特許第6206145号(P6206145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206145パイプ被覆層の折り返し用治具及びその重合方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206145
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】パイプ被覆層の折り返し用治具及びその重合方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/14 20060101AFI20170925BHJP
   F16L 58/02 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   B25B27/14 Z
   !F16L58/02
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-252202(P2013-252202)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-138976(P2014-138976A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-275833(P2012-275833)
(32)【優先日】2012年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井村 元
【審査官】 宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−001154(JP,A)
【文献】 特開平06−064040(JP,A)
【文献】 実開平06−081725(JP,U)
【文献】 特開2014−054821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/00−27/30
B25B 33/00
F16L 57/00−58/18
B29C 53/00−53/84
B29C 57/00−59/18
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの外周面を覆う被覆層をパイプの端部において折り返すための治具であって、
前記パイプと被覆層との間に挿入側端部が挿入される円筒状の挿入筒部を備え、該挿入筒部の非挿入側端部に環状の支持体を設け、前記挿入筒部の外周面と支持体において挿入側端部に臨む面との間には、パイプの被覆層を拡径し、折り返すための弧状部を有するガイドリブを周方向に間隔をおいて複数設けたことを特徴とするパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項2】
前記弧状部は断面円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項3】
前記折り返し用治具は回転可能に構成されるとともに、前記弧状部はパイプの被覆層を拡径する拡径部位と、拡径された被覆層を折り返す折り返し部位とにより構成され、少なくとも折り返し部位におけるガイドリブの両側縁が面取りされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項4】
前記ガイドリブは、内周部が回転方向の前側に位置し、外周部が回転方向の後側に位置するように斜め方向に延びていることを特徴とする請求項3に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項5】
前記ガイドリブ間には、該ガイドリブより低く、ガイドリブを補助するサブガイドリブが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項6】
前記支持体の外周部には、把持用のハンドル部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項7】
請求項6に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具として径の異なる複数の折り返し用治具を重ね合せるように構成したパイプ被覆層の折り返し用治具であって、
径の小さい折り返し用治具のハンドル部としての把持筒部が径の大きい折り返し用治具のハンドル部としての把持筒部の内側に嵌合されるように構成したことを特徴とするパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項8】
前記径の小さい折り返し用治具の把持筒部の外周面と、径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内周面には凹凸係合部が設けられ、径の小さい折り返し用治具の把持筒部が径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内側に嵌合された状態で、径の小さい折り返し用治具と径の大きい折り返し用治具とが凹凸係合部で係合されて抜け止めされるように構成したことを特徴とする請求項7に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項9】
請求項7に記載された径の異なる複数の折り返し用治具を重ね合せる方法であって、
径の小さい折り返し用治具の挿入筒部側を径の大きい折り返し用治具の挿入筒部側に対向させて、径の小さい折り返し用治具の把持筒部を径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内側に嵌め込むことを特徴とする折り返し用治具の重合方法。
【請求項10】
前記径の小さい折り返し用治具の把持筒部の外周面と、径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内周面には凹凸係合部が設けられ、径の小さい折り返し用治具の挿入筒部側を径の大きい折り返し用治具の挿入筒部側に対向させて、径の小さい折り返し用治具の把持筒部を径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内側に嵌め込み、径の小さい折り返し用治具の把持筒部の外周面と、径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内周面を凹凸係合部で係合して、径の小さい折り返し用治具と径の大きい折り返し用治具とを抜け止めすることを特徴とする請求項9に記載の折り返し用治具の重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水系や給湯系におけるパイプ接続用の継手に対して被覆層を有するパイプを接続する際に、予め被覆層を捲って折り返し、パイプ端部を露出させるためのパイプ被覆層の折り返し用治具及びその重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水用や給湯用のパイプとして、パイプ外周面に被覆層を有するものが知られている。この被覆層は、パイプの傷付きを抑えるとともに、ウォーターハンマー現象による振動や衝撃音を抑制する働きを有している。このような被覆層を有するパイプを継手に接続する場合には、パイプの端部において被覆層を切り取ったり、捲って折り返したりしなければならない。
【0003】
そのようなパイプ端部の被覆層を除去するための発明が種々提案されている。例えば、特許文献1には給水・給湯管の配管方法が示されている。すなわち、その配管方法は、パイプの外周に剥離可能な緩衝層が積層され、その緩衝層にはパイプの長手方向に延びる多数の突条が一体形成されて、その突条に指を掛けて緩衝層を捲るものである。
【0004】
また、特許文献2には被覆材剥離工具が示されている。すなわち、この被覆材剥離工具は、回転する本体に切刃を設けるとともに、その切刃で剥がされた被覆材を本体外側方へ向かって押し出すための押出部を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−303516号公報
【特許文献2】特開平9−192901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来構成の給水・給湯管の配管方法では、パイプ外周を被覆する緩衝層が一定の厚みと強度を有し、パイプを周囲から締付けていることから、パイプの端部において突条に指を掛けて緩衝層全体を捲って折り返すことは容易ではないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に示されている従来構成の被覆材剥離工具では、切刃による切り込みが浅いときには被覆材を十分に切り剥すことができなかったり、切刃による切り込みが深いときには管に傷を付けてしまったりするおそれがあった。加えて、この被覆材剥離工具は、その軸線に対して斜め方向に延びる切刃を用いて被覆材を切り剥し、その切り剥された被覆材を押出部で本体外側方へ押し出すものであるため、被覆材は工具の軸線に対して斜め方向に切り剥され、管の端部を継手に装着したとき、管の外周に被覆材が形成されていない部分が存在するという問題もあった。
【0008】
そこで本発明の目的とするところは、構成が簡易であるとともに、パイプ端部における被覆層を容易かつ速やかに折り返すことができるパイプ被覆層の折り返し用治具及びその重合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、パイプの外周面を覆う被覆層をパイプの端部において折り返すための治具であって、前記パイプと被覆層との間に挿入側端部が挿入される円筒状の挿入筒部を備え、該挿入筒部の非挿入側端部に環状の支持体を設け、前記挿入筒部の外周面と支持体において挿入側端部に臨む面との間には、パイプの被覆層を拡径し、折り返すための弧状部を有するガイドリブを周方向に間隔をおいて複数設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1に係る発明において、前記弧状部は断面円弧状に形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記折り返し用治具は回転可能に構成されるとともに、前記弧状部はパイプの被覆層を拡径する拡径部位と、拡径された被覆層を折り返す折り返し部位とにより構成され、少なくとも折り返し部位におけるガイドリブの両側縁が面取りされていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項3に係る発明において、前記ガイドリブは、内周部が回転方向の前側に位置し、外周部が回転方向の後側に位置するように斜め方向に延びていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明において、前記ガイドリブ間には、該ガイドリブより低く、ガイドリブを補助するサブガイドリブが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1から請求項5のいずれか一項に係る発明において、前記支持体の外周部には、把持用のハンドル部を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項6に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具として径の異なる複数の折り返し用治具を重ね合せるように構成したパイプ被覆層の折り返し用治具であって、径の小さい折り返し用治具のハンドル部としての把持筒部が径の大きい折り返し用治具のハンドル部としての把持筒部の内側に嵌合されるように構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項7に係る発明において、前記径の小さい折り返し用治具の把持筒部の外周面と、径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内周面には凹凸係合部が設けられ、径の小さい折り返し用治具の把持筒部が径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内側に嵌合された状態で、径の小さい折り返し用治具と径の大きい折り返し用治具とが凹凸係合部で係合されて抜け止めされるように構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具の重合方法は、請求項7に記載された径の異なる複数の折り返し用治具を重ね合せる方法であって、径の小さい折り返し用治具の挿入筒部側を径の大きい折り返し用治具の挿入筒部側に対向させて、径の小さい折り返し用治具の把持筒部を径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内側に嵌め込むことを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具の重合方法は、請求項9に係る発明において、前記径の小さい折り返し用治具の把持筒部の外周面と、径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内周面には凹凸係合部が設けられ、径の小さい折り返し用治具の挿入筒部側を径の大きい折り返し用治具の挿入筒部側に対向させて、径の小さい折り返し用治具の把持筒部を径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内側に嵌め込み、径の小さい折り返し用治具の把持筒部の外周面と、径の大きい折り返し用治具の把持筒部の内周面を凹凸係合部で係合して、径の小さい折り返し用治具と径の大きい折り返し用治具とを抜け止めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパイプ被覆層の折り返し用治具によれば、構成が簡易であるとともに、パイプ端部における被覆層を容易かつ速やかに折り返すことができるという効果を奏する。
また、折り返し用治具の重合方法によれば、径の異なる折り返し用治具の重合やその解除を簡単に行うことができるとともに、折り返し用治具の挿入筒部、ガイドリブ等の傷付きや変形を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態における折り返し用治具が樹脂パイプの端部に対向配置された状態を示す斜視図。
図2】(a)は折り返し用治具を示す正面図、(b)は折り返し用治具を示す断面図。
図3】折り返し用治具のガイドリブの弧状部を示す要部拡大断面図。
図4】(a)は被覆層を有する樹脂パイプを示す正面図、(b)はその樹脂パイプを示す断面図。
図5】第1実施形態の作用を示す図であって、(a)は挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間に挿入し始めた状態を示す斜視図、(b)はそのときのガイドリブにおける断面図。
図6図5に続いて挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間にさらに挿入した状態を示す図であって、(a)は挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間にさらに挿入した状態を示す斜視図、(b)はそのときのガイドリブにおける断面図。
図7図6に続いて挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間に一層挿入した状態を示す図であって、(a)は挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間に一層挿入した状態を示す斜視図、(b)はそのときのガイドリブにおける断面図。
図8図7に続いて挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間になお一層挿入した状態を示す図であって、(a)は挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間になお一層挿入して被覆層を折り返した状態を示す斜視図、(b)はそのときのガイドリブにおける断面図。
図9】(a)はガイドリブの弧状部における断面図、(b)はそのガイドリブの弧状部と樹脂パイプの被覆層との関係を示す断面図。
図10】折り返された被覆層が樹脂パイプの被覆層上に重ね合された状態を示す断面図。
図11】第2実施形態の折り返し用治具を示す図であって、(a)はその折り返し用治具を示す斜視図、(b)は折り返し用治具を示す正面図、(c)はサブガイドリブを示す断面図。
図12】第2実施形態の作用を示す図であって、(a)は挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間に挿入し始めた状態を示す斜視図、(b)はそのときのガイドリブにおける断面図。
図13図12に続いて挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間にさらに挿入した状態を示す図であって、(a)は挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間にさらに挿入した状態を示す斜視図、(b)はそのときのガイドリブにおける断面図、(c)はサブガイドリブにおける断面図。
図14図13に続いて挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間に一層挿入した状態を示す図であって、(a)は挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間に一層挿入した状態を示す斜視図、(b)はそのときのガイドリブにおける断面図、(c)はサブガイドリブにおける断面図。
図15図14に続いて挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間になお一層挿入した状態を示す図であって、(a)は挿入筒部を樹脂パイプと被覆層との間になお一層挿入して被覆層を折り返した状態を示す斜視図、(b)はそのときのガイドリブにおける断面図。
図16】第3実施形態における小径の折り返し用治具と中径の折り返し用治具が対向配置された状態を示す斜視図。
図17】小径の折り返し用治具と中径の折り返し用治具を重ね合せた状態を示す断面図。
図18】小径の折り返し用治具、中径の折り返し用治具及び大径の折り返し用治具が対向配置された状態を示す斜視図。
図19】小径の折り返し用治具、中径の折り返し用治具及び大径の折り返し用治具を重ね合せた状態を示す断面図。
図20】第4実施形態における小径の折り返し用治具と中径の折り返し用治具が対向配置された状態を示す斜視図。
図21】(a)は小径の折り返し用治具と中径の折り返し用治具を重ね合せた状態を示す断面図、(b)はその部分拡大断面図。
図22】小径の折り返し用治具、中径の折り返し用治具及び大径の折り返し用治具が対向配置された状態を示す斜視図。
図23】(a)は小径の折り返し用治具、中径の折り返し用治具及び大径の折り返し用治具を重ね合せた状態を示す断面図、(b)はその部分拡大断面図。
図24】本発明の別例を示し、小径の折り返し用治具と中径の折り返し用治具を重ね合せた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図10に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、この第1実施形態の折り返し用治具10は、円筒状の樹脂パイプ11の外周面を覆う被覆層12を樹脂パイプ11の端部において折り返し、樹脂パイプ11の端部を露出させるための治具である。この折り返し用治具10は、アクリル系樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等の合成樹脂又は銅合金、アルミニウム等の金属により一体形成される。
【0021】
図4(a),(b)に示すように、前記被覆層12の内周面には断面三角形状をなし、樹脂パイプ11の長手方向に延びる突条12aが周方向に一定間隔をおいて多数形成されている。樹脂パイプ11は架橋ポリエチレン樹脂、ポリブテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂により形成され、被覆層12はオレフィン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーにより形成されている。
【0022】
図1及び図3に示すように、この折り返し用治具10の挿入筒部13は円筒状に形成され、樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入されるようになっている。この挿入筒部13の外周面は、非挿入側端部nに対して挿入側端部mほど縮径する傾斜角度の小さいテーパ面13aとなっており、挿入筒部13が樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入されやすく、また被覆層12を補助的に拡径するようになっている。挿入筒部13の内周部は、樹脂パイプ11が挿通される貫通孔13bとなっている。
【0023】
前記挿入筒部13の非挿入側端部nには、挿入筒部13の軸線xと直交する方向に延びる支持体としての支持板14が円環状に形成されている。挿入筒部13外周のテーパ面13aと支持板14の内面との間には、板状のガイドリブ15が周方向に一定間隔をおいて複数個(第1実施形態では6個)設けられている。
【0024】
図2(a),(b)に示すように、該ガイドリブ15は、その内周部が折り返し用治具10の回転方向〔図2(a)の矢印方向〕の前側に位置し、外周部が回転方向の後側に位置するように斜め方向に延びている。このガイドリブ15の内周側端部は挿入筒部13のテーパ面13a上に位置し、外周側端部は支持板14内面の径方向のほぼ中央部まで延びている。
【0025】
図3に示すように、このガイドリブ15の内周部には、内周側の拡径部位16aと外周側の折り返し部位16bとを有する円弧状の弧状部16が形成されている。拡径部位16aは弧状部16の内周側半部に形成され、折り返し部位16bは弧状部16の外周側半部に形成されている。ガイドリブ15の拡径部位16aでは樹脂パイプ11の被覆層12が拡径され、折り返し部位16bではその拡径された被覆層12が引き続いて折り返されるようになっている。
【0026】
図9(a)に示すように、ガイドリブ15の拡径部位16aにおける両側縁は断面円弧状に面取りされて面取り部16cとなり、折り返し部位16bにおける両側縁も断面円弧状に面取りされて面取り部16dとなっている。図9(b)に示すように、これらの面取り部16c及び面取り部16dにより、樹脂パイプ11の被覆層12を拡径して折り返すとき、ガイドリブ15の拡径部位16a及び折り返し部位16bの動きが被覆層12の突条12aによって妨げられることを緩和して、円滑に移動できるように構成されている。
【0027】
図1に示すように、前記支持板14の外周部には、ハンドル部を構成する把持筒部17が挿入筒部13と同心状をなすように設けられている。この把持筒部17には、周方向に一定間隔をおいて指掛け部18が凹設されている。
【0028】
前記ガイドリブ15は5〜7本設けることが好ましい。ガイドリブ15が5本未満の場合には、被覆層12の全周を拡径するように案内する力と拡径された被覆層12を折り返す力が不足して好ましくない。その一方、ガイドリブ15が7本を超える場合には、ガイドリブ15と被覆層12との周方向への係合力が強くなる傾向があり、被覆層12の折り返しを継続して行うことが困難になって好ましくない。
【0029】
なお、前記支持板14には円孔状の挿通孔19が貫通形成され、その挿通孔19に図示しない連結用紐が挿通され、複数の折り返し用治具10を連結するように構成されている。そして、連結された複数の折り返し用治具10のうちから所望の折り返し用治具10を選択して使用できるようになっている。
【0030】
次に、以上のように構成された折り返し用治具10についてその作用を説明する。
さて、図1に示すように、樹脂パイプ11端部の被覆層12を折り返すときには、折り返し用治具10の把持筒部17の指掛け部18に指を掛けて折り返し用治具10を把持し、樹脂パイプ11の端面に対向させる。そして、図5(a),(b)に示すように、その挿入筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入する。このとき、図5(b)に示すように、折り返し用治具10の挿入筒部13の外周面には、挿入側端部mから非挿入側端部nに向かって軸線xから離れるテーパ面13aが形成されるとともに、挿入筒部13の外周面と支持板14の内面との間には弧状部16を有するガイドリブ15が設けられている。
【0031】
そのため、挿入筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に容易に挿入できるとともに、被覆層12がガイドリブ15の弧状部16の拡径部位16aに案内され、樹脂パイプ11から離間されて次第に拡径する。この場合、図9(b)の実線に示すように、ガイドリブ15の拡径部位16aにおける両側縁には面取り部16cが設けられているため、折り返し用治具10の回転操作に伴ってガイドリブ15の拡径部位16aが動くとき、面取り部16cは樹脂パイプ11の被覆層12の突条12aに当り接触抵抗が抑えられた状態で移動できる。一方、樹脂パイプ11は挿入筒部13内側の貫通孔13b内へ挿入される。
【0032】
続いて、図6(a)に示すように、折り返し用治具10を樹脂パイプ11の端面に対し、回転させながら前記図5(a)の状態よりさらに前進させる。すると、図6(b)に示すように、拡径された被覆層12は、ガイドリブ15の弧状部16の折り返し部位16bに到る。一方、樹脂パイプ11は挿入筒部13の貫通孔13b内へさらに挿入される。
【0033】
次いで、図7(a)に示すように、折り返し用治具10を樹脂パイプ11の端面に対し、回転させて前記図6(a)の状態よりさらに前進させる。すると、図7(b)に示すように、被覆層12はガイドリブ15の折り返し部位16bに沿って折り返されるように案内される。このとき、図9(b)の二点鎖線に示すように、ガイドリブ15の折り返し部位16bにおける両側縁には面取り部16dが設けられているため、折り返し用治具10の回転時に折り返し部位16bが動くとき、面取り部16dは樹脂パイプ11の被覆層12の突条12aに当って接触抵抗が低減された状態で移動できる。一方、樹脂パイプ11は挿入筒部13の貫通孔13b内へさらに深く挿入される。
【0034】
その後、図8(a)に示すように、折り返し用治具10を樹脂パイプ11の端面に対し、回転させながら前記図7(a)の状態より一層前進させる。すると、図8(b)に示すように、被覆層12は、ガイドリブ15の折り返し部位16bにさらに案内されて折り返され、折り返し被覆層12Aが形成される。
【0035】
図10に示すように、折り返し用治具10の回転、前進操作を継続すると、樹脂パイプ11の被覆層12が全周に亘って完全に折り返されて折り返し被覆層12Aが形成され、その折り返し被覆層12Aが樹脂パイプ11外周の折り返されていない被覆層12上に重ねられる。
【0036】
このように、周方向に複数個設けられたガイドリブ15の弧状部16の拡径部位16aに沿って被覆層12が拡径方向に移動し、その拡径された被覆層12が折り返し部位16bに案内されて折り返される。そのため、被覆層12の全周において皺発生を抑えながら被覆層12の折り返しが行われ、被覆層12が全周に亘って円滑に折り返される。
【0037】
この場合、折り返し用治具10のガイドリブ15が周方向に均等間隔をおいて設けられていることから、被覆層12は全体が均等に折り返される。このように、折り返し用治具10のガイドリブ15の弧状部16の拡径部位16aと折り返し部位16bとが連続して作用することにより、樹脂パイプ11の被覆層12を、樹脂パイプ11の端部から所定長さだけ安定した状態で、速やかに折り返すことができる。
【0038】
このようにして樹脂パイプ11の端部で被覆層12が所定長さだけ折り返されることにより、樹脂パイプ11の端部が露出される。折り返し被覆層12Aの端縁は、樹脂パイプ11の中心軸に直交する面内に位置している。また、この樹脂パイプ11端部の露出量は、例えば継手に差し込まれる差し込み長さにより決定される。その後、被覆層12が一定長さだけ折り返された樹脂パイプ11の露出端部が継手に接続される。このとき、樹脂パイプ11の露出量が予め継手への差し込み長さに基づいて設定されていることから、折り返し被覆層12Aが継手の端面に密着する。
【0039】
以上の第1実施形態により得られる効果を以下にまとめて記載する。
(1)この第1実施形態の折り返し用治具10では、挿入筒部13が設けられるとともに、挿入筒部13の外周面と支持板14の内面との間には、拡径部位16aと折り返し部位16bとを有する弧状部16を備えたガイドリブ15が周方向に一定間隔をおいて設けられている。
【0040】
そして、樹脂パイプ11端部の被覆層12を折り返す場合には、挿入筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入し、回転しながら押し込むことにより、被覆層12はその周方向の複数箇所でガイドリブ15の弧状部16に案内されて拡径された後、引き続いて折り返される。
【0041】
従って、第1実施形態の折り返し用治具10によれば、構成が簡易であるとともに、樹脂パイプ11端部における被覆層12を容易かつ迅速に折り返すことができるという効果を奏する。
【0042】
(2)前記ガイドリブ15の弧状部16は断面円弧状に形成されている。このため、樹脂パイプ11の被覆層12を弧状部16に沿って円弧状に次第に拡径した後、拡径された被覆層12を連続する円弧に沿って安定した状態で滑らかに折り返すことができる。
【0043】
(3)前記ガイドリブ15の弧状部16は樹脂パイプ11の被覆層12を拡径する拡径部位16aと、拡径された被覆層12を折り返す折り返し部位16bとにより構成されている。さらに、拡径部位16aにおけるガイドリブ15の両側縁に面取り部16cが設けられ、かつ折り返し部位16bにおけるガイドリブ15の両側縁に面取り部16dが設けられている。従って、被覆層12がガイドリブ15の拡径部位16aで拡径される際及び折り返し部位16bで折り返される際に、ガイドリブ15の側縁が被覆層12の突条12aに引っ掛かることなく、円滑に移動することができ、被覆層12の折り返しを速やかに行うことができる。特に、折り返し部位16bで被覆層12を折り返すときに、面取り部16dが有効に働く。
【0044】
(4)前記ガイドリブ15は、内周部が回転方向の前側に位置し、外周部が回転方向の後側に位置するように斜め方向に延びている。そのため、折り返し用治具10の回転操作によって樹脂パイプ11の被覆層12を折り返すとき、ガイドリブ15が樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入されやすくなり、被覆層12の折り返しを全周に亘って容易に行うことができる。
【0045】
(5)前記支持板14の外周部には把持用のハンドル部として把持筒部17が設けられている。このため、折り返し用治具10の回転操作時に把持筒部17を把持して行うことにより、大きな回転力を働かせることができ、被覆層12の折り返しを一層容易に行うことができる。
【0046】
(6)前記ガイドリブ15は、折り返し用治具10の周方向に等間隔をおいて6個設けられている。従って、ガイドリブ15の弧状部16による被覆層12の拡径と、拡径された被覆層12の折り返しとを、折り返し用治具10の回転と前進に伴う抵抗を抑えつつ、被覆層12の全周に亘って最も有効に行うことができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図11図15に基づいて説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態においては、主に前記第1実施形態と相違する部分について説明し、同一部分については説明を省略する。
【0048】
図11(a),(b)に示すように、前記ガイドリブ15間のほぼ中央位置には、内周部が回転方向の前側に位置し、外周部が回転方向の後側に位置するように斜め方向に延びる棒状のサブガイドリブ20が設けられている。従って、サブガイドリブ20は、周方向に6個設けられている。このサブガイドリブ20は、前記ガイドリブ15よりも幅狭で、かつ低く形成されるとともに、図11(c)に示すように、その頂面が断面円弧状の曲面20aとなっている。
【0049】
折り返し用治具10の径方向に対するサブガイドリブ20の傾斜角度は、ガイドリブ15の傾斜角度よりも若干大きく設定されている。このサブガイドリブ20は、ガイドリブ15間に位置する被覆層12の拡径及び折り返しを、ガイドリブ15の機能を妨げることなく、補助的に行うように構成されている。
【0050】
さて、図12(a)に示すように、樹脂パイプ11端部の被覆層12を折り返すときには、その挿入筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入する。このとき、図12(b)に示すように、挿入筒部13の外周面にはテーパ面13aが形成されるとともに、挿入筒部13の外周面と支持板14の内面との間には弧状部16を有するガイドリブ15が設けられている。このため、被覆層12がガイドリブ15の弧状部16の拡径部位16aに案内され、次第に拡径する。
【0051】
続いて、図13(a)に示すように、折り返し用治具10を樹脂パイプ11の端面に対し、回転させながら前記図12(a)の状態よりさらに前進させる。すると、図13(b)に示すように、拡径された被覆層12は、ガイドリブ15の弧状部16の折り返し部位16bに到る。このとき、図13(c)に示すように、ガイドリブ15間にはサブガイドリブ20が設けられていることから、ガイドリブ15間に位置する被覆層12はそのサブガイドリブ20に載り、補助的に案内され、拡径される。この場合、サブガイドリブ20の頂面が曲面20aであることから、サブガイドリブ20の動きが円滑に進み、被覆層12の拡径が安定して行われる。
【0052】
次いで、図14(a)に示すように、折り返し用治具10を回転させて前記図13(a)の状態よりさらに前進させる。すると、図14(b)に示すように、被覆層12はガイドリブ15の折り返し部位16bに沿って折り返されるように案内される。このとき、図14(c)に示すように、ガイドリブ15間に位置する被覆層12はサブガイドリブ20に支持され、補助的に案内され、折り返される。
【0053】
その後、図15(a)に示すように、折り返し用治具10を回転させながら前記図14(a)の状態より一層前進させる。すると、図15(b)に示すように、被覆層12は、ガイドリブ15の折り返し部位16bにさらに案内されて折り返され、折り返し被覆層12Aが形成される。このとき、ガイドリブ15間に位置する被覆層12はサブガイドリブ20に支持され、補助的に連続して案内され、折り返される。
【0054】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態の場合に比べてガイドリブ15間に位置する被覆層12の拡径及び折り返しをサブガイドリブ20により補うことができ、被覆層12の全周に亘って一層容易かつ均一に折り返すことができる。特に、直径の大きい樹脂パイプ11の被覆層12を折り返す場合に有効である。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図16図19に基づいて説明する。
まず、径の小さい小径の折り返し用治具10aと、それより径の大きい中径の折り返し用治具10bとの2つの折り返し用治具10を重ね合せる場合について説明する。なお、径は折り返し用治具10におけるハンドル部としての把持筒部17の直径を意味する。
【0056】
図16に示すように、小径の折り返し用治具10aの挿入筒部13側を中径の折り返し用治具10bの挿入筒部13側に対向させ、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17を中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内側に嵌め込んで重ね合せることができるように構成されている。
【0057】
図17に示すように、小径の折り返し用治具10aが中径の折り返し用治具10bに重合された状態では、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17の外周面17aと中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内周面17bは、摩擦力によって抜け止めされている。この場合、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17の外周面17a及び中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内周面17bの面粗度を粗く設定することにより、摩擦力を増大させて抜け止め力を高めることができる。
【0058】
なお、小径の折り返し用治具10aが中径の折り返し用治具10bに重合された状態では、双方の折り返し用治具10a、10bの挿入筒部13、ガイドリブ15、サブガイドリブ20等は互いに接触しないように構成されている。
【0059】
続いて、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bを重合させた状態で、中径の折り返し用治具10bより径の大きい大径の折り返し用治具10cを重ね合せる場合について説明する。
【0060】
図18に示すように、前述のように小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bを重合させた状態で、中径の折り返し用治具10bの挿入筒部13側に大径の折り返し用治具10cの挿入筒部13側を対向させる。そして、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17を、大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の内側に嵌め込んで重ね合せることができるように構成されている。
【0061】
図19に示すように、中径の折り返し用治具10bが大径の折り返し用治具10cに重合された状態では、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の外周面17aと大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の内周面17bは、摩擦力によって抜け止めされている。この場合にも、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の外周面17aと、大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の内周面17bの面粗度を粗く設定することにより、摩擦力を増大させて抜け止め力を高めることができる。
【0062】
なお、中径の折り返し用治具10bが大径の折り返し用治具10cに重合された状態では、大径の折り返し用治具10cの挿入筒部13、ガイドリブ15、サブガイドリブ20等が中径の折り返し用治具10bの外面に接触しないように構成されている。
【0063】
さて、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bとを重ね合せる場合には、図16に示すように、小径の折り返し用治具10aの挿入筒部13側を中径の折り返し用治具10bの挿入筒部13側と対向させるとともに、両折り返し用治具10a、10bの周方向において把持筒部17の各指掛け部18を対向させる。
【0064】
図17に示すように、その状態から小径の折り返し用治具10aの把持筒部17を中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内側へ嵌め込むことにより、小径の折り返し用治具10aを中径の折り返し用治具10bに重ね合せることができる。このとき、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17の外周面17aと中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内周面17bとは摩擦力をもって嵌合されている。従って、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bとの相互の抜け止めを図ることができる。
【0065】
引き続いて、図18に示すように、中径の折り返し用治具10bに対して大径の折り返し用治具10cを重ね合せる場合には、中径の折り返し用治具10bの挿入筒部13側に大径の折り返し用治具10cの挿入筒部13側を対向させるとともに、両折り返し用治具10b、10cの周方向において把持筒部17の各指掛け部18を対向させる。
【0066】
図19に示すように、その状態から中径の折り返し用治具10bの把持筒部17を大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の内側へ嵌め込むことにより、中径の折り返し用治具10bを大径の折り返し用治具10cに重ね合せることができる。このときにも、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の外周面17aと大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の内周面17bとは摩擦力をもって嵌合されている。従って、中径の折り返し用治具10bと大径の折り返し用治具10cとの相互の抜け止めを図ることができる。なお、各折り返し用治具10a、10b、10cが重合された状態で、挿通孔19に連結用紐を挿通し、折り返し用治具10a、10b、10cを結束してもよい。
【0067】
このように、各折り返し用治具10a、10b、10cの挿入筒部13側が内側になるように重ね合されていることから、各折り返し用治具10a、10b、10cの挿入筒部13、ガイドリブ15及びサブガイドリブ20の傷付きや変形を防止することができる。その結果、折り返し用治具10を用いてパイプ11の被覆層12を折り返す場合に、パイプ11の端部や被覆層12の損傷を防止することができる。
【0068】
さらに、折り返し用治具10の使用時には、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の外周面17aと大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の内周面17bとの摩擦力に抗して引き離すことにより、中径の折り返し用治具10bと大径の折り返し用治具10cとの重合を簡単に解くことができる。引き続いて、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17の外周面17aと中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内周面17bとの摩擦力に抗して引き離すことにより、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bとの重合を簡単に解くことができる。そして、所望とする折り返し用治具10を選択して使用することができる。
【0069】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態を図20図23に基づいて説明する。
まず、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bとの2つの折り返し用治具10を重ね合せる場合について説明する。
【0070】
図20に示すように、小径の折り返し用治具10aの挿入筒部13側を中径の折り返し用治具10bの挿入筒部13側に対向させ、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17を中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内側に嵌合できるように構成されている。小径の折り返し用治具10a及び中径の折り返し用治具10bの各把持筒部17の指掛け部18間に形成された突出部21の外周面には、周方向に延びる凹状係合部22が設けられている。一方、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の突出部21の内周面には、前記凹状係合部22に嵌入する半球状の凸状係合部23が設けられている。上記凹状係合部22と凸状係合部23とで凹凸係合部が構成されている。
【0071】
そして、図21(a),(b)に示すように、小径の折り返し用治具10aが中径の折り返し用治具10bに重合された状態では、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17の外周面の凹状係合部22に中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内周面の凸状係合部23が嵌まり込んで係合され、抜け止めされるようになっている。
【0072】
続いて、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bを重合させた状態で、中径の折り返し用治具10bに大径の折り返し用治具10cを重ね合せる場合について説明する。
【0073】
図22に示すように、前述のように小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bを重合させた状態で、中径の折り返し用治具10bの挿入筒部13側に大径の折り返し用治具10cの挿入筒部13側を対向させる。そして、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17を、大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の内側に嵌合できるように構成されている。中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の突出部21の外周面17aには凹状係合部22が設けられるとともに、大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の突出部21の内周面17bには凸状係合部23が設けられている。
【0074】
図23(a),(b)に示すように、中径の折り返し用治具10bが大径の折り返し用治具10cに重合された状態では、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の突出部21外周面17aの凹状係合部22と大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の突出部21内周面17bの凸状係合部23は係合し、抜け止めされている。
【0075】
さて、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bとを重ね合せる場合には、図22に示すように、小径の折り返し用治具10aの挿入筒部13側を中径の折り返し用治具10bの挿入筒部13側と対向させるとともに、両折り返し用治具10a、10bの周方向において把持筒部17の各指掛け部18を対向させる。
【0076】
図23に示すように、その状態から小径の折り返し用治具10aの把持筒部17を中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の内側へ嵌め込むことにより、小径の折り返し用治具10aを中径の折り返し用治具10bに重ね合せることができる。このとき、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17の突出部21外周面17aの凹状係合部22に中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の突出部21内周面17bの凸状係合部23が係合している。従って、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bとの相互の抜け止めを図ることができる。
【0077】
引き続いて、図22に示すように、中径の折り返し用治具10bに対して大径の折り返し用治具10cを重ね合せる場合には、中径の折り返し用治具10bの挿入筒部13側に大径の折り返し用治具10cの挿入筒部13側を対向させるとともに、両折り返し用治具10b、10cの周方向において把持筒部17の各指掛け部18を対向させる。
【0078】
図23(a),(b)に示すように、その状態から中径の折り返し用治具10bの把持筒部17を大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の内側へ嵌め込むことにより、中径の折り返し用治具10bを大径の折り返し用治具10cに重ね合せることができる。このときにも、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の突出部21外周面の凹状係合部22に大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の突出部21内周面の凸状係合部23が係合している。従って、中径の折り返し用治具10bと大径の折り返し用治具10cとの相互の抜け止めを図ることができる。
【0079】
このように、各折り返し用治具10a、10b、10cの挿入筒部13側が内側になるように重ね合されるとともに、各折り返し用治具10a、10b、10cが凹凸係合部で抜け難くなっていることから、各折り返し用治具10a、10b、10cの挿入筒部13、ガイドリブ15及びサブガイドリブ20の傷付きや変形を防止することができる。その結果、折り返し用治具10を用いてパイプ11の被覆層12を折り返す場合に、パイプ11の端部や被覆層12の損傷を防止することができる。
【0080】
加えて、折り返し用治具10の使用時には、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の凹状係合部22と大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の凸状係合部23との係合力に抗して引き離すことにより、中径の折り返し用治具10bと大径の折り返し用治具10cとの重合を簡単に解くことができる。引き続いて、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17の凹状係合部22と中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の凸状係合部23との係合力に抗して引き離すことにより、小径の折り返し用治具10aと中径の折り返し用治具10bとの重合を簡単に解くことができる。そして、所望とする折り返し用治具10を選択して使用することができる。
【0081】
なお、前記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記折り返し用治具10を回転させることなく、樹脂パイプ11の端部に対し、軸線x方向に真っ直ぐ押し込むようにして樹脂パイプ11端部の被覆層12を拡径して折り返すように構成してもよい。この場合、ガイドリブ15及びサブガイドリブ20は、折り返し用治具10の半径方向に延びていることが好ましい。
【0082】
・前記ガイドリブ15の弧状部16は、断面楕円弧状、断面長円弧状等の形状であってもよい。また、拡径部位16aと折り返し部位16bとで、円弧の半径が異なるように設定してもよい。
【0083】
・前記サブガイドリブ20をガイドリブ15間において複数個設けるように構成してもよい。
・前記サブガイドリブ20の内周部に、ガイドリブ15の弧状部16よりも低い弧状部位を設けてもよい。
【0084】
・前記ガイドリブ15の拡径部位16aにおける両側縁の面取り部16cを傾斜面で構成したり、断面楕円形状の曲面で構成したりしてもよい。
・前記支持体として、支持板14に代え、ガイドリブ15間又はガイドリブ15とサブガイドリブ20との間を連結する連結部材で構成することも可能である。
【0085】
・前記折り返し用治具10の把持筒部17及び指掛け部18を省略してもよい。また、ハンドル部の指掛け部18のみを省略してもよい。
・前記樹脂パイプ11の被覆層12として、突条12aを有しないものを使用することも可能である。
【0086】
図24に示すように、前記第3実施形態において、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の突出部21内周面17bを、開口部側ほど拡径するテーパ面24としてもよい。この場合、小径の折り返し用治具10aを中径の折り返し用治具10bの内側に嵌め込んだとき、小径の折り返し用治具10aの把持筒部17の突出部21先端外周面17aを、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17のテーパ面24に係合させることができる。
【0087】
さらに、大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の突出部21内周面17bを、開口部側ほど拡径するテーパ面24としてもよい。この場合にも、中径の折り返し用治具10bを大径の折り返し用治具10cの内側に嵌め込んだとき、中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の突出部21先端外周面17aを、大径の折り返し用治具10cの把持筒部17のテーパ面24に係合させることができる。
【0088】
・前記第4実施形態において、中径の折り返し用治具10b及び大径の折り返し用治具10cの把持筒部17内周面17bの凸状係合部23は、少なくとも1つ設けられておればよい。また、凸状係合部23の形状を、周方向に延びる突条等に変更してもよい。
【0089】
・前記第4実施形態において、凹状係合部22を中径の折り返し用治具10b及び大径の折り返し用治具10cの各把持筒部17の突出部21内周面17bに設けるとともに、凸状係合部23を小径の折り返し用治具10a及び中径の折り返し用治具10bの各把持筒部17の突出部21外周面17aに設けてもよい。
【0090】
・前記第3実施形態及び第4実施形態において、大径の折り返し用治具10cよりさらに径の大きい折り返し用治具10を、大径の折り返し用治具10cに対して重ね合せるように構成してもよい。
【0091】
・前記第4実施形態において、凹状係合部22を、小径の折り返し用治具10a及び中径の折り返し用治具10bの把持筒部17の指掛け部18外周面17aに設けるとともに、凸状係合部23を、中径の折り返し用治具10b及び大径の折り返し用治具10cの把持筒部17の指掛け部18内周面17bに設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…折り返し用治具、10a…小径の折り返し用治具、10b…中径の折り返し用治具、10c…大径の折り返し用治具、11…樹脂パイプ、12…被覆層、13…挿入筒部、14…支持体としての支持板、15…ガイドリブ、16…弧状部、16a…拡径部位、16b…折り返し部位、16c…面取り部、16d…面取り部、17…ハンドル部としての把持筒部、17a…外周面、17b…内周面、20…サブガイドリブ、22…凹凸係合部としての凹状係合部、23…凹凸係合部としての凸状係合部、m…挿入側端部、n…非挿入側端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24