特許第6206117号(P6206117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206117電池モジュールの制御装置及び電池モジュールの状態判別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206117
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電池モジュールの制御装置及び電池モジュールの状態判別方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20170925BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170925BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01M10/48 P
   H02J7/00 Y
   B60L3/00 S
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-240656(P2013-240656)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-103283(P2015-103283A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中野 昇
(72)【発明者】
【氏名】下井田 良雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰仁
(72)【発明者】
【氏名】久保田 智也
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−122787(JP,A)
【文献】 特開2013−118757(JP,A)
【文献】 特開2007−311255(JP,A)
【文献】 特開2013−187960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
G01R31/36
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に直列に接続された複数の二次電池を有する電池モジュールを制御するための電池モジュールの制御装置であって、
複数の前記二次電池の端子電圧を繰り返し測定する端子電圧測定手段と、
前記端子電圧測定手段が一回測定する毎に、複数の前記二次電池の端子電圧における最大値と、複数の前記二次電池の端子電圧における最小値と、の差である端子電圧差を演算する第1の演算手段と、
第1の端子電圧差群と、第2の端子電圧差群と、に前記端子電圧差を分類する分類手段と、
前記分類手段による分類結果に基づいて、前記端子電圧差の経時変化パターンを判定するパターン判定手段と、を備え
前記第1の端子電圧差群は、複数の前記二次電池の端子電圧における平均値が所定の第1の電圧範囲に属する前記端子電圧差の群であり、
前記第2の端子電圧差群は、前記平均値が前記第1の電圧範囲よりも相対的に低い所定の第2の電圧範囲に属する前記端子電圧差の群であり、
前記パターン判定手段は、電圧状態間差が第1の所定値以上である場合に、前記経時変化パターンは第1の乖離パターンであると判定し、
前記パターン判定手段は、前記電圧状態間差が前記第1の所定値未満である場合に、前記経時変化パターンは第1の追従パターンであると判定し、
前記電圧状態間差は、前記第1の端子電圧差群の最大値である前記端子電圧差と、前記第2の端子電圧差群の最大値である前記端子電圧差と、の絶対差であり、
前記第1の乖離パターンは、前記第1の端子電圧差群と、前記第2の端子電圧差群と、の間が経時的に広がるような前記経時変化パターンであり、
前記第1の追従パターンは、前記第1の端子電圧差群と、前記第2の端子電圧差群と、が経時的に互いに追従するような前記経時変化パターンであることを特徴とする電池モジュールの制御装置。
【請求項2】
電気的に直列に接続された複数の二次電池を有する電池モジュールを制御するための電池モジュールの制御装置であって、
複数の前記二次電池の端子電圧を繰り返し測定する端子電圧測定手段と、
前記端子電圧測定手段が一回測定する毎に、複数の前記二次電池の端子電圧における最大値と、複数の前記二次電池の端子電圧における最小値と、の差である端子電圧差を演算する第1の演算手段と、
第3の端子電圧差群と、第4の端子電圧差群と、に前記端子電圧差を分類する分類手段と、
前記分類手段による分類結果に基づいて、前記端子電圧差の経時変化パターンを判定するパターン判定手段と、を備え
前記第3の端子電圧差群は、複数の前記二次電池の端子電圧における平均値が所定の第3の電圧範囲に属する前記端子電圧差の群であり、
前記第4の端子電圧差群は、前記平均値が前記第3の電圧範囲よりも相対的に低い所定の第4の電圧範囲に属する前記端子電圧差の群であり、
前記パターン判定手段は、傾き差が第2の所定値以上の場合に、前記経時変化パターンは第2の乖離パターンであると判定し、
前記パターン判定手段は、前記傾き差が前記第2の所定値未満の場合に、前記経時変化パターンは第2の追従パターンであると判定し、
前記傾き差は、第1の回帰直線の傾きと、第2の回帰直線の傾きと、の絶対差であり、
前記第2の乖離パターンは、前記第3の端子電圧差群と、前記第4の端子電圧差群と、の間が経時的に広がるような前記経時変化パターンであり、
前記第2の追従パターンは、前記第3の端子電圧差群と、前記第4の端子電圧差群と、が経時的に互いに追従するような前記経時変化パターンであり、
前記第1の回帰直線は、前記第3の端子電圧差群と、経過時間と、の関係を示す回帰直線であり、
前記第2の回帰直線は、前記第4の端子電圧差群と、経過時間と、の関係を示す回帰直線であることを特徴とする電池モジュールの制御装置。
【請求項3】
請求項に記載の電池モジュールの制御装置であって、
前記第1の端子電圧差群又は前記第2の端子電圧差群と、経過時間と、の関係を直線近似した際の直線相関係数及び曲線近似した際の曲線相関係数を演算する第2の演算手段を備え、
前記第2の演算手段は、前記経時変化パターンは前記第1の追従パターンであると前記パターン判定手段が判定した場合に、前記直線相関係数を演算し、
前記パターン判定手段は、前記直線相関係数が0.6以上である場合に、前記経時変化パターンは前記第1の端子電圧差群又は前記第2の端子電圧差群が経時的に直線的に増加するような直線増加パターンであると判定し、
前記第2の演算手段は、前記直線相関係数が0.6未満である場合には、前記曲線相関係数をさらに演算し、
前記パターン判定手段は、前記曲線相関係数が0.6以上である場合に、前記経時変化パターンは前記第1の端子電圧差群又は前記第2の端子電圧差群が経時的に曲線的に増加するような曲線増加パターンであると判定することを特徴とする電池モジュールの制御装置。
【請求項4】
請求項に記載の電池モジュールの制御装置であって、
記第3の端子電圧差群又は前記第4の端子電圧差群と、経過時間と、の関係を直線近似した際の直線相関係数及び曲線近似した際の曲線相関係数を演算する第2の演算手段を備え、
前記第2の演算手段は、前記経時変化パターンは前記第2の追従パターンであると前記パターン判定手段が判定した場合に、前記直線相関係数を演算し、
前記パターン判定手段は、前記直線相関係数が0.6以上である場合に、前記経時変化パターンは前記第3の端子電圧差群又は前記第4の端子電圧差群が経時的に直線的に増加するような直線増加パターンであると判定し、
前記第2の演算手段は、前記直線相関係数が0.6未満である場合には、前記曲線相関係数をさらに演算し、
前記パターン判定手段は、前記曲線相関係数が0.6以上である場合に、前記経時変化パターンは前記第3の端子電圧差群又は前記第4の端子電圧差群が経時的に曲線的に増加するような曲線増加パターンであると判定することを特徴とする電池モジュールの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池を備えた電池モジュールの制御装置及び電池モジュールの状態判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単電池を複数接続した非水系二次電池モジュールにおいて、単電池ごとの電圧を監視し、非水系二次電池モジュールの放電深度が80%以上の状態における当該単電池の最小電圧と最大電圧の電圧差が設定値以上となった場合に、あらかじめ決定された制御を行い、単電池の電圧ばらつきの平準化を行う制御法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−282151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術において、単電池の最小電圧と最大電圧の電圧差が設定値以上となる原因については判断することができない。このため、非水系二次電池モジュールが有する不具合の種類に応じた制御を行うことができない場合があるという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電池モジュールが有する不具合の種類に応じた制御が可能な電池モジュールの制御装置及び電池モジュールの状態判別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電気的に接続された複数の二次電池において、それぞれの二次電池の端子電圧における最大値と最小値との差である端子電圧差を所定の条件に従って分類し、当該分類結果に基づいて端子電圧差の経時変化パターンを判定することにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、端子電圧差における経時変化パターンの判定結果に基づいて、電池モジュールが有する不具合の種類を推定することができる。これにより、当該電池モジュールが有する不具合の種類に応じて当該電池モジュールの制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態における制御装置を有する制御システムを搭載した車両の概念図である。
図2図2は、本発明の実施形態における制御装置を有する制御システムを示すブロック図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態における制御装置による制御を示すフローチャート(その1)である。
図3B図3Bは、本発明の実施形態における制御装置による制御を示すフローチャート(その2)である。
図4図4(A)及び図4(B)は、本発明の実施形態における第1及び第2の乖離パターンを説明するためのグラフであり、図4(A)は第1の乖離パターンを説明するためのグラフであり、図4(B)は第2の乖離パターンを説明するためのグラフである。
図5図5は、本発明の実施形態における直線増加パターンを説明するためのグラフである。
図6図6は、本発明の実施形態における曲線増加パターンを説明するためのグラフである。
図7図7は、二次電池におけるSOCと端子電圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本実施形態における制御装置を有する制御システムを搭載した車両の概念図であり、図2は本実施形態における制御装置を有する制御システムを示すブロック図である。
【0011】
本実施形態における制御装置4を有する制御システム11は、図1及び図2に示すように、当該制御装置4に加え、電池モジュール2と、動力部3と、報知装置5と、を備えている。本実施形態において、当該制御システム11は、電気自動車等の車両1に搭載されている。なお、当該制御システム11を家庭用蓄電装置等に使用してもよい。
【0012】
電池モジュール2は、図2に示すように、リチウムイオン二次電池等から構成される二次電池21が、電気的に直列に複数(n個)接続されて構成されている。
【0013】
動力部3は、電動モータ等から構成されており、特に図示しないインバータによって交流に変換された電池モジュール2の電力を消費して車両1を駆動させる。
【0014】
本実施形態における制御装置4は、図2に示すように、端子電圧測定部41と、第1の演算部42と、閾値判定部421と、分類部43と、タイマー441、記憶部442と、パターン判定部45と、第2の演算部46と、制御部47と、を備えている。
【0015】
端子電圧測定部41は、電圧計等から構成されており、車両2の発進準備を行う毎に、電池モジュール2を構成するn個の二次電池21におけるそれぞれの端子電圧(V、V、・・・、V)を繰り返し測定する機能を有している。端子電圧測定部41で測定された各二次電池21の端子電圧の値は第1の演算部42に送出される。本実施形態における端子電圧測定部41が、本発明の端子電圧測定手段の一例に相当する。
【0016】
第1の演算部42は、端子電圧測定部41がn個の二次電池21の端子電圧(V、V、・・・、V)を測定する毎に、電池モジュール2を構成するn個の二次電池21の端子電圧の平均値Vave(=(V+V、・・・+V)/n)を演算する。また、第1の演算部42は、当該n個の端子電圧の中から最大値Vmaxと最小値Vminとの差(Vmax−Vmin)を演算する。以下の説明において、この差(Vmax−Vmin)を端子電圧差ΔVとも称する。本実施形態における第1の演算部42が、本発明の第1の演算手段の一例に相当する。
【0017】
第1の演算部42、及び、以下に説明する閾値判断部421、分類部43、タイマー441、記憶部442、パターン判定部45、第2の演算部46、及び制御部47としては、例えば、CPU、ROM、RAM等を主体に構成することができる。
【0018】
閾値判定部421は、第1の演算部42が演算した端子電圧差ΔVが、予め設定した所定の閾値を超えているか否かを判定する。当該判定の結果を受けて第1の演算部42は、端子電圧差ΔVが当該閾値を超えている場合には、端子電圧差ΔV、及び、端子電圧(V、V、・・・、V)の平均値Vaveを分類部43に送出する。
【0019】
分類部43は、第1の演算部42が演算した端子電圧差ΔVの分類を行う。具体的には、端子電圧の平均値Vaveが所定の第1の電圧範囲(V1low≦Vave≦V1high)に属する当該端子電圧差ΔVの群(以下、第1の端子電圧差群とも称する。)と、端子電圧の平均値Vaveが所定の第2の電圧範囲(V2low≦Vave≦V2high)に属する当該端子電圧差ΔVの群(以下、第2の端子電圧差群とも称する。)と、に端子電圧差ΔVを分類する。この場合において、第2の電圧範囲(V2low≦Vave≦V2high)は、第1の電圧範囲(V1low≦Vave≦V1high)よりも相対的に低く設定されている(V2high<V1low)。分類された端子電圧差ΔVは、記憶部442に送出される。本実施形態における分類部43が、本発明の分類手段の一例に相当する。
【0020】
タイマー441は、制御装置4が制御を開始してからの経過時間を測定する機能を有している。
【0021】
記憶部442は、タイマー441の測定結果に基づいて、分類部43が分類した端子電圧差ΔVを時系列で記憶する。また、記憶した端子電圧差ΔVをパターン判定部45に送出する。
【0022】
パターン判定部45は、記憶部442に記憶されている端子電圧差ΔVの分類結果に基づいて、当該端子電圧差ΔVの経時変化パターンを判定する。また、パターン判定部45は、第2の演算部46による演算結果に応じて、端子電圧差ΔVの経時変化パターンをさらに判定する。パターン判定部45による判定結果は、制御部47に送出される。本実施形態におけるパターン判定部45が、本発明のパターン判定手段の一例に相当する。
【0023】
第2の演算部46は、第1の端子電圧差群と経過時間との関係について直線近似した際の相関係数(直線相関係数)の演算を行うと共に、第1の端子電圧差群と経過時間の関係について曲線近似した際の相関係数(曲線相関係数)の演算を行う。なお、第2の端子電圧差群と経過時間との関係について相関係数(直線相関係数及び曲線相関係数)の演算を行うこととしてもよく、第1の端子電圧差群及び第2の端子電圧差群の両方のデータと経過時間との関係について相関係数(直線相関係数及び曲線相関係数)の演算を行うこととしてもよい。
【0024】
制御部47は、パターン判定部45によって判定された端子電圧差ΔVの経時変化パターンに基づいて、予め設定された制御を行う。また、制御部47は、当該判定結果に基づいて、車両1のドライバに対する報知を行うよう報知装置5に指令を送る。
【0025】
報知装置5は、制御部47からの指令を受けて、車両1のドライバに対し画像や音声、警告ランプ等により報知を行う。
【0026】
次に、本実施形態における制御装置4が行う制御について説明する。図3A及び図3Bは制御装置4による制御を示すフローチャートであり、図4(A)、図4(B)、図5、及び図6は端子電圧差ΔVの経時変化パターンを説明するためのグラフである。なお、本例では、リチウムイオン二次電池を二次電池21として用い、当該二次電池21を100個直列に接続して(n=100)電池モジュール2を構成した場合について説明する。
【0027】
まず、ステップS01として、車両1のスタートスイッチがオンにされると、ステップS02として、当該車両1に対する走行禁止制御の有無を判定する。この走行禁止制御とは、車両1が起動しないようにする制御であり、車両1に何らかの不具合等がある場合に実行される制御である。走行禁止制御が行われている場合には、制御部4による制御を終了する。走行禁止制御が行われていない場合には、ステップS03へと進む。
【0028】
ステップS03では、車両1が起動され、制御装置4の端子電圧測定部41が、電池モジュール2を構成する各二次電池21の端子電圧(V、V、・・・、V)を測定する(本発明の第1のステップの一例に相当する。)。
【0029】
次いでステップS04では、端子電圧測定部41が測定した二次電池21の端子電圧に基づいて、第1の演算部42が端子電圧差ΔVを測定する(本発明の第2のステップの一例に相当する。)。そして、当該端子電圧ΔVが所定の閾値(本例では100mV)以上であると閾値判定部421が判定した場合には、ステップS05へと進む。このように、端子電圧差ΔVが所定の閾値以上である場合について以下の制御を行うことにより、端子電圧差ΔVにおける経時変化パターンの判定時における誤判定の抑制を行う。端子電圧差ΔVが当該閾値未満であると閾値判定部421が判定した場合においては、スタートスイッチがオフとなり(ステップS13)、制御を終了する。
【0030】
ステップS05では、まず、第1の演算部42が二次電池21の端子電圧(V、V、・・・、V)の平均値Vaveを算出する。そして、分類部43が所定の条件に従って端子電圧差ΔVを分類する。すなわち、当該平均値Vaveが所定の第1の電圧範囲(V1low≦Vave≦V1high)に属する場合には、端子電圧差ΔVを第1の端子電圧差群に分類部43が分類する。一方、平均値Vaveが所定の第2の電圧範囲(V2low≦Vave≦V2high)に属する場合には、端子電圧差ΔVを第2の端子電圧差群に分類部43が分類する(本発明の第3のステップの一例に相当する。)。そして、記憶部442は、時系列に沿って行われた上記の分類結果を記憶する。
【0031】
次いで、当該分類結果及び、記憶部442に記憶された過去の端子電圧差ΔVの分類結果に基づいて、パターン判定部45は、第1の端子電圧差群における端子電圧差ΔVの最大値ΔV1maxと、第2の端子電圧差群における端子電圧差ΔVの最大値ΔV2maxと、の絶対差D(=ΔV2max−ΔV1max 。以下、電圧状態間差Dとも称する。)を計算し、ステップS06へと進む。
【0032】
なお、ステップS05における上記の分類において、V2high<(二次電池21におけるSOC50%未満の電圧)、且つ、V1low≧(二次電池21におけるSOC50%以上の電圧)として、第1及び第2の電圧範囲を設定してもよい。また、V2high<3900mV、且つ、V1low≧3900mVを満たすように第1及び第2の電圧範囲を設定してもよい。これらの場合には、第1の端子電圧差群、及び第2の端子電圧差群の傾向の違いが顕著となり、端子電圧差ΔVの経時変化パターンの判定をより正確に行うことができる。
【0033】
また、ステップS05における分類結果の記憶において、平均値Vaveが3900mVよりも高い場合には(Vave>3900mV)、端子電圧差ΔVに係数h(h>1)を乗じて規格化し、平均値Vaveが3900mVである場合には(Vave=3900mV)、端子電圧差ΔVに係数h(h=1)を乗じて規格化し、平均値Vaveが3900mVよりも低い場合には(Vave<3900mV)、端子電圧差ΔVに係数h(h<1)を乗じて規格化した端子電圧差を記憶部442がそれぞれ記憶することとしてもよい。この場合においても、第1の端子電圧差群、及び第2の端子電圧差群の傾向の違いが顕著となり、端子電圧差ΔVの経時変化パターンの判定時における正確性を向上することができる。
【0034】
また、ステップS05における平均値Vaveに代えて、電池モジュール2が有する全ての二次電池21の端子電圧(V、V、・・・、V)の最大値Vmaxを用いて、上記の分類を行ってもよい。この場合には、平均値Vaveの演算を省略できることにより第1の演算部42の演算負荷を軽減することができる。
【0035】
フローチャート(図3B)に戻り、ステップS06では、電圧状態間差Dが100mV(本発明の第1の所定値の一例に相当する。)以上であり(D≧100mV)、且つ、第1の端子電圧差群における端子電圧差ΔVの最大値ΔV1maxが所定値(本例では100mV)未満(ΔV1max<100mV)である場合には(ステップS06においてYes)、ステップS07へと進む。
【0036】
ステップS07では、パターン判定部45が、一定期間(d日間)における端子電圧差ΔVの経時変化パターンは、図4(A)のグラフに示すような乖離パターン(第1の端子電圧差群(グラフa)と第2の端子電圧差群(グラフb)との間が経時的に広がるような経時変化パターン。本発明の第1の乖離パターンの一例に相当する。)であると判定する(本発明の第4のステップの一例に相当する。)。なお、端子電圧差ΔVの経時変化パターンを判定する際の一定期間(d日間)としては、当該判定の正確性向上の観点から5日以上であることが好ましく、30日以上であることがさらに好ましい。
【0037】
そして、この判定結果を受けて制御部47は、電池モジュール2を構成する複数の二次電池21のうちの一部の二次電池21において、電極間の容量バランスの劣化が生じている旨の報知をドライバに対して行うよう報知装置5に対して指令を出す。次いで、スタートスイッチがオフにされると(ステップS13)、制御は終了する。
【0038】
なお、この場合においてパターン判定部45は、図4(B)に示すように、一定期間(d日間)において、第1の端子電圧差群(図中のグラフa。本発明の第3の端子電圧差群の一例に相当する。)と経過時間との相関関係を示す第1の回帰直線の傾きGと、第2の端子電圧差群(図中のグラフb。本発明の第4の端子電圧差群の一例に相当する。)と経過時間との相関関係を示す第2の回帰直線の傾きGと、の絶対差(G―G)に基づいて、端子電圧差ΔVの経時変化パターンを判定してもよい。
【0039】
具体的には、パターン判定部45は、第1の回帰直線の傾きと第2の回帰直線の傾きとの絶対差が第2の所定値(例えば、0.3)以上であり、且つ、第1の回帰直線の傾きが所定値(例えば0.2)以下である場合には、端子電圧差ΔVの経時変化パターンは乖離パターン(本発明の第2の乖離パターンの一例に相当する。)であると判定する。
【0040】
また、第1の回帰直線の傾きと第2の回帰直線の傾きとの絶対差が第2の所定値(例えば、0.3)未満であり、且つ、第1の回帰直線の傾きが所定値(例えば0.2)よりも大きい場合には、当該経時変化パターンは追従パターン(後述。本発明の第2の追従パターンの一例に相当する。)であると判定する。これらの場合においては、一定期間(d日間)の端子電圧差ΔVの傾向に基づいて、当該端子電圧差ΔVの経時変化パターンをより正確に判定することができる。
【0041】
図3Bに戻り、ステップS06においてNoの場合には、端子電圧差ΔVの経時変化パターンは追従パターン(第1の端子電圧差群と第2の端子電圧差群とが経時的に乖離せず、互いに追従するような経時変化パターン。本発明の第1の追従パターンの一例に相当。)であるとパターン判定部45が判定し、ステップS08へと進む。
【0042】
ステップS08では、電圧状態間差Dが100mV未満であり(D<100mV)、且つ、第1の端子電圧差群における端子電圧差ΔVの最大値ΔV1maxが所定値(本例では100mV)以上(ΔV1max≧100mV)である場合には(ステップS08においてYes)、ステップS09へと進む。ステップS08においてNoの場合には、スタートスイッチがオフとなり(ステップS13)、制御を終了する。
【0043】
ステップS09では、第2の演算部46において、第1の端子電圧差群と、制御装置4が制御を始めてからの経過時間と、の関係を直線近似した際の相関係数R(以下、直線相関係数Rとも称する。)の演算を行う。そして、当該直線相関係数Rが0.6以上(R≧0.6)である場合には、一定期間(d日間)における端子電圧差ΔVの経時変化パターンは直線増加パターン(第1の端子電圧差群(図5のグラフa)又は第2の端子電圧差群(図5のグラフb)が経時的に直線的に増加するような経時変化パターン)であるとパターン判定部45が判定し、ステップS10へと進む。
【0044】
ステップS10では、パターン判定部45の判定結果を受けて、電池モジュール2を構成するバスバー(不図示)や二次電池21を構成するタブや電極活物質層(何れも不図示)における接触不良等(以下、機械的劣化とも称する。)により不具合が発生している旨の報知をドライバに対して行うよう制御部47が報知装置5に対して指令を出す。また、制御部47は、一定時間経過後(例えば7日後)に車両1の走行禁止制御を行う。次いで、スタートスイッチがオフにされると(ステップS13)、制御は終了する。
【0045】
ステップS09において、直線相関係数Rが0.6未満(R<0.6)である場合には、ステップS11へと進む。
【0046】
ステップS11では、第2の演算部46において、第1の端子電圧差群と、制御装置4が制御を始めてからの経過時間と、の関係を曲線近似した際の相関係数R(以下、曲線相関係数Rとも称する。)の演算を行う。この場合において、曲線近似する曲線は、二次曲線や三次曲線であってもよく、下記(1)式で表される任意の次数kの多項式により近似を行ってもよい。
Y=A×X+B×X(k−1)+・・・+Z ・・・(1)
但し、上記(1)式において、Xは経過時間であり、Yは端子電圧差ΔVであり、A、B及びZは任意の定数である。
【0047】
曲線相関係数Rが0.6以上(R≧0.6)である場合には、一定期間(d日間)における端子電圧差ΔVの経時変化パターンは曲線増加パターン(第1の端子電圧差群(図6のグラフa)又は第2の端子電圧差群(図6のグラフb)が経時的に曲線的に増加するような経時変化パターン。)であるとパターン判定部45が判定し、ステップS12へと進む。
【0048】
ステップS12では、パターン判定部45の判定結果を受けて、二次電池21内において電極表面の皮膜生成や電解液の分解等による不可逆反応での劣化(以下、化学的劣化とも称する。)による不具合が発生している旨の報知をドライバに対して行うよう制御部47が報知装置5に対して指令を出すと共に、車両1の走行禁止制御を行う。次いで、スタートスイッチがオフにされると(ステップS13)、制御は終了する。
【0049】
曲線相関係数Rが0.6未満(R<0.6)であった場合には、端子電圧差ΔVの経時変化パターンに応じた制御を制御部47は行わず、スタートスイッチがオフにされると(ステップS13)、制御は終了する。
【0050】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0051】
本実施形態における制御装置4は、端子電圧測定部41が測定した二次電池21の端子電圧に基づいて、第1の演算部42が端子電圧差ΔVを演算し、当該端子電圧差ΔVの経時変化パターンに応じて電池モジュール2の制御を行う。これにより、当該電池モジュール2が有する不具合の種類を推定し、当該推定の結果に基づいて各二次電池21の制御を行うことができる。
【0052】
すなわち、一般に、二次電池の端子電圧と当該二次電池のSOC(State of Charge)とは正の相関関係にあるため、SOCが増大すると端子電圧も増大する傾向にある(図7のグラフa)。ここで、低SOC側において端子電圧が低下する場合には(図7のグラフb)、二次電池の電極間における容量バランスの劣化等が生じていると推定される。そして、複数の二次電池の一部においてこの様な劣化が生じている場合には、端子電圧差ΔVの経時変化パターンは乖離パターンとなる。
【0053】
このため、端子電圧差ΔVの経時変化パターンが乖離パターンであると判定された場合には、電池モジュール2を構成する複数の二次電池21のうちの一部の二次電池21に対して、当該劣化に適した制御を行うことが可能となる。
【0054】
また、SOCの全範囲に亘って端子電圧が低下する場合には(図7のグラフc)、二次電池において機械的劣化又は化学的劣化が生じていると推定される。そして、複数の二次電池の全体においてこの様な劣化が生じている場合には、端子電圧差ΔVの経時変化パターンは追従パターンとなる。従って、制御装置4のパターン判定部45によって、端子電圧差ΔVの経時変化パターンが追従パターンであると判定された場合には、電池モジュール2を構成する複数の二次電池21の全体に対して当該劣化に適した制御を行うことが可能となる。
【0055】
この場合において、端子電圧差ΔVの経時変化パターンが直線増加パターンであるときは、二次電池21において発生している劣化は機械的劣化であるとさらに推定される。このため、電池モジュール2が有する二次電池21の全体に対して、当該機械的劣化に適した制御を行うことが可能となる。
【0056】
また、パターン判定部45によって、端子電圧差ΔVの経時変化パターンが曲線増加パターンであると判定された場合には、二次電池21において発生している劣化は化学的劣化であるとさらに推定される。このため、電池モジュール2が有する二次電池21の全体に対して、当該化学的劣化に適した制御を行うことが可能となる。
【0057】
この様に、本実施形態における制御装置4は、端子電圧差ΔVの経時変化パターンに基づいて電池モジュール2が有する不具合の種類を推定し、当該不具合の種類や緊急度に応じて適切な制御を行うことが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、判定された経時変化パターン(乖離パターン、直線増加パターン、及び曲線増加パターン)に応じて、車両1のドライバに対して報知を行う。これにより、当該ドライバが電池モジュール2の状態(不具合の有無、不具合の種類)を認識することができると共に、電池モジュール2に不具合が生じている場合には、ドライバに対して当該不具合の種類に応じた適切な処置を促すことができる。
【0059】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0060】
例えば、特に図示しないが、外部に設けられたデータセンタとデータの送受信を行う送受信装置を車両に設けることにより、端子電圧測定部による測定結果を当該データセンタに送信し、当該データセンタが、上述した第1及び第2の演算部、閾値判定部、分類部、タイマー、記憶部及びパターン判定部の役割を担うこととしてもよい。
【0061】
また、例えば、車両に設けた送受信装置を介して、当該車両の交換部品を管理する外部のシステムに対し、電池モジュールの状態に関する情報(不具合の有無、種類等)を送信し、当該システムは、受信した情報に基づいて、当該車両が必要とする交換部品の在庫管理を行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1・・・車両
2・・・電池モジュール
21・・・二次電池
4・・・制御装置
41・・・端子電圧測定部
42・・・第1の演算部
43・・・分類部
45・・・パターン判定部
46・・・第2の演算部
47・・・制御部
5・・・報知装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7