特許第6206156号(P6206156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206156
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】吸放湿性ポリエステル繊維パッケージ
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/92 20060101AFI20170925BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20170925BHJP
   B65H 55/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   D01F6/92 307D
   D01D7/00 Z
   B65H55/00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-259939(P2013-259939)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-205941(P2014-205941A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年10月25日
(31)【優先権主張番号】201310124620.1
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】范 志恒
(72)【発明者】
【氏名】成 娟
(72)【発明者】
【氏名】望月 克彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰崇
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 久人
(72)【発明者】
【氏名】吉宮 隆之
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−277911(JP,A)
【文献】 特開昭51−067419(JP,A)
【文献】 特開2005−273059(JP,A)
【文献】 特開2002−155425(JP,A)
【文献】 特開2007−092228(JP,A)
【文献】 特開平09−268433(JP,A)
【文献】 米国特許第05922830(US,A)
【文献】 特開2013−185279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00−6/96、9/00−9/04
B65H55/00−55/04
61/00−63/08
D01D1/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル中に、3〜25重量%のポリ(N−ビニルラクタム)を、繊維断面における平均分散径が500nm以下で微分散した、吸放湿性パラメータ(ΔMR)が1.0%以上、強度が2.0cN/dtex以上、タフネスが15以上、繊度斑U%(n)が1.5以下、色調L値が70以上、色調b値が10.0以下の吸放湿性ポリエステル繊維を巻きつけた、以下に示す(1)〜(3)を満足するする吸放湿性ポリエステル繊維パッケージ。
(1)糸量2〜15kg
(2)サドルが0〜10.0%
(3)弾性率の内外層差が20.0%以下、沸騰水収縮率の内外層差が1.5%以下
【請求項2】
バルジが0〜8.0%であることを特徴とする請求項1記載の吸放湿性ポリエステル繊維パッケージ。
【請求項3】
ポリ(N−ビニルラクタム)がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1または2記載の吸放湿性ポリエステル繊維パッケージ。
【請求項4】
繊維中のアンチモン原子含有率が50ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸放湿性ポリエステル繊維パッケージ。
【請求項5】
ポリエステルの融点が255℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸放湿性ポリエステル繊維パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸放湿性を有するポリエステル繊維パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維は機械的強度、耐熱性などに優れるため、衣料用途を主体に広く使用されている。しかしながら、これらのポリエステル繊維は極めて吸放湿性が低いため、インナー,中衣,スポーツ衣料などのように直接的に肌に触れてあるいは肌側に近い状態で着用される分野に使用する場合には、肌からの発汗によるムレ,ベタツキなどを生じ、吸放湿性の高い天然繊維に比較して快適性の点で劣るため、これらの分野への進出は限定されている。
【0003】
このため、例えば特許文献1に記載されているように、ポリエステル繊維からなる布帛に、高次加工で吸放湿性成分を付与する技術が提案されている。しかしながら、この方法では布帛の風合いが硬くなったり、洗濯耐久性に劣ったりする問題があった。
【0004】
そこで、ポリエステル繊維自体に吸放湿性を付与すべく、例えば特許文献2〜4に記載されているように、吸放湿性を持つポリマーを芯成分とし、これを鞘成分であるポリエステルで覆った芯鞘型複合繊維が提案されている。この方法により吸放湿性は向上するものの、染色などの熱水処理時に、芯部の吸湿膨潤による体積膨張により鞘部に歪みがかかり、繊維表面にひびや割れ(鞘割れ)が生じ、商品価値が低下するばかりでなく工程トラブルを生じる等の欠点がある。繊維中に中空部を設けることで芯部の体積膨張を吸収し鞘割れを抑制する試みもなされているが、これにより界面での剥離が生じやすく商品価値を損なうという問題があった。
【0005】
そこで、吸湿ポリマーの膨潤による体積変化の絶対値を小さくすることで鞘割れを抑制すべく、例えば特許文献5に記載されているように、吸湿ポリマーをポリエステル中に分散させる技術が提案されている。しかしながら、該技術ではポリオキシアルキレングリコールとポリエステルとを共重合したポリマーを吸湿ポリマーとして用いているため、吸放湿性を十分に発現させるためには島成分比率を高める必要があり、これにより操業性が不安定になり糸切れが多くなったり、得られた繊維の長手方向の繊度斑が大きくなったりする問題があった。
【0006】
これに対して、例えば特許文献6に記載されているように、吸湿成分を共重合せずに単体で用いてポリエステル中に分散させる技術が提案されている。しかしながら、該技術はポリアミドに関するものであり、ポリエステル特有のハリ,コシを再現することは不可能であった。また、該技術をポリエステルに適用する技術が、例えば特許文献7に記載されている。しかしながら、該文献には繊維に関して具体的な製造方法の記載はなく、実施例もフィルムに関するものである。該文献に基づいて繊維を製造したところ、繊維が黒く着色する,操業中の発煙および繊維の黄味が高くなる,糸切れが多発して紡糸操業性が悪化し、また、繊維の長手方向の繊度斑が大きい,巻取中に糸層が破裂する,巻取糸保管中に膨潤し延伸時の解舒性が悪くなるために延伸操業性が悪く繊度斑が大きい、など多くの問題が発生した。
【0007】
吸放湿性繊維に関する研究は、上記の特許文献で示した如く検討が進められており、技術的進歩もなされてきている。しかしながら、吸放湿性繊維のパッケージに関する研究は殆ど進んでおらず、情報の開示も認められないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−69846号公報
【特許文献2】特開平5−209316号公報
【特許文献3】特開平6−136620号公報
【特許文献4】特開平9−111579号公報
【特許文献5】特開2004−277911号公報
【特許文献6】特開昭55−4852号公報
【特許文献7】特開2002−155425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、吸放湿性および強度が良好で,長手方向の繊度斑が少なく、機械的物性に優れた特性を有するポリエステル繊維パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、ポリエステル中に、3〜25重量%のポリ(N−ビニルラクタム)を、繊維断面における平均分散径が500nm以下で微分散した、吸放湿性パラメータ(ΔMR)が1.0%以上、強度が2.0cN/dtex以上、タフネスが15以上、繊度斑U%(n)が1.5以下、色調L値が70以上、色調b値が10.0以下の吸放湿性ポリエステル繊維を巻き付けた、以下に示す(1)〜(3)を満足する吸放湿性ポリエステル繊維パッケージ。
(1)糸量2〜15kg
(2)サドルが0〜10.0%
(3)弾性率の内外層差が20.0%以下、沸騰水収縮率の内外層差が1.5%以下
によって解決することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸放湿性ポリエステル繊維パッケージは、着用快適性を得るのに十分な吸放湿性を有しており、また、繊度斑が小さく、L値が高く、かつb値が低い等の特徴を有していることから、均一染色性および発色性に優れており、更に、適度な巻量を有しており、サドルも少なく、解舒性に優れ、取り扱いが容易で型崩れすることもなく、糸条の物性の内外層差も極めて小さく、衣料用として用いるのに適した繊維パッケージである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1で使用した紡糸連続延伸装置の一態様を示す概略図である。
図2】サドルおよびバルジの測定方法を説明するための概略図である。
図3】本発明の比較例5で使用した紡糸連続延伸装置の一態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の吸放湿性ポリエステル繊維は、ポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)とがアロイ化されたポリマーを繊維パッケージにしたものである。ここで、アロイ化とは、複数のポリマーを混合し、新たな特性を持たせる操作である。本発明のポリマーアロイ繊維は、ポリエステルを海成分,ポリ(N−ビニルラクタム)を島成分とした海島構造を持つものである。
【0014】
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルのいずれを用いても良い。芳香族ポリエステルとしては、その酸成分がテレフタル酸および/またはイソフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール,トリメチレングリコール,テトラメチレングリコールなどの脂肪族ジオールのうち少なくとも1種よりなるものがあげられる。これらの中でポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等が好ましい。また、芳香族ポリエステルの一部を共重合成分で置換したものでもよく、共重合成分としては、フタル酸,メチルテレフタル酸,メチルイソフタル酸,スルホイソフタル酸塩,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸などが挙げられる。さらに上述の芳香族ポリエステルに分岐成分として、トリメシン酸,トリメリット酸などを共重合したものでもよい。脂肪族ポリエステルとしては、グリコール酸,乳酸などのヒドロキシカルボン酸の単独重合体またはそれらの共重合体があげられる。これらの中で、ポリグリコール酸,ポリ乳酸などが好ましい。
【0015】
また、従来から、このようなポリエステルの重縮合時に用いられる触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられており、この場合ポリエステル中のアンチモン原子含有量は100ppm以上であるが、本発明に用いられるポリエステルはアンチモン原子含有量が50ppm以下であることが好ましく、この場合、吸放湿性ポリエステル繊維のアンチモン原子含有量も50ppm以下となる。より好ましいポリエステル中のアンチモン原子含有量は30ppm以下である。前述の通り、ポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)とをブレンドすることで、アロイポリマーが黒く着色する問題が判明していたが、本発明者らは鋭意検討の結果、この着色の原因がアンチモン原子とポリ(N−ビニルラクタム)との反応による黒色異物であることを突き止め、アンチモン原子の含有量が50ppm以下であるポリエステルを用いることで、アロイポリマーが黒く着色するのを抑制でき、繊維にした際に色調L値を70以上にできることを見出したものである。ポリエステル中のアンチモン原子含有量を50ppm以下とするには、アンチモン系以外の重合触媒(チタン系,スズ系,ゲルマニウム系など)を用いるか、これらとアンチモン系重合触媒とを併用することにより達成できる。また、アンチモン系の重合触媒を用いたポリエステルと、アンチモン以外の重合触媒を用いたポリエステルとをブレンドすることによっても達成できる。
【0016】
さらに、ポリエステルの融点は255℃以下であることが好ましく、150℃以上、240℃以下であることがより好ましい。ポリ(N−ビニルラクタム)は高温下で熱劣化により黄変し、繊維の色調b値を悪化させる原因となる。このため、融点が255℃以下のポリエステルを用いることで混練温度や紡糸温度を低く抑えることができ、ポリ(N−ビニルラクタム)の熱劣化を抑制し、繊維の色調b値悪化を抑制できる。一方、ポリ(N−ビニルラクタム)は多くがガラス転移温度170℃程度の非晶であることから、混練時および紡糸時はこれ以上の温度で加工する必要があるため、ポリエステルの融点が150℃以上であるとポリエステルの熱劣化を抑制でき好ましい。
【0017】
ポリ(N−ビニルラクタム)としては、N−ビニル−2−ピロリドン,N−ビニル−2−ピペリドン,N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニルラクタム類の重合体があげられる。本発明で使用されるポリ(N−ビニルラクタム)としては、立体障害が小さく水分子を吸着,放出しやすいことから、N−ビニル−2−ピロリドンの重合体であるポリビニルピロリドンが好ましい。ポリビニルピロリドンは重量平均分子量0.5万以上250万以下のものが一般的であるが、このうち重量平均分子量1万以上、100万以下のものが好ましく、重量平均分子量3万以上、50万以下のものがより好ましい。重量平均分子量1万以上あることで、熱安定性が高くなり、また、溶融紡糸時のブリードアウトを抑制でき、さらに、高次加工時や製品として使用する際のポリビニルピロリドンの溶出を抑制でき吸放湿性を向上することができるので好ましい。また、重量平均分子量100万以下であることで、アロイポリマーの粘度が高くなり、ポリエステル中で凝集して分散性が低下することや、紡糸時に装置にかかるポリマー圧力が高くなることを好適に抑制でき好ましい。
【0018】
本発明では、ポリエステルを海、ポリ(N−ビニルラクタム)を微細な島とした海島構造を持つポリマーアロイ繊維とする。ポリエステルを海成分とすることで、高い機械特性を持つポリエステルが繊維の機械物性を担うことができ、高い機械物性を持つ繊維とすることができるのである。また、ポリ(N−ビニルラクタム)を島成分とすることで、耐水溶性の低いポリ(N−ビニルラクタム)の繊維表面への露出を抑制し、高次加工時および製品として使用する際のポリ(N−ビニルラクタム)の溶出を抑制でき、吸放湿性を向上することができるので好ましい。
【0019】
ポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)の合計量を100重量部としたときの各成分の比率は、ポリエステル75重量部以上、97重量部以下,ポリ(N−ビニルラクタム)3重量部以上、25重量部以下であり、好ましくはポリエステル80重量部以上、95重量部以下,ポリ(N−ビニルラクタム)5重量部以上、20重量部以下である。
【0020】
ポリ(N−ビニルラクタム)を3重量部以上とすることで吸放湿性を発現するので好ましい。一方、ポリ(N−ビニルラクタム)を25重量部以下とすることで、繊維製造時のバラス効果により発生する紡糸線のふくらみを原因とする、長手方向の繊度斑を抑制することができるので好ましい。
【0021】
本発明は、繊維横断面における島成分(ポリ(N−ビニルラクタム))の平均分散径が500nm以下であり、10nm以上、300nm以下であることが好ましく、20nm以上、150nm以下であるとさらに好ましい。平均分散径を500nm以下とすることで、海島界面の比界面積を十分大きくすることができ、島成分の吸湿膨潤による体積変化に起因した海成分の鞘割れを抑制することができ、また、吸放湿速度が高くなり環境の変化への即応性に優れた吸放湿性を示すものとなる。さらに、島成分ポリマーのうち、繊維表層に露出する部分を持つ島成分ポリマーの割合が小さくなり、高次加工時および製品として使用する際の島成分ポリマーの溶出による吸放湿性低下を抑制することができる。また、島成分の平均分散径が大きいと、口金吐出時に引き伸ばされた島成分が、吐出後にポリマー間の界面張力により球形に戻ろうとする力も大きくなり、吐出孔直下でバラス効果と呼ばれる吐出孔径の数倍もの直径を有する膨らみが発生する。このため、紡糸での細化変形過程で太細異常が発生しやすく、糸長手方向で繊度斑等の品質の問題が生じたり、太細が大きいときには糸切れが生じたりする。また、平均分散径を10nm以上とすることで、混練時にポリマーにかけられるせん断を抑えることができ、分子鎖切断による物性低下や色調悪化を抑制でき好ましい。
【0022】
吸放湿性パラメータ(ΔMR)は1.0%以上である。ここで、ΔMRは衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るためのドライビングフォースであり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の30℃×90%RHに代表される衣服内温湿度と20℃×65%RHに代表される外気温湿度との間の吸湿率差である。本発明では吸放湿性評価の尺度としてこのΔMRをパラメータとして用いるが、ΔMRは大きいほど吸放湿性が高く着用時の快適性が良好であることに対応する。ΔMRが1.0%以上であることで、繊維の吸放湿性能および快適性が良好である。ΔMRが1.5%以上であることが好ましく、ΔMR2.0%以上、5.0%以下であることがより好ましい。一方、ΔMRを高くするにはポリ(N−ビニルラクタム)のブレンド量を高くする必要があるが、ΔMR5.0%以下とすることで紡糸操業性の悪化が押さえられ、工程通過性に影響を及ぼさない繊度斑とすることが可能であり好ましい。
【0023】
強度は2.0cN/dtex以上、タフネスは15以上である。強度2.5cN/dtex以上、4.5cN/dtex以下、タフネス17以上、27以下であることが好ましい。強度2.0cN/dtex以上であることで、布帛にした際にその強力も高く、衣料用布帛の薄地化,高密度化,軽量化に適している。強度4.5cN/dtex以下であることで、延伸倍率が高すぎることによる毛羽の発生を抑えることができ工程通過性が良好になる。また、繊維強度を高くするには製造時の延伸倍率を高くするのが一般的であるが、このようにすると強度は高くなるものの伸度が低くなり、毛羽が発生しやすく、製織などの工程通過性が悪くなる。このため、伸度を十分に保ちつつ高い強度を得るにはタフネスが15以上であり、17以上であることが好ましく、20以上であるとさらに好ましい。また、製糸条件の適正化によるタフネスの向上には限界があり、これを超えるタフネスを得るには、原料として分子量が高いポリエステルを用いる必要があることから、タフネスは汎用ポリエステルにて到達可能な27以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の繊維の長手方向の繊度斑U%(n)は1.5%以下であり、1.0%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましい。1.5%以下であると染色後の染め斑を抑制することができる。染色工程において、繊度の大きな部分は分子配向が小さいために染料が多く吸尽されることが知られている。このことから、繊度に斑があると染め斑の原因となり商品価値を低下させる。
【0025】
色調L値は70以上である。色調L値は繊維の明度を表すパラメータであり、L値が70以上であることで、染色した際の発色性が良好となる。このため、L値は80以上であることが好ましく、85以上であるとより好ましい。
【0026】
色調b値は10.0以下である。色調b値は繊維の色度を表すパラメータであり、b値が大きいほど黄味が強い。b値が10.0以下であることで、黄味が小さく外観的な色調に優れ、衣料用に好適な繊維となる。このため、b値は8.0以下であることが好ましく、5.0以下であるとさらに好ましい。
【0027】
パッケージの糸量は2〜15kgである。糸量は生産性の向上、コストダウンに大きく寄与できるので、15kg以下であれば、繊維製造時の紙管や金属管の交換周期を少なくすることができ、また、高次行程でも頻繁にパッケージ交換の必要がなく、好ましい。一方、2kg以上の巻量があると、取り扱いが容易で小型設備の多くのユーザーに供給が可能となり好ましい。
【0028】
パッケージのサドルは0〜10.0%とする。ここでサドルとは、吸放湿性ポリエステル繊維をパッケージとして巻いた際に、巻き量が増えるにつれてパッケージの両端面が膨れる現象で、通常「耳立ち」と称するものである。このサドルは、糸条がパッケージとして巻かれ折り返す左右の両端面に発生し、サドルが大きくなるとパッケージは型崩れを起こし巻き取りが不可能となる。また、型崩れを起こさずに巻き上がったパッケージでも、梱包時のパッケージ取り扱い時、及び、積み荷の取り扱い時、輸送の振動時にパッケージが崩れ使用不能となる。運良く型崩れせずに、整経・製織の工程までたどり着いても、パッケージの解舒時に糸条がスンナリと解舒せず、巻層が崩れ、糸条が乱れて解舒不良となり糸切れを誘発させる。パッケージのサドルが0〜10%であると、巻き取り時に型崩れを起こすこともなく、梱包、輸送、開梱時等でもフォーム不良を起こすこともなく、高次行程においても解舒不良による糸切れを起こさないので好ましい。
【0029】
弾性率の内外層差は20%以下、沸騰水収縮率の内外層差は1.5%以下とする。パッケージの内層と外層とで繊維構造の緩和の程度に差があると、高次工程での染色時に、内層部の濃染化やパッケージ端面部のスジ状化(淡染スジ)が生じる。弾性率の内外層差が20%以下、沸騰水収縮率の内外層差が1.5%以下であると、この染色斑が抑制され好ましい。
【0030】
しかしながら、ポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)とがアロイ化されたポリマーを溶融紡糸するとポリエステルの配向が大きく抑制され、得られる繊維はポリエステル単独糸の溶融紡糸に比べて大幅に低強度高伸度化する。例えば、紡糸速度1000m/分で得られる未延伸糸の伸度は、ポリエステル単独糸では約250%なのに対し、ポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)とのアロイ糸では約500%である。このため、実用に耐えうる強度を持たせるためには、ポリエステル単独糸よりも延伸倍率を高くする必要があり、これにより繊維内部構造に歪みを持つ部分が生じる。この歪みが巻取中に緩和するとパッケージにサドルやバルジが発生したり、巻き締まりによりパッケージが巻取機から外せなくなったりする。また、この歪みが巻取後に緩和すると繊維物性にパッケージ内外層差が生じる。
【0031】
本発明は、紡糸時および延伸時に繊維にかかる張力を制御することで、繊維内部構造に生じる歪みを抑制し、パッケージ形状や内外層差を改善した繊維パッケージを可能とならしめたのである。以下詳細に説明する。
【0032】
パッケージのバルジは0〜8.0%とする。ここでバルジとは、吸放湿性ポリエステル繊維をパッケージとして巻いた際に、巻き量が増えるにつれてパッケージの巻層の両端が膨れる現象である。このバルジも、糸条がパッケージとして巻かれ折り返す左右の両端面に発生し、バルジが大きくなるとパッケージは型崩れを起こし巻き取りが不可能となる。また、型崩れを起こさずに巻き上がったパッケージでも、梱包時のパッケージ取り扱い時、及び、積み荷の取り扱い時、輸送の振動時にパッケージが崩れ使用不能となる。運良く型崩れせずに、整経・製織の工程までたどり着いても、パッケージの解舒時に糸条がスンナリと解舒せず、巻層が崩れ、糸条が乱れて解舒不良となり糸切れを誘発させる。パッケージのバルジが0〜8.0%であると、巻き取り時に型崩れを起こすこともなく、梱包、輸送、開梱時等でもフォーム不良を起こすこともなく、高次行程においても解舒不良による糸切れを起こさないので好ましい。
【0033】
このような特徴を有する本発明の吸放湿性ポリエステル繊維パッケージは、織物,編物,不織布,パイル織物等の立毛体,詰め綿等といった繊維構造体に加工して用いることができる。繊維構造体の用途としては、衣料,産業用資材,インテリア製品等といったものがあげられる。その中でも特に、インナー,中衣,スポーツ衣料などのように直接的に肌に触れてあるいは肌側に近い状態で着用される分野に有効に活用することができる。
【0034】
以下に本発明の吸放湿性ポリエステル繊維パッケージの製造方法を示す。
【0035】
融点が255℃以下、アンチモン原子含有量が50ppm以下のポリエステルと、ポリ(N−ビニルラクタム)を、重量比97:3〜75:25、繊維断面における平均分散径が500nm以下となるように180℃以上、270℃以下にて溶融混練して、一旦冷却した後チップ化し、これを紡糸装置に送り込む。この際使用する混練装置として好ましいのは、スクリュ径40mm以上、L/D35以上の二軸押出機である。紡糸装置に送り込まれたポリマーを溶融,計量した後、口金上に配置された金属不織布からなるフィルターを通し、口金から吐出した繊維を冷却し給油した後、300m/分以上で引き取り、連続して延伸工程に導き、延伸温度30℃以上、140℃以下にて1段または2段階で延伸して巻き取る。
【0036】
各製造工程の詳細は以下の通りである。
【0037】
原料については、前記したポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)の組み合わせにおいて、ポリエステルとポリ(N−ビニルラクタム)の合計量を100重量部として、ポリエステル75〜97重量部、ポリ(N−ビニルラクタム)25〜3重量部としてそれぞれ計量し、ブレンドする。この際、吸湿しやすいポリエステルおよびポリ(N−ビニルラクタム)は予め80〜150℃、減圧下、もしくは窒素雰囲気下で乾燥しておき、乾燥後は吸湿防止容器等にストックしておく。溶融混練前の水分率は、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.02重量%以下、最も好ましくは0.008重量%以下である。
【0038】
混練工程で用いられる装置として好ましいのは、スクリュ径40mm以上、L/D35以上の二軸押出機である。前述の理由から、本発明の吸放湿性ポリエステル繊維は、繊維横断面内の島成分の平均分散径が500nm以下であり、これを達成できる混練装置であれば、これ以外の二軸押出機でもよく、一軸押出機でもよい。一方、ニーディングロールやバンバリーミキサーを用いて繊維横断面における島成分の平均分散径を500nm以下にすることは困難である。また、混練後は、一旦チップ化してもよいし、そのまま連続して紡糸装置に送り込んでもよい。
【0039】
一般的には、混練温度は、ポリエステルの融点(以下Tmと記す)を基準に、Tm+10℃以上〜Tm+50℃以下で行うが、本発明で用いるポリ(N−ビニルラクタム)は高温下で熱劣化したり、黄色に着色したり、あるいは発煙することもあるので、Tm+5℃以上、Tm+25℃以下で混練することが好ましい。混練の剪断速度は300(1/sec)以上〜9800(1/sec)以下とすることが好ましく、二軸押出混練機(同方向2軸、軸径40mm以上、L/D35以上)では軸回転数を100rpm以上にすることが好ましい。この範囲の混練温度および剪断速度とすることで、均一性の高いアロイ相構造とすることが可能となり、かつ島成分のドメインサイズを十分小さくすることが可能になる。また、ポリ(N−ビニルラクタム)として、非晶でガラス転移温度の低い粉体状のものを用いる場合は、投入部を冷却することが好ましい。投入部の冷却により、投入部内で粉体が融着し安定供給できなくなるトラブルを防止することができる。
【0040】
紡糸工程においては、紡糸温度は、混練温度同様、アロイ相構造を維持しつつ、かつ着色を防止するために、できるだけ低温で行うことが好ましく、Tm+15℃以上、Tm+25℃以下の範囲で行うことが好ましい。また、紡糸パック内での島ドメインの再凝集を抑制して島成分の平均分散径を制御するために、ハイメッシュの濾層(#100〜#200)や濾過径の小さい不織布フィルター(濾過径5〜30μm)を口金上に配置することが好ましい。
【0041】
吐出したフィラメントは、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであっても良い。口金吐出孔の形状は、通常の丸断面、Y断面、三角断面、四角断面、扁平断面あるいはこれらの中空断面等、公知のものを用いることができ、用途に応じたものを選択することができる。このうち、丸断面以外の異形断面であると、繊維の比表面積が大きくなるため吸放湿速度が速くなり好ましい。異形度が1.5以上、5.0以下であることで、吸放湿速度と製糸操業性がともに良好となり、好適である。
【0042】
口金下の冷却方法は、一方向から冷却するユニフロータイプのチムニーでも、糸条の内側から外側へ、もしくは糸条の外側から内側へ冷却風を当てる環状チムニーでもよいが、好ましくは糸条の内側から外側へ冷却する環状チムニーが、均一冷却できる点で好ましい。この際に、冷却風はフィラメントの進行方向に直交する方向から、冷却気体を当てて冷却することが望ましい。このときの冷却風の速度は、0.2m/秒以上、1m/秒以下が好ましく、0.3m/秒以上、0.8m/秒以下がより好ましい。また、冷却風の温度は、均一冷却するために低い方が好ましいが、冷却風の温調コストとの兼ね合いから、15℃以上、25℃以下にすることが現実的であり好ましい。
【0043】
紡出したフィラメントは公知の紡糸油剤を給油して表面被覆するが、このときの油剤の付着量は、糸に対し、純油分として0.3重量%以上、3重量%以下付着させる。紡糸油剤には、衣料用ポリエステル繊維の油剤として広く用いられている含水油剤を用いてもよいし、非含水油剤を用いてもよい。ただし、後述のように、本発明の吸放湿性ポリエステル繊維パッケージでは、繊維製造方法によって使い分ける場合がある。
【0044】
引取工程では、紡糸速度は300m/分以上で引取り、一旦巻き取るか、連続して延伸を行う。300m/分以上で巻き取ることで生産性を高めることができる。好ましい紡糸速度は500m/分以上、1000m/分以下である。1000m/分以下で紡糸することで、紡糸張力を0.6g/dtex以下に抑えることができ、繊維内部構造の歪みを抑制できるため好ましい。
【0045】
引取後一旦巻き取る場合は、前述の紡糸油剤として、衣料用ポリエステル繊維に用いられる油剤としては一般的でない、非含水油剤を用いる。通常衣料用ポリエステル繊維の製造には、油剤成分を水エマルジョン化した含水油剤を用いるのが一般的であるが、非含水油剤は油剤成分を希釈するための希釈剤成分に有機溶剤を用いた油剤である。非含水油剤中の水分の含有量は、5重量%以下が好ましく、より好ましくは3重量%以下である。本発明者らは鋭意検討の結果、繊維構造が充分に形成されていない未延伸糸の状態であっても、非含水油剤を用いることで、巻取中の吸湿膨潤による糸層破裂や、未延伸糸パッケージの吸湿膨潤による延伸時の解舒不良および長手方向の繊度斑を抑制することができることを見出した。
【0046】
一方、引取後連続して延伸を行う場合は、前述の紡糸油剤として、衣料用ポリエステル繊維の油剤として広く用いられている含水油剤を用いることができる。本発明者らは鋭意検討の結果、引取後連続して延伸することで繊維構造が形成され、巻取後の油剤中の水分吸収による膨潤を抑制できるため、含水油剤を用いても巻取中の糸層破裂および長手方向の繊度斑を抑制することができることを見出した。
【0047】
ただし、本発明で用いる吸放湿性ポリエステル繊維は未延伸の状態で放置すると吸湿膨潤しやすく、延伸するまでの時間差があると、未延伸糸パッケージ間で容易に繊維の強伸度特性や熱収縮特性のバラツキが生じたり、延伸時に解舒不良が発生したりする。そのため、1工程で紡糸、延伸までを行う直接紡糸延伸法を採用することが好ましい。
【0048】
延伸は、2段階以上に分けて実施することが好ましく、2段階延伸の際の1段目の延伸倍率は、総合延伸倍率の60%〜90%の範囲が好ましい。(ここで、各段階の延伸倍率が総合延伸倍率のx%のとき、その段階の延伸倍率は総合延伸倍率である。)こうすることで、1段階あたりの延伸倍率を低くできるため延伸張力を抑えられ繊維内部構造の歪みを抑制でき好ましく、また、繊維強度を上げることができ好ましい。各段階の延伸倍率を掛け合わせた好ましい総合延伸倍率は、得られる延伸糸の伸度を25%以上〜100%以下にすることで糸切れも少なく、パッケージフォームも良好となり、繊維の弾性率の安定化、及び沸騰水収縮率の安定化が図れるので好ましい。更に好ましくは伸度30%〜60%、より好ましくは35%〜50%である。このような糸切れ減少、糸物性を考慮した伸度とする総合延伸倍率は、2.5倍〜5倍以下が好ましい。総合延伸倍率をこのような範囲とし、徐々に延伸倍率を高くすることで、均一な物性を有する繊維が得られ、繊維内部構造の歪みを抑制でき、パッケージに巻いた際にサドルやバルジの軽減、そして、弾性率の内外層差の低減、沸騰水収縮率の内外層差の縮小が出来るので好ましい。
【0049】
この時に、各延伸段階における延伸張力がいずれも1.5g/dtex以下となるようにすることが重要で、上記した如く、徐々に延伸することで、延伸張力が急上昇することもなく、抑制した繊維内部構造の歪みを助長させることもなく好ましい。伸度25%以上とすることで延伸による毛羽の発生を抑制でき、また延伸操業性も向上できる。一方、伸度100%以下とすることで強度を高くでき、また、均一延伸することで、均一な物性を有する繊維が得られ、繊維内部構造の歪みを抑制でき、パッケージに巻いた際にサドルやバルジの軽減、そして、弾性率の内外層差の低減、沸騰水収縮率の内外層差の縮小が出来るので好ましい。
【0050】
延伸温度としては、未延伸糸のガラス転移温度付近である30℃以上、140℃以下で行なうことが好ましい。30℃以上とすることで均一延伸でき、140℃以下とすることで延伸ロールへの融着や繊維の自発伸長による操業性悪化を防ぐことができる。
【0051】
また、延伸後には、未延伸糸の結晶速度が最大となる温度で熱セットすることが好ましく、100℃以上、220℃以下が好ましく、より好ましくは120℃以上、200℃以下である。熱セットすることで繊維の結晶化を促進し、強度を高くでき、パッケージに巻いた際にサドルやバルジの軽減、そして、弾性率の内外層差の低減、沸騰水収縮率の内外層差の縮小ができ、吸湿膨潤を抑制することができるので好ましい。
【0052】
熱セットした繊維は巻取機で巻き取るが、巻取張力は0.02g/dtex〜0.08g/dtexとする。このため熱セットロールと巻取機との間で4.5%以上のリラックスを与えることが好ましい。しかしながら、高温の熱セットロール出の張力が低すぎると、繊維が熱セットロールに巻き取られて糸切れしやすいため、熱セットロールと巻取機との間に複数のローラーを配置し、徐々に張力を下げることが好ましく、このためにはそれぞれのローラー間でリラックスを与えることがより好ましく、例えば、以下のようにすることが好ましい。(図1参照)
熱セットロール(第4加熱ロール)−第5ロール間張力は0.4g/dtex以下であることが好ましく、このためにはここで2%以上のリラックスを与えることが好ましい。また、第5ロール−第6ロール間張力は0.2g/dtex以下であることが好ましく、このためにはここで1%以上のリラックスを与えることが好ましい。第6ロール−巻取機間張力は0.08g/dtex以下とすることが好ましく、このためにはここで1.5%以上のリラックスを与えることが好ましい。このように、複数のローラーを配置し、徐々に張力を下げることで、パッケージに巻いた際にサドルやバルジの軽減、そして、弾性率の内外層差の低減、沸騰水収縮率の内外層差の縮小ができ、吸湿膨潤を抑制することができ、更に、繊維が熱セットロールに巻き取られて糸切れすることを防ぐことができるので好ましい。
【0053】
また、熱セット後にリラックスとすることで、巻取後の繊維の自己収縮により紙管がスピンドルから抜けなくなる、いわゆる巻き締まりや物性斑を抑制することができるので好ましい。
【0054】
上記の条件で延伸することで、繊維構造が形成され、巻取時および保管時の吸湿膨潤を抑制することができる。また、工程安定性が高く、かつ高強度で長手方向の繊度斑の小さい延伸糸にすることができるのである。
【実施例】
【0055】
以下に本発明を具体的に説明する。実施例中の測定方法は以下を用いた。
【0056】
A.ポリ(N−ビニルラクタム)の重量平均分子量
試料をジメチルホルムアミドに溶解し、これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製Waters2690)で測定した。この時の標品には光散乱法で測定されたポリ(N−ビニルラクタム)を用いた。
【0057】
B.ポリエステルの融点
示差走査型熱量計(パーキンエルマー製DSC−7)を用い、試料20mgを昇温速度10℃/分にて測定して得た融解吸熱曲線の極値を与える温度を融点(℃)とした。
【0058】
C.U%(n)(長手方向の繊度斑)
繊度斑測定装置Zellweger製(UT−4)を用いて、供糸速度200m/分、ツイスター回転数12000rpm、測定長200mの条件で、U%(normal)を測定した。
【0059】
D.繊維の強度,破断伸度,弾性率およびタフネス
試料を引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100)でJIS L1013(1999) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。この時の掴み間隔は20cm、引張り速度は20cm/分、試験回数10回であった。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。弾性率は、チャート紙にチャート速度100cm/分、応力フルレンジ500gとして記録して、引張初期の曲線の傾きから求めた。タフネスは以下の式から求めた。
タフネス=強度(cN/dtex)×(伸度(%)0.5
E.吸湿ポリエステル繊維の島成分の平均分散径
繊維の長さ方向に対して垂直に切断した単糸の断面スライスをルテニウム染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)(10万倍)にてブレンド状態を観察・撮影した。連続したマトリックス成分(白色部分)を海成分、略円形状を成して分散した成分(灰色部分)を島成分とする海島構造となっている。島成分を構成するポリ(N−ビニルピロリドン)の分散径を直径換算(島成分を円と仮定し、島成分の面積から換算される直径)して求めたものを島成分分散径とし、20個の島成分の平均値を平均分散径とした。
【0060】
F.吸放湿性パラメータ(ΔMR)
吸放湿性は原綿または布帛1〜3gを用い、絶乾時の重量と、恒温恒湿器(タバイ製PR−2G)にて20℃×65%RHあるいは30℃×90%RHの雰囲気下中に24時間放置後の重量との重量変化から、次式で求めた。
吸湿率(%)=(吸湿後の重量−絶乾時の重量)/絶乾時の重量×100
上記測定した20℃×65%RHおよび30℃×90%RHの条件での吸湿率(それぞれMR1およびMR2とする)から、吸湿率差ΔMR(%)=MR2−MR1を求めた。
【0061】
G.むれ感
20℃65%RHに調温調湿された部屋で、それぞれの形態に縫製したサンプルをパネラ5名が着用し、それぞれ3段階(むれを感じる:×、あまり感じない:○、全く感じない:◎)で評価した。
【0062】
H.繊維の色調(L値、b値)
繊維を金属プレートに巻取張力0.2g/dtexで巻き取り、SMカラーコンピュータ(スガ試験機製SM−3)を用いて2回測定し、平均値より求めた。
【0063】
I.ポリエステルおよび繊維中のアンチモン原子含有量
波長分散型蛍光X線分析装置(リガク製ZSX)を用いて、ピーク位置の回折角で元素同定、回折X線強度で定量した。分析には付属の半定量分析ソフト(SQX)を用いた。
【0064】
J.沸騰水収縮率
温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中に繊維パッケージを24時間以上保管した後、該雰囲気中下にて検尺機を用いてカセを作成して原長L0を測定し、次いで沸騰した水にて無荷重で15分間処理し、該カセを1昼夜風乾後、L1を測定して次式にて求めた。
沸騰水収縮率(%)=[(L0−L1)/L0)]×100(%)
L0:試料をカセ取りし、初荷重0.09g/dtex下で測定した原長
L1:L0を測定したカセを荷重フリーの状態にして沸騰水中で15分間処理し、1昼夜風乾後、初荷重0.09g/dtex下でのカセ長。
【0065】
K.繊維物性の内外層差
パッケージを1ヶ月保管した後の、パッケージ表層部(パッケージ表面を0.1kg解舒した部分)と、パッケージ最内層部(巻量0.1kgとなる部分)との物性差を以下の式で求めた。
弾性率の内外層差(%)=(表層部の弾性率−最内層部の弾性率)/最内層部の弾性率
沸騰水収縮率の内外層差(%)=表層部の沸騰水収縮率(%)−最内層部の沸騰水収縮率(%)。
【0066】
L.工程張力
金井工機(株)製三点式張力計(CHECK MASTER)を用いて工程張力を測定した。最終的に得られる繊維の繊度と延伸倍率から、張力を測定する段階での糸の繊度を算出し、以下の式で張力を求めた。
張力(g/dtex)=張力計の表示値(g)/繊度(dtex)
M.サドル,バルジの測定方法
各実施例および比較例において、繊維を巻取るに際して、直径134mmの紙管に巻取り幅114mmにて巻取り、パッケージを得た。なお、巻量8kgのときの巻径は約340mmであった。得られたパッケージを、25℃60%RHの雰囲気下で168時間(7日間)放置後、パッケージの形状を測定した。図2に示すように、パッケージの最大径(Dmax)、最小径(Dmin)、最大幅(Wmax)、および、最小幅(Wmin)を測定し、下式により、サドルおよびバルジを算出した。
サドル(%)={(Dmax−Dmin)/Dmin}×100
バルジ(%)={(Wmax−Wmin)/Wmin}×100
N.高速解舒性
パッケージを水平にし、パッケージ軸の延長線上の、パッケージの重心から約45cmのところに、内径3mmのセラミック製ガイドを設置し、解舒速度1000m/minで30分間解舒し、解舒される間の張力変動や、解舒の安定性(綾落ち、環抜け等の発生状況)を評価した。評価は3段階(糸切れ、綾落ち、環抜け等が発生:×、良好:○、極めて良好:◎)で評価した。
【0067】
O.染色均一性
K.項で前述したパッケージ表層部(サンプルA)とパッケージ最内層部(サンプルB)を筒編みし、染料としてテトラシールネイビーブルーSGL0.275%owf、助剤としてテトロシンPE−C5.0%owf、分散剤としてニッカサンソルト#12001.0%owfを用い、浴比1:100にて50℃15分、さらに90℃20分にて染色を行った。染色後のサンプルは染色むら、サンプルA、B間の染色差を総合的に官能検査した。評価は3段階(均一性に乏しい(顕著な染色差あり):×、優れている:○、非常に優れている:◎)で評価した。
【0068】
[製造例1](共重合PET(チタン系触媒)の製造)
エチレングリコール784g、テレフタル酸993g、イソフタル酸331gを用いてエステル化反応、次いで重縮合反応を行なった。まずテレフタル酸全量、イソフタル酸全量、エチレングリコール533g、酢酸カルシウム1.2g、チタンテトラ−n−ブトキシド0.88gを精留塔の付いた反応器に仕込み、130℃から235℃まで3時間で昇温し、エステル交換反応終了後、トリメリット酸メチル0.57gを添加する。次に重縮合反応缶へ移し、真空下において240℃から285℃の温度で4時間重縮合反応を行なった。
【0069】
[製造例2](共重合PET(アンチモン系触媒)の製造)
反応触媒としてチタンテトラ−n−ブトキシドの代わりに、ポリエステルの重合触媒として一般的な三酸化アンチモン0.45gを用いた以外は[製造例1]と同一とした。
【0070】
[製造例3](ポリトリメチレンテレフタレート(チタン系触媒)の製造)
トリメチレングリコール935g、テレフタル酸1209gを用いてエステル化反応、次いで重縮合反応を行なった。まずテレフタル酸全量、エチレングリコール653g、チタンテトラ−n−ブトキシド0.88gを精留塔の付いた反応器に仕込み、130℃から210℃まで3時間で昇温し、エステル交換反応終了後、重縮合反応缶へ移し、真空下において220℃から250℃の温度で4時間重縮合反応を行なった。
【0071】
[製造例4](PET(チタン系触媒)の製造)
エチレングリコール784g、テレフタル酸1324gを用いてエステル化反応、次いで重縮合反応を行なった。まず、テレフタル酸全量、エチレングリコール533g、チタンテトラ−n−ブトキシド0.88gを精留塔の付いた反応器に仕込み、250℃、400mmHgの条件下にエステル化反応を開始した後、徐々に昇温するとともに、残りのブチレングリコールを連続的に添加した。次に重縮合反応缶へ移し、真空下において285℃の温度で重縮合反応を行った。
【0072】
[実施例1]
[製造例1]の共重合PETと市販のポリビニルピロリドンK−30(BASF社、重量平均分子量5万)を、それぞれ90:10の割合でハンドブレンドし、二軸押出混練機(同方向2軸、軸径70mm、L/D50)にて混練した。なお、共重合PETは100℃、真空下で約5時間乾燥し、水分率を80ppmに調湿した。二軸押出混練機の混練温度を240℃、混練時の軸回転数を150rpmとして混練し、ダイから吐出後、水冷、ペレタイズした。このチップを、ホッパーから一軸押出機(シリンダ温度255℃)に仕込み、さらにギアポンプにて計量,排出し、内蔵された紡糸パック(温度260℃)に溶融ポリマーを導き、紡糸口金から紡出した。なお、紡糸パックの口金直上には#120の濾層および絶対濾過径10μmのSUS不織布フィルター(不織布厚み:0.6mm)を組み込んだ。紡出後、温度20℃、速度0.4m/秒の冷却風(ユニフローチムニー)で糸条を冷却固化し、給油装置により油剤を付与した。紡糸油剤にはポリエーテル系油剤15、水85の割合で混合した含水油剤を糸に対して7%付着させた(純油分として1.0%owf)。
【0073】
さらに第1ロールにて紡糸速度800m/分で引き取った後、第2加熱ロールの温度を90℃として800m/分にて引き取り、さらに第3加熱ロールの温度を100℃として2792m/分にて延伸(一段目延伸倍率:3.49倍)を行い、さらに第4加熱ロールの温度を150℃として3350m/分にて延伸(二段目延伸倍率:1.2倍、総合延伸倍率:4.19倍)を行い、第5ロール、第6ロールにてそれぞれ周速度3216m/分、3168m/分にて糸条を冷却した後、巻取速度3117m/分で巻き取り、マルチフィラメントパッケージを得た。得られたポリマーアロイ繊維から構成されるマルチフィラメントは、56デシテックス、24フィラメントであった。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっており、島成分平均分散径は直径換算で100nmであった。また、得られた繊維の繊維物性および色調は良好であり、染色均一性および高速解舒性も良好であった。
【0074】
[実施例2]
共重合PETとポリビニルピロリドンの比率を97:3とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。得られた繊維の横断面の島成分平均分散径は直径換算で90nmであった。得られた繊維は吸放湿性にやや劣るものの、物性および色調は良好であった。また、染色均一性および高速解舒性も良好であった。
【0075】
[実施例3]
共重合PETとポリビニルピロリドンの比率を75:25とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。得られた繊維の横断面の島成分平均分散径は直径換算で120nmであった。得られた繊維は吸放湿性に特に優れ、物性および色調も実用上問題ないものであったが、長手方向の繊度斑がやや大きかった。染色均一性および高速解舒性は実用上問題のないものであった。
【0076】
[実施例4]
二軸押出混練機として、軸径50mm、L/D40のものを用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。得られた繊維の横断面の島成分平均分散径は直径換算で400nmとやや大きかった。得られた繊維の物性および色調は実用上問題ないものであったが、長手方向の繊度斑がやや大きかった。染色均一性は実用上問題なく、高速解舒性は良好であった。
【0077】
[実施例5]
共重合PETの代わりに、[製造例3]のポリトリメチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。得られた繊維の横断面の島成分平均分散径は直径換算で110nmであった。得られた繊維の物性および色調は良好であった。また、染色均一性および高速解舒性も良好であった。
【0078】
[実施例6]
原料として、[製造例1]の共重合PETと[製造例2]の共重合PETと市販のポリビニルピロリドンK−30(BASF社、重量平均分子量5万)を、それぞれ45:55:10の割合で用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。得られた繊維は灰色で、見た目がやや劣るものの実用可能なものであった。染色均一性も実用上問題となるものではなく、高速解舒性も良好であった。
【0079】
[実施例7]
パッケージ巻量を8kg巻きから15kg巻きに変更した以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントパッケージを得た。得られたパッケージのサドルは5.8%、バルジは5.3%であった。また、パッケージの表層と最内層の弾性率差は11.4%、沸騰水収縮率差は0.8%で、パッケージフォーム、糸質とも良好であった。
【0080】
[実施例8]
熱セットローラである第4ロールと第5ロール間のリラックス率を2.2%、第5ローラーと第6ローラー間のリラックス率を1.2%、第6ローラーと巻取機間のリラックス率を1.6%とした以外は実施例1と同様にしてパッケージを得た。得られたパッケージのサドルは9.1%、バルジは7.3%であった。また、パッケージの表層と最内層の弾性率差は18.0%、沸騰水収縮率差は1.3%で、巻取張力を高くした影響で、パッケージフォーム、糸質とも実施例1に比べ見劣りしたが合格レベルであった。
【0081】
[実施例9]
熱セットローラである第4ロールと第5ロール間のリラックス率を2.5%、第5ローラーと第6ローラー間のリラックス率を1.5%、第6ローラーと巻取機間のリラックス率を2%とした以外は実施例1と同様にしてパッケージを得た。得られたパッケージのサドルは3.6%、バルジは3.1%であった。また、パッケージの表層と最内層の弾性率差は6.3%、沸騰水収縮率差は0.3%で、巻取張力が低いことに起因して、ローラー上で糸振れが大きくなり、糸切れが若干増加したが、パッケージフォーム、糸質とも問題なかった。
【0082】
[実施例10]
総合延伸倍率を2.6倍とし、この時の第1段階の延伸倍率を総合延伸倍率の62%、第2段階の延伸倍率を残りの38%に設定して、その他は実施例1に準じてパッケージを得た。繊維強度は2.0cN/dtex、得られたパッケージのサドルは6.7%、バルジは5.3%であった。また、パッケージの表層と最内層の弾性率差は5.8%、沸騰水収縮率差は0.5%であった。染色均一性、高速解舒性ともに良好であった。
【0083】
[実施例11]
総合延伸倍率を4.85倍とし、この時の第1段階の延伸倍率を総合延伸倍率の87%、第2段階の延伸倍率を残りの13%に設定して、その他は実施例1に準じてパッケージを得た。繊維強度は4.5cN/dtex、得られたパッケージのサドルは9.5%、バルジは7.6%であった。また、パッケージの表層と最内層の弾性率差は18.0%、沸騰水収縮率差は1.4%であった。染色均一性、高速解舒性ともに良好であった。
【0084】
[実施例12]
ポリビニルピロリドンとして、ポリビニルピロリドンK−17(BASF社、重量平均分子量0.9万)を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。混練後のペレタイズ時に、ポリビニルピロリドンが水中に溶出したため、実施例1に比べて得られた繊維の吸放湿性がやや低くなったものの、高い着用快適性があった。また、染色均一性、高速解舒性ともに良好であった。
【0085】
[実施例13]
ポリビニルピロリドンとして、ポリビニルピロリドンK−80(BASF社、重量平均分子量85万)を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。ポリビニルピロリドンの分子量が高いため、得られた繊維の横断面の島成分平均分散径はやや大きく、長手方向の繊度斑がやや大きかったが、染色均一性には問題なかった。また、高速解舒性は良好であった。
【0086】
[実施例14]
ポリビニルピロリドンとして、ポリビニルピロリドンK−85(BASF社、重量平均分子量110万)を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。ポリビニルピロリドンの分子量が高いため、得られた繊維の横断面の島成分平均分散径はやや大きく、長手方向の繊度斑がやや大きかったが、染色均一性に大きな影響を及ぼすものではなかった。高速解舒性は良好であった。
【0087】
[比較例1]
ポリビニルピロリドンを用いず、総合延伸倍率を2.67倍とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。得られた繊維は良好であったものの、吸放湿性が全くなかった。
【0088】
[比較例2]
共重合PETとポリビニルピロリドンの比率を70:30とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。得られた繊維の横断面の島成分平均分散径は直径換算で150nmであった。得られた繊維の吸放湿性は高かったものの、強度,タフネスが低く、長手方向の繊度斑が高いため、工程通過性が悪く、衣料としての耐久性も実用上問題となるものであった。
【0089】
[比較例3]
二軸押出混練機として、軸径30mm、L/D30のものを用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。得られた繊維の横断面の島成分平均分散径は直径換算で600nmと大きかった。得られた繊維は長手方向の繊度斑が大きく、このため繊維物性もやや劣るものであり、工程通過性も悪かった。
【0090】
[比較例4]
共重合PETの代わりに、[製造例4]のポリエチレンテレフタレート(融点265℃)を用い、二軸押出機および一軸押出機の混練温度および紡糸パック温度を295℃、第2加熱ロール温度を90℃とした以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントパッケージを得た。紡糸時にわずかに焦げ臭い異臭と煙の発生が見られたものの、繊維を得ることができた。得られた繊維は実用的な物性を持つものの、黄色い着色(b値15.7)がみられ、実用に至るものではなかった。また、着色度合いの差による染色不均一が見られた。
【0091】
[比較例5]
引取工程の構成が異なる装置(図3参照。実施例1の第4加熱ロール、第6ロールがない)を用い、第1ロールにて紡糸速度1200m/分で引き取った後、第2加熱ロールにて周速度1206m/分で引き取り、さらに第3加熱ロールにて5050m/分で延伸(延伸倍率:4.19倍)を行い、第4ロールにて周速度5050m/分にて糸条を冷却した後、巻取張力5.6g(0.10cN/dtex)、巻取速度5000m/分(弛緩率1.0%)で巻き取った以外は実施例1と同様にしてパッケージを得た。得られたパッケージのサドルは12.0%、バルジは10.0%であった。また、パッケージの表層と最内層の弾性率差は24%、沸騰水収縮率差は1.8%でパッケージフォーム、糸質とも不良であった。このため、染色均一性および解舒性に劣るものであった。
【0092】
[比較例6]
第6ロールと巻取機間のリラックス率を1.2%とした以外は実施例8と同様にしてパッケージを得た。このときの巻取張力は5.7g(0.10cN/dtex)であり、得られたパッケージのサドルは13.0%、バルジは10.5%であった。また、パッケージの表層と最内層の弾性率差は25%、沸騰水収縮率差は2.2%でパッケージフォーム、糸質とも不良であった。このため、染色均一性および解舒性に劣るものであった。
【0093】
[比較例7]
総合延伸倍率を2.4倍とし、この時の第1段階の延伸倍率を総合延伸倍率の50%、第2段階の延伸倍率を残りの50%に設定して、その他は実施例1に準じてパッケージを得た。繊維強度は1.6cN/dtexであった。また、低倍率のため不均一延伸となり、染色均一性に劣るものであった。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
図1
図2
図3