(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206090
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】3レベル電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/487 20070101AFI20170925BHJP
【FI】
H02M7/487
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-224073(P2013-224073)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-89185(P2015-89185A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】木谷 剛士
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−160248(JP,A)
【文献】
特開平8−214561(JP,A)
【文献】
特開平11−89249(JP,A)
【文献】
特開2002−153078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/487
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極端子と中間極端子と負極端子とを備えた直流電源と、前記直流電源の正極端子と負極端子との間に接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子からなる第1〜第4の半導体スイッチを正極端子側からこの順に直列接続した半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点と前記直流電源の中間極端子との間に接続される第1のダイオードと、前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点と前記直流電源の中間極端子との間に接続される第2のダイオードと、を備え、前記第2の半導体スイッチと前記第3の半導体スイッチとの接続点を交流端子とし、前記交流端子に3つのレベルの電圧を選択的に出力する3レベル電力変換装置において、
前記第1〜第4の半導体スイッチ各々はダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子を内蔵した半導体スイッチモジュールで、前記第1及び第2のダイオード各々はダイオードを内蔵したダイオードモジュールで、各々構成され、前記第1〜第4の半導体スイッチは冷却体の素子取付け面上にこの順に順次配置され、前記第1及び第2のダイオードは順次配置された前記第1〜第4の半導体スイッチの一方の傍らの前記直流電源に近い側にこの順に配置され、前記直流電源の正極端子と第1の半導体スイッチの正側端子とを接続する導体は、前記第1のダイオードのアノード端子と前記直流電源の中間極端子とを接続する導体及び前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点と前記第1のダイオードのカソード端子とを接続する導体と、前記直流電源の負極端子と第4の半導体スイッチの負側端子とを接続する導体は、前記第2のダイオードのカソード端子と前記直流電源の中間極とを接続する導体及び前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点と前記第2のダイオードのアノード端子とを接続する導体と、各々近接配線され、前記第2及び第3の半導体スイッチは、耐圧が前記第1及び第4の半導体スイッチの耐圧に比べて、所定量高い耐圧の半導体素子で構成することを特徴とする3レベル電力変換装置。
【請求項2】
正極端子と中間極端子と負極端子とを備えた直流電源と、前記直流電源の正極端子と負極端子との間に接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子からなる第1〜第4の半導体スイッチを正極側からこの順に直列接続した半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点と前記直流電源の中間極端子との間に接続される第1のダイオードと、前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点と前記直流電源の中間極端子との間に接続される第2のダイオードと、を備え、前記第2の半導体スイッチと前記第3の半導体スイッチとの接続点を交流端子とし、前記交流端子に3つのレベルの電圧を選択的に出力する3レベル電力変換装置において、
前記第1〜第4の半導体スイッチ各々はダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子を内蔵した半導体スイッチモジュールで、前記第1及び第2のダイオード各々はダイオードを内蔵したダイオードモジュールで、各々構成され、前記第1〜第4の半導体スイッチ及び前記第1及び第2のダイオードは冷却体の素子取付け面上に第1の半導体スイッチ、第1のダイオード、第2の半導体スイッチ、第3の半導体スイッチ、第2のダイオード、第4の半導体スイッチの順に順次配置され、前記直流電源の正極と第1の半導体スイッチの正側端子とを接続する導体は、前記第1のダイオードのアノード端子と前記直流電源の中間極端子とを接続する導体と、前記直流電源の負極端子と第4の半導体スイッチの負側端子とを接続する導体は、前記第2のダイオードのカソード端子と前記直流電源の中間極端子とを接続する導体と、各々近接配線され、前記第2及び第3の半導体スイッチは、耐圧が前記第1及び第4の半導体スイッチの耐圧に比べて、所定量高い耐圧の半導体素子で構成することを特徴とする3レベル電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の3レベル電力変換装置において、前記第1の半導体スイッチの耐圧に対する前記第2の半導体スイッチの前記所定量高い耐圧は、前記直流電源の正極、前記第1の半導体スイッチの正側端子、前記第1の半導体スイッチの負側端子、前記第1のダイオードのカソード端子、前記第1のダイオードのアノード端子及び前記直流電源の中間極端子を経由する回路の配線インダクタンスと、前記直流電源の中間極端子、前記第1のダイオードのアノード端子、前記第1のダイオードのカソード端子、前記第2の半導体スイッチの正側端子、前記第2の半導体スイッチの負側端子、前記第3の半導体スイッチの正側端子、前記第3の半導体スイッチの負側端子、前記第4の半導体スイッチの正側端子、前記第4の半導体スイッチの負側端子、前記直流電源の負極端子を経由する回路の配線インダクタンスと、の差に応じて決定することを特徴とする3レベル電力変換装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の3レベル電力変換装置において、前記第4の半導体スイッチの耐圧に対する前記第3の半導体スイッチの前記所定量高い耐圧は、前記直流電源の負極、前記第4の半導体スイッチの負側端子、前記第4の半導体スイッチの正側端子、前記第2のダイオードのアノード端子、前記第2のダイオードのカソード端子及び前記直流電源の中間極端子を経由する回路の配線インダクタンスと、前記直流電源の中間極端子、前記第2のダイオードモジュールのカソード端子、前記第2のダイオードのアノード端子、前記第3の半導体スイッチの負側端子、前記第3の半導体スイッチの正側端子、前記第2の半導体スイッチの負側端子、前記第2の半導体スイッチの正側端子、前記第1の半導体スイッチの負側端子、前記第1の半導体スイッチの正側端子、前記直流電源の正極端子を経由する回路の配線インダクタンスと、の差に応じて決定することを特徴とする3レベル電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3レベル電力変換装置のスイッチング素子のスナバレス化に関し、内部回路の配線インダクタンスの低減構造と異なる耐圧の半導体スイッチング素子で電力変換装置を構成するスナバレス化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示された3レベル電力変換回路1相分の回路構成と、配線インダクタンスと半導体スイッチのターンオフ時に半導体スイッチに印加される電圧との関係を、
図3と
図4に示す。また、
図5に、特許文献2に示されたスナバ回路例を示す。
3レベル電力変換回路の1相分の回路構成は、正極端子Pと、中間極端子Mと、負極端子Nとを備えた直流電源DCPの正極端子Pと負極端子Nとの間にダイオードを逆並列接続したスイッチング素子(この例ではIGBT)で構成した半導体スイッチT1〜T4を直列接続した半導体スイッチ直列回路を接続し、半導体スイッチT1とT2との接続点と直流電源DCPの中間極端子Mとの間にダイオードD1を、半導体スイッチT3とT4との接続点と直流電源DCPの中間極端子Mとの間にダイオードD2を、各々接続した構成で、半導体スイッチT2とT3の接続点が交流端子ACとなる。この回路を2回路用いると単相電力変換回路が、3回路用いると3相電力変換回路が、各々構成できる。また、直流電源DCPは、二つの直流電源(ここではコンデンサCp、Cnで表わしている)を直列接続した構成や、交流電源を入力とした2つの整流回路の直流出力を直列接続した回路などで構成される。
【0003】
この様な回路構成において、交流端子ACには、半導体スイッチT1とT2をオンすると直流電源DCPの正極端子Pの電圧が、半導体スイッチT2とT3をオンすると直流電源DCPの中間極端子Mの電圧が、半導体スイッチT3とT4をオンすると直流電源DCPの負極端子Nの電圧が、各々出力される3レベル電力変換回路の動作となる。
【0004】
図3は、直流電源DCPから交流端子ACへ電流を流す時の動作説明図である。
図3(a)は、半導体スイッチT1とT2をオンしている状態で直流電源DCPの正極端子Pから交流端子ACへ電流が流れている状態から半導体スイッチT1をオフし、ダイオードD1がオンとなり直流電源DCPの中間極端子MからダイオードD1を介して交流端子ACへ電流を流す転流モードを示す。この時、半導体スイッチT3は交流端子ACから電流が流れ込む場合を考慮してオンさせる。
図3(b)は、直流電源DCPの中間極端子MからダイオードD1を介して交流端子ACへ電流を流している状態から、半導体スイッチT2をオフさせ、直流電源DCPの負極端子Nから交流端子ACへ電流を流す転流モードを示す。この時、半導体スイッチT3、T4は交流端子ACから電流が流れ込む場合を考慮してオンさせる。
【0005】
本回路構成において、L1は直流電源DCPの正極端子Pと半導体スイッチT1の正側端子を接続する導体の配線インダクタンスを、L2は直流電源DCPの中間極MとダイオードD1のアノード及びダイオードD2のカソードとを接続する導体の配線インダクタンスを、L3は半導体スイッチT1とT2の接続点とダイオードD1のカソードとを接続する導体の配線インダクタンスを、L4は半導体スイッチT3とT4の接続点とダイオードD2のアンードとを接続する導体の配線インダクタンスを、L5は直流電源DCPの負極端子Nと半導体スイッチT4の負側端子とを接続する導体の配線インダクタンスを、各々示す。
【0006】
この様な構成において、
図3(a)に示す半導体スイッチT1がターンオフするモードの時、電流の変化率di/dtに配線インダクタンスL1を乗算して得られる電圧V1が矢印の方向に誘起される。同様に配線インダクタンスL2には矢印の方向にV2が、配線インダクタンスL3には矢印の方向にV3が、各々誘起される。この結果、半導体スイッチT1の主端子間に印加される電圧Vt1は、直流電源の正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧をEpとすると、Vt1=Ep+V1+V2+V3となる。
また、
図3(b)に示す半導体スイッチT2がターンオフするモードの時、半導体スイッチT2の主端子間に印加される電圧Vt2は、直流電源の中間極端子Mと負極端子Nとの間の電圧をEnとすると、Vt2=En+V2+V3+V5となる。
【0007】
図4は、交流端子ACから直流電源DCPへ電流を流す時の動作説明図である。
図4(a)は、半導体スイッチT3とT4をオンしている状態で交流端子ACから直流電源DCPの負極端子Nへ電流が流れている状態から半導体スイッチT4をオフし、ダイオードD2がオンとなり交流端子ACから直流電源DCPの中間極端子MへダイオードD2を介して電流を流す転流モードを示す。この時、半導体スイッチT2は交流端子ACへ電流が流れ出す場合を考慮してオンさせる。
図4(b)は、交流端子ACから直流電源DCPの中間極端子MへダイオードD2を介して電流を流している状態から、半導体スイッチT3をオフさせ、交流端子ACから直流電源DCPの正極端子Pへ電流を流す転流モードを示す。この時、半導体スイッチT1、T2は交流端子ACへ電流が流れ出す場合を考慮してオンさせる。
【0008】
本回路構成において、L1は直流電源DCPの正極端子Pと半導体スイッチT1の正側端子を接続する導体の配線インダクタンスを、L2は直流電源DCPの中間極MとダイオードD1のアノード及びダイオードD2のカソードとを接続する導体の配線インダクタンスを、L3は半導体スイッチT1とT2の接続点とダイオードD1のカソードとを接続する導体の配線インダクタンスを、L4は半導体スイッチT3とT4の接続点とダイオードD2のアンードとを接続する導体の配線インダクタンスを、L5は直流電源DCPの負極端子Nと半導体スイッチT4の負側端子とを接続する導体の配線インダクタンスを、各々示す。
【0009】
この様な構成において、
図4(a)に示す半導体スイッチT4がターンオフするモードの時、電流の変化率di/dtに配線インダクタンスL5を乗算して得られる電圧V5が矢印の方向に誘起される。同様に配線インダクタンスL2には矢印の方向にV2が、配線インダクタンスL4には矢印の方向にV4が、各々誘起される。この結果、半導体スイッチT4の主端子間に印加される電圧Vt4は、直流電源の負極Nと中間極Mとの間の電圧をEnとすると、Vt4=En+V2+V4+V5となる。また、
図4(b)に示す半導体スイッチT3がターンオフするモードの時、半導体スイッチT3の主端子間に印加される電圧Vt3は、直流電源の正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧をEpとすると、Vt3=Ep+V1+V2+V4となる。
【0010】
上述の配線インダクタンスによるサージ電圧を抑制するためには、配線インダクタンスL1〜L5を小さくすることが必要である。配線インダクタンスL1及びL2を小さくする対策として、直流電源DCPの正極端子Pと半導体スイッチT1の正側端子を接続する導体と、直流電源DCPの中間極端子MとダイオードD1のアノード端子を接続する導体とをラミネート配線構造などにより近接配線する方法が提案されている。
同様に、配線インダクタンスL2及びL5を小さくする対策として、直流電源DCPの負極端子Nと半導体スイッチT4の負側端子を接続する導体と、直流電源DCPの中間極端子MとダイオードD2のカソード端子とを接続する導体とをラミネート配線構造などにより近接配線する方法が提案されている。
【0011】
上述の対策では、直流電源DCPの正極端子P→半導体スイッチT1→ダイオードD1→直流電源DCPの中間極端子Mのループのインダクタンスと、直流電源DCPの負極端子N→半導体スイッチT4→ダイオードD2→直流電源DCPの中間極端子Mのループとのインダクタンスは十分低減可能で、半導体スイッチT1及びT4はスナバレス化が可能となる。しかし、直流電源の中間極端子M→ダイオードD1→半導体スイッチT2→半導体スイッチT3→半導体スイッチT4→直流電源の負極端子Nのループ及び直流電源の中間極端子M→ダイオードD2→半導体スイッチT3→半導体スイッチT2→半導体スイッチT1→直流電源の正極端子Pのループにおいては、半導体の数と半導体間を接続する導体数が多いため、配線インダクタンスの低減が十分に実現できないため、半導体スイッチT2とT3に印加されるサージ電圧がスナバレスでは抑制できないという課題がある。
【0012】
この対策として、半導体スイッチ2及び3に、各々電圧クランプ形のスナバ回路を設ける提案が特許文献2などに示されている。
図5に特許文献2に示された3レベル電力変換装置の1相分の回路構成を示す。主回路構成は
図3、
図4と同じであるので、説明は省略するが、半導体スイッチT2と並列にコンデンサCs1とダイオードDs1との直列回路で構成された放電阻止形スナバが接続され、コンデンサCs1とダイオードDs1との直列回路の接続点と直流電源DCPの負極端子Nとの間に抵抗RbとダイオードDbとの直列回路が接続される。また、半導体スイッチT3と並列にダイオードDs2とコンデンサCs2との直列回路で構成された放電阻止形スナバが接続され、ダイオードDs2とコンデンサCs2との直列回路の接続点と直流電源DCPの正極端子Pとの間に抵抗RaとダイオードDaとの直列回路が接続される。この様に、半導体スイッチT2とT3にスナバを並列接続することにより、半導体スイッチT2又はT3がターンオフ時のサージ電圧を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−89249号公報
【特許文献2】特開平11−41947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、3レベル電力変換回路の直流電源と並列に接続された第1〜第4の半導体スイッチの直列回路の中で、半導体スイッチのターンオフ時のサージ電圧を抑制するために交流端子に接続される内部の2個の半導体スイッチにスナバ回路を並列接続すると、高電圧の回路においては、スナバ回路用の部品が大型で、構造が複雑となり、装置が大型で高価格になる問題がある。
従って、本発明の課題は、スナバ回路が不要で、部品点数の削減、装置の小型化、低価格化を図れる高電圧回路に適用可能な3レベル電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、正極端子と中間極端子と負極端子とを備えた直流電源と、前記直流電源の正極端子と負極端子との間に接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子からなる第1〜第4の半導体スイッチを正極端子側からこの順に直列接続した半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点と前記直流電源の中間極端子との間に接続される第1のダイオードと、前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点と前記直流電源の中間極端子との間に接続される第2のダイオードと、を備え、前記第2の半導体スイッチと前記第3の半導体スイッチとの接続点を交流端子とし、前記交流端子に3つのレベルの電圧を選択的に出力する3レベル電力変換装置に関する。前記第1〜第4の半導体スイッチ各々はダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子を内蔵した半導体スイッチモジュールで、前記第1及び第2のダイオード各々はダイオードを内蔵したダイオードモジュールで、各々構成される。前記第1〜第4の半導体スイッチは冷却体の素子取付け面上にこの順に順次配置され、前記第1及び第2のダイオードは前記順次配置された第1〜第4の半導体スイッチの一方の傍らの前記直流電源に近い側にこの順に配置される。前記直流電源の正極端子と第1の半導体スイッチの正側端子とを接続する導体は、前記第1のダイオードのアノード端子と前記直流電源の中間極端子とを接続する導体及び前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点と前記第1のダイオードのカソード端子とを接続する導体と近接配線される。前記直流電源の負極端子と第4の半導体スイッチの負側端子とを接続する導体は、前記第2のダイオードのカソード端子と前記直流電源の中間極端子とを接続する導体及び前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点と前記第2のダイオードのアノード端子とを接続する導体と、近接配線される。前記第2及び第3の半導体スイッチは、耐圧が前記第1及び第4の半導体スイッチの耐圧に比べて、所定量高い耐圧のある半導体素子で構成する。
【0016】
第2の発明は、正極端子と中間極端子と負極端子とを備えた直流電源と、前記直流電源の正極端子と負極端子との間に接続される、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子からなる第1〜第4の半導体スイッチを正極側からこの順に直列接続した半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点と前記直流電源の中間極端子との間に接続される第1のダイオードと、前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点と前記直流電源の中間極端子との間に接続される第2のダイオードと、を備え、前記第2の半導体スイッチと前記第3の半導体スイッチとの接続点を交流端子とし、前記交流端子に3つのレベルの電圧を選択的に出力する3レベル電力変換装置に関する。
前記第1〜第4の半導体スイッチ各々はダイオードを逆並列接続した半導体スイッチ素子を内蔵した半導体スイッチモジュールで、前記第1及び第2のダイオード各々はダイオードを内蔵したダイオードモジュールで、各々構成され、前記第1〜第4の半導体スイッチ及び前記第1及び第2のダイオードは冷却体の素子取付け面上に第1の半導体スイッチ、第1のダイオード、第2の半導体スイッチ、第3の半導体スイッチ、第2のダイオード、第4の半導体スイッチの順に順次配置される。前記直流電源の正極と第1の半導体スイッチの正側端子とを接続する導体は、前記第1のダイオードのアノード端子と前記直流電源の中間極端子とを接続する導体と、近接配線される。前記直流電源の負極端子と第4の半導体スイッチの負側端子とを接続する導体は、前記第2のダイオードのカソード端子と前記直流電源の中間極端子とを接続する導体と、各々近接配線される。前記第2及び第3の半導体スイッチは、耐圧が前記第1及び第4の半導体スイッチの耐圧に比べて、所定量高い耐圧のある半導体素子で構成する。
【0017】
第3の発明においては、請求項1又は2に記載の3レベル電力変換装置において、前記第1の半導体スイッチの耐圧に対する前記第2の半導体スイッチの前記所定量高い耐圧は、前記直流電源の正極、前記第1の半導体スイッチの正側端子、前記第1の半導体スイッチの負側端子、前記第1のダイオードのカソード端子、前記第1のダイオードのアノード端子及び前記直流電源の中間極端子を経由する回路の配線インダクタンスと、前記直流電源の中間極端子、前記第1のダイオードのアノード端子、前記第1のダイオードのカソード端子、前記第2の半導体スイッチの正側端子、前記第2の半導体スイッチの負側端子、前記第3の半導体スイッチの正側端子、前記第3の半導体スイッチの負側端子、前記第4の半導体スイッチの正側端子、前記第4の半導体スイッチの負側端子、前記直流電源の負極端子を経由する回路の配線インダクタンスと、の差に応じて決定する。
【0018】
第4の発明においては、請求項1又は2に記載の3レベル電力変換装置において、前記第4の半導体スイッチの耐圧に対する前記第3の半導体スイッチの前記所定量高い耐圧は、前記直流電源の負極、前記第4の半導体スイッチの負側端子、前記第4の半導体スイッチの正側端子、前記第2のダイオードのアノード端子、前記第2のダイオードのカソード端子及び前記直流電源の中間極端子を経由する回路の配線インダクタンスと、前記直流電源の中間極端子、前記第2のダイオードのカソード端子、前記第2のダイオードのアノード端子、前記第3の半導体スイッチの負側端子、前記第3の半導体スイッチの正側端子、前記第2の半導体スイッチの負側端子、前記第2の半導体スイッチの正側端子、前記第1の半導体スイッチの負側端子、前記第1の半導体スイッチの正側端子、前記直流電源の正極端子を経由する回路の配線インダクタンスと、の差に応じて決定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、3レベル電力変換装置の半導体スイッチとダイオードの配置に応じて直流電源と半導体スイッチ及びダイオードとの導体を近接配線により配線インダクタンスを低減し、第1〜第4の半導体スイッチの中で第2と第3の半導体スイッチは第1と第4の半導体スイッチの耐圧より所定量高い耐圧の半導体スイッチで構成している。また、半導体スイッチの耐圧差による価格差は小さいので、耐圧の高い素子を適用することによるコストの増加分は小さい。。
この結果、第1〜第4の半導体スイッチのスナバ回路が不要となり、部品点数の削減、装置の小型化、低価格化を図れる高電圧回路に適用可能な3レベル電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】配線インダクタンスを考慮した3レベル電力変換回路の第1の動作例である。
【
図4】配線インダクタンスを考慮した3レベル電力変換回路の第2の動作例である。
【
図5】スナバ回路を用いた従来の3レベル電力変換装置の1相分の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の要点は、3レベル電力変換装置の半導体スイッチとダイオードの配置に応じて直流電源と半導体スイッチ及びダイオードとの導体を近接配線により低インダクタンス化し、さらに第1〜第4の半導体スイッチの中で第2と第3の半導体スイッチは第1と第4の半導体スイッチの耐圧より所定量高い耐圧の半導体スイッチで構成している点である。
【実施例1】
【0022】
図1に、本発明の第1の実施例を示す。上側の図が平面図で、下側の図が正面図である。電気回路の構成は、
図3、
図4で説明した従来回路と同様であるので、説明は省略する。
冷却体13の素子取付け面上の図面上部から順に、ダイオードが逆並列接続された半導体スイッチ素子が内蔵されたモジュール構造の半導体スイッチT1からT4がこの順に配置される。この種の半導体スイッチモジュールは1個入りのモジュールと呼ばれる。半導体スイッチT1からT4の左側である直流電源DCP側にはダイオードが内蔵された1個入りモジュール構造のダイオードD1とD2がこの順に配置される。冷却体13の左傍らには、熱の影響を受けないように間隔を設けて、正極端子P、中間極端子M及び負極端子Nを備えた直流電源DCPが配置される。
【0023】
第1の半導体スイッチT1の負側端子E1と第2の半導体スイッチT2の正側端子C2とは導体6で、第2の半導体スイッチT2の負側端子E2と第3の半導体スイッチT3の正側端子C3とは導体7で、第3の半導体スイッチT3の負側端子E3と第4の半導体スイッチT4の正側端子C4とは導体8で、各々接続され、半導体スイッチ直列回路を構成する。ここで、第2の半導体スイッチT2の負側端子E2と第3の半導体スイッチT3の正側端子C3とを接続する導体7は交流端子ACの機能を備えている。半導体スイッチT1の負側端子E1と第1のダイオードD1のカソード端子K1とは導体3で、半導体スイッチT3とT4との接続点と第2のダイオードD2のアノード端子A2とは導体4で、第1のダイオードのアノード端子A1及び第2のダイオードのカソード端子K2と直流電源DCPの中間極端子とは導体2で、各々接続される。
【0024】
第1の半導体スイッチT1の正側端子C1と直流電源DCPの正極端子Pとは導体1で接続され、導体1と2は絶縁材9を挟んだラミネート構造で、導体1と3は絶縁材10を挟んだラミネート構造で、各々近接配線される。
第4の半導体スイッチT4の負側端子E4と直流電源DCPの負極端子Nとは導体5で接続され、導体5と2は絶縁材11を挟んだラミネート構造で、導体5と4は絶縁材12を挟んだラミネート構造で、各々近接配線される。
【0025】
この様な配置配線構造においては、
図3に示した配線インダクタンスL1とL2、及び配線インダクタンスL1とL3とは、各々近接配線により低減され、半導体スイッチT1がオフする時のサージ電圧を抑制することができる。また、配線インダクタンスL5とL2、及び配線インダクタンスL5とL4とは、各々近接配線により低減され、半導体スイッチT4がオフする時のサージ電圧を抑制することができる。
【0026】
まず、半導体スイッチ1と半導体スイッチ2の耐圧について説明する。半導体スイッチT1がターンオフする時に半導体スイッチT1の主端子間(C1−E1間)に印加される電圧Vt1は、直流電源の正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧をEp、直流電源DCPの正極端子P→半導体スイッチT1→ダイオードD1→直流電源DCPの中間極端子MのループAのインダクタンスLaに半導体スイッチT1遮断時の電流の時間変化率(di/dt)を乗算して得られるサージ電圧をVs1とすると、Vt1=Ep+Vs1となる。また、半導体スイッチT2がターンオフする時に半導体スイッチT2の主端子間(C2−E2間)に印加される電圧Vt2は、直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間の電圧をEn、直流電源DCPの中間極端子M→ダイオードD1→半導体スイッチT2→半導体スイッチT3→半導体スイッチT4→直流電源DCPの負極端子NのループBのインダクタンスLbに半導体スイッチT2遮断時の電流の時間変化率(di/dt)を乗算して得られるサージ電圧をVs2とすると、Vt2=En+Vs2となる。
【0027】
ここで、ループAは直流電源DCPの正極端子Pと中間極Mとの間に半導体スイッチT1とダイオードD1を導体1、3及び9で接続する構成で、ループBは直流電源DCPの中間極端子Mと負極端子Nとの間に、ダイオードD1、半導体スイッチT2、T3及びT4を導体2、3、6、7、8及び5で接続した構成である。近接配線した部分の配線インダクタンスは低減できるが、ループBはループAに比べて配線導体数と半導体部品数が多く、導体のインダクタンスと半導体部品のインダクタンスとの和となるループBのインダクタンスLbは、ループAのインダクタンスLaに比べて大きくなる。
【0028】
直流電源DCPの正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧Epと直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間の電圧Enは等しくなるように選択され、半導体スイッチのターンオフ時の電流の時間変化率(di/dt)はほぼ等しい。従って、サージ電圧Vs1、Vs2は配線インダクタンスに比例した値となり、半導体スイッチT1の耐圧はVt1=Ep+Vs1に耐える耐圧の半導体スイッチを、半導体スイッチT2の耐圧はVt2=En+Vs2に耐える耐圧の半導体スイッチを用いる。
【0029】
次に半導体スイッチT3とT4の耐圧について説明する。半導体スイッチT4がターンオフする時に半導体スイッチT4の主端子間(C4−E4間)に印加される電圧Vt4は、直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間の電圧をEn、直流電源DCPの負極端子N→半導体スイッチT4→ダイオードD2→直流電源DCPの中間極端子MのループCのインダクタンスLcに半導体スイッチT4遮断時の電流の時間変化率(di/dt)を乗算して得られるサージ電圧をVs4とすると、Vt4=En+Vs4となる。また、半導体スイッチT3がターンオフする時に半導体スイッチT3の主端子間(C3−E3間)に印加される電圧Vt3は、直流電源DCPの正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧をEp、直流電源DCPの中間極端子M→ダイオードD2→半導体スイッチT3→半導体スイッチT2→半導体スイッチT1→直流電源の正極端子PのループDのインダクタンスLdに半導体スイッチT3遮断時の電流の時間変化率(di/dt)を乗算して得られるサージ電圧をVs3とすると、Vt3=Ep+Vs3となる。
【0030】
ここで、ループCは直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間に半導体スイッチT4とダイオードD2を導体5、8、4及び2で接続する構成で、ループDは直流電源DCPの中間極端子Mと正極端子Pとの間に、ダイオードD2、半導体スイッチT3、T2及びT1を導体2、4、7、6及び1で接続した構成である。近接配線した部分のインダクタンスは低減できるが、ループDはループCに比べて配線導体数と半導体部品数が多く、配線導体のインダクタンスと半導体部品のインダクタンスとの和となるループDのインダクタンスLdは、ループCのインダクタンスLcに比べて大きくなる。
【0031】
直流電源DCPの正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧Epと直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間の電圧Enは等しくなるように選択され、半導体スイッチのターンオフ時の電流の時間変化率(di/dt)はほぼ等しい。従って、サージ電圧Vs3、Vs4は配線インダクタンスに比例した値となり、半導体スイッチT4の耐圧はVt4=En+Vs3に耐える耐圧の半導体スイッチを、半導体スイッチT3の耐圧はVt3=Ep+Vs4に耐える耐圧の半導体スイッチを用いる。
半導体スイッチの耐圧の違いによる価格差は、例えば1200V耐圧の素子と1700V耐圧の素子とでは小さく、ほとんどコストアップせずにスナバ回路を削減できる。
【実施例2】
【0032】
図2に、本発明の第2の実施例を示す。
図2は冷却体の素子取付け面の平面図である。電気回路の構成は、
図3、
図4で説明した従来回路と同様であるので、説明は省略する。
半導体スイッチとダイオードの種類は、実施例1と同じである。実施例1との違いは、ダイオードD1、D2の配置である。
【0033】
冷却体29の素子取付け面上の図面上部から順に、半導体スイッチT1、ダイオードD1、半導体スイッチT2、半導体スイッチT3、ダイオードD2及び半導体スイッチT4がこの順に配置される。また、冷却体29の左傍らには熱の影響を受けないように間隔を設けて、正極端子P、中間極端子M及び負極端子Nを備えた直流電源DCPが配置される。
【0034】
第1の半導体スイッチT1の負側端子E1と第1のダイオードD1のカソード端子及び第2の半導体スイッチT2の正側端子C2とは導体22で、第2の半導体スイッチT2の負側端子E2と第3の半導体スイッチT3の正側端子C3とは導体24で、第3の半導体スイッチT3の負側端子E3と第2のダイオードD2のアノード端子及び第4の半導体スイッチT4の正側端子C4とは導体27で、各々接続され、半導体スイッチ直列回路とダイオード回路を構成する。ここで、第2の半導体スイッチT2の負側端子E2と第3の半導体スイッチT3の正側端子C3とを接続する導体24は交流端子ACの機能を備えている。ダイオードD1のアノード端子A1とダイオードD2のカソード端子K2は導体23、26及び28で接続され、導体28はさらに直流電源DCPの中間極端子に接続される。
【0035】
第1の半導体スイッチT1の正側端子C1と直流電源DCPの正極端子Pとは導体21で接続され、導体21と23及び導体21と28は絶縁材30を挟んだラミネート構造で、近接配線される。第4の半導体スイッチT4の負側端子E4と直流電源DCPの負極端子Nとは導体25で接続され、導体25と26及び導体25と28は絶縁材31を挟んだラミネート構造で、近接配線される。
【0036】
この様な配置配線構造においては、
図3に示した配線インダクタンスL1とL2は、近接配線により低減され、半導体スイッチT1がオフする時のサージ電圧を抑制することができる。また、配線インダクタンスL5とL2は、近接配線により低減され、半導体スイッチT4がオフする時のサージ電圧を抑制することができる。
【0037】
まず、半導体スイッチT1と半導体スイッチT2の耐圧について説明する。半導体スイッチT1がターンオフする時に半導体スイッチT1の主端子間(C1−E1間)に印加される電圧Vt1は、直流電源DCPの正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧をEp、直流電源DCPの正極端子P→半導体スイッチT1→ダイオードD1→直流電源DCPの中間極端子MのループAのインダクタンスLaに半導体スイッチT1遮断時の電流の時間変化率(di/dt)を乗算して得られるサージ電圧をVs1とすると、Vt1=Ep+Vs1となる。また、半導体スイッチT2がターンオフする時に半導体スイッチT2の主端子間(C2−E2間)に印加される電圧Vt2は、直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間の電圧をEn、直流電源DCPの中間極端子M→ダイオードD1→半導体スイッチT2→半導体スイッチT3→半導体スイッチT4→直流電源DCPの負極端子NのループBのインダクタンスLbに半導体スイッチT2遮断時の電流の時間変化率(di/dt)を乗算して得られるサージ電圧をVs2とすると、Vt2=En+Vs2となる。
【0038】
ここで、ループAは直流電源DCPの正極端子Pと中間極Mとの間に半導体スイッチT1とダイオードD1を導体21、22及び23で接続する構成で、ループBは直流電源DCPの中間極端子Mと負極端子Nとの間に、ダイオードD1、半導体スイッチT2、T3及びT4を導体28、23、22、24、27及び25で接続した構成である。近接配線した部分のインダクタンスは低減されるが、ループBはループAに比べて配線導体数と半導体部品数が多く、配線導体のインダクタンスと半導体部品のインダクタンスとの和となるループBのインダクタンスLbは、ループAのインダクタンスLaに比べて大きくなる。
【0039】
直流電源DCPの正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧Epと直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間の電圧Enは等しくなるように選択され、半導体スイッチのターンオフ時の電流の時間変化率(di/dt)はほぼ等しい。従って、サージ電圧Vs1、Vs2は配線インダクタンスに比例した値となり、半導体スイッチT1の耐圧はVt1=Ep+Vs1に耐える耐圧の半導体スイッチを、半導体スイッチT2の耐圧はVt2=En+Vs2に耐える耐圧の半導体スイッチを用いる。
【0040】
次に半導体スイッチT3とT4の耐圧について説明する。半導体スイッチT4がターンオフする時に半導体スイッチT4の主端子間(C4−E4間)に印加される電圧Vt4は、直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間の電圧をEn、直流電源DCPの負極端子N→半導体スイッチT4→ダイオードD2→直流電源DCPの中間極端子MのループCのインダクタンスLcに半導体スイッチT4遮断時の電流の時間変化率(di/dt)を乗算して得られるサージ電圧をVs4とすると、Vt4=En+Vs4となる。また、半導体スイッチT3がターンオフする時に半導体スイッチT3の主端子間(C3−E3間)に印加される電圧Vt3は、直流電源DCPの正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧をEp、直流電源DCPの中間極端子M→ダイオードD2→半導体スイッチT3→半導体スイッチT2→半導体スイッチT1→直流電源の正極端子PのループDのインダクタンスLdに半導体スイッチT3遮断時の電流の時間変化率(di/dt)を乗算して得られるサージ電圧をVs3とすると、Vt3=Ep+Vs3となる。
【0041】
ここで、ループCは直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間に半導体スイッチT4とダイオードD2を導体25、27、26及び28で接続する構成で、ループDは直流電源DCPの中間極端子Mと正極端子Pとの間に、ダイオードD2、半導体スイッチT3、T2及びT1を導体28、26、27、24、22及び21で接続した構成である。この結果、ループDはループCに比べて配線導体数と半導体部品数が多く、配線導体のインダクタンスと半導体部品のインダクタンスとの和となるループDのインダクタンスLdは、ループCのインダクタンスLcに比べて大きくなる。
【0042】
直流電源DCPの正極端子Pと中間極端子Mとの間の電圧Epと直流電源DCPの負極端子Nと中間極端子Mとの間の電圧Enは等しくなるように選択され、半導体スイッチのターンオフ時の電流の時間変化率(di/dt)はほぼ等しい。従って、サージ電圧Vs3、Vs4は配線インダクタンスに比例した値となり、半導体スイッチT4の耐圧はVt4=En+Vs3に耐える耐圧の半導体スイッチを、半導体スイッチT3の耐圧はVt3=Ep+Vs4に耐える耐圧の半導体スイッチを用いる。
【0043】
半導体スイッチの耐圧の違いによる価格差は、例えば1200V耐圧の素子と1700V耐圧の素子とでは小さく、ほとんどコストアップせずにスナバ回路を削減できる。
尚、上記実施例には、近接配線構造として導体間に絶縁材を挟んで例を示したが、導体を絶縁樹脂等でコーティングする構造や大電流プリント板などでも実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、高圧回路に適用する3レベル電力変換装置に適用する半導体スイッチングのスナバを削減する技術であり、高圧電動機駆動装置、系統連系用インバータ、系統電圧補償装置などへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
T1〜T4・・・半導体スイッチ DCP・・・直流電源
D1、D2・・・ダイオード Cp、Cn・・・コンデンサ
Cs1、Cs2・・・コンデンサ Ra、Rb・・・抵抗
Ds1、Ds2、Da、Db・・・ダイオード
1〜8、21〜28・・・導体 9〜12、30、31・・・絶縁材
13、29・・・冷却体 L1〜L5・・・配線インダクタンス