特許第6206100号(P6206100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206100
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/28 20060101AFI20170925BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20170925BHJP
   F16H 1/08 20060101ALI20170925BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20170925BHJP
   F16H 63/34 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   F16H61/28
   B60T1/06 G
   F16H1/08
   F16H19/04 A
   !F16H63/34
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-230053(P2013-230053)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-90184(P2015-90184A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桑原 真也
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−106484(JP,A)
【文献】 特開2008−187848(JP,A)
【文献】 特開2011−229197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/28
B60T 1/06
F16H 1/08
F16H 19/04
F16H 63/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータにコアを有するモータと、
前記モータの回転軸に設けられた第1ヘリカルギヤ部と、
前記回転軸の軸線に平行な軸線を有して前記コアに挿設された支持軸と、
前記支持軸に支持され、前記第1ヘリカルギヤ部と噛合する第2ヘリカルギヤ部及び駆動ギヤ部を有する中間ギヤと、
前記支持軸の軸線に平行な軸線を有して該支持軸を支持するケースに軸支された出力軸と、
前記出力軸に一体回転するように設けられ、前記駆動ギヤ部と噛合する扇形の内歯車を有する従動レバーと、
前記出力軸に一体回転するように設けられ、第1状態となる第1回動位置及び第2状態となる第2回動位置の2位置間を回動可能な切替部材とを備え
前記従動レバーは、前記駆動ギヤ部が挿入される凹部を有し、該凹部における外周側の内側面に前記内歯車を有する、シフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト装置において、
前記第1ヘリカルギヤ部は、その歯先円の直径が前記回転軸の最大径部分の直径以下のギヤ径になるよう少歯数・大ねじれ角を有する少歯数ヘリカルギヤである、シフト装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシフト装置において、
前記モータはブラシレスモータである、シフト装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記従動レバーの前記駆動ギヤ部が遊挿される前記凹部の前記出力軸を中心とする周方向両側の内壁面には、前記切替部材の前記第1回動位置及び前記第2回動位置に対応する前記従動レバーの両回動位置において前記駆動ギヤ部の歯が係入可能な係合溝が形成された、シフト装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記回転軸及び前記出力軸は、互いに同軸に配置された、シフト装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシフト装置において、
前記回転軸の先端は、前記出力軸に軸支された、シフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シフト装置としては、例えば特許文献1に記載されたパーキングロック装置が知られている。この装置は、パーキングギヤと噛合するロック位置とその噛合が解除されるアンロック位置との2位置にロックポールを案内する位置決め板を備えており、モータにより位置決め板を正逆回転させることで前記2位置にロックポールを案内するように構成されている。これにより、例えばロックポールがロック位置に移動することでパーキングギヤと噛合する状態(パーキング状態)となり、あるいはアンロック位置に移動することでパーキングギヤとの噛合を解除する状態(非パーキング状態)となる。
【0003】
ここで、ロックポールを移動すべく位置決め板を回転させるためには高トルクが必要であることから、モータの回転軸の回転を減速して位置決め板に伝達するように構成されている。すなわち、図6に示すように、ハウジングケース80に設けられたモータ81の回転軸82には第1ヘリカルギヤ部82aが形成され、回転軸82の軸線に平行な軸線を有してハウジングケース80に軸支された支持軸83には中間ギヤ84が一体回転するように固定されている。この中間ギヤ84は、第1ヘリカルギヤ部82aと噛合する第2ヘリカルギヤ部84a及び平歯車状の駆動ギヤ部84bを一体的に有する。
【0004】
また、回転軸82等の軸線に平行な軸線を有してハウジングケース80に軸支された出力軸85には、駆動ギヤ部84bと噛合するセクターギヤ86が回転可能に支持されている。このセクターギヤ86には、出力軸85を中心とする円弧状の嵌合口86aが貫通形成されている。
【0005】
セクターギヤ86には、出力軸85に一体回転するように固定された従動レバー87が重ねられている。この従動レバー87には、嵌合口86aに遊挿される係合突起87aが形成されている。なお、出力軸85には、前記位置決め板が一体回転するように固定される。
【0006】
従って、モータ81の回転軸82が回転すると、その回転が第1ヘリカルギヤ部82a及び第2ヘリカルギヤ部84a間で減速されて中間ギヤ84に伝達される。中間ギヤ84が回転すると、その回転が駆動ギヤ部84b及びセクターギヤ86間で更に減速されて該セクターギヤ86に伝達される。そして、セクターギヤ86の出力軸85の周りの回転に伴い嵌合口86aに係合突起87aの押圧される従動レバー87が出力軸85と一体で回転する。出力軸85の回転に伴い、位置決め板が回転してロックポールが移動することは既述のとおりである。このように、モータ81の回転軸82の回転を十分に減速することで、位置決め板において所要のトルクが確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−143893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の構成では、中間ギヤ84(駆動ギヤ部84b)及びセクターギヤ86が互いに外接する状態で噛合していることで、それぞれの軸線が離間する分、それらを軸線方向に投影した面積(以下、「投影面積」ともいう)が拡大し、大型化を余儀なくされている。一方、中間ギヤ84(駆動ギヤ部84b)及びセクターギヤ86の両軸線間の距離を縮小して投影面積を縮小することも考えられるが、その場合にはセクターギヤ86の直径が縮小されて所要の減速性能(減速比)が得られなくなるという別の問題が生じてしまう。
【0009】
本発明の目的は、モータの回転軸の回転を減速して位置決め板に伝達する際の減速性能の低下を抑制しつつ投影面積を縮小することができるシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するシフト装置は、ステータにコアを有するモータと、前記モータの回転軸に設けられた第1ヘリカルギヤ部と、前記回転軸の軸線に平行な軸線を有して前記コアに挿設された支持軸と、前記支持軸に支持され、前記第1ヘリカルギヤ部と噛合する第2ヘリカルギヤ部及び駆動ギヤ部を有する中間ギヤと、前記支持軸の軸線に平行な軸線を有して該支持軸を支持するケースに軸支された出力軸と、前記出力軸に一体回転するように設けられ、前記駆動ギヤ部と噛合する扇形の内歯車を有する従動レバーと、前記出力軸に一体回転するように設けられ、第1状態となる第1回動位置及び第2状態となる第2回動位置の2位置間を回動可能な切替部材とを備え、前記従動レバーは、前記駆動ギヤ部が挿入される凹部を有し、該凹部における外周側の内側面に前記内歯車を有する。
【0011】
この構成によれば、前記モータの前記回転軸が回転すると、その回転が前記第1ヘリカルギヤ部及び前記第2ヘリカルギヤ部間で減速されて前記中間ギヤに伝達される。前記中間ギヤが回転すると、その回転が前記駆動ギヤ部及び前記内歯車間で更に減速されて前記従動レバーに伝達される。そして、前記従動レバーの回転に伴い前記出力軸が前記切替部材と共に回転する。これにより、前記切替部材は、前記第1状態になるべく前記第1回動位置に向かって一方向に回動し、あるいは前記第2状態になるべく前記第2回動位置に向かって他方向に回動する。この場合、前記中間ギヤを支持する前記支持軸は、前記コアに挿設されることで、前記支持軸及び前記出力軸の両軸線が近付く分、前記中間ギヤ及び前記従動レバーを軸線方向に投影した面積(投影面積)を縮小することができ、より小型化することができる。特に、前記出力軸を介して前記切替部材と一体回転する前記内歯車は、前記第1回転位置及び前記第2回転位置間の前記切替部材の回動を許容し得る扇形であることで、前記投影面積をいっそう縮小することができる。一方、前記支持軸及び前記出力軸の両軸線が近付くものの、前記中間ギヤの前記駆動ギヤ部の噛合対象が直径をより拡大可能な前記内歯車であることで、所要の減速性能を得ることができる。
【0012】
上記シフト装置について、前記第1ヘリカルギヤ部は、その歯先円の直径が前記回転軸の最大径部分の直径以下のギヤ径になるよう少歯数・大ねじれ角を有する少歯数ヘリカルギヤであることが好ましい。
この構成によれば、前記第1ヘリカルギヤ部及び前記第2ヘリカルギヤ部間で高減速を実現することができる。
【0013】
上記シフト装置について、前記モータはブラシレスモータであることが好ましい。
上記シフト装置について、前記従動レバーの前記駆動ギヤ部が遊挿される前記凹部の前記出力軸を中心とする周方向両側の内壁面には、前記切替部材の前記第1回動位置及び前記第2回動位置に対応する前記従動レバーの両回動位置において前記駆動ギヤ部の歯が係入可能な係合溝が形成されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、前記切替部材が前記第1回転位置又は前記第2回転位置に到達した時点で、前記従動レバーの前記係合溝に前記駆動ギヤ部の前記歯が係入することで、前記従動レバー等の回転をより確実に規制することができる。
【0015】
上記シフト装置について、前記回転軸及び前記出力軸は、互いに同軸に配置されることが好ましい。
この構成によれば、前記出力軸と共に前記従動レバー及び前記切替部材が前記回転軸の周辺に集約配置されることで、前記投影面積を更に縮小することができる。
【0016】
上記シフト装置について、前記回転軸の先端は、前記出力軸に軸支されることが好ましい。
この構成によれば、例えば前記ケースに前記回転軸の先端を軸支する必要がなくなり、前記ケースの形状をより簡素化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、モータの回転軸の回転を減速して位置決め板に伝達する際の減速性能の低下を抑制しつつ投影面積を縮小できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明が適用されるパーキングロック装置を示す斜視図。
図2】本発明の一実施形態を示す縦断面図。
図3】同実施形態を示す分解斜視図。
図4】同実施形態を軸線方向に見た立面図。
図5】本発明の変形形態を軸線方向に見た立面図。
図6】従来形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、シフト装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、シフト装置としてのパーキングロック装置1は、パーキングギヤ2及び該パーキングギヤ2と係脱するロックポール3を有している。パーキングギヤ2及びロックポール3は、車両に備えられた変速装置のハウジングケース(図示略)内に設けられている。
【0020】
パーキングギヤ2は、変速装置のハウジングケース内に貫挿されたエンジンのクランク軸(図示略)に固着され、該クランク軸と一体回転するようになっている。そして、パーキングギヤ2は、その歯2aにロックポール3の係止爪3aが噛合することによって、その回転が規制される。
【0021】
ロックポール3は、パーキングギヤ2に隣接配置され、変速装置のハウジングケース内に固設された図示しない中間プレートに揺動可能に支持されている。ロックポール3は、その基端部が中間プレートに設けた支軸4に対して回動可能に支持され、該支軸4の中心軸線C1を回転中心として回動可能になっている。
【0022】
ロックポール3のパーキングギヤ2に対向する側の中間部には、係止爪3aが形成されている。ロックポール3は、パーキングギヤ2の歯2aに近付く方向に回動して、係止爪3aがパーキングギヤ2の歯2aと噛合する位置(以下、ロック位置という)に案内される。そして、ロックポール3は、係止爪3aがロック位置に案内されることでパーキングギヤ2の回転を不能にさせるようになっている。
【0023】
反対に、ロックポール3は、パーキングギヤ2の歯2aから離間する方向に回動して、図1に示すように、係止爪3aがパーキングギヤ2の歯2aとの噛合を解除する位置(以下、アンロック位置という)に案内される。そして、ロックポール3は、係止爪3aがアンロック位置に案内されることでパーキングギヤ2の回転を可能にさせるようになっている。
【0024】
切替部材としての位置決め板5は、その基端部に連結アーム5bを延出形成し、その連結アーム5bには、パークロッド9が回動可能に連結固定されている。パークロッド9は、基端部がL字状に屈曲しその屈曲した先端部からさらにL字状に屈曲して形成されたロッド部9aを有している。ロッド部9aは、ロックポール3の反パーキングギヤ2側まで延出形成されている。そして、パークロッド9は、位置決め板5の往復回動に伴いロッド部9aがロックポール3と交差する方向に往復移動する。
【0025】
パークロッド9のロッド部9aには、コイルスプリング7が貫挿されている。コイルスプリング7は、その基端部がロッド部9aに形成したストッパ片9bに係合され、先端部がロッド部9aに摺動可能に貫挿された制御カム10と係合されている。
【0026】
制御カム10は、コイルスプリング7にて、常にロッド部9aの先端側に向かって付勢されている。そして、制御カム10は、そのテーパコーン状のカム面10aがロックポール3の反パーキングギヤ2側の面に摺接するようになっている。従って、パークロッド9のロッド部9aが位置決め板5の往復回動に伴い往復移動すると、制御カム10は、ロックポール3の反パーキングギヤ2側の面を摺接しながら往復移動する。その結果、制御カム10の摺動に基づいて、ロックポール3は、支軸4の中心軸線C1を回転中心として回動する。つまり、ロックポール3は、位置決め板5の回動によって、ロック位置とアンロック位置との間を回動することになる。
【0027】
詳述すると、ロックポール3が図1に示すアンロック位置にあるときに、位置決め板5が反時計回り方向に回ると、パークロッド9及び制御カム10がロックポール3側に移動する。制御カム10の移動に伴いロックポール3はパーキングギヤ2側に回動する。これによって、ロックポール3は、アンロック位置からロック位置に案内される。
【0028】
反対に、ロックポール3がロック位置にある状態から、位置決め板5が時計回り方向に回ると、パークロッド9及び制御カム10が反ロックポール3側に後退移動する。制御カム10の後退移動に伴いロックポール3は反パーキングギヤ2側に回動する。これによって、ロックポール3は、ロック位置からアンロック位置に案内される。
【0029】
なお、本実施形態では、ロックポール3は、図示しない弾性部材にて、図1において反時計回り方向に弾性力が与えられていて、常時、制御カム10に弾性的に接触している。
位置決め板5は、その円弧状の周面5aに、一対のロック保持凹部11及びアンロック保持凹部12が凹設されている。ロック保持凹部11は位置決め板5の周面5aの一側(図1において時計回り方向側)に形成されている。一方、アンロック保持凹部12は位置決め板5の周面5aの他側(図1において反時計回り方向側)に形成されている。
【0030】
そして、ロック保持凹部11及びアンロック保持凹部12の間の周面5aの形状は山形形状であって、最も高い最頂点がロック保持凹部11側に偏倚した非対称の山形形状ある。つまり、最頂点を境にロック保持凹部11側の周面5aは急な傾斜に形成され、アンロック保持凹部12側の周面5aは緩やかな傾斜に形成されている。
【0031】
位置決め板5の周面5aには、位置決めスプリング16の先端部に設けたローラ16aが弾性的に接触している。位置決めスプリング16は、板ばねからなり、その基端部が図示しない中間プレートに固定され、先端部に設けたローラ16aを位置決め板5の周面5aに対して常に押圧している。
【0032】
そして、位置決め板5がロックポール3のアンロック位置に相当する図1に示す第1回動位置(以下、「アンロック回動位置」ともいう)にあるとき、位置決めスプリング16は、ローラ16aがアンロック保持凹部12に嵌合することで、当該回動位置に位置決め板5を付勢保持する。反対に、位置決め板5がロックポール3のロック位置に相当する第2回動位置(以下、「ロック回動位置」ともいう)にあるとき、位置決めスプリング16は、ローラ16aがロック保持凹部11に嵌合することで、当該回動位置に位置決め板5を付勢保持する。
【0033】
詳述すると、位置決め板5が図1に示すアンロック回動位置ある状態(第1状態)から、位置決め板5が反時計回り方向に回動すると、位置決めスプリング16のローラ16aはアンロック保持凹部12から外れてロック保持凹部11に向かって周面5aを摺接する。そして、ローラ16aがアンロック保持凹部12から周面5aの最頂点を越えてロック保持凹部11に達すると、周面5aに押し付けられているローラ16aがロック保持凹部11に嵌合するようになっている。このとき、位置決め板5は、位置決めスプリング16によりロック回動位置に付勢保持される。
【0034】
反対に、位置決め板5がロック回動位置ある状態(第2状態)から、位置決め板5が時計回り方向に回動すると、位置決めスプリング16のローラ16aはロック保持凹部11から外れてアンロック保持凹部12に向かって周面5aを摺接する。そして、ローラ16aがロック保持凹部11から周面5aの最頂点を越えてアンロック保持凹部12に達すると、周面5aに押し付けられているローラ16aがアンロック保持凹部12に嵌合するようになっている。このとき、位置決め板5は、位置決めスプリング16によりアンロック回動位置に付勢保持される。
【0035】
次に、位置決め板5を回動駆動する駆動装置20について説明する。
図2に示すように、駆動装置20は、変速装置に隣接されたハウジングケース21にケーシングされている。このハウジングケース21は、有底略筒状の第1ケース22と、有蓋略筒状の第2ケース23とを有しており、開口部同士が互いに対向するように第1ケース22及び第2ケース23が嵌着されることで収容空間を形成する。
【0036】
第1ケース22には、第2ケース23から離れる方向に突出する略円筒状の支持部22aが形成されている。そして、支持部22aには、これに嵌着された略円筒状のブッシュ24を介して出力軸25が軸支されている。この出力軸25の支持部22aから第1ケース22の外側に突出する先端部は、縮径された略円柱状の連結部25aを形成する。出力軸25は、連結部25aにおいて前記位置決め板5に固着されている。従って、出力軸25は、位置決め板5と一体でその軸線Axを中心に回動する。なお、出力軸25には、第1ケース22内の先端面から凹む略円形の支持凹部25bが形成されている。
【0037】
ハウジングケース21内には、モータとしての誘導極型のブラシレスモータ30が収容及び保持されている。すなわち、第2ケース23には、支持部22aと同心の有蓋略円筒状の支持凹部23aが形成されている。また、第1ケース22には、軸線Axを中心とする互いに相反する径方向両側に配置された一対の有底略円筒状の取付凹部22bが形成されるとともに、第2ケース23には、軸線Axを中心とする互いに相反する径方向両側に配置された一対の有蓋略円筒状の取付凹部23bが形成されている。各取付凹部22b,23bは、開口部同士が互いに対向するように同心に配置されている。
【0038】
そして、ハウジングケース21内には、各対向する取付凹部22b,23bに両端が圧入及び固定された支持軸41,42が収容されている。なお、支持軸41,42は、軸線Axと平行な軸線Ax1,Ax2をそれぞれ有する。一方、ブラシレスモータ30は、その外形をなすホルダ31及びエンドプレート32と、ステータ33と、ロータ36とを備えて構成される。
【0039】
ホルダ31は、第1ケース22に近い位置でハウジングケース21内に収容されており、軸線Axに対して直交する方向に広がる略平板状の蓋壁部31aを有するとともに、軸線Axと同心で蓋壁部31aから第2ケース23に向かって突出する略円筒状の軸挿通部31bを有する。ホルダ31は、蓋壁部31aに両支持軸41,42が貫通され、且つ、蓋壁部31aの周縁部が第1ケース22に当接する状態でハウジングケース21内に位置決めされている。
【0040】
エンドプレート32は、第2ケース23に近い位置でハウジングケース21内に収容されており、軸線Axに対して直交する方向に広がる略平板状に成形されている。そして、エンドプレート32には、軸線Axと同心の略円形の軸挿通孔32aが形成されている。エンドプレート32は、両支持軸41,42が貫通され、且つ、支持凹部23a及び両取付凹部23bに当接する状態でハウジングケース21内に位置決めされている。
【0041】
ステータ33は、ステータコア34と、複数(本実施形態では6つ)のコイル35とを備えて構成される。そして、図3に併せ示すように、ステータコア34は、軸線Axと同心の略円筒状の本体部34aと、該本体部34aの内壁面から内周側に向かって突出する複数(本実施形態では12つ)の略T字柱状のティース部34bとを一体的に有する。そして、これらティース部34bのうち、軸線Axを中心とする互いに相反する径方向両側に配置された一対のティース部34b1,34b2には、軸線Axと平行に開口する略円形の支持孔34c,34dがそれぞれ形成されている。図2に示すように、ステータコア34は、軸挿通部31bよりも外周側であってホルダ31及びエンドプレート32に挟まれた位置で両支持孔34c,34dに両支持軸41,42がそれぞれ挿通され、且つ、蓋壁部31aに当接する状態でハウジングケース21内に位置決めされている。
【0042】
本実施形態では、ブラシレスモータ30が誘導極型であることに対応して、複数(12つ)のティース部34bのうち、一つ置きとなる複数(6つ)のティース部34bに複数のコイル35がそれぞれ巻回されている。具体的には、両ティース部34b1,34b2が外れる一つ置きとなる複数(6つ)のティース部34bに複数のコイル35がそれぞれ巻回されている。従って、ティース部34b1,34b2に支持孔34c,34dが形成されていても、ステータ33の形成する回転磁界への影響は僅少又は皆無である。
【0043】
ロータ36は、回転軸37と、ロータコア38と、マグネット39とを備えて構成される。そして、回転軸37は、軸線Axと同軸に配置されており、両端にそれぞれ形成された一対の略円柱状の支持部37a,37bと、支持部37bよりも拡径された略円柱状の挿通部37cと、該挿通部37cよりも更に拡径された略円柱状の固定部37dと、第1ヘリカルギヤ部37eとを一体的に有する。
【0044】
支持部37aは、出力軸25の支持凹部25bの内周側に配置されており、該支持凹部25bとの間に介設されたベアリング43を介して出力軸25に軸支されている。支持部37bは、第2ケース23の支持凹部23aの内周側に配置されており、該支持凹部23aとの間に介設されたベアリング44を介して第2ケース23に軸支されている。これにより、回転軸37は、軸線Axの周りに回転可能となっている。
【0045】
挿通部37cは、支持部37bに隣接配置されており、エンドプレート32を回転可能に貫通する。固定部37dは、挿通部37cに隣接配置されており、その先端部はホルダ31の軸挿通部31bの内周側に配置されている。第1ヘリカルギヤ部37eは、軸挿通部31bよりも内周側であって支持部37a及び固定部37d間に配置されており、その歯先円の直径は固定部37dの直径、即ち回転軸37の最大径以下に設定されている。そして、第1ヘリカルギヤ部37eは、そのギヤ径が十分に小さくなるように小歯数・大ねじれ角を有する、いわゆる小歯数ヘリカルギヤとなっている。
【0046】
ロータコア38は、ホルダ31の軸挿通部31b及びエンドプレート32間で回転軸37の固定部37dが貫通及び固定される略円盤状の連結部38aと、該連結部38aの外周部からホルダ31に近付く方向に突出する略円筒状の本体部38bとを一体的に有する。本体部38bは、軸線Axと同心でホルダ31の軸挿通部31b及びステータコア34間に配置されており、軸挿通部31bに嵌着された略円筒状のブッシュ45を介して回転可能に支持されている。マグネット39は、ステータコア34の内周側で本体部38bの外周面に固着されており、等角度間隔に磁極の極性(N極、S極)が切り替わる略円筒状に成形されている。
【0047】
以上により、ハウジングケース21内にブラシレスモータ30が収容及び保持されている。そして、ブラシレスモータ30に対して電源供給がなされると、ステータ33の形成する回転磁界と相互作用するロータ36(マグネット39)が軸線Axの周りを回転するようになっている。
【0048】
片側の支持軸41には、ホルダ31の蓋壁部31a及び第1ケース22間に挟まれる状態で中間ギヤ46が回転可能に支持されている。この中間ギヤ46は、蓋壁部31a及び出力軸25間に挟まれる略円盤状の第2ヘリカルギヤ部46aと、該第2ヘリカルギヤ部46aから第1ケース22に向かって突出して取付凹部22bの周縁部に当接する平歯車状の駆動ギヤ部46bとを一体的に有する。そして、中間ギヤ46は、第2ヘリカルギヤ部46aにおいて回転軸37の第1ヘリカルギヤ部37eと噛合する。従って、回転軸37が回転すると、これに連動して中間ギヤ46が回転する。この際、回転軸37の回転は、第1ヘリカルギヤ部37e及び第2ヘリカルギヤ部46aのギヤ比に応じて減速されて中間ギヤ46に伝達される。なお、軸線方向の位置において、中間ギヤ46の駆動ギヤ部46bは、出力軸25のハウジングケース21内に突出する部位と重なっている。
【0049】
図3に併せ示すように、出力軸25の当該突出する部位は、従動レバー47に貫通及び固定されている。この従動レバー47は、軸線Axを中心とする略扇形の小径部47aと、該小径部47aよりも拡径された同じく略扇形の大径部47bとを一体的に有する。それら小径部47a及び大径部47bは、軸線Axを中心とする周方向に連続するように互いに繋がっている。そして、大径部47bには、軸線Axを中心とする略円弧状の挿入孔47cが形成されている。
【0050】
図4に併せ示すように、挿入孔47cの軸線Axを中心とする径方向の開口幅は、駆動ギヤ部46bの直径よりも大きく設定されており、挿入孔47cの外周側の内壁面には、挿入孔47cに挿入された駆動ギヤ部46bと噛合する扇形の内歯車48が形成されている。従って、中間ギヤ46が回転すると、これに連動して内歯車48(従動レバー47)が出力軸25と共に回転する。この際、中間ギヤ46の回転は、駆動ギヤ部46b及び内歯車48のギヤ比に応じて減速されて従動レバー47等に伝達される。
【0051】
つまり、本実施形態では、減速第一段となる第1ヘリカルギヤ部37e及び第2ヘリカルギヤ部46aのギヤ比、並びに減速第二段となる駆動ギヤ部46b及び内歯車48のギヤ比は、回転軸37及び出力軸25が互いに同軸になるように組み合わされている。
【0052】
既述のように、出力軸25と一体回転する位置決め板5の回動範囲は、アンロック回動位置及びロック回動位置の間に制限されている。扇形の内歯車48の形成範囲は、少なくとも位置決め板5の回動範囲に相当する駆動ギヤ部46bとの噛合範囲を含むように設定されている。換言すれば、位置決め板5の回動範囲が制限されていることで、扇形の内歯車48で所要の回転伝達が満たされている。
【0053】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ブラシレスモータ30の回転軸37が回転すると、その回転が第1ヘリカルギヤ部37e及び第2ヘリカルギヤ部46a間で減速されて中間ギヤ46に伝達される。中間ギヤ46が回転すると、その回転が駆動ギヤ部46b及び内歯車48間で更に減速されて従動レバー47に伝達される。そして、従動レバー47の回転に伴い出力軸25が位置決め板5と共に回転する。これにより、位置決め板5は、アンロック回動位置に向かって一方向に回動し、あるいはロック回動位置に向かって他方向に回動する。
【0054】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、中間ギヤ46を支持する支持軸41は、ステータコア34に挿設されることで、支持軸41及び出力軸25の両軸線が近付く分、中間ギヤ46及び従動レバー47を軸線方向に投影した面積(投影面積)を縮小することができ、より小型軽量化することができる。特に、出力軸25を介して位置決め板5と一体回転する内歯車48は、アンロック回動位置及びロック回動位置間の位置決め板5の回動を許容し得る扇形であることで、例えば全周(360°)に亘って歯を有する環状の内歯車に比べて前記投影面積をいっそう縮小することができる。一方、支持軸41及び出力軸25の両軸線が近付くものの、中間ギヤ46の駆動ギヤ部46bの噛合対象が直径をより拡大可能な内歯車48であることで、所要の減速性能(減速比)を得ることができる。
【0055】
(2)本実施形態では、回転軸37及び出力軸25を互いに同軸に配置した。このため、出力軸25と共に従動レバー47及び位置決め板5が回転軸37の周辺に集約配置されることで、前記投影面積を更に縮小することができる。特に、出力軸25が駆動装置20の中央部に配置されていることで、回転軸37(ブラシレスモータ30)も駆動装置20の中央部に配置されることになり、該駆動装置20全体の投影面積を縮小することができる。
【0056】
(3)本実施形態では、従動レバー47は、内歯車48が扇形であることで該内歯車48と同一の軸線方向(板厚方向)の位置で出力軸25に連結することができ、当該軸線方向により薄型化することができる。
【0057】
(4)本実施形態では、従来と同等の投影面積を維持するのであれば、減速性能(減速比)を向上させることができ、例えばより小型で高回転低トルクのモータを採用することができる。これにより、モータの機動応答性及び停止性能を向上させることができ、例えば位置決めスプリング16による位置決め板5の位置決め構造を省略したとしても、複雑な制御をすることなくモータの駆動及び停止のみで位置決め板5等を位置決めすることができる。
【0058】
あるいは、従来と同等の減速性能(減速比)及び投影面積を維持するのであれば、各ギヤのモジュール(大きさ)を増加することができる。この場合、各ギヤの強度を増加できる分、該ギヤを軸線方向(板厚方向)により薄型化することができ、ひいては当該軸線方向に駆動装置20をより薄型化することができる。
【0059】
(5)本実施形態では、回転軸37の先端(支持部37a)を出力軸25に軸支したことで、例えば第1ケース22に軸支する必要がなくなり、該第1ケース22の形状をより簡素化することができる。
【0060】
(6)本実施形態では、第2ケース23が回転軸37の先端を支持する部位(支持凹部23a)と、第2ケース23が支持軸41の先端を支持する部位(取付凹部23b)とが互いに略同等の軸線方向の位置に配置されることで、当該方向に第2ケース23が大型化することを抑えることができる。
【0061】
(7)本実施形態では、ブラシレスモータ30が一体の駆動装置20を採用したことで、該駆動装置20全体としてより小型化することができる。
(8)本実施形態では、第1ヘリカルギヤ部37eの歯先円の直径を固定部37dの直径以下に設定して、第1ヘリカルギヤ部37eをいわゆる小歯数ヘリカルギヤとしたことで、第1ヘリカルギヤ部37e及び第2ヘリカルギヤ部46a間で高減速を実現することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図5に示すように、挿入孔47cに準じた凹部としての挿入孔52の出力軸25を中心とする周方向両側の内壁面52a,52bに一対の係合溝53,54がそれぞれ形成された従動レバー51を採用してもよい。それら係合溝53,54は、位置決め板5のアンロック回動位置及びロック回動位置に対応する従動レバー51の両回動位置において駆動ギヤ部46bの歯55がそれぞれ係入するように配置されている。このように変更することで、前記実施形態と同様の効果が得られることに加え、位置決め板5がアンロック回動位置又はロック回動位置に到達した時点で、従動レバー51の係合溝53,54に駆動ギヤ部46bの歯55が係入することで、従動レバー51等の回転をより確実に規制することができる。なお、挿入孔52に代えて、非貫通となる穴状の凹部を採用してもよい。
【0063】
・前記実施形態において、扇形の内歯車を有して出力軸25に回転可能に支持される第1従動レバーと、該第1従動レバーに重ねられて出力軸25に一体回転するように固定される第2従動レバーとで構成される従動レバーを採用してもよい。この場合、第1従動レバー及び第2従動レバー間に第1従動レバーの回転を第2従動レバーに伝達するための適宜の係合部を設ければよい。また、第2従動レバーは、第1従動レバーの外形を軸線方向に投影した範囲内に概ね収まるように成形することがより好ましい。
【0064】
・前記実施形態において、ブラシレスモータ30の回転軸37の先端(支持部37a)は、出力軸25に軸支されていなくてもよい。この場合、回転軸37の先端は、ハウジングケース21の収容空間を区画する適宜の仕切板に軸支すればよい。
【0065】
・前記実施形態において、回転軸37及び出力軸25は、それらの軸線が互いに平行であれば同軸に配置されていなくてもよい。
・前記実施形態において、支持軸41は、中間ギヤ46と一体回転可能なように両端がハウジングケース21(取付凹部22b,23b)に軸支されていてもよい。
【0066】
・前記実施形態では、位置決めスプリング16を板ばねで構成したが、例えば、コイルスプリングで実施してもよい。この場合、コイルスプリングの先端部にローラ16aを取着し、コイルスプリングの弾性力にて位置決め板5の周面5aにローラ16aを弾性的に接触させればよい。
【0067】
・前記実施形態において、位置決めスプリング16に設けたローラ16aに代えて、例えば丸棒状の嵌合部を採用してもよい。
・前記実施形態において、位置決めスプリング16による位置決め板5の位置決め構造を省略して、ブラシレスモータ30の駆動及び停止のみで位置決め板5等を位置決めするようにしてもよい。ただし、ブラシレスモータ30の駆動を停止した後にロックポール3の姿勢を保持するための構造は必須である。
【0068】
・前記実施形態において、ブラシレスモータ30の駆動回路は、ステータ33で回転磁界を形成できるのであれば任意である。
・前記実施形態において、ステータにステータコアが設けられるのであれば、ブラシモータを採用してもよい。
【0069】
・前記実施形態において、第1ヘリカルギヤ部37eは、小歯数ヘリカルギヤではない一般的なヘリカルギヤであってもよい。
・前記実施形態では、シフトレバーのPレンジ及びそれ以外のレンジ間で状態を切り替えるパーキングロック装置1に本発明を適用した。これに対して、シフトレバーのPレンジ以外の互いに異なる二つのレンジ(「R」「N」「D」等のうちの任意の二つのレンジ)間で状態を切り替えるシフト装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…パーキングロック装置(シフト装置)、5…位置決め板(切替部材)、21…ハウジングケース(ケース)、25…出力軸、30…ブラシレスモータ(モータ)、33…ステータ、34…ステータコア(コア)、37…回転軸、37e…第1ヘリカルギヤ部、41…支持軸、46…中間ギヤ、46a…第2ヘリカルギヤ部、46b…駆動ギヤ部、47,51…従動レバー、48…内歯車、52…挿入孔(凹部)、52a,52b…内壁面、53,54…係合溝、55…歯。
図1
図2
図3
図4
図5
図6