【文献】
OAEW S., et al.,Sensitivity enhancement in DNA hybridization assay using gold nanoparticle-labeled two reporting pro,Biosens. Bioelectron.,2009年,vol.25, no.2,p.435-441
【文献】
J. Med. Virol. (1986) vol.20, issue 1, p.279-288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
標的核酸の断片化処理物と、複数の検出プローブと、支持体に固定した捕捉プローブとを逐次的又は同時に接触させて、前記捕捉プローブと前記標的核酸の断片化処理物をハイブリダイズさせ、かつ、前記標的核酸の断片化処理物と前記複数の検出プローブをハイブリダイズさせ、それによって、前記複数の検出プローブを、前記捕捉プローブと前記標的核酸の断片化処理物を介して前記支持体に結合させる工程と、
支持体に結合された前記複数の検出プローブを検出する工程とを含む、標的核酸の検出方法であって、前記捕捉プローブとハイブリダイズさせる前記標的核酸の断片化処理物における捕捉プローブ結合位置からの距離が、該標的核酸の断片化処理物の核酸長の最頻値以下の範囲に、複数の検出プローブをハイブリダイズさせ、かつ、前記捕捉プローブとハイブリダイズさせる前記標的核酸の断片化処理物の、核酸長の最頻値が100塩基から1500塩基の範囲である、方法。
前記標的核酸の断片化処理物と、複数の検出プローブと、支持体に固定した捕捉プローブとを逐次的又は同時に接触させる工程は、前記標的核酸の断片化処理物を、複数の検出プローブとハイブリダイズさせ、次いで前記複数の検出プローブとハイブリダイズした前記標的核酸の断片化処理物と、前記捕捉プローブとをハイブリダイズさせることにより逐次的に行われる請求項1記載の方法。
前記標的核酸を含む、動物由来の検体を前記検出方法に供し、該検出方法は、動物ゲノム中に存在する少なくとも1種の反復配列を内部標準として検出する工程をさらに含み、該反復配列は、動物ゲノム断片中に含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の検出方法に供せられる標的核酸としては、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの標的核酸を含む検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、ぬぐい液、各種組織液等の体液や、各種組織、パラフィン包埋検体(FFPE)およびその切片、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、被検物質となる標的核酸は、血液や細胞から常法により抽出した検体核酸であってもよく、検体から抽出したDNAやRNAなどを用いることができる。DNAとしては、染色体DNA,ウイルスDNA,細菌、カビ等のDNA、RNAを逆転写したcDNA,それらの一部である断片などを用いることができるがこれらに限定されるものではない。RNAとしては、メッセンジャーRNA,リボソームRNA,small RNAやそれらの一部である断片などを用いることができるがこれらに限定されるものではない。また、化学的に合成したDNA、あるいはRNA等も標的核酸として用いることができる。
【0014】
検体核酸には、測定の対象とする標的核酸以外の核酸成分(非標的核酸)も含まれていることがある。これら非標的核酸は、標的核酸との性状の差を考慮して除去してもかまわないし、除去せずに被検物質として用いてもよい。
【0015】
標的核酸は、該標的核酸を鋳型として、PCR等の核酸増幅法によって増幅したものであってもよく、測定感度を大幅に向上させることが可能である。核酸増幅産物を標的核酸とする場合には、蛍光物質等で標識したヌクレオシド三リン酸の存在下で増幅を行うことにより、増幅核酸を標識することが可能である。もっとも、本発明の方法によれば、核酸増幅法を用いなくても十分な感度で標的核酸の検出を行うことができ、また、核酸増幅法を用いると擬陽性の問題や操作に手間がかかる等の問題が生じるので、本発明は、核酸増幅法による増幅を経ていない標的核酸又はその断片化処理物に適用される場合に特に威力を発揮するものである。
【0016】
本発明の方法は、標的核酸の有無、ウイルスの遺伝子型、細菌の種および株、カビの種および株等を区別した検出、SNP(一塩基多型)の検出、メッセンジャーRNAの検出、miRNAの検出、CGH、コピー数変動、ゲノムDNA配列の欠落・重複・融合、あるいは転写産物の欠落・重複・融合の検出に用いることができる。また、検出プローブからの信号強度を測定することにより標的核酸の定量にも適用することができる。なお、標的核酸の定量を行えば、必然的に標的核酸の検出が行われることになるので、本発明の「検出方法」は定量を伴う場合も包含する。
【0017】
本発明の方法には、標的核酸をそのまま適用することも可能であるし、標的核酸の断片化処理物を適用することも可能である。もっとも、標的核酸が長い場合(1500塩基以上、特に4000塩基以上の場合)には、断片化処理により、後述するように適切な長さに断片化した断片化処理物を適用することが好ましい。断片化処理物は、生じた核酸断片から特定の核酸断片を選択する必要はなく、断片化処理物をそのまま本発明の方法に供することができ、それによって検出感度を高めることが可能である。
【0018】
断片化のために標的核酸を切断する方法としては、超音波を照射して切断する方法、酵素で切断する方法、制限酵素で切断する方法、ネブライザーを用いる方法、酸やアルカリで切断する方法などを用いることができる。超音波で切断する方法の場合、標的核酸に照射する超音波の出力強度と照射時間を制御することにより、所望の長さに切断することが可能である。
【0019】
処理した標的核酸は、以下に述べる電気泳動法などの分析手段を用いて断片化の度合いを分析することができる。分析した結果、超音波処理が不十分であれば、さらに超音波処理を施し、所望の条件の標的核酸が得られるまで処理を行うことができる。超音波処理装置の例として、アコースティックソルビライザー(コバリス社)、バイオラプター(東湘電気)、超音波式ホモジュナイザー(タイテック社、VP-050)などが例示できる。コバリス社アコースティックソルビライザーS220は、Duty Factor、Peak incident power, Cycles per burst, timeの4つのパラメータを設定することで、所望の長さまで切断することができる。核酸長の最頻値を400塩基にしたい場合は、Duty Factorを10%、Peak incident powerを140, Cycles per burstを200, timeを55に設定すると良い。その他の長さに切断したいときには、コバリス社の推奨設定に従えば良い。
【0020】
酵素で切断する方法として、dSDNAshearase(ザイモリサーチ社)や制限酵素等を用い、加温時間の加減により所望の長さの核酸断片を得ることができる。一例として、dSDNAshearaseを用いる場合は、メーカー推奨の加温時間に従えば良い。例えば、核酸長の最頻値を300塩基にしたい場合は、37℃で40分間インキュベーションすると良いとされている。その他のDNA切断方法についても同様に、処理の条件を加減することで切断断片の長さを制御することができる。
【0021】
断片化処理した標的核酸は、核酸長の最頻値を指標に評価することができる。核酸長の最頻値とは、断片化した核酸をアガロースゲル電気泳動やバイオアナライザー(アジレント社、DNA7500キット、 RNA6000nanoキット)といった電気泳動法を用いて得られるピークトップ値を指す。電気泳動した結果をエレクトロフェログラムで表示し、波形の最も高い位置をピークトップとし、ピークトップから下ろした垂線とx軸との交点の値を核酸長の最頻値と定義する。核酸長の分析方法は特許4619202などを参照できる。アガロースゲル電気泳動で分析する場合には、DNAラダー(タカラバイオ社 型番:3415Aなど)を同時に泳動し、その移動度を指標に、切断断片のピークトップを測定することができる。
図2Aは、ラダーマーカーと切断した核酸のアガロースゲル電気泳動像である。この画像をNIH Image(NIH)のような画像処理ソフトを使い、輝度を波形で表示させる。このとき、ラダーマーカーごとに電気泳動の原点からの距離を求める。切断した核酸の場合は、ピークトップ、すなわち最も輝度が高い部分までの距離を求める。ラダーマーカーから得られた距離を元に、
図2Cに示したような、検量線と回帰式が得られる。回帰式に距離Yを代入することで、切断した標的核酸の最頻値を求めることができる。以上のようにして分析すると、
図2で使用した切断した標的核酸の核酸長の最頻値は158塩基となる。
【0022】
波形の形状は、どのようであっても構わないが、ブロードであるよりシャープである方がより好ましい結果を生じさせる。
【0023】
上記の種々の方法によって、所望の核酸長の最頻値を有する切断断片を得ることができる。核酸長の最頻
値は、100塩基から1500塩基の間である
。好ましい範囲は250塩基から500塩基である。
【0024】
非標的核酸が混入した被検物質を用いる場合においても、上記と同様に断片化処理を施し、核酸長の最頻値を評価することができる。
【0025】
支持体はスライドガラスやメンブレン、ビーズなどを用いることができる。支持体の材質は、特に限定されないが、ガラス、セラミック、シリコンなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンゴム等のポリマーなどを挙げることができる。このように、本発明によれば、従来からこの分野において常用されている支持体を用いることが可能であり、光平面導波路のような特殊な支持体を用いる必要はない。コスト面や煩雑性を回避する観点から、支持体は光平面導波路ではないことが好ましい。
【0026】
捕捉プローブとは、被験試料に含まれる標的核酸と直接的に、選択的に結合し得る物質を意味する。本発明の標的核酸を検出する方法においては、具体的にはDNA、RNA、PNA、LNA(LockedNucleicAcid)などの核酸誘導体を用いることができる。ここで誘導体とは、核酸の場合、蛍光団などによるラベル化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体などの化学修飾誘導体を意味する。
特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう捕捉プローブに該当する。本発明に用いる捕捉プローブは、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。捕捉プローブとして、特に好ましいものは、核酸である。この核酸の中でも、オリゴ核酸と呼ばれる、長さが200塩基までの核酸は、合成機で容易に人工的に合成が可能である。
【0027】
捕捉プローブは、標的核酸配列と相補的な配列を含んでいれば良く、どの領域を選択しても良い。以下で述べる検出プローブの配列と重複しないことが好ましい。また、標的核酸の異なる領域とハイブリダイズする複数種類の捕捉プローブを用いることもできる。もっとも、本発明の方法によれば、捕捉プローブは1種類であっても満足できる検出感度が得られるので、捕捉プローブは各標的核酸に対して1種類であるのが単純で好ましい。
【0028】
標的核酸が、二本鎖DNAである場合、ワトソン鎖(センス鎖)、クリック鎖(アンチセンス鎖)のいずれかの鎖に対して相補的な配列を捕捉プローブとして選択することができる。以下で述べる検出プローブと捕捉プローブは、同じ鎖の配列を選択することが好ましい。
【0029】
検体核酸に含まれる、異なる標的核酸を区別して検出する場合は、例えば、患者に感染しているウイルスの型を区別して検出するなど、検体核酸に含まれうる核酸配列の中から、特異性が高い配列領域を選択することが好ましい。すなわち、捕捉プローブとして選択した配列が、検体核酸に含まれる全ての配列において、当該領域以外に相同性の高い配列がないことを意味する。
【0030】
一塩基多型の検出に用いることのできる捕捉プローブの設計について、特許文献3で提案されている方法を用いることができる。具体的には、変異が疑われる塩基を、捕捉プローブの中央に配し、その前後の10塩基を付加し、全長21塩基の捕捉プローブとする。変異が疑われる塩基部分にAを配した捕捉プローブと、変異が疑われる塩基部分にTを配した捕捉プローブと、変異が疑われる塩基部分にGを配した捕捉プローブと、変異が疑われる塩基部分にCを配した捕捉プローブとを捕捉プローブセットとして用いることができる(
図5)。さらに、複数のSNPを検出する場合においては、捕捉プローブセット間でTm値が近くなるような配列を選択することが、より好ましい。捕捉プローブ配列の長さを調整する、LNAなどの人工核酸を用いるといった方法を用いることができる。
【0031】
相同性(%)は、当該分野で慣用のホモロジー検索プログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。また、別の局面では、相同性(%)は、当該分野で公知の任意のアルゴリズム、例えば、Needlemanら(1970)(J.Mol.Biol.48:444−453)、Myers及びMiller(CABIOS,1988,4:11−17)のアルゴリズム等を使用して決定することができる。Needlemanらのアルゴリズムは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれており、相同性(%)は、例えば、BLOSUM 62 matrix又はPAM250 matrix、並びにgap weight:16、14、12、10、8、6若しくは4、及びlength weight:1、2、3、4、5若しくは6のいずれかを使用することによって決定することができる。また、Myers及びMillerのアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラムに組み込まれている。
【0032】
検出プローブとは、被験試料に含まれる標的核酸と直接的に、結合し得る物質を意味する。本発明の標的核酸を検出する方法においては、具体的にはDNA、RNA、PNA、LNA(LockedNucleicAcid)などの核酸誘導体を用いることができる。ここで誘導体とは、核酸の場合、蛍光団などによるラベル化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体などの化学修飾誘導体を意味する。
【0033】
特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう検出プローブに該当する。本発明に用いる検出プローブは、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。検出プローブとして、特に好ましいものは、核酸である。この核酸の中でも、オリゴ核酸と呼ばれる、長さが200塩基までの核酸は、合成機で容易に人工的に合成が可能である。
【0034】
標的核酸が、二本鎖DNAである場合、ワトソン鎖、クリック鎖のいずれかの鎖に対して相補的な配列を検出プローブとして選択することができる。上述した捕捉プローブと検出プローブは、同じ鎖の配列を選択することが好ましい。
【0035】
検出プローブは、標的核酸配列と相補的な配列を含んでいれば良く、どの領域を選択しても良い。ただし、上述した捕捉プローブの配列と重複しないことが好ましい。さらに、捕捉プローブ設計位置から1500塩基以内の範囲の配列を選択することが好ましい。
【0036】
検出プローブの配列は、捕捉プローブと相同性が低いことが望ましく、相同性が80%以下になることが好ましいが、ハイブリダイゼーション時のストリンジェンシーを勘案して決定することができる。
【0037】
ハイブリダイゼーション時のストリンジェンシーは、温度、塩濃度、プローブの鎖長、プローブのヌクレオチド配列のGC含量及びハイブリダイゼーション緩衝液中のカオトロピック剤の濃度の関数であることが知られている。ストリンジェントな条件としては、例えば、Sambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載された条件などを用いることができる。ストリンジェントな温度条件は、約30℃以上である。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、及びキャリアDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。当業者は、所望する標的核酸の検出のために用意した捕捉プローブ、および検出プローブとしての機能を得るための条件を適宜決定することができる。
【0038】
検体核酸に含まれる、複数種類の標的核酸を検出する場合、検出対象の標的核酸の間で相同性が100%である配列を、共通検出プローブとして用いることができる。共通検出プローブは、検出対象の標的核酸の間で相同性が100%でない場合、縮重配列を用いても良い。縮重配列については、「バイオ実験イラストレイテッド 本当にふえるPCR」、(1999年)、中山広樹編、(株)秀潤社発行、121頁〜125頁を参考にすることができる。
【0039】
検出プローブには標識体を結合させることができる。検出プローブが核酸である場合、5'末端または3'末端のいずれか、または両方に標識体を結合させることができる。また、検出プローブ内部にも標識体を導入することが可能である。標識体の結合には化学反応、酵素反応などを用いることができる。好ましくは、化学反応を用いて反応させる。さらに好ましくは、検出プローブを化学合成する際に、末端に標識体を結合させる。検出プローブの内部にも標識体を結合させることができる。標識体の結合には化学反応を用いることができ、合成機でビオチン標識を挿入することができる。Biotin-TEG、Biotin-ON, Biotin-dTなどを挿入することができる(https://www.operon.jp/index.php)。
【0040】
本発明において、使用できる標識体としては、タンパク質結合性物質、蛍光色素、りん光色素、放射線同位体など、標識に用いる公知の物質を用いることができる。好ましいのは、タンパク質結合性物質である。タンパク質結合性物質の例としてビオチンがあげられる。ビオチンはアビジンあるいはストレプトアビジンと結合することができる。アビジンあるいはストレプトアビジンに蛍光色素が結合したもの、アルカリフォスファターゼやホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素が結合したものを用いることができる。アルカリフォスファターゼやホースラディッシュペルオキシダーゼを用いる場合には、それぞれの基質を添加し、基質と酵素が反応した結果、発光反応が生じる。発光反応は、プレートリーダーやCCDカメラなどを用いて検出する。
なお、このように、本発明によれば、従来からこの分野において常用されている標識を用いることが可能であり、エバネッセント性励起発光により検出可能であるシグナルを提供するラベルのような特殊な標識を用いる必要はない。コスト面や煩雑性を回避する観点から、標識はエバネッセント性励起発光により検出可能であるシグナルを提供するラベルではないことが好ましい。
【0041】
標識体として、測定が簡便で、信号が検出しやすい蛍光色素を用いても良い。具体的には、シアニン(シアニン2)、アミノメチルクマリン、フルオロセイン、インドカルボシアニン(シアニン3)、シアニン3.5、テトラメチルローダミン、ローダミンレッド、テキサスレッド、インドカルボシアニン(シアニン5)、シアニン5.5、シアニン7、オイスター、BODIPY系色素、フィコエリスリンなどの公知の蛍光色素が挙げられる。
【0042】
また、標識体として発光性を有する半導体微粒子を用いてもよい。このような半導体微粒子としては、例えばカドミウムセレン(CdSe)、カドミウムテルル(CdTe)、インジウムガリウムリン(InGaP)、カルコパイライト系微粒子、、シリコン(Si)、などが挙げられる。蛍光色素の検出は、蛍光顕微鏡や蛍光スキャナなどにより行うことができる。
【0043】
検出されたシグナルは、周辺ノイズと比較される。具体的には、捕捉プローブが固定されている位置から得られたシグナル値と、それ以外の位置から得られたシグナル値を比較し、前者の数値が上回っている場合を検出されたとする。
【0044】
支持体に捕捉プローブを固定化する方法としては、支持体上面部でオリゴDNAを合成する方法と、あらかじめ合成しておいたオリゴDNAを支持体上面部へ滴下し固定する方法が知られている。前者の方法にはRonaldらの方法(米国特許第5705610号明細書)、Michelらの方法(米国特許第6142266号明細書)、Francescoらの方法(米国特許第7037659号明細書)がある。これらの方法ではDNA合成反応時に有機溶媒を用いるため、担体は有機溶媒に耐性のある材質であることが望ましい。例えば、特表平10−503841号公報に記載の方法を用いて作製した凹凸構造を有したガラス担体を用いることができる。特にFrancescoらの方法においては担体の裏面から光を照射し、DNA合成を制御するため、担体は透光性を有する材質であることが好ましい。後者の方法には、廣田ら(特許第3922454号)の方法やガラスキャピラリーを用いることができる。ガラスキャピラリーの一例としては、自作したガラスキャピラリーやマイクロピペット((株)マイクロサポート社製;MP−005)などの市販製品を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0045】
生細胞からのDNA又はRNAの調製は、公知の方法、例えばDNAの抽出については、Blinらの方法( Blin et al., Nucleic Acids Res. 3: 2303 (1976))等により、また、RNAの抽出については、Favaloroらの方法( Favaloro et.al., Methods Enzymol.65: 718 (1980))等により行うことができる。固定化する核酸としては、更に、鎖状若しくは環状のプラスミドDNAや染色体DNA、これらを制限酵素により若しくは化学的に切断したDNA断片、試験管内で酵素等により合成されたDNA、又は化学合成したオリゴヌクレオチド等を用いることもできる。
【0046】
本発明の方法は、サンドイッチハイブリダイゼーションであるので、基本的な操作自体は公知のサンドイッチハイブリダイゼーションと同じである。すなわち、標的核酸又はその断片化処理物と、複数の検出プローブと、支持体に固定した捕捉プローブとを逐次的又は同時に接触させて、前記捕捉プローブと前記標的核酸又はその断片化処理物をハイブリダイズさせ、かつ、前記標的核酸又はその断片化処理物と前記複数の検出プローブをハイブリダイズさせ、それによって、前記複数の検出プローブを、前記捕捉プローブと前記標的核酸又はその断片化処理物を介して前記支持体に結合させ、次いで、支持体に結合された前記複数の検出プローブを検出する。標的核酸又はその断片化処理物と、複数の検出プローブと、支持体に固定した捕捉プローブとを逐次的又は同時に接触させる工程は、(1)先ず標的核酸又はその断片化処理物と、複数の検出プローブとを接触させてハイブリダイズさせ、次に、複数の検出プローブとハイブリダイズした標的核酸又はその断片化処理物を支持体上に固定化された捕捉プローブと接触させてハイブリダイズさせてもよいし、(2)逆に、先ず標的核酸又はその断片化処理物と、支持体上に固定化された捕捉プローブと接触させてハイブリダイズさせ、次に捕捉プローブとハイブリダイズした標的核酸又はその断片化処理物と複数の検出プローブとを接触させてハイブリダイズさせてもよいし、(3) 標的核酸又はその断片化処理物と、複数の検出プローブと、支持体に固定した捕捉プローブとを同時に接触させて前記捕捉プローブと前記標的核酸又はその断片化処理物をハイブリダイズさせ、かつ、前記標的核酸又はその断片化処理物と前記複数の検出プローブをハイブリダイズさせてもよい。これらのうち、上記(1)の方法により逐次的に接触させる方法が検出感度が高くなる場合が多いので好ましい。
【0047】
各ハイブリダイゼーション工程は、従来と全く同様に行うことができる。反応温度及び時間は、ハイブリダイズさせる核酸の鎖長に応じて適宜選択されるが、核酸のハイブリダイゼーションの場合、通常、30℃〜70℃程度で1分間〜十数時間、免疫反応の場合には、通常、室温〜40℃程度で1分間〜数時間程度である。
【0048】
図1を用いて本発明の概念を説明する。例として、全長で3000塩基ある標的核酸を用いて検出するものとする。
【0049】
捕捉プローブは、標的核酸のどの部分に設計しても良いが、この例では標的核酸の先頭から2200塩基〜2230塩基目までを捕捉プローブが結合する配列として用いた。検出プローブは、捕捉プローブが結合する領域から1500塩基の範囲含まれる領域に4本を設計した。各検出プローブと配列領域は次の通りである。検出プローブ1:2000塩基目〜2019塩基目、検出プローブ2:2100塩基目〜2119塩基目、検出プローブ3:2319塩基目〜2330塩基目、検出プローブ4:2419塩基目〜2430塩基目。
【0050】
捕捉プローブからの距離は、標的核酸配列上に捕捉プローブ結合位置および検出プローブ結合位置を配し、最も遠い塩基を端部としてその間の塩基数を数える。
図1Bの例を用いて説明する。検出プローブ2:2100塩基目〜2119塩基目と、捕捉プローブ:2200塩基〜2230塩基目の距離は、最も遠い塩基の位置を端部として数えるため、距離は131塩基となる。検出プローブ3:2319塩基目〜2330塩基目と、捕捉プローブ:2200塩基〜2230塩基目の距離は、最も遠い塩基の位置を端部として数えるため、距離は131塩基となる。このように計算すると、検出プローブ1,4と捕捉プローブの距離はともに231塩基となる。
【0051】
次に標的核酸を、核酸の最頻値が250塩基になるように切断する。この標的核酸と、検出プローブ1,2,3,4と、捕捉プローブをハイブリダイゼーションさせた模式図が
図1A、
図1B、
図1Cである。
【0052】
標的核酸は、任意の位置で切断されているため、
図1のように種々の結合形態が生じうる。
図1Aは、標的核酸が、2231塩基目以降で切断された断片のハイブリダイゼーションの形態を示している。標的核酸に、検出プローブ1と検出プローブ2が結合することができる。
【0053】
図1Bは、標的核酸が、2100塩基目の前と、2330塩基目の後ろで切断された断片のハイブリダイゼーションの形態を示している。標的核酸に、検出プローブ2、検出プローブ3が結合することができる。
【0054】
図1Cは、標的核酸が、2200塩基目の前と、2430塩基目の後ろで切断された断片のハイブリダイゼーションの形態を示している。標的核酸に、検出プローブ3,検出プローブ4が結合することができる。
【0055】
検出プローブを複数本用意し、さらに標的核酸を、核酸長の最頻値を250塩基になるよう切断することで、
図1のいずれかの形態で検出することができる。
【0056】
一方、検出プローブを1つだけ用意した場合には、いずれかの場合において、検出することができない。例えば、検出プローブ1だけであれば、
図1B、
図1Cの場合は検出することができないため、検出感度は低下する。
【0057】
また、核酸長の最頻値を150塩基とした場合には、捕捉プローブに結合した標的核酸に結合できる検出プローブは、検出プローブ2と検出プローブ3である。そのため、検出感度は低下する。
【0058】
なお、
図1においては、捕捉プローブの両側に検出プローブを設計した例示をしたが、検出プローブは、捕捉プローブの3'末端側のみ、あるいは5'末端側のみであってもよい。
【0059】
一般に、本発明のような核酸の検出方法においては、検出方法自体が正しく行われたか否かを確認するために、内部標準も同時に検出している。すなわち、検出方法によって、標的核酸が検出されなかった場合、被検試料中に標的核酸が存在していなかったのか、検出方法が正しく行われなかったのかの判別ができない。このため、被検試料中に普遍的に存在する核酸領域を内部標準として用い、この内部標準が検出されれば検出方法は正しく行われたと判断し、内部標準が検出されなければ検出方法が正しく行われなかったと判断することが行われている。被検試料がヒト由来の場合、内部標準としては、アクチンやグロビンが一般的に用いられている。本発明の方法においても、従来の方法と同様、アクチン遺伝子やグロビン遺伝子を内部標準として用いることができ、特に、標的核酸又はその断片化処理物をPCR等により増幅する場合は、従来の方法と同様な内部標準を問題なく用いることができる。
【0060】
しかしながら、本発明の検出方法は、上記の通り、核酸増幅法を行わなくても十分な感度で標的核酸を検出できるという優れた効果を発揮する方法である。核酸増幅法を行わない場合、アクチン遺伝子やグロビン遺伝子は、ゲノム中に1コピーしかないので、感度が不十分となり、検出方法が正しく行われたにもかかわらず、内部標準が検出されない恐れが生じる。
【0061】
この問題を克服するために、本発明の好ましい実施形態では、前記標的核酸を含む、ヒト等の動物由来の検体を前記検出方法に供し、動物ゲノム中に存在する少なくとも1種の反復配列を内部標準として
検出する。この反復配列は、動物ゲノム断片中に含まれる。動物ゲノム断片は、動物ゲノムの断片化処理により生じたものでもよいし、自然に生じた断片でもよい。ゲノム断片の好ましい長さは、上記した標的核酸又はその断片化処理物の好ましい長さと同様である。動物としては、ヒト;イヌやネコ等のペット;ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜;サル、マウス、ラット等の実験動物等の哺乳動物が好ましく、特にヒトが好ましいがこれらに反復配列が存在する他の動物でもよい。反復配列としては、レトロトランスポゾン、特に短分散型核内反復配列(short interspersed nuclear sequence, SINE)が好ましく、とりわけ、ヒトゲノム中に100万コピー存在するAlu配列が好ましい。Alu配列自体は周知の配列であり、その塩基配列も周知である(配列番号47)。
【0062】
標的核酸がウイルスDNAであり、ヒトゲノムを含むヒト由来検体を検出方法に供する場合の本発明の方法の原理を説明するための概念図を
図8に示す。
図8に示す方法では、内部標準としてヒトAlu配列を用いている。Alu配列を補足するヒトAlu配列捕捉プローブを支持体に固定化し、捕捉されたヒトDNAを検出する複数種類のヒトAlu配列検出用プローブを捕捉されたヒトAlu配列とハイブリダイズさせて、捕捉されたヒトAlu配列を検出する。ここで、ヒトAlu配列等の動物DNAの検出は、上記した標的核酸又はその断片化処理物の検出方法と同様に行うことができ、好ましい条件も上記と同様である。
【0063】
実施例1
本発明を、患者に感染しているウイルスの型を区別して検出する例として、ヒトパピローマウイルス検出の実施例によってさらに詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0064】
ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんの原因ウイルスとして知られている。ヒトパピローマウイルスには、100種以上の型が存在し、その中でも子宮頸がんの原因となる悪性度の高い型として13種が存在している。子宮頸がんの予防医学において、被験者がどの型のウイルスに感染しているか知ることは、治療方針を考える上で重要な情報となる。ヒトパピローマウイルスの型判別は、子宮頸部のぬぐい液から行われる。ハイブリッドキャプチャー法、PCR法などが知られている。本発明をヒトパピローマウイルスの検出に適用することにより、被験者が感染しているウイルスの型を高感度に特定することができる。
【0065】
(捕捉プローブ、検出プローブの設計)
ヒトパピローマウイルスの型判別の研究は、古くから行われており、捕捉プローブはその研究成果を活用することができる。ここでは、一例として文献(j.clin.microbiol, 1995. p.901-905)で報告された捕捉プローブ配列を用いた(表1)。この文献では、ヒトパピローマウイルスのL1遺伝子領域の配列を用いて型を判別することができるよう捕捉プローブを設計しており、型に共通のPCRプライマーMY11,MY09を用いて対象配列を増幅したのち、各型に特異的に結合する捕捉プローブを固定したフィルターにハイブリダイゼーションさせ、検出するという仕組みである。そのため、捕捉プローブの設計位置は、どの型であってもL1遺伝子のほぼ同じ領域に位置している。本発明では、捕捉プローブの位置と共通プライマーの配列に着目し、共通プライマーを、共通の検出プローブとして用いることで、捕捉プローブからの距離は、型間でほぼ同一となるようにした(
図3、表2)。上記配列を有した捕捉プローブは、5’末端にアミノ基修飾をいれた合成DNAをオペロン社にて合成した。検出プローブは、3’末端、および5’末端にビオチン標識をしたものをオペロン社にて合成した。
【0068】
(DNAチップの作製)
DNAチップ“3D-Gene”(登録商標)(http://www.3d-gene.com/en/products/pro_009.html)の基板に、表1の捕捉プローブの全てを固定したDNAチップを作製した。詳細は以下に記す。
【0069】
(DNA固定化担体の作製)
公知の方法であるLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスを用いて、射出成形用の型を作製し、射出成型法により後述するような形状を有するPMMA製の担体を得た。PMMA中には1重量%の割合で、カーボンブラック(三菱化学社、#3050B)を含有させており、担体は黒色である。担体の形状は、大きさが縦76mm、横26mm、厚み1mmであり、担体の中央部分を除き表面は平坦であった。担体の中央には、直径10mm、深さ0.2mmの凹んだ部分が設けてあり、この凹みの中に、直径0.2mm、高さ0.2mmの凸部を64(8×8)箇所設けた。凹凸部凸部のピッチ(凸部中央部から隣接した凸部中央部までの距離)は0.6mmであった。
【0070】
(プローブDNAの固定化)
表1の捕捉プローブDNAは、純水に0.3nmol/μLの濃度で溶かして、ストックソリューションとした。担体に点着する際は、PBS(NaClを8g、Na
2HPO
4・12H
2Oを2.9g、KClを0.2g、KH
2PO
4を0.2g純水に溶かし1LにメスアップしたものにpH調整用の塩酸を加えたもの、pH5.5)でプローブDNAの終濃度を0.03nmol/μLとし、かつ、担体表面のカルボン酸とプローブDNAの末端のアミノ基とを縮合させるため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加え、この終濃度を50mg/mLとした。そして、これらの混合溶液をガラスキャピラリーで担体凸部上面に点着した。次いで、担体を密閉したプラスチック容器入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間程度インキュベートして、純水で洗浄した。捕捉プローブDNAを固定化後、DNAチップの中央部分にカバーを貼り付け、DNAチップとカバーとの間に、ハイブリダイゼーション反応時の溶液撹拌用にジルコニア製ビーズを封入した。
【0071】
(検体DNAの調製)
検体DNAとして、ヒトパピローマウイルスのゲノムDNAがクローニングされた組み替えプラスミドpHPV16をヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入し用いた。pHPV16は全長16,600塩基対であった。1塩基対の分子量を680とすると、1μgは89nmolとなる。
【0072】
検体DNAの調製方法を以下に示す。1μgのpHPV16は、超音波処理(コバリス、s220)によって断片化した。断片化の処理条件は、メーカー推奨の方法に従い、100塩基、150塩基、250塩基、400塩基、1500塩基、4000塩基となるよう設定した。断片の長さは、バイオアナライザー(アジレント社)を用いて評価し、各処理条件で得られた断片化核酸のピークトップは、100塩基、150塩基、250塩基、400塩基、1500塩基、4000塩基であった。切断した検体DNAの濃度は、ナノドロップ(サーモフィッシャー社、ND-1000)を用いて測定し、核酸の濃度を求めた。核酸濃度から、各切断した溶液に含まれる切断したDNAを、1 amol/μLまで1Xハイブリダイゼーション溶液で希釈し、検体DNAとした。
【0073】
(検出プローブ溶液の調製)
検出プローブは、濃度が100 fmol/μLになるよう滅菌水で希釈した。複数の検出プローブを混和して用いる場合でも、同様に各検出プローブの濃度は100 fmol/μLとなるよう滅菌水で希釈した。
【0074】
(ハイブリダイゼーション)
検体DNA 5μLに、希釈した検出プローブ液1μLを混和し、サーマルサイクラーを用いて、95℃で5分間加熱した。加熱後、室温に戻るまで、机上に2分間静置した。この溶液に、1Xハイブリダイゼーション溶液(1重量% BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC、1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、50ng/ml サケ精子DNAの溶液、5重量%デキストラン硫酸ナトリウム、30%フォルムアミド)を35μL加え、ハイブリ溶液とした。全量をDNAチップに注入し、32℃で加温したインキュベータにセットした。ハイブリダイゼーションは、“3D-Gene”の標準プロトコールに従い、250rpmで旋回撹拌をしながら、32℃で2時間行った。ハイブリダイゼーション後、DNAチップを30℃に加温した洗浄液(0.5×SSC、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。さらに、ストレプトアビジンフィコエリスリン(プロザイム社)を染色溶液(50ng/μlストレプトアビジンフィコエリスリン、100mM MES,1M NaCl,0.05重量%Tween20、2mg/mlBSA(ウシ血清アルブミン))に添加した溶液を用意し、DNAチップ上に滴下した。35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6XSSPE、0.01重量%Tween20)で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。染色済みのDNAチップは、DNAチップスキャナ(東レ)を用いて蛍光シグナルを検出した。スキャナーの設定は、レーザー出力100%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を70%にした。
【0075】
検出結果を表3に示す。4種類の検出プローブを混和して検出した結果から、切断しない場合、4000塩基に切断した場合に比べ、1500塩基以下に切断した検体では優位に検出シグナルが向上していることがわかる。特に、250塩基、500塩基で最も感度が高くなり、さらに短く切断すると感度が低下し始めることがわかる。
【0077】
次に、検出プローブを個別に用いて検出した結果では、GP5およびGP6については、上記4種混合で検出したときと同様の挙動を示している。MY11についても同様の挙動であるが、検出プローブの結合度が低いためか、GP5、GP6にくらべシグナル強度は劣っている。MY09は、捕捉プローブから340塩基離れた場所に設計された検出プローブで、DNA長が250塩基以下に切断した場合には、標的核酸に結合する領域がなく、検出プローブとして機能しないことが予想された。実施例でも、500塩基および1500塩基ではシグナルが得られているが、250塩基以下ではシグナルが得られていない。
【0078】
個別の検出プローブで得られるシグナル強度の和が、4種を混合して用いた時のシグナル強度と同等であることは容易に推測される。表3の最下段に個別の検出プローブで得られたシグナル強度の和を示した。これに対し、標的核酸を1500塩基以下に切断した場合において、4種混合で用いた場合のシグナル強度は非常に大きな値を示している。これは、複数の検出プローブが結合することにより、捕捉プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションが強められたものと推測された。
【0079】
実施例2
本発明を、ヒトパピローマウイルス検出の別の実施形態によってさらに詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0080】
(捕捉プローブ、検出プローブの設計)
捕捉プローブは実施例1と同様、文献で報告のある配列を用いた(j.clin.microbiol, 1995. p.901-905、表1)。一般的に、核酸のハイブリ結合強度は、長い方が強くなる。そこで、検出プローブを、
図4および表4に示したように捕捉プローブの前後の配列に80〜86塩基の長さをもつ配列を5領域分用意した。
【0082】
上記配列を有した捕捉プローブは、5’末端にアミノ基修飾をいれた合成DNAをオペロン社にて合成した。検出プローブは、内部にビオチン標識を導入したものをオペロン社にて合成した(表4)。
【0083】
(DNAチップの作製)
表1の全ての捕捉プローブを固定したDNAチップを作製した。DNAチップの作製方法は、実施例1と同様である。
【0084】
(検体DNAの調製)
検体DNAとして、ヒトパピローマウイルスのゲノムDNAがクローニングされた組み替えプラスミドpHPV16をヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入し用いた。pHPV16は全長16,600塩基対であった。1塩基対の分子量を680とすると、1μgは89nmolとなる。
【0085】
検体DNAの調製方法を以下に示す。5μgのpHPV16は、超音波処理(コバリス、s220)によって断片化した。断片化の処理条件は、メーカー推奨の方法に従い、150塩基、250塩基となるよう設定した。断片の長さは、バイオアナライザー(アジレント社)を用いて評価し、各処理条件で得られた断片化核酸のピークトップは、150塩基、250塩基であった。切断した検体DNAの濃度は、ナノドロップ(サーモフィッシャー社、ND-1000)を用いて測定し、核酸の濃度を求めた。核酸濃度から、各切断した溶液に含まれる切断したDNAを、1 amol/μLまで1Xハイブリダイゼーション溶液で希釈し、検体DNAとした。
【0086】
(検出プローブ溶液の調製)
検出プローブは、濃度が100fmol/μLになるよう滅菌水で希釈した。複数の検出プローブを混和して用いる場合でも、同様に各検出プローブの濃度は100fmol/μLとなるよう滅菌水で希釈した。
【0087】
(ハイブリダイゼーション)
検体DNA 5μLに、希釈した検出プローブ液1μLを混和し、サーマルサイクラーを用いて、95℃で5分間加熱した。加熱後、室温に戻るまで、机上に2分間静置した。この溶液に、ハイブリダイゼーション溶液1Xハイブリダイゼーション溶液(1重量% BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC、1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、50ng/ml サケ精子DNAの溶液、5重量%デキストラン硫酸ナトリウム、30%フォルムアミド)を35μL加え、ハイブリ溶液とした。全量をDNAチップに注入し、32℃で加温したインキュベータにセットした。ハイブリダイゼーションは、“3D-Gene”の標準プロトコールに従い、250rpmで旋回撹拌をしながら、32℃で2時間行った。ハイブリダイゼーション後、DNAチップを30℃に加温した洗浄液(0.5×SSC、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。さらに、ストレプトアビジンフィコエリスリン(プロザイム社)を染色溶液(50ng/μlストレプトアビジンフィコエリスリン、100mM MES,1M NaCl,0.05重量%Tween20、2mg/mlBSA(ウシ血清アルブミン))に添加した溶液を用意し、DNAチップ上に滴下した。35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6XSSPE、0.01重量%Tween20)で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。染色済みのDNAチップは、DNAチップスキャナ(東レ)を用いて蛍光シグナルを検出した。スキャナーの設定は、レーザー出力100%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を70%にした。
【0088】
検出結果を表5に示す。5種類の検出プローブを混和(5種混合)して検出した結果から、150塩基に比べ250塩基のシグナル強度が高い。150塩基に切断した場合に有効な検出プローブは2本であるのに対して、250塩基に切断した場合に有効な検出プローブは3本である。結合できた検出プローブの本数の差により、シグナル強度の差が生じたといえる。一方、250塩基に切断した標的核酸を、4種混合と5種混合で検出した結果を比較すると、5種混合の方がシグナル強度が高い。これは、4種混合を用いた場合の有効な検出プローブが2本であるのに対し、5種混合では3本である。結合できた検出プローブの本数の差により、シグナル強度の差が生じたといえる。
【0090】
以上のように、複数の検出プローブを用意し、かつ、検出プローブの結合領域を考慮した標的核酸の切断を行うことにより、特に十分なシグナル強度を得ることができる。なお、5種混合の検出プローブを用いた場合、標的核酸は400塩基前後(±50塩基程度)、さらには400塩基に切断することが好ましい。
【0091】
実施例3
本発明を、SNPs(single nucleotide polymorphisms)検出によってさらに詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。がん患者において、EGFR遺伝子やk-ras遺伝子の変異の有無によって、抗がん剤の奏功率が異なることが知られており、抗がん剤投与の判断材料になっている。既存の技術では、PCRで増幅したのちに種々の方法を用いて検出している。
【0092】
(捕捉プローブ、検出プローブの設計)
SNP検出の捕捉プローブは、SNPサイトをプローブの中央に位置させる。具体的には、SNPサイトの前後10塩基を捕捉プローブ配列として用いる。SNP検出の場合、捕捉プローブはSNPサイトを全ての塩基の組み合わせを用意し、捕捉プローブセットとして用いる。具体的には、野生型:G,変異型:AのSNPサイトの場合、GまたはAの前後10塩基を含む21塩基を捕捉プローブとして用いる。また、比較対象とするため、プローブの中央部分をTまたはCにし、前後10塩基を含む21塩基を捕捉プローブとする。以上の4配列を捕捉プローブセットとして用いる。このようにして、k-ras変異であるGly12Ser、 Gly12Arg、Gly12CysおよびEGFR変異であるT790Mに対する捕捉プローブセットを用意した(表6)。
【0094】
検出プローブは、捕捉プローブ設計からの距離を考慮した上で、
図6および
図7の位置に設計した。検出プローブの配列および捕捉プローブからの距離を表7,表8に示した。
【0097】
上記配列を有した捕捉プローブは、5'末端にアミノ基修飾をいれた合成DNAをオペロン社にて合成した。検出プローブは、3'末端、および5'末端にビオチン標識をしたものをオペロン社にて合成した。
【0098】
(DNAチップの作製)
表6の全ての捕捉プローブを固定したDNAチップを作製した。DNAチップの作製方法は、実施例1と同様である。
【0099】
(検体DNAの調製)
検体DNAとしてA549細胞から抽出したDNAを用いた。A549細胞は、肺がん組織由来の培養細胞であり、Gly12Serの変異が入っていることが知られている。A549細胞から抽出した5μgのDNAを超音波処理(コバリス、s220)によって断片化した。断片化の処理条件は、メーカー推奨の方法に従った。断片の長さは、バイオアナライザー(アジレント社)を用いて評価した。核酸長の最頻値は750塩基であった。切断したDNAの全量を検体DNAとして用いた。
【0100】
(検出プローブ溶液の調製)
検出プローブは、混和し、それぞれの濃度が100fmol/μLになるよう滅菌水で希釈した。
【0101】
(ハイブリダイゼーション)
検体DNA 5μLに、希釈した検出プローブ液1μLを混和し、サーマルサイクラーを用いて、95℃で5分間加熱した。加熱後、室温に戻るまで、机上に2分間静置した。この溶液に、ハイブリダイゼーション溶液(組成確認。1重量%BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.01重量%サケ精子DNAの溶液)を35μL加え、ハイブリ溶液とした。全量をDNAチップに注入し、32℃で加温したインキュベータにセットした。ハイブリダイゼーションは、“3D-Gene”の標準プロトコールに従い、250rpmで旋回撹拌をしながら、32℃で2時間行った。ハイブリダイゼーション後、DNAチップを30℃に加温した洗浄液(0.5×SSC、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。さらに、ストレプトアビジンフィコエリスリン(プロザイム社)を染色溶液(50ng/μlストレプトアビジンフィコエリスリン、100mM MES,1M NaCl,0.05重量%Tween20、2mg/mlBSA(ウシ血清アルブミン))に添加した溶液を用意し、DNAチップ上に滴下した。35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6XSSPE、0.01重量%Tween20)で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。染色済みのDNAチップは、DNAチップスキャナ(東レ)を用いて蛍光シグナルを検出した。スキャナーの設定は、レーザー出力100%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を70%にした。
【0103】
検出結果を表9に示す。EGFR捕捉プローブセットでは、野生型のプローブが最もシグナル強度が高いため、A549細胞においてT790M変異は生じていないと考えられる。K−RAS捕捉プローブでは、Gly12Serのプローブのシグナル強度が最も高い。A549細胞は、Gly12Ser変異が入っていることが知られており、本検出結果と一致した。
【0104】
以上のように、サンドイッチハイブリを用いることで、PCR増幅することなくSNPを正しく検出することができた。
【0105】
実施例4
実施例3で示したK−ras遺伝子変異やEGFR遺伝子変異は、抗がん剤投与の重要な指標であるが、それらの遺伝子発現の有無を別の手法で確認することも重要である。本発明は、RNAを直接検出することもでき、さらにそのRNA中の変異を検出することができる。これまでのRNA技術は、逆転写酵素でcDNAにしたのち、PCR法で増幅する必要があった。逆転写する場合に用いられる逆転写酵素は、一般に変異が入りやすいため、誤検出の原因となる可能性がある。以下に、詳細について記すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0106】
(捕捉プローブ、検出プローブの設計)
実施例3と同様の捕捉プローブセット、および検出プローブを用いた。
【0107】
(DNAチップの作製)
表6の全ての捕捉プローブを固定したDNAチップを作製した。DNAチップの作製方法は、実施例1と同様である。
【0108】
(検体DNAの調製)
検体DNAとしてA549細胞から抽出したtotal RNAを用いた。A549細胞は、肺がん組織由来の培養細胞であり、Gly12Serの変異が入っていることが知られている。A549細胞から抽出した5μgのtotal RNAを超音波処理(コバリス社、s220)によって断片化した。断片化の処理条件は、メーカー推奨の方法に従った。断片の長さは、バイオアナライザー(アジレント社)を用いて評価した。核酸長の最頻値は250塩基であった。切断したRNAの全量を検体RNAとして用いた。
【0109】
(検出プローブ溶液の調製)
検出プローブは、混和し、それぞれの濃度が100fmol/μLになるよう滅菌水で希釈した。
【0110】
(ハイブリダイゼーション)
検体RNA 5μLに、希釈した検出プローブ液1μLを混和し、サーマルサイクラーを用いて、95℃で5分間加熱した。加熱後、室温に戻るまで、机上に2分間静置した。この溶液に、ハイブリダイゼーション溶液(組成確認。1重量%BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.01重量%サケ精子DNAの溶液)を35μL加え、ハイブリ溶液とした。全量をDNAチップに注入し、32℃で加温したインキュベータにセットした。ハイブリダイゼーションは、“3D-Gene”の標準プロトコールに従い、250rpmで旋回撹拌をしながら、32℃で2時間行った。ハイブリダイゼーション後、DNAチップを30℃に加温した洗浄液(0.5×SSC、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。さらに、ストレプトアビジンフィコエリスリン(プロザイム社)を染色溶液(50ng/μlストレプトアビジンフィコエリスリン、100mM MES,1M NaCl,0.05重量%Tween20、2mg/mlBSA(ウシ血清アルブミン))に添加した溶液を用意し、DNAチップ上に滴下した。35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6XSSPE、0.01重量%Tween20)で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬)を用いて乾燥した。染色済みのDNAチップは、DNAチップスキャナ(東レ)を用いて蛍光シグナルを検出した。スキャナーの設定は、レーザー出力100%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を70%にした。
【0111】
検出結果を表10に示す。EGFR捕捉プローブセットでは、野生型のプローブが最もシグナル強度が高いため、A549細胞においてT790M変異は生じていないと考えられる。K−RAS捕捉プローブでは、Gly12Serのプローブのシグナル強度が最も高い。A549細胞は、Gly12Ser変異が入っていることが知られており、本検出結果と一致した。
【0113】
以上のように、サンドイッチハイブリを用いることで、RNAを逆転写することなく直接検出することができ、さらにSNPを正しく検出することができた。
【0114】
実施例5
本発明を、ヒトパピローマウイルス検出の別の実施形態によってさらに詳細に説明する。上述の実施例1及び実施例2では、ヒトパピローマウイルスDNAを検出した。ヒト検体から核酸を抽出し、解析する場合において、検出シグナルが得られなかった時には、ヒト検体にパピローマウイルスが存在しなかったとうい解釈と、核酸の抽出作業や検出作業を失敗したという解釈の両方が考えられる。どちらであるか区別することは困難である。このような問題は、内部標準を用いることで、解消できる。
【0115】
ヒト検体からヒトパピローマウイルスDNAを抽出する時には、微量なヒトDNAが検体溶液に含まれることが知られている。ヒトパピローマウイルスに感染していないヒト検体からは、ヒトパピローマウイルスDNAは取得できないが、ヒトDNAを得ることができる。この性質を利用し、ヒト検体から抽出した検体溶液に含まれるヒトDNAを検出することで、ヒトパピローマウイルスDNA検出の内部標準として用いることができる。ここでは、パピローマウイルスの塩基配列が組み込まれたプラスミドDNAとヒトゲノムDNAを、混和した検体を、擬似的に用いる。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0116】
(捕捉プローブ、検出プローブの設計)
捕捉プローブは実施例1と同様、文献で報告のある配列を用いた(j.clin.microbiol, 1995. p.901-905、表1)。一般的に、核酸のハイブリ結合強度は、長い方が強くなる。そこで、検出プローブを、
図4および表4に示したように捕捉プローブの前後の配列に80〜86塩基の長さをもつ配列を5領域分用意した。
【0117】
上記配列を有した捕捉プローブは、5’末端にアミノ基修飾をいれた合成DNAをオペロン社にて合成した。検出プローブは、内部にビオチン標識を導入したものをオペロン社にて合成した(表4)。
【0118】
ヒトゲノム中に繰り返し存在するAlu配列に対する捕捉プローブ及び検出プローブを、表11に示した。上記配列を有した捕捉プローブは、5’末端にアミノ基修飾をいれた合成DNAをオペロン社にて合成した。検出プローブは、5’末端と3‘末端にビオチン標識を導入したものをオペロン社にて合成した。
【0119】
(DNAチップの作製)
表1の全ての捕捉プローブ及び表11配列番号46の捕捉プローブを固定したDNAチップを作製した。DNAチップの作製方法は、実施例1と同様である。
【0121】
(検体DNAの調製)
検体DNAとして、ヒトパピローマウイルスのゲノムDNAがクローニングされた組み替えプラスミドpHPV16をヒューマンサイエンス研究資源バンク(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団)より購入し用いた。pHPV16は全長16,600塩基対であった。1塩基対の分子量を680とすると、1μgは89nmolとなる。ヒトゲノムDNAは、クロンテック社から購入したものを用いた。
【0122】
検体DNAの調製方法を以下に示す。5μgのpHPV16およびヒトゲノムDNAは、超音波処理(コバリス社、型番:s220)によって断片化した。断片化の処理条件は、メーカー推奨の方法に従い、250塩基となるよう設定した。断片の長さは、バイオアナライザー(アジレント社)を用いて評価し、各処理条件で得られた断片化核酸のピークトップは、250塩基であった。切断した検体DNAの濃度は、ナノドロップ(サーモフィッシャー社、型番:ND-1000)を用いて測定し、核酸の濃度を求めた。核酸濃度から、各切断した溶液に含まれる切断したDNAを、pHPV16は1amol/uL、ヒトゲノムDNAは5ng/uLとなるように1Xハイブリダイゼーション溶液で希釈した。
【0123】
(検出プローブ溶液の調製)
表4及び表11の検出プローブは、滅菌水で溶解させた後、それぞれの濃度が100fmol/μLになるよう混和し、検出プローブ液とした。
【0124】
(ハイブリダイゼーション)
切断したpHPV16とヒトゲノムDNAを表12の組成になるように混和した検体DNA 5μLに、希釈した検出プローブ液1μLを混和し、サーマルサイクラーを用いて、95℃で5分間加熱した。加熱後、室温に戻るまで、机上に2分間静置した。この溶液に、1Xハイブリダイゼーション溶液(1重量% BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC、1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、50ng/ml サケ精子DNAの溶液、5重量%デキストラン硫酸ナトリウム、30%フォルムアミド)を35μL加え、ハイブリ溶液とした。全量をDNAチップに注入し、32℃で加温したインキュベータにセットした。ハイブリダイゼーションは、“3D-Gene”の標準プロトコールに従い、250rpmで旋回撹拌をしながら、32℃で2時間行った。ハイブリダイゼーション後、DNAチップを30℃に加温した洗浄液(0.5×SSC、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬社)を用いて乾燥した。さらに、ストレプトアビジンフィコエリスリン(プロザイム社)を染色溶液(50ng/μlストレプトアビジンフィコエリスリン、100mM MES,1M NaCl,0.05重量%Tween20、2mg/mlBSA(ウシ血清アルブミン))に添加した溶液を用意し、DNAチップ上に滴下した。35℃で5分間インキュベーションした。30℃に加温した洗浄液(6XSSPE、0.01重量%Tween20)で5分間洗浄したのち、スピンドライヤー(和研薬社)を用いて乾燥した。染色済みのDNAチップは、DNAチップスキャナ(東レ社)を用いて蛍光シグナルを検出した。スキャナーの設定は、レーザー出力100%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を70%にした。
【0126】
【表12】
検体1(ヒトゲノムDNA 5ng)は、捕捉プローブ Probe Aluでのみシグナルが検出された。この検体にはpHPV16のDNAが含まれていないため、捕捉プローブ Probe 16ではシグナルが得られていない。
【0127】
検体3(pHPV16 1amol)は、捕捉プローブ Probe 16でのみシグナルが検出された。この検体にはヒトゲノムDNAが含まれていないため、捕捉プローブ Probe Aluではシグナルが得られていない。以上の結果から、pHPV16用の捕捉プローブ及び検出プローブと、Alu配列用の検出プローブ及び捕捉プローブは、相互に誤ったハイブリダイズをしないことが分かる。
【0128】
検体2(pHPV16 1amol、ヒトゲノムDNA 5ng)は、捕捉プローブ Probe 16及びProbe Aluでシグナルが得られた。このことから、pHPV16とヒトゲノムDNAを同時に検出できることがわかった。
【0129】
以上のように、ヒトパピローマウイルスDNAの有無にかかわらず、検体溶液に含まれるヒトDNAのAlu配列を検出することができたことから、ヒトDNAを内部標準として用いることができることが分かった。ヒト検体から核酸を抽出し、解析する場合においても本技法は有効であると考えられる。