【実施例】
【0094】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例で用いた材料、電極基材、およびガス拡散電極基材の作製方法、燃料電池の電池性能評価方法を次に示した。
【0095】
<電極基材の作製>
・目付25g/m
2の電極基材の作製
東レ(株)製ポリアクリルニトリル系炭素繊維“トレカ(登録商標)”T300(平均炭素繊維径:7μm)を平均長さ12mmにカットし、水中に分散させて湿式抄紙法により連続的に抄紙した。さらに、バインダーとしてポリビニルアルコールの10質量%水溶液を当該抄紙に塗布し、乾燥させ、炭素繊維目付15.5g/m2の抄紙体を作製した。ポリビニルアルコールの塗布量は、抄紙体100質量部に対して、22質量部であった。
【0096】
熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂を1:1の重量比で混合した樹脂、炭素系フィラーとして鱗片状黒鉛(平均粒径5μm)、溶媒としてメタノールを用い、熱硬化性樹脂/炭素系フィラー/溶媒=10質量部/5質量部/85質量部の配合比でこれらを混合し、超音波分散装置を用いて1分間撹拌を行い、均一に分散した樹脂組成物を得た。
【0097】
15cm×12.5cmにカットした抄紙体をアルミバットに満たした樹脂組成物に浸漬し、炭素繊維100質量部に対して、樹脂成分(熱硬化性樹脂+炭素系フィラー)が130質量部となるように含浸させた後、100℃で5分間加熱して乾燥させ、予備含浸体を作製した。次に、平板プレスで加圧しながら、180℃で5分間熱処理を行った。なお、加圧の際に平板プレスにスペーサーを配置して、熱処理後の予備含浸体の厚さが130μmになるように上下プレス面板の間隔を調整した。
【0098】
予備含浸体を熱処理した基材を、加熱炉において、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2400℃の加熱炉に導入し、炭素繊維焼成体を得た。
【0099】
炭素繊維焼成体95質量部に対し、5質量部のPTFE樹脂を撥水加工方法Aまたは撥水加工方法Bにより付与し、目付25g/m
2、厚さ100μm電極基材を作製した。
【0100】
撥水加工方法A:炭素繊維焼成体をPTFE樹脂の水分散液(“ポリフロン”(登録商標)PTFEディスパージョンD−1E(ダイキン工業(株)製)を炭素繊維焼成体95質量部に対し、5質量部のPTFE樹脂を付与するのに適切な濃度に希釈して使用)に浸漬することで、炭素繊維焼成体にPTFE樹脂を塗布、含浸し、温度が100℃の乾燥機炉内で5分間加熱して乾燥した。乾燥する際は、炭素繊維焼成体を垂直に配置し、PTFE樹脂の面内方向の分布が偏らないよう、1分毎に上下方向を変更した。
【0101】
撥水加工方法B:炭素繊維焼成体をPTFE樹脂の分散液(“ポリフロン”(登録商標)PTFEディスパージョンD−1E(ダイキン工業(株)製)を炭素繊維焼成体95質量部に対し、5質量部のPTFE樹脂を付与するのに適切な濃度に希釈して使用)に浸漬することで、炭素繊維焼成体にPTFE樹脂を塗布、含浸し、ハードクロムメッキを施した直径100mmのステンレス製ロールに片面を接触させて、片面のPTFE樹脂をふき取った後、温度が100℃の乾燥機炉内で5分間加熱して乾燥した。乾燥する際は、炭素繊維焼成体のPTFE樹脂をふき取った面が下になるように水平に配置した。
【0102】
・目付20g/m
2の電極基材の作製
炭素繊維目付を15.5g/m
2とした以外は、上記した目付25g/m
2の電極基材の作製に記載した方法に従って、目付20g/m
2、厚さ90μmの電極基材を作製した。なお、撥水加工は撥水加工方法Bに記載した方法に従った。
【0103】
・目付33g/m
2の電極基材の作製
樹脂成分を210質量部とした以外は、上記した目付25g/m
2の電極基材の作製に記載した方法に従って、目付33g/m
2、厚さ100μmの電極基材を作製した。なお、撥水加工は撥水加工方法Aに記載した方法に従った。
【0104】
・目付37g/m
2の電極基材の作製
樹脂成分を250質量部とした以外は、上記した目付25g/m
2の電極基材の作製に記載した方法に従って、目付37g/m
2、厚さ100μmの電極基材を作製した。なお、撥水加工は撥水加工方法Aに記載した方法に従った。
【0105】
・目付44g/m
2の電極基材の作製
炭素繊維目付を20g/m
2、樹脂成分を210質量部に変えた以外は、上記した目付25g/m
2の電極基材の作製に記載した方法に従って、目付44g/m
2、厚さ110μmの電極基材を作製した。なお、撥水加工は撥水加工方法Aに記載した方法に従った。
【0106】
・目付84g/m
2の電極基材の作製
炭素繊維目付を20g/m
2、樹脂成分を190質量部に変えて作製した予備含浸体2枚を積層し、平板プレスで加圧しながら熱処理を行った以外は、上記した目付25g/m
2の電極基材の作製に記載した方法に従って、目付84g/m
2、厚さ190μmの電極基材を作製した。なお、撥水加工は撥水加工方法Aに記載した方法に従った。
【0107】
<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>
<材料>
C:アスペクト比が30〜5000の範囲内である線状カーボン
・気相成長炭素繊維“VGCF”(登録商標)(昭和電工(株)製、平均直径:0.15μm、平均繊維長:8μm、アスペクト比:50、線状カーボンの一種)
・気相成長炭素繊維“VGCF−S”(登録商標)(昭和電工(株)製、平均直径:0.10μm、平均繊維長:11μm、アスペクト比:110、線状カーボンの一種)
・多層カーボンナノチューブ(チープ チューブス社製、平均直径:0.015μm、平均繊維長:20μm、アスペクト比:1300、線状カーボンの一種)
・薄片グラファイト“xGnP”(登録商標)グレードM(XG サイエンス社製、平均粒子径:5μm、平均厚さ:0.006μm、アスペクト比:830)
D:アスペクト比が30〜5000の範囲内に含まれない炭素系フィラー
・アセチレンブラック“デンカブラック”(登録商標)(電気化学工業(株)製、平均粒子径:0.035μm、アスペクト比:1、カーボンブラックの一種)
・ファーネスブラック“バルカン”(登録商標)XC72C(キャボット社製、平均粒子径:0.030μm、アスペクト比:1、カーボンブラックの一種)
F:撥水材
・PTFE樹脂(PTFE樹脂を60質量部含む水分散液である“ポリフロン”(登録商標)PTFEディスパージョンD−1E(ダイキン工業(株)製)を使用)
G:その他
・界面活性剤“TRITON”(登録商標)X−100(ナカライテスク(株)製)
(触媒層側)
スリットダイコーターを用いて電極基材に面状のマイクロポーラス層を形成した。ここで用いたカーボン塗液には、炭素系フィラー、撥水材、界面活性剤、精製水を用い、表1〜4に示す、配合量を質量部で記載したカーボン塗液の組成となるように調整したものを用いた。なお、表1〜4に示すPTFE樹脂の配合量は、PTFE樹脂の水分散液の配合量ではなく、PTFE樹脂自体の配合量を表す。ダイコーターを用いて電極基材にカーボン塗液を塗工後、120℃で10分、380℃で10分加熱し、マイクロポーラス層を形成した。撥水加工方法Bの電極基材を用いる場合は、撥水材分布の指標が大きい側の面にマイクロポーラス層を形成した。セパレータ側にマイクロポーラス部を配置する場合は、セパレータ側のマイクロポーラス部を形成して乾燥した後に触媒層側のマイクロポーラス層を形成した。
【0108】
(セパレータ側)
線幅0.5mm、線間隔2mmの直線が直交する格子状のパターン部分以外を樹脂でマスクしたスクリーン印刷版を用いて電極基材のセパレータ側に面積率36%の格子状のパターン様のマイクロポーラス部を形成した。ここで用いたカーボン塗液には、炭素系フィラーとして薄片グラファイトとアセチレンブラック、撥水材、界面活性剤、精製水を用い、薄片グラファイト/アセチレンブラック/撥水材/界面活性剤/精製水=5.8質量部/1.9質量部/2.5質量部/14質量部/75.8質量部となるように調整したものを用いた。スクリーン印刷板を用いて電極基材にカーボン塗液を塗工後、120℃で10分加熱し、マイクロポーラス部を形成した。
【0109】
<固体高分子型燃料電池の発電性能評価>
白金担持炭素(田中貴金属工業(株)製、白金担持量:50質量%)1.00g、精製水 1.00g、“Nafion”(登録商標)溶液(Aldrich社製 “Nafion”(登録商標)5.0質量%)8.00g、イソプロピルアルコール(ナカライテスク社製)18.00gを順に加えることにより、触媒液を作成した。
【0110】
次に7cm×7cmにカットした “ナフロン”(登録商標)PTFEテープ“TOMBO”(登録商標)No.9001(ニチアス(株)製)に、触媒液をスプレーで塗布し、室温で乾燥させ、白金量が0.3mg/cm
2の触媒層付きPTFEシートを作製した。続いて、10cm×10cmにカットした固体高分子電解質膜“Nafion”(登録商標)NRE−211CS(DuPont社製)を2枚の触媒層付きPTFEシートで挟み、平板プレスで5MPaに加圧しながら130℃で5分間プレスし、固体高分子電解質膜に触媒層を転写した。プレス後、PTFEシートを剥がし、触媒層付き固体高分子電解質膜を作製した。
【0111】
次に、触媒層付き固体高分子電解質膜を、7cm×7cmにカットした2枚のガス拡散電極基材で挟み、平板プレスで3MPaに加圧しながら130℃で5分間プレスし、膜電極接合体を作製した。なお、ガス拡散電極基材はマイクロポーラス層を有する面が触媒層側と接するように配置した。
【0112】
得られた膜電極接合体を燃料電池評価用単セルに組み込み、電流密度を変化させた際の電圧を測定した。ここで、セパレータとしては、溝幅1.5mm、溝深さ1.0mm、リブ幅1.1mmの一本流路のサーペンタイン型セパレータを用いた。また、アノード側には無加圧の水素を、カソード側には無加圧の空気を供給し、評価を行った。なお、水素、空気はともに70℃に設定した加湿ポットにより加湿を行った。また、水素、空気中の酸素の利用率はそれぞれ80%、67%とした。
【0113】
まず、運転温度を65℃、加湿温度70℃、電流密度を2.2A/cm
2にセットした場合の、出力電圧を測定し、耐フラッディング性(低温性能)の指標として用いた。
【0114】
次に、加湿温度70℃、電流密度を1.2A/cm
2にセットし、運転温度を80℃から、5分間保持、5分間かけて1℃上昇を繰り返しながら出力電圧を測定し、発電可能な限界温度を求め、耐ドライアップ性(高温性能)の指標として用いた。
【0115】
<電気抵抗の測定>
ガス拡散電極基材の電気抵抗は、2.23mm×2.23mmにカットしたガス拡散電極基材を2枚の金メッキ板の間に挟んで1.0MPaの一様な面圧をかけたとき、1.0Aの電流を流して、電気抵抗を測定して面積をかけて求めた。面圧が高ければガス拡散電極基材の構造が破壊されて抵抗値が正確に測定できないので、比較的低い面圧で電気抵抗を測定し比較を行うのがよい。燃料電池用のガス拡散電極基材として用いるとき、電気抵抗は、9.0mΩ・cm
2以下になることが好ましく、7.5mΩ・cm
2以下がより好ましい。
【0116】
<面直ガス透過抵抗の測定>
ガス拡散電極基材の面直ガス透過抵抗は、ガス拡散電極基材から切り出した直径4.7cmの円形のサンプルを用い、マイクロポーラス側の面からその反対面に空気を58cc/min/cm
2の流速で透過させたときの、マイクロポーラス側の面とその反対面の差圧を差圧計で測定し、面直ガス透過抵抗とした。
【0117】
<撥水材分布の指標の測定>
電極基材の撥水材分布の指標は以下のように求めた。まず、イオンビーム断面加工装置により作製した電極基材の厚さ方向の断面観察用サンプルを用い、加速電圧10kV、拡大倍率400倍の条件で走査型電子顕微鏡(SEM)−EDX測定を行い、厚さ方向の断面の炭素、およびフッ素の元素マッピング像を得た。次に、得られた厚さ方向の断面の元素マッピング像を電極基材の片側の面とその反対側の面の中間で2分割し、マイクロポーラス層が配置される側(マイクロポーラス層側)とその反対側(セパレータ側)の各々において、炭素のシグナル強度の平均値に対するフッ素のシグナル強度の平均値の比率(F/C比)を算出し、さらに、セパレータ側のF/C比に対するマイクロポーラス層側のF/C比の比率(マイクロポーラス層側/セパレータ側)を算出し、撥水剤分布の指標とした。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、エネルギー分散型X線分析装置としては、(株)堀場製作所EX-220SEを用いた。ガス拡散電極基材についても上述する方法により撥水分布の指標を求めた。ガス拡散電極基材の断面における電極基材の部分の識別は、加速電圧10kV、拡大倍率400倍の条件で撮影した走査型電子顕微鏡像を用いて行った。
【0118】
(実施例1)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表1に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維を含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗8.6mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに良好であった。
【0119】
(実施例2)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表1に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗8.5mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに良好であった。
【0120】
(実施例3)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表1に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は7.5mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性と導電性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。カーボン塗液を塗布する前の電極基材の断面の撥水材分布を測定したところ、撥水材分布の指標は1であった。カーボン塗液を塗布、乾燥した後にガス拡散電極基材の断面の撥水材分布を測定したところ、撥水材分布の指標は1.2であった。
【0121】
(実施例4)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表1に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は9.0mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに良好であった。
【0122】
(実施例5)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表1に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は7.4mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性と導電性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
【0123】
(実施例6)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表1に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の多層カーボンナノチューブ、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.41V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は7.3mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性と導電性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
【0124】
(実施例7)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表1に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、ファーネスブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は7.4mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性と導電性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
【0125】
(実施例8)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表2に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は8.9mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに良好であった。
【0126】
(実施例9)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表2に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.42V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度93℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は6.4mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに極めて良好であった。
【0127】
(実施例10)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表2に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は6.2mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性が良好、導電性が極めて良好であった。
【0128】
(実施例11)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表2に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は6.4mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性が良好、導電性が極めて良好であった。
【0129】
(実施例12)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表2に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有し、セパレータ側に面積率36%のマイクロポーラス部を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度93℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は6.4mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに極めて良好であった。
【0130】
(実施例13)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表2に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有し、セパレータ側に面積率36%のマイクロポーラス部を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度93℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は5.6mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性が良好であり、耐ドライアップ性、導電性が極めて良好であった。
【0131】
(実施例14)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表2に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有し、セパレータ側に面積率36%のマイクロポーラス部を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.42V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度93℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は5.3mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに極めて良好であった。
【0132】
(実施例15)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表3に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.41V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は7.4mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性と導電性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
【0133】
(実施例16)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表3に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度89℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は9.1mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに良好であった。
【0134】
(実施例17)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表3に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度89℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は5.8mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性が良好、導電性が極めて良好であった。
【0135】
(実施例18)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表3に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維を含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は8.2mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性が極めて良好、耐ドライアップ性、導電性がともに良好であった。カーボン塗液を塗布する前の電極基材の断面の撥水材分布を測定したところ、撥水材分布の指標は5.0であった。カーボン塗液を塗布、乾燥した後にガス拡散電極基材の断面の撥水材分布を測定したところ、撥水材分布の指標は5.5であった。
【0136】
(実施例19)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表3に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.41V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度93℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は7.1mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに極めて良好であった。カーボン塗液を塗布する前の電極基材の断面の撥水材分布を測定したところ、撥水材分布の指標は5.0であった。カーボン塗液を塗布、乾燥した後にガス拡散電極基材の断面の撥水材分布を測定したところ、撥水材分布の指標は5.5であった。
【0137】
(実施例20)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表3に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有し、セパレータ側に面積率36%のマイクロポーラス部を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.41V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度93℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は6.0mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、導電性がともに極めて良好であった。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
(比較例1)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表4に示す、電極基材の触媒層側にアセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.30V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度85℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は7.5mΩ・cm
2であり、導電性は極めて良好であるが、耐フラッディング性、耐ドライアップ性が不十分であった。
【0142】
(比較例2)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表4に示す、電極基材の触媒層側にアセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.35V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度88℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は9.2mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性は良好、耐ドライアップ性、導電性がともに不十分であった。
【0143】
(比較例3)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表4に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.33V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度86℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は6.3mΩ・cm
2であり、導電性は極めて良好であるが、耐フラッディング性はやや低下し、耐ドライアップ性は不十分であった。
【0144】
(比較例4)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表4に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維、アセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.37V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度87℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は5.8mΩ・cm
2であり、導電性は極めて良好、耐フラッディング性は良好、耐ドライアップ性は不十分であった。
【0145】
(比較例5)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表4に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維を含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.32V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度86℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は7.4mΩ・cm
2であり、導電性は極めて良好であるが、耐フラッディング性はやや低下し、耐ドライアップ性は不十分であった。
【0146】
(比較例6)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表4に示す、電極基材の触媒層側に特定アスペクト比の気相成長炭素繊維を含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.36V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度86℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は6.9mΩ・cm
2であり、導電性は極めて良好であるが、耐フラッディング性は良好、耐ドライアップ性は不十分であった。
【0147】
(比較例7)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、表4に示す、電極基材の触媒層側にアセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、出力電圧0.35V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm
2)、限界温度88℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm
2)、電気抵抗は9.2mΩ・cm
2であり、耐フラッディング性は良好、耐ドライアップ性、導電性がともに不十分であった。
【0148】
(比較例8)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層、マイクロポーラス部の形成>に記載した方法に従って、炭素繊維目付を7.8g/m
2とした以外は、上記した目付25g/m
2の電極基材の作製に記載した方法に従って、目付10g/m
2の電極基材、表4に示す、電極基材の触媒層側にアセチレンブラックを含む面状のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材の作製を試みたが、抄紙工程で基材が破れ、炭素繊維抄紙体を得ることができなかった。
【0149】
【表4】