(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー部材の前記第1本体取付部は、前記オイルシール固定部の近傍で、かつ、前記カバー部材の周縁部よりも内側に配置されている、請求項1または2に記載の内燃機関。
前記第1締結部材が挿入され、前記クランクシャフトの延びる方向における前記内燃機関本体に対する前記カバー部材の位置決め部が設けられた外周部を有する金属製の筒状部材をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関。
前記位置決め部は、前記第1フランジ状部分とともに前記金属製の筒状部材の前記外周部に設けられ、前記内燃機関本体に当接する第2フランジ状部分をさらに含む、請求項8に記載の内燃機関。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたオイルシールの抜け止め装置では、熱歪み(熱膨張または熱収縮に起因する歪み)などに起因してハウジングが変形した場合、ハウジングの変形に伴ってハウジングの開口も変形すると考えられる。この際、開口の変形に起因して、ハウジングの開口に固定されたオイルシールにも位置ずれが発生するため、オイルシールによる十分なシール性を確保することができなくなるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、オイルシールによる十分なシール性を確保することが可能な内燃機関および内燃機関のカバー部材取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における内燃機関は、内燃機関本体のクランクシャフトに装着されるオイルシールと、クランクシャフトに装着されたオイルシールを固定するためのオイルシール固定部と、オイルシール固定部の近傍に配置され、内燃機関本体に第1締結部材によって取り付けるための第1本体取付部とを含むカバー部材とを備え
、オイルシール固定部は、オイルシールが挿入されて固定される凹部を含み、第1締結部材のうち、第1本体取付部の内燃機関本体とは反対側の面に当接する部分は、オイルシール固定部の凹部におけるオイルシールが挿入されている部分の少なくとも一部を覆うように突出して設けられている。
【0008】
この発明の第1の局面による内燃機関では、上記のように、カバー部材に、オイルシール固定部の近傍に配置され、内燃機関本体に第1締結部材によって取り付けるための第1本体取付部を設けることによって、熱歪み(熱膨張または熱収縮に起因する歪み)などに起因してカバー部材が変形したとしても、オイルシール固定部の近傍に配置されたカバー部材の第1本体取付部が第1締結部材により内燃機関本体に締結されているので、オイルシール固定部の近傍ではカバー部材の変形を抑制することができる。これにより、カバー部材の変形に起因するオイルシールの位置ずれを抑制することができるので、オイルシールによる十分なシール性を確保することができる。
また、オイルシール固定部は、オイルシールが挿入されて固定される凹部を含み、第1締結部材のうち、第1本体取付部の内燃機関本体とは反対側の面に当接する部分は、オイルシール固定部の凹部におけるオイルシールが挿入されている部分の少なくとも一部を覆うように突出して設けられている。これにより、カバー部材を内燃機関本体に取り付けるための第1締結部材に、オイルシールが凹部に挿入された側から脱落するのを抑制する機能を持たせることができるので、専用のオイルシール脱落防止部材を別途設ける必要がなく、構造を簡素化することができる。
【0009】
上記第1の局面による内燃機関において、好ましくは、第1締結部材と第1本体取付部周辺との間をシールするシール材をさらに備える。このように構成すれば、シール材により、オイルシール固定部の近傍に配置された第1締結部材と第1本体取付部周辺との間からオイルが漏れ出るのを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による内燃機関において、好ましくは、カバー部材の第1本体取付部は、オイルシール固定部の近傍で、かつ、カバー部材の周縁部よりも内側に配置されている。このように構成すれば、オイルシール固定部から離れたカバー部材の周縁部に、内燃機関本体に対する取付部が形成されている場合と異なり、オイルシール固定部の近傍に第1本体取付部を配置することができるので、オイルシール固定部におけるカバー部の変形を容易に抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、第1本体取付部は、オイルシール固定部を挟むかまたは囲むように複数設けられている。このように構成すれば、オイルシール固定部の近傍をより強固に固定(締結)することができるので、オイルシール固定部の近傍におけるカバー部材の変形をより抑制することができる。その結果、オイルシールの位置ずれをより抑制することができるので、オイルシールによる十分なシール性をより確実に確保することができる。
【0012】
上記第1の局面による内燃機関において、好ましくは、カバー部材は、カバー部材の周縁部に沿って配置され、内燃機関本体に第2締結部材によって取り付けるための第2本体取付部をさらに備え、第1本体取付部は、カバー部材の周縁部に配置された第2本体取付部よりも内側のオイルシール固定部の近傍に配置されている。このように構成すれば、第1本体取付部だけでなく、第2本体取付部においてもカバー部材が内燃機関本体に取り付けられることにより、内燃機関本体にカバー部材をより強固に固定することができる。また、カバー部材の周縁部の第2本体取付部においてカバー部材が内燃機関本体に取り付けられることにより、カバー部材が変形した場合であっても、カバー部材のオイルシール固定部の近傍のみならず、周縁部の位置ずれも抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による内燃機関において、例えば、カバー部材は、内燃機関本体を構成するアルミニウムおよびアルミニウム合金よりも線膨張係数が大きい材料からなる。このような、内燃機関本体よりもカバー部材の線膨張係数が大きく、その結果、カバー部材が熱歪みにより変形しやすい場合であっても、カバー部材に、オイルシール固定部の近傍に配置され、内燃機関本体に第1締結部材によって取り付けるための第1本体取付部を設けることによって、オイルシール固定部の近傍ではカバー部材の変形を抑制することができるので、カバー部材の変形に起因するオイルシールの位置ずれを抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面による内燃機関において、好ましくは、第1締結部材が挿入され、クランクシャフトの延びる方向における内燃機関本体に対するカバー部材の位置決め部が設けられた外周部を有する金属製の筒状部材をさらに備える。このように構成すれば、位置決め部が設けられた筒状部材に第1締結部材を挿入してカバー部材を内燃機関本体に取り付けることにより、クランクシャフトの延びる方向における、内燃機関本体に対するカバー部材のオイルシール固定部の近傍での位置決めを容易に行うことができる。また、筒状部材が金属からなることによって、筒状部材が樹脂材料などの熱歪みが発生しやすい材料などからなる場合と比べて、筒状部材における熱歪みの影響を小さくすることができるので、クランクシャフトの延びる方向における、内燃機関本体に対するカバー部材のオイルシール固定部の近傍での位置決めをより正確に行うことができる。
【0016】
この場合、好ましくは、位置決め部は、金属製の筒状部材の外周部に設けられ、カバー部材の内燃機関本体側の部分に当接する第1フランジ状部分を含む。このように構成すれば、第1フランジ状部分をカバー部材の内燃機関本体側の部分に当接させた状態で第1締結部材による締結を行うことにより、クランクシャフトの延びる方向における、内燃機関本体に対するカバー部材のオイルシール固定部の近傍での位置決めをより容易に行うことができる。
【0017】
上記位置決め部が第1フランジ状部分を含む構成において、好ましくは、位置決め部は、第1フランジ状部分とともに金属製の筒状部材の外周部に設けられ、内燃機関本体に当接する第2フランジ状部分をさらに含む。このように構成すれば、第1フランジ状部分をカバー部材の内燃機関本体側の部分に当接させるとともに、第2フランジ状部分を内燃機関本体に当接させることにより、クランクシャフトの延びる方向における、内燃機関本体に対するカバー部材のオイルシール固定部の近傍での位置決めを筒状部材だけで完了させることができるので、筒状部材以外の部材の公差を考慮する必要がなく、位置決め精度を向上させることができる。これにより、カバー部材のオイルシール固定部に固定されたオイルシールのクランクシャフトの延びる方向における位置決めも正確に行うことができる。
【0018】
上記筒状部材を備える構成において、好ましくは、内燃機関本体は、金属製の筒状部材が挿入される位置決め穴を含み、金属製の筒状部材が位置決め穴に挿入されることによって、クランクシャフトの延びる方向に直交する方向における内燃機関本体に対するカバー部材の位置決めが行われるように構成されている。このように構成すれば、クランクシャフトの延びる方向だけでなく、クランクシャフトの延びる方向に直交する方向においても、内燃機関本体に対するカバー部材の位置決めを行うことができるので、カバー部材のオイルシール固定部に固定されるオイルシールを所定の位置により確実に固定することができる。
【0019】
この発明の第2の局面における内燃機関のカバー部材取付構造は、内燃機関のクランクシャフトに装着されたオイルシールを固定するためのオイルシール固定部と、オイルシール固定部の近傍に配置され、内燃機関本体に第1締結部材によって取り付けるための第1本体取付部とを含むカバー部材を備え
、オイルシール固定部は、オイルシールが挿入されて固定される凹部を含み、第1締結部材のうち、第1本体取付部の内燃機関本体とは反対側の面に当接する部分は、オイルシール固定部の凹部におけるオイルシールが挿入されている部分の少なくとも一部を覆うように突出して設けられている。
【0020】
この発明の第2の局面による内燃機関のカバー部材取付構造では、上記のように、カバー部材に、オイルシール固定部の近傍に配置され、内燃機関本体に第1締結部材によって取り付けるための第1本体取付部を設けることによって、熱歪み(熱膨張または熱収縮に起因する歪み)などに起因してカバー部材が変形したとしても、オイルシール固定部の近傍に配置されたカバー部材の第1本体取付部が第1締結部材により内燃機関本体に締結されているので、オイルシール固定部の近傍ではカバー部材の変形を抑制することができる。これにより、カバー部材の変形に起因するオイルシールの位置ずれを抑制することができるので、オイルシールによる十分なシール性を確保することができる。
また、オイルシール固定部は、オイルシールが挿入されて固定される凹部を含み、第1締結部材のうち、第1本体取付部の内燃機関本体とは反対側の面に当接する部分は、オイルシール固定部の凹部におけるオイルシールが挿入されている部分の少なくとも一部を覆うように突出して設けられている。これにより、カバー部材を内燃機関本体に取り付けるための第1締結部材に、オイルシールが凹部に挿入された側から脱落するのを抑制する機能を持たせることができるので、専用のオイルシール脱落防止部材を別途設ける必要がなく、構造を簡素化することができる。
【0021】
なお、本出願では、上記第1の局面による内燃機関において、以下のような構成も考えられる。
【0022】
(付記項1)
すなわち、上記第1の局面による内燃機関において、カバー部材は樹脂製である。このように、カバー部材が比較的熱膨張係数が大きい樹脂からなることに起因して、カバー部材が熱歪みにより変形しやすい場合であっても、カバー部材に、オイルシール固定部の近傍に配置され、内燃機関本体に第1締結部材によって取り付けるための第1本体取付部を設けることによって、オイルシール固定部の近傍ではカバー部材の変形を抑制することができるので、カバー部材の変形に起因するオイルシールの位置ずれを抑制することができる。
【0023】
(付記項2)
また、上記第1の局面による内燃機関において、内燃機関本体は、第1締結部材が挿入される位置決め穴を含み、第1締結部材が位置決め穴に挿入されることによって、クランクシャフトの延びる方向に直交する方向における内燃機関本体に対するカバー部材の位置決めが行われるように構成されている。このように構成すれば、クランクシャフトの延びる方向に直交する方向における内燃機関本体に対するカバー部材の位置決めが行われることにより、カバー部材のオイルシール固定部に固定されるオイルシールを、クランクシャフトの延びる方向に直交する方向における所定の位置に確実に配置することができる。また、筒状部材を用いる必要がないので、内燃機関の部品点数を減少させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上記のように、オイルシールによる十分なシール性を確保することが可能な内燃機関および内燃機関のカバー部材取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1実施形態)
まず、
図1〜
図6を参照して、本発明の第1実施形態によるエンジン100の構成について説明する。なお、以下では、エンジン100におけるクランクシャフト5の延びる方向をX方向とするとともに、クランクシャフト5に直交する方向のうち、エンジン100の短手方向をY方向とし、エンジン100の長手方向をZ方向として説明を行う。なお、エンジン100は、本発明の「内燃機関」の一例である。
【0028】
本発明の第1実施形態による自動車用のエンジン100は、
図1に示すように、シリンダヘッド1、シリンダブロック2およびクランクケース3を含むアルミニウム合金製のエンジン本体10を備えている。また、ガソリン機関からなるエンジン100は、エンジン本体10のX2側の側部に組み付けられる樹脂製のタイミングチェーンカバー20(以降、TCC20と称する)と、シリンダヘッド1の上側(Z1側)に組み付けられるヘッドカバー1aとを備えている。TCC20は、タイミングチェーン4をX2側から覆うように配置されている。なお、エンジン本体10は、本発明の「内燃機関本体」の一例であり、TCC20は、本発明の「カバー部材」の一例である。
【0029】
なお、TCC20およびヘッドカバー1aは、共に、ポリアミドから構成されている。このポリアミドは、エンジン本体10を構成するアルミニウム合金よりも線膨張係数が大きく、アルミニウム合金よりも熱膨張または熱収縮に起因する熱歪みが発生しやすい。
【0030】
シリンダヘッド1の内部には、カムシャフトおよびバルブ機構(図示せず)などが配置されている。シリンダヘッド1の下方(Z2側)に接続されるシリンダブロック2の内部には、ピストン(図示せず)がZ方向に往復動するシリンダ2a(破線で示す)が形成されている。また、シリンダヘッド1には、シリンダブロック2に形成された複数(4つ)のシリンダ2aのそれぞれに吸気を導入する吸気装置(図示せず)が接続されている。また、シリンダブロック2の下方(Z2側)に接続されるクランクケース3の内部には、ピストンおよびコンロッドを介して回転可能に接続されたクランクシャフト5が配置されている。なお、
図1においては、クランクシャフト5を概略棒形状に図示しているが、実際には、クランクシャフト5は、各シリンダ2aの直下において回転軸が偏心されたクランクピンとこのクランクピンを挟み込むバランスウェイトとがクランクジャーナルに接続されて構成されている。
【0031】
また、エンジン本体10のX2側には、
図5に示すように、クランクシャフト5をX2側に露出させるための貫通孔10aが形成されている。また、エンジン本体10の表面10bのうち、TCC20の後述する一対の取付孔部23に対応(X方向に対向)する部分には、それぞれ、位置決め凹部11が形成されている。この位置決め凹部11では、
図6に示すように、X1側に雌ねじ11cが形成され、入口側(X2側)に雌ねじ11cのねじ谷の径D2よりも大きな内径D1をもつ内周面11bが形成されているとともに、内周面11bおよび雌ねじ11cの境界に段差部11aが形成されている。なお、位置決め凹部11は、本発明の「位置決め穴」の一例である。
【0032】
また、
図1に示すように、エンジン本体10のX2側で、かつ、Y方向の両側(Y1側およびY2側)には、それぞれ、TCC20の後述する周縁部24に対向するように、縁部12(Y2側は図示せず)が設けられている。この縁部12には、後述する複数の貫通孔24cの各々に対応する複数のねじ穴(図示せず)が形成されている。
【0033】
また、クランクケース3の下部(Z2側)には、
図1に示すように、エンジンオイルを溜めるオイル溜め部3aが設けられている。エンジンオイルは、図示しないオイルポンプによりオイル溜め部3aからエンジン本体10内の上部に汲み上げられてカムシャフトやピストン外周面などの摺動部を潤滑にした後、自重により落下してオイル溜め部3aに戻される。
【0034】
TCC20は、
図2に示すように、エンジン本体10(
図1参照)のX2側の側断面形状に重なるような平面形状を有している。また、TCC20には、
図3および
図4に示すように、本体部21の下部側(Z2側)で、かつ、Y方向の中央部近傍に貫通孔22aを有するボス部22(
図4参照)が形成されている。ボス部22は、
図5および
図6に示すように、TCC20の本体部21の他の領域と比べて、厚み方向(X方向)の長さが大きくなるように形成されている。また、貫通孔22aは、本体部21をX方向に貫通しており,貫通孔22aにクランクシャフト5が挿通されるとともに、クランクシャフト5に装着されたオイルシール6が圧入されて固定されるように構成されている。この際、
図5に示すように、貫通孔22aの中心軸Aと、クランクシャフト5の回転軸Cとが一致するように構成されている。
【0035】
また、TCC20における貫通孔22aの周囲には、エンジン本体10側(X1側)の端部に形成され、クランクシャフト5側(貫通孔22aの中心軸A側)に向かって周状に突出する鍔部30aと、鍔部30aよりもエンジン本体10とは反対側(X2側)の内周面30bとから構成される凹部30が形成されている。この凹部30では、クランクシャフト5に装着されるオイルシール6がX2側の開口30cから挿入(圧入)されて固定されるように構成されている。なお、オイルシール6の外径は、凹部30の内周面30bの内径よりも微小量だけ大きくなるように構成されており、その結果、オイルシール6が凹部30に圧入されて固定されるように構成されている。なお、凹部30は、本発明の「オイルシール固定部」の一例である。
【0036】
また、鍔部30aは、TCC20の空間Sにおける内圧が外圧(大気圧)よりも小さくなった場合に、X1側に移動するオイルシール6が鍔部30aに当接することによって、オイルシール6がX1側から脱落するのを抑制する機能を有している。
【0037】
ここで、第1実施形態では、
図5に示すように、TCC20の凹部30(貫通孔22a)の近傍には、厚み方向(X方向)に貫通する一対の取付孔部23が設けられている。この一対の取付孔部23は、TCC20をエンジン本体10に締結ボルト8によって取り付けるために設けられている。また、一対の取付孔部23は、それぞれ、取付孔部23の中心軸Bが凹部30の開口30cに対して上側(Z1側)および下側(Z2側)に長さL1だけ離れた状態で、凹部30の近傍に形成されている。また、取付孔部23は、中心軸Aに対して約180度の等角度間隔で、TCC20の凹部30(クランクシャフト5)をZ方向に挟むように一対設けられている。なお、取付孔部23は、本発明の「第1本体取付部」の一例である。
【0038】
また、取付孔部23は、ステンレスなどの金属からなるカラー7と、カラー7に挿入される締結ボルト8とが挿入されるように構成されている。なお、
図5に示す凹部30近傍の取付孔部23、カラー7および締結ボルト8の構造はZ1側およびZ2側で共通であるので、
図6では、Z2側の取付孔部23、カラー7および締結ボルト8の構造のみを拡大して示す。また、カラー7および締結ボルト8は、それぞれ、本発明の「筒状部材」および「第1締結部材」の一例である。
【0039】
図6に示すように、取付孔部23のX2側には、周状に囲むようにX1側に窪む凹部23aが形成されている。また、カラー7は、円筒状に形成されており、内部を締結ボルト8が挿入されるように構成されている。このカラー7の外周部7aには、外側(取付孔部23の中心軸Bから離れる方向)に向かって周状に突出する一対のフランジ部70および71が一体的に形成されている。このフランジ部70および71は、それぞれ、カラー7の外周部7aのX1側およびX2側に形成されている。
【0040】
また、カラー7の外径は、X1側において、エンジン本体10の位置決め凹部11におけるX2側の内周面11bの内径D1よりも小さくなるように形成されており、その結果、カラー7が位置決め凹部11に挿入されることによって、カラー7が位置決め凹部11に固定されるように構成されている。この際、X1側のフランジ部70は、エンジン本体10側(X1側)の端面70aがエンジン本体10の表面10bに当接するように構成されている。また、カラー7のX1側の端部7bは、エンジン本体10の位置決め凹部11の段差部11aには当接しないように構成されている。つまり、カラー7の端部7bと段差部11aとの間には隙間が形成されている。また、カラー7と内周面11bとの間にも、若干の隙間(図示せず)が形成されている。なお、フランジ部70は、本発明の「第2フランジ状部」および「位置決め部」の一例である。
【0041】
また、カラー7の外径は、X2側において、TCC20の取付孔部23の内径D1よりも微小量だけ大きくなるように形成されており、その結果、カラー7が取付孔部23に挿入(圧入)されることによって、カラー7が取付孔部23に固定されるように構成されている。この際、X2側のフランジ部71が、エンジン本体10とは反対側(X2側)の端面71aがTCC20の本体部21の裏面21a(エンジン本体10側の表面)に当接するとともに、カラー7のX2側の端部7cとTCC20の本体部21の表面21bとが、略面一になるように構成されている。なお、フランジ部71は、本発明の「第1フランジ状部」および「位置決め部」の一例である。
【0042】
また、カラー7のX1側の端部(X1側のフランジ部70よりもX1側の部分)がエンジン本体10の位置決め凹部11に挿入されるとともに、カラー7のX2側の端部(X2側のフランジ部71よりもX2側の部分)がTCC20の取付孔部23に挿入(圧入)されることによって、クランクシャフト5と直交する面内方向(Y方向およびZ方向)でのエンジン本体10に対するTCC20の位置決めが行われるように構成されている。また、X1側のフランジ部70がエンジン本体10の表面10bに当接するとともに、X2側のフランジ部71がTCC20のX1側の裏面21aに当接することによって、クランクシャフト5の延びる方向(X方向)でのエンジン本体10に対するTCC20の位置決めが行われるように構成されている。
【0043】
締結ボルト8は、頭部8aと、雄ねじが形成されたねじ部8bと、フランジ部8cとを含んでいる。この締結ボルト8は、フランジ部8cがTCC20のX2側の表面21bに当接した状態で、ねじ部8bのX1側がエンジン本体10の位置決め凹部11の雌ねじ11cに螺合されるように構成されている。
【0044】
また、
図5に示すように、フランジ部8cの半径L2は、取付孔部23の中心軸Bと凹部30の開口30cとの間の長さL1よりも大きくなるように形成されている。これにより、フランジ部8cの凹部30側の外縁部周辺は、凹部30のオイルシール6が挿入されている部分の一部をX2側から覆うように、クランクシャフト5側に向かって突出するように構成されている。これにより、フランジ部8cは、TCC20の空間Sにおける内圧が外圧(大気圧)よりも大きくなりオイルシール6がX2側に移動した場合であっても、オイルシール6がフランジ部8cに当接することによって、オイルシール6がX2側から脱落するのを抑制する機能を有している。
【0045】
また、
図6に示すように、フランジ部8cのX1側の面には、リング状のシール部材8dが取り付けられている。このシール部材8dは、取付孔部23のX2側の開口の凹部23aに嵌合されることによって、締結ボルト8のフランジ部8cと、TCC20の取付孔部23周辺の表面21bとの間をシールするように構成されている。なお、シール部材8dは、本発明の「シール材」の一例である。
【0046】
また、
図2に示すように、取付孔部23に挿入されたカラー7および締結ボルト8がタイミングチェーン4に干渉(接触)しないように、一対の取付孔部23は、タイミングチェーン4から離間した位置に形成されている。
【0047】
また、
図3〜
図5に示すように、TCC20の周縁部24は、エンジン本体10側(X1側、
図5参照)に突出した状態で、本体部21の周囲に形成されている。この結果、TCC20の周縁部24に囲まれた領域にタイミングチェーン4などが配置される空間S(
図5参照)が形成されている。また、一対の取付孔部23は、周縁部24の内側に形成されている。
【0048】
また、
図4に示すように、周縁部24におけるエンジン本体10側(X1側)裏面24aは、平坦面状に形成されている。また、裏面24aには、断面が凸形状に形成された溝部24bが本体部21の全周に亘って形成されている。また、溝部24bには、
図5に示すように、ゴム製のシール部材80が溝部24bの全体に亘って嵌め込まれている。このシール部材80は、X1方向に押し潰れた状態となってエンジン本体10の表面10bとTCC20の周縁部24とに密着するように構成されている。これにより、エンジン本体10とTCC20の周縁部24との隙間からオイルが漏れ出るのが抑制されるように構成されている。
【0049】
また、エンジン本体10とTCC20とは、シール部材80を介して、所定の隙間を有して浮かせた状態(互いにX方向に離間した状態)で固定されている。これにより、エンジン本体10とTCC20とを直接的に接触させて固定する場合と異なり、エンジン本体10の振動がTCC20に直接的に伝達されるのを抑制することができるので、エンジン本体10の騒音が外部へ伝達されるのを抑制することが可能である。
【0050】
また、
図3および4に示すように、TCC20のY方向の両側(Y1側およびY2側)の周縁部24では、溝部24bよりも外側の位置に、複数(6つ)の貫通孔24cが各々形成されている。この貫通孔24cの各々は、周縁部24に沿ってZ方向に並ぶように配置されているとともに、周縁部24を厚み方向(X方向、
図5参照)に貫通している。また、
図2に示すように、各々の貫通孔24cに挿入された複数の締結ボルト90がエンジン本体10の図示しないねじ穴に螺合されることによって、締結ボルト90によってエンジン本体10にTCC20が取り付けられている。なお、取付孔部23は、周縁部24の貫通孔24cよりも内側(凹部30側)に形成されている。また、貫通孔24cは、本発明の「第2本体取付部」の一例であり、締結ボルト90は、本発明の「第2締結部材」の一例である。
【0051】
また、
図1に示すように、TCC20の内部の空間Sにおいては、クランクシャフト5に取り付けられたクランクシャフトタイミングスプロケット(図示せず)と、シリンダヘッド1の内部に組み込まれたカムシャフト(図示せず)駆動用のカムシャフトタイミングスプロケット31とがタイミングチェーン4によって繋がれている。また、TCC20の内部の空間Sにおいては、エンジンオイルがタイミングチェーン4やクランクシャフト5に供給されるように構成されている。
【0052】
また、TCC20の外部においては、クランクシャフト5のX2側の端部には、クランクプーリ(図示せず)がクランクシャフト5と一体に回転されるように取り付けられている。そして、エンジン100に取り付けられる冷却水循環用のウォータポンプ(図示せず)や車内空調用のコンプレッサ(図示せず)などの補機類は、クランクプーリに掛けられたベルト(図示せず)により駆動される。また、クランクシャフト5のX1側の端部は、変速機などからなる動力伝達部(図示せず)に接続されている。
【0053】
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0054】
第1実施形態では、上記のように、TCC20の凹部30(貫通孔22a)の近傍(取付孔部23の中心軸Bが凹部30の開口30cに対して長さL1だけ離れた位置)に、TCC20をエンジン本体10に締結ボルト8によって取り付けるための一対の取付孔部23を設ける。これにより、熱歪み(熱膨張または熱収縮に起因する歪み)などに起因してTCC20が変形したとしても、凹部30の近傍に配置されたTCC20の取付孔部23が締結ボルト8によりエンジン本体10に締結されているので、凹部30の近傍ではTCC20の変形を抑制することができる。これにより、TCC20の変形に起因するオイルシール6の位置ずれを抑制することができるので、オイルシール6による十分なシール性を確保することができる。
【0055】
また、第1実施形態では、締結ボルト8のフランジ部8cとTCC20の取付孔部23周辺の表面21bとの間をシールするシール部材8dを設けることによって、シール部材8dにより、凹部30の近傍に配置されたカラー7および締結ボルト8と取付孔部23との間からエンジンオイルが漏れ出るのを抑制することができる。
【0056】
また、第1実施形態では、取付孔部23を周縁部24よりも内側(凹部30側)に形成することによって、凹部30から離れたTCC20の周縁部24に、エンジン本体10に対する取付部が形成されている場合と異なり、凹部30の近傍に取付孔部23を配置することができるので、凹部30におけるTCC20の変形を容易に抑制することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、取付孔部23をTCC20の凹部30をZ方向に挟むように一対設けることによって、凹部30の近傍をより強固に固定(締結)することができるので、凹部30の近傍におけるTCC20の変形をより抑制することができる。その結果、オイルシール6の位置ずれをより抑制することができるので、オイルシール6による十分なシール性をより確実に確保することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、周縁部24に形成された各々の貫通孔24cを、締結ボルト90によってエンジン本体10にTCC20が取り付けられるように構成することによって、取付孔部23だけでなく、貫通孔24cにおいてもTCC20がエンジン本体10に取り付けられることにより、エンジン本体10にTCC20をより強固に固定することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、TCC20の周縁部24の貫通孔24cにおいてTCC20がエンジン本体10に取り付けられることによって、TCC20が変形した場合であっても、TCC20の凹部30の近傍のみならず、周縁部24の位置ずれも抑制することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、締結ボルト8のフランジ部8cを、凹部30のオイルシール6が挿入されている部分の一部をX2側から覆うように、クランクシャフト5側に向かって突出して設けることによって、TCC20をエンジン本体10に取り付けるための締結ボルト8のフランジ部8cに、オイルシール6が凹部30に挿入されたX2側から脱落するのを抑制する機能を持たせることができるので、専用のオイルシール脱落防止部材を別途設ける必要がなく、構造を簡素化することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、TCC20を、エンジン本体10を構成するアルミニウム合金よりも線膨張係数が大きい樹脂からなるように構成したことによって、エンジン本体10よりもTCC20の線膨張係数が大きく、その結果、TCC20が熱歪みにより変形しやすい場合であっても、TCC20に、凹部30の近傍に配置され、エンジン本体10に締結ボルト8によって取り付けるための取付孔部23を設けることによって、凹部30の近傍ではTCC20の変形を抑制することができるので、TCC20の変形に起因するオイルシール6の位置ずれを抑制することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、外周部7aに外側(取付孔部23の中心軸Bから離れる方向)に向かって周状に突出する一対のフランジ部70および71が一体的に形成され、締結ボルト8が挿入されるカラー7を設けることによって、一対のフランジ部70および71が設けられたカラー7に締結ボルト8のねじ部8bを挿入してTCC20をエンジン本体10に取り付けることにより、クランクシャフト5の延びるX方向における、エンジン本体10に対するTCC20の凹部30の近傍での位置決めを容易に行うことができる。
【0063】
また、第1実施形態では、カラー7がステンレスなどの金属からなることによって、カラー7が樹脂材料などの熱歪みが発生しやすい材料などからなる場合と比べて、カラー7における熱歪みの影響を小さくすることができるので、X方向における、エンジン本体10に対するTCC20の凹部30の近傍での位置決めをより正確に行うことができる。
【0064】
また、第1実施形態では、フランジ部71をTCC20の本体部21の裏面21aに当接させることによって、フランジ部71をTCC20の裏面21aに当接させた状態で締結ボルト8による締結を行うことにより、クランクシャフト5の延びるX方向における、エンジン本体10に対するTCC20の凹部30の近傍での位置決めをより容易に行うことができる。
【0065】
また、第1実施形態では、フランジ部71をTCC20の本体部21の裏面21aに当接させるとともに、フランジ部70をエンジン本体10の表面10bに当接させることによって、X方向における、エンジン本体10に対するTCC20の凹部30の近傍での位置決めをカラー7だけで完了させることができるので、カラー7以外の部材(エンジン本体10およびTCC20)の公差を考慮する必要がなく、位置決め精度を向上させることができる。これにより、TCC20の凹部30に固定されたオイルシール6のX方向における位置決めも正確に行うことができる。
【0066】
また、第1実施形態では、カラー7のX1側の端部がエンジン本体10の位置決め凹部11に挿入されるとともに、カラー7のX2側の端部がTCC20の取付孔部23に挿入されることによって、クランクシャフト5と直交する面内方向(Y方向およびZ方向)でのエンジン本体10に対するTCC20の位置決めが行われるように構成する。これにより、TCC20の凹部30に固定されるオイルシール6を面内方向における所定の位置に確実に配置することができる。
【0067】
また、第1実施形態では、締結ボルト8およびカラー7を、それぞれ、締結および位置決めに別途用いることによって、締結ボルト8を締結だけでなく位置決めにも用いる場合と異なり、締結と位置決めとを同時に行う必要がない。これにより、容易にTCC20の位置決めを行うことができる。
【0068】
また、第1実施形態では、取付孔部23を中心軸Aに対して約180度の等角度間隔で一対設けることによって、凹部30の近傍を略均等に固定することができるので、TCC20の変形が局所的に大きくなるのを抑制することができる。これにより、オイルシール6を所定の位置により十分に固定することができる。
【0069】
(第1実施形態の変形例)
次に、
図7を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。この第1実施形態の変形例では、カラー7に一対のフランジ部70および71を設けた上記第1実施形態とは異なり、カラー207に1つのフランジ部71のみを設けた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。また、カラー207は、本発明の「筒状部材」の一例である。
【0070】
第1実施形態の変形例のカラー207には、
図7に示すように、TCC20の裏面21a(エンジン本体10側の表面)に当接するX2側のフランジ部71が一体的に形成されている一方、エンジン本体10の表面10bに当接するX1側のフランジ部は形成されていない。これにより、X1側のフランジ部を形成する必要がないので、より容易にカラー207を作製することが可能である。
【0071】
また、上記第1実施形態と異なり、カラー207のX1側の端部207bは、エンジン本体10の位置決め凹部11の段差部11aに当接するように構成されている。これにより、カラー207のX1側の端部207bがエンジン本体10の位置決め凹部11の段差部11aに当接するとともに、X2側のフランジ部71がTCC20裏面21a(エンジン本体10側の表面)に当接することによって、クランクシャフト5の延びる方向(X方向)でのエンジン本体10に対するTCC20の位置決めが行われるように構成されている。なお、第1実施形態の変形例におけるその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。つまり、上記のような締結構造が、クランクシャフト5のZ2側だけでなく、Z1側にも設けられている。
【0072】
(第2実施形態)
次に、
図6および
図8を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態の締結ボルト8に代えて、スタットボルト380とフランジナット381とを用いた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
【0073】
本発明の第2実施形態では、
図8に示すように、上記第1実施形態とは異なり、カラーが設けられていないとともに、上記第1実施形態の締結ボルト8(
図6参照)の代わりに、スタットボルト380とフランジナット381とを含む締結部材308が用いられている。このスタットボルト380は、雄ねじが設けられていない胴部380aと、胴部380aをX方向の両側から挟み込むようにX1側およびX2側にそれぞれ形成され、雄ねじが設けられたねじ部380bおよび380cとを有している。なお、締結部材308は、本発明の「第1締結部材」の一例である。
【0074】
また、スタットボルト380のねじ部380bおよび380cは、共に略同一のねじ山の径(外径D3)を有する一方、胴部380aの外径D4は、ねじ部380bおよび380cの外径D3よりも大きくなるように形成されている。さらに、胴部380aのX1側の端面は、エンジン本体310の表面10bに当接するように構成されているとともに、X2側の端面は、TCC320の本体部321の裏面21a(エンジン本体310側の表面)に当接するように構成されている。これにより、胴部380aにより、クランクシャフト5の延びる方向(X方向)でのエンジン本体310に対するTCC320の位置決めが行われるように構成されている。この結果、スタットボルト380だけで、クランクシャフト5の延びるX方向におけるエンジン本体310に対するTCC320の位置決めを完了させることができるので、スタットボルト380以外の部材(エンジン本体310およびTCC320)の公差を考慮する必要がない。なお、エンジン本体310およびTCC320は、それぞれ、本発明の「内燃機関本体」および「カバー部材」の一例である。
【0075】
また、スタットボルト380のX1側のねじ部380bは、エンジン本体310の位置決め凹部311に螺合されるように構成されている。この位置決め凹部311は、上記第1実施形態の段差部11aが形成された位置決め凹部11(
図6参照)とは異なり、ねじ部380bが螺合可能な雌ねじ311aのみを有している。また、スタットボルト380のX2側のねじ部380cは、ねじ部380cの外径D3よりも若干大きな内径の取付孔部323に挿通された状態で、フランジナット381に螺合されるように構成されている。なお、位置決め凹部311は、本発明の「位置決め穴」の一例であり、取付孔部323は、本発明の「第1本体取付部」の一例である。
【0076】
また、フランジナット381は、TCC320の表面21b側に配置されるフランジ部381aを有している。このフランジ部381aの半径は、取付孔部323の中心軸Bと凹部30の開口30cとの間の長さよりも大きくなるように形成されている。これにより、フランジ部381aの凹部30側の外縁部周辺は、凹部30のオイルシール6が挿入されている部分の一部をX2側から覆うように、クランクシャフト5側に向かって突出するように構成されている。これにより、フランジナット381のフランジ部381aにより、オイルシール6が凹部30に挿入されたX2側から脱落するのを確実に抑制することが可能である
【0077】
また、TCC320の取付孔部323のX2側の開口部近傍には、X1側からX2側に向かって開口幅(内径)が徐々に大きくなるように形成されているとともに、シール部材8dが配置される凹部323aが形成されている。なお、シール部材8dは、フランジナット381のフランジ部381aと、TCC320の取付孔部323周辺の表面21bとの間をシールするように構成されている。
【0078】
また、スタットボルト380のX1側のねじ部380bがエンジン本体310の位置決め凹部311に螺合された状態で、かつ、ねじ部380cがねじ部380cの外径D3よりも若干大きな内径の取付孔部323に挿通された状態で、フランジナット381のフランジ部381aがTCC320の表面21bに当接するように、フランジナット381をスタットボルト380のX2側のねじ部380cに螺合する。この際、上記したように、胴部380aのX1側の端面がエンジン本体310の表面10bに当接するとともに、X2側の端面がTCC320の裏面21aに当接する。これにより、クランクシャフト5と直交する面内方向(Y方向およびZ方向)でのエンジン本体310に対するTCC320の位置決めと、クランクシャフト5の延びる方向(X方向)でのエンジン本体310に対するTCC320の位置決めとが行われるように構成されている。
【0079】
また、スタットボルト380のねじ部380cの表面には、図示しないシール材が塗布されている。このシール材は、ねじ部380cがフランジナット381に螺合する際に、互いのねじ谷を埋めるように配置されることによって、ねじ部380cとフランジナット381との間をシールするように構成されている。このように、TCC320の凹部323aに配置されるシール部材8dと、スタットボルト380のねじ部380cの表面に塗布されたシール材との両方を用いることによって、より確実に、オイルが外部に漏れ出るのを抑制することが可能である。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。つまり、上記のような締結構造が、クランクシャフト5のZ2側だけでなく、Z1側にも設けられている。
【0080】
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0081】
第2実施形態では、上記のように、TCC320の凹部30(貫通孔22a)の近傍に、TCC320をエンジン本体310にフランジナット381によってスタットボルト380を介して取り付けるための取付孔部323を設けることによって、上記第1実施形態と同様に、TCC320の変形に起因するオイルシール6の位置ずれを抑制することができるので、オイルシール6による十分なシール性を確保することができる。
【0082】
また、第2実施形態では、スタットボルト380のX1側のねじ部380bがエンジン本体310の位置決め凹部311に螺合された状態で、フランジナット381のフランジ部381aがTCC320の表面21bに当接するように、フランジナット381をスタットボルト380のX2側のねじ部380cに螺合する。これにより、面内方向(Y方向およびZ方向)におけるエンジン本体310に対するTCC320の位置決めが行われることによって、TCC320の凹部30に固定されるオイルシール6を、面内方向における所定の位置に確実に配置することができる。また、カラーを用いる必要がないので、エンジンの部品点数を減少させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0083】
(第3実施形態)
次に、
図6、
図8および
図9を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態のTCC20とは異なり、TCC420に締結ボルト408が挿入される円筒部425を設けた例について説明する。なお、TCC420および締結ボルト408は、それぞれ、本発明の「カバー部材」および「第1締結部材」の一例である。また、図中において、上記第1および第2実施形態と同様の構成には、第1および第2実施形態と同じ符号を付して図示している。
【0084】
本発明の第3実施形態によるTCC420のうち、凹部30(貫通孔22a)の近傍には、円筒部425がTCC420と一体的に設けられている。この円筒部425は、X方向に延びる円筒状に形成されているとともに、円筒部425の内部には、厚み方向(X方向)に延びる取付孔部423が設けられている。また、TCC420がエンジン本体310に取り付けられた状態で、円筒部425のX1側の端部425aとエンジン本体310の表面10bとは、所定の隙間を隔てるように構成されている。なお、取付孔部423は、本発明の「第1本体取付部」の一例である。
【0085】
また、円筒部425の端部425aとエンジン本体310の表面10bとの隙間には、隙間を埋めるようにOリングからなるシール部材481が配置されている。このシール部材481は、X1方向に押し潰れた状態となって円筒部425の端部425aとエンジン本体310の表面10bとに密着するように構成されている。これにより、シール部材481により、締結ボルト408のフランジ部8cとTCC420の本体部421(取付孔部423)との間をシールすることが可能である。
【0086】
また、締結ボルト408は、上記第1実施形態と同様の頭部8aおよびフランジ部8c(
図6参照)と、上記第2実施形態のねじ部380b(
図8参照)と同様のねじ部408eと、ねじ部408eの外径D3よりも大きな外径D5を有する胴部408fとを有している。なお、フランジ部8cには、上記第1実施形態のシール部材8d(
図6参照)は設けられていない。また、胴部408fの外径D5は、円筒部425の取付孔部423の内径D6よりも若干小さくなるように形成されており、胴部408fと円筒部425とが所定の間隔を隔てた状態で、締結ボルト408の胴部408fが取付孔部423に挿入されるように構成されている。
【0087】
また、締結ボルト408のねじ部408eがエンジン本体310の位置決め凹部311に螺合された状態で、胴部408fのX1側の端面がエンジン本体310の表面10bに当接するとともに、フランジ部8cがTCC420の表面21b(エンジン本体310とは反対側の表面)に当接するように構成されている。これにより、クランクシャフト5の延びる方向(X方向)でのエンジン本体310に対するTCC420の位置決めが行われるように構成されている。なお、第3実施形態によるその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。つまり、上記のような締結構造が、クランクシャフト5のZ2側だけでなく、Z1側にも設けられている。
【0088】
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0089】
第3実施形態では、上記のように、TCC420の凹部30(貫通孔22a)の近傍に、TCC420をエンジン本体310に締結ボルト408によって取り付けるための取付孔部423を設けることによって、上記第1実施形態と同様に、TCC420の変形に起因するオイルシール6の位置ずれを抑制することができるので、その結果、オイルシール6による十分なシール性を確保することができる。
【0090】
また、第3実施形態では、TCC420に、内部に取付孔部423が設けられた円筒部425を一体的に設けることによって、カラーを設けなくとも、円筒部425によりクランクシャフト5が延びるX方向における位置決めを行うことができるので、エンジンの部品点数を減少させることができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0091】
(第4実施形態)
次に、
図10を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、締結ボルト508をTCC520およびエンジン本体510に直接螺合した例について説明する。なお、TCC520およびエンジン本体510は、それぞれ、本発明の「カバー部材」および「内燃機関本体」の一例である。また、締結ボルト508は、本発明の「第1締結部材」の一例である。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
【0092】
本発明の第4実施形態では、
図10に示すように、TCC520の凹部30(貫通孔22a)の近傍には、厚み方向(X方向)に貫通する取付孔部523が設けられている。この取付孔部523の内周面には、雌ねじが形成されている。また、エンジン本体510の表面10bのうち、取付孔部523に対応(X方向に対向)する部分には、内周面に雌ねじが形成された位置決め凹部511が形成されている。なお、取付孔部523と位置決め凹部511とにそれぞれ形成された雌ねじは、同じねじ諸元(同じ径)で形成されている。また、取付孔部523および位置決め凹部511は、それぞれ、本発明の「第1本体取付部」および「位置決め穴」の一例である。
【0093】
また、締結ボルト508は、シール部材8dが設けられていない点を除いて、上記第1実施形態の締結ボルト8と同様の構成を有している。また、締結ボルト508のねじ部8bの表面には、上記第2実施形態のスタットボルト380(
図8参照)と同様に、図示しないシール材が塗布されている。
【0094】
また、TCC520の取付孔部523と、エンジン本体510の位置決め凹部511とに締結ボルト508のねじ部8bが螺合されることによって、クランクシャフト5と直交する面内方向(Y方向およびZ方向)とクランクシャフト5の延びる方向(X方向)とにおける、エンジン本体510に対するTCC520の位置決めが行われるように構成されている。なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。つまり、上記のような締結構造が、クランクシャフト5のZ2側だけでなく、Z1側にも設けられている。
【0095】
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0096】
第4実施形態では、上記のように、TCC520の凹部30(貫通孔22a)の近傍に、TCC520をエンジン本体510に締結ボルト508によって取り付けるための取付孔部523を設けることによって、上記第1実施形態と同様に、TCC520の変形に起因するオイルシール6の位置ずれを抑制することができるので、その結果、オイルシール6による十分なシール性を確保することができる。
【0097】
また、第4実施形態では、TCC520の取付孔部523と、エンジン本体510の位置決め凹部511とに締結ボルト508のねじ部8bが螺合することによって、クランクシャフト5と直交する面内方向(Y方向およびZ方向)とクランクシャフト5の延びる方向(X方向)とにおける、エンジン本体510に対するTCC520の位置決めを行う。これにより、X方向、Y方向およびZ方向における位置決めを行うために、カラーを設ける必要がないので、エンジンの部品点数を減少させることができる。なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0098】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0099】
たとえば、上記第1〜第4実施形態および第1実施形態の変形例では、取付孔部23(323、423、523)を、クランクシャフト5をZ方向に挟むように一対設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、取付孔部を1つのみ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。また、取付孔部を3つ以上設ける場合にはTCCの凹部(オイルシール固定部)を囲むように設けるのが好ましい。たとえば、
図11に示す本発明の第1変形例のように、3つの取付孔部623を、中心軸Aに対して略120度の等角度間隔θで、TCC620の凹部30を囲むように設けてもよい。これにより、取付孔部23を一対設けた上記第1実施形態(
図2参照)よりも、より強固に、オイルシール6を所定の位置に固定することが可能である。なお、取付孔部623は、挿入される締結ボルト8などがタイミングチェーン4に干渉(接触)しないように、タイミングチェーン4から離間した位置に設ける方が好ましい。また、TCC620および取付孔部623は、それぞれ、本発明の「カバー部材」および「第1本体取付部」の一例である。
【0100】
また、本発明では、複数の取付孔部を、中心軸Aに対して等角度間隔で設けなくてもよい。この際、取付孔部は、取付孔部の数に1を加えた数で円周(360度)を除算した値以上の角度間隔で設けるのが好ましい。たとえば、取付孔部を一対(2つ)設ける場合には、約120度(=360/(2+1))以上約240度(=360―120)以下の角度間隔で設けるのが好ましく、取付孔部を3つ設ける場合には、約90度(=360/(3+1))以上約180度(=360―(90+90))以下の角度間隔で設けるのが好ましい。
【0101】
また、上記第1〜第4実施形態および第1実施形態の変形例では、エンジン本体10(310、510)の表面10bとTCC20(320、420、520、620)の周縁部24の裏面24aとに密着するようにシール部材80を配置するとともに、シール部材80を介して、エンジン本体とTCCとを所定の隙間を有して浮かせた状態で固定する例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図12に示す本発明の第2変形例のように、シール部材780のX方向の厚みを調整することによって、エンジン本体10とTCC20とを所定の隙間を有して浮かせずに、エンジン本体10の表面10bと、TCC20の周縁部24の裏面24aとを直接的に接触させてもよい。これにより、シール部材780によるシールをより確実に確保することが可能であるとともに、エンジンがクランクシャフト5の延びるX方向に大きくなるのを抑制することが可能である。
【0102】
また、上記第1実施形態の変形例では、カラー207に、TCC20の裏面21aに当接するX2側のフランジ部71(第1フランジ状部)を設ける一方、エンジン本体10の表面10bに当接するX1側のフランジ部(第2フランジ状部)を設けない例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、カラーに、エンジン本体の表面に当接する第2フランジ状部を設ける一方、TCCの裏面に当接する第1フランジ状部を設けなくてもよい。この場合であっても、TCCの裏面に当接する第1フランジ状部と、締結ボルトのフランジ部とによって、クランクシャフトの延びる方向における、エンジン本体に対するTCCの凹部の近傍での位置決めを行うことが可能である。また、カラーにフランジ部を設けなくてもよい。
【0103】
また、上記第1〜第4実施形態および第1実施形態の変形例では、TCC20(320、420、520、620)の鍔部30aにより、オイルシール6がX1側から脱落するのを抑制した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、TCC内部の空間における内圧の変化が小さい場合には、TCCに鍔部を形成しなくてもよい。これにより、TCCに鍔部を形成する必要がないので、容易にTCCを作製することが可能である。
【0104】
また、上記第1、第3、第4実施形態および第1実施形態の変形例では、締結ボルト8のフランジ部8cにより、オイルシール6がX2側から脱落するのを抑制し、上記第2実施形態では、フランジナット381のフランジ部381aにより、オイルシール6がX2側から脱落するのを抑制した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、TCC内部の空間における内圧の変化が小さい場合には、締結ボルトのフランジ部やフランジナットのフランジ部の一部を、クランクシャフト側に向かって突出するように構成しなくてもよい。
【0105】
また、上記第1〜第4実施形態および第1実施形態の変形例では、取付孔部23(323、423、523)を、周縁部24の貫通孔24cよりも内側(凹部30側)に形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、取付孔部をオイルシール固定部の近傍に設けることが可能な場合には、取付孔部を周縁部に設けてもよい。
【0106】
また、上記第1〜第4実施形態および第1実施形態の変形例では、ポリアミドを用いてTCC20(320、420、520)を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポリアミド以外の樹脂材料を用いて本発明の「カバー部材」を構成してもよいし、たとえば、金属材料などの樹脂材料以外の材料を用いて本発明の「カバー部材」を構成してもよい。この際、内燃機関本体を構成する材質よりも線膨張係数の大きな材料を用いて本発明の「カバー部材」を構成した場合には、本発明の効果がより発揮される。
【0107】
また、上記第2実施形態では、TCC320の凹部323aに配置されるシール部材8dと、スタットボルト380のねじ部380cの表面に塗布されたシール材との両方によってシールする例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スタットボルトのねじ部の表面に塗布されたシール材またはシール部材のいずれか一方のみを用いてシールしてもよい。
【0108】
また、上記第1〜第4実施形態および第1実施形態の変形例では、ガソリン機関からなる自動車用のエンジン100に本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、クランクシャフトを有する内燃機関であるならば、ガソリン機関以外のガス機関(ディーゼルエンジンおよびガスエンジンなどの内燃機関)のカバー部材取付構造に対して本発明を適用してもよい。また、自動車用以外のたとえば設備機器の駆動源(動力源)として搭載されるような内燃機関のカバー部材取付構造に対して本発明を適用してもよい。