特許第6206154号(P6206154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206154スチールコード及びこれを使用した建設車両用空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206154
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】スチールコード及びこれを使用した建設車両用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20170925BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20170925BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   D07B1/06 A
   B60C9/18 G
   B60C9/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-258877(P2013-258877)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-113553(P2015-113553A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】藤森 弘章
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−073609(JP,A)
【文献】 特開2013−096040(JP,A)
【文献】 特開2012−107359(JP,A)
【文献】 特開2004−300608(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030646(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0143895(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/143895(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/06
B60C 9/00
B60C 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本のコアフィラメントの周囲にM本のシースフィラメントを撚り合わせて構成されるストランドをN本撚り合わせたN×(1+M)構造のスチールコードにおいて、
すべての前記コアフィラメントの表面に軟化点が115℃以上の高軟化点クマロン樹脂を被覆する一方で、すべての前記シースフィラメントの表面に軟化点が95℃以下の低軟化点クマロン樹脂を被覆したことを特徴とするスチールコード。
【請求項2】
前記コアフィラメントに対する前記高軟化点クマロン樹脂の被覆厚が0.05μm以上であり、前記シースフィラメントに対する前記低軟化点クマロン樹脂の被覆厚が0.05μm以上0.40μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスチールコードをベルト保護層に用いたことを特徴とする建設車両用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコード及びこれを使用した建設車両用空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、スチールコードの防錆性を向上することで、優れたタイヤ耐久性を得ることを可能にしたスチールコード及びこれを使用した建設車両用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤに用いられるゴム補強用のスチールコードは、複数本のスチールワイヤを撚り合わせた撚線からなる。そのため、スチールコードの内部にはスチールコードの長手方向に沿って空隙が形成される傾向にある。従って、空気入りタイヤにおいて、トレッド部に形成された傷などから水や空気が浸入してベルト層に達すると、その水や空気が更にスチールコードの内部空隙に浸入し、スチールコードを長手方向に腐蝕させ、タイヤの耐久性を低下させる原因になっていた。このため、スチールコードを撚り加工する工程で、予めスチールコードの内部空隙に未加硫ゴム組成物を充填させるようにしたゴム入りスチールコードが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、近年、ユーザーの嗜好の多様化により多品種のタイヤを少量生産する傾向が強まっているため、スチールコードの開梱からタイヤ生産の為に消化される迄に長期間が掛かる場合が多くなっている。このように開梱から消化される迄の期間が長期化すると、スチールコードをゴムで被覆加工する迄の間に、内部空隙に充填した未加硫ゴム組成物から硫黄成分がスチールコードの表面に滲出してスチールコード表面を硫化させる為、ゴムとの接着性を低下させて、タイヤの耐久性を低下させ易くなるという問題がある。このような問題の対策として、例えば、ゴム入りスチールコードの表面に樹脂膜を被覆することが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、M+N撚り構造のような単純な撚り構造のスチールコードでは、予めコード内に未加硫ゴム組成物を充填することが容易であるが、N×(1+M)構造のような複雑な撚り構造のスチールコードでは、予めコード内に未加硫ゴム組成物を充填することが難しく、予め未加硫ゴム組成物を充填することなく、腐蝕を防止して優れたタイヤの耐久性を得ることが求められている。また、特許文献2の提案を参考に、撚り合わせる前のスチールワイヤの段階で各スチールワイヤに腐蝕防止の樹脂被膜を施すことが考えられるが、単純に樹脂被膜を施しただけでは、被膜の厚さや樹脂の種類によって、加硫時に樹脂被膜が軟化してワイヤ表面から移動して所望の防錆性能を得られなかったり、樹脂被膜によってスチールコードとゴムとの接着が阻害されたりするため、更なる改良が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−088667号公報
【特許文献2】特開2011−073609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、スチールコードの防錆性を向上することで、優れたタイヤ耐久性を得ることを可能にしたスチールコード及びこれを使用した建設車両用空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のスチールコードは、1本のコアフィラメントの周囲にM本のシースフィラメントを撚り合わせて構成されるストランドをN本撚り合わせたN×(1+M)構造のスチールコードにおいて、すべての前記コアフィラメントの表面に軟化点が115℃以上の高軟化点クマロン樹脂を被覆する一方で、すべての前記シースフィラメントの表面に軟化点が95℃以下の低軟化点クマロン樹脂を被覆したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、上述のように、すべてのフィラメントに高軟化点クマロン樹脂又は低軟化点クマロン樹脂の樹脂被覆が施されているので、保管時には、各フィラメントが水や空気と接触せず、腐蝕が防止される。また、加硫時には、ゴムが浸透し易いシースフィラメントでは被覆されたクマロン樹脂の軟化点が低いため被覆が溶けてスチールコード(シースフィラメント)とゴムとの接着が促進され、ゴムが浸透し難いコアフィラメントでは被覆されたクマロン樹脂の軟化点が高いため被覆が残存するので、加硫後の空気入りタイヤにおいても優れた防錆性能が得られ、優れたタイヤ耐久性を得ることができる。
【0009】
本発明においては、コアフィラメントに対する高軟化点クマロン樹脂の被覆厚が0.05μm以上であり、シースフィラメントに対する低軟化点クマロン樹脂の被覆厚が0.05μm以上0.40μm以下であることが好ましい。このように各樹脂被膜の被覆厚を設定することで、加硫時に高軟化点クマロン樹脂を残存し易くし、且つ、低軟化点クマロン樹脂を溶けやすくすることができるので、防錆性能を向上するには有利になる。
【0010】
上述のスチールコードをベルト保護層に用いた建設車両用空気入りタイヤは、スチールコードが加硫後においても優れた防錆性能を発揮するので、優れた耐久性を得ることができる。特に、建設車両用空気入りタイヤは、荒地等で使用され、外傷部から水や空気が侵入し易いため、本発明のスチールコードによる防錆性能が効果的に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のスチールコードを用いる空気入りタイヤの一例を示す子午線半断面 図である。
図2】本発明のスチールコードの断面を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1に例示する本発明の空気入りタイヤは、主に荒地で使用される建設車両用空気入りタイヤであり、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。尚、図1において、CLはタイヤ赤道を示す。
【0014】
左右一対のビード部3間には、タイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含むカーカス層4が装架されている。各ビード部3には、環状のビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。カーカス層4は、ビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられ、ビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように配置されている。
【0015】
また、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、複数層のベルト層7a,7b,7c,7dがタイヤ全周に亘って埋設されている。これらベルト層7a〜7dは、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、且つ、層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7a〜7dにおいて、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、例えば10°〜40°の範囲に設定されている。また、そのコード打ち込み密度は、例えば10本/50mm〜25本/50mmの範囲に設定されている。ベルト層7a〜7dの補強コードとしては、スチールコードが使用されている。
【0016】
更に、ベルト層7a〜7dの外周側には複数層のベルト保護層8a,8bがタイヤ全周に亘って埋設されている。ベルト層7a〜7dがトレッド部1の強度を担持しているのに対して、ベルト保護層8a,8bはベルト層7a〜7dを保護する目的で配設されている。これらベルト保護層8a,8bは、タイヤ周方向に対して傾斜する補強コードを含み、且つ、層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト保護層8a,8bにおいて、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、例えば20°〜40°の範囲に設定されている。また、そのコード打ち込み密度は、例えば10本/50mm〜30本/50mmの範囲に設定されている。
【0017】
本発明のスチールコード9は、このような空気入りタイヤのベルト保護層8a,8bとして用いられる。上述のように複数層のベルト保護層8a,8bを含む場合、これら複数層のベルト層8a,8bの少なくとも1層に本発明のスチールコード9が用いられていればよい。
【0018】
本発明のスチールコード9は、図2に例示するように、1本のコアフィラメント10の周囲にM本のシースフィラメント11を撚り合わせて構成されるストランド12をN本撚り合わせたN×(1+M)構造を有する。図2の例は、1本のコアフィラメント10の周囲に5本のシースフィラメント11を撚り合わせて構成されるストランド12を4本撚り合わせた4×(1+5)構造である。このような構造を有するスチールコード9において、すべてのコアフィラメント10の表面には軟化点が115℃以上の高軟化点クマロン樹脂13が被覆されている。その一方で、すべてのシースフィラメント11の表面には軟化点が95℃以下の低軟化点クマロン樹脂14が被覆されている。
【0019】
本発明者は、N×(1+M)撚り構造のような複雑な構造を有するスチールコード9に対するゴムの浸透について鋭意研究した結果、ストランド12間にはゴムが充分に浸透するため、ストランド12の表面側に位置するシースフィラメント11は、加硫後のタイヤにおいてゴムに充分に被覆されて錆が発生し難いが、ストランド12を構成するコアフィラメント10とシースフィラメント11との間にはゴムが浸透し難く、コアフィラメント10の周囲には空隙が生じ易く、錆が生じやすいことを知見した。そのため、コアフィラメント10には、加硫時の高温でも溶けない高軟化点クマロン樹脂13を被覆して、空隙が生じても錆が発生しないようにする一方で、シースフィラメント11では、ゴムとの接着を阻害しないように加硫時の高温で容易に溶けて移動する低軟化点クマロン樹脂14を被覆することで、N×(1+M)撚り構造のような複雑な構造を有するスチールコードの防錆性を効果的に高めることができることを発見した。
【0020】
即ち、本発明では、すべてのフィラメント(コアフィラメント10及びシースフィラメント11)に高軟化点クマロン樹脂13又は低軟化点クマロン樹脂14の樹脂被覆が施されているので、保管時には、各フィラメント10,11が水や空気と接触せず、腐蝕が防止される。そして、加硫の際には、ゴムが浸透し易いシースフィラメント11では被覆されたクマロン樹脂の軟化点が低いため被覆が溶けてスチールコード9(シースフィラメント11)とゴムとの接着が促進され、ゴムが浸透し難いコアフィラメント10では被覆されたクマロン樹脂の軟化点が高いため被覆が残存する。その結果、加硫後の空気入りタイヤでは、コアフィラメント10は加硫前と同様に高軟化点クマロン樹脂13に被覆されているため腐蝕が防止され、シースフィラメント11はゴムに覆われているため腐蝕が防止され、スチールコード9として優れた防錆性能が得られ、このスチールコード9を用いたタイヤでは、優れた耐久性を得ることができる。
【0021】
このとき、高軟化点クマロン樹脂13の軟化点が115℃より小さいと、加硫時に樹脂被覆が溶けて移動してしまうため、加硫後の空気入りタイヤにおいてコアフィラメント10に樹脂被膜されない部位が発生し易くなり、防錆性能が低下する。低軟化点クマロン樹脂14の軟化点が95℃より大きいと、加硫時に樹脂被覆が充分に溶けなくなるため、シースフィラメント11の表面に樹脂被覆が残存して、ゴムとの接着が阻害される。尚、高軟化点クマロン樹脂13の軟化点の上限は、例えば150℃であり、低軟化点クマロン樹脂14の軟化点の下限は、例えば60℃である。
【0022】
各クマロン樹脂12,13は上述の軟化点の範囲を満たしていれば、加硫時にそれぞれが被覆するフィラメントに応じた挙動を示して、防錆性能を高めることができるが、好ましくは、コアフィラメント10に対する高軟化点クマロン樹脂13の被覆厚を0.05μm以上にし、シースフィラメント11に対する低軟化点クマロン樹脂14の被覆厚を0.05μm以上0.40μm以下にするとよい。このように各樹脂被膜の被覆厚を設定することで、加硫時に高軟化点クマロン樹脂13を残存し易くし、且つ、低軟化点クマロン樹脂14を溶けやすくすることができるので、防錆性能を向上するには有利になる。
【0023】
このとき、高軟化点クマロン樹脂13の被覆厚が0.05μmより小さいと、被覆厚が少なすぎるため、保管時における防錆性能を大幅に向上することが難しくなる。低軟化点クマロン樹脂14の被覆厚が0.05μmより小さいと、被覆厚が少なすぎるため、保管時における防錆性能を大幅に向上することが難しくなる。低軟化点クマロン樹脂14の被覆厚が0.40μmより大きいと、加硫時にクマロン樹脂が充分に溶けなくなるため、ゴムとシースフィラメント11との接着性を充分に高めることが難しくなる。尚、高軟化点クマロン樹脂13の被覆厚が大きいほど防錆性能は高いが、被覆厚が2.00μmを超えると更なる防錆性能の向上は見込めず、材料コストが高くなるため、防錆性能と接着性や材料コストとのバランスを考慮して、被覆厚の上限は例えば1.50μmとする。
【0024】
このように構成された本発明のスチールコード9は、空気入りタイヤの補強コードとして用いることができるが、特に図1に例示するような建設車両用空気入りタイヤのベルト保護層8a,8bに用いることが好ましい。即ち、建設車両用空気入りタイヤは、主に荒地等で使用されるため、タイヤ表面に外傷を受けやすく、この外傷部からタイヤ内に水や空気や侵入し易い傾向にある。本発明のスチールコード9を用いたベルト保護層8a,8bであれば、外傷部から水や空気が侵入して、ベルト保護層8a,8bに達したとしても、防錆性能が効果的に発揮されるため、ベルト保護層8a,8bを構成する補強コード(スチールコード9)が腐蝕してタイヤ耐久性が悪化することが無い。特に、複数層のベルト保護層8a,8bを有するタイヤの場合、少なくとも最外周側のベルト保護層(図1の例ではベルト保護層8b)に本発明のスチールコード9を用いるとよい。即ち、最外周側のベルト保護層8bは、上述の外傷部から侵入した水や空気が最初に接触する層であるので、少なくともこの層の防錆性能を高めることで、効果的にタイヤ耐久性を向上することができる。
【実施例】
【0025】
タイヤサイズ2700R49で、図1の断面構造を有する空気入りタイヤにおいて、スチールコード(4×(1+5)×0.25HE)を4層のベルト層の外周側に配置された2層のベルト保護層の両方に使用し、そのスチールコードの表面処理方法(クマロン樹脂の被覆厚、クマロン樹脂の軟化点)を表1のように異ならせた従来例1、比較例1〜4、実施例1〜3の8種類の空気入りタイヤを製造した。
【0026】
尚、いずれの例においても、内側のベルト保護層の幅を590mmとし、外側のベルト保護層の幅を500mmとし、両ベルト保護層のタイヤ周方向に対するコード角度をそれぞれ30°とし、両ベルト保護層のコード打ち込み密度をそれぞれ15本/50mmとした。また、全てのタイヤのベルト保護層において、スチールコードをS撚りとし、ストランドをS撚りとし、スチールコードの撚りピッチを9mmとし、ストランドの撚りピッチを5mmとした。尚、従来例1は、クマロン樹脂を被覆しない例であるが、樹脂被膜を除いたスチールコード自体の構成は、他の比較例や実施例と共通である。
【0027】
これら8種類の試験タイヤについて、下記の評価方法により、コードの防錆性能、タイヤ錆成長長さ、タイヤ耐久性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0028】
コードの防錆性能
ベルト層に使用する前の各スチールコードを6ヶ月間、湿度30%以下に保ったビニール袋内に密閉して保管した後、錆の有無を目視で観察した。評価結果は、錆が発生したものを「×」、錆が発生しなかったものを「○」として示した。
【0029】
タイヤ錆成長長さ
各試験タイヤのトレッド部の1箇所にドリルで穴を入れた後、リムサイズ19.50−4.0のリムに組み付け、空気圧700kPaを充填し、建設車両に装着し、荷重270kNを負荷し、平均速度50km/hでテストコースを300時間走行させた後、トレッドゴムを剥がして、ドリル穴からの錆成長長さを測定した。評価結果は、従来例1の測定値を100とする指数で示した。この指数値が小さい程、錆成長長さが短く、防錆性能が優れていることを意味する。
【0030】
タイヤ耐久性能
各試験タイヤをリムサイズ49インチのOR試験リムに装着し、規定内圧(700kPa)を充填し、速度10km/hで、初期荷重183kNから10時間毎に荷重を52kNずつ加えながら、高さ200mmのクリート付きの回転ドラム試験機(直径5.0m)上で走行させ、タイヤが故障するまでの時間を測定した。評価結果は、従来例1の測定値を100とする指数で示した。この指数値が小さい程、タイヤ耐久性能が高いことを意味する。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から判るように、実施例1〜3は、従来例1との対比において、コードの防錆性能を向上し、タイヤ錆成長長さを減少し、優れたタイヤ耐久性能が得られた。
【0033】
一方、コアフィラメント及びシースフィラメントに共に低軟化点クマロン樹脂を被覆した比較例1は、コードの防錆性能は改善するものの、加硫時にクマロン樹脂が溶けてしまうため、タイヤにおける錆成長長さやタイヤ耐久性能を改善する効果は得られなかった。コアフィラメント及びシースフィラメントに共に高軟化点クマロン樹脂を被覆した比較例2は、加硫時にシースフィラメントのクマロン樹脂被覆が残留するため、タイヤ耐久性能が低下した。コアフィラメントを被覆するクマロン樹脂の軟化点が充分に高くない比較例3は、コアフィラメントを充分に保護することができないためタイヤにおける錆成長長さを改善することができない。シースフィラメントを被覆するクマロン樹脂の軟化点が高すぎる比較例4は、クマロン樹脂によりコードとゴムとの接着が阻害されるためタイヤ耐久性能が悪化した。
【符号の説明】
【0034】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7a,7b,7c,7d ベルト層
8a,8b ベルト保護層
9 スチールコード
10 コアフィラメント
11 シースフィラメント
12 ストランド
13 高軟化点クマロン樹脂
14 低軟化点クマロン樹脂
CL タイヤ赤道
図1
図2