特許第6206222号(P6206222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206222
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20170925BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01M4/139
   H01M2/26 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-17785(P2014-17785)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-146232(P2015-146232A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 庄太
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−119216(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031938(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/054593(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/031889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の両面に設けられた活物質層と、
前記活物質層のタブ側縁部に沿った前記金属箔の一辺の一部から突出するタブと、を有する電極の製造方法であって、
長尺状の金属箔の両面に、活物質合剤の塗工部と、前記活物質合剤が塗布されず、前記金属箔が露出した露出部と、を前記金属箔の長手方向へ交互に形成するとともに、前記金属箔を厚み方向に挟んだ塗工部同士で塗布始端部及び塗布終端部を金属箔の長手方向の同じ位置に形成する工程と、
前記塗布始端部又は塗布終端部を切断部として前記塗工部から切断し、切断後に形成された塗工部の切断後縁部から前記活物質層における前記タブ側縁部と反対側の縁部を形成する切断工程と、を含み、
前記切断工程では、
前記塗布始端部及び塗布終端部の目付量が、予め設定された基準目付量より大きい端高の場合、前記塗布始端部及び前記塗布終端部のうち目付量の大きい端部を、前記切断部として切断し、
前記塗布始端部及び塗布終端部の目付量が、前記基準目付量より小さい端低の場合、前記塗布始端部及び前記塗布終端部のうち目付量の小さい端部を、前記切断部として切断し、
前記塗布始端部及び塗布終端部のいずれか一方が前記端高で他方が前記端低の場合、前記端高の端部を、前記切断部として切断する電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔の両面に設けられた活物質層と、活物質層のタブ側縁部に沿った金属箔の一辺の一部から突出するタブと、を有する電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)などの車両に搭載される蓄電装置としては、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素二次電池などがよく知られている。これらの二次電池では、金属箔の表面に活物質層を有する電極(正極及び負極)が間にセパレータを介在させた状態で層状に重なる電極組立体を有するものがある。
【0003】
電極を製造する場合、一般に、長尺状の金属箔に活物質合剤を間欠的に塗布して塗工部及び金属箔の露出部を交互に形成した後、ロールプレス等の処理を行い、その後、塗工部及び露出部を目的とする形状に切断する。このような電極の製造方法で製造される電極において、活物質層の縁部は塗工部の塗布始端部及び塗布終端部で形成される。しかし、塗工部の塗布始端部や塗布終端部では、間欠塗工による製造上の理由から、目付量の変動が起きやすい。例えば、塗布始端部では、目付量が予め設定された設計上の基準目付量を超えて大きくなり、塗布始端部が端高になることがある。
【0004】
塗布始端部や塗布終端部の目付量が大きくなることを抑える方法として、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1に開示の塗工方法では、バッキングロールをコーティングロールから間欠的に離脱させることによって、塗工部と露出部を間欠的に形成し、かつバッキングロールとコーティングロールとが離れているときにコーティングロールの回転が停止しているようにさせる。コーティングロールの回転の停止は、バッキングロールをコーティングロールから離脱させる前に行い、コーティングロールの回転の起動は、バッキングロールをコーティングロールに接近させた後に行う。この間欠塗工方法を行うことで、塗布始端部や塗布終端部の盛り上がりを抑制し、目付量が基準目付量より大きくなることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−99269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のような間欠塗工方法を行っても、塗布始端部や塗布終端部の目付量が、予め設定された目付量に対し大きく変動してしまう場合があり、得られる電極において、活物質層の縁部での目付量が基準目付量から変動してしまう。
【0007】
本発明は、活物質層の縁部での目付量を基準目付量に近付けることができる電極の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための電極の製造方法は、金属箔の両面に設けられた活物質層と、前記活物質層のタブ側縁部に沿った前記金属箔の一辺の一部から突出するタブと、を有する電極の製造方法であって、長尺状の金属箔の両面に、活物質合剤の塗工部と、前記活物質合剤が塗布されず、前記金属箔が露出した露出部と、を前記金属箔の長手方向へ交互に形成するとともに、前記金属箔を厚み方向に挟んだ塗工部同士で塗布始端部及び塗布終端部を金属箔の長手方向の同じ位置に形成する工程と、前記塗布始端部又は塗布終端部を切断部として前記塗工部から切断し、切断後に形成された塗工部の切断後縁部から前記活物質層における前記タブ側縁部と反対側の縁部を形成する切断工程と、を含み、前記切断工程では、前記塗布始端部及び塗布終端部の目付量が、予め設定された基準目付量より大きい端高の場合、前記塗布始端部及び前記塗布終端部のうち目付量の大きい端部を、前記切断部として切断し、前記塗布始端部及び塗布終端部の目付量が、前記基準目付量より小さい端低の場合、前記塗布始端部及び前記塗布終端部のうち目付量の小さい端部を、前記切断部として切断し、前記塗布始端部及び塗布終端部のいずれか一方が前記端高で他方が前記端低の場合、前記端高の端部を、前記切断部として切断することを要旨とする。
【0010】
これによれば、塗工部は金属箔の長手方向に沿って間欠的に形成されるため、金属箔の各面で、全ての塗布始端部は同じような目付量で形成され、全ての塗布終端部も同じような目付量で形成される。例えば、金属箔の各面の全ての塗工部において、一つの塗工部の塗布始端部が、目付量が基準目付量より大きい端高となると、残りの全ての塗工部においても塗布始端部が端高となる。
【0011】
また、塗工部を形成する工程では、金属箔を厚み方向に挟む塗工部同士で塗布始端部及び塗布終端部が、金属箔の長手方向の同じ位置に位置するように形成される。このため、金属箔を挟む塗工部同士では、塗布始端部は揃って同じような目付量となり、塗布終端部も揃って同じような目付量となる。例えば、金属箔を厚み方向に挟む塗工部同士で、塗布始端部は揃って端高となり、塗布終端部は揃って端低となる。
【0012】
このため、塗布始端部及び塗布終端部のうち、基準目付量に対し変動幅の大きい端部を切断部として塗工部から切断することにより、基準目付量に対し変動幅の大きい端部を、金属箔を厚み方向に挟む両塗工部で一括して除去することができる。
【0013】
また、切断工程では、塗布始端部と塗布終端部の目付量を基準目付量と比較し、基準目付量に対し変動幅の大きい方を切断部として切断する。
よって、電極の製造方法によって製造された電極では、基準目付量に対し、目付量が大きく変動した端部を塗工部から無くすことができ、塗工部から得られた活物質層の縁部での目付量を基準目付量に近付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、活物質層の縁部での目付量を基準目付量に近付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の二次電池を示す分解斜視図。
図2】電極組立体の構成要素を示す分解斜視図。
図3】塗布装置による塗布工程及び乾燥工程を模式的に示す図。
図4】正極用金属箔を第2巻取ロールに巻き取る状態を示す図。
図5】塗布装置による塗布工程及び乾燥工程を模式的に示す図。
図6】スリット工程後の電極材料を示す平面図。
図7】(a)は切断装置を示す模式図、(b)は塗布始端部を示す拡大図、(c)は塗布終端部を示す拡大図。
図8】電極材料から切断された正極電極を示す平面図。
図9】塗布始端部及び塗布終端部が端高の電極材料を示す断面図。
図10】電極材料から切断された正極電極を示す平面図。
図11】塗布始端部及び塗布終端部が端低の電極材料を示す断面図。
図12】電極材料から切断された正極電極を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、電極の製造方法、及び電極を具体化した一実施形態を図1図12にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、蓄電装置としての二次電池10において、ケース11には電極組立体14及び電解液が収容されている。ケース11は、直方体状の本体部材12と、矩形平板状の蓋部材13とを有する。本体部材12は、その内側に収容部Sを有するとともに、収容部Sと連通する挿入口13cが開口している。蓋部材13は、挿入口13cを閉塞する。ケース11を構成する本体部材12と蓋部材13は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム)である。また、本実施形態の二次電池10は、その外観が角型をなす角型電池であり、リチウムイオン電池である。
【0019】
電極組立体14には、当該電極組立体14から電気を取り出すための正極端子41と負極端子42が電気的に接続されている。そして、正極端子41及び負極端子42は、蓋部材13の貫通孔13aを介してケース11外に突出するとともに、正極端子41及び負極端子42には、ケース11から絶縁するためのリング状の絶縁リング13bがそれぞれ取り付けられている。
【0020】
電極組立体14は、電極としての複数の正極電極21と、電極としての複数の負極電極24とが、樹脂製のセパレータ27を介して交互に積層されて構成されている。正極電極21は、矩形状の正極用金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)22と、その正極用金属箔22の第1面22bと、第1面22bの裏面の第2面22cに設けられた矩形状の正極用の活物質層23と、を有する。正極用金属箔22の両面の活物質層23は、同じ平面形状及び同じ厚みであり、かつ正極用金属箔22を厚み方向に挟んで互いに対向している。正極電極21は、正極用金属箔22の第1の辺22aに沿って、活物質層23の設けられていない正極未塗工部22dを有する。そして、正極電極21において、第1の辺22aの一部には、正極用の集電タブ31が突出する状態に設けられている。
【0021】
活物質層23は、正極用金属箔22の第1の辺22aに沿う縁部であり、集電タブ31が突出する側の縁部にタブ側縁部23aを有するとともに、タブ側縁部23aの対辺となる縁部23bを有する。
【0022】
ここで、正極電極21において、第1の辺22aに沿う方向を長手方向とし、活物質層23の面に沿い、かつ長手方向に直交する方向を短手方向とする。また、活物質層23において、単位面積当たりの重さを目付量とする。活物質層23において、短手方向に沿って縁部23bからタブ側縁部23aに向けて所定距離、例えば1mm離れた部分での目付量は、予め設定された設計上の基準目付量に対し、95%以上かつ105%以下の値になっている。また、活物質層23において、短手方向に沿ってタブ側縁部23aから縁部23bに向けて所定距離、例えば1mm離れた部分での目付量は、基準目付量の90%以上かつ110%以下の値になっている。
【0023】
負極電極24は、矩形状の負極用金属箔(本実施形態では銅箔)25と、その負極用金属箔25の両面(表面)に設けられた矩形状の負極用の活物質層26と、を有する。負極用金属箔25の両面の活物質層26は、同じ平面形状及び同じ厚みである。負極電極24は、その第1の辺25aの一部に負極用の集電タブ32が突出する状態に設けられ、この集電タブ32の基端寄りにも活物質層26が設けられている。
【0024】
図1に示すように、正極電極21及び負極電極24は、正極用の集電タブ31が積層方向に沿って列状に配置され、且つ正極用の集電タブ31と重ならない位置にて負極用の集電タブ32が積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。そして、各正極用の集電タブ31は、電極組立体14における積層方向の一端から他端までの範囲内で集められた(束ねられた)状態で折り曲げられている。各正極用の集電タブ31が重なっている箇所を溶接することによって全ての正極用の集電タブ31が電気的に接続されるとともに、正極用の集電タブ31に正極端子41が接続されている。各負極用の集電タブ32が重なっている箇所を溶接することによって全ての負極用の集電タブ32が電気的に接続されるとともに、負極用の集電タブ32に負極端子42が接続されている。
【0025】
次に、正極電極21の製造方法を説明する。正極電極21の製造方法は、第1の塗布工程と、巻直し工程と、第2の塗布工程と、スリット工程と、プレス工程と、測定工程と、切断工程と、を有する。
【0026】
図3に示すように、第1及び第2の塗布工程を行う塗布装置50は、矩形状に切断される前の長尺状の正極用金属箔22の第1面22bと第2面22cに活物質合剤としての活物質ペースト43を塗布し、正極用金属箔22の長手方向に所定長さの活物質ペースト43の塗工部35を形成する装置である。また、塗布装置50は、塗工部35を乾燥するための装置である。なお、活物質ペースト43は、活物質、溶媒を混練したものが用いられる。
【0027】
塗布装置50は、供給ロール51を備え、この供給ロール51には、金属箔として、長尺状の正極用金属箔22がロール状に捲回されている。また、塗布装置50は、第1巻取ロール61を備え、第1巻取ロール61によって供給ロール51から正極用金属箔22を巻き取ることで、供給ロール51から正極用金属箔22が供給されるとともに、正極用金属箔22が搬送方向X1に搬送される。
【0028】
塗布装置50は、搬送される正極用金属箔22に活物質ペースト43を転写する転写装置54を備える。転写装置54は、活物質ペースト43の貯留部55、円柱状のコーティングロール56、貯留部55から供給される活物質ペースト43をコーティングロール56の表面に付着させるとともに、活物質ペースト43の厚さ(量)を調節する略円柱状のコンマロール57を有する。また、転写装置54は、円柱状のバッキングロール58を備える。各ロール56,57,58は平行に配置されている。
【0029】
コーティングロール56は、バッキングロール58の回転方向Y1とは同方向(図3では時計回り)である回転方向Y2に回転する。これにより、近接した表面同士は反対方向に移動する。コンマロール57は、コーティングロール56から一定の間隔を空けて離間し、コンマロール57とコーティングロール56の隙間の広さによって、コーティングロール56に付着させる活物質ペースト43の厚さを規定する。バッキングロール58は、正極用金属箔22をコーティングロール56に対して接近させる接触位置P1と、正極用金属箔22を接触位置P1から離れさせた離間位置P2に移動可能である。
【0030】
そして、第1の塗布工程では、まず、正極用金属箔22の第1面22bがコーティングロール56に対向し、第2面22cがバッキングロール58に対向するように供給ロール51を塗布装置50にセットする。そして、搬送される正極用金属箔22に対し、バッキングロール58が接触位置P1に移動することで、活物質ペースト43と正極用金属箔22の第1面22bとが接触し、正極用金属箔22の第1面22bに活物質ペースト43が転写される。バッキングロール58を接触位置P1に位置させるタイミングは、コーティングロール56表面の活物質ペースト43を、正極用金属箔22の転写開始位置から転写させるタイミングであり、このタイミングで正極用金属箔22に塗布始端部36aが形成される。
【0031】
その後、正極用金属箔22の第1面22bに所定長さだけ活物質ペースト43が転写されたタイミングで、バッキングロール58が離間位置P2に移動する。そして、バッキングロール58が離間位置P2に移動するタイミングで、正極用金属箔22には塗布終端部36bが形成されるとともに、所定長さを有する活物質ペースト43の塗工部35が形成される。その後、バッキングロール58を離間位置P2に位置させていると、活物質ペースト43が正極用金属箔22に転写されず、正極用金属箔22の長手方向に隣り合う塗工部35の間に、正極用金属箔22の露出した露出部Rが形成される。
【0032】
そして、バッキングロール58を接触位置P1と離間位置P2との間で繰り返し移動させることにより、正極用金属箔22の第1面22bに活物質ペースト43が間欠的に転写される。その結果、正極用金属箔22の第1面22bには、活物質ペースト43の塗工部35と、正極用金属箔22が露出した露出部Rとが、正極用金属箔22の長手方向へ交互に形成される。
【0033】
正極用金属箔22の長手方向に沿った各塗工部35の長さは全て同じであり、各露出部Rの長さも全て同じである。また、正極用金属箔22の長手方向に沿った塗工部35の長さは、正極電極21の活物質層23での面に沿った短手方向への長さより若干長くなっている。これは、後述する切断工程で、塗工部35の塗布始端部36aを切断部として切断するためである。
【0034】
第1の塗布工程において、塗布始端部36aが形成されるとき、活物質ペースト43に対し、正極用金属箔22が押し付けられることから、塗布始端部36aでは目付量が基準目付量より大きくなる端高になる。そして、全ての塗布始端部36aが、バッキングロール58が接触位置P1に位置することで形成されるという同じ条件で形成されるため、全ての塗布始端部36aが端高となる。
【0035】
一方、塗布終端部36bが形成されるとき、バッキングロール58の移動に伴い、正極用金属箔22に転写された活物質ペースト43がコーティングロール56に持っていかれるため、塗布終端部36bでは、目付量が基準目付量より小さくなり、厚みが薄くなった端低となる。そして、全ての塗布終端部36bが、正極用金属箔22が活物質ペースト43から離間することで形成されるという同じ条件で形成されるため、全ての塗布終端部36bが端低となる。
【0036】
なお、活物質ペースト43の粘度はB型粘度計での測定値で4000cp以上が好ましく、6000〜8000cpがより好ましい。これは、塗工部35が形成されたとき、塗布始端部36a及び塗布終端部36bが正極用金属箔22で濡れ広がることを抑制し、端低の発生を抑制するためである。しかし、活物質ペースト43の粘度を所定値に調整しても、上記のように端低が生じてしまうことがある。
【0037】
塗布装置50において、搬送方向X1における転写装置54の下流側には、正極用金属箔22の第1面22bに形成された塗工部35を乾燥させる乾燥炉59が設けられている。乾燥炉59の内部には、高温の熱媒体(例えば空気や窒素ガスなどの気体)が外部から供給される。そして、第1の塗布工程では、乾燥炉59内で塗工部35が加熱され、第1の塗布工程が完了するとともに、乾燥炉59を通過した正極用金属箔22は、第1巻取ロール61に巻き取られる。
【0038】
次に、巻直し工程を行う。
図4に示すように、第1巻取ロール61に巻き取られた正極用金属箔22を第2巻取ロール71に巻直す。すると、正極用金属箔22は、第1巻取ロール61に対し巻き取り完了したときの塗布終端部36b側から第2巻取ロール71に巻き取られる。よって、第2巻取ロール71には、第1巻取ロール61の巻取り後期に巻取られた正極用金属箔22から先に巻き取られ、第1巻取ロール61の巻取り初期の正極用金属箔22ほど、後に第2巻取ロール71に巻取られる。
【0039】
次に、図5に示すように、第2巻取ロール71を塗布装置50にセットし、第2の塗布工程を行う。このとき、正極用金属箔22の第2面22cがコーティングロール56に対向し、第1面22bがバッキングロール58に対向するとともに、既に形成された塗工部35の塗布始端部36aが塗布終端部36bより先に送り出されるように第2巻取ロール71をセットする。そして、第2巻取ロール71から正極用金属箔22を供給しながらバッキングロール58を接触位置P1と離間位置P2との間で繰り返し移動させ、正極用金属箔22の第2面22cに対し間欠塗工を行う。
【0040】
このとき、コーティングロール56表面の活物質ペースト43を第2面22cに転写開始させる位置に、既に形成された塗工部35の塗布始端部36aが移動したタイミングで、バッキングロール58を接触位置P1に移動させる。すると、第1面22bに既に形成された塗工部35の塗布始端部36aと、第2面22cに形成される塗工部35の塗布始端部36aとが正極用金属箔22を厚み方向に挟んだ同じ位置に位置する。同様に、第1面22bに既に形成された塗工部35の塗布終端部36bと、第2面22cに形成される塗工部35の塗布終端部36bとが同じ位置に位置する。このときも、第1の塗布工程と同じように、塗布始端部36aが端高となり、塗布終端部36bが端低となる。
【0041】
その結果、正極用金属箔22の第2面22cには、塗工部35と露出部Rとが、正極用金属箔22の長手方向へ交互に形成される。その後、正極用金属箔22の第2面22cに形成された塗工部35も乾燥炉59で乾燥され、第2の塗布工程が完了するとともに、正極用金属箔22が第3巻取ロール81に巻き取られる。その結果、正極用金属箔22の両面に塗工部35及び露出部Rが交互に形成された電極材料30が形成される。電極材料30において、正極用金属箔22を厚み方向に挟む塗工部35同士では、塗布始端部36aは揃って同じ端高(目付量)となり、塗布終端部36bは揃って同じ端低(目付量)となる。
【0042】
次に、図6に示すように、正極用金属箔22の長手方向に直交した幅方向において、塗工部35の両側に位置する正極用金属箔22を切除するスリット工程を行う。すると、電極材料30は、その幅方向への長さが、正極電極21の長手方向に沿う長さと同じになる。
【0043】
次に、電極材料30を正極用金属箔22の両面側からロールプレスし、塗工部35をプレスするプレス工程を行う。プレスを行うことで、塗工部35の厚みが、プレス前より薄くなるが、目付量は変わらない。なお、目付量の大小を図示するために、図7図12では、塗布始端部36a及び塗布終端部36bを端高又は端低状に図示する。
【0044】
次に、塗工部35において、塗布始端部36a、塗布終端部36b、及び塗布始端部36aと塗布終端部36bに挟まれた中央部の目付量を測定する測定工程を行う。
塗工部35の中央部付近では、活物質層23で予め決められた所定の基準目付量となっている。この基準目付量に対し、端高の塗布始端部36aでは目付量が大きく、端低の塗布終端部36bでは目付量が小さくなっている。本実施形態では、塗布終端部36bから所定距離、例えば1mm離れた部分の目付量は、基準目付量の90%以上かつ110%以下となっている。
【0045】
次に、塗布始端部36aと塗布終端部36bのうち、端高である塗布始端部36a側が、正極電極21の縁部23bとなるように塗工部35から塗布始端部36aを切断部として切断する切断工程を行う。切断工程は、切断装置70を用いて行う。
【0046】
図7(a)に示すように、切断装置70は、電極材料30を支持する支持台70aと、正極電極21の外形形状に沿う切断刃を有する切断具70bと、を備える。切断具70bは、正極電極21を一括して形成可能とするため、塗工部35と露出部Rを一括して打ち抜く。
【0047】
切断工程では、端高の塗布始端部36a、及び端低の塗布終端部36bのうち、端高の塗布始端部36aを切断部として塗工部35から切断し、除去する。すなわち、端高と端低とでは、基準目付量に対し変動幅の大きい端高の端部を切断部として塗工部35から切断する。
【0048】
図7(b)及び図8に示すように、切断具70bの切断刃を、塗布始端部36aよりも塗布終端部36b寄りに位置させ、切断具70bによって塗布始端部36aを含む端部を切断する。すると、塗工部35の切断後縁部から活物質層23の縁部23bが形成される。
【0049】
また、図7(c)及び図8に示すように、切断具70bの切断刃を、塗布終端部36bよりも露出部R寄りに離れた位置に位置させ、切断具70bによって露出部Rを切断する。すると、塗布終端部36bによって活物質層23のタブ側縁部23aが形成されるとともに、露出部Rから正極未塗工部22d及び集電タブ31が形成され、電極材料30から正極電極21が製造される。
【0050】
なお、第1及び第2の塗布工程を経て得られた電極材料30では、図9に示すように、塗工部35の塗布始端部36aと塗布終端部36bがそれぞれ端高になる場合もある。この場合は、塗布始端部36aの方が塗布終端部36bよりも高さが高く、塗布始端部36aの目付量の方が、基準目付量に対する変動幅が大きくなっている。
【0051】
図10に示すように、切断工程では、変動幅の大きい塗布始端部36a側から正極電極21の縁部23bが形成されるように塗工部35から塗布始端部36aを切断する。よって、塗布始端部36aが切断部となる。具体的には、塗布始端部36aを塗工部35から切断すると、塗工部35には切断後縁部が形成され、その切断後縁部から正極電極21の縁部23bが形成される。
【0052】
また、第1及び第2の塗布工程を経て得られた電極材料30では、図11に示すように、塗工部35の塗布始端部36aと塗布終端部36bがそれぞれ端低になる場合もある。この場合、塗布始端部36aの方が塗布終端部36bよりも高さが低く、塗布始端部36aの目付量の方が、基準目付量に対する変動幅が大きくなる。
【0053】
図12に示すように、切断工程では、変動幅の大きい塗布始端部36a側から正極電極21の縁部23bが形成されるように塗工部35から塗布始端部36aを切断する。よって、塗布始端部36aが切断部となる。具体的には、塗布始端部36aを塗工部35から切断すると、塗工部35には切断後縁部が形成され、その切断後縁部から正極電極21の縁部23bが形成される。
【0054】
なお、切断工程では、塗工部35に形成された切断後縁部からタブ側縁部23aに向けて所定距離、例えば1mm離れた部分での目付量が、基準目付量に対し95%以上かつ105%以下となるように切断部を塗工部35から切断する。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)塗工部35は間欠塗工によって形成されるため、正極用金属箔22の第1面22bの全ての塗工部35において塗布始端部36aは端高又は端低に統一され、全ての塗布終端部36bも端高又は端低に統一される。同様に、正極用金属箔22の第2面22cの全ての塗工部35において塗布始端部36aは端高又は端低に統一され、全ての塗布終端部36bも端高又は端低に統一される。また、正極用金属箔22を厚み方向に挟んだ塗工部35同士では、塗布始端部36a同士が同じ位置に位置し、塗布終端部36b同士が同じ位置に位置する。このため、基準目付量に対し変動幅の大きい端部を、塗布始端部36a又は塗布終端部36bのいずれかに統一することができ、変動幅の大きい端部を切断部として一括して塗工部35から切断することができる。よって、基準目付量に対し変動幅の大きい端部を除去でき、得られた活物質層23の縁部23bでの目付量を基準目付量に近付けることができる。
【0056】
(2)切断工程では、塗布始端部36a及び塗布終端部36bのうち、基準目付量に対し、変動幅の大きい方の端部を切断する。このため、得られた活物質層23の縁部23bにおいて、基準目付量に対する目付量の変動幅を抑えた正極電極21を製造することができる。
【0057】
(3)活物質層23の縁部23bからタブ側縁部23aに所定距離離れた部分での目付量が、基準目付量の95%以上かつ105%以下となるように、塗工部35から切断部を切断する。このため、塗工部35を切断して活物質層23を製造しても、得られる正極電極21において、活物質層23全体の目付量を基準目付量に近付けることができる。
【0058】
(4)塗布始端部36a及び塗布終端部36bのうち、一方が端高となり、他方が端低となった場合、端高の端部を切断部として塗工部35から切断する。また、塗布始端部36a及び塗布終端部36bが端高となった場合、より高さの高い端部を切断部として塗工部35から切断する。このため、活物質層23においては、基準目付量よりも大きい目付量の部分が少なくなる。よって、本実施形態の製造方法で得られた正極電極21を採用した二次電池10では、目付量が大きいことが原因で生じる金属リチウムの析出を抑制することができる。
【0059】
(5)塗布始端部36a及び塗布終端部36bが端低となった場合、より高さの低い端部を切断部として塗工部35から切断する。このため、活物質層23においては、基準目付量よりも小さい目付量の部分が少なくなる。よって、本実施形態の製造方法で得られた正極電極21を採用した二次電池10では、目付量が小さいことが原因で生じるエネルギー密度の低下を抑制することができる。
【0060】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、基準目付量に対し、目付量の変動幅の大きい端部として塗布始端部36aを切断部としたが、基準目付量に対する塗布終端部36bの目付量の変動幅が大きい場合には、塗布終端部36bを切断部として塗工部35から切断する。
【0061】
○ 切断工程では、切断具70bによって、活物質層23と集電タブ31を一括して切断し、切断部を塗工部35から切断する工程と、集電タブ31を形成する工程とを一度に行ったが、これに限らない。例えば、塗工部35の塗布始端部36a又は塗布終端部36bを切断部として切断して活物質層23の縁部23bを形成した後、別工程で露出部Rを切断して正極未塗工部22dと集電タブ31を形成してもよい。
【0062】
○ 塗布工程では、第1の塗布工程で正極用金属箔22の第1面22bに塗工部35と露出部Rを形成し、第2の塗布工程で正極用金属箔22の第2面22cに塗工部35と露出部Rを形成したが、塗布工程はこれに限定されない。塗布装置として、例えば、ダイを用い、正極用金属箔22の第1面22bと第2面22cそれぞれにダイを対向配置する。そして、塗布工程では、同時に第1面22bと第2面22cに活物質ペーストを塗布して、正極用金属箔22の両面に塗工部35と露出部Rを同時に形成してもよい。
【0063】
○ 負極電極24も正極電極21と同じ製造方法で製造してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)金属箔の長手方向に沿って塗工部を挟んで前記切断部となる端部とは反対側の端部を切断し、前記露出部から前記タブを形成する工程を含む電極の製造方法。
【0064】
(ロ)金属箔の両面に設けられた活物質層と、前記活物質層のタブ側縁部に沿った前記金属箔の一辺の一部から突出するタブと、を有する異なる極の電極を絶縁した状態で積層した電極組立体をケース内に備える蓄電装置であって、前記電極は、請求項1又は請求項2に記載の電極の製造方法によって製造されている蓄電装置。
【符号の説明】
【0065】
R…露出部、21…電極としての正極電極、22…金属箔としての正極用金属箔、23,26…活物質層、23a…タブ側縁部、23b…縁部、24…電極としての負極電極、25…金属箔としての負極用金属箔、31,32…集電タブ、35…塗工部、36a…塗布始端部、36b…塗布終端部、43…活物質合剤としての活物質ペースト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12