特許第6206213号(P6206213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206213
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】コネクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/40 20060101AFI20170925BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20170925BHJP
   H01R 25/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01R13/40 Z
   H01R43/00 B
   H01R25/00
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-11045(P2014-11045)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-138728(P2015-138728A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
(72)【発明者】
【氏名】北岡 賢一
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−082466(JP,A)
【文献】 特開2007−026759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40
H01R 25/00
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属素線からなり、可撓性を有するとともに、その延在方向の一端部に設けられた第1端子部と、その延在方向の他端部に設けられた第2端子部と、その幅方向において外側に膨出する膨出部と、を有する導電部材と、
筒状をなすとともにその筒軸方向と前記延在方向とが一致する姿勢で前記第1端子部を収容する第1収容部と、該第1収容部から連なるとともに前記膨出部と前記第2端子部とを収容する第2収容部と、を有するハウジングと、を備え、
前記導電部材は、前記延在方向において前記第1収容部の前記第2収容部側の開口縁と同じ位置またはそれよりも前記第2収容部側の位置を前記膨出部の起点とし、前記開口縁との間に隙間を設けて配される、コネクタ。
【請求項2】
前記膨出部は、前記延在方向において前記開口縁と同じ位置を前記起点として配される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
複数の金属素線からなり、可撓性を有するとともに、その延在方向の一端部に設けられた第1端子部と、その延在方向の他端部に設けられた第2端子部と、その幅方向において外側に膨出する膨出部と、を有する導電部材と、
筒状をなすとともにその筒軸方向と前記延在方向とが一致する姿勢で前記第1端子部を収容する第1収容部と、該第1収容部から連なるとともに前記膨出部と前記第2端子部とを収容する第2収容部と、を有するハウジングと、を備え、
前記延在方向において、前記第1収容部の前記第2収容部側に位置する開口縁と前記膨出部との間に隙間が設けられているコネクタを製造する方法であって、
前記導電部材の両端部に前記第1端子部と前記第2端子部とを形成する端子部形成工程と、
前記端子部形成工程の後に、一端部が閉口された筒状をなす治具の内部に、前記導電部材の前記第1端子部をその先端部が該治具の最深部と当接するまで差し込む差し込み工程と、
前記差し込み工程の後に、前記導電部材を前記治具側に押し込んで縮めることで該導電部材の一部を局所的に座屈させ、前記膨出部を形成する膨出部形成工程と、
前記膨出部形成工程の後に、前記導電部材を前記治具から取り出し、前記第1端子部を前記ハウジングの前記第1収容部に収容する収容工程と、を備え、
前記差し込み工程および前記膨出部形成工程では、その開口径が前記第1収容部の開口径以下とされるとともに、その筒軸方向の寸法が前記第1収容部の筒軸方向の寸法以上とされた前記治具を用いることを特徴とするコネクタの製造方法。
【請求項4】
複数の金属素線からなり、可撓性を有するとともに、その延在方向の一端部に設けられた第1端子部と、その延在方向の他端部に設けられた第2端子部と、その幅方向において外側に膨出する膨出部と、を有する導電部材と、
筒状をなすとともにその筒軸方向と前記延在方向とが一致する姿勢で前記第1端子部を収容する第1収容部と、該第1収容部から連なるとともに前記膨出部と前記第2端子部とを収容する第2収容部と、を有するハウジングと、を備え、
前記延在方向において、前記第1収容部の前記第2収容部側に位置する開口縁と前記膨出部との間に隙間が設けられているコネクタを製造する方法であって、
前記導電部材の両端部に前記第1端子部と前記第2端子部とを形成する端子部形成工程と、
前記端子部形成工程の後に、一端部が閉口された筒状をなす治具の内部に、前記導電部材の前記第1端子部をその先端部が該治具の最深部と当接するまで差し込む差し込み工程と、
前記差し込み工程の後に、前記導電部材の前記治具からはみ出た部位を複数の方向に複数回押し曲げることで該導電部材の一部を局所的に座屈させ、前記膨出部を形成する膨出部形成工程と、
前記膨出部形成工程の後に、前記導電部材を前記治具から取り出し、前記第1端子部を前記ハウジングの前記第1収容部に収容する収容工程と、を備え、
前記差し込み工程および前記膨出部形成工程では、その開口径が前記第1収容部の開口径以下とされるとともに、その筒軸方向の寸法が前記第1収容部の筒軸方向の寸法以上とされた前記治具を用いることを特徴とするコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の金属素線からなる導電部材の両端部に端子部が設けられ、その導電部材がハウジング内に収容された構成を備えるコネクタが知られている。例えば特許文献1には、複数の電線を編み込んでなる導電部材としての編組線の端末に相手側端子と接続される端子金具が接続され、その編組線がハウジング内に収容された構成を備えるシールドコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−26759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなコネクタでは、熱環境や通電に伴う発熱に起因して各部材が熱膨張した場合、導電部材がハウジングから受ける反力によって、導電部材と相手側端子との間でいわゆる微摺動摩耗が起こる虞がある。そこで、導電部材の一部をその幅方向の外側に膨出させて導電部材の柔軟性を向上させることで、導電部材がハウジングから受ける反力を低減させ、このような微摺動摩耗を防止する構成が知られている。
【0005】
ここで図10に、編組線210の一部にその幅方向の外側に膨出する膨出部214が形成され、その編組線210がハウジング220内に収容された構成を備える従来のコネクタ201を模式的に表した断面図を示す。このコネクタ201では、図10に示すように、編組線210の両端部にそれぞれ第1端子金具231と第2端子金具232とが固着されている。第1端子金具231はハウジング220の第1収容部221に収容され、膨出部214及び第2端子金具232はハウジング220の第2収容部222に収容されている。
【0006】
しかしながら、図10に示すコネクタ201では、膨出部214が形成されていることで編組線210の一部がハウジング220の第1収容部221における第2収容部222側に位置する開口縁221Aと近接している。このため、編組線210の延在方向において、編組線210の一部が当該開口縁221Aと干渉することがある。このように編組線210の延在方向において編組線210の一部がハウジング220の一部と干渉すると、編組線210がハウジング220から受ける反力が変動又は増大し、上記微摺動摩耗を十分に防止することができない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みて創作されたものであって、導電部材がハウジングから受ける反力を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコネクタは、複数の金属素線からなり、可撓性を有するとともに、その延在方向の一端部に設けられた第1端子部と、その延在方向の他端部に設けられた第2端子部と、その幅方向において外側に膨出する膨出部と、を有する導電部材と、筒状をなすとともにその筒軸方向と前記延在方向とが一致する姿勢で前記第1端子部を収容する第1収容部と、該第1収容部から連なるとともに前記膨出部と前記第2端子部とを収容する第2収容部と、を有するハウジングと、を備え、前記延在方向において、前記第1収容部の前記第2収容部側に位置する開口縁と前記膨出部との間に隙間が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記のコネクタによると、導電部材の延在方向においてハウジングと導電部材の膨出部との間に隙間が設けられていることで、上記延在方向において導電部材の一部がハウジングと干渉することを防止ないし抑制することができる。このため、導電部材の延在方向において導電部材の一部がハウジングの開口縁と干渉することに起因して導電部材がハウジングから受ける反力が変動又は増大することを防止ないし抑制することができる。このように上記のコネクタでは、導電部材がハウジングから受ける反力を安定させることができる。
【0010】
上記のコネクタでは、前記幅方向において、前記開口縁と前記導電部材との間に隙間が設けられていてもよい。
【0011】
この構成によると、導電部材がハウジングの開口縁と一層干渉し難いものとなるので、導電部材がハウジングから受ける反力を一層安定させることができる。
【0012】
本発明の他の態様は、上記のコネクタを製造する方法であって、前記導電部材の両端部に前記第1端子部と前記第2端子部とを形成する端子部形成工程と、前記端子部形成工程の後に、一端部が閉口された筒状をなす治具の内部に、前記導電部材の前記第1端子部をその先端部が該治具の最深部と当接するまで差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程の後に、前記導電部材を前記治具側に押し込んで縮めることで該導電部材の一部を局所的に座屈させ、前記膨出部を形成する膨出部形成工程と、前記膨出部形成工程の後に、前記導電部材を前記治具から取り出し、前記第1端子部を前記ハウジングの前記第1収容部に収容する収容工程と、を備え、前記差し込み工程および前記膨出部形成工程では、その開口径が前記第1収容部の開口径以下とされるとともに、その筒軸方向の寸法が前記1収容部の筒軸方向の寸法以上とされた前記治具を用いることを特徴とする。
【0013】
上記のコネクタの製造方法によると、膨出部形成工程において導電部材を治具側に押し込んで縮めることで、導電部材のうち治具からはみ出た部位の一部に膨出部を形成することができる。このとき、編組線の延在方向において、膨出部が治具の開口縁から離れる方向に編組線が座屈して変形する。このため、治具の筒軸方向の寸法が第1収容部の筒軸方向の寸法以上とされていることから、膨出部形成工程の後に第1端子部を第1収容部に収容することで、第1収容部の筒軸方向、即ち導電部材の延在方向において、第1収容部の第2収容部側に位置する開口縁と膨出部との間に隙間を形成することができる。
【0014】
また、膨出部形成工程において導電部材を治具側に押し込んで縮めることで、導電部材のうち治具内に収容された部位の一部に内側に凹んだ括れ部を形成することができる。このとき、導電部材の幅方向において、導電部材のうち括れ部となる部位が治具の開口縁から離れる方向に導電部材が変形する。このため、治具の開口径が第1収容部の開口径以下とされていることから、膨出部形成工程の後に第1端子部を第1収容部に収容することで、導電部材の幅方向において、第1収容部の第2収容部側に位置する開口縁と導電部材との間に隙間を形成することができる。以上の結果、上記のコネクタの製造方法では、導電部材の延在方向において、導電部材の一部がハウジングと干渉することを防止ないし抑制することができ、導電部材がハウジングから受ける反力を安定させることが可能なコネクタを製造することができる。
【0015】
本発明の他の態様は、上記のコネクタを製造する方法であって、前記導電部材の両端部に前記第1端子部と前記第2端子部とを形成する端子部形成工程と、前記端子部形成工程の後に、一端部が閉口された筒状をなす治具の内部に、前記導電部材の前記第1端子部をその先端部が該治具の最深部と当接するまで差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程の後に、前記導電部材の前記治具からはみ出た部位を複数の方向に複数回押し曲げることで該導電部材の一部を局所的に座屈させ、前記膨出部を形成する膨出部形成工程と、前記膨出部形成工程の後に、前記導電部材を前記治具から取り出し、前記第1端子部を前記ハウジングの前記第1収容部に収容する収容工程と、を備え、前記差し込み工程および前記膨出部形成工程では、その開口径が前記第1収容部の開口径以下とされるとともに、その筒軸方向の寸法が前記1収容部の筒軸方向の寸法以上とされた前記治具を用いることを特徴とする。
【0016】
上記のコネクタの製造方法によっても、膨出部形成工程において導電部材の一部に膨出部と括れ部とを形成することができる。さらに、導電部材の延在方向において第1収容部の第2収容部側に位置する開口縁と膨出部との間に隙間を形成することができるとともに、導電部材の幅方向において第1収容部の第2収容部側に位置する開口縁と導電部材との間に隙間を形成することができる。その結果、導電部材の延在方向において、導電部材の一部がハウジングと干渉することを防止ないし抑制することができ、導電部材がハウジングから受ける反力を安定させることが可能なコネクタを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電部材がハウジングから受ける反力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1におけるコネクタを模式的に表した断面図
図2】編組線を治具に差し込む前の状態を示す断面図
図3】編組線を治具に差し込んだ後の状態を示す断面図
図4】編組線を治具側に押し込んで縮めた状態を示す断面図
図5】縮めた後に自然長に戻した状態の編組線を示す断面図
図6】第1端子部を第1収容部に収容した後の状態を示す断面図
図7】実施形態2におけるコネクタを模式的に表した断面図
図8】編組線を複数方向に複数回押し曲げた後の状態を示す断面図
図9】第1端子部を第1収容部に収容した後の状態を示す断面図
図10】従来のコネクタを模式的に表した断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
図1乃至図6を参照して実施形態1を説明する。本実施形態で例示するコネクタ1は例えばシールドコネクタの一部として用いられ、図1では、このコネクタ1を模式的に表している。コネクタ1は、図1に示すように、編組線(導電部材の一例)10と、編組線10を収容するハウジング20と、から構成される。なお、以下の説明では、各図面における紙面上側を上方とし、各図面における左右方向を編組線10の幅方向とする。
【0020】
編組線10は、銅または銅合金からなる複数の細い金属素線12を網目状に編み込むことで延在する電線とされ、可撓性を有している。金属素線12の表面には、錫めっきが施されることにより錫めっき層(不図示)が形成されており、金属素線12の酸化や錆の発生が抑制されている。
【0021】
図1に示すように、編組線10の延在方向の一端部には、第1端子金具(第1端子部の一例)31が抵抗溶接により固着されている。また、編組線10の延在方向の他端部には、第2端子金具(第2端子部の一例)32が抵抗溶接により固着されている。第1端子金具31及び第2端子金具32はいずれも銅または銅合金からなる平板状とされている。第1端子金具31は、第2端子金具32よりも上下方向に長く延在しており、相手側端子と接続される端子となっている。
【0022】
編組線10は、第1端子金具31及び第2端子金具32を抵抗溶接する前の状態では中空形状となっている。そして、編組線10は、その延在方向の両端部に第1端子金具31及び第2端子金具32が抵抗溶接されることにより、第1端子金具31と第2端子金具32と金属素線12の錫めっき層からそれぞれ溶融した錫めっきによって固められ、図1に示すように幅広な中実形状となっている。
【0023】
第1端子金具31と第2端子金具32との間に位置する編組線10の一部には、その幅方向において外側に円弧状に膨出する膨出部14が設けられている。また、編組線10のうち膨出部14の下側(第1端子金具31側)の起点には、その幅方向において内側に円弧状に括れた括れ部16が設けられている。
【0024】
ハウジング20は、編組線10を収容する部材とされ、図1に示すように、第1収容部21と、第2収容部22と、蓋部23と、を有する構成とされる。編組線10は、その延在方向が上下方向に沿った姿勢で、第1端子金具31側を下側としてハウジング20内に収容されている。
【0025】
第1収容部21は、筒状をなしており、その筒軸方向が上下方向と一致する姿勢で、ハウジング20の下側に位置している。第1収容部21は、その開口径が編組線10の幅方向寸法よりもわずかに大きいものとされている。第1収容部21内には、その筒軸方向と編組線10の延在方向とが一致する姿勢で、編組線10に固着された第1端子金具31と第1端子金具31近傍の編組線10の部位とが収容されている。第1端子金具31は、第1収容部21内に収容された状態で第1収容部21に保持されている。
【0026】
コネクタ1では、上下方向(第1収容部の筒軸方向、編組線の延在方向)において、膨出部14の下側の起点が第1収容部21における上側の開口縁21Aと同じ高さに位置しており、第1端子金具31の先端部が第1収容部21における下側の開口縁21Bと同じ高さに位置している。コネクタ1では、第1収容部21の下側の開口縁21Bが相手側端子との接続口となる。なお、第1収容部21の外周面には、外側に鍔状に張り出す張出部21Cが設けられている。
【0027】
第2収容部22は、第1収容部21より大きな筒状部材とされ、その筒軸方向が上下方向と一致している。第2収容部22は、その下側の開口縁22Bが第1収容部21の張出部21Cに取り付けられることで第1収容部21をフローティング支持している。これにより、第2収容部2の下側の開口縁22Bが第1収容部21によって閉口されており、第1収容部21と第2収容部22とが連なった状態となっている。
【0028】
第2収容部22内には、編組線10のうち第1収容部21からはみ出た部位、即ち、膨出部14と編組線10に固着された第2端子金具32とが、第2収容部22の内壁から離れた形で(第2収容部22と干渉しない形で)収容されている。なお、第2端子金具32の先端部は、ハウジング20内に配された端子台24上に引き回された電線側の端子(不図示)とボルトBによって締結されて接続されている。
【0029】
蓋部23は、蓋状部材であり、編組線10と干渉しない形で第2収容部22の上側の開口縁22Bに取り付けられている。これにより、第2収容部22の上側の開口縁22Aが蓋部23によって閉口されている。
【0030】
以上のような構成とされた本実施形態のコネクタ1では、図1に示すように、編組線10の延在方向(上下方向、第1収容部21の筒軸方向)において、第1収容部21の上側の開口縁(第2収容部22側に位置する開口縁)21Aと膨出部14との間に隙間S1が設けられている。また、編組線10の幅方向において、第1収容部21の上側の開口縁21Aと編組線10との間に隙間S2が設けられている。
【0031】
続いて、本実施形態におけるコネクタ1の製造方法を説明する。本方法では、治具40を用いて編組線10に膨出部14を形成する。この治具40は、図2に示すように、一端部が閉口された筒状をなしており、その開口径がハウジング20の第1収容部21の開口径よりもわずかに小さく、かつ、その筒軸方向の寸法がハウジング20の第1収容部21の筒軸方向の寸法よりもわずかに長いものとされている。
【0032】
本方法では、まず、図2に示すように、筒状をなす編組線10の両端部に第1端子金具31と第2端子金具32とを抵抗溶接によって固着する(端子部形成工程の一例)。これにより、編組線10が幅広な中実形状とされる。
【0033】
次に、上記治具40を準備してその開口側を上側に向け(図2参照)、図3に示すように、治具40の筒軸方向と編組線10の延在方向とが一致する姿勢で、治具40の内部に第1端子金具31とその近傍の編組線10の部位を第1端子金具31の先端部が当該治具40の最深部41と当接するまで差し込む(差し込み工程の一例)。これにより、第1端子金具31とその近傍の編組線10の部位とが治具40内に収容される。
【0034】
次に、編組線10を治具40側にさらに押し込んで編組線10を押し縮める(膨出部形成工程の一例)。すると、上下方向において治具40の開口縁40Aと同じ高さに位置する編組線10の部位が治具40の開口縁40Aと干渉する。そして、第2端子金具32と重なり合う金属素線12が固められていることから、編組線10を押し縮めることで、編組線10の治具40からはみ出た部位のうち第2端子金具32の下側に位置する部位が局所的に座屈してその幅方向の外側に膨出され、膨出部14が形成される(図4及び図5参照)。このとき、上下方向(編組線10の延在方向)において、膨出部14が治具40の開口縁40Aから離れる方向に編組線10が座屈して変形する。
【0035】
ここで本実施形態では、その製造過程で用いる治具40の筒軸方向の寸法が第1収容部21の筒軸方向の寸法よりもわずかに長いものとされていることから、第1端子金具31が治具40に収容された状態で治具40の開口縁40Aと同じ高さとなる編組線10の部位が、第1端子金具31が第1収容部21に収容された状態で第1収容部21の上側の開口縁21Aと同じ高さとなる編組線10の部位と比べて上側に位置することとなる。このため、膨出部14が形成された後に第1端子金具31を第1収容部21に収容することで、上下方向、即ち、編組線10の延在方向において、膨出部14の下側の起点が第1収容部21の上側の開口縁21Aから十分に離れた位置に形成され、当該開口縁21Aと膨出部14との間に十分な隙間S1が形成される。
【0036】
一方、編組線10のうち治具40内に収容された部位では、膨出部形成工程において編組線10が治具40側にさらに押し込まれることで第1端子金具31近傍の編組線10の部位にその幅方向の外側に膨出される力が加わり、当該部位がその幅が治具40の開口径と等しくなるまで膨出される。このように、膨出部14に加えて第1端子金具31近傍の編組線10の部位が膨出されることで、その間の部位、即ち上下方向において治具40の開口縁40Aと略等しい高さに位置する編組線10の部位が、編組線10の幅方向において当該開口縁40Aから離れる方向に変形して内側にわずかに凹み、当該部位に括れ部16が形成される。
【0037】
ここで本実施形態では、その製造過程で用いる治具40の開口径が第1収容部21の開口径よりもわずかに小さいことから、第1端子金具31が第1収容部21に収容された状態における第1収容部21の上側の開口縁21Aと括れ部16との間の距離が、第1端子金具31が治具40に収容された状態における治具40の開口縁40Aと括れ部16との間の距離よりも大きいものとなる。このため、括れ部16が形成された後に第1端子金具31を第1収容部21に収容することで、編組線10の幅方向において、括れ部16が第1収容部21の上側の開口縁21Aから十分に離れた位置に形成され、当該開口縁40Aと括れ部16との間に十分な隙間S2が形成される。
【0038】
次に、第1収容部21を第2収容部22に取り付け、編組線10を治具40から取り出し、ハウジング20の第1収容部21に、第1収容部21の筒軸方向と編組線10の延在方向とが一致する姿勢で、第1端子金具31とその近傍の編組線10の部位を第1端子金具31の先端部が第1収容部21の下側の開口縁21Bに至るまで収容する(収容工程の一例)。その後、蓋部23を第2収容部22に取り付ける。これにより、膨出部14と第2端子金具32とが第2収容部22内に収容され、図1に示すコネクタ1が完成する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のコネクタ1によると、編組線10の延在方向においてハウジング20と編組線10の膨出部14との間に隙間S1が形成されていることで、編組線10の延在方向において編組線10の一部がハウジング20と干渉することを防止ないし抑制することができる。このため、編組線10の延在方向において編組線10の一部がハウジング20の第1収容部21における上側の開口縁21Aと干渉することに起因して編組線10がハウジング20から受ける反力が変動又は増大することを防止ないし抑制することができる。このように本実施形態のコネクタ1では、編組線10がハウジング20から受ける反力を安定させることができる。
【0040】
また、本実施形態のコネクタでは、編組線10の幅方向において、ハウジング20の第1収容部21における上側の開口縁21Aと編組線10との間に隙間S2が形成されている。このような構成とされていることで、編組線10の一部がハウジング20と一層干渉し難いものとなるので、編組線10がハウジング20から受ける反力を一層安定させることができる。
【0041】
また、本実施形態のコネクタ1では、上述したように、その製造過程において用いる治具40の筒軸方向の寸法が第1収容部21の筒軸方向の寸法よりもわずかに長いものとされていることで、上下方向において、第1収容部21の上側の開口縁21Aと膨出部16との間に形成される隙間S1を十分に離間したものとすることができる。さらに、本実施形態のコネクタ1では、上述したように、治具40の開口径が第1収容部21の開口径よりもわずかに小さいものとされていることで、編組線10の幅方向において、第1収容部21の上側の開口縁21Aと括れ部16との間に形成される隙間S2を十分に離間したものとすることができる。
【0042】
<実施形態2>
次に、実施形態2について図7乃至図9を参照して説明する。本実施形態のコネクタ101は、図7に示すように、膨出部114の膨出する大きさが実施形態1のものと比べてわずかに小さいものの、その構成については実施形態1と同様である。また、その製造過程で用いる治具140も、実施形態1のものと同様の構成である。なお、図7図8図9において、図1図3図6の参照符号にそれぞれ数字100を加えた部位は、実施形態1で説明した部位と同一である。
【0043】
本実施形態のコネクタ101は、その製造方法のみが実施形態1のものと異なっている。具体的には、膨出部114を形成する工程のみが実施形態1の製造方法と異なっている。なお、上述したようにコネクタ101の構成については実施形態1のものと同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。また、コネクタ101の製造方法のうち、膨出部114を形成する工程以外の工程については、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
本実施形態のコネクタ101の製造方法では、治具140の内部に第1端子金具131とその近傍の編組線110の部位を第1端子金具131の先端部が当該治具140の最深部141と当接するまで差し込んだ後(図8参照)、編組線110の治具からはみ出た部位を複数の方向に複数回押し曲げる(膨出部形成工程の一例)。このとき、編組線110の治具140に収容された部位は治具140によってその幅方向の両側が規制されており、第2端子金具132と重なり合う金属素線112は固められていることから、上記はみ出た部位のうち第2端子金具132の下側に位置する部位が局所的に座屈されてその幅方向の外側に膨出され、膨出部114が形成される(図9参照)。このとき、実施形態1で示した製造方法と同様に、上下方向(編組線10の延在方向)において、膨出部114が治具140の開口縁140Aから離れる方向に編組線110が座屈して変形する。
【0045】
一方、上記はみ出た部位が複数回押し曲げられることで、上下方向において治具140の開口縁140Aと略等しい高さに位置する編組線110の部位が、編組線110の幅方向において治具140の開口縁140Aと干渉して内側に押圧され、当該部位が内側にわずかに凹み、当該部位に括れ部116が形成される。
【0046】
その後、編組線110を治具140から取り出して編組線110の第1端子金具131とその近傍の編組線110の部位をハウジング120の第1収容部121に収容し、ハウジング120の蓋部123を第2収容部122に取り付ける。これにより、膨出部114と第2端子金具132とが第2収容部122内に収容され、図7に示すコネクタ101が完成する。
【0047】
本実施形態では、このような製造方法であっても、治具140の筒軸方向の寸法が第1収容部121の筒軸方向の寸法以上とされていることから、実施形態1で示した製造方法と同様に、第1収容部121の上側の開口縁121Aと膨出部114との間に隙間S1が形成されるように膨出部114を形成することができる。その結果、編組線110がハウジング120の第1収容部121における上側の開口縁121Aと干渉することに起因して編組線110がハウジング120から受ける反力が変動又は増大することを防止ないし抑制することができる。
【0048】
上記の実施形態の他の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の各実施形態では、編組線の延在方向において第1収容部の第2収容部側に位置する開口縁と膨出部との間に隙間が設けられ、かつ、編組線の幅方向において上記開口縁と編組線との間に隙間が設けられた構成を例示したが、編組線の延在方向においてのみ上記開口縁と膨出部との間に隙間が設けられ、編組線の幅方向において編組線が上記開口縁と接触した構成であってもよい。
【0049】
(2)上記の各実施形態では、その製造過程で用いる治具の筒軸方向の寸法が第1収容部の筒軸方向の寸法よりも長いものとされた例を示したが、治具の筒軸方向の寸法が第1収容部の筒軸方向の寸法と等しくてもよい。この場合であっても、膨出部を形成する工程において膨出部が治具の開口縁から離れる方向に編組線が座屈して変形するため、上下方向(編組線の延在方向)において、第1収容部の上側の開口縁と膨出部との間に隙間を形成することができる。
【0050】
(3)上記の各実施形態では、その製造過程で用いる治具の開口径が第1収容部の開口径よりも小さいものとされた例を示したが、治具の開口径が第1収容部の開口径と等しくてもよい。この場合であっても、膨出部を形成する工程において編組線の括れ部となる部位が治具の開口縁から離れる方向(内側方向)に編組線が変形するため、編組線の幅方向において、第1収容部の上側の開口縁と括れ部との間に隙間を形成することができる。
【0051】
(4)上記の各実施形態では、ハウジングにおいて第1収容部と第2収容部とが別体とされた構成を例示したが、第1収容部と第2収容部とが一体成形された構成であってもよい。
【0052】
(5)上記の各実施形態では、第1端子部の一例として第1端子金具を記載し、第2端子部の一例として第2端子金具を記載したが、第1端子部及び第2端子部の構成については限定されない。
【0053】
(6)上記の各実施形態以外にも、ハウジングの構成については、適宜に変更可能である。
【0054】
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1,101,201…コネクタ
10,110,210…編組線
12,112…金属素線
14,114,214…膨出部
16,116…括れ部
20,120,220…ハウジング
21,121,221…第1収容部
21A,121A,221A…第1収容部の上側の開口縁
21B,121B…第1収容部の下側の開口縁
21C,121C…張出部
22,122,222…第2収容部
22A,122A,222A…第2収容部の上側の開口縁
22B,122B,222B…第2収容部の下側の開口縁
23,123…蓋部
24,124…端子台
31,131,231…第1端子金具
32,132,232…第2端子金具
40,140…治具
40A,140A…治具の開口縁
41,141…治具の最深部
B…ボルト
S1…編組線の延在方向における第1収容部の上側の開口縁と膨出部との間の隙間
S2…編組線の幅方向における第1収容部の上側の開口縁と括れ部との間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10