【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図11に基づいて説明する。
まず、フロントサイドフレームが設置された前部車体構造について簡潔に説明する。
図1,
図2に示すように、車両Vは、エンジンルームEと車室Cとを上下方向および車幅方向に延びて仕切るダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の前方位置で車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム2と、ダッシュパネル1の下方位置で車体後方側に延びるフロアメインフレーム3と、ダッシュパネル1の上部前方に設置されるカウルボックス4と、フロントサイドフレーム2の側方位置でタワー形状に立設されるサスタワー部5と、このサスタワー部5と前述のダッシュパネル1とを上下方向および車体前後方向に延びて連結するエプロン部6と、エプロン部6上端で車体前後方向に延びるエプロンレインメンバ7と、エプロン部6下部でフロントタイヤTを収容するよう略半円状に膨出形成されたタイヤハウス8等を備えている。尚、左右対象構造であるため、主に車体右側構造について説明し、車体左側構造については説明を省略する。また、以下、車体前後方向前方を前方とし、進行方向に対して左方を左方として説明する。
【0022】
フロントサイドフレーム2の前端部には、前面衝撃荷重を受けた際、圧縮変形(軸圧縮)して、衝突エネルギの一部を吸収するためのクラッシュカン9を設置している。
ダッシュパネル1の下部前面には、車幅方向に延びる閉断面を構成するダッシュロアクロス10を接合固定している。このダッシュロアクロス10を設けることで、ダッシュパネル1下部の剛性を高めている。
フロントサイドフレーム2の前後方向中央部には、略円柱形状のエンジンマウント11を設置して、このエンジンマウント11によってパワーユニット(図示略)を弾性支持している。また、このエンジンマウント11よりも下方のフロントサイドフレーム2内には、エンジンマウント11の取付け剛性を高めるために、マウント取付けレイン12を設置している。
【0023】
図1に示すように、フロントサイドフレーム2の後部には、下方に傾斜して湾曲形成された湾曲部2aを形成している。フロントサイドフレーム2の後部下面には、サスペンションサブフレーム(図示略)を取付けるサブフレーム取付けブラケット13を接合固定している。
図2に示すように、フロントサイドフレーム2後部の車幅方向内方側には、略筋交状に傾斜して延びる連結補強メンバ14を設置して、フロントサイドフレーム2の湾曲部2aとダッシュロアクロス10とを強固に連結している。
【0024】
そして、フロントサイドフレーム2の後端上部2b(
図2参照)は、ダッシュロアクロス10に接合固定されるように構成しており、後端下部2c(
図1参照)は、フロアメインフレーム3の前端に連結部15を介して連結固定されている。
また、フロントサイドフレーム2の後部上方には、エプロン部6の車幅外方側で車体上方側に延びる上部連結メンバ16を設置して、フロントピラー(図示略)とフロントサイドフレーム2の後部とを連結している。
【0025】
次に、フロントサイドフレーム2について詳細に説明する。
図3に示すように、フロントサイドフレーム2は、断面略ハット形状のインナパネル21の上端フランジ部21aと下端フランジ部21bとを断面略ハット形状のアウタパネル22の上端フランジ部22aと下端フランジ部22bとに夫々接合固定することにより、上下方向に長い、所謂縦比が横比よりも大きな略長方形状の閉断面を構成している。
【0026】
インナパネル21の車幅方向内方側壁面には、前端部から凹形状に窪み水平方向に延びる第1凹状溝21cを形成している。また、アウタパネル22の車幅方向外方側壁面にも、同様に、前端部から凹形状に窪み水平方向に延びる第2凹状溝22cを形成している(
図2参照)。フロントサイドフレーム2の中央部位置では、
図2に示すように、第1凹状溝21cの後端が、第2凹状溝22cの後端よりも後方側まで延びるように形成している。
【0027】
図4に示すように、フロントサイドフレーム2の閉断面内には、サブフレーム取付けブラケット13の前端近傍位置から前方に延びるフロントサイドレインフォースメント(以下、フロントサイドレインと略す)30が配設されている。
このフロントサイドレイン30は、正面視で視て、車幅方向縦断面が細長矩形的な細長形状に形成され且つ荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面NPが長辺と略直交するように上下方向に配列された4つの細長形状部40と、上下方向に隣り合う細長形状部40の互いに離隔した長辺同士を連結する3つの連結部41を備えている。
尚、本発明における細長矩形的な細長形状の細長形状部とは、長手方向直交断面において、1対の長辺と1対の短辺とを備え且つ性能として矩形形状の基本特性を有する形状部であり、長辺又は短辺の途中部分に基本的な矩形形状の特性を阻害しない範囲の角部、湾曲部或いは屈曲部を形成した形状を含むものである。
【0028】
図4〜
図6に示すように、フロントサイドレイン30は、前後方向に延びるインナレイン31とアウタレイン32とによって形成されている。フロントサイドレイン30は、上半部と下半部とが上下対称の構成であるため、以下、主に上半部について説明する。
インナレイン31は、上下方向に配列された4つの凸部31aと、上端の凸部31aから上方へ延びる上端フランジ部31bと、下端の凸部31aから下方へ延びる下端フランジ部31bと、隣り合う凸部31aの車幅方向外側端を連結する3つの中間フランジ部31cとを備えている。
【0029】
4つの凸部31aは、正面視で視て、車幅方向内側に張り出した1対の横辺31sと、これら1対の横辺31sの車幅方向内側端部を鉛直状に連結すると共に横辺31sよりも幅が狭くなるように設定された縦辺31tとによって夫々構成されている。
最上端の横辺31sの車幅方向外側端部から上端フランジ部31bが鉛直上方に延び、最下端の横辺31sの車幅方向外側端部から下端フランジ部31bが鉛直下方に延びている。1対の横辺31sと縦辺31tとの交差角度(内角)θ1が90度未満(例えば83度)に夫々設定されている。3つの中間フランジ部31cは、隣り合う凸部31aの互いに離隔した横辺31sの車幅方向外側端部同士を連結している。
【0030】
アウタレイン32は、インナレイン31と左右対称に構成され、4つの凸部32aと、上端の凸部32aから上方へ延びる上端フランジ部32bと、下端の凸部32aから下方へ延びる下端フランジ部32bと、隣り合う凸部32aの車幅方向内側端を連結する3つの中間フランジ部32cとを備えている。
【0031】
4つの凸部32aは、正面視で視て、車幅方向外側に張り出した1対の横辺32sと、これら1対の横辺32sの車幅方向内側端部を鉛直状に連結すると共に横辺32sよりも幅が狭くなるように設定された縦辺32tとによって夫々構成されている。
【0032】
図6に示すように、フロントサイドレイン30を形成する際、予め金属製板材をプレス成形してインナレイン31とアウタレイン32とを形成し、上端フランジ部31bと上端フランジ部32b及び下端フランジ部31bと下端フランジ部32bを夫々位置決めして当接させた後、上端フランジ部31b,32bと下端フランジ部31b,32bを夫々溶接接合する。このとき、中間フランジ部31c,32cとは、少なくとも一部が当接状態に保持されている。
【0033】
以上により、横辺31sとこの横辺31sに連なる横辺32sとからなる1対の長辺と、縦辺31t,32tからなる1対の短辺とによって前後方向と直交する断面(車幅方向断面)が細長矩形的な細長形状の細長形状部40が上下配列されて形成され、中間フランジ部31c,32cによって隣り合う細長形状部40の互いに離隔した長辺同士を連結する連結部41が形成される。各連結部41は、各細長形状部40の車幅方向中心部に沿って前後方向に延びているため、細長形状部40の中立面NPの位置に一致している。
尚、細長形状部40の短辺に対する長辺の比が2未満の場合、曲げFS特性のフラット化効果が低くなるため、細長形状部40の短辺に対する長辺の比は2以上になるように設定する。本実施例では、横辺31s(32s)を縦辺31t(32t)の2倍の長さ(長辺:短辺が4:1)に設定している。
【0034】
次に、
図7、
図8の模式図に基づき、車両Vが前面衝撃荷重を受けたときの変形挙動について説明する。
これらの模式図において、Fはフロントサイドフレームとクラッシュボックスとからなるフロントフレーム体、Dはダッシュパネル、Mは連結補強メンバ、Iはダッシュロアクロスとトンネル部に設けたメンバ部材とからなる内側荷重伝達体、Uは上部連結メンバ、Q(ハッチング領域)はマウント取付けレイン、R(ハッチング領域)はサブフレーム取付けブラケット、Tはフロントタイヤを夫々示している。
【0035】
また、フロントフレーム体Fには、変形後の位置関係が容易に分かるように、便宜上、前後方向に略直線状に延びる複数のポイントを設定している。
第1ポイントP1はクラッシュカン9の前端位置、第2ポイントP2はフロントサイドフレーム2の前端位置、第3ポイントP3はフロントサイドフレーム2の中間位置、第4ポイントP4はマウント取付けレイン12の後端位置、第5ポイントP5はサブフレーム取付けブラケット13の前端位置を示している。
【0036】
荷重Zが作用すると、フロントフレーム体Fは、圧縮変形と車幅方向の折れ変形を積極的に生じさせて衝撃エネルギを吸収する。
図8に示すように、衝突体Wがフロントフレーム体Fに衝突すると、フロントフレーム体Fの第1ポイントP1と第2ポイントP2との間と、第3ポイントP3の途中までの間とに座屈変形が生じる。第3ポイントP3から第4ポイントP4の間では、マウント取付けレインQ等が存在して変形を生じさせることができないため、第2ポイントP2と第3ポイントP3との間で一旦車幅方向内側に折れ変形(内折れ変形)を生じさせ、第3ポイントP3で車幅方向外側へ折れ変形(外折れ変形)をさせるようにしている。
【0037】
第4ポイントP4でも、第1凹状溝21aが車両後方側まで延びるように形成することで、第5ポイントP5までの間を車幅方向外側に折れ変形させる。
第5ポイントP5では、サブフレーム取付けブラケットRでサブフレームを取り付け固定し、その後方位置で荷重分散するためにフレーム剛性を高めているから、車幅方向内方側への折れ変形(内折れ変形)が生じる。
【0038】
以上のように、第3ポイントP3と第4ポイントP4では、車幅方向外側への折れ変形を生じさせ、第5ポイントP5では、車幅方向内側への折れ変形(内折れ変形)を生じさせることで、車体部材の後退を抑制し、車体部材の後退量や乗員への影響を小さくすることができる。
【0039】
次に、本実施例の車両用フレーム構造における作用、効果について説明する。
上記のように、第5ポイントP5では、荷重Zの作用によって車幅方向外側に突出するように座屈変形していることから、前面衝撃荷重を受けたとき、フロントサイドレイン30の第5ポイントP5相当部分に対して車幅方向外側に向かう荷重が作用するものと見做すことができる。そこで、4つの細長形状部(θ=90度)を離隔状態で上下配置すると共に向かい合う長辺同士を中立面位置で連結した本実施例に相当するフロントサイドレインのモデルM1(
図9(a)参照)と、4つの細長形状部を離隔状態で上下配置すると共に上下方向に隣り合う短辺を連結したフロントサイドレインのモデルM2(
図9(b)参照)と、上下配置された4つの細長形状部の長辺を直接連結したフロントサイドレインのモデルM3(
図9(c)参照)とを準備し、夫々のモデルM1〜M3において、
図9(a)〜
図9(c)に示す矢印方向から荷重fを作用させたときの変形についてCAE(Computer Aided Engineering)による第1の解析を行った。尚、モデルM1〜M3は、細長形状部の材質、前後長、形状(細長比)を同条件に設定している。
【0040】
図10に、CAEによる第1の解析結果を示す。
尚、モデルM1〜M3の支持可能な荷重fとモデルM1〜M3の変形ストロークとの曲げFS特性を各々のモデルM1〜M3に対応したL1〜L3で示している。
図10に示すように、モデルM2,M3は、長辺が鉛直状に配置された単一の閉断面によって構成されたフロントサイドレインに比べて高い荷重まで座屈しないものと推測されるが、荷重ピーク値を持続して維持することができないため、結果的に、衝撃エネルギ吸収量が低い。モデルM1は、モデルM2よりも最大荷重が低いものの、所定期間安定して最大荷重を維持しているため、モデルM2よりも衝撃エネルギ吸収量を高くすることができる。
【0041】
本実施例では、前面衝撃荷重を受けたとき、第5ポイントP5に対して車幅方向外側に向かう荷重が作用した状態に擬制できることから、フロントサイドレイン30には、インナレイン31に圧縮荷重が作用し、アウタレイン32に引張荷重が作用すると見做せる。
それ故、前面衝撃を受けたとき、中立面NPよりも圧縮側に張り出した4つの凸部31aに圧縮荷重入力前後において曲げモーメントに伴う周長差が生じることから、凸部31aが周長差を解消するために細長形状部40の長辺と直交する方向(上方又は下方)へ傾倒するため、横辺31sや縦辺31tに変形が発生し、上記のような解析上の曲げFS特性を得ることができない。
【0042】
そこで、
図9(a)に示すモデルM1を用いて、細長形状部の長辺と短辺との交差角度(内角)θを任意に変更し、夫々の交差角度θにおけるエネルギ吸収率(エネルギ吸収量/質量)についてCAEによる第2の解析を行った。尚、4隅の交差角度θは全て同じ角度θに設定した。
【0043】
図11に基づき、CAEによる第2の解析結果について説明する。
図11に示すように、細長形状部の長辺と短辺との交差角度θが90度未満のとき、90度以上のときに比べてエネルギ吸収率が高い。
これは、交差角度θが90度未満の場合、細長形状部の上側長辺は上側に傾斜し、下側長辺は下側に傾斜しているため、荷重入力時、両長辺に夫々の傾斜方向に傾倒させる応力が発生し、両長辺を連結する短辺を介して夫々の応力が相殺されることにより両長辺の姿勢をバランスさせている。
一方、細長形状部の長辺と短辺との交差角度θが90度以上のとき、圧縮側の細長形状部の傾倒が発生し、断面崩れによってエネルギ吸収率が急激に低下する。
細長形状部の長辺と短辺との交差角度θが90度以上の場合、上側長辺は下方への傾倒応力が発生し、下側長辺は上方への傾倒応力が発生するため、両長辺を連結する短辺に圧縮応力が集中し、断面崩れを生
じるものと推測される。尚、この傾向は、圧縮側部分で顕著であり、引張側部分は交差角度θが90度以上であっても、所定範囲であれば細長形状部の傾倒は生じない。
【0044】
また、交差角度θが80度未満では、細長形状部の傾倒は発生しないものの、エネルギ吸収率が低下している。これは、両長辺を連結する短辺に作用する応力が姿勢をバランスさせる許容範囲を超えるためと推測される。
以上の結果から、少なくとも圧縮側において細長形状部の長辺と短辺との交差角度θを90度未満に設定することで、細長形状部の傾斜を抑制することができ、好ましくは、80度以上89度以下の範囲であり、交差角度θが83度のとき、最も高いエネルギ吸収率を発揮することができることが判明した。
【0045】
本車両用フレーム構造によれば、連結部41よりも圧縮側において長辺と短辺との交差角度を90度未満に形成したことにより、荷重入力時、連結部41よりも圧縮側に張り出した凸部31aが大きいにも拘らず、凸部31aが上下方向へ傾倒することを防止できる。それ故、曲げ強度に寄与するフレーム領域を拡大することができ、曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持することができることから、クラッシュストロークを短縮化しつつ衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができる。
【0046】
特に、交差角度を80度以上89度以下に設定したため、凸部31aの傾倒を防止しつつ、一層衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができる。
また、本発明を閉断面状のフロントサイドフレーム2内に配設されたフロントサイドレイン30に適用したため、フロントサイドフレーム2の衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができ、乗員保護性能を向上できる。
【実施例2】
【0047】
次に、実施例2に係るフロントサイドレイン30Aについて
図12に基づいて説明する。
実施例1のフロントサイドレイン30は、凸部31aと凸部32aとを左右対称に構成したのに対し、実施例2のフロントサイドレイン30Aは、凸部51aと凸部52aとを左右非対称に構成している。尚、実施例1と同様の部材については、同一の符号を付している。
【0048】
図12に示すように、フロントサイドレイン30Aは、正面視で視て、前後直交方向断面が細長矩形的な細長形状に形成され且つ荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面NPが長辺と直交するように上下方向に配列された4つの細長形状部40Aと、上下方向に隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した長辺同士を連結する3つの連結部41Aと、連結部41Aよりも車幅方向外側(引張側)において隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した長辺に夫々当接した複数の充填材42(傾倒抑制部材)を備えている。
【0049】
フロントサイドレイン30Aは、前後方向に延びると共に、前面衝撃荷重を受けたとき、圧縮荷重が作用するインナレイン31と引張荷重が作用するアウタレイン33とによって形成されている。フロントサイドレイン30Aは、上半部と下半部とが上下線対称の構成であるため、以下、主に上半部について説明する。
【0050】
インナレイン31は、4つの凸部31aと、上端の凸部31aから上方へ延びる上端フランジ部31bと、下端の凸部31aから下方へ延びる下端フランジ部31bと、隣り合う凸部31aの車幅方向外側端を連結する3つの中間フランジ部31cとを備えている。
4つの凸部31aは、正面視で視て、車幅方向内側に張り出した1対の横辺31sと、これら1対の横辺31sの車幅方向内側端部を鉛直状に連結すると共に横辺31sよりも車幅方向幅が狭くなるように設定された縦辺31tとによって夫々構成されている。尚、1対の横辺31sと縦辺31tとの交差角度θ1は83度に設定している。
【0051】
アウタレイン33は、4つの凸部33aと、上端の凸部33aから上方へ延びる上端フランジ部33bと、下端の凸部33aから下方へ延びる下端フランジ部33bと、隣り合う凸部33aの車幅方向外側端を連結する3つの中間フランジ部33cとを備えている。
【0052】
4つの凸部33aは、正面視で視て、車幅方向外側に張り出した1対の横辺33sと、これら1対の横辺33sの車幅方向内側端部を鉛直状に連結すると共に横辺33sよりも幅が狭くなるように設定された縦辺33tとによって夫々構成されている。
最上端の横辺33sの車幅方向外側端部から上端フランジ部33bが鉛直上方に延び、最下端の横辺33sの車幅方向外側端部から下端フランジ部33bが鉛直下方に延びている。1対の横辺33sと縦辺32tとの交差角度θ2が90度以上(例えば90度)に夫々設定されている。3つの中間フランジ部33cは、車幅方向外側に張り出すように湾曲形成され、隣り合う凸部33aの互いに離隔した横辺33sの車幅方向内側端部同士を連結している。
【0053】
以上により、横辺31sとこの横辺31sに連なる横辺33sとからなる1対の長辺と、縦辺31t,33tからなる1対の短辺とによって前後方向と直交する断面が細長矩形的な細長形状の細長形状部40Aが形成され、中間フランジ部31c,33cによって隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した長辺同士を連結する連結部41Aが形成される。各連結部41Aは、各細長形状部40Aの車幅方向中心部に沿って前後方向に延びているため、細長形状部40Aの中立面NPの位置に一致している。
【0054】
複数の充填材42は、3つの連結部41Aと、これら連結部41よりも車幅方向外側において隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した1対の長辺(横辺33s)とによって形成された前後方向に延びる3つの溝部に夫々配設されている。
充填材42は、インナレイン31とアウタレイン33とを接合してフロントサイドレイン30を形成する際、予め、夫々の連結部41A(中間フランジ部33c)又は引張側長辺(横辺33s)に連結部41Aの前後長に対応した長さの発泡シート(図示略)が貼着され、塗装における乾燥工程の熱を利用して発泡させることにより、設置される。発泡後の充填材42は、体積が所定量(例えば5〜20倍)に膨張するため、連結部41Aと隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した1対の引張側長辺とに夫々当接すると同時に接着される。尚、充填材42は、間欠的に配設しても良く、また、金属製リブや合成樹脂製リブを用いても良い。
【0055】
本車両用フレーム構造によれば、連結部41A(中立面NP)よりも引張側において隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した引張側長辺に夫々当接して細長形状部40Aの上下方向への傾倒を抑制する充填材42を設けたことにより、荷重入力時、連結部41よりも引張側に張り出した凸部33aが大きいにも拘らず、凸部33aが上下方向へ傾倒することを防止できるため、曲げ強度に寄与するフレーム領域を拡大することができ、曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持することができることから、クラッシュストロークを短縮化しつつ衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができる。
【0056】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、フロントサイドフレームの閉断面内部に配設されるフロントサイドレインに適用した例を説明したが、フロントサイドレインではなく、フロントサイドフレーム自体(アウタパネル・インナパネル)に適用しても良い。また、リヤサイドフレーム、サスクロスメンバ、バンパビーム、センタピラー、インパクトバー等、少なくとも、圧縮荷重と引張荷重とが作用する車両用フレームであれば何れにも適用することができる。
【0057】
2〕前記実施形態においては、細長形状部を上下方向に4つ配列した例を説明したが、少なくとも2つ以上設ければ良く、5つ以上配列しても良い。また、細長形状部の長辺を水平状に延びるように構成した例を説明したが、圧縮荷重(引張荷重)の作用する方向に細長形状部の短辺が対向すれば良く、圧縮荷重が鉛直方向に入力する場合、細長形状部の長辺を鉛直方向に延びるように構成することで本発明の効果を奏することができる。
【0058】
3〕前記実施形態においては、インナレインとアウタレインとを形成するに当り、金属製板材を予めプレス成形してフロントサイドレインを形成した例を説明したが、アルミ合金をフレーム材料とする場合、押出成形を用いて成形することも可能である。また、合成樹脂等をフレーム材料とする場合、射出成形を用いて成形しても良い。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。