特許第6206315号(P6206315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206315
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】スキャナー装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/19 20060101AFI20170925BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20170925BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20170925BHJP
   H04N 1/107 20060101ALI20170925BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20170925BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H04N1/04 103E
   H04N1/04 101
   H04N1/10
   H04N1/028 Z
   G06T1/00 430G
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-92502(P2014-92502)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-211368(P2015-211368A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】六尾 敏明
【審査官】 花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−081172(JP,A)
【文献】 特開2014−064073(JP,A)
【文献】 特開2006−309451(JP,A)
【文献】 特開平03−010235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/20
G06T 1/00
G06T 1/60
H04N 1/024− 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台に載置された通常の対象物をイメージセンサーによって読み取る第1モードと、原稿台に載置された自発光する対象物を前記イメージセンサーによって読み取る第2モードと、を有するスキャナー装置であって、
前記原稿台に載置された対象物の光を検出する光検出部と、
前記光検出部の検出結果に基づいて、読み取りモードを、前記第1モードあるいは前記第2モードに切り替える制御部と、
前記第2モードにおいて、前記光検出部によって検出された光の光量に応じて前記イメージセンサーの感度を調整する調整部と、を有するスキャナー装置。
【請求項2】
原稿台に載置された対象物に光を照射する光源を有し、
前記制御部は、前記第2モードにおいて、前記光源を消灯させた状態で自発光する対象物を読み取る請求項1に記載のスキャナー装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記光検出部が検出を行うときに、前記光源を消灯させる請求項2に記載のスキャナー装置。
【請求項4】
前記光検出部は、前記原稿台に載置された対象物を前記イメージセンサーで読み取らせて、前記イメージセンサーからの出力信号に基づいて前記対象物の光を検出する請求項1から3のいずれかに記載のスキャナー装置。
【請求項5】
前記光検出部は、前記原稿台に入射する外部入射光を非検出とする光学フィルターを有する請求項1から4のいずれかに記載のスキャナー装置。
【請求項6】
前記イメージセンサーは、入力されるパルス信号の周期によって光信号の蓄積時間を決定するシフトゲートを含むCCDラインセンサーであって、
前記調整部は、前記光検出部によって検出された光の光量に応じて前記ルス信号の周期を変更することにより前記蓄積時間を変更して、前記CCDラインセンサーの感度を調整する請求項1から5のいずれかに記載のスキャナー装置。
【請求項7】
前記調整部は、前記蓄積時間に応じて前記第2モードにおける前記イメージセンサーの読取速度を変更する請求項に記載のスキャナー装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載のスキャナー装置を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナー装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報技術の発展により、携帯電話やタッチパネル式のタブレット装置、その他の端末装置が、一般ユーザーに普及している。これらの端末装置は、画像を表示する液晶画面等の表示部を備えている。ユーザーは、前記表示部に表示された画像から、所望の情報を入手することができる。
【0003】
ところで、他のユーザーにも当該情報を閲覧させようとする場合、通常、ユーザーは、他のユーザーの端末装置に画像データを送信する。しかし、前記他のユーザーが端末装置を携帯していない場合、あるいは、周囲に通信環境が構築されていない場合がある。このような場合には、ユーザーの端末装置に表示された画像を直接スキャナー装置に読み取らせ、その読取画像をコピー機等で複写したものを他のユーザーに配布等することが考えられる。そして、このような閲覧機会は、端末装置の普及により益々増える傾向にある。
【0004】
特許文献1には、カラー原稿を読み込むカラーイメージスキャナを備える画像処理装置が開示されている。この画像処理装置は、カラーディスプレイの色補正を行うために、原稿を通常に読み取る読取処理と、ディスプレイの表示画面を直接に読み取る読取処理と、を行うことができる2つの読み取りモードを有している。通常に原稿を読み取らせるときは、原稿照明用光源を発光される。他方、ディスプレイの表示画面を直接読み取らせるときは、ディスプレイが自発光しているので、原稿照明用光源が消灯される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−143340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の画像処理装置は、読み取りモードの切り替えをユーザーの手動によって行っており、いちいち手動で読み取りモードを切り替えなければならないのは面倒であり、不便である。また、自発光するディスプレイから発光される光の光量によっては、ディスプレイの表示画面を鮮明に読み取ることができないおそれがある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な操作で端末装置の表示画面を鮮明に読み取ることができるスキャナー装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係るスキャナー装置は、原稿台に載置された通常の対象物をイメージセンサーによって読み取る第1モードと、原稿台に載置された自発光する対象物を前記イメージセンサーによって読み取る第2モードと、を有する。また、前記スキャナー装置は、光検出部と、制御部と、調整部と、を有する。前記光検出部は、前記原稿台に載置された対象物の光を検出する。前記制御部は、前記光検出部の検出結果に基づいて、読み取りモードを、前記第1モードあるいは前記第2モードに切り替える。前記調整部は、前記第2モードにおいて、前記光検出部によって検出された光の光量に応じて前記イメージセンサーの感度を調整する。
【0009】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、前記スキャナー装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な操作で端末装置の表示画面を鮮明に読み取ることができるスキャナー装置及び画像形成装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態における複合機の構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態における複合機の機能を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態における複合機の動作(特にスキャナー部における各種処理のシーケンス)を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施形態における原稿台に読み取り対象物として端末装置を載置した状態を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態における表示画面スキャンモード切り替え承認画面を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態における表示画面スキャンモードの読み取り条件の設定選択画面を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態における表示画面スキャンモードの読み取り条件の原稿サイズの選択画面を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態における表示画面スキャンモードで端末装置のEL有機パネルの画面を読み取った画像と、端末装置の液晶パネルの画面を読み取った画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係るスキャナー装置を備える画像形成装置として、コピー機、プリンター及びファクシミリ等の機能を併せ持つ複合機を例示して説明する。また、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態における複合機1の要部構成を示す正面透視図である。図2は、本発明の実施形態における複合機1の機能ブロック図である。図1及び図2に示すように、複合機1は、印刷部10と、スキャナー部20(スキャナー装置)と、GUI(Graphical User Interface)30と、通信部40と、制御部50と、記憶部51と、を備えている。
【0014】
印刷部10は、制御部50による制御の下、印刷用紙に画像を印刷して印刷物として出力する。印刷部10は、給紙部11、トナー画像形成部12、定着部13、及び排紙トレイ14等を備えている。給紙部11は、定型の印刷用紙を複数枚(例えば、数十枚程度)収容可能であると共に、複合機1の正面から引出し可能な給紙カセット11aを備えている。給紙カセット11aに収容された複数枚の印刷用紙のうちの最上位の印刷用紙は、ピックアップローラー11bの駆動によって繰り出されてトナー画像形成部12へ搬送される。
【0015】
トナー画像形成部12は、印刷すべき画像に応じたトナー画像を印刷用紙に形成する。トナー画像形成部12は、感光体ドラム12a、露光部12b、現像部12c、及び転写部12d等を備えている。感光体ドラム12aは、印刷すべき画像に応じた静電潜像が形成されると共に、現像されたトナー画像を担持する円筒形の感光体である。露光部12bは、感光体ドラム12aの表面に静電潜像を形成するためのレーザー光を感光体ドラム12aに照射する。現像部12cは、静電潜像が形成された感光体ドラム12aにトナーを供給することにより、静電潜像を現像してトナー画像にする。転写部12dは、感光体ドラム12aに担持されているトナー画像を、給紙部11から搬送されてきた印刷用紙に転写する。
【0016】
定着部13は、トナー画像形成部12によって印刷用紙に転写(形成)されたトナー画像を加熱及び加圧して印刷用紙に定着させる。また、定着部13は、定着処理後の印刷用紙を排紙トレイ14へ排出(出力)する。排紙トレイ14は、定着部13から出力される印刷物を溜め置きするための部位であり、印刷部10の上部に設けられている。
【0017】
スキャナー部20は、制御部50による制御の下、ユーザーにセットされた原稿等(対象物)を読み取り、その原稿の画像を示す原稿画像データを生成して制御部50に出力する。スキャナー部20は、原稿押さえカバー21a、ADF21(自動原稿送り装置)、キャリッジ22、コンタクトガラスなどの原稿台23、及び原稿読取スリット24等を備えている。キャリッジ22は、露光ランプ22a(光源)、及びイメージセンサー22b(光検出部)などを搭載しており、ADF21によって順次給紙される原稿、或いは原稿台23にセットされた原稿等を読み取る。イメージセンサー22bは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCIS(Contact Image Sensor)などの光電変換が可能な撮像素子であり、受光した光の強度(光量)に応じたレベルの電気信号(電圧信号など)を出力する。露光ランプ22aは、LEDなどの発光素子で構成されており、読取時に対象物に光を照射する。
【0018】
キャリッジ22はスキャナー部20の内部で副走査方向(図1において左右方向)へ移動可能に支持されている。キャリッジ22の支持機構としては、レール支持機構など周知の支持機構が採用される。キャリッジ22は、対象物の読取時にイメージセンサー22bに読取をさせつつ前記副走査方向へ移動される。キャリッジ22には、ギヤやベルトなどの駆動伝達機構を介してモーター52が連結されている。モーター52は、制御部50によって回転制御されており、モーター52が回転制御されることによってキャリッジ22の移動量や移動速度が制御される。
【0019】
本実施形態では、原稿台23にセットされた原稿を読み取る場合には、キャリッジ22は、原稿台23の長手方向(図1の左右方向)に移動され、その移動中に露光ランプ22aから原稿台23の裏面へ向けて光が照射される。これにより、副走査方向へ光が走査される。そして、原稿台23にセットされた対象物から反射した反射光がイメージセンサー22bに入射されると、イメージセンサー22bは、反射光に基づく電気信号を前記対象物の画像データとして制御部50に入力する。これにより、原稿等の対象物の画像データが読み取られる。これに対し、ADF21から給紙される原稿を読み取る場合には、キャリッジ22は、原稿読取スリット24に対向する位置(原稿読取スリット24の下方の位置)に移動される。そして、ADF21から順次給紙される原稿に対して原稿読取スリット24を介して光を照射して、その反射光をイメージセンサー22bが受光することにより、原稿の画像データが読み取られる。
【0020】
本実施形態のイメージセンサー22bは、原稿台23に入射する外部入射光を非検出とする光学フィルター22cを有している。本実施形態の光学フィルター22cは、例えばバンドパスフィルターから構成されている。光学フィルター22cは、イメージセンサー22bに入る光のうち、外部入射光成分の波長を透過させないようにする。これにより、イメージセンサー22bに入射する外乱を排除する。具体的に、光学フィルター22cは、蛍光灯成分の波長(例えば三波長型蛍光灯であれば490nm、540nm、610nmにピーク)をカットするように設定されている。これにより、イメージセンサー22bは、後述する端末装置の表示画面の光(例えば液晶バックライトの白色LED(Light Emitting Diode)であれば470nm、580nmにピーク)を外乱の影響なく検出することができる。
【0021】
GUI30は、ユーザーによる操作に応じた信号(操作信号)を制御部50に出力すると共に、制御部50による制御に応じて複合機1の状態を示す情報等の各種情報を表示する。GUI30は、操作キー31、及び操作表示部32を備えている。操作キー31は、コピースタートキー、コピーストップ/クリアキー、テンキー(数値入力キー)、及び機能切替キー等のハードキーである。なお、機能切替キーとは、複合機1で実現されるコピー機能、プリント機能、スキャン機能、及びファクシミリ機能の各々をユーザーが使用する場合に、各機能の動作モードへ複合機1を切り替える為のキーである。
【0022】
操作表示部32は、表示部32aと、操作部32bとを備えている。表示部32aは、制御部50による制御の下、所定の画像を表示する。操作部32bは、表示部32aの表示画面上で行われた操作に応じた操作信号を制御部50に出力する。なお、表示部32aは、例えば液晶パネル或いは有機ELパネルである。また、操作部32bは、例えば表示部32aの表示画面に対向配置されたタッチパネルであり、上記操作信号としてユーザーに押下された部位の座標を示す信号を出力する。
【0023】
通信部40は、相手先ファクシミリやパーソナルコンピューター等の外部機器との通信を行うものであり、ファクシミリ通信部41及びネットワークI/F部42を備える。
【0024】
制御部50は、GUI30から入力された操作信号、及び通信部40を介して外部機器から受信した信号に基づいて、複合機1の全体動作を統括制御する。制御部50は、内部メモリ、CPU(Central Processing Unit)、及び他の各部とのデータ授受を行う各種入出力インターフェース回線等から構成される。
【0025】
制御部50は、スキャナー部20の読み取りモードを、通常原稿スキャンモード(第1モード)と、表示画面スキャンモード(第2モード)と、に切り替えることができる。前記通常原稿スキャンモードは、原稿台23に載置された通常の対象物(原稿等)を読み取るモードである。前記表示画面スキャンモードは、原稿台23に載置された自発光する対象物(携帯電話、スマートフォン、タブレット装置等)の表示画面(液晶画面、有機EL画面等)を読み取るモードである。表1に、通常原稿スキャンモードの読み取り条件と、表示画面スキャンモードの読み取り条件の初期設定の一例を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示すように、表示画面スキャンモードでは、通常原稿スキャンモードのように規格により定められた定型サイズではなく、端末装置の種類(携帯電話、スマートフォン、タブレット装置)毎に読み取る原稿サイズが予め設定されている。また、表示画面スキャンモードでは、通常原稿スキャンモードよりも、露光ランプ22aの照明条件が異なっている。具体的には、通常原稿スキャンモードでは露光ランプ22aは点灯されるが、表示画面スキャンモードでは露光ランプ22aが消灯される。また、表示画面スキャンモードでは、初期設定において、通常原稿スキャンモードよりも、イメージセンサー22bの読み取り解像度(DPI(Dots Per Inch))が高く設定されている。また、通常原稿スキャンモードではCCDなどのイメージセンサー22bの感度が既定値となるように設定されているが、表示画面スキャンモードではイメージセンサー22bの感度が自動的に調整された値に設定される。
【0028】
記憶部51は、表示画面スキャンモードの複数の読み取り条件を記憶している。複数の読み取り条件は、例えば、端末装置の種類(携帯電話、スマートフォン、タブレット装置)毎に設定されている。また、詳細は後述するが、本実施形態の制御部50は、イメージセンサー22bによる光検出結果に基づいて、スキャナー部20の読み取りモードを、通常原稿スキャンモードあるいは表示画面スキャンモードに自動で切り替えるようになっている。
【0029】
次に、上述のように構成された複合機1の動作について説明する。図3は、本発明の実施形態における複合機1の動作(特にスキャナー部20における各種処理のシーケンス)を示すフローチャートである。ある対象物の画像をスキャナー部20に読み取らせる場合、先ず、ユーザーは、原稿台23に対象物をセットして、原稿カバー25を閉じる。原稿台23には、原稿押さえカバー21aの開閉を検知するためのセンサー(不図示)が設けられている。制御部50は、原稿押さえカバー21aが閉じられたときの前記センサーの出力信号の変動に基づいて、原稿押さえカバー21aが閉じられたかどうかを判定する(ステップS1)。
【0030】
図4は、本発明の実施形態における原稿台23に読み取り対象物として端末装置Sが載置された状態を示す図である。図4に示すように、ユーザーは、ADF21が一体的に設けられた原稿押さえカバー21aを開けて、通常の原稿と同じように、端末装置Sを原稿台23の奥隅の角に合わせてセットする。ここで、対象物が、端末装置Sのように厚みがあるものである場合は、原稿押さえカバー21aが半開きとなり、原稿台23には外乱光が入射することとなる。
【0031】
次に、制御部50は、原稿台23に載置された対象物の光を検出するための光検出スキャンを実行させる(ステップS2)。光検出スキャンは、例えばユーザーが操作キー31のスタートキーを操作したことをトリガーとして実行される。この光検出スキャンは、原稿台23に載置された対象物をイメージセンサー22bで読み取らせて、イメージセンサー22bからの出力信号に基づいて対象物の光を検出する動作である。言い換えると、光検出スキャンとは、キャリッジ22が原稿台23の長手方向に移動しながらイメージセンサー22bによって、原稿台23に載置された対象物(端末装置S)からの光の有無を検出する動作である。このように制御部50がイメージセンサー22bに光検出スキャンを実行させることにより、本発明の光検出部が実現される。
【0032】
制御部50は、原稿台23に載置された対象物が自発光するものであるか否かを判定するために、前記光検出スキャンを実行させる。光検出スキャンは、通常の原稿スキャンとは異なる。通常の原稿スキャンでは、露光ランプ22aから対象物に光を照射する。しかし、光検出スキャンにおいては、露光ランプ22aからの光の照射は光検出の妨げとなる。したがって、制御部50は、イメージセンサー22bに光検出スキャンを実行させるときに、露光ランプ22aを消灯させる。これにより、イメージセンサー22bは、対象物が発する光(液晶画面のバックライト等)を検出できるようになり、ステップS2における光検出が可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、イメージセンサー22bが原稿台23に入射する外部入射光を非検出とする光学フィルター22cを有している。図4に示すように、対象物が厚みのある端末装置Sである場合、原稿台23に対して原稿押さえカバー21aを完全に閉じることができない。このとき、光学フィルター22cで、原稿台23に入射してくる外部入射光(例えば蛍光灯成分の波長)を透過させないようにしている。この結果、イメージセンサー22bは原稿台23に載置された対象物からの光のみを検出できるようになり、ステップS2における光検出の精度が向上する。
【0034】
次に、制御部50は、光検出スキャンの結果、イメージセンサー22bが対象物の光を検出したか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、イメージセンサー22bから出力された電気信号のレベルが予め定められた閾値よりも大きい場合は、対象物からの光を検出したと判定する。ステップS3の判定で「YES」の場合、すなわち原稿台23に載置された対象物が、端末装置S等の自発光する対象物であると判定された場合、制御部50はステップS4に移行する。一方、ステップS3の判定で「NO」の場合、すなわち原稿台23に載置された対象物が、端末装置S等の自発光する対象物でなく、通常の原稿であると判定された場合、制御部50はステップS20に移行する。
【0035】
ステップS20に移行した場合、制御部50は、スキャナー部20の読み取りモードを上述した通常原稿スキャンモードに切り替える。そして、ユーザーによってスタートキーが操作されると(ステップS21)、通常原稿スキャン(露光ランプ22aは点灯)を実行し(ステップS22)、スキャン終了後に、一連のスキャンシーケンスを終了する。他方、ステップS4に移行した場合、制御部50は、スキャナー部20の読み取りモードを上述した表示画面スキャンモードに切り替える前に、表示画面スキャンモード切り替え承認画面を表示部32aに表示させる。
【0036】
図5は、本発明の実施形態における表示画面スキャンモード切り替え承認画面を示す図である。制御部50は、図5に示すように、表示部32aに、表示画面スキャンモード切り替え承認ボタン100aと非承認ボタン100bとを表示させる。制御部50は、「はい」の承認ボタン100aが押下されたか、あるいは、「いいえ」の非承認ボタン100bが押下されたかを判定する(ステップS5)。ステップS5は、スキャナー部20の読み取りモードの切り替え前に、ユーザーに事前確認をとるものである。
【0037】
ステップS5の判定で「YES」の場合、すなわち原稿台23に載置した対象物が端末装置S等の自発光する対象物であって、承認ボタン100aが押下された場合は、ステップS6に移行する。一方、ステップS5の判定で「NO」の場合、すなわち原稿台23に載置した対象物が実際は通常の原稿で、光検出スキャンの誤検出等によるユーザーが意図しないモード切り替えであり、その結果、非承認ボタン100bが押下された場合は、ステップS20に移行する。
【0038】
ステップS20に移行した場合、制御部50は、スキャナー部20の読み取りモードを上述した通常原稿スキャンモードに切り替える。そして、ユーザーのスタートキーの操作を待って(ステップS21)、通常原稿スキャン(露光ランプ22aは点灯)を実行し(ステップS22)、スキャン終了後に、一連のスキャンシーケンスを終了する。
【0039】
他方、ステップS6に移行した場合は、制御部50は、スキャナー部20の読み取りモードを上述した表示画面スキャンモードに切り替える。このとき、制御部50は、表示画面スキャンモードの初期設定値を、表1に示された条件に設定する。具体的には、制御部50は、露光ランプ22aの設定を「消灯」に設定し、読み取り解像度を600DPIに設定する。表示画面スキャンモードにおける読取時に露光ランプ22aから光が照射されると、対象物が発する光と干渉して鮮明な画像データが得られないことがある。そのため、本実施形態の表示画面スキャンモードでは、露光ランプ22aが消灯されて、対象物が発する光だけをイメージセンサー22bに受光させるようにして、対象物の画像データが読み取られる。この場合、イメージセンサー22bの感度が既定値だと、対象物によって光の輝度(光量)が異なると、イメージセンサー22bは十分な光を受光することができない場合がある。例えば、対象物としての端末装置Sの表示画面からの光の光量が少ない場合は暗い画像データが読み取られ、前記光量が多すぎると明るすぎる画像データが得られることになる。実際に、端末装置Sの表示画面が液晶パネルの場合と有機ELパネルの場合とでは、発光メカニズムの違いから液晶パネルのバックライトのほうが輝度が大きい。そのため、一定の感度に設定されたイメージセンサー22bで両者の表示画面を読み取らせたときの画像データの質に差が生じる。具体的には、液晶パネルの読取画像(図8(B)参照)の方が鮮明であり、有機ELパネルの読取画像(図8(A)参照)は鮮明さに見劣る結果となる。ここで、図8(A)は、本発明の実施形態における表示画面スキャンモードで端末装置Sの有機ELパネルの画面を読み取った画像である。図8(B)は、表示画面スキャンモードで端末装置Sの液晶パネルの画面を読み取った画像である。図8(A)に示すように、有機ELパネルの画面を読み取った場合には、真っ暗になって画面の識別ができないことが分かる。一方、図8(B)に示すように、液晶パネルの画面を読み取った場合には、画面の識別ができていることが分かる。このため、本実施形態では、表示画面スキャンモードの初期設定として、イメージセンサー22bの感度を対象物の自動調整に設定している。なお、イメージセンサー22bの感度の自動調整については後述する。
【0040】
ステップS6の後に、制御部50は、表示画面スキャンモードにおける読み取り条件の詳細な設定選択画面を表示部32aに表示させる(ステップS7)。
【0041】
図6は、本発明の実施形態における表示画面スキャンモードの読み取り条件の設定選択画面を示す図である。制御部50は、図6に示すように、表示部32aに、初期値に設定された表示画面スキャンモードの読み取り条件を個別に変更するためのボタン101a〜101cを表示させる。本実施形態では、ボタン101aが「原稿サイズの選択」であり、ボタン101bが「カラーの設定」であり、ボタン101cが「解像度の設定」のボタンとなっている。「原稿サイズの選択」では、端末装置Sの表示画面に応じた読取範囲を設定することができる。「カラーの設定」では、読取画像のデータをフルカラー、グレースケール、モノクロに設定することができる。「解像度の設定」では、初期設定された解像度600dpiを任意の値に設定することができる。ユーザーは、必要に応じてボタン101a〜101cを操作し、読み取り条件を選択または変更する(ステップS8)。なお、本実施形態では、上述したように、表示画面スキャンモードでは露光ランプ22aが消灯された状態で読み取られる。そのため、図6における前記設定選択画面では、表示画面スキャンモード時の露光の設定はできず、露光の設定は初期設定のままとなる。つまり、露光の設定は、「消灯」に設定された状態から変更することはできない。
【0042】
図7は、本発明の実施形態における表示画面スキャンモードの読み取り条件の原稿サイズの選択画面を示す図である。制御部50は、「原稿サイズの選択」のボタン101aが押下された場合、図7に示すように、表示部32aに、「自動サイズ検知」のボタン102と、「サイズ入力」のボタン103と、予め記憶部51に記憶された読み取り条件(原稿サイズ)である「携帯電話」のボタン104a、「スマートフォン」のボタン104b、「タブレット」のボタン104cと、を表示させる。
【0043】
「自動サイズ検知」のボタン102は、通常の原稿のサイズを自動検知する要領で端末装置S等の自発光する対象物の原稿サイズを検知する処理を制御部50に指示するためのものである。「サイズ入力」のボタン103は、例えば端末装置Sが新製品や非定型製品等である場合に、ユーザーが手動により原稿のサイズを入力するものである。ボタン104a〜104cは、原稿台23に載置した自発光する対象物が「携帯電話」、「スマートフォン」、「タブレット装置」のいずれかである場合に、それらに対応するボタンをユーザーが押下するためのものである。ユーザーは、いずれかのボタンを押下することにより、そのボタンに対応した読み取り条件であって、予め記憶しておいた読み取り条件に容易に設定することができる。
【0044】
本実施形態では、ユーザーが「携帯電話」、「スマートフォン」、「タブレット装置」のボタン104a〜104cのいずれかを選択して押下した場合、対応する適切な「原稿サイズ」が設定される。これにより、ユーザーが読み取り対象物の種類(本実施形態では、携帯端末、スマートフォン、タブレット装置)を選択するだけで、制御部50は最適な「原稿サイズ」を自動的に設定し、その対象物の表示画面の読み取りを行わせることができる。なお、個別に設定を変更したい場合には、ユーザーは、図6に示す画面に戻って、「原稿サイズの選択」を操作して、任意のサイズに設定することができる。
【0045】
次に、制御部50は、イメージセンサー22bの感度を自動的に調整する(ステップS9)。具体的には、ステップS2における光検出スキャンが行われたときにイメージセンサー22bで受光された光の光量に応じて、イメージセンサー22bの感度を自動的に調整する。
【0046】
イメージセンサー22bの感度の調整方法としては、読み取られる表示画面の単位面積当たりからの反射光の光量を増減する方法があり、具体的には、キャリッジ22の移動速度を調整して前記光量を増減する方法が考えられる。本実施形態では、前記光検出スキャン時に得られた光量に比例してキャリッジ22の移動速度を変更する。例えば、自発光する対象物から画像読取に十分な光量が得られない場合は、キャリッジ22の移動速度が通常の読取時の速度よりも遅くされる。つまり自発光の光量が基準光量(例えば通常の読取時の光量)よりも小さい場合は、キャリッジ22の移動速度がその光量に比例して減速される。一方、自発光の光量が前記基準光量よりも大きい小さい場合は、キャリッジ22の移動速度がその光量に比例して増速されて、読取時間の短縮が図られる。ここで、キャリッジ22の移動速度の調整は、キャリッジ22を駆動させるモーターの回転速度を制御することにより行われる。
【0047】
イメージセンサー22bの感度の調整が終了すると、次に、制御部50は、ユーザーのスタートキーの操作を待って(ステップS10)、表示画面スキャンを実行させる(ステップS11)。
【0048】
このように、表示画面スキャンモードの読み取りの際には、露光ランプ22aを消灯させるだけでなく、イメージセンサー22bの感度が光検出スキャン時に得られた光量に応じた感度となるようにキャリッジ22の移動速度が調整される。このため、自発光する対象物からの光量が十分でない場合でも、前記移動速度の調整によってイメージセンサー22bの感度が読取に適切な感度に調整される。これにより、簡易な操作で自発光する端末装置Sの表示画面を発光量にかかわらず鮮明に読み取ることができる。なお、連続して別の表示画面をスキャンさせる場合には、別の表示画面に切り替えられた端末装置Sを原稿台23にセットした後に、原稿カバー21aを閉じると、制御部50は、ステップS9に戻り、ステップS9以降の処理を繰り返す。一方、次の表示画面をスキャンさせない場合には、表示画面スキャンモードのスキャンシーケンスを終了する。
【0049】
このように、上述した実施形態によれば、上述のようにイメージセンサー22bが原稿台23に載置された対象物の光を検出したときに、制御部50は、読み取りモードを自動的に通常の通常原稿スキャンモードから、自発光する対象物専用の表示画面スキャンモードに切り替える。したがって、ユーザーは、複雑な操作をすることなく、簡易な操作で端末装置Sの表示画面を読み取らせることができるようになる。このため、簡易な操作で端末装置Sの表示画面を読み取ることができるスキャナー部20及び複合機1が得られる。
【0050】
また、制御部50は、表示画面スキャンモードの読み取りの際に、露光ランプ22aを消灯させ、更に、イメージセンサー22b感度を光検出スキャン時に得られた光量に応じた感度に調整するため、自発光する端末装置Sの表示画面をその発光量にかかわらず鮮明に読み取ることができる。
【0051】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
上述の実施形態では、イメージセンサー22bの感度をキャリッジ22の移動速度の増速によって調整する形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、イメージセンサー22bがCCDである場合は、以下のようにしてCCDの感度が調整される。具体的には、一般に、CCDは、入力されるパルス信号の周期によって光信号の蓄積時間を決定するシフトゲートを含んでいる。前記シフトゲートは、CCDのフォトダイオードに蓄積された光信号による信号電荷をCCDのシフトレジスタへ移動して、順次出力する役割を果たす電子素子である。したがって、前記CCDにおいて、シフトゲートに対するパルス信号(シフトパルス)の周期を変更することにより、前記蓄積時間を変更して、CCDの感度を調整するようにしてよい。例えば、表示画面スキャンモードでの読取に対して光量が不足しており、その読取光量を2倍にする場合は、前記パルス信号の周期を2倍にして、蓄積時間を2倍にし、感度を増加させる。この場合、前記蓄積時間の変化に応じて前記表示画面スキャンモードにおけるCCDの読取速度(キャリッジ22の移動速度)を半分にすることが好ましい。これにより、副走査方向の解像度が変動せずに一定となり、読取画像が安定する。
【0053】
また、上述の実施形態では、対象物の画像を読み取るイメージセンサー22bを光検出部として兼用した形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、光検出部として別途専用の光検出センサーを設けることもできる。
【0054】
また、上述の実施形態では、次の表示画面スキャンを行う場合には、ステップS9以降の処理を繰り返し実行すると説明したが、先に読み取られた画像を、例えば図6に示す画面にプレビュー表示させ、それと共に、イメージセンサー22bの感度調整ボタンを表示し、適宜感度調整をできるようにしてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、本発明に係る画像形成装置として複合機1を参照しながら説明したが、本発明はこれに限定されず、コピー機などの他の画像形成装置に適用することができる。また、本発明は、画像形成装置と分離したスキャナー装置単体に適用することができる。この場合には、制御部等の構成要件はスキャナー装置に設けられる。
【符号の説明】
【0056】
1:複合機(画像形成装置)
20:スキャナー部(スキャナー装置)
22a:露光ランプ(光源)
22b:イメージセンサー(光検出部)
22c:光学フィルター
23:原稿台
50:制御部
51:記憶部
52:モーター
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8