが図示されている。照明部230が光を照射する際、光源231は発熱する。このため、各光源231が発生した熱を放熱するために、筐体110はヒートシンク120を備える。以下、各光源231を区別するために、第1照明部230aの光源を第1光源231a、第2照明部230bの光源を第2光源231b、第3照明部230cの光源を第3光源231cと呼ぶことがある。
【0035】
一般に、光源231の冷却に使用するヒートシンク120は、大きいほど放熱効果が高い。そこで、第1光源231a、第2光源231b、および第3光源231cを1つの大型のヒートシンクで放熱すると、放熱効率の点で効果が高い。一方で、赤色、緑色、または青色の光をそれぞれ発生する3種類の異なる光源をLEDを用いて実現する場合、赤色の光を発生する光源が、他の2色の光源よりも耐熱温度が低くなる傾向にある。例えば、光源231の光量を増加させるために各光源231への投入電力を増加させると、各光源231の発熱量が増加する。この結果、緑色、青色の光源である第2光源231b、第3光源231cによる発熱の影響により、赤色の光源である第1光源231aの温度が、その耐熱温度に達することも生じうる。
【0036】
そこで実施の形態に係る光学ユニット100は、各光源231を冷却するために、それぞれ専用のヒートシンク120を備える。
【0037】
図6は、実施の形態に係る光学ユニット100の筐体110の底面を外側から観察した場合を示す図である。
図6に示すように、筐体110の外側には、第1照明部230aの光源取付部243を介して第1光源231aに接続されるヒートシンク120aと、第2照明部230bの光源取付部243を介して第2光源231bに接続されるヒートシンク120bと、第3照明部230cの光源取付部243を介して第3光源231cに接続されるヒートシンク120cが設けられている。以下本明細書において、ヒートシンク120a、ヒートシンク120b、およびヒートシンク120cを明確に区別するために、それぞれ第1ヒートシンク120a、第2ヒートシンク120b、および第3ヒートシンク120cと記載する。
【0038】
第2光源231b、第3光源231cによる発熱の影響から第1光源231aを守るために、第1ヒートシンク120aに対する第2ヒートシンク120bの熱的な結合性と、第1ヒートシンク120aに対する第3ヒートシンク120cの熱的な結合性とはともに、第2ヒートシンク120bと第3ヒートシンク120cとの間の熱的な結合性よりも低くなるように構成されている。
【0039】
より具体的には、第1ヒートシンク120aから第2ヒートシンク120bまでの距離Labと、第1ヒートシンク120aから第3ヒートシンク120cまでの距離Lacとはともに、第2ヒートシンク120bから第3ヒートシンク120cまでの距離Lbcよりも長い。第2光源231bが発生させ第2ヒートシンク120bに伝熱した熱は、第1ヒートシンク120aよりも距離的に近い第3ヒートシンク120cに早く伝わる。同様に、第3光源231cが発生させ第3ヒートシンク120cに伝熱した熱も、第1ヒートシンク120aよりも距離的に近い第2ヒートシンク120bに早く伝わる。この結果、第2ヒートシンク120bと第3ヒートシンク120cとの間の熱的な結合性は、第1ヒートシンク120aに対する第2ヒートシンク120bの熱的な結合性や、第1ヒートシンク120aに対する第3ヒートシンク120cの熱的な結合性よりも高くなる。
【0040】
また、各光源231で発生してヒートシンク120に伝熱された熱は、筐体110を介して他のヒートシンク120に伝わる。そこで、第2光源231bが発生した熱を放熱するための第2ヒートシンク120bと、第3光源231cが発生した熱を放熱するための第3ヒートシンク120cとは、筐体110と一体に構成される。これに対し、第1光源231aが発生した熱を放熱するための第1ヒートシンク120aは、筐体110とは分離され、外付けされる。これにより、第2ヒートシンク120bおよび第3ヒートシンク120cが第1ヒートシンク120aと物理的に分離される。ゆえに、第1ヒートシンク120aは、第2ヒートシンク120bおよび第3ヒートシンク120cとの熱的な結合性が低くなる。
【0041】
図7は、第1ヒートシンク120aを取り外した状態で、実施の形態に係る光学ユニット100の筐体110の底面を外側から観察した場合を示す図である。また
図8は、筐体110から取り外した状態の第1ヒートシンク120aを示す図である。
【0042】
図7に示すように、筐体110は第1ヒートシンク120aを外付けする位置に開口部112を有している。また
図8に示すように、第1ヒートシンク120aは、冷却フィン122が存在する表面とは反対側の面である裏面に、上述したヒートパイプ25と接続するための接続部124を備える。接続部124は、第1ヒートシンク120aの裏面から突出するように構成されている。ここで接続部124の断面の大きさは筐体110の開口部112よりも小さく、開口部112に挿入自在となっている。また、接続部124の高さは筐体110の厚さよりも長く、第1ヒートシンク120aを筐体110の外側の表面に非接触の状態で、接続部124の一部を筐体110の内側に突出させることができる。
【0043】
図9は、第1ヒートシンク120aを光学ユニット100の筐体110に取り付けた状態で、筐体110の表側から観察した場合を示す図である。なお、「筐体110を表側から観察する」とは、光学ユニット100を車両に設置したときに、路面に対して鉛直方向上側から筐体110を観察することを意味する。
【0044】
煩雑となることを避けるために
図9において画像投射部210を図示していないが、第1光源231aが発生した熱は、第1照明部230aの光源取付部243を介してヒートパイプ25に伝達される。ヒートパイプ25は、取付部材26aによって第1光源231aの光源取付部243に取り付けられる。同様に、ヒートパイプ25は、開口部112を通じて筐体110の内部に挿入された接続部124に対して、取付部材26bを用いて取り付けられる。
【0045】
図9に示すように、第1ヒートシンク120aは、第1ヒートシンク120aの裏面が筐体110から離れた状態で、筐体110に外付けされる。これにより、第1ヒートシンク120aは筐体110から熱的に分離される。結果として、第1ヒートシンク120aは、筐体110と一体に構成されている第2ヒートシンク120bおよび第3ヒートシンク120cからも熱的に分離されることになる。
【0046】
なお図示はしないが、第1ヒートシンク120aを筐体110に取り付けたとき、接続部126と筐体110の開口部112の縁との間に、温度に応じて熱的な結合性が変化する物質を挿入してもよい。温度に応じて熱的な結合性が変化する物質の例としては、例えばバイメタルや形状記憶合金が挙げられるが、以下本実施の形態では、温度に応じて熱的な結合性が変化する物質としてバイメタルを用いる場合について説明する。
【0047】
開口部112の縁の温度が低い場合、第1ヒートシンク120aの接続部126は、バイメタルを介して筐体110と熱的に結合する。これにより、第1ヒートシンク120a、第2ヒートシンク120b、および第3ヒートシンク120cは筐体110を介して熱的に接続されて一体となるため、放熱効率を向上することが可能となる。
【0048】
一方、例えば各光源231の発熱量が増大することによって筐体110の温度が上昇し、バイメタルの温度も上昇したとする。この場合、バイメタルは変形によって縮むことにより、接続部126と筐体110との間の熱的な結合性が切断される。これにより、第2光源231bや第3光源231cが発生する熱が筐体110を介して第1光源231aに伝熱されることが抑制され、第1光源231aを熱から保護することができる。
【0049】
以上、主に光源231等、光学ユニット100の構成要素に起因する熱の放熱について説明した。上述したとおり、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ10は、車両のダッシュボード内に設置して使用される。このため、屋内での使用が主に想定されている一般的なプロジェクタとは異なり、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ10は、太陽光等の外光にさらされる可能性がある環境下で用いられる。以下では、実施の形態に係る光学ユニット100における、外光に由来する熱の放熱について説明する。
【0050】
図10は、実施の形態に係る光学ユニット100の外光に由来する熱の放熱を説明する図である。中間像形成部を透過した可視光に係る画像表示光は、コールドミラー400でウィンドシールド610に向けて反射させる。このとき、上述したように、コールドミラー400で反射した画像表示光は、筐体110の天面に設けられた投射口を透過してウィンドシールド610に至る。
【0051】
光学ユニット100は、例えば自動車のダッシュボード内に配置される。ダッシュボードはウィンドシールド610の下部に位置するのが通常である。したがって、光学ユニット100がダッシュボード内に配置された場合、画像表示光が透過する筐体110の投射口は、
図10に示すように路面に対して鉛直方向上側を向くことになる。このため、例えば晴れた昼間に自動車を走行させると、太陽の位置等の条件によっては、ウィンドシールド610と筐体110の投射口とを介して、太陽光が筐体110の内部に侵入することも起こりうる。
【0052】
筐体110の内部に侵入した太陽光は、コールドミラー400に到達する。ここでコールドミラー400が仮に通常のミラーである投射鏡であり、可視光のみならず赤外光も反射するものであると、赤外光が光学ユニット100の光学系に進入し、光学部材の熱による劣化を早める可能性もある。特に投射鏡が凹面鏡であると、投射鏡に到達した太陽光が集光されて筐体110の内部を局所的に加熱されかねない。
【0053】
そこで実施の形態に係る光学ユニット100は、投射鏡としてコールドミラー400を備える。コールドミラー400は可視光を反射するとともに熱線である赤外光は透過する性質を持つ。このため、筐体110の内部に侵入した赤外光がコールドミラー400で反射されることを抑制できる。
【0054】
一方、コールドミラー400を透過した赤外光による熱も筐体110を加熱する要因となるため、コールドミラー400を透過後の赤外光に起因する熱を放熱することが望ましい。そこで
図10に示すように、コールドミラー400は、画像表示光の反射面に対する裏面に、コールドミラー放熱部410を備える。コールドミラー放熱部410は、コールドミラー400を透過した赤外光による熱を放熱するために表面積が大きくなるように処理された部材であり、一例としては冷却フィンを備えるヒートシンクである。筐体110には、筐体110の内部を空冷するために、図示しない通気口や冷却ファンが設けられており、コールドミラー放熱部410は筐体110の内部を流れる空気で冷却され、赤外光による熱を放熱することができる。
【0055】
ここでコールドミラー放熱部410はコールドミラー400の裏面の全面に亘って存在することは必須の構成ではない。
図10に示すように、でコールドミラー放熱部410はコールドミラー400の反射面のうち太陽光が到達する領域の裏面をカバーするように備えられていればよい。これにより、コールドミラー放熱部410を小型化することができ、光学ユニット100の軽量化および低コスト化が実現できる。なお、コールドミラー放熱部410はコールドミラー400の反射面のうち太陽光が到達する領域は、筐体11の投射口の大きさや位置、光学ユニット100の設置場所、および設置する車両の構造等の設置条件に依存する。したがって、コールドミラー400の裏面のうちコールドミラー放熱部410を配置する部分の領域は、光学ユニット100の設置条件を勘案して実験により定めればよい。
【0056】
上述したように、第1光源231aをはじめとして、光源231には耐熱温度が定められている。このため、コールドミラー放熱部410が放熱する熱が、筐体110を介して光源231に伝導するのは好ましいことではない。そこで実施の形態に係る光学ユニット100において、筐体110とコールドミラー放熱部410との熱的な結合性は、筐体110と光源231を含む画像投射部210との熱的な結合性と比較して小さくなるように構成されている。
【0057】
より具体的には、筐体110とコールドミラー放熱部410との間に断熱機構を設けることで、筐体110とコールドミラー放熱部410との間の熱的な結合性を小さくすることができる。
図10に示す例では、筐体110とコールドミラー放熱部410とは接触しておらず、筐体110とコールドミラー放熱部410との間に距離が空くように構成されている。これにより、コールドミラー放熱部410から筐体110への熱の伝導が遮断され、両者の熱的な結合性を小さくすることができる。また、筐体110とコールドミラー放熱部410との間の距離が短い場合には、熱の伝導を抑える断熱部材を挿入してもよい。
【0058】
あるいはまた、
図7、
図8、および
図9を参照して説明した第1ヒートシンク120aと同様に、コールドミラー放熱部410を筐体110から熱的に分離するようにして外付けするとともに、コールドミラー放熱部410とコールドミラー400の裏面とを、筐体110に設けられた開口部(不図示)を介してヒートパイプ(不図示)で接続してもよい。コールドミラー放熱部410が筐体110の外部に出るため、コールドミラー400の放熱効率を高めうる点で効果がある。
【0059】
また第1ヒートシンク120aの場合と同様に、コールドミラー放熱部410を筐体110に取り付けたとき、コールドミラー放熱部410とヒートパイプとの接続部と筐体110の開口部の縁との間に、バイメタル等の温度に応じて熱的な結合性が変化する物質を挿入してもよい。これにより、コールドミラー放熱部410または筐体110の温度が低い場合はコールドミラー放熱部410と筐体110とが熱的に結合するので、コールドミラー放熱部410の放熱効率を高くすることができる。一方、コールドミラー放熱部410または筐体110の温度が上昇した場合、コールドミラー放熱部410と筐体110とが熱的に分離するので、コールドミラー放熱部410の放熱が筐体110を介して光源231に伝導することを抑制できる。
【0060】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ10によれば、太陽光等のヘッドアップディスプレイ10の外部から入射する外光に由来する熱を冷却する技術を提供することができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。