特許第6206183号(P6206183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206183
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】現像液の処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/30 20060101AFI20170925BHJP
   G03F 7/32 20060101ALI20170925BHJP
   B05B 15/04 20060101ALI20170925BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G03F7/30 501
   G03F7/32
   B05B15/04 104
   B05C11/10
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-530451(P2013-530451)
(86)(22)【出願日】2013年7月2日
(86)【国際出願番号】JP2013068087
(87)【国際公開番号】WO2014021043
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2012-172559(P2012-172559)
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健
(72)【発明者】
【氏名】近藤 篤司
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−215810(JP,A)
【文献】 特開2005−148592(JP,A)
【文献】 特開2005−292189(JP,A)
【文献】 特開2000−155426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/30
G03F 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像処理後の現像液を遠心分離により、清澄液と残渣とに分離する、遠心分離機と、
前記清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、を備える、現像液の処理装置であって、
前記遠心分離機と、
前記清澄液を貯留する、第1のタンクと、
前記第1のタンク内の清澄液を脱泡して排出する、前記脱泡装置と、
前記脱泡装置から排出される清澄液と、未使用の現像液と、を混合して貯留する、第2のタンクと、
前記第2のタンクから溢れた清澄液を、前記第1のタンクの上方向から前記第1のタンクに供給する手段と、を備え、前記第1のタンクに貯留された清澄液の液面と、前記第2のタンクに貯留された清澄液の液面と、の高低差が、5cm以上であ、現像液の処理装置。
【請求項2】
現像処理後の現像液を遠心分離により、清澄液と残渣とに分離する、遠心分離機と、
前記清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、を備える、現像液の処理装置であって、
前記遠心分離機と、
前記清澄液を貯留する、第1のタンクと、
前記第1のタンク内の清澄液を脱泡して排出する、前記脱泡装置と、
前記脱泡装置から排出される清澄液と、未使用の現像液と、を混合して貯留する、第2のタンクと、
前記第1のタンクから溢れた清澄液を、前記第2のタンクの上方向から前記第2のタンクに供給する手段と、を備え、前記第1のタンクに貯留された清澄液の液面と、前記第2のタンクに貯留された清澄液の液面と、の高低差が、5cm以上であ、現像液の処理装置。
【請求項3】
前記第1のタンクと、前記第2のタンクとが、仕切り板を挟んで隣接している、請求項1又は2記載の現像液の処理装置。
【請求項4】
前記第1のタンク又は前記第2のタンクから溢れた清澄液が、前記仕切り板を伝って流れて、他方のタンクに供給される、請求項記載の現像液の処理装置。
【請求項5】
前記第1のタンク又は前記第2のタンクの上方向から供給される清澄液の鉛直方向の流速が、15cm/s以上である、請求項1〜4のいずれか一項記載の現像液の処理装置。
【請求項6】
前記脱泡装置から排出される清澄液の気泡率が、10%以下である、請求項1〜5のいずれか一項記載の現像液の処理装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載の現像液の処理装置を用いる現像液の処理方法であって、現像処理後の現像液を遠心分離して、清澄液と残渣とを分離して得る、遠心分離工程と、
前記清澄液を脱泡して、脱泡現像液を得る、脱泡工程と、を備える、現像液の処理方法。
【請求項8】
前記脱泡現像液と、未使用の現像液と、を混合して混合現像液を得る、混合工程と、
前記混合現像液の一部を前記現像処理に供給し、前記混合現像液の一部を、前記脱泡前の前記清澄液の上方向から前記脱泡工程に供給する、還流工程と、を備える、請求項記載の現像液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像液の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パターンとは基板上の特定材料の形状をいうが、例えばプラズマディスプレイパネルは、その背面板に着目しただけでも、電極、隔壁及び蛍光体のそれぞれが複雑なパターンを有している。このようなパターンの内、導電パターンとは基板上の導電材料の形状をいうが、この導電性パターンを形成する材料として、導電性フィラーを含有する非焼成型の感光性導電ペーストが知られている。非焼成型の感光性導電ペーストは、比較的低温のキュア工程における硬化収縮によって導電性フィラー同士が互いに接触し、導電性が発現するものであり、耐熱性に劣るフィルム基板等にも導電パターンを形成可能であることから、スマートフォンや電子黒板のタッチパネルのファインピッチ配線向けの開発が進められている(特許文献1〜5)。
【0003】
感光性導電ペーストを用いた導電パターン形成プロセスは、感光性導電ペーストから形成した塗布膜等に、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光を照射して露光することで、現像液中での溶解度差を生じさせ、溶解成分を現像液中に溶出させてパターンを形成するプロセスである。このように、感光性導電ペーストを用いた導電パターン形成プロセスは、現像液を用いた現像処理工程を備えることを必須とするものである。
【0004】
現像処理後の現像液には、不溶性の無機成分や、有機成分の塊が不溶成分として残存する。これら不溶成分、すなわち残渣は、例えばプラズマディスプレイパネル背面板の隔壁パターン形成プロセス等において大量に発生するものである。現像処理後の現像液を再利用して再び現像処理に供するためには、被現像物の汚染や現像処理工程装置の詰まり等を防止すべく、現像処理後の現像液中から残渣を取り除く必要がある。一方で、例えば電極パターンを形成するための感光性導電製ペーストは銀等の高価な金属を含むものであることから、現像処理後の現像液中から残渣を分別することは、資源回収としての意義をも有する。
【0005】
現像処理後の現像液から残渣を分別するための方法としては、フィルターや沈殿槽を用いる方法が知られているが、フィルターの交換頻度の高さや、フィルター交換時の装置停止の必要性、あるいは流速を落とすための大容量の沈殿槽の必要性、といったような、様々な問題を抱えるものであった。このため、これら方法に代わる方法として、遠心分離法が開発されている(特許文献5及び6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−143149号公報
【特許文献2】特開平5−75273号公報
【特許文献3】特許第4034555号公報
【特許文献4】特許第4319625号公報
【特許文献5】特許第3191772号公報
【特許文献6】特開2005−292189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、遠心分離法による残渣の分別では、銀等の高比重(約10)の無機成分を効率的に回収することが可能であるものの、低比重である有機物等の不溶成分の除去効率は低く、また、大量の空気が現像液に巻き込まれることから、これらが遠心分離後の現像液に混入して凝集し、浮遊物であるスカムが発生する。このようなスカムは、非焼成型の感光性導電ペーストを用いた導電パターン形成プロセスにおいて特に生じ易いものであるが、スカムによる配管詰まり、各種センサの誤作動又は現像処理後の導電パターンの欠陥といった、多くの問題を伴うのが現状であった。
【0008】
そこで本発明は、スカム発生に伴う問題を解消し、製品不良率の改善、製造装置の稼働率向上又は高効率の貴金属回収による製造コストダウン等に大きく寄与する、現像液の処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者らは、発生したスカムを除去するのではなく、そもそもスカムの発生を抑止することを視野に入れながら鋭意検討した結果、現像処理後の現像液の脱泡と、一定条件下での流動と、の組み合わせがスカムの発生抑止に極めて効果的であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜()に記載した現像液の処理装置及び処理方法を提供する。
現像処理後の現像液を遠心分離により、清澄液と残渣とに分離する、遠心分離機と、上記清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、を備える、現像液の処理装置であって、現像処理後の現像液を遠心分離して、清澄液と残渣とを得る、遠心分離機と、上記清澄液を貯留する、第1のタンクと、上記第1のタンク内の清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、上記脱泡装置から排出される清澄液と、未使用の現像液と、を混合して貯留する、第2のタンクと、上記第2のタンクから溢れた清澄液を、上記第1のタンクの上方向から上記第1のタンクに供給する手段と、を備え、上記第1のタンクに貯留された清澄液の液面と、上記第2のタンクに貯留された清澄液の液面と、の高低差が、5cm以上である、現像液の処理装置。
現像処理後の現像液を遠心分離により、清澄液と残渣とに分離する、遠心分離機と、上記清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、を備える、現像液の処理装置であって、現像処理後の現像液を遠心分離して、清澄液と残渣とを得る、遠心分離機と、上記清澄液を貯留する、第1のタンクと、上記第1のタンク内の清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、上記脱泡装置から排出される清澄液と、未使用の現像液と、を混合して貯留する、第2のタンクと、上記第1のタンクから溢れた清澄液を、上記第2のタンクの上方向から上記第2のタンクに供給する手段と、を備え、上記第1のタンクに貯留された清澄液の液面と、上記第2のタンクに貯留された清澄液の液面と、の高低差が、5cm以上である、現像液の処理装置。
) 上記第1のタンクと、上記第2のタンクとが、仕切り板を挟んで隣接している、上記(1)又は(2)記載の現像液の処理装置。
) 上記第1のタンク又は上記第2のタンクから溢れた清澄液が、上記仕切り板を伝って流れて、他方のタンクに供給される、上記(3)に記載の現像液の処理装置。
) 上記第1のタンク又は上記第2のタンクの上方向から供給される清澄液の鉛直方向の流速が、15cm/s以上である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の現像液の処理装置。
) 上記脱泡装置から排出される清澄液の気泡率が、10%以下である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の現像液の処理装置。
(1)又は(2)記載の現像液の処理装置を用いる現像液の処理方法であって、現像処理後の現像液を遠心分離して、清澄液と残渣とを分離して得る、遠心分離工程と、上記清澄液を脱泡して、脱泡現像液を得る、脱泡工程と、を備える、現像液の処理方法。
) 上記脱泡現像液と、未使用の現像液と、を混合して混合現像液を得る、混合工程と、上記混合現像液の一部を上記現像処理に供給し、上記混合現像液の一部を、上記脱泡前の前記清澄液の上方向から上記脱泡工程に供給する、還流工程と、を備える、上記()に記載の現像液の処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の現像液の処理装置によれば、スカムの発生を大幅に抑止することが可能であり、製品不良率の改善、製造装置の稼働率向上又は高効率の貴金属回収による製造コストダウン等を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来の現像液の処理装置を備える、現像処理工程を示す概略図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置を備える、現像処理工程を示す概略図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る現像液の処理装置を備える、現像処理工程を示す概略図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る現像液の処理装置を備える、現像処理工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の現像液の処理装置は、現像処理後の現像液を遠心分離により、清澄液と残渣とを分離する、遠心分離機と、上記清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の現像液の処理方法は、現像処理後の現像液を遠心分離により、清澄液と残渣とを分離して得る、遠心分離工程と、上記清澄液を脱泡して、脱泡現像液を得る、脱泡工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
現像処理後の現像液を再利用する場合においては、その全量を遠心分離機に供給し、得られた清澄液を現像液として再利用することが、スカム発生防止、残渣の効率的な分別及び清澄液の清澄度向上の点から好ましい。
【0016】
図2に示される、本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置は、現像処理後の現像液を遠心分離して、清澄液と残渣とを得る、遠心分離機と、上記清澄液を貯留する、第1のタンクと、上記第1のタンク内の清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、上記脱泡装置から排出される清澄液と、未使用の現像液と、を混合して貯留する、第2のタンクと、上記第2のタンクから溢れた清澄液を、上記第1のタンクの上方向から上記第1のタンクに供給する手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、図3に示される、本発明の第二実施形態に係る現像液の処理装置は、現像処理後の現像液を遠心分離して、清澄液と残渣とを得る、遠心分離機と、上記清澄液を貯留する、第1のタンクと、上記第1のタンク内の清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、上記脱泡装置から排出される清澄液と、未使用の現像液と、を混合して貯留する、第2のタンクと、上記第1のタンクから溢れた清澄液を、上記第2のタンクの上方向から上記第2のタンクに供給する手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
図4に示される、本発明の第三実施形態に係る現像液の処理装置は、現像処理後の現像液を遠心分離により、清澄液と残渣とに分離する、遠心分離機と、上記清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置と、を備えることを特徴とする。
【0019】
「遠心分離」とは、現像液中の固形分すなわち不溶成分である残渣と、現像液とのの比重の差を利用して、遠心力によって残渣と現像液とを分別し、現像液から残渣を取り除いた、清澄液を得る手法である。清澄液とは、言い換えれば、残渣を取り除いた現像液をいう。清澄液は、遠心力によって分別し切れなかった有機粒子に代表される、有機物等の不溶成分を含んでいても構わない。一方で残渣は、無機粒子を主成分とすることが一般的である。
【0020】
このような遠心分離を機械的に達成する装置が遠心分離機であるが、連続処理が可能であることから、デカンタ方式の遠心分離機が好ましい。
【0021】
分別された残渣に無機粒子として銀等の貴金属が含まれる場合には、これを溶融して回収することで、製造コストダウンを達成することができる。本発明の現像液の処理装置は、無機粒子として金属粒子を含む残渣の回収に好適であり、該金属粒子が、Ag、Au、Cu、Pt、Pb、Sn、Ni、Al、W、Mo、酸化ルテニウム、
Cr、Ti及びインジウムからなる群から選ばれる貴金属の粒子であれば、製造コストダウンの観点からより好適である。
【0022】
なお、残渣として分別されるべき無機粒子が、遠心力によって分別し切れず、清澄液に混入した場合には、それらが核となってスカムが発生し易くなる。
【0023】
遠心分離により得られた清澄液は、第1のタンクに供給され、貯留される。第1のタンクに供給される清澄液は、遠心分離によって大量の空気が巻き込まれており、気泡率が極めて高い。気泡が液中から液面に上昇すると、低比重である有機物等の不溶成分が気泡とともに液面に上昇し、凝集して浮遊し、スカムが発生する。このため、第1のタンクに貯留される清澄液の気泡率は、低い方が好ましい。
【0024】
気泡率は、被測定液体をメスシリンダーに採取し、気泡を含む部分の体積(L1)と、気泡を含まない部分の体積(L2)と、をそれぞれ測定して、以下の式(1)により算出することができる。
【0025】
【数1】
【0026】
本発明の第三実施形態に係る現像液の処理装置は、清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置を備える。
【0027】
本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る現像液の処理装置は、第1のタンクに貯留された清澄液の気泡率の低減のため、第1のタンク内の清澄液を脱泡して排出する、脱泡装置を備える。脱泡装置としては、例えば、加熱沸騰脱気、超音波脱気、真空減圧脱気若しくは遠心脱気による脱泡ポンプ又は中空糸膜脱気モジュールあるいはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
遠心分離により得られた清澄液の気泡率は、50%を超えることが多いが、上記脱泡装置による脱泡処理後の清澄液の気泡率は、10%以下にされることが好ましく、5%以下にされることがより好ましい。
【0029】
遠心分離により得られた清澄液は、本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る現像液の処理装置においては、第1のタンクに供給される。また、本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る現像液の処理装置においては、脱泡処理後の清澄液は、第2のタンクに供給され、貯留される。第2のタンクには、別途、未使用の現像液が供給される。つまり、第2のタンクにおいては、脱泡処理後の清澄液と、未使用の現像液と、が混合されて貯留されることとなる。第2のタンクに供給される未使用の現像液の供給量(流量等)は、本発明の処理装置全体の液流のバランスを考慮しながら、適宜決定すればよい。なお、「未使用の現像液」とは、上記脱泡処理後の清澄液とは由来の異なる現像液のことを区別していう便宜的な用語であり、厳密な意味での一切現像処理に用いられていない現像液に限られるものではない。すなわち、未使用の現像液は、本発明の処理装置とは別途の手段で精製がされた、使用済みの(再利用の)現像液等であっても構わない。
【0030】
本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置は、第2のタンクから溢れた清澄液を、第1のタンクの上方向から第1のタンクに供給する手段を備える。一方で、本発明の第二実施形態に係る現像液の処理装置は、第1のタンクから溢れた清澄液を、第2のタンクの上方向から第2のタンクに供給する手段を備える。
【0031】
第1のタンク又は第2のタンクから溢れた清澄液を、他方のタンクに供給する手段としては、例えば、第1のタンクと第2のタンクの間に配管を設けることが挙げられるが、省スペース化や処理装置構造の簡素化等の観点から、図2及び図3に示すように、第1のタンクと第2のタンクとを仕切り板を挟んで隣接させ、第1のタンク又は第2のタンクから溢れた清澄液を、その仕切り板を伝って流すことが好ましい。
【0032】
本発明の処理装置においては、上記脱泡装置による脱泡処理後と組み合わせて、第1のタンクに貯留された清澄液中の不溶成分が液面に上昇することを抑制するための流動を、第1のタンク内の清澄液に付与することが好ましい。
【0033】
より具体的には、第1のタンクに貯留された清澄液の上方向から、液体を供給することで、清澄液中の不溶成分が液面に上昇することを抑制する流動を生じさせることができる。第1のタンクの上方向から供給される液体は、本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置においては、図2に示されるように、第2のタンクから溢れた清澄液である。また、本発明の第二実施形態に係る現像液の処理装置においては、図3に示されるように、遠心分離後の清澄液である。
【0034】
上記第1のタンクに貯留された清澄液の液面と、上記第2のタンクに貯留された清澄液の液面と、の高低差は、5cm以上であることが好ましい。この場合において、上記第1のタンク及び第2のタンクのそれぞれの容量は、100〜300L程度であることが好ましい。両タンクの成長液の液面間の高低差が大きいほど、一方のタンクから溢れた清澄液が持つ位置エネルギーも大きくなる。この結果、これが他方のタンクに流入する際の運動エネルギーも大きくなり、上昇する不溶成分より微細化することが可能となる。
【0035】
第1のタンクに貯留された清澄液が巻き込んだ空気、すなわち気泡は、0.5mm程度の径のものが多い。この程度の大きさの気泡が液面に向けて上昇する速度は、およそ15cm/sであることから、第1のタンク又は第2のタンクの上方向から供給されるオーバーフロー流の鉛直方向の流速は、15cm/s以上が好ましく、20cm/s以上がより好ましい。なお、「上方向から」とは、鉛直方向上側のみではなく、斜め上方向も含む。ここでオーバーフロー流が斜め上方向から供給される場合においては、オーバーフロー流の鉛直方向の流速は、斜め方向の流速を速度ベクトルとして鉛直方向と水平方向とに分解することによって求めることができる。 また、より効果的にスカム発生を抑制するためには、脱泡装置による脱泡処理後の清澄液をオーバーフローさせる、本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置が好ましい。
【0036】
本発明の処理装置で処理される現像液の濃度は、定期的に補正されることが好ましい。現像液の濃度の測定装置としては、例えば、pH計、電気伝導度計又は自動滴定装置が挙げられる。現像液の濃度の調整方法としては、処理装置の系内に、所定量の未使用の高濃度現像液を追加する方法が挙げられる。
【0037】
本発明の現像液の処理装置は、感光性成分を含んだ有機成分からなる感光性ペーストを基板上に塗布し、露光し、現像して所望パターンを形成するパターン形成プロセス、より具体的には、感光性導電ペーストを用いた導電パターン形成プロセスにおける、現像処理工程において好適に用いることができる。中でも、スカムが特に発生し易い非焼成型の感光性導電ペーストを用いた導電パターン形成プロセスの現像処理工程において用いることが、その効果を顕著に奏することができるため、好ましい。
【0038】
現像処理の方法としては、例えば、アルカリ現像又は有機現像が挙げられる。
【0039】
アルカリ現像に用いる現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンの水溶液が挙げられるが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド若しくはγ−ブチロラクトン等の極性溶媒、メタノール、エタノール若しくはイソプロパノール等のアルコール類、乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン若しくはメチルイソブチルケトンなどのケトン類等又は界面活性剤が添加されていても構わない。また、有機現像に用いる現像液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド若しくはヘキサメチルホスホルトリアミド等の極性溶媒又はこれら極性溶媒とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール若しくはエチルカルビトール等とを組み合わせた混合溶液が挙げられる。
【0040】
非焼成型の感光性導電ペーストとしては、例えば、アルコキシ基を有する化合物(A)、感光性成分(B)、光重合開始剤(C)を混合してなる感光性樹脂中に、導電性フィラー(D)を分散させたものが挙げられる。
【0041】
アルコキシ基を有する化合物(A)としては、例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド又はN−n−ブトキシメチルアクリルアミドが挙げられる。
【0042】
感光性成分(B)とは、分子内に不飽和二重結合を一以上有するモノマー、オリゴマー又はポリマーのことをいうが、現像処理がアルカリ現像である場合には、アルカリ可溶性のポリマーを含むことが好ましい。
【0043】
アルカリ可溶性のポリマーとしては、例えば、アクリル系共重合体が挙げられる。アクリル系共重合体とは、共重合成分にメチルアクリレート、アクリル酸、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル又はn−ブチルアクリレート等のアクリル系モノマーを含む共重合体をいう。
【0044】
光重合開始剤(C)とは、紫外線などの短波長の光を吸収し、分解してラジカルを生じる化合物のことをいい、例えば、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]又は2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドが挙げられる。なお、光重合開始剤(C)と併せて、増感剤を添加して感度を向上させたり、反応に有効な波長範囲を拡大したりしても構わない。このような増感剤としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン又は2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノンが挙げられる。
【0045】
導電性フィラー(D)はAg、Au、Cu、Pt、Pb、Sn、Ni、Al、W、Mo、酸化ルテニウム、Cr、Ti又はインジウムを含むことが好ましく、コスト及び安定性の観点からAgを含むことがより好ましい。
【0046】
非焼成型の感光性導電ペーストは、エポキシ樹脂を含んでいても構わないが、塗布膜の保存安定性及び導電パターンの密着性が向上することから、エポキシ樹脂のエポキシ当量は200〜500g/当量であることが好ましい。エポキシ当量とは1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量をいい、JIS−K7236記載の電位差滴定法により求めることができる。
【0047】
エポキシ樹脂の添加量は、感光性成分(B)100重量部に対して1〜100重量部であることが好ましく、30〜80重量部であることがより好ましい。
【0048】
エポキシ当量が200〜500g/当量の感光性成分(B)としては、例えば、エチレングリコール変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又は臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下に本発明をその実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0050】
(非焼成型の感光性導電ペーストの作製)
100mLのクリーンボトルに、20gの感光性成分(B−1)、12gのN−n−ブトキシメチルアクリルアミド、4gの光重合開始剤(OXE−01;チバジャパン株式会社製)、0.6gの酸発生剤(SI−110;三新化学工業株式会社製)、10gのγ−ブチロラクトン(三菱ガス化学株式会社製)をそれぞれ入れ、あわとり練太郎(登録商標)(ARE−310;株式会社シンキー社製)で混合し、46.6gの感光性樹脂溶液A(固形分78.5重量%)を得た。8.0gの感光性樹脂溶液Aと、42.0gの銀粒子(平均粒子径2μm)とを、3本ローラー(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、50gの非焼成型の感光性導電ペーストAを得た。
【0051】
なお、感光性成分(B−1)は、エチルアクリレート(EA)/メタクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHMA)/スチレン(St)/アクリル酸(AA)の共重合体(共重合比率:20重量部/40重量部/20重量部/15重量部)にグリシジルメタクリレート(GMA)を5重量部付加反応させたものであり、以下のように合成した。
【0052】
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのエチルアクリレート、40gのメタクリル酸2−エチルヘキシル、スチレン20g、アクリル酸15g、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して重合反応を停止した。引き続き5gのグリシジルメタクリレート、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる混合物を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、感光性成分(B−1)を得た。得られた感光性成分(B−1)の酸価は103mgKOH/gであり、以下の式(2)により求めたガラス転移温度は21.7℃であった。
【0053】
【数2】
【0054】
ここで、Tgはポリマーのガラス転移温度(単位:K)、T1、T2、T3・・・はモノマー1、モノマー2、モノマー3・・・のホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)、W1、W2、W3・・・はモノマー1、モノマー2、モノマー3・・・の重量基準の共重合比率である。
【0055】
(塗布膜形成〜露光〜現像処理)
40gの非焼成型の感光性導電ペーストAを、スクリーン印刷でITO付きガラス基板上に塗布し、100℃の乾燥オーブンで、10分間プリベークした。次に、露光装置(PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用いて露光量70mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光をした。この全線露光後の塗布膜は、計1000枚作製した。その後、本発明の現像液処理装置を用いながら、1枚の全線露光後の塗布膜につき、1分間現像処理を行った。なお、現像処理と次回の現像処理との間には、それぞれ80秒の間隔を設けた。
【0056】
(現像処理後の導電パターン等の評価)
現像処理後の塗布膜を超純水でリンスした後、200℃の乾燥オーブンで1時間キュアし、膜厚10μmの導電パターンを得た。導電パターンのラインアンドスペース(以下、「L/S」)パターンを光学顕微鏡により確認した。また、導電パターンの比抵抗率及び屈曲性(試験後クラックや断線等の有無)を確認した。
【0057】
(実施例1)
図2に示される、本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置を構成し、現像液すなわち0.5%炭酸ナトリウム水溶液を処理した。
【0058】
具体的には、現像装置(1)として、シャワー管1本につき、ノズルを150mm間隔で下向きに設置した。現像装置(1)の下方を一定速度で移動する被現像対象物(上記の、全線露光後の塗布膜)に対し、ノズルから現像液を噴射した。現像処理に用いた使用後現像液は、これを集めてタンク(5b)に貯留した。タンク(5b)は、仕切り板によって二つに分割された、使用後現像液タンク(5)の一室である。使用後現像液タンク(5)としては、容量がそれぞれ150Lのタンク(5a)とタンク(5b)との二室に分割された、総容量が300Lのものを用いた。なお、使用後現像液タンク(5)内の現像液については、撹拌をしながらヒーターで調温した。
【0059】
タンク(5b)に貯留した使用後現像液は、供給ポンプY(7)及び送液手段Y(8)を経由して、流量(q1)65L/minでデカンタ方式の遠心分離機(6)に供給した。遠心分離機(6)は、SUS304を主たる構成素材とし、磨耗の激しいスクリューコンベアー先端にはWCチップを貼り付けて対磨耗処理を施したものである。
【0060】
遠心分離機(6)を用いた処理により、清澄液と残渣とが得られたが、清澄液については第1のタンク(10)に、残渣については固形分貯留タンク(9)に、それぞれ供給した。
【0061】
第1のタンク(10)に貯留した清澄液は、流量(q2)68L/minで脱泡装置すなわち脱泡ポンプ(12)(UPSA−1010S型;横田製作所製+真空ポンプ(最大排気速度300m/Hr、到達圧力17Torr)に供給し、脱泡後に排出された脱泡現像液は、送液手段Z(14)を経由して第2のタンク(13)に供給した。
【0062】
定常状態における、脱泡後に排出された脱泡現像液の気泡率は、5%であった。また、SS濃度(JIS K0102)を測定したところ、0.03g/Lとなった。
【0063】
第2のタンク(13)に貯留された清澄液は、供給ポンプZ(11)によって、上記流量(q1)と同じく65L/minでタンク(5a)に供給した。なお、タンク(5a)から溢れた清澄液がタンク(5b)の上方向から、オーバーフロー流として流入するようにした。
【0064】
タンク(5a)に貯留された清澄液を、供給ポンプX(3)及び送液手段X(4)を経由して、流量(Q)60L/minで再利用の現像液として現像装置(1)に供給した。
【0065】
上記のような構成としたところ、第2のタンク(13)から清澄液が溢れ、第1のタンク(10)の上方向から、オーバーフロー流として流入した。第1のタンク(10)に貯留された清澄液の液面と、第2のタンク(13)に貯留された清澄液の液面と、の高低差は、5cmであった。また、オーバーフロー流の鉛直方向の流速を測定したところ、15cm/sであった。
【0066】
なお、処理装置内の現像液は、自動滴定装置(電気化学システムズ1036D)で常時濃度管理をし、第1のタンク(10)において3L/minの流量で未使用の現像液と入れ替えをして、設定濃度(0.5%)が維持されるようにした。
【0067】
最終的に得られた導電パターンは、L/Sが20/20μmまでパターン間残渣及びパターン剥がれはなく、導電パターンの比抵抗率は7.3×10−5Ωcmであり、良好なパターン加工がされていた。また、屈曲性についても試験後クラックや断線等は生じておらず、良好であった。製品の不良率は0%であった。
【0068】
固形分貯留タンク(9)に貯留された残渣は、水分をほとんど含まず、3.9kgの銀粉末(回収率99%)を回収することができた。
【0069】
一連の作業を連日繰り返したところ、配管詰まり(供給ポンプX(3)の吐出圧力上限超過)は30日間生じず、その間の配管等のメンテナンスは一切不要であった。
【0070】
(実施例2)
実施例1と同様、図2に示される、本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置を構成し、現像液を処理した。ただし、流量(q2)を70L/minに変更した。
【0071】
その結果、第2のタンク(13)から清澄液が溢れ、第1のタンク(10)の上方向から、オーバーフロー流として流入した。第1のタンク(10)に貯留された清澄液の液面と、第2のタンク(13)に貯留された清澄液の液面と、の高低差は、7cmであった。また、オーバーフロー流の鉛直方向の流速を測定したところ、20cm/sであった。
【0072】
定常状態における、脱泡後に排出された脱泡現像液の気泡率は、3%であった。また、SS濃度は0.01g/Lとなった。
【0073】
最終的に得られた導電パターンは、L/Sが20/20μmまでパターン間残渣及びパターン剥がれはなく、導電パターンの比抵抗率は7.3×10−5Ωcmであり、良好なパターン加工がされていた。また、屈曲性についても試験後クラックや断線等は生じておらず、良好であった。製品の不良率は0%であった。
【0074】
固形分貯留タンク(9)に貯留された残渣は、水分をほとんど含まず、3.9kgの銀粉末(回収率99%)を回収することができた。
【0075】
一連の作業を連日繰り返したところ、配管詰まりは180日間生じず、その間の配管等のメンテナンスは一切不要であった。
【0076】
(実施例3)
図3に示される、本発明の第二実施形態に係る現像液の処理装置を構成し、実施例1及び2と同様に現像液を処理した。ただし、基板は膜厚50μmのポリイミドフィルムをガラス基板に貼り付けたものを用い、流量(q2)は55L/minに変更した。
【0077】
上記のような変更をしたところ、第1のタンク(10)から清澄液が溢れ、第2のタンク(13)の上方向から、オーバーフロー流として流入した。第1のタンク(10)に貯留された清澄液の液面と、第2のタンク(13)に貯留された清澄液の液面と、の高低差は、7cmであった。また、オーバーフロー流の鉛直方向の流速を測定したところ、20cm/sであった。
【0078】
定常状態における、脱泡後に排出された脱泡現像液の気泡率は、10%であった。また、SS濃度は0.05g/Lとなった。
【0079】
最終的に得られた導電パターンは、L/Sが20/20μmまでパターン間残渣及びパターン剥がれはなく、導電パターンの比抵抗率は7.3×10−5Ωcmであり、良好なパターン加工がされていた。また、屈曲性についても試験後クラックや断線等は生じておらず、良好であった。製品の不良率は0%であった。
【0080】
固形分貯留タンク(9)に貯留された残渣は、水分をほとんど含まず、3.9kgの銀粉末(回収率99%)を回収することができた。
【0081】
一連の作業を連日繰り返したところ、配管詰まりは14日間生じず、その間の配管等のメンテナンスは一切不要であった。
【0082】
比較例2
図4に示される現像液の処理装置を構成した。第1のタンク(10)に統一をし、さらに脱泡ポンプ(12)及び送液手段Z(14)を設けた構成とした。流量(q1)は30L/min、流量(q2)は55L/minに変更した。定常状態における、脱泡後に排出された脱泡現像液の気泡率は、10%であった。また、SS濃度は0.1g/Lとなった。
【0083】
最終的に得られた導電パターンは、L/Sが20/20μmまでパターン間残渣及びパターン剥がれはなく、導電パターンの比抵抗率は7.3×10−5Ωcmであり、良好なパターン加工がされていた。また、屈曲性についても試験後クラックや断線等は生じておらず、良好であった。製品の不良率は0%であった。
【0084】
固形分貯留タンク(9)に貯留された残渣は、水分をほとんど含まず、3kgの銀粉末(回収率76%)を回収することができた。
【0085】
一連の作業を連日繰り返したところ、配管詰まりは7日間生じず、その間の配管等のメンテナンスは一切不要であった。 (比較例)
図1に示される現像液の処理装置を構成した。すなわち、図2及び図3における第1のタンクと第2のタンクとの区別をなくして、第1のタンク(10)に統一をし、さらに脱泡ポンプ(12)及び送液手段Z(14)を設けない構成とした。流量(q1)は、30L/minとした。
【0086】
脱泡装置を有さず、遠心分離の清澄液のオーバーフロー流も生じない態様の処理装置では、計1000枚の全線露光後の塗布膜の内、約半数を現像処理したところで配管詰まりが生じ、配管等のメンテナンスを余儀なくされた。
【0087】
現像処理後の塗布膜
【符号の説明】
【0088】
1 : 現像装置
2 : オーバーフロー流
3 : 供給ポンプX
4 : 送液手段X
5 : 使用後現像液タンク
5a,5b : タンク(使用後現像液タンクの一室)
6 : 遠心分離機
7 : 供給ポンプY
8 : 送液手段Y
9 : 固形分貯留タンク
10 : 第1のタンク
11 : 供給ポンプZ
12 : 脱泡ポンプ
13 : 第2のタンク
14 : 送液手段Z
15 : 未使用の現像液
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の現像液の処理装置及び処理方法は、非焼成型の感光性導電ペーストを用いた導電パターン形成プロセスの現像処理工程において、好適に用いることができる。
図1
図2
図3
図4