(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の手押し運搬車を固縛レール運搬車に具体化した一実施形態を、
図1〜
図11を参照して説明する。
固縛レールは、シャシダイナモシステムに使用されるものである。前記シャシダイナモシステムは、試験車両を条件設定した上で運転し、発生した動力を吸収する装置である。シャシダイナモシステムは実車の状態の動力を吸収するシステムであって、駆動輪を載せて道路の代わりに回転するローラと、車両を拘束する車両拘束装置を備える。前記車両拘束装置は種々のものがあるが、2WDの4輪車両用のシャシダイナモシステムの車両拘束装置では、その一形態として非駆動輪のタイヤを拘束するものがある。この非駆動輪のタイヤを拘束する車両拘束装置の一部に、前記固縛レールが使用されている。固縛レールには、タイヤを拘束する拘束具が車幅方向に位置調節自在に取付けられるようになっている。前記固縛レールは、作業者が1人で持ち運ぶことが困難な長板状の重量物である。
【0013】
図1に示すように固縛レール運搬車10は、一対の車輪23を下部に有する車台本体20と、車台本体20に固定された足載せ台40と、車台本体20の上部、中央部及び下部にそれぞれ固定されたハンドル48と、差し込み調整バー38及びフォーク50、52とを有する。
【0014】
前記車台本体20は、固縛レール運搬車10の前後方向と直交する車幅方向(左右方向)に延在するように設けられたベース部材22と、ベース部材22の前部に固定されたフレーム30を備えている。ベース部材22は、前部壁24及び下部壁26を有する断面L字状の山形鋼から形成されている。なお、ベース部材22の断面形状は限定するものではなく、I形、H形、チャンネル状、平板状、或いは筒状等でもよい。前記車輪23は、ベース部材22の左右の各端部下面に対して取付けられた自在キャスターである。車輪23は、第1車輪に相当する。
【0015】
図1に示すように前記フレーム30は、左右にそれぞれ配置されて上下方向に延在する一対の柱部32、34と、両柱部32、34の上下両端部をそれぞれ連結する架橋部36、37にて形成されている。柱部32、34及び架橋部36、37は、角筒状の鋼材からなるが、その形状は限定するものではない。
【0016】
フレーム30は、前記ベース部材22の前部壁24に対して前記両柱部32、34の下部が溶接等により固定されることにより支持されている。前記固定方法は溶接に限定するものではなく、例えばボルト及びナットによる締結でもよい。
【0017】
また、
図1、
図2に示すように、ハンドル48は前記架橋部36の上面に固定されており、左右方向に延出されている。前記ハンドル48は、第1ハンドルに相当する。
前記柱部32、34の上下方向の中央部の後面には、後方に延出された一対のブラケット39が固定されている。同ブラケット39間には、差し込み調整バー38が架設されている。差し込み調整バー38は第2ハンドルに相当する。
【0018】
図1、
図2に示すように柱部32、34の下部及び架橋部37には、フォーク50、52がそれぞれ溶接等により固定されている。フォーク50、52は、水平片50a、52a及び水平片50a、52aに直交するように形成された垂直片50b、52bを有する断面L字状の山形鋼から形成されていて、相互に平行となるように前方に延出されている。また、フォーク50、52は、前記水平片50a、52aが相互に対向するように配置されている。
図1に示すように前記水平片50a、52aの前端は斜状または円弧状のガイドを有している。
【0019】
前記垂直片50b、52bは、一対のフォークの相互に対向する側面を有する。そして、前記水平片50a、52aは、前述した一対のフォークの相互に対向する側面から突出しており、後述する被運搬物の溝に対して離脱可能に係入する係入部に相当する。
【0020】
前記ベース部材22の下部壁26上面において、左右方向の中間部には台部28を介して足載せ台40が固定されている。
図1、
図2に示すように足載せ台40は、フレーム30よりも後方に配置されるとともに、後端部40aは前端部40b及び中間部40cよりも左右に延出されて全体がT字状に形成されている。
【0021】
また、後端部40aの左右両側部の下面には、一対の車輪60が取付けられている。一対の車輪60は、自在キャスターからなる。車輪60は第2車輪に相当する。
図3に示すように前記フォーク50、52が、水平状態になっているときの水平の地面Zからの前記車輪60の高さは、車輪23よりも高くされている。
図3において、車輪60は、地面Zからh1の高さを有する。一方、
図3において、水平状態になったフォーク50、52の地面Zからの高さh2(≠0)は、h2<h1となっている。従って、前記フォーク50、52は、水平状態及び斜め下方に向けることが可能である。すなわち、車台本体20は、前記水平状態から前記フォーク50、52の先端が接地するまでの間の前傾姿勢状態を取り得ることが可能である。また、車台本体20は、前記水平状態から遷移して、前記車輪60が接地する後傾姿勢状態を取りうることが可能である。
【0022】
前記フォーク50、52の水平状態、または前傾姿勢状態は、第1状態に相当する。また、前記車輪60及び前記車輪23が平(たいら)の地面Zに対してともに接地した後傾姿勢状態は、第2状態に相当する。この状態は、フォーク50、52の先端が斜め上方に向いたものとなる。
【0023】
図2、
図4に示すように、柱部32の中央部にはホルダ70が固定されている。ホルダ70は後方へ延出されていて、その先端には上下方向に延びる筒部72が設けられている。前記筒部72の上下両端面には、縦溝及び前記縦溝の終端に連結された横溝からなる掛け止め溝74、75がそれぞれ切り欠き形成されている。
【0024】
前記筒部72には、倒れ防止部材80が上下移動可能に挿通されている。倒れ防止部材80は棒状に形成され、その上端にはL字状に屈曲した握り部82が設けられている。
図1、
図2、
図4に示すように、足載せ台40の後端部40aにはコ字状のガイド部材44が固定されており、ガイド部材44と後端部40a間に形成された挿通孔46に前記倒れ防止部材80の下部が上下移動可能に挿通されている。
【0025】
図4に示すように、前記倒れ防止部材80には、上下方向において離間する一対の係止ピン86、88が同じ方向に向かうようにそれぞれ突出されている。
図2に示すように係止ピン86は前記掛け止め溝74の前記縦溝に対してその上方から係入されて、前記横溝の終端まで係入可能になっている。
図3に示すように前記係止ピン86が掛け止め溝74の前記横溝の終端まで係入されると、倒れ防止部材80の下端は地面Zに当接されて、前記フォーク50、52を水平状態に保持可能である。すなわち、一対の車輪23と、倒れ防止部材80とにより、固縛レール運搬車10を安定して立たせて固縛レール運搬車10の倒れ防止が図られるようにされている。
【0026】
前記係止ピン86が掛け止め溝74の前記横溝の終端内に係入されたときの倒れ防止部材80の位置は、第1位置に相当する。
また、係止ピン88は前記掛け止め溝75の縦溝に対してその下方から係入されて、横溝の終端まで移動可能になっている。
図4に示すように前記係止ピン88が掛け止め溝75の前記横溝の終端まで係入されていると、倒れ防止部材80の下端は地面Zから離間して、前記車輪60及び前記車輪23が水平の地面Zにともに接地した後傾姿勢状態(すなわち、第2状態)にすることが可能である。すなわち、一対の車輪23と、一対の車輪60とにより、フォーク50,52を斜め上方に保持するとともに、被運搬物の運搬が可能となっている。
【0027】
前記係止ピン88が掛け止め溝75の前記横溝の終端内に係入されたときの倒れ防止部材80の位置は、第2位置に相当する。また、ホルダ70の筒部72は保持部に相当する。
【0028】
(実施形態の作用)
上記のように構成された固縛レール運搬車10の作用を
図5〜
図11を参照して説明する。
【0029】
図2及び
図5(a)は、係止ピン86が掛け止め溝74の終端に係入されている状態であって、倒れ防止部材80の下端が地面Zに接して、倒れ防止が図られている状態である。
【0030】
この状態の固縛レール運搬車10を使用する場合、作業者は倒れ防止部材80の握り部82を操作して、前記係止ピン86を掛け止め溝74から抜け出させるとともに
図5(b)に示すように倒れ防止部材80を上動する。そして、作業者は係止ピン88を掛け止め溝75の縦溝に対して下方から係入させて、
図4に示すように横溝の終端に位置させる。この倒れ防止部材80の操作により、倒れ防止部材80の下端は、
図5(b)に示すように地面Zから離間する。
【0031】
この後、作業者はハンドル48を手前に操作して、
図6に示すように後継姿勢にした固縛レール運搬車10を固縛レールである被運搬物Wが載置されている場所まで走行させる。
【0032】
前記固縛レールは、フォーク50、52の両垂直片50b、52b間の距離よりも若干短い左右の幅を有したものである。また、被運搬物Wの左右の両側部には、フォーク50、52の水平片50a,52aが差し込み(係入)可能な溝Waが、被運搬物Wの長手方向に直線状に形成されている。
【0033】
作業者は、ハンドル48及び差し込み調整バー38を手でもって、固縛レール運搬車10を
図7に示すように被運搬物Wに接近させる。そして、作業者はハンドル48及び差し込み調整バー38を操作して、前記フォーク50、52の水平片50a,52aの上下の位置を調整して被運搬物Wにおける溝Waに対して前記水平片50a,52aを差し込む。このとき、水平片50a,52aの前端はガイドを有しているため、スムーズに溝Waに対して差し込む(係入する)ことができる。なお、水平片50a,52aを前記被運搬物Wの溝Waに対して差し込む際に、被運搬物Wが前方へ移動する場合には、ストッパを設けて被運搬物Wが移動しないようにしてもよい。
【0034】
前記差し込みにより被運搬物Wをフレーム30の下部の架橋部37まで移動させた後、作業者は
図8に示すように車輪60が地面Zに接地するまで足載せ台40を足により下方へ押圧するとともにハンドル48を手で後方へ引っ張って後傾姿勢にする。この後傾姿勢になった後、作業者は足載せ台40から足を下ろす。
【0035】
この後、
図9に示すように作業者は固縛レール運搬車10を後傾姿勢状態のまま、すなわち、車輪60、23を共に地面Zに接地した状態で被運搬物Wを目的地までハンドル48を操作して運搬する。この運搬時には、フォーク50、52の先端は斜め上方に保持されているため、被運搬物Wが運搬中にフォーク50、52から落下することはない。
【0036】
図10に示すように、固縛レール運搬車10が目的地に到着したら、ハンドル48を前方へ押圧して被運搬物Wを地面Zに接地させる。そして、
図11に示すように、ハンドル48を操作して固縛レール運搬車10を後方へ移動することにより、被運搬物Wの溝Waから、フォーク50、52の水平片50a,52aを離脱させる。
【0037】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の固縛レール運搬車10は、車輪23(第1車輪)を下部に有する車台本体20と、車台本体20に対して一方向(前方)へ突出した一対のフォーク50、52と、車台本体20に支持されて前記フォーク50,52の突出方向とは反対方向に突出した足載せ台40を有する。また、足載せ台40には、車輪60(第2車輪)が設けられている。前記車輪60は、フォーク50、52を水平に配置した水平状態または前傾姿勢状態(第1状態)の際には車輪23よりも高い位置に配置される。また、前記車輪60は、フォーク50、52の先端を斜め上方に向けるべく足載せ台40を傾けた後傾姿勢状態(第2状態)の際には、水平状態のときの自身の高さ位置よりも低い位置に配置される。また、固縛レール運搬車10は、車台本体20上部に設けられたハンドル48を有する。また、前記一対のフォーク50、52の相互に対向する対向側面にはフォーク50、52に載せる被運搬物Wの両側部がそれぞれ有する溝Waに対して離脱可能に係入する水平片50a、52a(係入部)が突出されている。
【0038】
この結果、フォーク50、52に被運搬物Wを載せた後、手でハンドル48を後方へ引くと同時に足により足載せ台40を下方へ押圧すると、被運搬物Wを載せたフォーク50、52の先端が斜め上方に向くとともに第2車輪が接地する後傾姿勢状態となる。この後傾姿勢状態では、車輪23と車輪60とで被運搬物Wをフォーク50、52に載せた状態に保持できる。この後、後傾姿勢状態のまま固縛レール運搬車10を手押しすれば、フォーク50、52上の被運搬物Wを容易に運搬することができる。また、フォーク先端を斜め上方に容易に傾けた状態を安定させて運搬できる。また、被運搬物Wを運搬した後は、ハンドル48を手で前方へ押圧してフォークを後傾姿勢状態から水平状態にした後、被運搬物Wをフォーク50、52から被運搬物を下ろす。
【0039】
このようにして、足載せ台40を足で押圧すると同時に手でハンドル48を操作すれば、被運搬物を載せる作業に時間を要することがないとともに、フォーク先端を斜め上方に容易に傾けた状態で安定して運搬できる。
【0040】
(2)本実施形態の固縛レール運搬車10は、車台本体20上部に設けられたハンドル48を第1ハンドルとしたとき、車台本体20の上下方向の中央部には、第2ハンドルとしての差し込み調整バー38が設けられている。このため、本実施形態によれば、ハンドル48(第1ハンドル)よりも低い位置に位置する差し込み調整バー38(第2ハンドル)を作業者は手で掴みながら、被運搬物Wの溝Waにフォーク50、52の水平片50a、52aを差し込む際、その上下の位置調整を容易に行うことができる。
【0041】
(3)本実施形態の固縛レール運搬車10は、第1状態のときに、車台本体20の倒れを防止する倒れ防止部材80を備える。
この結果、本実施形態によれば、第1状態のときには、倒れ防止部材により固縛レール運搬車10の倒れを防止することができる。
【0042】
(4)本実施形態の倒れ防止部材80は、第1位置と第2位置間を移動自在に設けられている。また、車台本体20には、倒れ防止部材80を、第1位置と第2位置にそれぞれ保持するホルダ70の筒部72(保持部)を有する。
【0043】
そして、第1位置は、水平状態(第1状態)のときにおいて、車輪23(第1車輪)が接地する地面Zに対して倒れ防止部材80が当接してフォーク50、52を水平状態に保持する位置としている。また、第2位置は、車輪23(第1車輪)が接地する地面Zから倒れ防止部材80が離間して、車輪60(第2車輪)が前記接地する地面Zへの当接を許容する位置であって、後傾姿勢状態(第2状態)を取り得ることが可能な位置としている。
【0044】
この結果、本実施形態によれば、倒れ防止部材80を第1位置と第2位置の選択的に位置させて、ホルダ70の筒部72(保持部)により保持することにより、固縛レール運搬車10は第1状態と第2状態とを容易に取得することができる。
【0045】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、保持部としての筒部72の上下両端面に掛け止め溝74、75を設け、倒れ防止部材80に一対の係止ピン86、88を設けた。
【0046】
この代わりに、筒部72の上端面から下方に向かって延びる縦溝を設けるとともに、前記縦溝の中間部と下端に上下方向に直交する一対の横溝をそれぞれ設けてもよい。
この場合、倒れ防止部材80には、前記縦溝及び横溝に係入可能な単一の係止ピンを設けるものとする。そして、一対の横溝のうち、下方の横溝に係止ピンが位置する場合を、倒れ防止部材80の第1位置とし、上方の横溝に位置する場合を第2位置とする。
【0047】
・また、上記の構成に代えて、筒部72の下端面から上方に向かって延びる縦溝を設けるとともに、前記縦溝の中間部と上端に上下方向に直交する一対の横溝をそれぞれ設けてもよい。この場合、倒れ防止部材80には、前記縦溝及び横溝に係入可能な単一の係止ピンを設けるものとする。そして、一対の横溝のうち、下方の横溝に係止ピンが位置する場合を、倒れ防止部材80の第1位置とし、上方の横溝に位置する場合を第2位置とする。
【0048】
・前記実施形態では、被運搬物Wを長板状としたが、ブロック状としてもよい、この場合においても、溝Waを両側部に設けるものとする。
・前記実施形態では、フォーク50、52の水平状態を保持するように倒れ防止部材80にて倒れ防止を図った。これに代えて、フォーク50、52が前傾姿勢状態のときに倒れ防止部材80にて倒れ防止を図ってもよい。
【0049】
・前記実施形態では、手押し運搬車を固縛レール運搬車10に具体化した。しかし、固縛レール運搬車10に限定するものではなく、固縛レール以外の他の物の運搬に使用する手押し運搬車に具体化してもよい。