(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照し、本発明を説明する。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1はエレベータ装置の構成例を示す図である。エレベータのかご1は、昇降路2内を昇降する。エレベータのつり合いおもり3は、かご1とは逆方向に昇降路2内を昇降する。かご1及びつり合いおもり3は、巻上ロープ4によって昇降路2内に吊り下げられる。
図1は1:1ローピング方式のエレベータ装置を一例として示しているが、ローピングの方式はこれに限定されない。
【0011】
昇降路2の上方に、機械室5が設けられる。機械室5に、エレベータの制御装置(図示せず)及び巻上機6が備えられる。巻上機6は、支持装置7を介して機械室5の床部8に固定される。巻上機6は、電動機9と駆動綱車10とを備える。電動機9は、駆動綱車10を回転させるための駆動力を発生させる。駆動綱車10には、巻上ロープ4を巻き掛けるための複数の溝10aが外周面に形成される。例えば、巻上ロープ4のうちかご1から上方に延びた部分が駆動綱車10の溝10aに巻き掛けられる。
【0012】
案内車11は、支持装置7に回転可能に設けられる。案内車11は、巻上ロープ4によるつり合いおもり3の吊り位置をつり合いおもり3の直上に合わせるためのものである。案内車11には、巻上ロープ4を巻き掛けるための複数の溝11aが外周面に形成される。例えば、巻上ロープ4のうちつり合いおもり3から上方に延びた部分が案内車11の溝11aに巻き掛けられる。案内車11は、その軸11bが駆動綱車10の軸10bに対して平行に配置される。また、案内車11の軸11bは、駆動綱車10の軸10bより低い位置に配置される。
【0013】
駆動綱車10の溝10a及び案内車11の溝11aは、巻上ロープ4の微小すべり等によって徐々に摩耗していく。以下に、
図2から
図12も参照し、溝10a及び溝11aを加工するための装置と加工する方法とについて具体的に説明する。
図2は
図1に示すエレベータ装置に加工装置12を設置した時の状態を示す正面図である。
図3はその側面図である。
【0014】
先ず、
図2及び
図3を参照し、支持装置7の構成について説明する。支持装置7は、機械台13、防振ゴム14、巻上機台15及び案内車梁16を備える。機械台13は、機械室5の床部8に設けられる。機械台13は、支持装置7の自重、巻上機6、案内車11及び巻上ロープ4に掛かる荷重を支える。防振ゴム14は、機械台13の上面に設けられる。巻上機台15は、防振ゴム14を介して機械台13に設けられる。巻上機6は、巻上機台15の上面に設けられる。案内車梁16は、案内車11を支持するための部材である。案内車梁16は、巻上機台15の下面に設けられる。案内車11の軸11bが案内車梁16に固定される。
【0015】
加工装置12は、エレベータで使用される車の溝を加工するための装置である。本実施の形態では、一例として、加工装置12によって駆動綱車10に形成された溝10aと案内車11に形成された溝11aとの双方を加工する場合について説明する。加工装置12を使用して駆動綱車10の溝10aのみを加工しても良い。加工装置12を使用して案内車11の溝11aのみを加工しても良い。また、加工装置12を使用して他の車の溝を加工しても良い。
【0016】
加工装置12は、例えば、加工部17とロープ18と端末具19及び20とを備える。
図2では、3つの加工部17を備えた加工装置12によって駆動綱車10の溝10aを加工する場合を一例として示している。加工装置12に備えられる加工部17の数は任意に設定される。例えば、案内車11の溝11aを加工する加工装置12は、1つの加工部17しか備えていない。
【0017】
図4は
図3のA方向から見た断面を示す図である。駆動綱車10の溝10aを加工する加工装置12の構成と案内車11の溝11aを加工する加工装置12の構成とは基本的に同じである。このため、以下においては、駆動綱車10の溝10aを加工する加工装置12について、その構成を具体的に説明する。案内車11の溝11aを加工する加工装置12については、具体的な説明を省略する。
【0018】
図4に示すように、加工部17は、複数の刃具21と複数の弾性体22とストッパ23とを備える。
【0019】
図5は加工部17の刃具21を示す正面図である。
図6は加工部17の刃具21を示す側面図である。
図5及び
図6は1つの刃具21を示している。刃具21は、駆動綱車10に形成された溝10aを実際に加工するための部材である。刃具21は、例えば、一定の厚みを有するセラミック製の部材からなる。刃具21の中央に、ロープ18の径より大きな径を有するガイド孔24が形成される。刃具21の一部は、駆動綱車10に形成された溝10aの断面と同じ形状を呈する。刃具21のこの部分(以下、「研削部」ともいう)に、溝10aを研削加工するためのCBN砥粒25が蒸着される。CBN砥粒25の固定を溶融金属を介して行っても良い。駆動綱車10の材質によっては、刃具21の研削部にダイヤモンド砥粒を固定しても良い。刃具21の研削部は、
図6に示すように表面が凸状の曲面からなる。
【0020】
刃具21は、ガイド孔24の両側に摺動部26を備える。摺動部26は、溝10aの加工時に駆動綱車10の外周面(溝10aと溝10aの間の山部)に接触する部分である。摺動部26は、表面が凸状の曲面からなり、研削部の方向を向くように突出する。摺動部26は、例えば、セラミックからなる。
【0021】
弾性体22は、一定の厚みを有するゴム等の部材からなる。弾性体22の中央に、ロープ18の径より大きな径を有する貫通孔27が形成される。貫通孔27の径は、ガイド孔24の径と同じでも良い。
【0022】
図4に示す例では、加工部17は、刃具21の枚数と同じ枚数の弾性体22を備える。刃具21及び弾性体22は交互に配置され、各刃具21のガイド孔24と各弾性体22の貫通孔27とにロープ18が通される。ストッパ23は、刃具21と弾性体22とがロープ18から抜けてしまうことを防止するための部材である。ストッパ23は、交互に配置された刃具21と弾性体22とを挟み込むようにロープ18に固定される。ストッパ23は、刃具21と弾性体22との間に隙間が形成されず且つ刃具21の間に配置された弾性体22が完全に押し潰されてしまうことがないように、刃具21と弾性体22とを挟み込んで保持する。加工部17が備える刃具21の枚数を変更することにより、加工部17の加工能力を調整できる。加工部17に刃具21が1枚しか備えられていなくても溝10aの加工自体は可能である。
【0023】
ロープ18は、例えば、ワイヤロープからなる。ロープ18の一方の端部に端末具19が接続される。ロープ18の他方の端部に端末具20が接続される。端末具19及び20は、例えば、取付板28を介して支持装置7に固定される。
図2は、端末具19及び20を取付板28を介して巻上機台15の上面に固定した場合を一例として示している。端末具19及び20が支持装置7に固定されることにより、ロープ18に一定の張力が付与される。ロープ18は一定の張力が付与されると、駆動綱車10の溝10aに沿って配置される。但し、ロープ18は、駆動綱車10の溝10aに接触しない。
【0024】
図7は
図4のB−B断面を示す図である。駆動綱車10の溝10aを加工装置12によって加工する場合、
図7に示すように刃具21の研削部が溝10aの内部に配置される。この状態で端末具19及び20が支持装置7に固定され、ロープ18に一定の張力が付与される。ロープ18は、溝10aに沿って配置される。このため、ロープ18に一定の張力が付与されると、ガイド孔24を形成する面にロープ18が接触し、刃具21の研削部が溝10aに押し付けられる。端末具19及び20は、ロープ18に張力を付与する張力付与部としての機能を有している。
【0025】
上述したように、刃具21と弾性体22とは、弾性体22が完全に押し潰されてしまうことがないようにストッパ23によって保持される。このため、ロープ18に張力が付与されることによって刃具21がロープ18から大きな力を受けると、刃具21は、研削部が溝10aに接触するようにそれぞれが駆動綱車10の径方向に移動する。
【0026】
駆動綱車10の溝10aを加工装置12によって加工する場合は、刃具21の研削部を溝10aに押し付けた状態で駆動綱車10を回転させる。これにより、溝10aが刃具21によって研削される。
【0027】
図8は溝10aの加工が行われる前の状態を示す駆動綱車10の断面図である。
図8は
図3のA方向から見た断面に相当する。
図8において、符号Cは駆動綱車10の外周面を示している。符号Dは駆動綱車10に形成された溝10aの底部を示している。上述したように、駆動綱車10の溝10aは巻上ロープ4の微小すべり等によって徐々に摩耗していく。しかし、その摩耗は、溝10aの全体において同じように進行していく訳ではない。1本の溝10aでも、摩耗の進行が早い部分もあれば遅い部分もある。
【0028】
図9は、駆動綱車10の溝10aを加工している時の刃具21の状態を説明するための図である。刃具21の研削部先端から摺動部26までの距離L(
図6参照)は、加工後の溝10aの深さに合わせて設定されている。即ち、距離Lは、研削によって得ようとしている溝10aの深さに等しい。このため、加工前の溝10aに刃具21を垂直に当てると、摺動部26は駆動綱車10の外周面に接触しない。摺動部26と駆動綱車10の外周面との間に、加工する深さ分の隙間が形成される。
【0029】
この状態でロープ18に張力を付与して駆動綱車10を回転させると、刃具21は弾性体22を変形させ、駆動綱車10の回転方向Eに合わせて傾く。そして、摺動部26が溝10aの両側で駆動綱車10の外周面に接触し、刃具21の傾きが保持される。駆動綱車10が回転している間は、刃具21による溝10aの加工が進んでも、摺動部26は駆動綱車10の外周面から離れない。溝10aの加工が進むにつれ、刃具21の傾きは小さくなる。そして、溝10aの深さが距離Lにほぼ等しくなると、刃具21が溝10aに対してほぼ垂直に配置される。これにより、1本の溝10aに対する加工が完了する。
【0030】
図2及び
図3は、駆動綱車10及び案内車11から1本の巻上ロープ4を取り外し、巻上ロープ4が取り外された溝10a及び溝11aを加工装置12によって加工する場合を一例として示している。このような加工方法であれば、駆動綱車10の溝10aと案内車11の溝11aとを同時に加工することができる。溝11aを加工するために案内車11を支持装置7から取り外して工場等に搬送する必要がない。また、上記構成を有する加工装置12であれば、設置のために必要なスペースを極めて小さくできる。駆動綱車10と案内車11との間に加工装置12を設置するための大きなスペースは必要ない。小型のエレベータにおいても溝10a及び溝11aの加工を現場で行うことができる。溝10a及び溝11aの加工に必要な労力と手間とを大幅に軽減させることが可能となる。
【0031】
図2は、駆動綱車10の溝10aを加工する加工装置12について、一方の端末具19を駆動綱車10の一側で巻上機台15に固定し、他方の端末具20を駆動綱車10の他側で巻上機台15に固定する場合を示している。また、案内車11の溝11aを加工する加工装置12では、一方の端末具19を案内車11の一側で案内車梁16に固定し、他方の端末具20を案内車11の他側で機械台13に固定している。
【0032】
図10は加工装置12の他の設置方法を示す図である。
図10は、端末具19及び20の双方を駆動綱車10或いは案内車11の他側で支持装置7に固定する場合を示している。
図10の上側に示す加工装置12のように、ロープ18の一方の端部及び他方の端部の双方を端末具19に接続しても良い。駆動綱車10の溝10aを加工する加工装置12では、ロープ18は、駆動綱車10に巻き掛けられるように溝10aに沿って配置される。但し、ロープ18は溝10aに接触しない。また、案内車11の溝11aを加工する加工装置12では、ロープ18は、案内車11に巻き掛けられるように溝11aに沿って配置される。但し、ロープ18は溝11aに接触しない。
【0033】
次に、上記構成を有する加工装置12を使用して、駆動綱車10及び案内車11に形成された複数の溝10a及び11bを加工する手順について説明する。
【0034】
図11は、駆動綱車10の溝10a及び案内車11の溝11aを加工する手順の概要を示す図である。駆動綱車10に形成された溝10aの摩耗は、全ての溝10aにおいて同じように進行していく訳ではない。
図11は、半数の溝10aについて加工装置12による加工が必要な場合を示している。なお、
図11は一例を示している。溝10aの摩耗の進み具合によっては、全ての溝10aについて加工が必要な場合もあれば、半数に満たない溝10aについてのみ加工が必要な場合もある。案内車11に形成された溝11aについても同様である。
【0035】
以下の
図11に関する説明においては、便宜上、巻上ロープを
図11(a)に示された右側のものから4a、4b・・・4i、4jと符号を付して表記する。巻上ロープを個別に特定する必要がない場合、単に符号4を付して表記する。
図11(a)は、溝10aの加工が行われる前の状態を示している。
図11において、断面が黒丸で示された巻上ロープ4は、加工が必要な溝10aに巻き掛けられているものを示す。断面が白丸で示された巻上ロープ4は、加工の必要がない溝10aに巻き掛けられているものを示す。また、説明を簡略化するため、案内車11の溝11aについても
図11に示す状態と同じように摩耗しているものとする。
【0036】
先ず、加工が必要な溝10a及び溝11aに巻き掛けられている巻上ロープ4のうち、一方の端に配置されているものを駆動綱車10及び案内車11から外す。巻上ロープ4a及び4bは、加工の必要がない溝10a及び溝11aに巻き掛けられている。このため、
図11に示す例では、先ず巻上ロープ4cを駆動綱車10及び案内車11から外す。具体的には、巻上ロープ4cの端部をかご1及びつり合いおもり3から外し、エレベータの乗場或いは昇降路2の内部で巻上ロープ4cを巻き取る。これにより、巻上ロープ4cが駆動綱車10及び案内車11から完全に取り外される。
【0037】
巻上ロープ4cを駆動綱車10及び案内車11から外すと、加工装置12を支持装置7に取り付け、巻上ロープ4cが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aを刃具21によって加工する(
図11(b)参照)。
図11では、簡略化のために刃具21の摺動部26の記載を省略している。なお、案内車11を駆動するための専用の電動機は備えられていない。このため、電動機9によって駆動綱車10を駆動することにより、案内車11を回転させる。巻上ロープ4は、電動機9の駆動力を案内車11に伝えるために利用される。加工装置12による溝10a及び溝11aの加工は、駆動綱車10と案内車11との双方を回転させながら同時に行われる。
【0038】
巻上ロープ4cが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aの加工が完了すると、刃具21を溝10a及び溝11aから離す。次に、巻上ロープ4fが巻き掛けられている溝10a及び溝11aを加工するため、巻上ロープ4dから4fを1つずつ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させる。具体的には、先ず、巻上ロープ4dを巻上ロープ4cが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させる。次に、巻上ロープ4eを巻上ロープ4dが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させる。更に、巻上ロープ4fを巻上ロープ4eが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させる。これにより、加工が必要な次の溝10a及び溝11aから巻上ロープ4fが外される。
【0039】
巻上ロープ4fを巻上ロープ4eが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aに巻き掛けると、巻上ロープ4fが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aに刃具21を接触させ、上記と同様に駆動綱車10と案内車11とを回転させながら溝10a及び溝11aを加工する(
図11(c)参照)。巻上ロープ4fが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aの加工が完了すると、刃具21を溝10a及び溝11aから離す。
【0040】
次に、巻上ロープ4gが巻き掛けられている溝10a及び溝11aを加工する。具体的には、巻上ロープ4gを巻上ロープ4fが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させた後、上記と同様に駆動綱車10と案内車11とを回転させながら溝11aを加工する(
図11(d)参照)。巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aの加工が完了すると、刃具21を溝10a及び溝11aから離す。
【0041】
次に、巻上ロープ4hが巻き掛けられている溝10a及び溝11aを加工する。具体的には、巻上ロープ4hを巻上ロープ4gが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させた後、上記と同様に駆動綱車10と案内車11とを回転させながら溝11aを加工する(
図11(e)参照)。巻上ロープ4hが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aの加工が完了すると、刃具21を溝10a及び溝11aから離す。
【0042】
次に、巻上ロープ4jが巻き掛けられている溝10a及び溝11aを加工する。具体的には、先ず、巻上ロープ4iを巻上ロープ4hが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させる。次に、巻上ロープ4jを巻上ロープ4iが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させる。そして、上記と同様に駆動綱車10と案内車11とを回転させながら溝10a及び溝11aを加工する(
図11(f)参照)。
【0043】
このような方法であれば、案内車11を支持装置7から取り外すことなく駆動綱車10の溝10aと案内車11の溝11aとの双方を加工することができる。即ち、最初に巻上ロープ4を1本だけ取り外し、その後は加工が必要な溝10a及び溝11aが空くように巻上ロープ4を他の溝に移動させていけば、溝10a及び溝11aを順に加工することができる。なお、駆動綱車10及び案内車11から取り外す巻上ロープ4は1本だけであるため、必要に応じて、乗客をかご1に乗せて運搬することができる。
【0044】
溝10a及び溝11aの加工を中断して乗客を運搬すること並びに取り外した巻上ロープ4の巻取作業が大変なことを考慮すると、最初に駆動綱車10及び案内車11から取り外す巻上ロープ4は1本であることが望ましい。しかし、最初に複数本の巻上ロープ4を駆動綱車10及び案内車11から取り外しても、残りの巻上ロープ4を他の溝10a及び溝11aに順に移動させていけば、溝10a及び溝11aの加工を行うことは可能である。
【0045】
次に、巻上ロープ4を隣りの溝10a及び溝11aに移動させる手順について具体的に説明する。
図12は巻上ロープ4を移動させる手順を説明するための図である。一例として、巻上ロープ4hを巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aに移動させる手順について説明する(
図11(e)参照)。他の巻上ロープ4の移動も下記と同様の手順によって行うことができるため、その説明は省略する。
【0046】
巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aの加工が完了して刃具21を溝から離すと、先ず、かご1を上昇させる。かご1を上昇させると、つり合いおもり3が下降する。つり合いおもり3の下方に、緩衝器29が設けられている。緩衝器29は、つり合いおもり3が昇降路2のピット床面に衝突する時の衝撃を緩和させるための装置である。つり合いおもり3が上方から緩衝器29に接触して緩衝器29に支持されると、かご1を停止させる。
【0047】
つり合いおもり3を緩衝器29に支持させると、次に、かご1が下降しないように巻上ロープ4の移動を制限する。この時、隣りの溝11aに移そうとしている巻上ロープ4hの移動のみを制限しても良い。
図12に示す例では、かご1と駆動綱車10との間の巻上ロープ4に把持具30が取り付けられる。把持具30を巻上機台15(或いは、巻上機台15に設けられた取付板28)の上面に接触させることにより、かご1が下降しないように巻上ロープ4の移動を制限する。
【0048】
次に、巻上ロープ4hのうち、つり合いおもり3から上方に延びる部分を上方に引っ張る。
図12に示す例では、つり合いおもり3と案内車11との間の巻上ロープ4hに把持具31が取り付けられる。また、機械室5に吊り上げ装置32が設けられる。吊り上げ装置32によって把持具31を上方に持ち上げることにより、巻上ロープ4hを上方に引っ張ることができる。
【0049】
巻上ロープ4は、例えば、鋼製のワイヤロープからなる。吊り上げ装置32によって把持具31を上方に持ち上げると、巻上ロープ4hの把持具31からつり合いおもり3までの部分が伸びる。このため、巻上ロープ4hの把持具31から把持具30までの部分が弛む。つまり、巻上ロープ4hの溝10a及び溝11aに巻き掛けられている部分が弛む。この状態で巻上ロープ4hを巻上ロープ4gが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させる。
【0050】
巻上ロープ4hを巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aに移すと、吊り上げ装置32による巻上ロープ4hの引き上げを解除する。また、把持具30を巻上ロープ4から取り外す。これにより、かご1の重量に応じた張力が巻上ロープ4に作用し、巻上ロープ4hが巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aにしっかりと巻き掛けられる。
【0051】
巻上ロープ4hの溝10a及び溝11aに巻き掛けられている部分を弛ませる時は、つり合いおもり3が緩衝器29から離れないことが好ましい。つり合いおもり3が緩衝器29に支持されていれば、吊り上げ装置32に必要な力を小さくすることができる。このため、把持具31を巻上ロープ4hに取り付ける位置は、可能な限り上方であることが好ましい。把持具31を高い位置に取り付けることにより、巻上ロープ4hの把持具31からつり合いおもり3までの部分を長くすることができる。小さな力によって巻上ロープ4hを伸ばすことが可能となる。例えば、把持具31は、案内車11の近傍で巻上ロープ4hに固定される。
【0052】
また、巻上ロープ4hを巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aに移動させる場合は、つり合いおもり3を緩衝器29に支持させ、巻上ロープ4hのつり合いおもり3から上方に延びる部分を上方に引っ張ることが好ましい。かご1側の巻上ロープ4hを上方に引っ張っても、巻上ロープ4hを移動させることは可能である。しかし、一般に、つり合いおもり3と空のかご1とでは、つり合いおもり3の方が重い。重いつり合いおもり3を緩衝器29に支持させることにより、軽いかご1の重量のみを巻上ロープ4hに作用させることができる。巻上ロープ4hに掛かる張力を小さくすることができ、より小さな力で巻上ロープ4hを伸ばすことが可能となる。
【0053】
以下に、他の例として、かご1側の巻上ロープ4hを上方に引っ張り、巻上ロープ4hを隣りの溝10a及び溝11aに移す手順について説明する。
【0054】
巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aの加工が完了して刃具21を溝から離すと、かご1を下降させる。かご1を下降させると、つり合いおもり3が上昇する。かご1の下方に、緩衝器(図示せず)が設けられている。この緩衝器は、かご1が昇降路2のピット床面に衝突する時の衝撃を緩和させるための装置である。かご1が上方から緩衝器に接触して緩衝器に支持されると、かご1を停止させる。
【0055】
かご1を緩衝器に支持させると、次に、つり合いおもり3が下降しないように巻上ロープ4の移動を制限する。この時、隣りの溝10a及び溝11aに移そうとしている巻上ロープ4hの移動のみを制限しても良い。例えば、つり合いおもり3と案内車11との間の巻上ロープ4に把持具30を取り付ける。把持具30を昇降路2内或いは機械室5内の固定体に接触させることにより、つり合いおもり3が下降しないように巻上ロープ4の移動を制限する。
【0056】
次に、巻上ロープ4hのうち、かご1から上方に延びる部分を上方に引っ張る。例えば、かご1と駆動綱車10との間の巻上ロープ4hに把持具31を取り付ける。また、機械室5に吊り上げ装置32が設けられる。吊り上げ装置32によって把持具31を上方に持ち上げることにより、巻上ロープ4hを上方に引っ張ることができる。
【0057】
吊り上げ装置32によって把持具31を上方に持ち上げると、巻上ロープ4hの把持具31からかご1までの部分が伸びる。このため、巻上ロープ4hの把持具31から把持具30までの部分が弛む。つまり、巻上ロープ4hの溝10a及び溝11aに巻き掛けられている部分が弛む。この状態で巻上ロープ4hを巻上ロープ4gが巻き掛けられていた1つ右隣りの溝10a及び溝11aに移動させる。
【0058】
巻上ロープ4hを巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aに移すと、吊り上げ装置32による巻上ロープ4hの引き上げを解除する。また、把持具30を巻上ロープ4から取り外す。これにより、つり合いおもり3の重量に応じた張力が巻上ロープ4に作用し、巻上ロープ4hが巻上ロープ4gが巻き掛けられていた溝10a及び溝11aにしっかりと巻き掛けられる。
このような手順でも、巻上ロープ4hを移動させることができる。
【0059】
駆動綱車10の溝10a及び案内車11の溝11aの加工が全て完了すると、巻上ロープ4が新品のものに交換される。
【0060】
実施の形態2.
図13はこの発明の実施の形態2における加工装置12の要部を示す図である。
図13は、加工部17の刃具21及び弾性体22の断面を示している。本実施の形態における弾性体22は、実施の形態1で開示された構成に筒状の部材が追加されたものに相当する。この筒状の部分は、外径がガイド孔24の径とほぼ同じであり、内径はロープ18の径より大きい。この筒状の部分は、貫通孔27の一部を形成し、ガイド孔24の内側に配置される。即ち、刃具21は、ガイド孔24の内側が弾性体22によって覆われる。このため、端末具19及び20が支持装置7に固定されてロープ18に一定の張力が付与されると、ロープ18は弾性体22に接触する。刃具21は、弾性体22を介してロープ18から力を受け、研削部が溝10aに押し付けられる。
刃具21は、弾性体22と一体的に設けても良い。
【0061】
上記構成を有する加工装置12を使用することにより、ロープ18がセラミック製の刃具21に直接接触することを防止できる。このため、ロープ18の損傷を抑制できる。