(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に液体潤滑剤を収納する潤滑剤収納領域と、駆動する被クリーニング部材に接触した際に前記駆動の方向の上流側を向く面に設けられ、前記液体潤滑剤を吐出する吐出口と、を備え、前記被クリーニング部材との摩擦により振動するブレード本体と、
前記潤滑剤収納領域に収納され、50Hzの振動を与えた際の粘度ηが47Pa・s以上、150Hzの振動を与えた際の粘度ηが0.01Pa・s以上10.5Pa・s以下であるチキソ性を有する液体潤滑剤と、
を有するクリーニングブレード。
前記液体潤滑剤が、流動パラフィン、ナフテン酸金属石鹸、オクチル酸金属石鹸、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状メチルシリコーンオイル、フッ素オイル、高級アルコールオイル、および高級脂肪酸オイルからなる群より選択される少なくとも一種の液体オイルと、シリカ、酸化チタン、モンモリロナイト、ベントナイト、および炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種のチキソ性付与剤と、を含有する請求項1に記載のクリーニングブレード。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のクリーニングブレード、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、および画像形成装置の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<クリーニングブレード>
本実施形態に係るクリーニングブレードは、ブレード本体と液体潤滑剤とを有する。
ブレード本体は、内部に液体潤滑剤を収納する潤滑剤収納領域と、駆動する被クリーニング部材に接触した際に前記駆動の方向の上流側を向く面に設けられ、前記液体潤滑剤を吐出する吐出口と、を備える。また、前記被クリーニング部材との摩擦により振動する。
液体潤滑剤は、前記潤滑剤収納領域に収納され、50Hzの振動を与えた際の粘度ηが47Pa・s以上、150Hzの振動を与えた際の粘度ηが0.01Pa・s以上10.5Pa・s以下であるチキソ性を有する。
【0019】
ここで、図を用いて本実施形態に係るクリーニングブレードの構成を説明する。尚、以下においては、画像形成装置において像保持体(感光体)の表面を本実施形態に係るクリーニングブレードによってクリーニングする場合を例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るクリーニングブレードと被クリーニング部材である像保持体とを表す概略断面図である。また
図2は、本実施形態に係るクリーニングブレードの概略斜視図であり、内部の潤滑剤収納領域を透過して描いている。更に
図3は、本実施形態に係るクリーニングブレードと駆動している状態の像保持体とを表す概略断面図である
【0021】
図1に示すごとく、本実施形態に係るクリーニングブレード20は矢印A方向に回転しながら駆動する像保持体16の表面に対し、像保持体16の駆動方向に対して反対方向から先端の角部2を接触させて像保持体16の表面のクリーニングを行う。
但し、
図1には像保持体16が停止している(駆動していない)状態を描いており、つまり
図1に示す矢印Aは、像保持体16が駆動した場合における駆動方向を示すものである。
【0022】
クリーニングブレード20は、内部に液体潤滑剤を収納する潤滑剤収納領域8を有し、この潤滑剤収納領域8には液体潤滑剤が収納されている。また、像保持体16に角部2が接触した状態で像保持体16の駆動方向(矢印A方向)の上流側方向に向けられる面(以降「先端面」と称す)6には、潤滑剤収納領域8に収納された液体潤滑剤を吐出する吐出口4を有する。
尚、画像形成装置における像保持体16の表面をクリーニングブレード20によってクリーニングする場合であれば、吐出口4の幅(吐出口4の像保持体16軸方向における長さ)は、画像の形成に寄与する領域以上の長さであることが望ましい。また、潤滑剤収納領域8の幅(潤滑剤収納領域8の像保持体16軸方向における長さ)は特に限定されるものではないが、吐出口4の幅と同じ長さであることが望ましい。
また、吐出口4の形状は、先端面6側から観察した場合に、切れ目状に形成されていることが好ましい。一方、潤滑剤収納領域8の形状は、吐出口4側に向かって徐々に先細る形状を有しており、言い換えれば吐出口4側から徐々に膨らんでいく形状であることで、液体潤滑剤を収納する領域を確保している。
【0023】
また、クリーニングブレード20は、
図1および
図2に示すごとく、クリーニングブレード20の外部から潤滑剤収納領域8に液体潤滑剤を供給する供給通路10を有しており、本実施形態ではクリーニングブレード20の外部に設置された液体潤滑剤カートリッジ(不図示)から供給通路10を通じて潤滑剤収納領域8に液体潤滑剤が自動的に供給されるよう構成されている。
尚、前記液体潤滑剤カートリッジは必ずしも有していなくてもよく、液体潤滑剤が減少した段階で使用者が補給する態様であってもよい。
【0024】
ここで、クリーニングブレード20の吐出口4から像保持体16の表面に液体潤滑剤が吐出される機構について説明する。
【0025】
まず、前記液体潤滑剤における「チキソ性」とは、チキソトロピー性のことであり、剪断力が付与されないまたは付与される剪断力が低いときは固形状となるかまたは粘度が高い状態となっている一方で、付与される剪断力が高くなると、粘度が低い状態となる性質である。つまり、本実施形態における液体潤滑剤は、高い剪断力が加えられた際に粘度が低下する性質を有することを表している。
【0026】
従来、被クリーニング部材に接触して表面を清掃するクリーニングブレードでは、被クリーニング部材の駆動に伴って接触部が摺動し、この摺動部分で摩耗が生じることがあり、摩耗した箇所ではクリーニング性が劣ることがあった。
一方で、前記接触部での摩擦力を低減してクリーニングブレードの摩耗を抑制する観点からクリーニングブレードと被クリーニング部材との接触部分に外部から液体潤滑剤を供給する方法が行われてきた。しかしながら、外部から液体潤滑剤を供給する場合、接触部に適度な量の潤滑剤が供給されて被クリーニング部材とクリーニングブレードとの摺動が安定している状態であっても、また接触部での潤滑剤の量が低減し摺動が不安定になった状態であっても、外部から一定量の液体潤滑剤が供給されるため効率的でなかった。更には、余剰の液体潤滑剤が他の部材を汚染することもあった。
そのため、クリーニングブレードの摺動の状態に応じて潤滑剤の供給量を制御することが求められていた。
【0027】
これに対して、本実施形態に係るクリーニングブレードでは、上記構成により、クリーニングブレードと被クリーニング部材との摺動により振動数の変化に応じて潤滑剤の供給量が適切に制御される。
この理由は、以下に示す理由と考えられる。
【0028】
まず、本実施形態に係るクリーニングブレードは、
図1に示すごとく、像保持体16等の被クリーニング部材の表面に接触して配置される。被クリーニング部材が矢印A方向に駆動すると、クリーニングブレード20と被クリーニング部材との接触部に摺動が生じて、被クリーニング部材の表面が清掃される。
この際、クリーニングブレード20は被クリーニング部材との摺動により振動が生じ、この振動はクリーニングブレード20の潤滑剤収納領域8に収納される液体潤滑剤にも伝わる。尚、被クリーニング部材との摩擦力が小さいほどクリーニングブレード20の振動数は小さく、一方被クリーニング部材との摩擦力が大きいほどクリーニングブレード20の振動数は大きくなる。そのため、被クリーニング部材とクリーニングブレード20との摩擦力が小さいときは、クリーニングブレード20に収納される液体潤滑剤に対してかかる振動も小さい状態となっている。与えられる振動が小さく、つまり付与される剪断力が低い状態では、液体潤滑剤はそのチキソ性という特性から粘度が高い状態であると考えられる。そのため、潤滑剤収納領域8に収納される液体潤滑剤はクリーニングブレード20の吐出口4から吐出されず、クリーニングブレード20と被クリーニング部材との接触部(ニップ部)に供給される液体潤滑剤の量も低減されると考えられる。
【0029】
一方、被クリーニング部材とクリーニングブレード20との摩擦力が大きくなると、潤滑剤収納領域8に収納される液体潤滑剤に対してかかる振動も大きくなる。与えられる振動が大きくなり、つまり付与される剪断力が高くなると、液体潤滑剤はそのチキソ性という特性から粘度が低下し、クリーニングブレード20の吐出口4から吐出され、クリーニングブレード20と被クリーニング部材との接触部(ニップ部)に供給される液体潤滑剤の量が増加すると考えられる。すると、その液体潤滑剤の潤滑機能から、ニップ部に掛かる力が低減され、クリーニングブレード20の姿勢が安定化し、被クリーニング部材とクリーニングブレード20との摩擦力が再び低減される。このため、被クリーニング部材表面に存在する清掃すべき異物のすり抜けが抑制されると考えられる。
【0030】
そして、液体潤滑剤が前記の条件を満たすチキソ性を有することにより、摩擦によってクリーニングブレード20に生じる振動数が低いときは、液体潤滑剤が高い粘度を維持してクリーニングブレード20の潤滑剤収納領域8に留まって、吐出口4からの液体潤滑剤の供給が抑制され、一方クリーニングブレード20の姿勢が不安定になりクリーニングブレード20に生じる振動数が高くなったときは、液体潤滑剤の粘度が速やかに低下してクリーニングブレード20の吐出口4から吐出され、ニップ部に供給され易くなり、クリーニングブレード20の姿勢安定化が発揮されると考えられる。
【0031】
以上から、本実施形態に係るクリーニングブレードでは、被クリーニング部材との摺動の状態に応じて液体潤滑剤の供給量が適切に制御され、またクリーニング不良が抑制されると考えられる。また、余剰の液体潤滑剤がニップ部に供給されることが低減されるため、液体潤滑剤による他の部材の汚染も低減されるものと考えられる。
【0032】
またこれに加え、本実施形態に係るクリーニングブレードでは、液体潤滑剤の潤滑機能から、クリーニングブレードの姿勢が安定化するため、クリーニングブレードおよび被クリーニング部材に対する過剰な機械的負荷が掛かるのも抑制されると考えられる。その結果、クリーニングブレードの長寿命化も実現され易くなると考えられる。
【0033】
・用途
尚、本実施形態のクリーニングブレードを利用して被クリーニング部材をクリーニングする場合、クリーニングの対象となる被クリーニング部材としては、
図1乃至
図3に示した像保持体(感光体)には限られない。例えば、画像形成装置内において、表面のクリーニングが要求される部材であれば特に限定されず、例えば、中間転写体や、帯電ロール、転写ロール、被転写材搬送ベルト、用紙搬送ロール、像保持体からトナーを除去するクリーニングブラシからさらにトナーを除去するデトーニングロール等も挙げられる。但し、本実施形態においては、像保持体であることが特に望ましい。
【0034】
・液体潤滑剤
液体潤滑剤は、50Hzの振動を与えた際の粘度ηが47Pa・s以上、150Hzの振動を与えた際の粘度ηが0.01Pa・s以上10.5Pa・s以下であるチキソ性を有する。
【0035】
ここで、「チキソ性」とは、チキソトロピー性のことであり、剪断力が付与されないまたは付与される剪断力が低いときは固形状となるまたは粘度が高い状態となっている一方で、付与される剪断力が高くなると、粘度が低い状態となる性質である。
【0036】
−液体潤滑剤の粘度の測定−
粘度ηとは、温度30℃で特定の振動を付与したときの液体潤滑剤の粘度(Pa・s)を示す。
液体潤滑剤に対し50Hzの振動を与えた際の粘度η、および150Hzの振動を与えた際の粘度ηは下記の方法により測定される。
まず、液体潤滑剤をビーカーに移し、卓上振動試験機(CV−101、アズワン社製)に設置し、振動数を50Hzまたは150Hzに設定したうえで液体潤滑剤の入ったビーカーに振動を与え、振動開始から1分後の粘度についてTVB10形粘度計(東機産業社製)により測定を行う。尚、50Hzの振動を与えた際はM4ローターを使用し、150Hzの振動を与えた際はLアダプタを使用する。
【0037】
150Hzの振動を与えた際の粘度ηが10.5Pa・sを上回ると、被クリーニング部材とクリーニングブレード20との摩擦力が大きくなり潤滑剤収納領域8に収納される液体潤滑剤に対してかかる振動が大きくなった際に、該液体潤滑剤の粘度が低下し切らず、吐出口4からの吐出が良好に行われない。
150Hzの振動を与えた際の粘度ηが0.01Pa・sを下回ると、被クリーニング部材とクリーニングブレード20との摩擦力が大きくなり潤滑剤収納領域8に収納される液体潤滑剤に対してかかる振動が大きくなった際に、該液体潤滑剤の粘度が低下し過ぎて、吐出口4から求められる量を超える液体潤滑剤が供給される。
50Hzの振動を与えた際の粘度ηが47Pa・sを下回ると、被クリーニング部材とクリーニングブレード20との摩擦力が小さく潤滑剤収納領域8に収納される液体潤滑剤に対してかかる振動が小さい場合にも、該液体潤滑剤の粘度が低下してしまい、吐出口4から求められる量を超える液体潤滑剤が供給される。
【0038】
尚、液体潤滑剤の50Hzの振動を与えた際の粘度ηは、更に100Pa・s以上であることが好ましく、500Pa・s以上がより好ましい。また、その上限値は特に限定されるものではないが、2000Pa・s以下であることが好ましく、1500Pa・s以下がより好ましい。
150Hzの振動を与えた際の粘度ηは、更に2Pa・s以上8Pa・s以下であることが好ましく、3Pa・s以上6Pa・s以下がより好ましい。
【0039】
液体潤滑剤は、その取り扱いの観点から、振動が付与されていないときは、形状保持力を持つ性質を有することがよい。
【0040】
液体潤滑剤は、例えば、液体オイル(単独ではチキソ性を持たない潤滑剤)とチキソ性付与剤とを含む構成が挙げられる。チキソ性付与剤を含ませることにより、チキソ性の付与が実現され易くなる。
【0041】
液体オイル(単独ではチキソ性を持たない潤滑剤)としては、流動パラフィン、ナフテン酸金属石鹸、オクチル酸金属石鹸、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状メチルシリコーンオイル、フッ素オイル、高級アルコールオイル、高級脂肪酸オイル等が挙げられる。
これらの中でも、液体オイルとしては、クリーニングブレードの長寿命化の観点から、流動パラフィン、ナフテン酸金属石鹸がよい。
尚、本明細書において「高級アルコールオイル」とは炭素数が6以上であるアルコールオイルを指し、更に7以上の炭素数であることがより好ましい。また、「高級脂肪酸オイル」とは炭素数が12以上である脂肪酸オイルを指し、更に14以上の炭素数であることがより好ましい。
【0042】
チキソ性付与剤としては、例えば、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。
無機粒子としては、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、ベントナイト等が挙げられる。
有機粒子としては、水添ひまし油、脂肪酸アマイド、ポリオレフィン、カルシウム石鹸、ナトリウム石鹸、アルミニウム石鹸、リチウム石鹸、PTFE等の粒子が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、チキソ性付与剤としては、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウムがよい。
【0044】
チキソ性付与剤の体積平均粒径は、チキソ性付与、外添剤捕獲機能向上、クリーニングブレードの長寿命化の観点から、例えば、5nm以上30nm以下であることがよく、望ましくは8nm以上20nm以下である。
なお、チキソ性付与剤の体積平均粒径は、液体潤滑剤に配合された状態のチキソ性付与剤の一次粒子100個をSEM(Scanning Electron Microscope)装置により観察し、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの最長径、最短径を測定し、この中間値から球相当径を測定する。得られた球相当径の累積頻度における50%径(D50v)を無機粒子の平均粒径(つまり体積平均粒径)とする。
【0045】
チキソ性付与剤の含有量は、チキソ性付与、クリーニングブレードの長寿命化の観点から、液体オイルに対して、例えば、10質量%以上80質量%以下であることがよく、望ましくは15質量%以上50質量%以下である。
【0046】
なお、液体潤滑剤において、前述の条件を満たすチキソ性は、例えば、液体オイルの種類や、チキソ性付与剤の種類、粒径、含有量等により制御される。
【0047】
・クリーニングブレードの振動
本実施形態に係るクリーニングブレードを構成するブレード本体は、被クリーニング部材との摩擦により振動する部材である。より詳細には、被クリーニング部材との摩擦力が大きいほど振動数が大きくなり、一方被クリーニング部材との摩擦力が小さいほど振動数が小さくなる部材である。
【0048】
ここで、ブレード本体の被クリーニング部材との摩擦により生じる振動の振動数は、以下の方法により測定される。
ブレード本体の被クリーニング部材に接触しない側に加速度センサー(NEC Avio9G10S)を取り付け、駆動する被クリーニング部材上を走査させたときの振動数を測定する。
【0049】
被クリーニング部材との摩擦によって生じるブレード本体の振動の振動数としては、被クリーニング部材とブレード本体との接触部分に十分な液体潤滑剤が存在する状態(つまり低振動時)では、20Hz以上50Hz以下の範囲が好ましく、更には25Hz以上45Hz以下の範囲がより好ましく、25Hz以上40Hz以下の範囲が更に好ましい。
一方、潤滑剤収納領域に収納される液体潤滑剤に対し適切な振動が与えられるとの観点から、被クリーニング部材とブレード本体との接触部分に十分な液体潤滑剤が存在していない状態(つまり高振動時)では、110Hz以上150Hz以下の範囲で振動するブレードが好ましく、更には130Hz以上150Hz以下の範囲がより好ましく、140Hz以上150Hz以下の範囲が更に好ましい。
【0050】
・ブレード本体の成形方法
次いで、本実施形態に係るクリーニングブレード(ブレード本体)の成形方法について説明する。
ブレード本体の成形は、例えば、吐出口および潤滑剤収納領域を境にして一方の側と他方の側とを別々に成形し、成形された2つの部材の吐出口および潤滑剤収納領域となる部分を向かい合わせて両者を接着する(吐出口および潤滑剤収納領域となる部分以外を接着する)ことで成形される。
尚、吐出口および潤滑剤収納領域を境にした一方の側の部材と他方の側の部材の成形は、例えば成形型にブレード本体形成用の組成物を流し込み硬化させることで行われる。
【0051】
具体的に、図を用いて本実施形態に係るブレード本体の成形方法の一例を説明する。
図4は、本実施形態に係るブレード本体における吐出口および潤滑剤収納領域を境にした一方の側の部材を成形するための成形型を示す斜視図である。
成形型120は、ブレード本体形成用の組成物が流し込まれる組成物溜まり102を有し、且つ組成物溜まり102内には、潤滑剤収納領域となる部分を形成するための潤滑剤収納領域形成部108を有する。尚、潤滑剤収納領域形成部108は、吐出口となる部分を形成するための吐出口形成部104方向に向かって、徐々に先細る形状を有している。
【0052】
この成形型120の組成物溜まり102にブレード本体形成用の組成物を流し込み硬化させることで、本実施形態に係るブレード本体における吐出口および潤滑剤収納領域を境にした一方の側の部材が成形される。
また、該方法にて前記他方の側の部材も形成する。但し、該他方の側の部材を形成するための成形型120は、供給通路10を形成するための供給通路形成部(不図示)を有していることが好ましい。成形された2つの部材の吐出口形成部104に対応する部分と、潤滑剤収納領域形成部108に対応する部分と、を向かい合わせて両者を接着する(但し吐出口や潤滑剤収納領域となる部分は接着しない)ことで、本実施形態に係るブレード本体が成形される。
【0053】
・ブレード本体の構成による液体潤滑剤の吐出量の制御
ここで、クリーニングブレード20の吐出口4から像保持体16の表面に液体潤滑剤が吐出される機構について、更に説明する。
前述の通り
図1では像保持体16が停止している(駆動していない)状態を示しており、角部2と像保持体16との接触部分には摩擦は生じていない。そのため、角部2は撓んでおらず、切れ目状に形成されている吐出口4は閉じている状態であり、閉じている吐出口4からは液体潤滑剤は吐出されていない。
【0054】
一方、
図3に示すごとく、像保持体16が矢印A方向に駆動している状態では、角部2と像保持体16との接触部分に摩擦力が生じ、角部2が撓んで変形する(いわゆるタックアンダー)。そのため、先端面6の吐出口4よりも下側(像保持体16側)の部分は、角部2の変形に引っ張られて変形し、吐出口4が開口する。これにより、開口した吐出口4から液体潤滑剤が吐出され、液体潤滑剤12が像保持体16の表面に供給される。
像保持体16の表面に供給された液体潤滑剤12は、像保持体16の矢印A方向への駆動に伴って像保持体16と角部2との接触部分に供給される。また、像保持体16と角部2との接触部分に供給された液体潤滑剤12は該接触部分をすり抜けるため、該接触部分でのすり抜けを繰り返す内に像保持体16表面の全体に塗り広げられていく。
【0055】
また、像保持体16の表面に液体潤滑剤12が供給されると、像保持体16と角部2との接触部分の摩擦力は低下する。摩擦力が低下すると、角部2の撓み度合い(変形量)が小さくなり、先端面6の吐出口4よりも下側(像保持体16側)の部分も、角部2の変形量の減少に伴って変形が小さくなり、吐出口4の開口している大きさ(開口面積)が小さくなる。これにより、開口した吐出口4から吐出される液体潤滑剤12の量が減少する。
即ち、
図1乃至
図3に示す態様によれば、像保持体16と角部2との接触部分での摩擦力が増大する程、角部2が撓んで吐出口4の開口面積が大きくなり、一方、像保持体16と角部2との接触部分での摩擦力が減少する程、角部2の撓みが緩まって吐出口4の開口面積が小さくなる。そのため、像保持体16の表面に液体潤滑剤が多量に存在し摩擦力が低い状態では液体潤滑剤12の供給量が低減され、一方、像保持体16の表面の液体潤滑剤が減少して摩擦力が増大した際には液体潤滑剤12の供給量が増加され、像保持体16表面の状態に応じて適切な量の液体潤滑剤12を供給し得る。
【0056】
また、吐出口4の形状が切れ目状であるため、像保持体16が駆動を止めた際には液体潤滑剤12の供給を停止し得る。
更に、吐出口4から像保持体16と角部2との接触部分の手前(像保持体16の駆動方向上流側)の適切な位置に液体潤滑剤12が供給されるため、像保持体16およびクリーニングブレード20以外の他部材への液体潤滑剤12による汚染が抑制される。
【0057】
尚、
図1乃至
図3には、吐出口4の形状が切れ目状である態様を示したが、必ずしもこの形状には限られず、常に吐出口4が開口している態様、つまり像保持体16が駆動しておらず像保持体16と角部2との接触部分に摩擦が生じていない状態でも閉じない吐出口4の態様であってもよい。但し、該態様の場合には、供給通路10の入り口を塞ぐ機構を設け、像保持体16の駆動が停止している状態では、該機構によって供給通路10の入り口が塞がれて潤滑剤収納領域8への液体潤滑剤の供給が停止し、その結果吐出口4からも液体潤滑剤の吐出が停止する態様とすることがより望ましい。
また、
図1乃至
図3には、潤滑剤収納領域8の形状が、吐出口4側に向かって徐々に先細る態様を示したが、必ずしもこの形状には限られず、例えば
図6に断面図を示す別の態様のクリーニングブレード20Bのごとく、潤滑剤収納領域8Bの形状が吐出口4側に向かって段階的に先細る態様であってもよい。
【0058】
尚、吐出口4から像保持体16表面に供給される液体潤滑剤12の量は、例えば、クリーニングブレード20を構成するゴム組成物の弾性率、吐出口4の形状、吐出口4の大きさ(吐出口4の像保持体16軸方向における長さ等)、クリーニングブレード20の像保持体16表面に対する角度、像保持体16とクリーニングブレード20との摩擦係数、液体潤滑剤の粘度等によって調整される。
【0059】
−ゴム組成物の材料−
本実施形態に係るクリーニングブレードを構成するゴム組成物としては、公知の様々なゴム組成物が用いられる。尚、特に限定されるものではないが、中でもポリウレタンゴムが望ましい。
【0060】
ポリウレタンゴムは、通常ポリイソシアネートとポリオールとを重合することで合成される。また、ポリオール以外にイソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂を用いてもよい。尚、ポリウレタンゴムはハードセグメントとソフトセグメントとを有していることが望ましい。
ここで、「ハードセグメント」および「ソフトセグメント」とは、ポリウレタンゴム材料中で、前者を構成する材料の方が、後者を構成する材料よりも相対的に硬い材料からなり、後者を構成する材料の方が前者を構成する材料よりも相対的に柔らかい材料からなるセグメントを意味する。
【0061】
ハードセグメントを構成する材料(ハードセグメント材料)とソフトセグメントを構成する材料(ソフトセグメント材料)との組み合わせとしては、特に限定されず、一方が他方に対して相対的に硬く、他方が一方に対して相対的に柔らかい組み合わせとなるよう公知の樹脂材料から選択し得るが、本実施形態においては、以下の組み合わせが好適である。
【0062】
・ソフトセグメント材料
まず、ソフトセグメント材料としては、ポリオールとして、ジオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール、ジオールとアルキルカーボネートの反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。なお、ソフトセグメント材料として用いられる上記ポリオールの市販品としては、例えば、ダイセル化学社製のプラクセル205やプラクセル240などが挙げられる。
【0063】
・ハードセグメント材料
また、ハードセグメント材料としては、イソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂を用いることが望ましい。また、柔軟性のある樹脂であることが望ましく、柔軟性の点から直鎖構造を有する脂肪族系の樹脂であることがより望ましい。具体例としては、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂や、2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂等を用いることが望ましい。
【0064】
2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂の市販品としては、例えば、綜研化学社製のアクトフロー(グレード:UMB−2005B、UMB−2005P、UMB−2005、UME−2005等)が挙げられる。
2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂の市販品としては、例えば、出光興産社製、R−45HT等が挙げられる。
【0065】
2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、従来の一般的なエポキシ樹脂のごとく硬くて脆い性質を有するものではなく、従来のエポキシ樹脂よりも柔軟強靭性であるものが望ましい。上記エポキシ樹脂としては、例えば、分子構造の面では、その主鎖構造中に、主鎖の可動性を高くし得る構造(柔軟性骨格)を有するものが好適であり、柔軟性骨格としては、アルキレン骨格や、シクロアルカン骨格、ポリオキシアルキレン骨格等が挙げられ、特にポリオキシアルキレン骨格が好適である。
また、物性面では、従来のエポキシ樹脂と比べて、分子量に比して粘度が低いエポキシ樹脂が好適である。具体的には、重量平均分子量が900±100の範囲内であり、25℃における粘度が15000±5000mPa・sの範囲内であることが望ましく、15000±3000mPa・sの範囲内であることがより望ましい。この特性を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC製、EPLICON EXA−4850−150等が挙げられる。
【0066】
ハードセグメント材料およびソフトセグメント材料を用いる場合、ハードセグメント材料およびソフトセグメント材料の総量に対するハードセグメントを構成する材料の質量比(以下「ハードセグメント材料比」と称す)が10質量%以上30質量%以下の範囲内であることが望ましく、13質量%以上23質量%以下の範囲内であることがより望ましく、15質量%以上20質量%以下の範囲内であることが更に望ましい。
ハードセグメント材料比が、10質量%以上であることにより、耐摩耗性が得られ、長期に渡って良好なクリーニング性が維持される。一方、ハードセグメント材料比が30質量%以下であることにより、硬くなり過ぎることがなく、柔軟性や伸張性が得られ、欠けの発生が抑制されて、長期に渡って良好なクリーニング性が維持される。
【0067】
・ポリイソシアネート
ポリウレタンゴムの合成に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)および3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。
【0068】
ポリイソシアネートの、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100質量部に対する配合量は、20質量部以上40質量部以下が望ましい。
【0069】
・架橋剤
架橋剤としては、ジオール(2官能)、トリオール(3官能)、テトラオール(4官能)等が挙げられ、これらを併用してもよい。また、架橋剤としてアミン系化合物を用いてもよい。尚、3官能以上の架橋剤を用いて架橋されたものであることが望ましい。3官能の架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0070】
架橋剤のトリメチロールプロパン100質量部に対する配合量は2質量部以下が望ましい。
【0071】
・ポリウレタンゴムの製造方法
本実施形態における前記特定部材を構成するポリウレタンゴム部材の製造は、プレポリマー法やワンショット法など、ポリウレタンの一般的な製造方法が用いられる。プレポリマー法は強度、耐摩耗性に優れるポリウレタンが得られるため本実施形態には好適であるが、製法により制限されるものではない。
【0072】
(クリーニング装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置)
次に、本実施形態のクリーニングブレードを用いたクリーニング装置、プロセスカートリッジ、および、画像形成装置について説明する。
本実施形態のクリーニング装置は、被クリーニング部材表面に接触し、被クリーニング部材表面をクリーニングするクリーニングブレードとして、本実施形態のクリーニングブレードを備えたものであれば特に限定されない。例えば、クリーニング装置の構成例としては、被クリーニング部材側に開口部を有するクリーニングケース内に、エッジ先端が開口部側となるようクリーニングブレードを固定すると共に、クリーニングブレードにより被クリーニング部材表面から回収された廃トナー等の異物を異物回収容器に導く搬送部材を備えた構成などが挙げられる。また、本実施形態のクリーニング装置には、本実施形態のクリーニングブレードが2つ以上用いられていてもよい。
【0073】
なお、本実施形態のクリーニングブレードを像保持体のクリーニングに利用する場合、画像形成時の像流れを抑制するためには、クリーニングブレードが像保持体に押し当てられる力NF(Normal Force)は1.3gf/mm以上2.3gf/mm以下の範囲であることが望ましく、1.6f/mm以上2.0gf/mm以下の範囲であることがより望ましい。
また、クリーニングブレード先端部が像保持体に食込む長さが0.8mm以上1.2mm以下の範囲であることが望ましく、0.9mm以上1.1mm以下の範囲であることがより望ましい。
クリーニングブレードと像保持体との接触部における角度W/A(Working Angle)は8°以上14°以下の範囲であることが望ましく、10°以上12°以下の範囲であることがより望ましい。
【0074】
一方、本実施形態のプロセスカートリッジは、像保持体や中間転写体等の1つ以上の被クリーニング部材表面に接触し、被クリーニング部材表面をクリーニングするクリーニング装置として、本実施形態のクリーニング装置を備えたものであれば特に限定されず、例えば、像保持体と、この像保持体表面をクリーニングする本実施形態のクリーニング装置とを含み、画像形成装置に対して脱着自在な態様等が挙げられる。例えば、各色のトナーに対応した像保持体を有するいわゆるタンデム機であれば、各々の像保持体毎に本実施形態のクリーニング装置を設けてもよい。加えて、本実施形態のクリーニング装置の他に、クリーニングブラシ等を併用してもよい。
【0075】
−画像形成装置、クリーニング装置の具体例−
次に、本実施形態のクリーニングブレードを用いた画像形成装置およびクリーニング装置の具体例について、図面を用いてより詳細に説明する。
図5は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略模式図であり、いわゆるタンデム型の画像形成装置について示したものである。
図5中、21は本体ハウジング、22、22a乃至22dは作像エンジン、23はベルトモジュール、24は記録媒体供給カセット、25は記録媒体搬送路、30は各感光体ユニット、31は感光体ドラム、33は各現像ユニット、34はクリーニング装置、35、35a乃至35dはトナーカートリッジ、40は露光ユニット、41はユニットケース、42はポリゴンミラー、51は一次転写装置、52は二次転写装置、53はベルトクリーニング装置、61は送出しロール、62は搬送ロール、63は位置合わせロール、66は定着装置、67は排出ロール、68は排紙部、71は手差し供給装置、72は送出しロール、73は両面記録用ユニット、74は案内ロール、76は搬送路、77は搬送ロール、230は中間転写ベルト、231、232は支持ロール、521は二次転写ロール、531はクリーニングブレードを表す。
【0076】
図5に示すタンデム型画像形成装置は、本体ハウジング21内に四つの色(本実施の形態ではブラック、イエロ、マゼンタ、シアン)の作像エンジン22(具体的には22a乃至22d)を配列し、その上方には各作像エンジン22の配列方向に沿って循環搬送される中間転写ベルト230が含まれるベルトモジュール23を配設する一方、本体ハウジング21の下方には用紙等の記録媒体(図示せず)が収容される記録媒体供給カセット24を配設すると共に、この記録媒体供給カセット24からの記録媒体の搬送路となる記録媒体搬送路25を垂直方向に配置したものである。
【0077】
本実施の形態において、各作像エンジン22(22a乃至22d)は、中間転写ベルト230の循環方向上流側から順に、例えばブラック用、イエロ用、マゼンタ用、シアン用(配列は必ずしもこの順番とは限らない)のトナー像を形成するものであり、各感光体ユニット30と、各現像ユニット33と、共通する一つの露光ユニット40とを備えている。
ここで、感光体ユニット30は、例えば感光体ドラム31と、この感光体ドラム31を予め帯電する帯電装置(帯電ロール)32と、感光体ドラム31上の残留トナーを除去するクリーニング装置34とを一体的にサブカートリッジ化したものである。
【0078】
また、現像ユニット33は、帯電された感光体ドラム31上に露光ユニット40にて露光形成された静電潜像を対応する色トナー(本実施の形態では例えば負極性)で現像するものであり、例えば感光体ユニット30からなるサブカートリッジと一体化されてプロセスカートリッジ(所謂Customer Replaceable Unit)を構成している。
尚、感光体ユニット30を現像ユニット33から切り離して単独のプロセスカートリッジとしてもよいことは勿論である。また、
図5中、符号35(35a乃至35d)は各現像ユニット33に各色成分トナーを補給するためのトナーカートリッジである(トナー補給経路は図示せず)。
【0079】
一方、露光ユニット40は、ユニットケース41内に例えば四つの半導体レーザ(図示せず)、一つのポリゴンミラー42、結像レンズ(図示せず)および各感光体ユニット30に対応するそれぞれミラー(図示せず)を格納し、各色成分毎の半導体レーザからの光をポリゴンミラー42で偏向走査し、結像レンズ、ミラーを介して対応する感光体ドラム31上の露光ポイントに光像を導くよう配置したものである。
【0080】
また、本実施の形態において、ベルトモジュール23は、例えば一対の支持ロール(一方が駆動ロール)231,232間に中間転写ベルト230を掛け渡したものであり、各感光体ユニット30の感光体ドラム31に対応した中間転写ベルト230の裏面には一次転写装置(本例では一次転写ロール)51が配設され、この一次転写装置51にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム31上のトナー像を中間転写ベルト230側に静電的に転写する。更に、中間転写ベルト230の最下流作像エンジン22dの下流側の支持ロール232に対応した部位には二次転写装置52が配設されており、中間転写ベルト230上の一次転写像を記録媒体に二次転写(一括転写)する。
【0081】
本実施の形態では、二次転写装置52は、中間転写ベルト230のトナー像保持面側に圧接配置される二次転写ロール521と、中間転写ベルト230の裏面側に配置されて二次転写ロール521の対向電極をなす背面ロール(本例では支持ロール232を兼用)とを備えている。そして、例えば二次転写ロール521が接地されており、また、背面ロール(支持ロール232)にはトナーの帯電極性と同極性のバイアスが印加されている。
更にまた、中間転写ベルト230の最上流作像エンジン22aの上流側にはベルトクリーニング装置53が配設されており、中間転写ベルト230上の残留トナーを除去する。
【0082】
また、記録媒体供給カセット24には記録媒体を送り出す送出しロール61が設けられ、この送出しロール61の直後には記録媒体を送出する搬送ロール62が配設されると共に、二次転写部位の直前に位置する記録媒体搬送路25には記録媒体を定められたタイミングで二次転写部位へ供給する位置合わせロール63が配設されている。一方、二次転写部位の下流側に位置する記録媒体搬送路25には定着装置66が設けられ、この定着装置66の下流側には記録媒体排出用の排出ロール67が設けられており、本体ハウジング21の上部に形成された排紙部68に排出記録媒体が収容される。
【0083】
更に、本実施の形態では、本体ハウジング21の側方には手差し供給装置(MSI)71が設けられており、この手差し供給装置71上の記録媒体は送出しロール72および搬送ロール62にて記録媒体搬送路25に向かって送出される。
更にまた、本体ハウジング21には両面記録用ユニット73が付設されており、この両面記録用ユニット73は、記録媒体の両面に画像記録を行う両面モード選択時に、片面記録済みの記録媒体を排出ロール67を逆転させ、かつ、入口手前の案内ロール74にて内部に取り込み、搬送ロール77にて内部の記録媒体戻し搬送路76に沿って記録媒体を搬送し、再度位置合わせロール63側へと供給するものである。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において「部」は「質量部」を意味する。
【0085】
〔実施例1〕
−ブレード本体A1−
まず、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業(株)製、プラクセル205、平均分子量529、水酸基価212KOHmg/g)およびポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業(株)製、プラクセル240、平均分子量4155、水酸基価27KOHmg/g)と、をポリオール成分のソフトセグメント材料として用いた。また、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂(綜研化学社製、アクトフローUMB−2005B)をハードセグメント材料として用い、上記ソフトセグメント材料およびハードセグメント材料を8:2(質量比)の割合で混合した。
【0086】
次に、このソフトセグメント材料とハードセグメント材料との混合物100部に対して、イソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMT)を6.26部加えて、窒素雰囲気下で70℃で3時間反応させた。尚、この反応で使用したイソシアネート化合物量は、反応系に含まれる水酸基に対するイソシアネート基の比(イソシアネート基/水酸基)が0.5となるよう選択したものである。
続いて、上記イソシアネート化合物を更に34.3部加え、窒素雰囲気下で70℃で3時間反応させて、プレポリマーを得た。尚、プレポリマーの使用に際して利用したイソシアネート化合物の全量は40.56部であった。
【0087】
次に、このプレポリマーを100℃に昇温し、減圧下で1時間脱泡した。その後、プレポリマー100部に対して、1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物(質量比=60/40)を7.14部加え、3分間泡を巻き込まないように混合し、ブレード本体形成用組成物A1を調製した。
【0088】
次いで、
図4に示す成形型を140℃に調整した遠心成形機に上記ブレード本体形成用組成物A1を流し込み、1時間硬化反応させ、更に110℃で24時間架橋した。この部材を2つ成形し(但し、一方には潤滑剤の供給通路を形成した)、成形された2つの部材の吐出口および潤滑剤収納領域となる部分を向かい合わせて両者を接着した(但し、吐出口および潤滑剤収納領域となる部分は接着していない)。こうして
図1および
図2に示す構造を有するブレード本体A1を得た。
【0089】
−液体潤滑剤A1の作製−
液体オイル(チキソ性を示さない潤滑剤)として流動パラフィン(商品名:ハイホワイト350、JX日鉱日石エネルギー株式会社、動粘度(25℃):92mm
2/s)87部に、チキソ性付与剤としてベントナイト(商品名:ベンゲル、株式会社ホージュン社製)13部を加え、攪拌することにより、液体潤滑剤A1を得た。
【0090】
ブレード本体A1の供給通路10に液体潤滑剤A1を充填したシリンジの針先を差し込み液体潤滑剤を封入した。
【0091】
尚、得られたブレード本体A1の物性は以下の通りである。
(1)吐出口の幅(スリットの長さ)327mm
(感光体における画像形成部の幅)327mm
(2)ブレードのヤング率5MPa
(3)ブレードの接触角度12°
(4)ブレードの自由長7mm
(5)ブレードと感光体の動摩擦係数=(表2、表3に記載)
【0092】
〔実施例2〜6、8〜9、比較例1〜7〕
実施例1において、液体潤滑剤に用いた液体オイル(チキソ性を示さない潤滑剤)とその量、およびチキソ性付与剤およびその量を、下記表2、表3に記載の組成とした以外は、液体潤滑剤A1に記載の方法により液体潤滑剤A2〜A6およびB1〜B9を作製し、ブレード本体A1に封入した。
【0093】
〔実施例7〕
実施例1において用いたブレード本体A1を下記ブレード本体A2に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりクリーニングブレードを得た。
【0094】
−ブレード本体A2の作製−
まず、ポリエステルポリオール(和光純正工業社製、商品名:アジピン酸)をポリオール成分のソフトセグメント材料として用いた。また、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂(綜研化学社製、アクトフローUMB−2005B)をハードセグメント材料として用い、上記ソフトセグメント材料およびハードセグメント材料を8:2(質量比)の割合で混合した。
次に、このソフトセグメント材料とハードセグメント材料との混合物100部に対して、イソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMT)を6.26部加えて、窒素雰囲気下で70℃で3時間反応させた。尚、この反応で使用したイソシアネート化合物量は、反応系に含まれる水酸基に対するイソシアネート基の比(イソシアネート基/水酸基)が0.5となるよう選択したものである。
続いて、上記イソシアネート化合物を更に34.3部加え、窒素雰囲気下で70℃で3時間反応させて、プレポリマーを得た。尚、プレポリマーの使用に際して利用したイソシアネート化合物の全量は40.56部であった。
次に、このプレポリマーを100℃に昇温し、減圧下で1時間脱泡した。その後、プレポリマー100部に対して、1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物(質量比=60/40)を7.14部加え、3分間泡を巻き込まないように混合し、ブレード本体形成用組成物A2を調製した。
次いで、
図4に示す成形型を140℃に調整した遠心成形機に上記ブレード本体形成用組成物A2を流し込み、1時間硬化反応させ、更に110℃で24時間架橋した。この部材を2つ成形し(但し、一方には潤滑剤の供給通路を形成した)、成形された2つの部材の吐出口および潤滑剤収納領域となる部分を向かい合わせて両者を接着した(但し、吐出口および潤滑剤収納領域となる部分は接着していない)。こうして
図1および
図2に示す構造を有するブレード本体A2を得た。
【0095】
〔評価〕
−液体潤滑剤の粘度の測定−
液体潤滑剤に対し50Hzの振動を与えた際の粘度η、および150Hzの振動を与えた際の粘度ηを前述の方法により測定した。
【0096】
−摩擦係数(μ)の測定−
摩擦係数測定器としてHEIDON(Type−HEIDON14、新東科学社製)を用い、
図7に示すごとくクリーニングブレード20を固定冶具200に張り付け、像保持体(φ30)16に対するクリーニングブレード20の接触荷重を1.6f/mmに設定して、像保持体16を駆動(空回し)させ、クリーニングブレード20から像保持体16表面に潤滑剤が付与されている状態での摩擦係数(μ)を測定した。
【0097】
−潤滑剤吐出量の測定−
ブレードが50Hz(低振動)で振動しているときの液体潤滑剤の吐出量、および150Hz(高振動)で振動しているときの液体潤滑剤の吐出量を、ブレードを走行させる前の質量とブレード走行後の質量とを測定し、その差から算出した。
【0098】
−エッジ摩耗−
エッジ摩耗の評価に際しては、高温高湿環境(28℃、85RH%)下にて、感光体の積算回転数が100KサイクルになるまでA4用紙(210×297mm、富士ゼロックス社製、P紙)を用いて画像形成させた後のクリーニングブレードのエッジ先端の摩耗と、クリーニング不良とを併せて評価して判断した。
なお、テストに際しては、感光体とクリーニングブレードとの接触部における潤滑効果を小さくした過酷な条件で評価するために、形成する画像の像密度を1%とした。
【0099】
続いてテスト後のエッジ先端の摩耗深さを、クリーニングブレードの断面側からキーエンス社製、レーザー顕微鏡VK−8510により観察した時に、感光体表面側のエッジ欠落部最大深さを計測した。また、クリーニング不良の評価は、上記のテスト終了後に、未転写ベタ画像(ベタ画像サイズ:400mm×290mm)が形成されたA3用紙を、感光体とクリーニングブレードとの間に、通常のプロセススピードで給紙して、未定着画像の搬送方向最後端部分が感光体とクリーニングブレードとの接触部を通過し終えた直後に実機を停止し、トナーの擦り抜け有無を目視で確認し、顕著な擦り抜けが認められる場合をクリーニング不良とした。なお、エッジ先端の摩耗や欠けにより、トナーを塞き止める部位が欠落している場合はエッジ摩耗深さや欠け深さが大きい程、上述したテストでクリーニング不良が発生し易くなるため、上記テストはエッジ先端の摩耗や欠けの定性的評価に有用である。
エッジ摩耗の評価基準を以下の表1に示す。なお、許容範囲はG0乃至G2である。
【0100】
【表1】
【0101】
−感光体摩耗レート−
感光体摩耗レートは、試験前と試験後の感光体の膜厚を渦電流式の膜厚計で計測しその差分にて算出し、感光体1000cycle当りの感光体摩耗レートとして算出した。この結果を表2および表3にあわせて示す。
【0102】
−感光体およびクリーニングブレードの寿命−
感光体およびクリーニングブレードの寿命を以下のようにして評価した。
・感光体寿命
A:感光体摩耗レート20nm/k・cycle以下
B:感光体摩耗レート20nm/k・cycle超え
・ブレード寿命
A:エッジ摩耗評価G0乃至G2
B:エッジ摩耗評価G3乃至G5
【0103】
−総合評価−
以下の基準により、総合評価を行った。
A:エッジ摩耗評価G0乃至G2、感光体摩耗レート20nm/k・cycle以下
B:エッジ摩耗評価G3乃至G5、感光体摩耗レート20nm/k・cycle超え
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
尚、表2、表3に記載の各材料の詳細は、以下の通りである。
(チキソ性付与剤)
・「ベントナイト」:商品名:ベンゲル、株式会社ホージュン社製
・「モンモリロナイト」:商品名:特殊クレイナノマー、ボルクレイジャパン社製
・「炭酸カルシウム」:商品名:カルファインN−350、丸尾カルシウム株式会社製、体積平均粒径50nm
(液体オイル)
・「流動パラフィン」:商品名:ハイホワイト350、JX日鉱日石エネルギー株式会社製、動粘度(25℃):92mm
2/s
・「ナフテン酸金属石鹸」:商品名:ナフテックス鉄、日本化学産業株式会社製
・「シリコーンオイル」:商品名:KF−96L−1cs、信越化学工業社製
・「オクチル酸金属石鹸」:ヘキソエート亜鉛15%、東栄化工株式会社製