特許第6206192号(P6206192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

特許6206192ロールクリーニング装置、及びガラス物品製造装置
<>
  • 特許6206192-ロールクリーニング装置、及びガラス物品製造装置 図000002
  • 特許6206192-ロールクリーニング装置、及びガラス物品製造装置 図000003
  • 特許6206192-ロールクリーニング装置、及びガラス物品製造装置 図000004
  • 特許6206192-ロールクリーニング装置、及びガラス物品製造装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206192
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ロールクリーニング装置、及びガラス物品製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/18 20060101AFI20170925BHJP
   C03B 18/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C03B35/18
   C03B18/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-1409(P2014-1409)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-129067(P2015-129067A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100144750
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼野 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100165685
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信治
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佑輔
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許発明第102008040559(DE,B3)
【文献】 特開2011−157250(JP,A)
【文献】 特開2011−132099(JP,A)
【文献】 特開2009−046366(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102503086(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 35/14 − 35/18
C03B 18/00 − 18/22
C03B 13/00 − 13/18
C03B 25/00 − 25/12
B08B 1/00 − 1/04
B08B 13/00
B65G 13/00 − 13/12
B65G 39/00 − 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス成形炉の内部に配置され、成形されたガラス物品を搬送する搬送ロールに付着する異物を除去するロールクリーニング装置であって、
前記ガラス成形炉の内部に設けられ、前記搬送ロールの表面に当接して前記異物を除去する除去部材と、
前記除去部材を前記搬送ロールに向けて付勢する弾性部材と、
前記除去部材と前記弾性部材とを連結するロッド部材と、
を備え、
前記弾性部材は、前記ガラス成形炉の外部に設けられ、
前記ロッド部材は、前記ガラス成形炉の炉壁を貫通して設けられ
前記弾性部材は、前記ガラス成形炉の炉壁の外部表面に固定された通気性を有する保護ケースに覆われているロールクリーニング装置。
【請求項2】
前記弾性部材を支持し、且つ前記除去部材の付勢方向に位置を調整可能に構成されたベース部材を備え、
前記弾性部材は、前記除去部材の付勢方向に一方端部が前記ロッド部材と接続され、他方端部が前記ベース部材と連結される請求項1に記載のロールクリーニング装置。
【請求項3】
前記ガラス成形炉は、溶融金属の上でガラスリボンを成形するフロートバスを備え、
前記搬送ロールは、前記フロートバスから前記ガラスリボンを引き上げるリフトアウトロールであり、
前記弾性部材は、前記ガラス成形炉の床下に設けられ、前記除去部材を前記リフトアウトロールの下方に当接するよう鉛直上方へ付勢する請求項1又は2に記載のロールクリーニング装置。
【請求項4】
前記弾性部材が設けられる前記ガラス成形炉の外部の雰囲気温度は、100℃以下であり、前記ガラス成形炉の内部の雰囲気温度は、300℃以上であり、
前記弾性部材は金属製のバネ状部材である請求項1〜3の何れか一項に記載のロールクリーニング装置。
【請求項5】
ガラス成形炉と、
前記ガラス成形炉の内部に配置され、成形されたガラス物品を搬送する搬送ロールと、
前記搬送ロールの異物を除去する請求項1〜4の何れか一項に記載のロールクリーニング装置と、
を備えたガラス物品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス成形炉の内部に配置され、成形されたガラス物品を搬送する搬送ロールに付着する異物を除去するロールクリーニング装置に関する。さらに、本発明は、当該ロールクリーニング装置を備えたガラス物品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板の成形方法の一つとして、溶融スズが貯留されたフロートバスに溶融ガラスを浮かべてガラスリボンを形成し、このガラスリボンを延伸しながら下流に搬送して板状に成形するフロート法が知られている。フロート法によって製造されたガラス板は、例えば、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板や太陽電池モジュール用のガラス基板等に利用される。
【0003】
フロートバスで延伸及び成形されたガラスリボンは、リフトアウトロールと称される搬送ロールによってフロートバスから引き上げられ、徐冷された後、切断されてガラス板となる。ここで、フロートバスから引き上げられたガラスリボンの下面(溶融スズとの接触面)には、溶融スズが冷え固まったものや、溶融スズが酸化する等して生成したスズ化合物等が付着していることがある。そして、これらの付着物は、リフトアウトロールの表面に転写されて望ましくない異物となり得る。また、リフトアウトロールの表面にスズ等の異物が存在すると、当該リフトアウトロールによって搬送されるガラス板に傷が付く虞がある。そこで、リフトアウトロールの表面を常にクリーンな状態に保つため、リフトアウトロールには表面に付着した異物を除去するための除去部材が設けられている。
【0004】
従来公知の搬送ロールのクリーニング装置として、例えば、搬送ロールの回転軸線に対して平行な方向に並ぶ複数の可動部材で構成し、隣り合う可動部材を上下方向に移動可能に噛み合わせることで、ガラスリボンの搬送方向に対して平行な移動が規制されているフロートガラス用搬送ロールの付着物除去部材があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の付着物除去部材は、各可動部材の下部に弾性体が設けられ、各可動部材は夫々の弾性体によって個別に弾性支持されている。このため、一部の可動部材が摩耗しても、可動部材は夫々の弾性体によって搬送ロールの下部に一定の圧力で押圧され、搬送ロールの表面に付着した異物をムラなく除去できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−157250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の付着物除去部材(除去部材)は、弾性体の弾性力によって搬送ロールに付勢されているため、弾性体の性能が低下すると、搬送ロールに対する除去部材の押圧力が弱まって異物を十分に除去できなくなる虞がある。その結果、ガラスリボンに傷が付き、品質低下の原因となり得る。従って、搬送ロールのクリーニング作業を行うにあたっては、搬送ロールの表面に対して除去部材を十分な押圧力で当接させ続けることが求められる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の搬送ロールの除去部材では、弾性体が高温雰囲気であるガラス物品製造設備の内部に配設されているため、搬送ロールのクリーニング作業が長期間に及ぶと、高熱の影響によって弾性体が変形したり、弾性体自身の劣化が進行する等して、弾性体の弾性率が低下する虞があった。すなわち、従来の技術では、搬送ロールを十分にクリーンな状態に維持できず、ガラス物品が傷付いたり、異物が付着してしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、リフトアウトロール等のガラス物品搬送ロールにおいて、除去部材を搬送ロールに押圧する弾性体の性能低下を抑制し、高品位なガラス物品を得られるロールクリーニング装置、及びガラス物品製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るロールクリーニング装置の特徴構成は、ガラス成形炉の内部に配置され、成形されたガラス物品を搬送する搬送ロールに付着する異物を除去するものであって、前記ガラス成形炉の内部に設けられ、前記搬送ロールの表面に当接して前記異物を除去する除去部材と、前記除去部材を前記搬送ロールに向けて付勢する弾性部材と、前記除去部材と前記弾性部材とを連結するロッド部材と、を備え、前記弾性部材は、前記ガラス成形炉の外部に設けられ、前記ロッド部材は、前記ガラス成形炉の炉壁を貫通して設けられることにある。
【0010】
本構成のロールクリーニング装置によれば、弾性部材がガラス成形炉の外部に設けられ、ロッド部材がガラス成形炉の炉壁を貫通して設けられるため、弾性部材は、比較的低温に維持されたガラス成形炉の外部からロッド部材を介して除去部材を搬送ロールに向けて付勢することができる。このため、弾性部材は、ガラス成形炉の稼働中に高熱による変形や劣化が起こり難く、適正な弾性率を長期に亘って維持することができる。その結果、除去部材は搬送ロールに対して適度な押圧力で当接し続けることができ、搬送ロールの表面を常にクリーンな状態に維持することができる。従って、ガラス物品の傷の発生や、異物の付着を防止できる。
【0011】
本発明のロールクリーニング装置において、前記弾性部材を支持し、且つ前記除去部材の付勢方向に位置を調整可能に構成されたベース部材を備え、前記弾性部材は、前記除去部材の付勢方向に一方端部が前記ロッド部材と接続され、他方端部が前記ベース部材と連結されることが好ましい。
【0012】
本構成のロールクリーニング装置によれば、弾性部材は、除去部材の付勢方向に一方端部がロッド部材と接続され、他方端部がベース部材と連結されるため、ベース部材を除去部材の付勢方向に移動させるようガラス成形炉の炉壁側に押し込むと、ベース部材とロッド部材との間隔が変化して弾性部材の圧縮状態を調整することができる。その結果、ロッド部材の他端に連結された除去部材は、搬送ロールの表面に適度な押圧力で当接し続けることができ、搬送ロールの表面を常にクリーンな状態に維持することができる。
【0013】
本発明のロールクリーニング装置において、前記ガラス成形炉は、溶融金属の上でガラスリボンを成形するフロートバスを備え、前記搬送ロールは、前記フロートバスから前記ガラスリボンを引き上げるリフトアウトロールであり、前記弾性部材は、前記ガラス成形炉の床下に設けられ、前記除去部材を前記リフトアウトロールの下方に当接するよう鉛直上方へ付勢することが好ましい。
【0014】
本構成のロールクリーニング装置によれば、フロートバスからガラスリボンを引き上げる搬送ロール(リフトアウトロール)のクリーニングに特に有効となる。すなわち、搬送ロールの表面にはフロートバスに貯留されている溶融金属スズやスズ酸化物等の異物が付着し易いが、搬送ロールに除去部材を付勢する弾性部材は高熱による変形や劣化が起こり難いため、除去部材は搬送ロールに対して適度な押圧力で当接し続け、搬送ロールの表面を常にクリーンな状態に維持することができる。また、弾性部材は、ガラス成形炉の床下に設けられ、除去部材を搬送ロールの下方に当接するよう鉛直上方へ付勢するため、搬送ロールの表面に付着した異物は、搬送ロールの表面のうちガラスリボンと接触する部位の反対側、すなわち、ガラスリボンから最も離れた位置で除去されることとなる。このため、除去部材で擦り取った異物が飛び散っても、ガラスリボンに再度付着する虞は少ない。従って、本構成のロールクリーニング装置は、特にフロート法によって製造されるガラス板の品質向上に有効となる。
【0015】
本発明のロールクリーニング装置において、前記弾性部材が設けられる前記ガラス成形炉の外部の雰囲気温度は、100℃以下であり、前記ガラス成形炉の内部の雰囲気温度は、300℃以上であり、前記弾性部材は金属製のバネ状部材であることが好ましい。
【0016】
本構成のロールクリーニング装置によれば、ガラス成形炉の内部雰囲気温度が300℃以上となる高温環境下において、除去部材が搬送ロールに対して適度な押圧力で当接し続け、搬送ロールの表面を常にクリーンな状態に維持することができる。このとき、除去部材を搬送ロールに向けて付勢する弾性部材は、雰囲気温度が100℃以下に維持されたガラス成形炉の外部に存在するため、高熱による変形や劣化が起こり難く、適正な弾性率を長期に亘って維持することができる。
【0017】
本発明のロールクリーニング装置において、前記弾性部材は、前記ガラス成形炉の炉壁の外部表面に固定された通気性を有する保護ケースに覆われていることが好ましい。
【0018】
本構成のロールクリーニング装置によれば、弾性部材はガラス成形炉の炉壁の外部表面に固定された通気性を有する保護ケースに覆われているため、弾性部材の温度上昇を抑制しながら保護ケースによって保護され、作業者による不意の接触や破損等を防止することができる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係るガラス物品製造装置の特徴構成は、ガラス成形炉と、前記ガラス成形炉の内部に配置され、成形されたガラス物品を搬送する搬送ロールと、前記搬送ロールの異物を除去する上記の何れか一に記載のロールクリーニング装置と、を備えたことにある。
【0020】
本構成のガラス物品製造装置によれば、本発明のロールクリーニング装置を備えているため、高温に曝される環境においても、ロールクリーニング装置を構成する除去部材は搬送ロールに対して適度な押圧力で当接することができる。従って、ガラス物品を搬送する搬送ロールの表面は常にクリーンな状態に維持され、高品位なガラス物品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、ガラス板を製造するために使用されるガラス板製造装置の一部を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明のロールクリーニング装置の概略斜視図である。
図3図3は、図1のガラス板製造装置に示したロールクリーニング装置について、その一つを拡大した概略断面図である。
図4図4は、ケースで覆われたロールクリーニング装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のロールクリーニング装置に関する実施形態について、図1図4を参照しながら説明する。本発明のロールクリーニング装置は、ガラス物品を搬送する搬送ロールをクリーニングするものであるが、本明細書では、クリーニングを行う対象の搬送ロールとして、特に、ガラスリボン又はガラス板を搬送するリフトアウトロールを例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0023】
<ガラス板製造装置の全体構成>
図1は、ガラス板を製造するために使用されるガラス板製造装置1の一部を示す概略断面図である。ガラス板製造装置1は、フロート法によってガラス板を製造する設備であり、主に、上流側のガラス溶融槽(図示せず)から供給された溶融ガラスG1を成形するガラス成形炉を備える。ガラス成形炉は、フロートバス2と、フロートバス2の下流側に設けられ、本発明のロールクリーニング装置3(3A〜3C)を有するリフトアウト室4とを備えている。リフトアウト室4は、「ドロスボックス」とも称されるフロートバス2に付帯する設備である。
【0024】
フロートバス2は、白金や耐火レンガ等の耐熱性材料で構成された浴槽であり、浴槽内部に溶融状態の金属スズMが貯留されている。フロートバス2の浴槽温度は、スズの融点(約232℃)以上となるように設定され、通常は、600〜1300℃に維持されている。フロートバス2の金属スズMの液面より上方の空間には、窒素、アルゴン等の不活性ガス、又は水素等の還元性ガスが導入され、金属スズMの酸化が抑制されている。ガラス板製造装置1を用いてガラス板を製造する場合、フロートバス2の上流側の入口5から溶融ガラスG1を流し込み、当該溶融ガラスG1を金属スズMの液面上に浮遊させた状態で、白抜き矢印方向に示すように下流側に流動させて帯状のガラスリボンG2に成形し、成形後のガラスリボンG2を下流側の出口6から搬出する。
【0025】
ガラスリボンG2の搬出にあたっては、リフトアウト室4に設けたリフトアウトロール7(7A〜7C)が用いられる。リフトアウトロール7は、フロートバス2に貯留されている金属スズMの液面より上方に配置され、フロートバス2で成形されたガラスリボンG2の下面がロール面に載せられる。リフトアウトロール7は、その表面が金属やシリコン等の耐熱性を有する材料で構成される。フロートバス2に浮遊しているガラスリボンG2は、矢印方向に回転するリフトアウトロール7によりフロートバス2内の金属スズMから分離し、リフトアウト室4に引き上げられる。リフトアウト室4の内部には、リフトアウトロール7に付着する異物を除去するため、本発明のロールクリーニング装置3(3A〜3C)が設けられる。
【0026】
リフトアウト室4に引き上げられたガラスリボンG2は、リフトアウトロール7によってさらに下流側に設けられた徐冷室8に搬送され、当該徐冷室8において所定温度まで冷却される。冷却されたガラスリボンG2は、切断や表面処理等の適切な処理が行われ、ガラス板として出荷される。なお、徐冷室8においても、搬送ロールに付着する異物を除去するため、リフトアウト室4と同様のロールクリーニング装置を設けても構わない。
【0027】
<ロールクリーニング装置>
図2は、本発明のロールクリーニング装置3の概略斜視図である。図3は、図1のガラス板製造装置1に示したロールクリーニング装置3について、その一つを拡大した概略断面図である。ロールクリーニング装置3は、リフトアウトロール7の表面7aに当接して異物Rを除去する除去部材9と、除去部材9をリフトアウトロール7に向けて付勢する弾性部材10と、除去部材9と弾性部材10とを連結するロッド部材11とを備えている。さらに、ロールクリーニング装置3は、上記の各部材に加えて、除去部材9の付勢方向に移動可能に構成されたベース部材12を備えることができる。
【0028】
除去部材9は、図2に示すように、例えば、矩形断面を有する柱状体で構成され、柱状体の長手方向のサイズがリフトアウトロール7の幅に合わせられている。これにより、除去部材9は、その先端部9aをリフトアウトロール7の幅方向の略全体に亘ってリフトアウトロール7の表面7aに当接することができる。また、除去部材9は、その基端部9bが、例えば、コの字形断面を有する樋状の支持部材13に挿入されることで支持されている。これにより、リフトアウトロール7に対する除去部材9の当接姿勢を安定させることができる。なお、支持部材13の形状は、除去部材9を支持可能であれば、上記の形状に限定されない。除去部材9は、図2及び図3に示すように、リフトアウトロール7に対して下方から鉛直上方に押し当てられることが好ましい。この場合、リフトアウトロール7の表面7aに付着した異物Rは、リフトアウトロール7の表面7aのうちガラスリボンG2と接触する部位の反対側、すなわち、ガラスリボンG2から最も離れた位置で除去されることになる。このため、除去部材9で擦り取った異物Rが飛び散っても、ガラスリボンG2に再度付着する虞は少ない。なお、除去部材9の押し当て角度は、例えば、除去部材9の形状を変更したり、支持部材13を傾けたり、支持部材13の設置場所を変更する等によって調整することができる。除去部材9の構成材料は、リフトアウトロール7の表面7aを傷付けないように、リフトアウトロール7の構成材料(例えば、シリコン)より硬度が小さく、且つ耐熱性を有するものが好適に使用される。例えば、除去部材9として、カーボンを柱状に成形したカーボン製除去部材が使用されることが好ましい。
【0029】
弾性部材10は、リフトアウト室4の外部に設けられる。「リフトアウト室4の外部」とは、リフトアウトロール7が設けられている空間より外側の領域であり、本実施形態の場合、リフトアウト室4の炉壁4aの下方(床下)を指す。リフトアウト室4の外部は、リフトアウト室4の内部より低い温度雰囲気に維持されている。例えば、リフトアウト室4の内部は300℃以上の雰囲気温度であり、リフトアウト室4の外部は100℃以下の雰囲気温度に維持されている。弾性部材10は、高温による変形や劣化を抑制するため、リフトアウト室4の外部の雰囲気に曝された状態とされる。なお、過度に温度上昇することがなければ、図3に示すように、弾性部材10の周囲に弾性部材10を保護するブロック14を設けることも可能である。弾性部材10は、例えば、金属製のバネで構成され、除去部材9をリフトアウトロール7に向けて付勢するように作用する。なお、図2及び図3では、弾性部材10はコイルバネとして示されているが、他の任意の弾性部材を用いることも可能である。例えば、弾性部材10は、板バネで構成することも可能である。弾性部材10の弾性力により、除去部材9の先端部9aは、常時リフトアウトロール7の表面7aに押し付けられた状態となり、リフトアウトロール7が回転すると、リフトアウトロール7の表面7aに存在する異物Rが除去部材9によって擦り取られる。弾性部材10は、図2に示すように、一つの除去部材9に対して複数設けられることが好ましく、さらに、除去部材9の長手方向全体に亘って均等な間隔で設けられることがより好ましい。この場合、リフトアウトロール7の幅方向において、リフトアウトロール7に対して除去部材9を押し付ける力のバラツキが少なくなるため、異物Rの除去ムラを低減することができる。
【0030】
このように、本実施形態のロールクリーニング装置3では、弾性部材10がリフトアウト室4の外部に設けられているため、ガラス板製造装置1の稼働中に高熱による変形や劣化が起こり難く、適正な弾性率を長期に亘って維持することができる。その結果、除去部材9はリフトアウトロール7に対して適度な押圧力で当接し続けることができ、リフトアウトロール7の表面7aを常にクリーンな状態に維持することができる。
【0031】
ロッド部材11は、弾性部材10の弾性力を除去部材9に伝達する部材である。ロッド部材11は、図3に示すように、その先端部11aが除去部材9の基端部9bに連結され、基端部11bが弾性部材10の先端部10aに連結される。また、ロッド部材11は、支持部材13の内底部13aからリフトアウト室4の炉壁4a(床下)まで貫通するように設けられる。これにより、弾性部材10は、雰囲気温度が比較的低温に維持されたリフトアウト室4の外部から、ロッド部材11を介して、高温環境下のリフトアウト室4の内部に存在する除去部材9を、リフトアウトロール7に向けて付勢することができる。ロッド部材11は、リフトアウト室4の内部の高温環境に耐え得るように、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の耐熱性を有する材料で構成される。
【0032】
リフトアウトロール7のクリーニング作業を行うにあたり、リフトアウトロール7の表面7aに付着した異物Rをより効率的に除去するためには、弾性部材10が適度な弾性力を発揮して除去部材9をリフトアウトロール7の表面7aに付勢していることが必要となる。そこで、本実施形態のロールクリーニング装置3では、弾性部材7の弾性力を調整するため、上記の各部材に加えてベース部材12を設けることができる。ベース部材12は、弾性部材10を支持し、且つ除去部材9の付勢方向に位置を調整可能に構成され、その先端部12aが弾性部材10の基端部10bにベアリング等の可動連結部材12bを介して弾性部材10に対して相対回転可能に連結され、基端部12cは弾性部材10の圧縮状態(弾性力)を調整する調整部として機能する。例えば、図3に示すように、弾性部材10の周囲にブロック14が配置されている場合、ベース部材12の基端部12c側にねじ溝12dを形成し、ブロック14側に雌ねじ14aを形成し、ブロック14に対してベース部材12を付勢方向にねじ込み可能に構成する。この場合、ブロック14に対するベース部材12のねじ込み量を調整することにより、弾性部材10の圧縮状態が変化するため、弾性部材10に発生する弾性力を調整することができる。従って、例えば、除去部材9が摩耗して弾性部材10の圧縮状態が緩むことにより除去部材9の押圧力が低下した場合、ブロック14に対してベース部材12を深くねじ込むことで弾性部材10の圧縮を強めて弾性力を大きくさせることで押圧力を回復させ、異物Rを効率よく除去することができる。また、除去部材9の押圧力が過大となり、いわゆるスティックスリップ現象が生じる等してリフトアウトロール7の回転が不安定となった場合、ブロック14に対するベース部材12のねじ込みを緩めることで弾性部材10の圧縮を弱めて弾性力を適正化し、リフトアウトロール7の動作を安定化することができる。ベース部材12は、弾性部材10の弾性力に耐え得るように、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の硬質材料で構成される。
【0033】
本実施形態のロールクリーニング装置3は、弾性部材10の圧縮状態(すなわち、弾性力)を調整可能に構成してあるため、複数のリフトアウトロール7を備えた設備に好適に適用することができる。例えば、図1では、リフトアウト室4において、ガラスリボンG2の搬送方向に沿って、上流側から3台のリフトアウトロール7A〜7Cが設けられているが、これらのうち、フロートバス2に近い側のリフトアウトロール7Aに異物Rが付着し易い。そこで、夫々のリフトアウトロール7A〜7Cに設けるロールクリーニング装置3A〜3Cについて、リフトアウトロール7毎にベース部材12のねじ込み量を個別に調整することが効果的である。例えば、特に異物Rが付着し易い上流側のリフトアウトロール7Aについては、ベース部材12をブロック14に深くねじ込んで弾性部材10の弾性力を大きく設定し、除去部材9をリフトアウトロール7Aの表面7aに強い押圧力で当接するように調整する。一方、比較的表面が汚れていない下流側のリフトアウトロール7Cについては、ベース部材12をブロック14に浅くねじ込んで弾性部材10の弾性力を小さく設定し、除去部材9がリフトアウトロール7Cの表面7aに弱い押圧力で当接するように調整する。これにより、リフトアウト室4のすべてのリフトアウトロール7についてクリーニング作業を確実に行いながら、リフトアウトロール7の表面7A〜7Cに除去部材9が過度な押圧力で付勢することがないため、特に下流側に位置する除去部材9の摩耗が抑制され、下流側の除去部材9の使用期間を延長することができる。
【0034】
ところで、弾性部材10は、前述のように温度上昇による変形や劣化を抑制するため、温度の低いリフトアウト室4の外部雰囲気に曝された状態にすることが好ましいが、破損等を防止するため弾性部材10に対して作業者や物体が触れないように保護する必要もある。そこで、本実施形態のロールクリーニング装置3では、リフトアウト室4の外部に位置する弾性部材10を保護するため、弾性部材10の周囲を保護ケース15で覆うように構成することができる。
【0035】
図4は、保護ケース15によって覆われたロールクリーニング装置3の概略断面図である。保護ケース15は、リフトアウト室4の炉壁4aの外表面に取り付けられるフランジ部16と、弾性部材10を覆う外套部17と、ベース部材12がねじ込まれるねじ孔部18aが設けられた底面部18とを備えている。保護ケース15は、ベース部材12と同様の金属製の硬質材料で構成されるが、雰囲気温度が比較的低いリフトアウト室4の外部に設けられるため、硬質樹脂材料等で構成することも可能である。保護ケース15の外套部17には通気孔17aが形成されている。これにより、リフトアウト室4の外部の雰囲気が保護ケース15の内外を通流し、弾性部材10の温度上昇が抑制される。なお、通気孔17aの代わりに保護ケース15の外套部17をメッシュ構造に構成する等して保護ケース15の通気性を高めることも可能である。保護ケース15の底面部18のねじ孔部18aには、ベース部材12の基端部12c側に形成されたねじ溝12dと係合可能な雌ねじ18bが形成されている。弾性部材10が略圧縮されていないときは、ベース部材12は、保護ケース15の底面部18のねじ孔部18aから基端部12cを大きく突出させた状態となっており、保護ケース15に対するベース部材12のねじ込み量を調整することで、弾性部材10の圧縮状態(弾性力)を調整することができる。このように、本実施形態のロールクリーニング装置3は、保護ケース15を弾性部材10の弾性力の調整に利用することで、リフトアウトロール7に対して除去部材9を十分な押圧力で付勢することが可能となる。
【0036】
なお、上記実施形態において、ブロック14及び保護ケース15は、炉壁4aから取り外し可能に構成されていることが好ましい。このような構成にすれば、弾性部材10等が損耗した場合に、炉外から交換等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0037】
上記実施形態では、本発明のロールクリーニング装置3を用いてガラスリボンを搬送するリフトアウトロール7の表面7aに付着した異物Rを除去する例について説明したが、本発明のロールクリーニング装置3は、任意のロール部材のクリーニングに用いても構わない。例えば、ガラス板を搬送する搬送ロールの表面に付着した異物の除去のため、本発明のロールクリーニング装置3を用いることも可能である。従って、本明細書における「ガラス物品」には、ガラスリボンだけでなく、ガラス板も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のロールクリーニング装置は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、太陽電池パネル用ガラス基板等に利用される各種ガラス板をフロート法によって製造するガラス板製造装置のリフトアウトロールに適用されるものであるが、その他のガラス物品製造装置に使用される搬送ロールにも適用することができる。例えば、ロールアウト法によって製造されるガラス板製造装置におけるデリバリーロールや、ガラスチョップドストランドマット製造装置におけるガラスチョップドストランドの搬送ロールをクリーニングするため、本発明のロールクリーニング装置を利用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ガラス板製造装置(ガラス物品製造装置)
2 フロートバス(ガラス成形炉)
3 ロールクリーニング装置
4 リフトアウト室(ガラス成形炉)
4a 炉壁
7 リフトアウトロール(搬送ロール)
7a リフトアウトロールの表面
9 除去部材
10 弾性部材
11 ロッド部材
12 ベース部材
15 保護ケース
G1 溶融ガラス(ガラス物品)
G2 ガラスリボン(ガラス物品)
R 異物
図1
図2
図3
図4