特許第6206274号(P6206274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206274
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】容量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20170925BHJP
   F04B 49/12 20060101ALI20170925BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20170925BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F04B27/18 A
   F04B49/12
   F16K31/06 305V
   F16K31/06 305L
   F16K31/06 305S
   F25B1/00 361H
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-56253(P2014-56253)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178795(P2015-178795A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 久弥
(72)【発明者】
【氏名】橋本 友次
(72)【発明者】
【氏名】梅津 圭宏
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−014269(JP,A)
【文献】 特開2007−064028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F04B 49/12
F16K 31/06
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給通路を介して吐出圧領域の冷媒を制御圧室に供給するとともに、排出通路を介して前記制御圧室の冷媒を吸入圧領域に排出することで吐出容量を制御する可変容量型斜板式圧縮機に用いられる容量制御弁であって、
バルブハウジング内には、電磁ソレノイドによって駆動されるとともに前記供給通路の開度を調整する弁体を有する駆動力伝達部が収容されており、前記弁体を収容するとともに前記吐出圧領域に連通する弁室と、前記制御圧室に連通する容量室とが区画され、前記駆動力伝達部には、前記容量室と前記吸入圧領域とを連通する連通路が形成されており、前記容量室には、前記弁体を開弁させる方向に付勢するベローズを有する感圧機構が収容され、前記感圧機構は、前記ベローズに連結されるとともに前記連通路の圧力を感知することで前記連通路を開放する開弁状態となる受圧部材を有し、前記駆動力伝達部は、前記受圧部材が前記駆動力伝達部に当接して前記連通路を閉鎖する閉弁状態から所定の開弁状態になるまで前記受圧部材の外周面を覆う筒状部を有し、
前記受圧部材の外周面と前記筒状部の内周面とは、前記受圧部材が前記閉弁状態から前記所定の開弁状態になるまで隙間を介して互いに対向した平行な円筒面であり、
前記受圧部材が前記閉弁状態から前記所定の開弁状態になるまで、前記受圧部材の外周面と前記筒状部の内周面との前記隙間が一定に保たれていることを特徴とする容量制御弁。
【請求項2】
供給通路を介して吐出圧領域の冷媒を制御圧室に供給するとともに、排出通路を介して前記制御圧室の冷媒を吸入圧領域に排出することで吐出容量を制御する可変容量型斜板式圧縮機に用いられる容量制御弁であって、
バルブハウジング内には、電磁ソレノイドによって駆動されるとともに前記供給通路の開度を調整する弁体を有する駆動力伝達部が収容されており、前記弁体を収容するとともに前記吐出圧領域に連通する弁室と、前記制御圧室に連通する容量室とが区画され、前記駆動力伝達部には、前記容量室と前記吸入圧領域とを連通する連通路が形成されており、前記容量室には、前記弁体を開弁させる方向に付勢するベローズを有する感圧機構が収容され、前記感圧機構は、前記ベローズに連結されるとともに前記連通路の圧力を感知することで前記連通路を開放する開弁状態となる受圧部材を有し、前記駆動力伝達部は、前記受圧部材が前記駆動力伝達部に当接して前記連通路を閉鎖する閉弁状態から所定の開弁状態になるまで前記受圧部材の外周面を覆う筒状部を有し、
前記受圧部材が前記閉弁状態から前記所定の開弁状態になるまで、前記受圧部材の外周面と前記筒状部の内周面との隙間が一定に保たれており、
前記筒状部には、前記可変容量型斜板式圧縮機の使用温度範囲内において最大圧力まで上昇した前記吸入圧領域の圧力を前記受圧部材が感知して、前記ベローズが縮小して前記受圧部材が最も開弁した状態で、前記受圧部材の外周面の一部を覆う被覆部が設けられていることを特徴とする容量制御弁。
【請求項3】
前記受圧部材における前記駆動力伝達部側の端面には、前記駆動力伝達部に当接して前記受圧部材における前記駆動力伝達部側の端面と前記駆動力伝達部との間をシールするシール部が形成されており、前記受圧部材における前記駆動力伝達部側の端面において、前記シール部よりも外周側には、前記受圧部材の外周面から前記シール部に向かって延びる面取り部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型斜板式圧縮機に用いられる容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、可変容量型斜板式圧縮機は、制御圧室の圧力が高くなると斜板の傾角が減少し、制御圧室の圧力が低くなると斜板の傾角が増大する。斜板の傾角が減少すると、ピストンのストロークが小さくなって吐出容量が小さくなり、斜板の傾角が増大すると、ピストンのストロークが大きくなって吐出容量が大きくなる。特許文献1には、吐出圧領域から制御圧室へ供給される冷媒の流量を制御する容量制御弁が開示されている。
【0003】
ところで、可変容量型斜板式圧縮機を長時間に亘って停止しておくと、冷媒が液状化して制御圧室に溜まる。制御圧室に液状の冷媒が溜まった状態で、可変容量型斜板式圧縮機を起動させると、容量制御弁の外部に設けられた排出通路の通路断面積を固定した状態で小さくしてある場合には、制御圧室内の液冷媒が吸入圧領域へ速やかに排出されず、制御圧室内の液冷媒の気化によって制御圧室の圧力が過大になってしまう。そのため、可変容量型斜板式圧縮機の起動後において吐出容量が大きくなるまでに時間が掛かり過ぎることになる。特に、外気温が高く、高い冷房能力が求められる場合には、吐出容量を速やかに大きくしたいという要求がある。
【0004】
特許文献1に開示される容量制御弁は、ベローズと、電磁ソレノイドと、電磁ソレノイドによって駆動される弁体とを備えている。弁体には第1連結部材が結合されるとともに、ベローズには第1連結部材に接離可能な第2連結部材が結合されている。弁体内には、吸入室(吸入圧領域)に通じる開放通路が形成されており、開放通路内の圧力(吸入圧)は、第2連結部材に作用するようになっている。また、ベローズの外部に形成された容量室は、制御圧室に連通しており、且つ弁体によって開閉される弁孔を介して吐出室(吐出圧領域)に連通可能である。
【0005】
そして、外気温が高くなり、それに応じて外部冷媒回路における蒸発器の出口の圧力、すなわち吸入圧が所定の圧力よりも高くなったときには、開放通路内の圧力が第2連結部材に作用することでベローズを縮小させ、第2連結部材が第1連結部材から離間する。これにより、制御圧室内の液冷媒が、容量室及び開放通路を介して吸入室へ排出され、外気温が高い場合において、可変容量型斜板式圧縮機の起動から吐出容量が大きくなるまでに掛かる時間が短縮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−14269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、弁体が開弁して吐出室から制御圧室へ冷媒が供給されている状態において、弁孔から容量室に流れ込む冷媒の動圧が、第2連結部材における第1連結部材側の端面に作用することにより、第2連結部材が第1連結部材から離間する方向へ押圧される場合がある。すると、容量室と吸入室とが開放通路を介して連通するため、吐出室から制御圧室へ供給される冷媒の流量が減ってしまい、可変容量型斜板式圧縮機における吐出容量の制御性が悪化してしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、可変容量型斜板式圧縮機の吐出容量の制御性を良好なものとすることができる容量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する容量制御弁は、供給通路を介して吐出圧領域の冷媒を制御圧室に供給するとともに、排出通路を介して前記制御圧室の冷媒を吸入圧領域に排出することで吐出容量を制御する可変容量型斜板式圧縮機に用いられる容量制御弁であって、バルブハウジング内には、電磁ソレノイドによって駆動されるとともに前記供給通路の開度を調整する弁体を有する駆動力伝達部が収容されており、前記弁体を収容するとともに前記吐出圧領域に連通する弁室と、前記制御圧室に連通する容量室とが区画され、前記駆動力伝達部には、前記容量室と前記吸入圧領域とを連通する連通路が形成されており、前記容量室には、前記弁体を開弁させる方向に付勢するベローズを有する感圧機構が収容され、前記感圧機構は、前記ベローズに連結されるとともに前記連通路の圧力を感知することで前記連通路を開放する開弁状態となる受圧部材を有し、前記駆動力伝達部は、前記受圧部材が前記駆動力伝達部に当接して前記連通路を閉鎖する閉弁状態から所定の開弁状態になるまで前記受圧部材の外周面を覆う筒状部を有し、前記受圧部材の外周面と前記筒状部の内周面とは、前記受圧部材が前記閉弁状態から前記所定の開弁状態になるまで隙間を介して互いに対向した平行な円筒面であり、前記受圧部材が前記閉弁状態から前記所定の開弁状態になるまで、前記受圧部材の外周面と前記筒状部の内周面との前記隙間が一定に保たれている。
【0010】
これによれば、受圧部材は、閉弁状態から所定の開弁状態になるまで外周面が筒状部によって覆われている。このため、弁体が開弁して吐出圧領域から排出通路を介して制御圧室へ冷媒が供給されている状態において、容量室に流れ込む冷媒の動圧が、受圧部材における駆動力伝達部側の端面に作用することにより、受圧部材が駆動力伝達部から離間する方向へ押圧されてしまうことを抑制することができる。その結果、弁体が開弁して吐出圧領域から排出通路を介して制御圧室へ冷媒が供給されている状態において、容量室と吸入圧領域とが連通路を介して連通してしまうことを抑制することができる。また、容量室に流れ込む冷媒の動圧によって、受圧部材が駆動力伝達部から離間する方向へ押圧されたとしても、受圧部材が閉弁状態から所定の開弁状態になるまでは、受圧部材の外周面と筒状部の内周面との隙間が一定に保たれている。よって、受圧部材の外周面と筒状部の内周面との隙間を介して受圧部材における駆動力伝達部側の端面と駆動力伝達部との間へ流れ込む冷媒の流量を抑えることができ、受圧部材が駆動力伝達部から離間する方向へ押圧され難くすることができる。その結果、可変容量型斜板式圧縮機の吐出容量の制御性を良好なものとすることができる。
【0011】
上記課題を解決する容量制御弁は、供給通路を介して吐出圧領域の冷媒を制御圧室に供給するとともに、排出通路を介して前記制御圧室の冷媒を吸入圧領域に排出することで吐出容量を制御する可変容量型斜板式圧縮機に用いられる容量制御弁であって、バルブハウジング内には、電磁ソレノイドによって駆動されるとともに前記供給通路の開度を調整する弁体を有する駆動力伝達部が収容されており、前記弁体を収容するとともに前記吐出圧領域に連通する弁室と、前記制御圧室に連通する容量室とが区画され、前記駆動力伝達部には、前記容量室と前記吸入圧領域とを連通する連通路が形成されており、前記容量室には、前記弁体を開弁させる方向に付勢するベローズを有する感圧機構が収容され、前記感圧機構は、前記ベローズに連結されるとともに前記連通路の圧力を感知することで前記連通路を開放する開弁状態となる受圧部材を有し、前記駆動力伝達部は、前記受圧部材が前記駆動力伝達部に当接して前記連通路を閉鎖する閉弁状態から所定の開弁状態になるまで前記受圧部材の外周面を覆う筒状部を有し、前記受圧部材が前記閉弁状態から前記所定の開弁状態になるまで、前記受圧部材の外周面と前記筒状部の内周面との隙間が一定に保たれており、前記筒状部には、前記可変容量型斜板式圧縮機の使用温度範囲内において最大圧力まで上昇した前記吸入圧領域の圧力を前記受圧部材が感知して、前記ベローズが縮小して前記受圧部材が最も開弁した状態で、前記受圧部材の外周面の一部を覆う被覆部が設けられている。
これによれば、受圧部材の外周面と筒状部の内周面との隙間を介して受圧部材における駆動力伝達部側の端面と駆動力伝達部との間へ流れ込む冷媒の流量を抑えることができ、受圧部材が駆動力伝達部から離間する方向へ押圧され難くすることができる。その結果、可変容量型斜板式圧縮機の吐出容量の制御性を良好なものとすることができる。
また、受圧部材が最も開弁した状態から、閉弁方向へ移動する際に、被覆部によって受圧部材における閉弁方向への移動が案内されるため、受圧部材における閉弁方向への移動が安定し、受圧部材における閉弁方向への移動をスムーズにすることができる。また、受圧部材及びベローズが傾いてしまうことを抑制することができるため、受圧部材及びベローズの振動が抑えられ、ベローズの耐久性を向上させることができる。
上記容量制御弁において、前記受圧部材における前記駆動力伝達部側の端面には、前記駆動力伝達部に当接して前記受圧部材における前記駆動力伝達部側の端面と前記駆動力伝達部との間をシールするシール部が形成されており、前記受圧部材における前記駆動力伝達部側の端面において、前記シール部よりも外周側には、前記受圧部材の外周面から前記シール部に向かって延びる面取り部が形成されていることが好ましい。
【0012】
これによれば、受圧部材が所定の開弁状態よりも駆動力伝達部から離間して、受圧部材の外周面が筒状部によって覆われなくなると、容量室内の冷媒が、面取り部に案内されながら連通路に向かって流れる。よって、制御圧室内の冷媒が、容量室及び連通路を介して吸入圧領域へ排出され易くなり、外気温が高い場合において、可変容量型斜板式圧縮機の起動から吐出容量が大きくなるまでに掛かる時間を短縮し易くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、可変容量型斜板式圧縮機の吐出容量の制御性を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態における可変容量型斜板式圧縮機を示す側断面図。
図2】容量制御弁を示す側断面図。
図3】容量制御弁の部分拡大断面図。
図4】受圧部材が開弁した状態を示す容量制御弁の部分拡大断面図。
図5】(a)は別の実施形態における連結部材を示す斜視図、(b)は受圧部材及び連結部材を示す斜視図。
図6】別の実施形態における容量制御弁の部分拡大断面図。
図7】別の実施形態における容量制御弁の部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、可変容量型斜板式圧縮機に用いられる容量制御弁を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、可変容量型斜板式圧縮機10のハウジングHは、シリンダブロック11の前端に連結されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端に連結されたリヤハウジング13とから構成されている。シリンダブロック11とリヤハウジング13との間には、弁・ポート形成体14が介在されている。
【0018】
シリンダブロック11とフロントハウジング12との間には、制御圧室としてのクランク室15が区画形成されている。ハウジングH内には回転軸16が収容されている。回転軸16の前端部は、フロントハウジング12に形成された軸孔12a内に挿通されるとともに、ラジアルベアリング17を介してフロントハウジング12に回転可能に支持されている。回転軸16の後端部は、シリンダブロック11に形成された軸孔11a内に挿通されるとともに、ラジアルベアリング18を介してシリンダブロック11に回転可能に支持されている。回転軸16の前端部は、動力伝達機構(図示せず)を介して外部駆動源としての車両のエンジンEに作動連結されている。
【0019】
クランク室15内において、回転軸16には、回転支持体19が固着されている。回転支持体19は、回転軸16と一体回転可能に固定されている。また、クランク室15内には、斜板20が収容されている。斜板20の中央部には、挿通孔20aが形成されている。挿通孔20aには、回転軸16が挿通されており、斜板20は回転軸16に取り付けられている。回転支持体19と斜板20との間には、ヒンジ機構21が介在されている。そして、斜板20は、ヒンジ機構21を介した回転支持体19との間でのヒンジ連結、及び挿通孔20aを介した回転軸16の支持により、回転軸16及び回転支持体19と同期回転可能であるとともに、回転軸16の中心軸線Lに沿った軸方向へのスライド移動を伴いながら回転軸16に対して傾角が変更可能になっている。
【0020】
シリンダブロック11には、回転軸16の周りに複数のシリンダボア22(図1では一つのシリンダボア22のみ図示)が等角度間隔で前後方向に貫通形成されている。各シリンダボア22には、片頭型のピストン23が前後方向へ往復移動可能に収容されている。シリンダボア22の前後開口は、弁・ポート形成体14及びピストン23によって閉塞されており、シリンダボア22内には、ピストン23の前後方向への往復移動に応じて容積変化する圧縮室24が区画されている。ピストン23は、一対のシュー25を介して斜板20の外周部に係留されている。
【0021】
リヤハウジング13には、弁・ポート形成体14に面して吸入室31及び吐出室32が区画形成されている。吸入室31は吸入圧領域であるとともに、吐出室32は吐出圧領域である。弁・ポート形成体14には、吸入室31に対応して吸入ポート31h及び吸入弁31vが形成されるとともに、吐出室32に対応して吐出ポート32h及び吐出弁32vが形成されている。吸入室31と吐出室32とは、外部冷媒回路35により接続されている。
【0022】
外部冷媒回路35は、凝縮器35a、膨張弁35b及び蒸発器35cを有する。吐出室32の出口は凝縮器35aの入口に接続され、凝縮器35aの出口は膨張弁35bの入口に接続されている。膨張弁35bの出口は蒸発器35cの入口に接続され、蒸発器35cの出口は吸入室31の入口に接続されている。
【0023】
ピストン23の移動に伴い、冷媒ガスは吸入室31から吸入ポート31hを通過するとともに吸入弁31vを押し退けて、圧縮室24へ吸入される。圧縮室24へ吸入された冷媒ガスは、ピストン23の移動により圧縮室24で圧縮される。圧縮室24で圧縮された冷媒ガスは、ピストン23の移動に伴い、圧縮室24から吐出ポート32hを通過するとともに吐出弁32vを押し退けて、吐出室32へ吐出される。吐出室32へ吐出された冷媒ガスは、外部冷媒回路35へ導出されるとともに、凝縮器35a、膨張弁35b及び蒸発器35cを経由して吸入室31へ還流する。よって、可変容量型斜板式圧縮機10は、外部冷媒回路35と共に冷媒循環回路を構成している。
【0024】
クランク室15と吸入室31とは、シリンダブロック11及び弁・ポート形成体14を貫通する排出通路36を介して連通している。排出通路36は、通路断面積を固定した状態で絞り通路となっている。また、リヤハウジング13には、クランク室15の圧力を制御する電磁式の容量制御弁40が組み付けられている。
【0025】
図2に示すように、容量制御弁40のバルブハウジング41は、電磁ソレノイド42を収容する筒状の第1ハウジング43を有する。第1ハウジング43内には、収容筒44が固定配置されている。電磁ソレノイド42は、収容筒44内で嵌入固定される固定鉄心45と、収容筒44の内面と固定鉄心45との間に収容配置される可動鉄心46と、第1ハウジング43における収容筒44の外周側に配設されるコイル48とから構成されている。可動鉄心46と固定鉄心45との間には付勢ばね47が介在されている。付勢ばね47は、可動鉄心46を固定鉄心45から離間させる方向へ付勢している。そして、コイル48への通電が行われると、コイル48への通電量に応じた電磁力(付勢力)が固定鉄心45と可動鉄心46との間に発生し、可動鉄心46が固定鉄心45に向けて吸着される。
【0026】
固定鉄心45の中心には貫通孔45hが形成されている。可動鉄心46には、駆動ロッド49が取り付けられている。駆動ロッド49は、可動鉄心46と一体的に移動可能になっている。駆動ロッド49は、固定鉄心45の貫通孔45h内に挿通されている。
【0027】
容量制御弁40のバルブハウジング41は、第1ハウジング43における固定鉄心45側の開口に組み付けられる筒状の第2ハウジング50を有する。第2ハウジング50内には、容量室51が形成されている。容量室51内には感圧機構52が収容されている。感圧機構52は、ベローズ53と、ベローズ53の一端に結合された受圧部材54と、ベローズ53の他端に結合された支持部材55と、ベローズ53内で受圧部材54と支持部材55とを互いに遠ざける方向に付勢するばね56とから構成されている。支持部材55は、第2ハウジング50における第1ハウジング43とは反対側の開口に圧入固定されている。
【0028】
ベローズ53内において、受圧部材54にはストッパ54aが一体形成されている。また、支持部材55には、受圧部材54のストッパ54aに向けて突出するストッパ55aが形成されている。受圧部材54のストッパ54aと支持部材55のストッパ55aとは、ベローズ53の最短長を規定している。
【0029】
第2ハウジング50内における第1ハウジング43側には、背圧室57が形成されている。また、第2ハウジング50内における背圧室57と容量室51との間には、弁室58が形成されている。駆動ロッド49は、貫通孔45hから背圧室57を通過して弁室58内まで延びている。駆動ロッド49には、背圧室57内に収容されるとともに背圧室57の圧力が作用する作用部49eが形成されている。また、駆動ロッド49は、弁室58内に収容される弁体49vを有する。
【0030】
第2ハウジング50には、弁室58と容量室51とを連通する弁孔59が形成されている。そして、第2ハウジング50における弁室58側に面する端面の弁孔59周りは、弁体49vが着座する弁座60になっている。そして、弁体49vは、弁座60に接離することで弁孔59を開閉可能である。
【0031】
図3に示すように、駆動ロッド49における弁室58側の端部には、連結部材61が圧入固定されている。連結部材61は、駆動ロッド49における弁室58側の端部の中央部に圧入されるとともに弁孔59を通過する圧入部62と、圧入部62に連設するとともに容量室51内に配置されるガイド部63とから構成されている。連結部材61と受圧部材54とは互いに接離可能である。本実施形態において、駆動ロッド49及び連結部材61は、電磁ソレノイド42によって駆動される駆動力伝達部を構成している。
【0032】
図2に示すように、背圧室57は通路71を介して吸入室31に連通している。よって、背圧室57は吸入圧領域である。弁室58は通路72を介して吐出室32に連通している。よって、弁室58は吐出圧領域である。容量室51は通路73を介してクランク室15に連通している。よって、通路72、弁室58、弁孔59、容量室51及び通路73は、吐出室32からクランク室15に至る供給通路を形成している。駆動ロッド49及び連結部材61には、容量室51と背圧室57とを連通する連通路74が貫通形成されている。
【0033】
弁体49vの弁開度は、電磁ソレノイド42への通電による可動鉄心46を固定鉄心45へ吸着させる電磁力、付勢ばね47の付勢力、感圧機構52におけるベローズ53の伸縮及びばね56の付勢力、弁室58内の圧力(吐出圧)、容量室51内の圧力(クランク室15内の圧力)、及び背圧室57内の圧力(吸入圧)の相関関係によって調節される。
【0034】
弁体49vは、供給通路の開度(通過断面積)を調整する。弁体49vは、弁座60に着座することで供給通路を閉鎖する閉弁状態となるとともに、弁座60から離間することで供給通路を開放する開弁状態となる。
【0035】
図3に示すように、受圧部材54における連結部材61側の端面には、連結部材61に当接して受圧部材54における連結部材61側の端面と連結部材61との間をシールするシール部54sが突出形成されている。シール部54sは、連通路74における容量室51側の開口周りを覆う環状に形成されている。受圧部材54は、連通路74の圧力を感知して、シール部54sが連結部材61から離間することで、連通路74を開放する開弁状態となるとともに、シール部54sが連結部材61に当接することで、連通路74を閉鎖する閉弁状態となる。また、受圧部材54における連結部材61側の端面において、シール部54sよりも外周側の角部全周には、受圧部材54の外周面541からシール部54sに向かって延びる面取り部54cが形成されている。
【0036】
連結部材61のガイド部63は、圧入部62から感圧機構52側に向かうにつれて拡径する円錐台形状に形成されている。また、ガイド部63における感圧機構52側の端面の外周部には、受圧部材54の外周面541を覆う筒状部64が形成されている。筒状部64は、ガイド部63における感圧機構52側の端面の外周部から駆動ロッド49の移動方向に沿って延びている。筒状部64の延設方向の長さは、受圧部材54が閉弁状態から所定の開弁状態になるまで、受圧部材54の外周面541と筒状部64の内周面641との隙間65が一定に保たれる長さに設定されている。
【0037】
ここで、「所定の開弁状態」とは、受圧部材54の閉弁状態と、受圧部材54が最も開弁した状態との間の開弁状態のことをいう。また、受圧部材54が最も開弁した状態とは、可変容量型斜板式圧縮機10の使用温度範囲内において、最大圧力まで上昇した吸入室31の圧力を受圧部材54が感知して、受圧部材54が連結部材61から最も離間した状態のことをいう。
【0038】
上記構成の可変容量型斜板式圧縮機10において、電磁ソレノイド42(コイル48)への通電が停止されているときには、付勢ばね47の付勢力によって可動鉄心46が固定鉄心45から離れる方向へ付勢されるとともに、ばね56の付勢力によって弁体49vが弁座60から離間して開弁状態となる。これにより、吐出室32の冷媒ガスが、通路72、弁室58、弁孔59、容量室51及び通路73を介してクランク室15に供給され、クランク室15の圧力が高くなる。クランク室15の圧力が高くなると斜板20の傾角が減少し、ピストン23のストロークが小さくなって吐出容量が小さくなる。
【0039】
一方、電磁ソレノイド42(コイル48)への通電が行われると、可動鉄心46が付勢ばね47の付勢力に抗して固定鉄心45に向けて吸着されるとともに、弁体49vが弁座60に接近するように移動する。これにより、供給通路の開度が減少し、吐出室32から通路72、弁室58、弁孔59、容量室51及び通路73を介してクランク室15に供給される冷媒ガスの量が少なくなる。そして、クランク室15から排出通路36を介して吸入室31に冷媒ガスが排出されることにより、クランク室15の圧力が低くなる。クランク室15の圧力が低くなると斜板20の傾角が増大し、ピストン23のストロークが大きくなって吐出容量が大きくなる。
【0040】
図4に示すように、外気温が高くなり、それに応じて外部冷媒回路35における蒸発器35cの出口の圧力、すなわち吸入圧が所定の圧力よりも高くなったときには、受圧部材54が連通路74の圧力を感知することで、受圧部材54がばね56の付勢力に抗して連結部材61から離間する方向へ移動する。すると、受圧部材54は、シール部54sが連結部材61から離間して、連通路74を開放する開弁状態となる。
【0041】
そして、受圧部材54が所定の開弁状態よりも連結部材61から離間して、受圧部材54の外周面541が筒状部64の内周面641によって覆われなくなると、容量室51内の冷媒ガスが、面取り部54cに案内されながら連通路74に向かって流れる。これにより、排出通路36を介したクランク室15から吸入室31への冷媒ガスの排出に加えて、クランク室15から通路73、容量室51、連通路74、背圧室57、通路71を介して吸入室31に冷媒ガスが排出される。その結果、外気温が高く、高い冷房能力が求められる場合において、クランク室15の圧力が速やかに低くなり、斜板20の傾角の増大、ひいてはピストン23のストロークが大きくなることで吐出容量が速やかに大きくなる。
【0042】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3に示すように、弁体49vが開弁して吐出室32からクランク室15へ冷媒ガスが供給されている状態において、受圧部材54は、閉弁状態から所定の開弁状態になるまで外周面541が筒状部64の内周面641によって覆われている。このため、弁体49vが開弁して吐出室32からクランク室15へ冷媒ガスが供給されている状態において、弁室58から容量室51に流れ込む冷媒ガスの動圧が、受圧部材54における連結部材61側の端面に作用することが抑制されている。したがって、弁室58から容量室51に流れ込む冷媒ガスの動圧によって、受圧部材54が連結部材61から離間する方向へ押圧されてしまうことが抑制されている。
【0043】
また、弁室58から容量室51に流れ込む冷媒ガスの動圧によって、受圧部材54が連結部材61から離間する方向へ押圧されたとしても、受圧部材54が閉弁状態から所定の開弁状態になるまでは、受圧部材54の外周面541と筒状部64の内周面641との隙間65が一定に保たれている。よって、受圧部材54の外周面541と筒状部64の内周面641との隙間65を介して受圧部材54と連結部材61との間へ流れ込む冷媒ガスの流量が抑えられ、受圧部材54が連結部材61から離間する方向へ押圧され難くなっている。その結果、弁体49vが開弁して吐出室32からクランク室15へ冷媒ガスが供給されている状態において、容量室51と吸入室31とが連通路74、背圧室57及び通路71を介して連通してしまうことが抑制されており、可変容量型斜板式圧縮機10の吐出容量の制御性が良好なものとなる。
【0044】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ベローズ53には受圧部材54が連結されており、連結部材61には、受圧部材54の閉弁状態から所定の開弁状態になるまで受圧部材54の外周面541を覆う筒状部64が形成されている。そして、受圧部材54が閉弁状態から所定の開弁状態になるまで、受圧部材54の外周面541と筒状部64の内周面641との隙間65が一定に保たれている。これによれば、弁室58から容量室51に流れ込む冷媒ガスの動圧によって、受圧部材54が連結部材61から離間する方向へ押圧されてしまうことを抑制することができる。その結果、弁体49vが開弁して吐出室32からクランク室15へ冷媒ガスが供給されている状態において、容量室51と吸入室31とが連通路74を介して連通してしまうことを抑制することができる。また、受圧部材54の外周面541と筒状部64の内周面641との隙間65を介して受圧部材54と連結部材61との間へ流れ込む冷媒ガスの流量を抑えることができ、受圧部材54が連結部材61から離間する方向へ押圧され難くすることができる。その結果、可変容量型斜板式圧縮機10の吐出容量の制御性を良好なものとすることができる。
【0045】
(2)受圧部材54における連結部材61側の端面において、シール部54sよりも外周側には、受圧部材54の外周面541からシール部54sに向かって延びる面取り部54cが形成されている。これによれば、受圧部材54が所定の開弁状態よりも連結部材61から離間して、受圧部材54の外周面541が筒状部64によって覆われなくなると、容量室51内の冷媒ガスが、面取り部54cに案内されながら連通路74に向かって流れる。よって、クランク室15内の冷媒ガスが、容量室51及び連通路74を介して吸入室31へ排出され易くなり、外気温が高い場合において、可変容量型斜板式圧縮機10の起動から吐出容量が大きくなるまでに掛かる時間を短縮し易くすることができる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図5(a)に示すように、筒状部64に、可変容量型斜板式圧縮機10の使用温度範囲内において最大圧力まで上昇した吸入室31の圧力を受圧部材54が感知して、ベローズ53が縮小して受圧部材54が最も開弁した状態で、受圧部材54の外周面541の一部を覆う被覆部64fが設けられていてもよい。筒状部64には、被覆部64fが、筒状部64の周方向に等間隔をあけて四つ設けられている。
【0047】
図5(b)に示すように、受圧部材54が所定の開弁状態よりも連結部材61から離間すると、筒状部64における受圧部材54側の端面と、受圧部材54における連結部材61側の端面との間であって、且つ筒状部64の周方向に隣り合う被覆部64f同士の間には、間隙66が形成されるようになっている。
【0048】
これによれば、受圧部材54が最も開弁した状態から、閉弁方向へ移動する際に、各被覆部64fによって受圧部材54における閉弁方向への移動が案内されるため、受圧部材54における閉弁方向への移動が安定し、受圧部材54における閉弁方向への移動をスムーズにすることができる。また、受圧部材54及びベローズ53が傾いてしまうことを抑制することができるため、受圧部材54及びベローズ53の振動が抑えられ、ベローズ53の耐久性を向上させることができる。
【0049】
図5(a)及び(b)に示す実施形態において、筒状部64に、各被覆部64fが、筒状部64の周方向に等間隔をあけて設けられていなくてもよい。
図5(a)及び(b)に示す実施形態において、被覆部64fの数は、特に限定されるものではない。
【0050】
図6に示すように、受圧部材54に、受圧部材54における連結部材61側の端面においてシール部54sよりも外周側に一端が開口するとともに、他端が受圧部材54の外周面541に開口する連通通路54rを形成してもよい。そして、受圧部材54が、所定の開弁状態よりも連結部材61から離間すると、容量室51内の冷媒ガスが、連通通路54rを通過して連通路74に向かって流れるようにしてもよい。
【0051】
図7に示すように、受圧部材54の外周面541に、面取り部54cに連続する凹部54bを形成してもよい。そして、受圧部材54が、所定の開弁状態よりも連結部材61から離間すると、容量室51内の冷媒ガスが、凹部54bを通過して連通路74に向かって流れるようにしてもよい。
【0052】
○ 実施形態において、受圧部材54に面取り部54cが形成されていなくてもよい。
○ 実施形態において、ガイド部63は、圧入部62から感圧機構52側に向かうにつれて拡径する円錐台形状でなくてもよく、ガイド部63の形状は、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
10…可変容量型斜板式圧縮機、15…制御圧室としてのクランク室、31…吸入圧領域である吸入室、32…吐出圧領域である吐出室、36…排出通路、40…容量制御弁、41…バルブハウジング、42…電磁ソレノイド、49…駆動力伝達部を構成する駆動ロッド、49v…弁体、51…容量室、52…感圧機構、53…ベローズ、54…受圧部材、54c…面取り部、54s…シール部、57…吸入圧領域である背圧室、58…弁室、59…供給通路を形成する弁孔、61…駆動力伝達部を構成する連結部材、64…筒状部、64f…被覆部、65…隙間、72,73…供給通路を形成する通路、74…連通路、541…外周面、641…内周面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7