特許第6206142号(P6206142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206142
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】情報表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20170925BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20170925BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20170925BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20170925BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G01C21/36
   G08G1/16 C
   G09B29/10 A
   G09B29/00 A
   A61B5/18
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-250368(P2013-250368)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-108519(P2015-108519A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】舟川 政美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 壮
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−118603(JP,A)
【文献】 特開2007−131292(JP,A)
【文献】 特開2006−072194(JP,A)
【文献】 特開2007−141223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
23/00 − 25/00
A61B 5/18
B60K 35/00 − 37/06
G08G 1/00 − 99/00
G09B 29/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の運転操作によらず、自動で自車両を走行させる自動運転制御手段と、
前記自動運転制御手段により前記自車両が自動運転されているときに、乗員の走行に対する意識の高さを推定する走行意識推定手段と、
地図情報を表示する地図情報表示手段と、
推定した乗員の走行に対する意識が高いほど前記地図情報の縮尺を拡大し、前記意識が低いほど前記地図情報の縮尺を縮小する地図情報表示制御手段と、
を有することを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記地図情報表示制御手段は、推定した乗員の走行に対する意識が高いほど前記自車両が走行する道路の形状および前記自車両が走行する道路上の障害物の情報を多く表示し、前記意識が低いほど前記自車両が走行する道路周辺の施設情報を多く表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報表示装置において、
前記地図情報表示制御手段は、推定した乗員の走行に対する意識の高低に関わらず、前記自車両の車速情報、前記自車両に接近する障害物の情報、前記自動運転制御手段の失陥情報を表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の情報表示装置において、
前記地図情報表示制御手段は、前記地図情報の縮尺を変化させるときに連続的に変化させるとともに、滑らかな線により表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の情報表示装置において、
前記地図情報表示制御手段は、前記地図情報の解像度を前記地図情報の縮尺が最も拡大されたときに滑らかな線で表示できるように設定したことを特徴とする情報表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の情報表示装置において、
前記地図情報表示制御手段は、推定した乗員の走行に対する意識の高低に関わらず、乗員による縮尺変更の操作に応じて前記地図情報の縮尺を変更することを特徴とする情報表示装置。
【請求項7】
請求項2に記載の情報表示装置において、
前記地図情報表示手段は、前記自車両が走行する道路の形状、前記自車両が走行する道路上の障害物の情報の表示を、空間周波数を1[CPD]以下、時間周波数を1-7[Hz]を主成分とする輝度エッジを有しない画像として表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項8】
請求項2に記載の情報表示装置において、
前記地図情報表示手段は、前記自車両が走行する道路周辺の施設情報の表示を、空間周波数を1[CPD]より大きい画像として表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の情報表示装置において、
前記地図情報の表示に同期して、乗員に音または振動を付与することを特徴とする情報表示装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の情報表示装置において、
前記走行意識推定手段は、自車両を操作するステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルの操作状況、前記地図情報表示手段を操作するキーボード、ジョイスティック、タッチパネルの操作状況、乗員の撮影した画像を解析して、乗員の走行に対する意識の高さを推定することを特徴とする情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この文献には、表示器のタッチスイッチを押す回数に応じて、表示器に表示される地図の拡大縮小を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-216398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、乗員はタッチスイッチを押さなければ、乗員の意図に沿った地図の拡大縮小を行うことができず、乗員に負担を強いる問題があった。
本発明は、上記問題に着目されたもので、その目的とするところは、乗員に負担を強いることなく、乗員の意図に沿った地図の拡大縮小を行うことができる情報表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明では、自車両が自動運転されているときに、乗員の走行に対する意識の高さを推定し、推定した乗員の走行に対する意識が高いほど地図情報の縮尺を拡大し、意識が低いほど地図情報の縮尺を縮小するようにした。
【発明の効果】
【0006】
よって、乗員の負担を強いることなく乗員の意図に沿った地図情報の拡大縮小を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の情報表示装置の制御ブロック図である。
図2】実施例1の画像イメージの例を示す図である。
図3】実施例1の時間周波数ごとの空間周波数に対するコントラスト感度を示すグラフである。
図4】実施例1の時間周波数ごとの空間周波数に対するコントラスト感度を示すグラフである。
図5】実施例1の時間周波数ごとの空間周波数に対するコントラスト感度を示すグラフである。
図6】実施例1の式(2),(3)中のS1,S2,S3,P1,P2,P3の値を示す表である。
図7】実施例1の時間周波数に応じた最大感度10[%]のコントラスト感度を有する視野範囲を空間周波数ごとに示したグラフである。
図8】実施例1の時間周波数の変化に対する視認可能範囲の離心角の変化を、空間周波数ごとに推定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
[全体構成]
図1は情報表示装置1の制御ブロック図である。情報表示装置1は、周囲状況解析部10と、自動運転制御部11と、走行意識推定部12と、地図スコープ操作部13と、地図情報表示制御部14と、地図データベース15と、地図情報表示生成部16と、画像生成部17と、表示部18とを有している。
【0009】
周囲状況解析部10は、自車両の周囲を撮影するカメラ、自車両周囲に信号を送信して障害物が反射した信号を受信する障害物センサ、Global Positioning System(GPS)衛星の信号を受信するGPS受信器などからの信号を解析して、自車両と障害物との距離および方向、障害物が移動しているときにはその速度を求める。周囲状況解析部10では、自車両全周の障害物に対する信号を解析する。
【0010】
自動運転制御部11は、乗員の運転操作によらず自動で操作して自車両を走行させる。自動運転制御部11は、現在地から目的地までの径路を設定し、周囲状況解析部10からの情報に応じて設定した経路を走行できるように走行計画を設定して、走行計画に沿って自車両を走行させる。走行計画とは、例えば赤信号の交差点で停止すること、一時停止交差点で一時停止すること、次の交差点を右折するために右折レーンに自車両を移動させること、先行車両を追い越しするために追い越しレーンに自車両を移動させることなどを示す。
【0011】
走行意識推定部12は、自動運転中の乗員の走行に対する意識の高さを推定する。走行意識推定部12は、例えば、乗員がステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルを操作しているときには乗員の走行に対する意識の高さは最も高いと推定される。逆に、乗員がステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルに触れていないときには乗員の走行に対する意識の高さは最も低いと推定される。
【0012】
また走行意識推定部12は、カメラにより乗員を撮影し、撮影した画像を解析して乗員の走行に対する意識の高さを推定するようにしても良い。例えば、乗員がよそ見をしている、居眠りをしているといったことが画像解析から分析できれば、乗員の走行に対する意識の高さが低いと推定する。一方、乗員が前方を直視していることが画像解析から分析できれば、乗員の走行に対する意識が高いと推定する。
【0013】
乗員がステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルを操作しているときであっても、ナビゲーションシステムやオーディオなどを操作しているときには、乗員の走行に対する意識の高さが低くなるように補正する。また、乗員がステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルに触れていないときであっても、自動運転制御部11に車線変更を行う走行計画を入力するなどしているときには、乗員の走行に対する意識の高さが高くなるように補正する。
【0014】
地図スコープ操作部13は乗員がこれを操作することにより、表示部18に表示される地図情報の縮尺を乗員の好みの縮尺に変更するものである。地図スコープ操作部13は表示部18に搭載されたタッチパネル、またはジョイスティック、またはキーボードなどによって構成される。
【0015】
地図情報表示制御部14は、走行意識推定部12が推定した乗員の走行に対する意識の高さ、または地図スコープ操作部13の操作量に応じて、表示部18の表示する地図情報の視点や視野角を設定する。画像生成部17に出力する地図情報を決定する3Dグラフィックス空間における視点位置と視野角データのテーブルを予め用意しており、テーブルの適切な位置のデータに基づいて、設定した視点から設定した視野角で地表面を見た場合の映像を画像生成部17へ出力する。
【0016】
具体的は、乗員の走行に対する意識が高いと推定されたときには、地図情報の縮尺を拡大するように設定する。乗員の走行に対する意識が低いと推定されたときには、地図情報の縮尺を縮小するように設定する。また、乗員による地図スコープ操作部13の操作により、地図情報の縮尺を拡大するように操作されたときには、地図情報の縮尺を拡大するように設定する。乗員による地図スコープ操作部13の操作により、地図情報の縮尺を縮小するように操作されたときには、地図情報の縮尺を縮小するように設定する。地図情報の縮尺の変化は連続的に変化させるとともに、滑らかな線により表示する。なお、地図情報の視点や視野角の設定は、走行意識推定部12が推定した乗員の走行に対する意識の高さよりも、地図スコープ操作部13の操作量が優先して行われる。
【0017】
地図データベース15は、ナビゲーションシステムなどに搭載され、道路状況や周辺道路上の情報(飲食店など)を有している。地図データベース15は自車両内に搭載されていなくとも良く、通信により外部から情報を得ることができるものであっても良い。
【0018】
地図情報表示生成部16は、自動運転制御部11から得られる現在地、目的地、径路情報に基づいて、現在地および目的地を含む地図情報と、経路の周辺情報を取得し、これらの情報を3Dグラフィックス空間に設けられた地表面に配置する。地図情報表示生成部16において生成される画像は、地図の縮尺を最も拡大したときに、表示部18において滑らかな線で表示できる解像度を有している。
【0019】
また地図情報表示生成部16は、地図上の現在地に自車両を示す自車両イメージを描画し、この自車両イメージを囲んで環状の視覚パターンを描画する。視覚パターンは、警戒すべき障害物や状況がある方向を、その方向の表示の輝度、色、太さなどを変化させることにより乗員に報知する。この視覚パターンは、乗員の走行に対する意識の高低に関わらず表示される。
【0020】
また地図情報表示生成部16は、自車両の車速情報を地図から離れた位置に描画する。この速度情報は、乗員の走行に対する意識の高低に関わらず表示される。
また地図情報表示生成部16は、自動運転制御部11が失陥したときには、自動運転制御部11が失陥を知らせるイメージまたは文字を描画する。この情報は、乗員の走行に対する意識の高低に関わらず表示される。
【0021】
また地図情報表示生成部16は、自動運転制御部11が選択した経路と、径路周辺に存在するガソリンスタンドや飲食店などの各種施設の位置に、その施設の詳細情報を得るためのボタンを描画する。さらに、目的地とその周辺にある各種施設の位置に、その施設の詳細情報を得るためのボタンを描画する。これらの各種施設の情報は、乗員の走行に対する意識が低いときに表示される。
【0022】
また地図情報表示生成部16は、現在地や経路から離れた位置であっても、履歴から乗員が関心を持っていると推定する事柄の情報を表示するためのボタンを描画する。さらにはWeb上の情報を検索するためのボタンも描画している。これらの情報は、乗員の走行に対する意識が低いときに表示される。
【0023】
また地図情報表示生成部16は、3Dグラフィクス空間において現在地から見て目的地の向こうの空に相当する領域に、旅程の経過等の情報を表示するため、砂時計に類似したパターンを描画する。
【0024】
さらに地図情報表示生成部16は、乗員が運転をするために必要な周囲の他車両、歩行者などを含む障害物に関する情報や、現在選択可能な経路とその中で自動運転制御部11が選択している経路を地図上の現在地に重畳させて描画する。重畳させる表示は、時間的かつ空間的にエッジが立たない表示により、乗員の周辺視野内で視認させるようにしている(周辺視野表示)。周辺視野表示については、後で詳述する。この周辺視野は、乗員の走行に対する意識が高いときに描画される。
【0025】
画像生成部17は、地図情報表示生成部16において生成された地図情報を、地図情報表示制御部14において設定された視点、視野角で見えるように画像を生成する。画像生成部17で生成された画像が、表示部18に表示される。
表示部18は、乗員の正面に、表示部18の画面中央部が乗員に対して下方角10[°]、視距離90[cm]となるように設置されている。
【0026】
[表示イメージ]
図2は表示部18において表示される画像のイメージを示す。図2(a)は情報表示装置1を起動した直後の画像の例を示す。図2(b)は乗員の走行に対する意識が高いときに、地図上に径路周辺の各種施設の情報を表示させた画像の例を示す。図2(c)は乗員の走行に対する意識が低いときに、地図上に径路から外れた各種施設の情報を表示させた画像の例を示す。図2(d)は乗員の走行に対する意識が最も高いときに、地図上に自動運転制御部11が選択している経路や障害物の情報を、時間的かつ空間的にエッジが立たないように表示させた例を示す。
【0027】
表示部18に表示される画像は、自車両の後上方から自車両前方を見た鳥瞰図に似た画像として表示される。
乗員がステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルを操作し、走行に対する意識が高いと推定されたときには、地図の縮尺を拡大し、また地図上に経路周辺の各種施設の情報を表示させた画像を表示する(図2(b))。
【0028】
乗員がステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルに触れておらず、走行に対する意識が低いと推定されたときには、地図の縮尺を縮小し、また地図上に経路から外れた各種施設の情報を表示させた画像を表示する(図2(c))。
【0029】
乗員の走行に対する意識が最も高いと推定されたときには、地図上に自動運転制御部11が選択している経路や障害物の情報を、時間的かつ空間的にエッジが立たないように表示する(図2(d))。
【0030】
なお実施例1では、死角からの接近車の走行音を音場処理によって、3D空間における音源移動を再現し、周辺視野表示の視覚表示と同期させている。また死角からの接近車の存在を運転席のシートを振動させることで教示し、周辺視野表示の視覚表示と同期させている。
【0031】
[周辺視野表示]
前述のように周辺視野表示は、時間的かつ空間的にエッジが立たない情報を乗員の周辺視野内で視認させるようにしている。これにより、乗員の周辺視において周辺視野表示を視認可能であって、中心視を周辺視野表示に誘導しないようにすることができる。周辺視野表示を周辺視によって視認可能であることは、運転操作を自動運転制御部11に委ねている乗員にとって必須な条件ではないが、中心視を誘導しないという条件は車載表示に必要な要件である。
【0032】
周辺視野表示は、視野周辺部位における周辺視野表示の空間周波数に対して乗員が情報としてどの程度認知できるかという視認分解能と、視野周辺部位における周辺視野表示の時間周波数に対して乗員が情報としてどの程度認知できるかという視認分解能とを利用している。すなわち、周辺視野表示は、視野周辺部位において読み取り可能な空間周波数および時間周波数の範囲に設定しておく。そして、設定した空間周波数および時間周波数の範囲に該当する周辺視野表示を、乗員の周辺視野に表示させて情報として伝達する。
周辺視野表示により、乗員が車両走行方向である前方を注視する必要があるときでも、表示部18に眼球運動を誘発することなく情報提示を行うことができる。
【0033】
視野範囲の部位によって変化する視覚特性の差異について説明する。図3に時間周波数が変わったときの空間周波数に対するコントラスト感度が、視野中心から上方向の離心度(0[°]〜50[°])ごとにどのように変化するかを示したものである。図3(a)は時間周波数が0.57[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。図3(b)は時間周波数が2.28[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。図3(c)は時間周波数が9.12[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。
【0034】
図4に時間周波数が変わったときの空間周波数に対するコントラスト感度が、視野中心から左右方向の離心度(0[°]〜90[°])ごとにどのように変化するかを示したものである。図4(a)は時間周波数が0.57[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。図4(b)は時間周波数が2.28[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。図4(c)は時間周波数が9.12[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。
【0035】
図5に時間周波数が変わったときの空間周波数に対するコントラスト感度が、視野中心から下方向の離心度(0[°]〜50[°])ごとにどのように変化するかを示したものである。図5(a)は時間周波数が0.57[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。図5(b)は時間周波数が2.28[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。図5(c)は時間周波数が9.12[Hz]のときの空間周波数に対するコントラスト感度を示す図である。
【0036】
図3ないし図5は、被験者による実測結果に基づいており、二名の被験者に対して、同じ輝度の表示パターンを提示し、コントラスト感度を測定し、被験者ごとにコントラスト感度の最大値で標準化した。また空間周波数は、標準化したコントラスト感度0.01を有する最大空間周波数で標準化した後、視野周辺部位によるコントラスト感度が連続的に変化するという仮定のもとで離心角毎に求めた回帰曲線である。また離心角は、0[°]が視野中心であり、視野中心から離れるほど5[°],10[°],20[°],30[°],50[°],70[°],90[°]と大きくなる。
【0037】
図3ないし図5における横軸は空間周波数であり、表示パターン画像一枚内における空間的な輝度変化の荒さおよび細かさを表す。また時間周波数は、任意の画像内位置における輝度変化の速さを表し、表示パターン画像の切り換え間隔(フレーム間隔)に依存する。
【0038】
図3ないし図5における縦軸はコントラスト感度であり、各表示パターンの空間内において正弦波的に輝度が変化する表示パターンにおいて、輝度変化が視認できる最小のコントラスト{(最大輝度 - 最小輝度)/(最大輝度 + 最小輝度)}の逆数である。
【0039】
さらに図3ないし図5において、縦軸の数値は、コントラスト{(最大輝度 - 最小輝度)/(最大輝度 + 最小輝度)}の逆数で求めた最大値のコントラスト感度を1として標準化した数値である。また、横軸の数値は、コントラスト感度として検出される最も高い空間周波数(カットオフ周波数の最大値)を1として標準化した数値である。
【0040】
図3ないし図5を見ると、時間周波数が低い条件(0.57[Hz])であって、中心視(離心角0[°])である場合には、コントラスト感度が空間周波数に対してバンドパス型の特性となっている。一方、時間周波数が中程度の条件(2.28[Hz])また時間周波数が高い条件(9.12[Hz])であって、離心角が中心視ではない(5[°]〜90[°])である場合には、コントラスト感度が空間周波数に対してローパス型の特性になっている。
【0041】
すなわち、時間周波数が低くかつ中心視であるときには、空間周波数に対するコントラスト感度のピーク値が存在し、他のときには、空間周波数が低いほどコントラスト感度が高い。換言すれば、被験者の視野中心で表示させている表示パターンの輝度変化の速さが遅い場合には、被験者にとって最も表示パターンが正確に視認される空間周波数帯が存在する。
【0042】
図3ないし図5を見ると、離心角が増加するにしたがって、全ての方位においてコントラスト感度の値が0.01となる空間周波数であるカットオフ周波数が低下している(視力の低下)。すなわち、方位に拘わらず視野中心から離れた位置に表示されるほど、空間周波数が高く輝度変化が細かい表示パターンが視認できなくなる。
【0043】
図3ないし図5を見ると、離心角が増加するにしたがって、全ての方位において、最大のコントラスト感度の低下が起こっている。すなわち、方位に拘わらず、視野中心から離れた位置に表示されるほど、空間周波数が低い表示パターンであっても視認しにくくなる。
【0044】
次に、実測値に基づいた図3ないし図5のように、時間周波数が変わった場合に、空間周波数に対するコントラスト感度が、視野中心からの上下左右方向の離心角(0[°]〜90[°])ごとにどのように変化するかを計算によって求めることができることについて説明する。
【0045】
この計算方法としては、時間周波数が低い状態かつ離心角が0[°]のバンドパス型の特性を除く、ローパス型の特性を算出する。このローパス型のコントラスト感度の特性を求める関数は、下記の式(1)で示させる。
S=1-EXP{-EXP[-(Fs-Pp)/Sp]} … (1)
【0046】
式(1)において、S(Contrast Sensitivity)はコントラスト感度を示し、Fs(Spatial Frequency)は空間周波数を示す。また、式(1)のパラメータSp(Spread Parameter)は、次の式(2)で表わされる。また式(1)のパラメータPp(Position Parameter)は次の式(23)で表わされる。
Sp=(S1+S2)×Ec^S3 … (2)
Pp=(P1+P2)×Ec^P3 … (3)
【0047】
式(2)、式(3)におけるEc(Eccentricity)は、網膜離心角[Deg]である。図6は、S1,S2,S3,P1,P2,P3の値を示す表である。式中のS1,S2,S3,P1,P2,P3には図6に示す値がそれぞれ代入される。
【0048】
そして離心角Ecの値を連続的に変化させてコントラスト感度Sを求めることによって、図3ないし図5における離心角ごとのコントラスト感度に対して、図3ないし図5に依存せずに任意の離心角での空間周波数に対するコントラスト感度の値を補完することができる。
【0049】
時間周波数が低い状態かつ離心角が0[°]のバンドパス型の特性を求める関数は、下記の式(4)で示される。
S=-0.015777+0.8141×EXP{-POWER(LOG10(Fs)+1.513,2)/POWER(0.815,2)} … (4)
式(4)において、空間周波数Fsは中心視の視力に応じた空間周波数であり、コントラスト感度Sは最大感度を1として標準化した数値として算出することができる。
【0050】
図7は、時間周波数に応じた最大感度10[%]のコントラスト感度を有する視野範囲を空間周波数ごとに示したものである。図7(a)は時間周波数0.57[Hz]のときの視野範囲を示す。図7(b)は時間周波数2.28[Hz]のときの視野範囲を示す。図7(c)は時間周波数9.12[Hz]のときの視野範囲を示す。
【0051】
図7の縦軸および横軸は視野の垂直軸および水平軸に対応し、離心角を表している。図7では、図3と同様に0〜1の範囲で標準化した空間週は通の値(最小値0.025)を示している。なお、図7における空間周波数の数値は、中心視の視力Va(視角の分で標記した最小分離値の逆数)に対応した、被験者が視認できる空間周波数Faを1としたときの値である。ここで、空間周波数Fa=30[Va](Visual Acuiy:視力)であるから、視力0.7のときには、被験者が視認できる空間周波数はFa=21[cpd](Cycles Per Degree)となる。なお、図7中における数値が、例えば0.025であるときには、0.025×21=0.53[cpd]と表わせる。
【0052】
図7に示す視野範囲の変化についても、被験者による視野範囲の変化に対する実測定値に基づいており、実測定値のない方位に関しては、隣接する方位間で楕円を回帰させている。
【0053】
図7(a)ないし図7(c)を見ると、どの時間周波数においても上方向の視野において、10[%]のコントラスト感度が得られる範囲が狭くなっている。この図7から空間周波数に対する視認可能な視野範囲を推定できる。すなわち、視野中心部において視認可能な空間周波数は、図7(a)ないし図7(c)に示すように、時間周波数が0.57[Hz],2.28[Hz],9.12[Hz]と上昇するにつれて、0.40,0.24,0.16と低下する。しかし、視野周辺部で視認可能な範囲は、中程度の時間周波数(2.28[Hz])のときに最も広くなる。
【0054】
このように時間周波数および空間周波数によって、視認可能範囲が変化する。図8は、時間周波数の変化に対する視認可能範囲の離心角の変化を、空間周波数ごとに推定した結果を示すグラフである。図8において、横軸は時間周波数であり、縦軸は離心角である。図8より空間周波数が低下するにしたがって、コントラスト感度を得ることができる離心角が大きくなり、コントラスト感度を得ることができる視認範囲は広くなることが分かる。また空間周波数が低いほど離心角のピーク値に相当する時間周波数が高くなる傾向にある。
【0055】
この傾向から実施例1では、周辺視野表示を、空間周波数を1[CPD]以下、時間周波数を1-7[Hz]を主成分とする画像として生成するようにした。これによって、乗員に映像を提示することによって情報を伝達するに際して、標準的な姿勢にある場合の観察者の中心視野から離れた視野周辺部位に対して、当該視野周辺部位で観察者のコントラスト感度が得られる時間周波数及び空間周波数であって、時間的なエッジおよび空間的なエッジのない時間周波数及び空間周波数の範囲の周波数成分からなる映像である表示パターンを表示させることができる。
【0056】
一方、乗員の走行に対する意識が比較的低いときに表示させる経路周辺の各施設上方などは空間周波数を1[CPD]より大きい画像として表示する。これにより、乗員は中心視において画像を認識しやすくなる。
【0057】
[作用]
従来では、表示部18に表示される地図情報の拡大縮小は、乗員の操作によって行われなければ、乗員の意図に沿った地図情報の拡大縮小を行うことができず、乗員に負担を強いる問題があった。
【0058】
そこで実施例1では、自車両が自動運転されているときに、乗員の走行に対する意識の高さを推定し、推定した乗員の走行に対する意識が高いほど表示部18に表示する地図情報の縮尺を拡大し、意識が低いほど地図情報の縮尺を縮小するようにした。
【0059】
これにより、乗員の走行に対する意識の高さに応じて地図情報の縮尺が自動で行われるため、乗員の負担を強いることなく乗員の意図に沿った地図情報の拡大縮小を行うことができる。
【0060】
また実施例1では、推定した乗員の走行に対する意識が高いほど、表示部18に自車両が走行する道路の形状および自車両が走行する道路上の障害物の情報を多く表示し、意識が低いほど表示部18に、自車両が走行する道路周辺の施設情報を多く表示するようにした。
【0061】
これにより、乗員の走行に対する意識の高さに応じて提供される情報が変わるため、乗員に負担を強いることなく乗員が必要とする情報を得ることができる。
【0062】
また実施例1では、推定した乗員の走行に対する意識の高低に関わらず、自車両の車速情報、自車両に接近する障害物の情報、自動運転制御部11の失陥情報を表示部18に表示するようにした。
【0063】
これにより、乗員が走行に対する意識を高めなければならない状況を知らせる情報については常に表示されるため、乗員が走行に対する意識を高めなければならない状況となったときに乗員はすぐに走行に耐尾する意識を高め、運転操作を行う態勢を整えることができる。
【0064】
また実施例1では、表示部18に表示する地図情報の縮尺を変化させるときに連続的に変化させるとともに、滑らかな線により表示するようにした。
これにより、縮尺が変化したときに地図や地図上に表示する情報が途切れることがなく表示させることができ、乗員に連続して情報を提供することができる。
【0065】
また実施例1では、生成する地図情報の縮尺が最も拡大されたときに滑らかな線で表示できる解像度を有するようにした。
これにより、地図情報の縮尺が拡大したときにも縮尺に応じた情報量を確保することができるため、乗員の意図に沿った情報を提供することができる。
【0066】
また実施例1では、推定した乗員の走行に対する意識の高低に関わらず、乗員による縮尺変更の操作に応じて地図情報の縮尺を変更するようにした。
これにより、乗員は地図情報の縮尺が自動で変わるのを待たずに変更することができる。
【0067】
また実施例1では、自車両が走行する道路の形状、自車両が走行する道路上の障害物の情報の表示を、空間周波数を1[CPD]以下、時間周波数を1-7[Hz]を主成分とする輝度エッジを有しない画像として表示するようにした。
これにより、乗員の周辺視において周辺視野表示を視認可能であって、中心視を周辺視野表示に誘導しないようにすることができる。
【0068】
また実施例1では、地図情報表示生成部16は、自車両が走行する道路周辺の施設情報の表示を、空間周波数を1[CPD]より大きい画像として表示するようにした。
これにより、乗員の中心視において画像を視認しやすくすることができる。
【0069】
また実施例1では、表示部18の表示に同期して、乗員に音または振動を付与するようにした。
これにより、表示部18の表示変化の意味を把握しやすく、表示部18が視野内にないときであっても乗員に状況の変化を伝えることができる。
【0070】
また実施例1では、自車両を操作するステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルの操作状況、表示部18を操作するキーボード、ジョイスティック、タッチパネルの操作状況、乗員を撮影した画像を解析して、乗員の走行に対する意識の高さを推定するようにした。
これにより、乗員の行動を通して乗員の意識の高さを推定することができる。
【0071】
[効果]
(1) 乗員の運転操作によらず、自動で自車両を走行させる自動運転制御部11と、自動運転制御部11により自車両が自動運転されているときに、乗員の走行に対する意識の高さを推定する走行意識推定部12と、地図情報を表示する表示部18と、推定した乗員の走行に対する意識が高いほど地図情報の縮尺を拡大し、意識が低いほど地図情報の縮尺を縮小する地図情報表示制御部14と、を有するようにした。
よって、乗員の負担を強いることなく乗員の意図に沿った地図情報の拡大縮小を行うことができる。
【0072】
(2) 地図情報制御部14は、推定した乗員の走行に対する意識が高いほど自車両が走行する道路の形状および自車両が走行する道路上の障害物の情報を多く表示し、意識が低いほど自車両が走行する道路周辺の施設情報を多く表示するようにした。
よって、乗員に負担を強いることなく乗員が必要とする情報を得ることができる。
【0073】
(3) 地図情報制御部14は、推定した乗員の走行に対する意識の高低に関わらず、自車両の車速情報、自車両に接近する障害物の情報、自動運転制御部11の失陥情報を表示するようにした。
よって、乗員が走行に対する意識を高めなければならない状況となったときに乗員はすぐに走行に耐尾する意識を高め、運転操作を行う態勢を整えることができる。
【0074】
(4) 地図情報表示制御部14は、地図情報の縮尺を変化させるときに連続的に変化させるとともに、滑らかな線により表示するようにした。
よって、乗員に提供する情報が途切れることがなく、連続して情報を提供することができる。
【0075】
(5) 地図情報制御部14は、地図情報の解像度を地図情報の縮尺が最も拡大されたときに滑らかな線で表示できるように設定した。
よって、地図情報の縮尺が拡大したときにも縮尺に応じた情報量を確保することができるため、乗員の意図に沿った情報を提供することができる。
【0076】
(6) 地図情報表示制御部14は、推定した乗員の走行に対する意識の高低に関わらず、乗員による縮尺変更の操作に応じて地図情報の縮尺を変更するようにした。
よって、乗員は地図情報の縮尺が自動で変わるのを待たずに変更することができる。
【0077】
(7) 表示部18は、自車両が走行する道路の形状、自車両が走行する道路上の障害物の情報の表示を、空間周波数を1[CPD]以下、時間周波数を1-7[Hz]を主成分とする輝度エッジを有しない画像として表示するようにした。
よって、乗員の周辺視において周辺視野表示を視認可能であって、中心視を周辺視野表示に誘導しないようにすることができる。
【0078】
(8) 表示部18は、自車両が走行する道路周辺の施設情報の表示を、空間周波数を1[CPD]より大きい画像として表示するようにした。
よって、乗員の中心視において画像を視認しやすくすることができる。
【0079】
(9) 地図情報の表示に同期して、乗員に音または振動を付与するようにした。
よって、表示部18の表示変化の意味を把握しやすく、表示部18が視野内にないときであっても乗員に状況の変化を伝えることができる。
【0080】
(10) 走行意識推定部12は、自車両を操作するステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルの操作状況、表示部18を操作するキーボード、ジョイスティック、タッチパネルの操作状況、乗員を撮影した画像を解析して、乗員の走行に対する意識の高さを推定するようにした。
よって、乗員の行動を通して乗員の意識の高さを推定することができる。
【0081】
〔他の実施例〕
以上、本発明は上記実施例の構成に限らず、他の構成であっても構わない。
実施例1では、周辺視野表示を、空間周波数を1[CPD]以下、時間周波数を1-7[Hz]を主成分とする輝度エッジを有しない画像としたが、他の画像としても良い。
周囲状況解析部10で示した障害物センサは、自車両周囲に送信する信号としてはレーザ、超音波などを用いれば良く、特に限定しない。
【符号の説明】
【0082】
11 自動運転制御部
12 走行意識推定部
14 地図情報表示制御部
16 地図情報表示生成部
18 表示部(表示手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8