【実施例】
【0049】
以下に本発明をその実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0050】
(非焼成型の感光性導電ペーストの作製)
100mLのクリーンボトルに、20gの感光性成分(B−1)、12gのN−n−ブトキシメチルアクリルアミド、4gの光重合開始剤(OXE−01;チバジャパン株式会社製)、0.6gの酸発生剤(SI−110;三新化学工業株式会社製)、10gのγ−ブチロラクトン(三菱ガス化学株式会社製)をそれぞれ入れ、あわとり練太郎(登録商標)(ARE−310;株式会社シンキー社製)で混合し、46.6gの感光性樹脂溶液A(固形分78.5重量%)を得た。8.0gの感光性樹脂溶液Aと、42.0gの銀粒子(平均粒子径2μm)とを、3本ローラー(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、50gの非焼成型の感光性導電ペーストAを得た。
【0051】
なお、感光性成分(B−1)は、エチルアクリレート(EA)/メタクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHMA)/スチレン(St)/アクリル酸(AA)の共重合体(共重合比率:20重量部/40重量部/20重量部/15重量部)にグリシジルメタクリレート(GMA)を5重量部付加反応させたものであり、以下のように合成した。
【0052】
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのエチルアクリレート、40gのメタクリル酸2−エチルヘキシル、スチレン20g、アクリル酸15g、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して重合反応を停止した。引き続き5gのグリシジルメタクリレート、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる混合物を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、感光性成分(B−1)を得た。得られた感光性成分(B−1)の酸価は103mgKOH/gであり、以下の式(2)により求めたガラス転移温度は21.7℃であった。
【0053】
【数2】
【0054】
ここで、Tgはポリマーのガラス転移温度(単位:K)、T1、T2、T3・・・はモノマー1、モノマー2、モノマー3・・・のホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)、W1、W2、W3・・・はモノマー1、モノマー2、モノマー3・・・の重量基準の共重合比率である。
【0055】
(塗布膜形成〜露光〜現像処理)
40gの非焼成型の感光性導電ペーストAを、スクリーン印刷でITO付きガラス基板上に塗布し、100℃の乾燥オーブンで、10分間プリベークした。次に、露光装置(PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用いて露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光をした。この全線露光後の塗布膜は、計1000枚作製した。その後、本発明の現像液処理装置を用いながら、1枚の全線露光後の塗布膜につき、1分間現像処理を行った。なお、現像処理と次回の現像処理との間には、それぞれ80秒の間隔を設けた。
【0056】
(現像処理後の導電パターン等の評価)
現像処理後の塗布膜を超純水でリンスした後、200℃の乾燥オーブンで1時間キュアし、膜厚10μmの導電パターンを得た。導電パターンのラインアンドスペース(以下、「L/S」)パターンを光学顕微鏡により確認した。また、導電パターンの比抵抗率及び屈曲性(試験後クラックや断線等の有無)を確認した。
【0057】
(実施例1)
図2に示される、本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置を構成し、現像液すなわち0.5%炭酸ナトリウム水溶液を処理した。
【0058】
具体的には、現像装置(1)として、シャワー管1本につき、ノズルを150mm間隔で下向きに設置した。現像装置(1)の下方を一定速度で移動する被現像対象物(上記の、全線露光後の塗布膜)に対し、ノズルから現像液を噴射した。現像処理に用いた使用後現像液は、これを集めてタンク(5b)に貯留した。タンク(5b)は、仕切り板によって二つに分割された、使用後現像液タンク(5)の一室である。使用後現像液タンク(5)としては、容量がそれぞれ150Lのタンク(5a)とタンク(5b)との二室に分割された、総容量が300Lのものを用いた。なお、使用後現像液タンク(5)内の現像液については、撹拌をしながらヒーターで調温した。
【0059】
タンク(5b)に貯留した使用後現像液は、供給ポンプY(7)及び送液手段Y(8)を経由して、流量(q1)65L/minでデカンタ方式の遠心分離機(6)に供給した。遠心分離機(6)は、SUS304を主たる構成素材とし、磨耗の激しいスクリューコンベアー先端にはWCチップを貼り付けて対磨耗処理を施したものである。
【0060】
遠心分離機(6)を用いた処理により、清澄液と残渣とが得られたが、清澄液については第1のタンク(10)に、残渣については固形分貯留タンク(9)に、それぞれ供給した。
【0061】
第1のタンク(10)に貯留した清澄液は、流量(q2)68L/minで脱泡装置すなわち脱泡ポンプ(12)(UPSA−1010S型;横田製作所製+真空ポンプ(最大排気速度300m
3/Hr、到達圧力17Torr)に供給し、脱泡後に排出された脱泡現像液は、送液手段Z(14)を経由して第2のタンク(13)に供給した。
【0062】
定常状態における、脱泡後に排出された脱泡現像液の気泡率は、5%であった。また、SS濃度(JIS K0102)を測定したところ、0.03g/Lとなった。
【0063】
第2のタンク(13)に貯留された清澄液は、供給ポンプZ(11)によって、上記流量(q1)と同じく65L/minでタンク(5a)に供給した。なお、タンク(5a)から溢れた清澄液がタンク(5b)の上方向から、オーバーフロー流として流入するようにした。
【0064】
タンク(5a)に貯留された清澄液を、供給ポンプX(3)及び送液手段X(4)を経由して、流量(Q)60L/minで再利用の現像液として現像装置(1)に供給した。
【0065】
上記のような構成としたところ、第2のタンク(13)から清澄液が溢れ、第1のタンク(10)の上方向から、オーバーフロー流として流入した。第1のタンク(10)に貯留された清澄液の液面と、第2のタンク(13)に貯留された清澄液の液面と、の高低差は、5cmであった。また、オーバーフロー流の鉛直方向の流速を測定したところ、15cm/sであった。
【0066】
なお、処理装置内の現像液は、自動滴定装置(電気化学システムズ1036D)で常時濃度管理をし、第1のタンク(10)において3L/minの流量で未使用の現像液と入れ替えをして、設定濃度(0.5%)が維持されるようにした。
【0067】
最終的に得られた導電パターンは、L/Sが20/20μmまでパターン間残渣及びパターン剥がれはなく、導電パターンの比抵抗率は7.3×10
−5Ωcmであり、良好なパターン加工がされていた。また、屈曲性についても試験後クラックや断線等は生じておらず、良好であった。製品の不良率は0%であった。
【0068】
固形分貯留タンク(9)に貯留された残渣は、水分をほとんど含まず、3.9kgの銀粉末(回収率99%)を回収することができた。
【0069】
一連の作業を連日繰り返したところ、配管詰まり(供給ポンプX(3)の吐出圧力上限超過)は30日間生じず、その間の配管等のメンテナンスは一切不要であった。
【0070】
(実施例2)
実施例1と同様、
図2に示される、本発明の第一実施形態に係る現像液の処理装置を構成し、現像液を処理した。ただし、流量(q2)を70L/minに変更した。
【0071】
その結果、第2のタンク(13)から清澄液が溢れ、第1のタンク(10)の上方向から、オーバーフロー流として流入した。第1のタンク(10)に貯留された清澄液の液面と、第2のタンク(13)に貯留された清澄液の液面と、の高低差は、7cmであった。また、オーバーフロー流の鉛直方向の流速を測定したところ、20cm/sであった。
【0072】
定常状態における、脱泡後に排出された脱泡現像液の気泡率は、3%であった。また、SS濃度は0.01g/Lとなった。
【0073】
最終的に得られた導電パターンは、L/Sが20/20μmまでパターン間残渣及びパターン剥がれはなく、導電パターンの比抵抗率は7.3×10
−5Ωcmであり、良好なパターン加工がされていた。また、屈曲性についても試験後クラックや断線等は生じておらず、良好であった。製品の不良率は0%であった。
【0074】
固形分貯留タンク(9)に貯留された残渣は、水分をほとんど含まず、3.9kgの銀粉末(回収率99%)を回収することができた。
【0075】
一連の作業を連日繰り返したところ、配管詰まりは180日間生じず、その間の配管等のメンテナンスは一切不要であった。
【0076】
(実施例3)
図3に示される、本発明の第二実施形態に係る現像液の処理装置を構成し、実施例1及び2と同様に現像液を処理した。ただし、基板は膜厚50μmのポリイミドフィルムをガラス基板に貼り付けたものを用い、流量(q2)は55L/minに変更した。
【0077】
上記のような変更をしたところ、第1のタンク(10)から清澄液が溢れ、第2のタンク(13)の上方向から、オーバーフロー流として流入した。第1のタンク(10)に貯留された清澄液の液面と、第2のタンク(13)に貯留された清澄液の液面と、の高低差は、7cmであった。また、オーバーフロー流の鉛直方向の流速を測定したところ、20cm/sであった。
【0078】
定常状態における、脱泡後に排出された脱泡現像液の気泡率は、10%であった。また、SS濃度は0.05g/Lとなった。
【0079】
最終的に得られた導電パターンは、L/Sが20/20μmまでパターン間残渣及びパターン剥がれはなく、導電パターンの比抵抗率は7.3×10
−5Ωcmであり、良好なパターン加工がされていた。また、屈曲性についても試験後クラックや断線等は生じておらず、良好であった。製品の不良率は0%であった。
【0080】
固形分貯留タンク(9)に貯留された残渣は、水分をほとんど含まず、3.9kgの銀粉末(回収率99%)を回収することができた。
【0081】
一連の作業を連日繰り返したところ、配管詰まりは14日間生じず、その間の配管等のメンテナンスは一切不要であった。
【0082】
(
比較例2)
図4に示される現像液の処理装置を構成した。第1のタンク(10)に統一をし、さらに脱泡ポンプ(12)及び送液手段Z(14)を設けた構成とした。流量(q1)は30L/min、流量(q2)は55L/minに変更した。定常状態における、脱泡後に排出された脱泡現像液の気泡率は、10%であった。また、SS濃度は0.1g/Lとなった。
【0083】
最終的に得られた導電パターンは、L/Sが20/20μmまでパターン間残渣及びパターン剥がれはなく、導電パターンの比抵抗率は7.3×10
−5Ωcmであり、良好なパターン加工がされていた。また、屈曲性についても試験後クラックや断線等は生じておらず、良好であった。製品の不良率は0%であった。
【0084】
固形分貯留タンク(9)に貯留された残渣は、水分をほとんど含まず、3kgの銀粉末(回収率76%)を回収することができた。
【0085】
一連の作業を連日繰り返したところ、配管詰まりは7日間生じず、その間の配管等のメンテナンスは一切不要であった。 (比較例)
図1に示される現像液の処理装置を構成した。すなわち、
図2及び
図3における第1のタンクと第2のタンクとの区別をなくして、第1のタンク(10)に統一をし、さらに脱泡ポンプ(12)及び送液手段Z(14)を設けない構成とした。流量(q1)は、30L/minとした。
【0086】
脱泡装置を有さず、遠心分離の清澄液のオーバーフロー流も生じない態様の処理装置では、計1000枚の全線露光後の塗布膜の内、約半数を現像処理したところで配管詰まりが生じ、配管等のメンテナンスを余儀なくされた。
【0087】
現像処理後の塗布膜