(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の入力端子(100a、100b)を有し、複数の入力信号発生源(11、21)から出力される入力信号を伝える複数の入力ライン(13、23)に対して前記入力端子がそれぞれ接続された入力回路であって、
前記複数の入力ラインの間におけるショート故障の自己診断を行う時に制御信号を出力するコントローラ(1)と、
前記コントローラの制御信号に基づいて1回または複数回のパルス状の自己診断用電圧を発生させるパルス回路(5)と、
前記コントローラからの制御信号に基づいて、前記自己診断の時に、前記複数の入力ラインのいずれか1つに対して前記1回または複数回のパルス状の自己診断用電圧を印加するスイッチ(SW1)と、
前記複数の入力ラインのいずれか1つに対して前記自己診断用電圧を印加したときに、前記自己診断用電圧を印加した入力ラインと異なる入力ラインの電圧変化に基づいて、前記複数の入力ラインの間におけるショート故障が発生しているか否かを判定する比較判定手段(8)と、を備えていることを特徴とする入力回路。
前記パルス回路と前記自己診断用電圧が印加される入力ラインとの間の抵抗値の切替えを行う第1抵抗切替回路(6)が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の入力回路。
前記コントローラからの制御信号に基づいて、前記自己診断用電圧が印加される入力ラインにおける前記自己診断の前の電圧を保持電圧として保持する第2保持回路(30)と、
前記自己診断の後に、前記自己診断用電圧が印加された入力ラインに対して、前記第2保持回路で保持された保持電圧を出力する設定電圧出力回路(31)と、を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の入力回路。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示す入力回路100は、アナログ信号で表される入力信号を入力し、それをAD変換してADデータ信号として外部に出力するものである。例えば、入力回路100としてはブレーキ液圧制御を行うためのブレーキECUに備えられるセンサ信号入力回路などを挙げることができる。その場合、入力回路100では、圧力センサや加速度センサ(Gセンサ)等のセンサから出力されるセンサ信号を入力信号として入力し、それをAD変換したADデータ信号をセンシング結果が示された信号として出力することになる。
【0016】
図1に示すように、入力回路100は、第1、第2入力信号発生源11、21および出力保護抵抗12、22を有する第1、第2センサ10、20から出力される信号が伝えられる第1、第2入力ライン13、23に接続される。第1、第2入力信号発生源11、21に対して出力保護抵抗12、22が接続され、この出力保護抵抗12、22を通じて第1、第2入力信号発生源11、21が発する信号が第1、第2センサ10、20に出力される。これが入力回路100に第1、第2入力端子100a、100bそれぞれに入力信号として入力される。
【0017】
第1、第2センサ10、20と第1、第2入力端子100a、100bとの間において、第1、第2入力ライン13、23には、第1、第2フィルタ回路14、24が備えられている。第1、第2フィルタ回路14、24は、外付け抵抗15、25および外付コンデンサ16、26を有するRCフィルタを構成している。具体的には、外付け抵抗15、25が第1、第2入力ライン13、23に対して直列接続されていると共に外付コンデンサ16、26が第1、第2入力ライン13、23に対して並列接続された構成とされている。
【0018】
入力回路100は、ICによって構成されており、上記した第1、第2入力端子100a、100bを通じて第1、第2入力ライン13、23に接続されている。本実施形態の場合、入力回路100は、コントローラ1に加え、入力信号をAD変換したADデータ信号を出力するための構成として、サンプルホールド(以下、S/Hという)回路2、制御スイッチ3およびAD変換器4を備えている。また、入力回路100は、異常検出用の構成として、パルス回路5、スイッチSW1、第1抵抗切替回路6、第1保持回路7および比較判定回路8も備えている。
【0019】
コントローラ1は、入力回路100に備えられたS/H回路2、制御スイッチ3およびAD変換器4に対して制御信号を出力し、所定のサンプリング周期ごとに入力信号をAD変換してADデータ信号として出力させる。また、コントローラ1は、パルス回路5、スイッチSW1、SW2、第1抵抗切替回路6、第1保持回路7および比較判定回路8を制御し、ショート故障の発生の有無について自己診断する。
【0020】
S/H回路2は、コントローラ1からの制御信号に従って、所望のサンプリング周期ごとに入力信号のサンプルホールドを行う。制御スイッチ3は、S/H回路2とAD変換器4との接続状態を制御するものであり、S/H回路2にてサンプルホールドされた信号を所定のサンプリング周期ごとにAD変換器4に入力する。AD変換器4は、例えば複数のコンパレータなどを内蔵しており、S/H回路2でサンプルホールドされたアナログ信号で表される入力信号を複数のコンパレータにて大小比較し、その比較結果に応じたデジタル信号をADデータ信号として出力する。
【0021】
パルス回路5は、コントローラ1からの制御信号に基づいてパルス状の自己診断用電圧(パルス信号)を発生させる。自己診断用電圧としては、パルス状の所定の電圧(例えば5Vと0Vのパルス電圧)を1回または複数回、短周期で発生させている。このパルス回路5で発生させられた自己診断用電圧は、第1抵抗切替回路6を介して第1、第2入力ライン13、23に印加される。
【0022】
第1抵抗切替回路6は、自己診断用電圧を第1、第2入力ライン13、23に印加する際のインピーダンス調整に用いられるものであり、パルス回路5と第1、第2入力ライン13、23との間の抵抗値の切替えを行う。具体的には、第1抵抗切替回路6は、スイッチSW2、SW3および第1、第2抵抗R1、R2を備えている。これらの構成を用いて、第1抵抗切替回路6は、自己診断用電圧を第1、第2入力ライン13、23に印加する際に、自己診断用電圧を直接印加する形態と、第1抵抗R1または第2抵抗R2を介して印加する形態とを切替える役割を果たす。第1抵抗R1と第2抵抗R2は、第1、第2フィルタ回路14、24に対応して汎用性を持たせるために備えられるものであり、異なる抵抗値に設定され、フィルタ回路14、24のインピーダンスに合わせて適宜選択される。
【0023】
すなわち、外付け抵抗15、25の抵抗値Rf1、Rf2や外付コンデンサ16、26の容量値Cf1、Cf2に応じて、第1、第2入力ライン13、23に対して接続しても良い抵抗値の許容範囲が異なる。このため、抵抗値Rf1、Rf2や容量値Cf1、Cf2に基づいて第1、第2抵抗R1、R2のいずれを用いるか、もしくは、用いないかを選択する。第1、第2抵抗R1、R2を用いる場合にはそれらのうち選択した方を通じて、もしくは、用いない場合には直接、第1、第2入力ライン13、23に自己診断用電圧が入力されるようにスイッチSW2が切替えられる。そして、SW3がオンされることで、スイッチSW2によって選択された抵抗値の経路を通じて、パルス信号が第1、第2入力ライン13、23に印加されるようになっている。
【0024】
スイッチSW1は、第1、第2入力ライン13、23への自己診断用電圧の印加を制御するものである。具体的には、パルス回路5にて自己診断用電圧が発生させられるタイミングでスイッチSW1がオンされ、第1抵抗切替回路6を介して第1、第2入力ライン13、23に対してパルス信号を印加する際にいずれの入力ラインに印加するかの切り替えを行っている。
【0025】
第1保持回路7は、保持タイミングの際にコントローラ1から制御信号が入力されると、その制御信号に基づいて第1、第2入力ライン13、23の電圧を保持する。具体的には、保持タイミングは、パルス回路5によって形成されるパルス状の自己診断用電圧のパルス電圧の立下り時またはH電圧が終了する時とパルス電圧の立上り時またはL電圧が終了する時とされている。第1保持回路7は、これら各タイミングの第1、第2入力ライン13、23の電圧をそれぞれ第1電圧V1と第2電圧V2として保持する。
【0026】
比較判定回路8は、比較判定手段に相当するもので、第1保持回路7より保持している第1、第2電圧V1、V2を入力し、第1電圧V1から第2電圧V1、V2への電圧変化に基づいてショート故障判定を行い、判定結果に応じた異常判定信号を出力する。具体的には、比較判定回路8は、第1電圧V1と第2電圧V2の差V1−V2を演算すると共に、この差V1−V2が所定の閾値Th以下であるか否かを判定し、差V1−V2が閾値Th以下であれば正常、閾値Thを超えていればショート故障と判定する。そして、比較判定回路8は、正常かショート故障かを示す異常判定信号を出力する。
【0027】
このような構成により、本実施形態にかかる入力信号が伝えられる第1、第2入力ライン13、23に第1、第2フィルタ回路14、24が接続された入力回路100が構成されている。このような入力回路100により、入力信号がAD変換されたADデータ信号が出力されると共に、ショート故障判定結果を示す異常判定信号が出力されることで、外部に備えられた制御装置などにそれらが伝えられる。これにより、制御装置は、例えば第1、第2センサ10、20によるセンシング結果や第1、第2入力ライン13、23の間におけるショート故障の判定結果を把握することが可能となる。したがって、制御装置は、センシング結果に基づいてブレーキ制御などの各種制御を行ったり、ショート故障時には各種制御の介入を中止するなどの処置を取ることができる。
【0028】
なお、第2センサ20のセンサ信号を伝達する第2入力ライン23からAD変換器4への入力回路については図示を省略してあるが、第1センサ10のセンサ信号を伝達する第1入力ライン13からAD変換器4への入力回路と同様の構成とされている。すなわち、第2入力ライン23からAD変換器4への入力回路にもS/H回路2や制御スイッチ3と同様の構成が備えられている。そして、第1センサ10と第2センサ20のセンサ信号がAD変換器4に異なるサンプリングタイミングで入力され、AD変換器4で各センサ信号がADデータ信号に変換されるようになっている。また、入力回路100の第1、第2入力端子100a、100bに接続された容量9a、9bは寄生容量であり、外付コンデンサ16、26の容量値Cf1、Cf2よりも十分に小さな容量値Ci1、Ci2となっている。
【0029】
続いて、上記のように構成された入力回路100による自己診断方法の詳細について、
図2〜
図6を参照して説明する。
【0030】
図2に示すように、第1、第2センサ10、20は、アナログ信号で表される所定の入力信号を発生している。例えば、第1、第2センサ10、20が車に搭載されたブレーキ液圧制御用のセンサ等である場合には、0V〜5Vの範囲において、センシング結果に応じたセンサ信号を入力信号として発生させている。
【0031】
自己診断時ではない通常時には、所定のサンプリング周期ごとにS/H回路2にて入力信号がサンプリングされると共に、制御スイッチ3を介してAD変換器4に入力信号が入力される。これにより、AD変換器4にて入力信号がAD変換され、それに応じたADデータ信号がAD変換器4から出力される。
【0032】
そして、
図2中の期間Taで示したように自己診断時になると、コントローラ1からの制御信号に基づいて、各スイッチSW1、SW2の切替えが行われると共に、パルス回路5にてパルス状の自己診断用電圧が発生させられる。これにより、第1、第2入力ライン13、23に対して順番に自己診断用電圧が印加されることで、第1、第2入力ライン13、23が正常であるかショート故障が発生しているかを判定する。
【0033】
例えば、第1センサ10が接続された第1ライン13の自己診断定時には、スイッチSW1が第1入力ライン13に接続される方の接点端子に投入され、スイッチSW2の切替えが行われると共にスイッチSW3がオンされる。これにより、スイッチSW2にて選択された形態、すなわち自己診断用電圧が直接、もしくは、第1抵抗R1または第2抵抗R2を介して第1入力ライン13に印加され、自己診断用電圧に基づいて第1入力ライン13(第1入力端子100a)の電圧が変化する。
【0034】
このとき、第1、第2入力ライン13、23の間がショート故障していなければ、第1、第2入力ライン13、23は互いに独立した電圧となり、第1入力ライン13は自己診断用電圧に応じた電圧、第2入力ライン23は第2センサ20の出力に応じた電圧となる。このため、
図2および
図3に示した通り、第1入力端子100aの電圧は、パルス状の自己診断電圧に応じてパルス状に変化することになるが、第2入力端子100bの電圧は、第1入力ライン13に自己診断電圧を印加する程度の短時間では、殆ど変動が生じない。つまり、第2センサ20のセンサ信号の変動周期およびフィルタ回路24のフィルタ特性に対して、自己診断電圧の印加時間が短ければ、入力信号の変動は殆どない。
【0035】
これに対して、第1、第2入力ライン13、23の間がショート故障していれば、第1、第2入力ライン13、23が同電圧となり、第1、第2入力ライン13、23が共に自己診断用電圧に応じた電圧となる。つまり、
図4および
図5に示した通り、第1、第2入力端子100a、100bの電圧は、パルス状の自己診断電圧に応じてパルス状に変化することになる。ただし、自己診断電圧が並列的に接続された状態になっている第1、第2入力ライン13、23の両方に印加されることになる。このため、第1、第2入力端子100a、100bの電圧はパルス状に変化しつつも、その変化量がショート故障していない場合と比較して小さな値になる。
【0036】
したがって、パルス電圧の立下り時またはH電圧が終了する時とパルス電圧の立上り時またはL電圧が終了する時における第2入力端子100bの電圧を第1、第2電圧V1、V2として、これら第1、第2電圧V1、V2を保持し、これらの差V1−V2を求める。
【0037】
具体的には、1パルス目の立下り時の第1電圧V1は、ショート故障が発生していたとすると、1パルス目の印加によって自己診断用電圧の印加に基づいて最も第2入力端子100bの電圧が大きくなるときの電圧である。また、2パルス目の立上り時の第2電圧V2は、ショート故障が発生していたとすると、1パルス目の印加による第2入力端子100bの電圧の上昇が収まって最も第2入力端子100bの電圧が小さくなるときの電圧である。したがって、これら1パルス目の立下り時の第1電圧V1と2パルス目の立上り時の第2電圧V2との差V1−V2は、ショート故障が発生していない正常時であれば、小さな値になり、ショート故障が発生していると大きな値となる。よって、差V1−V2を閾値Thと比較し、差V1−V2が所定の閾値Th以下であれば正常、閾値Thを超えていればショート故障と判定することができる。
【0038】
なお、第2センサ20が接続された第2入力ライン23に対して自己診断用電圧を印加する際も上記と同様であり、スイッチSW1を第2入力ライン20に接続される方の接点端子に投入すると共に、スイッチSW2の切替えを適宜行い、スイッチSW3をオンする。また、自己診断電圧のパルス電圧の立下り時またはH電圧が終了する時とパルス電圧の立上り時またはL電圧が終了する時における第1入力端子100aの電圧を第1、第2電圧V1、V2として、これら第1、第2電圧V1、V2を保持し、これらの差V1−V2を求める。そして、差V1−V2を閾値Thと比較し、差V1−V2が所定の閾値Th以下であれば正常、閾値Thを超えていればショート故障と判定することができる。
【0039】
このようなショート故障の自己診断を所望のタイミングに行うことで、ショート故障の発生を検出している。これにより、ショート故障しているにもかかわらず、誤った第1、第2センサ10、20のセンシング結果に基づいて各種制御が行われることを防止している。例えば、
図6に示すように、ショート故障の自己診断については、サンプリング毎に行っている。具体的には、第1センサ10によるサンプリング後から次のサンプリングまでの間のうち、第2センサ20によるサンプリング期間を除いたタイミングで第1入力ライン13への自己診断電圧の印加を行うことができる。また、第2センサ20によるサンプリング後から次のサンプリングまでの間のうち、第1センサ10によるサンプリング期間を除いたタイミングで第2入力ライン23への自己診断電圧の印加を行うことができる。このようにして、第1、第2入力ライン13、23に対して順番に自己診断電圧を印加して、ショート故障の発生の有無を常時判定することが可能となる。
【0040】
以上説明したように、第1、第2入力ライン13、23のいずれか一方に対してパルス回路5が発生させるパルス状の自己診断用電圧を印加している。また、第1、第2入力ライン13、23の他方について、パルス電圧の立下り時またはH電圧が終了する時とパルス電圧の立上り時またはL電圧が終了する時のときの第1、第2電圧V1、V2の差V1−V2を求めるようにしている。そして、この差V1−V2を閾値Thと大小比較するようにしている。これにより、ショート故障の発生の有無を自己診断することが可能となる。したがって、複数の入力信号が入力される入力回路100において、2系統回路を備えなくても入力配線間でのショート故障の検出が行えるようにすることが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して自己診断後の電圧調整機能を追加したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
上記したように、自己診断時に第1、第2入力ライン13、23のいずれかに対して自己診断電圧を印加することで、ショート故障の発生の有無を判定することが可能となる。しかしながら、フィルタ回路14、24に備えられた外付け抵抗15、25が影響し、時定数に応じて、自己診断動作後にAD変換器4が出力するADデータ信号の示す電圧がセンサ信号の示す電圧に復帰するまでに遅れ時間が発生する。遅れ時間は、外付け抵抗15、25の抵抗値などによって様々であるが、長時間になることも有り得る。このため、ショート故障の判定を常時行う場合には、ADデータ信号の示す電圧がセンサ信号の示す電圧に戻るまでの間、AD変換を待たなければならず、短周期でのサンプリングができなくなるという問題が発生し得る。
【0043】
そこで、本実施形態では、自己診断を行う際には、自己診断用電圧が印加される入力ラインについて自己診断前の電圧を保持しておき、自己診断終了時に、その保持しておいた電圧をその入力ラインの電圧として復帰させる。これにより、ADデータ信号の示す電圧がセンサ信号の示す電圧に戻るまでの間、AD変換を待つ必要が無くなり、短周期でのサンプリングを行えるようにする。
【0044】
具体的には、
図7に示すように、本実施形態の入力回路100は、上記第1実施形態で説明した各部に加えて、第2保持回路30と、設定電圧出力回路31および第2抵抗切替回路32を備えた構成とされている。
【0045】
第2保持回路30は、コントローラ1の制御信号によって制御され、第1入力ライン13および第2入力ライン23のうち自己診断用電圧が印加される側の電圧、つまりセンサ信号が示す電圧を保持する。具体的には、第2保持回路30は、スイッチSW4もしくはスイッチSW5がオンされたときに第1入力ライン13もしくは第2入力ライン23の電圧を保持する。スイッチSW4、SW5もコントローラ1の制御信号によって制御され、自己診断時に、自己診断用電圧を印加する入力ラインの電圧が第2保持回路30に保持されるように、スイッチSW4、SW5のいずれかが選択されてオンさせられる。
【0046】
設定電圧出力回路31は、自己診断終了後に第2保持回路30で保持された電圧(以下、保持電圧という)を出力するものである。具体的には、設定電圧出力回路31は、第2抵抗切替回路32を介して第1入力ライン13もしくは第2入力ライン23に保持電圧を印加する。
【0047】
第2抵抗切替回路32は、保持電圧を第1、第2入力ライン13、23に印加する際のインピーダンス調整に用いられ、設定電圧出力回路31と第1、第2入力ライン13、23との間の抵抗値の切替えを行う。具体的には、第2抵抗切替回路32は、スイッチSW6、SW7がオンされると、スイッチSW8の選択に基づいて、保持電圧を直接印加する形態と、第3抵抗R3または第4抵抗R4を介して印加する形態とに切替えて保持電圧を印加する。第3抵抗R3と第4抵抗R4は、第1、第2入力ライン電圧をセンサ信号が示す電圧に近い自己診断前の電圧に早期に回復しつつ、第1、第2入力ライン13、23の電圧変動に伴うノイズ抑制のために備えられる。これら第3抵抗R3と第4抵抗R4は、異なる抵抗値に設定されており、フィルタ回路14、24のインピーダンスに合わせて適宜選択される。
【0048】
つまり、外付け抵抗15、25の抵抗値Rf1、Rf2や外付コンデンサ16、26の容量値Cf1、Cf2に応じて、第1、第2入力ライン13、23に対して接続したときにセンサ信号が示す電圧の早期回復やノイズ抑制を行うのに好ましい抵抗値の範囲が異なる。このため、抵抗値Rf1、Rf2や容量値Cf1、Cf2に基づいて第3、第4抵抗R3、R4のいずれを用いるか、もしくは、用いないかを選択する。そして、第3、第4抵抗R3、R4を用いる場合にはそれらのうち選択した方を通じて、もしくは、用いない場合には直接、第1、第2入力ライン13、23に保持電圧が入力されるようにスイッチSW8の切替えが行われる。
【0049】
このようにして、本実施形態にかかる入力回路100が構成されている。続いて、本実施形態にかかる入力回路100による自己診断方法の詳細について説明する。ただし、基本的な自己診断方法については第1実施形態と同様であり、第1実施形態に対して自己診断後の電圧調整のみが異なっていることから、自己診断後の電圧調整について主に説明する。
【0050】
図8に示すように、第1センサ10について、センサ信号のサンプリングを終えてから自己診断を行う際には、コントローラ1にてスイッチSW1〜SW3が制御され、第1入力ライン13に対して自己診断用電圧が印加される。これにより、第1実施形態で説明した方法によって、第1入力ライン13と第2入力ライン23とのショート故障の発生の有無が判定される。
【0051】
このとき、自己診断直前に、スイッチSW4をオンし、第2保持回路30にて自己診断直前の第1入力ライン13の電圧を保持する。そして、自己診断終了後に、スイッチSW4をオフすると共に、第2抵抗切替回路32においてスイッチSW6をオンし、かつ、スイッチSW8にて第3、第4抵抗R3、R4を選択もしくは抵抗無しを選択する。これにより、第2保持回路30での保持電圧が設定電圧出力回路31から出力され、これが第2抵抗切替回路32を介して第1入力ライン13に印加される。
【0052】
したがって、
図7中に破線で示したように、仮に保持電圧を入力しない場合、外付け抵抗15の抵抗値によっては、第1入力ライン13の電圧が自己診断終了後に第1センサ10のセンサ信号が再び入力されてから緩やかにしか回復していかないことがある。しかしながら、本実施形態のように保持電圧が入力されるようにすることで、第1入力ライン13の電圧が自己診断終了後に早急に自己診断開始時の電圧まで回復させられる。このため、ADデータ信号の示す電圧がセンサ信号の示す電圧に戻るまでの間、AD変換を待つ必要が無くなり、短周期でのサンプリングを行うことが可能となる。
【0053】
そして、自己診断終了後、ADデータ信号の示す電圧がセンサ信号の示す電圧に戻ると想定される期間が経過したら、スイッチSW6をオフする。これにより、次のサンプリングの際には、再び、AD変換器4にてセンサ信号がAD変換され、ADデータ信号として出力されるようになる。
【0054】
なお、第2センサ20についてセンサ信号のサンプリングを終えてから第2入力ライン23のショート故障の発生の有無を自己診断する際にも、上記と同様のことを行う。これにより、第2入力ライン20の電圧についても、自己診断終了後に第2センサ20のセンサ信号が再び入力された際に、早急に自己診断開始時の電圧に回復させられる。このため、ADデータ信号の示す電圧がセンサ信号の示す電圧に戻るまでの間、AD変換を待つ必要が無くなり、短周期でのサンプリングを行うことが可能となる。
【0055】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0056】
例えば、上記各実施形態では、パルス回路5が発生させる信号を矩形波パルスとしたが、矩形波でなく三角波や正弦波でも実施可能である。パルス電流源や三角波電圧源のような三角波状の電圧となる場合、矩形波パルス同様にパルス電圧の立下り時立上り時の切替えタイミングで電圧を保持検出するか、またはパルス印加時の波高の最大値最小値をピーク検出で検出し、比較することでショート検出が可能である。正弦波パルスの場合もパルス印加時の波高の最大値最小値をピーク検出で検出し比較すればショート検出が可能である。
【0057】
また、上記実施形態では、ショート故障を自己診断するのに、パルス回路5から印加したパルス信号の立下り時またはH電圧が終了する時とパルス電圧の立上り時またはL電圧が終了する時のときの第1、第2電圧V1、V2の差V1−V2を閾値Thと比較するようにした。しかしながら、これは一例を示したのであり、第1電圧V1に対する第2電圧V2の電圧変化に基づく他の手法、例えば第1電圧V1から第2電圧V2への変化率を閾値と比較することによってショート故障を診断しても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、パルス信号の立下り時またはH電圧が終了する時とパルス電圧の立上り時またはL電圧が終了する時のときを第1、第2電圧V1、V2としたが、パルス信号のそれぞれH出力後、L出力後の一定時間経過時を第1、第2電圧V1、V2として差V1−V2を閾値Thと比較してもよい。
【0059】
つまり、パルス信号のH/L変化に同期したタイミングで第1、第2電圧V1、V2を保持し、その差V1−V2を閾値Thと大小比較してショート故障を判定すれば良いため、第1、第2電圧V1、V2を得るタイミングはどのタイミングであっても良い。
【0060】
また、上記各実施形態では、入力回路100に対して第1、第2センサ10、20の2つの入力信号が入力される形態について説明したが、2つの入力信号に限らず、複数の入力ラインを通じて入力信号が入力される形態の入力回路に対して本発明を適用できる。その場合、複数の入力ラインのうちから任意の1つの入力ラインに対して自己診断用電圧を印加し、そのときの複数の入力ラインのうちの他の入力ラインについて、第1、第2電圧V1、V2の差V1−V2を求め、これを閾値Thと比較すれば良い。この場合、第1、第2電圧V1、V2の差V1−V2の取得対象とする入力ラインについては、基本的には自己診断用電圧を印加した入力ライン以外のすべての入力ラインとすることができる。しかしながら、差V1−V2の取得対象とする入力ラインが多くなるため、ショート故障が発生し易いと想定される隣合う入力ラインについてのみ、差V1−V2の取得対象とすることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、入力回路100として、入力信号をAD変換してADデータ信号として外部に出力するAD変換機能を有した構成としたが、入力信号を信号処理して外部に出力する他の機能を有するようなものであっても構わない。
【0062】
また、上記実施形態では、汎用性を持たせるために、第1、第2抵抗R1、R2を備え、スイッチSW2にて第1、第2抵抗R1、R2のいずれか、もしくは、抵抗無しを選択してパルス回路5と第1、第2入力ライン13、23との間に接続されるようにしている。同様に、第3、第4抵抗R3、R4を備え、スイッチSW8にて第3、第4抵抗R3、R4のいずれか、もしくは、抵抗無しを選択して設定電圧出力回路31と第1、第2入力ライン13、23との間に接続されるようにしている。しかしながら、単一の抵抗が備えられた構成や3つ以上の抵抗が備えられた構成であっても構わない。
【0063】
また、上記実施形態では、第1抵抗切替回路6にスイッチSW3を設け、スイッチSW3のオンオフによってパルス回路5と第1、第2入力ライン13、23との接続のオンオフを制御するようにした。これ対して、スイッチSW1に第1、第2入力ライン13、23との接続端子以外に第1、第2入力ライン13、23と接続されていない端子を設け、スイッチSW1によってパルス回路5と第1、第2入力ライン13、23との接続のオンオフを制御しても良い。