(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206238
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】光加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20170925BHJP
F24C 7/06 20060101ALI20170925BHJP
F24C 7/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H05B3/00 350
F24C7/06 Z
F24C7/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-28126(P2014-28126)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-153674(P2015-153674A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真司
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04680451(US,A)
【文献】
実開昭59−139807(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
F24C 7/04
F24C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の直管型ハロゲンランプが、密接に配置される所定の離間間隔で、当該ハロゲンランプの中心軸が一平面内において平行に位置されるよう配置され、被照射物に対して光照射することにより当該被照射物を加熱処理する光加熱装置において、
前記ハロゲンランプの一部のものは、直管状部と、この直管状部に連続し、発光管の径方向外方に湾曲した弧状湾曲部とを有し、当該ハロゲンランプが、当該ハロゲンランプの中心軸方向外方から視たときに、前記直管状部の管軸位置と前記弧状湾曲部の管軸位置とが前記一平面方向に垂直な方向に並ばないように、当該直管状部の管軸を中心に回転された状態で配置されており、当該弧状湾曲部により、当該ハロゲンランプと隣接するハロゲンランプとの間に、前記所定の離間間隔より大きい拡張間隙が形成されており、
前記拡張間隙が前記被照射物の温度測定に利用されることを特徴とする光加熱装置。
【請求項2】
前記ハロゲンランプの隣接する2本が、前記直管状部と、前記弧状湾曲部とをそれぞれ有し、各弧状湾曲部が、発光管の長手方向の互いに対向する一部に形成され、各直管状部の管軸を中心に互いに反対方向に回転された状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項3】
前記拡張間隙を介して、前記被照射物の表面に対向して放射温度計が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射物に対して光照射することにより当該被照射物を加熱処理する光加熱装置に関し、更に詳しくは、複数本のハロゲンランプを平行に配置した光加熱装置において、放射温度計を介して被照射物の温度を測定するために、ハロゲンランプの構造に特徴を有する光加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の直管型のハロゲンランプを一平面内において平行に配置した光加熱装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、被照射物の両面に複数本の直管型ハロゲンランプを一平面内において平行に密接して配置する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−279008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、密接に配置されたハロゲンランプによって加熱処理される被照射物の温度を直接的に測定することができないという問題があった。この問題を解決するために、特定の箇所のランプを間引いて、その間隙から放射温度計などにより温度測定する方法がある。しかしながら、このような方法によっては、加熱温度の均一性を保つことができないという問題がある。一方、ハロゲンランプの本数を減らす方法があるが、このような方法によっては、十分な加熱処理を行うことができない。
【0005】
本発明の目的は、光照射により加熱処理される被照射物の温度の均一性を確保しながらも、温度測定手段を用いて正確な温度測定を可能にする光加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光加熱装置は、複数本の直管型ハロゲンランプが、
密接に配置される所定の離間間隔で
、当該ハロゲンランプの中心軸が一平面内において平行に位置されるよう配置され、被照射物に対して光照射することにより当該被照射物を加熱処理する光加熱装置において、
前記ハロゲンランプの一部のものは、直管状部と、この直管状部に連続し、発光管の径方向外方に湾曲した弧状湾曲部とを有し、当該ハロゲンランプが、当該ハロゲンランプの中心軸方向外方から視たときに、前記直管状部の管軸位置と前記弧状湾曲部の管軸位置とが前記一平面方向に垂直な方向に並ばないように、当該直管状部の管軸を中心に回転された状態で配置されており、当該弧状湾曲部により、当該ハロゲンランプと隣接するハロゲンランプとの間に、前記所定の離間間隔より大きい拡張間隙が形成されて
おり、
前記拡張間隙が前記被照射物の温度測定に利用されることを特徴とする。
【0007】
本発明の光加熱装置においては、前記ハロゲンランプの隣接する2本が、前記直管状部と、前記弧状湾曲部とをそれぞれ有し、各弧状湾曲部が、発光管の長手方向の互いに対向する一部に形成され、各直管状部の管軸を中心に互いに反対方向に回転された状態で配置されていることが好ましい。
【0009】
本発明の光加熱装置においては、前記拡張間隙を介して、前記被照射物の表面に対向して放射温度計が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光加熱装置においては、回転された状態で配置されたハロゲンランプにおける弧状湾曲部により、当該ハロゲンランプと隣接するハロゲンランプとの間に、所定の離間間隔より大きい拡張間隙が形成されている。従って、本発明の光加熱装置によれば、光照射により加熱処理される被照射物の温度の均一性を確保しながらも、温度測定手段を用いて正確な温度測定を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の光加熱装置の構成の概略の一例を示す説明用正面断面図である。
【
図2】
図1の光加熱装置を構成するハロゲンランプの構成の概略の一例を示す説明用側面図である。
【
図3】
図1の光加熱装置を構成する弧状湾曲部を有するハロゲンランプの構成の概略の一例を示す説明用側面図である。
【
図4】
図1の光加熱装置における拡張間隙の一例を示す説明用概略図であり、(a)は中央に位置する2本のハロゲンランプの平面断面図、(b)は当該ハロゲンランプの中心軸方向外方からの正面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の光加熱装置の構成の概略の一例を示す説明用正面断面図であり、
図2は、
図1の光加熱装置を構成するハロゲンランプの構成の概略の一例を示す説明用側面図であり、
図3は、
図1の光加熱装置を構成する弧状湾曲部を有するハロゲンランプの構成の概略の一例を示す説明用側面図であり、
図4は、
図1の光加熱装置における拡張間隙の一例を示す説明用概略図である。
光加熱装置10は、例えば平板状の被照射物Wに対して光照射することにより当該被照射物Wを加熱処理するためのものである。
【0014】
この光加熱装置10は、例えばステンレスよりなるケーシング11と、例えば放射温度計よりなる温度測定手段Tとを具えている。ケーシング11内には、被照射物Wを載置する載置部材(図示せず)が設けられている。また、ケーシング11内には、直管型のハロゲンランプ21aの複数本(例えば30本)が、当該ハロゲンランプ21aの中心軸Cが同一平面内において互いに平行に延びるよう位置されて、一定の離間間隔Rで配置された上部ランプユニット20Aと、直管型のハロゲンランプ21bの複数本(例えば30本)が、当該ハロゲンランプ21bの中心軸Cが同一平面内において互いに平行に延びるよう位置されて、一定の離間間隔Rで配置された下部ランプユニット20Bとが、被照射物Wを介して対向するように配置されている。
この光加熱装置10においては、ケーシング11の底面(
図1における下面)に、温度測定手段Tの測定視野を確保するための測定窓(図示せず)が設けられている。
【0015】
上部ランプユニット20Aを構成する各々のハロゲンランプ21aは、例えば
図2に示すように、両端に封止部23が形成された全体が略直管状の発光管22を具えている。発光管22内には、フィラメント24が発光管22の管軸方向に沿って伸びるよう配設されていると共に所要の不活性ガスおよびハロゲンガスが適宜の封入量で封入されている。フィラメント24の両端部は、封止部23の各々に気密に封着されて埋設された導電性箔(図示せず)を介して、封止部23の端面より突出して伸びる外部リード棒28(
図4参照)に接続された構成とされている。
【0016】
下部ランプユニット20Bを構成するハロゲンランプ21bの一部のもの、具体的には、30本のハロゲンランプ21bのうち中央に位置する2本のハロゲンランプ21b1,21b2は、発光管の長手方向の中央部分に弧状湾曲部をそれぞれ有している。具体的には、
図3に示すように、ハロゲンランプ21b1(21b2)は、両端に封止部23が形成された発光管22Xを具えている。発光管22Xは、両端の封止部23を含む直管状部22Sと、この直管状部22Sと連続し、発光管22Xの径方向外方に湾曲した弧状湾曲部22Rとを有している。この発光管22X内に、フィラメント24が発光管22Xの管軸方向に沿って伸びるよう配設されている。
ハロゲンランプ21b1(21b2)のその他の構成は、上部ランプユニット20Aを構成するハロゲンランプ21aと同様である。また、下部ランプユニット20Bを構成する30本のハロゲンランプ21bのうち、中央に位置する2本のハロゲンランプ21b1,21b2以外のハロゲンランプ21bは、上部ランプユニット20Aを構成するハロゲンランプ21aと同様のものである。
【0017】
図2および
図3において、符号25は、フィラメント24を支持するサポータ、符号26は、排気管残部である。ハロゲンランプ21a(21b)は、それぞれ、発光管22(22X)の両端で保持し、封止部23によって位置決めされてケーシング11に固定されている。
【0018】
この例においては、
図4(a)に示すように、2本の隣接するハロゲンランプ21b1,21b2における各弧状湾曲部22Rは、発光管22Xの長手方向の互いに対向する中央部分に形成されている。
【0019】
ここで、下部ランプユニット20Bにおいて、同一平面内に位置されるハロゲンランプ21bの中心軸Cは、弧状湾曲部22Rを有するハロゲンランプ21b1(21b2)については、直管状部22Sの管軸C’とする。
【0020】
図4(b)に示すように、弧状湾曲部22Rを有するハロゲンランプ21b1は、当該ハロゲンランプ21b1の中心軸C方向外方から視たときに、直管状部22Sの管軸(C’)位置Xと弧状湾曲部22Rの管軸位置Yとが、ハロゲンランプ21b(21b1,21b2)の中心軸C(管軸C’)が位置される一平面方向に垂直な方向Vに並ばないように、当該直管状部22Sの管軸C’を中心に回転された状態で配置されている。また、弧状湾曲部22Rを有するハロゲンランプ21b2についても、ハロゲンランプ21b1と同様に、直管状部22Sの管軸(C’)位置Xと弧状湾曲部22Rの管軸位置Yとが、ハロゲンランプ21b(21b1,21b2)の中心軸C(管軸C’)が位置される一平面方向に垂直な方向Vに並ばないように、ハロゲンランプ21b1の回転方向とは反対方向に当該直管状部22Sの管軸C’を中心に回転された状態で配置されている。
この回転配置されたハロゲンランプ21b1,21b2における弧状湾曲部22R,22Rにより、ハロゲンランプ21b1とハロゲンランプ21b2との間に、離間間隔Rより大きい拡張間隙Eが形成されている。
【0021】
弧状湾曲部22Rを有するハロゲンランプ21b1(21b2)の回転角度α、すなわち、当該ハロゲンランプ21b1(21b2)の中心軸C方向外方から視たときに、一平面方向に垂直な方向Vに対して当該管軸C’を中心に回転する角度は、温度分布に対する影響を考慮すると、最大で30°とされる。
弧状湾曲部22Rは、回転配置されたときに離間間隔Rより大きい拡張間隙Eが形成されるように構成されていれば特に形状等は限定されない。
【0022】
この光加熱装置10においては、弧状湾曲部22Rを有するハロゲンランプ21b1,21b2における弧状湾曲部22R,22Rによって形成された拡張間隙Eを介して被照射物Wの下面に対向して放射温度計よりなる温度測定手段Tが配置されている。光加熱装置10においては、拡張間隙Eが放射温度計によって被照射物Wの温度測定される際の測定視野となる。
【0023】
拡張間隙Eが被照射物Wの温度測定に利用される場合において、拡張間隙Eの大きさが小さいと例えば放射温度計の感度が低下するため、拡張間隙Eの最大幅Emax が例えば5〜20mmとなるように、弧状湾曲部22Rの形状やハロゲンランプ21b1(21b2)の回転角度が設定されることが好ましい。また、拡張間隙Eは、温度分布に対する影響を小さいものとするため、被照射物Wの中央位置または装置の中央位置に形成されることが好ましい。なお、本実施形態においては、ケーシング11の底面に設けられた測定窓(図示せず)は、拡張間隙Eが形成された位置の直下に位置されているものとする。
【0024】
光加熱装置10の一寸法例を示すと、ハロゲンランプ21a(21b)の発光管22の外径は13mm、発光管22の全長は700mm、発光長は540mm、ランプ中心軸間(C−C)の距離Pは15mm、離間間隔R(ランプ間間隔)は2mmである。弧状湾曲部22Rを有するハロゲンランプ21b1(21b2)の発光管22Xにおける直管状部22Sの外径は13mm、発光管22Xにおける弧状湾曲部22Rの外径は13mm、発光管22Xの全長は700mm、発光長は540mm、ランプ中心軸間(直管状部22Sの管軸間:C’−C’)の距離Pは15mm、離間間隔R(直管状部22Sのランプ間間隔)は2mm、回転角度αは30°、拡張間隙Eの最大幅Emax は15mmである。ハロゲンランプ21a(21b)の定格電圧は360V、ランプ電力は7020Wである。被照射物Wの表面(上面または下面)からハロゲンランプ21a(21b)の中心軸C(C’)までの距離は50mm、温度測定手段T(放射温度計)の先端から被照射物Wの下面までの距離は200mmである。
また、被照射物Wは、例えば鉄からなり、寸法は縦400mm×横300mm×厚み3mmとされる。被照射物Wの目標加熱温度は例えば900℃とされる。
【0025】
以上のような光加熱装置10においては、被照射物Wを載置部材に載置した後、上部ランプユニット20Aおよび下部ランプユニット20Bから被照射物Wに対して光照射が行われる。この光照射により、被照射物Wが加熱処理される。そして、被照射物Wの下面に対向して配置された温度測定手段T(放射温度計)によって、加熱された被照射物Wについて拡張間隙Eを介して、温度測定が行われ、適宜温度制御が行われる。
【0026】
このような光加熱装置10においては、回転された状態で配置されたハロゲンランプ21b1,21b2における弧状湾曲部22R,22Rにより、ハロゲンランプ21b1とハロゲンランプ21b2との間に、離間間隔Rより大きい拡張間隙Eが形成されている。従って、温度測定手段T(放射温度計)によって被照射物Wの温度測定する場合にも、測定視野を確実に確保することができる。また、必要最小限の測定視野を拡張間隙Eによって確保するのみであるので、温度分布が極端に不均一となることがない。以上のことから、光加熱装置10によれば、光照射により加熱処理される被照射物Wの温度の均一性を確保しながらも、温度測定手段Tを用いて正確な温度測定を可能とすることができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
図1の例では、下部ランプユニット20Bの中央に位置する2本のハロゲンランプに弧状湾曲部をそれぞれ形成し、当該2本のハロゲンランプを互いに反対方向に回転配置したが、例えば1本のハロゲンランプのみに弧状湾曲部を形成し、当該ハロゲンランプを回転配置してもよく、また例えば中央に位置する隣接する左右3本のハロゲンランプに弧状湾曲部をそれぞれ形成し、当該左右3本ずつのハロゲンランプを互いに反対方向に順次回転配置してもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 光加熱装置
11 ケーシング
20A 上部ランプユニット
20B 下部ランプユニット
21a ハロゲンランプ
21b ハロゲンランプ
21b1,21b2 ハロゲンランプ
22 発光管
22X 発光管
22S 直管状部
22R 弧状湾曲部
23 封止部
24 フィラメント
25 サポータ
26 排気管残部
28 外部リード棒
C ハロゲンランプの中心軸
C’ 直管状部の管軸
E 拡張間隙
T 温度測定手段