(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サイドフレームなどの車両用フレーム(車体フレーム)において、車体フレームが潰れるときのエネルギ吸収量をさらに高めるために、閉断面状に形成したフレーム本体の曲げ変形して潰れる部分の内部に補強体を配置することが考えられるが、かかる場合、補強体によって重量の増加を招くこととなるので、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を如何に高めるかが問題となる。
【0008】
閉断面状に形成した車体フレームに荷重が入力されて車体フレームが曲げ変形して潰れる場合、荷重に対する反力が最大曲げ荷重を超えると急激に低下して、車体フレームの曲げ変形が急激に進行して潰れることが知られている。
【0009】
図10(a)に示すように、正方形閉断面状に形成した車体フレーム210に、該車体フレーム210の両端部の上方に圧子(不図示)を介して荷重Fを入力して曲げモーメントMを作用する場合、上面部210aでは圧縮応力が生じ、下面部210bでは引張応力が生じ、側面部210cでは上面部210a側に圧縮応力が生じると共に下面部210b側に引張応力が生じることとなる。
【0010】
そして、
図10(b)に示すように、圧子のストロークが大きくなるにつれて荷重Fに対する反力F’
1が大きくなり、荷重Fに対する反力F’
1が最大となる最大曲げ荷重F’
1maxを超えると急激に反力F’
1が低下することとなる。
【0011】
これに対し、本願発明者等は、種々の試験研究を重ねた結果、
図11(a)に示すように、上面部220a、下面部220b及び側面部220cを備えて縦長長方形閉断面状の車体フレーム220では、
図11(b)に示すように、荷重Fに対する反力F’
2が最大曲げ荷重F’
2maxを超えても急激に低下しないことを見出した。
【0012】
車体フレームが曲げ変形することにより吸収できるエネルギであるエネルギ吸収量は、荷重Fに対する反力と圧子のストロークとの積で表されることから、閉断面状に形成される閉断面部を縦長長方形にすることで、荷重Fに対する反力が急激に低下することを抑制してエネルギ吸収量を高めることができ、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができると考えられる。
【0013】
フレーム本体の内部に補強体が配設された車体フレームについても、車体フレームに閉断面部を形成すると共に該閉断面部を縦長長方形にすることで、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができると考えられるが、かかる車体フレームを製造する場合、補強体を形成する工程や補強体とフレーム本体とを接合する工程が必要であることから、車体製造時の生産性を低下させるおそれがある。
【0014】
そこで、本発明は、フレーム本体の内部に補強体が配設された車両用フレーム構造において、生産性が高く、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができる車両用フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0016】
まず、本願の請求項1に係る発明は、閉断面状に形成されたフレーム本体の内部に補強体が配設された車両用フレーム構造であって、前記フレーム本体は、該フレーム本体に荷重が入力される際に該フレーム本体の引張側及び圧縮側にそれぞれ配置される第1車体構成部材及び第2車体構成部材を接合することにより閉断面状に形成され、前記補強体は、前記第1車体構成部材に沿って延在する基部と、該基部から前記フレーム本体の内方側に断面略矩形状に突出する凸部とを備えた第1補強部材と、前記第2車体構成部材に沿って延在する基部と、該基部から前記フレーム本体の内方側に断面略矩形状に突出する凸部とを備えた第2補強部材とを有し、該第1補強部材の凸部と該第2補強部材の凸部とがそれぞれ頂面部と両側の側面部とを備えると共に、該第1補強部材の凸部の頂面部と該第2補強部材の凸部の頂面部とが接合され、且つ、少なくとも前記フレーム本体に荷重が入力される際に曲げの中立軸より引張側において前記フレーム本体に接合され、前記補強体及び前記フレーム本体によって、前記フレーム本体の長手方向に延びると共に前記フレーム本体の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成される閉断面部であって、互いに対向する一対の第1面部と一対の第2面部とを備えると共に該第2面部の前記直交断面における断面長さが該第1面部の前記直交断面における断面長さより長い断面略長方形状に形成され、且つ該第2面部が前記曲げの中立軸と略直交する方向に配置された閉断面部が形成され
、前記第1補強部材は、複数の前記凸部を有し、前記第2補強部材は、1つの前記凸部を有し、前記第1補強部材の凸部の頂面部と前記第2補強部材の凸部の頂面部とは、前記曲げの中立軸より引張側において接合されていることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項2に係る発明は、
閉断面状に形成されたフレーム本体の内部に補強体が配設された車両用フレーム構造であって、前記フレーム本体は、該フレーム本体に荷重が入力される際に該フレーム本体の引張側及び圧縮側にそれぞれ配置される第1車体構成部材及び第2車体構成部材を接合することにより閉断面状に形成され、前記補強体は、前記第1車体構成部材に沿って延在する基部と、該基部から前記フレーム本体の内方側に断面略矩形状に突出する凸部とを備えた第1補強部材と、前記第2車体構成部材に沿って延在する基部と、該基部から前記フレーム本体の内方側に断面略矩形状に突出する凸部とを備えた第2補強部材とを有し、該第1補強部材の凸部と該第2補強部材の凸部とがそれぞれ頂面部と両側の側面部とを備えると共に、該第1補強部材の凸部の頂面部と該第2補強部材の凸部の頂面部とが接合され、且つ、少なくとも前記フレーム本体に荷重が入力される際に曲げの中立軸より引張側において前記フレーム本体に接合され、前記補強体及び前記フレーム本体によって、前記フレーム本体の長手方向に延びると共に前記フレーム本体の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成される閉断面部であって、互いに対向する一対の第1面部と一対の第2面部とを備えると共に該第2面部の前記直交断面における断面長さが該第1面部の前記直交断面における断面長さより長い断面略長方形状に形成され、且つ該第2面部が前記曲げの中立軸と略直交する方向に配置された閉断面部が形成され、前記第1補強部材は、前記曲げの中立軸より引張側に配置され、前記第1補強部材の凸部の側面部の前記直交断面における断面長さは、前記第2補強部材の凸部の側面部の前記直交断面における断面長さより小さく設定され、前記第1補強部材の凸部の頂面部と前記第2補強部材の凸部の頂面部とは、前記曲げの中立軸より引張側において接合され
、前記閉断面部の第2面部の前記直交断面における断面長さは、前記閉断面部の第1面部の前記直交断面における断面長さの2倍以上に設定されていることを特徴とする。
【0018】
更に、本願の請求項3に係る発明は、前
記請求項2に係る発明において、前記第1補強部材は、複数の前記凸部を有し、前記第2補強部材は、1つの前記凸部を有し、前記第1補強部材の凸部の頂面部と前記第2補強部材の凸部の頂面部とは、前記曲げの中立軸より引張側において接合されていることを特徴とする。
【0019】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、前記
請求項1又は請求項3に係る発明において、前記第2補強部材の凸部の側面部と前記フレーム本体とを用いて形成された前記閉断面部の内部に充填部材が充填されていることを特徴とする。
【0020】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、前記
請求項1、請求項3又は請求項4に係る発明において、前記第2補強部材は、該第2補強部材の凸部の頂面部に前記直交断面に略平行に延びるビード部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0022】
まず、本願の請求項1に係る発明によれば、第1及び第2車体構成部材を接合して形成されたフレーム本体の内部に配置される補強体は、第1及び第2車体構成部材にそれぞれ沿って延在する基部と該基部から突出する凸部とを備えた第1及び第2補強部材を有し、第1及び第2補強部材の凸部が断面略矩形状に形成され、第1及び第2補強部材の凸部の頂面部が接合されると共に、少なくとも曲げの中立軸より引張側においてフレーム本体に接合されている。
【0023】
これにより、第1及び第2補強部材が接合された補強体を、フレーム本体に荷重が入力される際にフレーム本体の引張側に配置される第1車体構成部材に接合し、その後に第1及び第2車体構成部材を接合することによって車両用フレーム構造を比較的容易に製造することが可能であり、生産性を高めることが可能である。
【0024】
また、補強体及びフレーム本体によって形成される閉断面部は、互いに対向する一対の第1面部と一対の第2面部とを備え、第2面部が第1面部より長い断面略長方形状に形成されると共に、第2面部が曲げの中立軸と略直交する方向に配置されている。これにより、第2面部が曲げの中立軸と略平行に配置される閉断面部や断面略正方形状に形成された閉断面部を用いる場合に比べて、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができる。
また、第1補強部材は複数の凸部を有し、第2補強部材は1つの凸部を有し、第1補強部材の凸部の頂面部と第2補強部材の凸部の頂面部とは曲げの中立軸より引張側において接合される。フレーム本体に荷重が入力される際にフレーム本体の圧縮側に配置される第2補強部材は、フレーム本体の引張側に配置される第1補強部材に比してエネルギ吸収量の向上への寄与が少ないことから凸部の数を少なくして、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を効率的に高めることができる。
【0025】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、
請求項1に係る発明と同様、第1及び第2車体構成部材を接合して形成されたフレーム本体の内部に配置される補強体は、第1及び第2車体構成部材にそれぞれ沿って延在する基部と該基部から突出する凸部とを備えた第1及び第2補強部材を有し、第1及び第2補強部材の凸部が断面略矩形状に形成され、第1及び第2補強部材の凸部の頂面部が接合されると共に、少なくとも曲げの中立軸より引張側においてフレーム本体に接合されている。
これにより、第1及び第2補強部材が接合された補強体を、フレーム本体に荷重が入力される際にフレーム本体の引張側に配置される第1車体構成部材に接合し、その後に第1及び第2車体構成部材を接合することによって車両用フレーム構造を比較的容易に製造することが可能であり、生産性を高めることが可能である。
また、補強体及びフレーム本体によって形成される閉断面部は、互いに対向する一対の第1面部と一対の第2面部とを備え、第2面部が第1面部より長い断面略長方形状に形成されると共に、第2面部が曲げの中立軸と略直交する方向に配置されている。これにより、第2面部が曲げの中立軸と略平行に配置される閉断面部や断面略正方形状に形成された閉断面部を用いる場合に比べて、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができる。
また、第1補強部材は、曲げの中立軸より引張側に配置され、第1補強部材の凸部の側面部の直交断面における断面長さは、第2補強部材の凸部の側面部の直交断面における断面長さより小さく設定され、第1補強部材の凸部の頂面部と第2補強部材の凸部の頂面部とは、曲げの中立軸より引張側において接合され
、閉断面部の第2面部の直交断面における断面長さは、閉断面部の第1面部の直交断面における断面長さの2倍以上に設定されることにより、曲げの中立軸より圧縮側において接合される場合に比べて、フレーム本体に荷重が入力される際に引張に対して強くすることができ、エネルギ吸収量を高めることができる。
【0026】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、第1補強部材は複数の凸部を有し、第2補強部材は1つの凸部を有し、第1補強部材の凸部の頂面部と第2補強部材の凸部の頂面部とは曲げの中立軸より引張側において接合される。フレーム本体に荷重が入力される際にフレーム本体の圧縮側に配置される第2補強部材は、フレーム本体の引張側に配置される第1補強部材に比してエネルギ吸収量の向上への寄与が少ないことから凸部の数を少なくして、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を効率的に高めることができる。
【0027】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、第2補強部材の凸部の側面部とフレーム本体とを用いて形成された閉断面部の内部に充填部材が充填されることにより、フレーム本体に荷重が入力される際にフレーム本体の圧縮側に配置される第2補強部材の凸部が座屈することを抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0028】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、第2補強部材は、凸部の頂面部に直交断面に略平行に延びるビード部を備えていることにより、フレーム本体に荷重が入力される際にフレーム本体の圧縮側に配置される第2補強部材の凸部が座屈することを抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語など特定の方向を意味する用語を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0031】
本願発明者等は、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができる車両用フレーム構造の開発にあたり、先ず、正方形閉断面状及び縦長長方形閉断面状に形成した車体フレームに外部から荷重を入力して曲げ変形する場合について、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーション解析を行った。
【0032】
図10は、正方形閉断面状に形成した車体フレームの曲げ変形の解析シミュレーション結果を示す図であり、
図10(a)に示すように、上面部210a、下面部210b及び両側の側面部210cを備えた正方形閉断面状の車体フレーム210に、該車体フレーム210の両端部の上方に圧子(不図示)を介して荷重Fを入力して曲げモーメントMを作用させた場合についてシミュレーション解析を行った。
【0033】
車体フレーム210では、
図10(b)に定性的に示すように、圧子のストロークが大きくなるにつれて荷重Fに対する反力F’
1が大きくなり、荷重Fに対する反力F’
1が最大となる最大曲げ荷重F’
1maxを超えると反力F’
1が急激に低下した。
【0034】
図11は、縦長長方形閉断面状に形成した車体フレームの曲げ変形の解析シミュレーション結果を示す図である。
図11(a)に示すように、上面部220a、下面部220b及び両側の側面部220cを備えた縦長長方形閉断面状の車体フレーム220についても同様に解析した。車体フレーム220については、車体フレーム210の長手方向と直交する直交断面における上面部及び下面部の断面長さを四分の一にしたことを除いて車体フレーム220と同様にして行った。
【0035】
車体フレーム220についても、
図11(b)に定性的に示すように、圧子のストロークが大きくなるにつれて荷重Fに対する反力F’
2が大きくなるが、荷重Fに対する反力F’
2が最大曲げ荷重F’
2maxを超えても急激に低下することなく、最大曲げ荷重F’
2maxを超えても所定ストロークまで最大曲げ荷重F’
2maxに略等しい状態を維持した後に急激に低下した。なお、
図10(b)及び
図11(b)では、便宜上、車体フレーム210の最大曲げ荷重F’
1maxと車体フレーム220の最大曲げ荷重F’
2maxとが等しくなるようにして表示している。
【0036】
これらシミュレーション解析結果から、車体フレームにおいて、縦長長方形閉断面状に形成した閉断面部を用いることで、閉断面部を正方形状に形成する場合に比して、エネルギ吸収量を高めることができ、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができると考えられる。
【0037】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したフロントサイドフレームを示す斜視図、
図2は、
図1に示すフロントサイドフレームの分解斜視図、
図3は、
図1におけるY3−Y3線に沿ったフロントサイドフレームの断面図である。
【0038】
図1から
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームとしてのフロントサイドフレーム1は、車体前部において車体前後方向に延びるように配設され、閉断面状に形成されたフレーム本体10と、フレーム本体10の内部に配設された補強体20とを有している。
【0039】
フレーム本体10は、それぞれ鋼鈑などの金属製の板状素材を断面ハット状にプレス加工して得られる車外側の第1車体構成部材としてのフロントサイドフレームアウタパネル(以下、「アウタパネル」という)11と車内側の第2車体構成部材としてのフロントサイドフレームインナパネル(以下、「インナパネル」という)12とから構成されている。
【0040】
アウタパネル11は、略水平方向に延びる上面部11aと、上面部11aの下方に位置して略水平方向に延びる下面部11bと、略垂直方向に延びる側面部11cとを備え、側面部11cが車外側に膨出するように形成されている。アウタパネル11はまた、上面部11aから上方へ延びる上フランジ部11dと、下面部11bから下方へ延びる下フランジ部11eとを備えて断面略ハット状に形成されている。
【0041】
一方、インナパネル12は、略水平方向に延びる上面部12aと、上面部12aの下方に位置して略水平方向に延びる下面部12bと、略垂直方向に延びる側面部12cとを備え、側面部12cが車内側に膨出するように形成されている。インナパネル12はまた、上面部12aから上方へ延びる上フランジ部12dと、下面部12bから下方へ延びる下フランジ部12eとを備えて断面略ハット状に形成されている。
【0042】
アウタパネル11の上フランジ部11dとインナパネル12の上フランジ部12dとが接合されると共に、アウタパネル11の下フランジ部11eとインナパネル12の下フランジ部12eとが接合される。これにより、フレーム本体10は、アウタパネル11及びインナパネル12によって矩形閉断面状に形成されている。
【0043】
インナパネル12の側面部12cには、フレーム本体10と直交する直交断面に略平行に上下方向に延びると共にフレーム本体10の内方側に断面円弧状に窪むように形成されたビード部12fが設けられている。フレーム本体10に前方側から所定値以上の荷重が入力される際は、フレーム本体10は、ビード部12fを起点として曲げ変形し、ビード部12fは、フレーム本体10に荷重が入力される際にフレーム本体10の曲げ変形を促進する変形促進部として機能する。
【0044】
補強体20は、フレーム本体10の長手方向におけるビード部12fを含む所定領域の内部に配置されている。補強体20は、それぞれ鋼鈑などの金属製の板状素材をプレス加工して得られる第1補強部材21と第2補強部材22とから構成されている。
【0045】
第1補強部材21は、
図3に示すように、アウタパネル11に沿って略垂直方向に延びる基部21aと、基部21aからフレーム本体10の内方側である車内側に断面略矩形状に突出する複数の凸部21b、本実施形態では3つの凸部21bとを備え、複数の凸部21bは、上下方向に離間して配置されている。凸部21bはそれぞれ、略垂直方向に延びる頂面部21cと、略水平方向に延びる両側の側面部21dとを備えている。
【0046】
一方、第2補強部材22は、
図3に示すように、インナパネル12に沿って略垂直方向に延びる基部22aと、基部22aからフレーム本体10の内方側である車外側に断面略矩形状に突出する複数の凸部22b、本実施形態では3つの凸部22bとを備え、複数の凸部22bは、上下方向に離間して配置されている。凸部22bはそれぞれ、略垂直方向に延びる頂面部22cと、略水平方向に延びる両側の側面部22dとを備えている。第1補強部材21と第2補強部材22とは、基部21a、22aに対して凸部21b、22bの突出方向が反対方向であることを除き略同様に形成されている。
【0047】
第1補強部材21と第2補強部材22とは、凸部21bの頂面部21cと凸部22bの頂面部22cとが接合されることにより接合される。これにより、補強体20は、第1補強部材21の基部21a及び隣り合う2つの凸部21bの側面部21dと第2補強部材22の基部22a及び隣り合う2つの凸部22bの側面部22dとによってフレーム本体10の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成される2つの閉断面部25と、第1補強部材21の凸部21bの頂面部21cと第2補強部材22の凸部22bの頂面部22cとによって隣り合う閉断面部25を連結する連結部26とを有する。
【0048】
2つの閉断面部25は、フレーム本体10の長手方向に延びるように設けられ、互いに離間して上下方向に配置されている。閉断面部25はそれぞれ、対向する一対の略垂直方向に延びる第1面部25aと、対向する一対の略水平方向に延びる第2面部25bとを備えて断面略長方形状に形成されている。
【0049】
第1面部25aは、第1補強部材21の基部21aと第2補強部材22の基部22aとから構成され、第2面部25bは、第1補強部材21の凸部21bの側面部21dと第2補強部材22の凸部22bの側面部22dとから構成されている。
【0050】
本実施形態では、閉断面部25を構成する第1補強部材21の基部21a、すなわち隣り合う凸部21bの間の基部21aと、閉断面部25を構成する第1補強部材22の凸部21bの側面部21dとは、前記側面部21dの水平方向における断面長さが前記基部21aの垂直方向における断面長さの2倍に設定されている。
【0051】
また、閉断面部25を構成する第2補強部材22の基部22a、すなわち隣り合う凸部22bの間の基部22aと、閉断面部25を構成する第2補強部材22の凸部22bの側面部22dとは、前記側面部22dの水平方向における断面長さが前記基部22aの垂直方向における断面長さの2倍に設定されている。このようにして、閉断面部25では、第2面部25bの断面長さは、第1面部25aの断面長さの4倍に設定されている。
【0052】
第2面部25bの断面長さは、好ましくは第1面部25aの断面長さの2倍以上に設定される。第2面部25bの断面長さが第1面部25aの断面長さの2倍未満に設定される場合には、第1面部25aの断面長さの2倍以上に設定される場合に比して、閉断面部25に入力される荷重に対する反力が最大曲げ荷重を超えると低下しやすくなり、エネルギ吸収量の向上効果が低くなると考えられるからである。
【0053】
連結部26は、隣り合う閉断面部25の隣り合う第2面部25bどうしを連結している。本実施形態では、連結部26は、フレーム本体10の直交断面における隣り合う第2面部25bの中央どうしを連結している。
【0054】
前述したように、フレーム本体10の車内側にはビード部12fが設けられており、フレーム本体10は、フレーム本体10に荷重が入力されて曲げ変形される際には、フレーム本体10の車内側で圧縮応力が生じ、フレーム本体10の車外側で引張応力が生じ、フレーム本体10の車幅方向における略中央に曲げの中立軸L1が生じることとなる。
【0055】
補強体20の閉断面部25は、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略直交する方向に第2面部25bが配置され、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略平行に第1面部25aが配置されるように設けられる。
【0056】
補強体20は、第1補強部材21の基部21aがアウタパネル11の側面部11cに接合され、第2補強部材22の基部22aがインナパネル12の側面部12に接合されてフレーム本体10の内部に接合されている。
【0057】
フロントサイドフレーム1ではまた、補強体20とフレーム本体10とによって閉断面部27、28が形成されている。閉断面部27は、補強体20の上方側に位置する第1補強部材21の基部21a及び該基部21aから突出する凸部21bの側面部21d並びに第2補強部材22の基部22a及び該基部22aから突出する凸部22bの側面部22dと、アウタパネル11の上面部11a及び側面部11c並びにインナパネル12の上面部12a及び側面部12cとによって、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成されている。
【0058】
閉断面部28は、補強体20の下方側に位置する第1補強部材21の基部21a及び該基部21aから突出する凸部21bの側面部21d並びに第2補強部材22の基部22a及び該基部22aから突出する凸部22bの側面部22dと、アウタパネル11の下面部11b及び側面部11c並びにインナパネル12の下面部12b及び側面部12cとによって、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成されている。
【0059】
閉断面部27、28についても、フレーム本体10の長手方向に延びるように設けられ、閉断面部27、28はそれぞれ、対向する一対の略垂直方向に延びる第1面部27a、28aと、対向する一対の略水平方向に延びる第2面部27b、28bとを備えて断面略長方形状に形成されている。
【0060】
閉断面部27、28についても、第2面部27b、28bの断面長さは、第1面部27a、28aの断面長さの4倍に設定されている。第2面部27b、28bの断面長さは、好ましくは第1面部27a、28aの断面長さの2倍以上に設定される。
【0061】
閉断面部27、28は、第1補強部材21の凸部21bの頂面部21cと第2補強部材22の凸部22bの頂面部22cとによって形成された連結部26によって、閉断面部27、28とそれぞれ隣り合う閉断面部25に連結されている。
【0062】
補強体20とフレーム本体10とを用いて形成された閉断面部27、28についても、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略直交する方向に第2面部27b、28bが配置され、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略平行に第1面部27a、28aが配置されるように設けられる。
【0063】
このようにして構成されるフロントサイドフレーム1を製造する際には、先ず、第1板状部材21と第2板状部材22とを溶接接合して補強体20を形成する。そして、補強体20をアウタパネル11に溶接接合し、その後に、補強体20が接合されたアウタパネル11をインナパネル12と溶接接合すると共に補強体20をインナパネル12に溶接接合し、フロントサイドフレーム1を製造する。
【0064】
本実施形態では、補強体20は、少なくとも曲げの中立軸L1より引張側においてフレーム本体10に接合される。例えば、第1補強部材21の基部21aのみをアウタパネル11の側面部11cに溶接接合し、第2補強部材22の基部22aとインナパネル12の側面部12cとは接着部材を用いて取り付けるようにしてもよい。
【0065】
本実施形態ではまた、フレーム本体10は、断面ハット状に形成したアウタパネル11とインナパネル12とを接合して矩形閉断面状に形成されているが、断面ハット状に形成したアウタパネルと平板状のインナパネルとを接合して矩形閉断面状に形成したり、平板状のアウタパネルと断面ハット状に形成したインナパネルとを接合して矩形閉断面状に形成したりするようにしてもよい。
【0066】
このように、本実施形態に係る車体フレーム1では、アウタパネル11及びインナパネル12を接合して形成されたフレーム本体10の内部に配置される補強体20は、アウタパネル11及びインナパネル12にそれぞれ沿って延在する基部21a、22aと該基部21a、22aから突出する凸部21b、22bとを備えた第1及び第2補強部材21、22を有し、凸部21b、22bがそれぞれ断面略矩形状に形成され、第1及び第2補強部材21、22の凸部21b、22bの頂面部21c、22cが接合されると共に、少なくとも曲げの中立軸L1より引張側においてフレーム本体10に接合されている。
【0067】
これにより、第1及び第2補強部材21、22が接合された補強体20を、フレーム本体10に荷重が入力される際にフレーム本体10の引張側に配置されるアウタパネル11に接合し、その後にアウタパネル11及びインナパネル12を接合することによって車体フレーム1を比較的容易に製造することが可能であり、生産性を高めることが可能である。
【0068】
また、補強体20及びフレーム本体10によって形成される閉断面部25、27、28は、互いに対向する一対の第1面部25a、27a、28aと一対の第2面部25b、27b、28bとを備え、第2面部25b、27b、28bが第1面部25a、27a、28aより長い断面略長方形状に形成されると共に、第2面部25b、27b、28bが曲げの中立軸L1と略直交する方向に配置されている。これにより、第2面部が曲げの中立軸と略平行に配置される閉断面部や断面略正方形状に形成された閉断面部を用いる場合に比べて、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができる。
【0069】
図4は、本発明の第2実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したフロントサイドフレームの断面図である。第2実施形態に係るフロントサイドフレーム31は、第1実施形態に係るフロントサイドフレーム1と、第1及び第2補強部材の凸部の接合位置が異なること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
フロントサイドフレーム31においても、アウタパネル11及びインナパネル12によってフレーム本体10が閉断面状に形成され、フレーム本体10の内部に補強体40が配設され、補強体40は、第1補強部材41と第2補強部材42とから構成されている。
【0071】
第1補強部材41についても、第1補強部材21と同様に、アウタパネル11に沿って略垂直方向に延びる基部41aと、基部41aから断面略矩形状に突出する凸部41bとを備え、凸部41bは、略垂直方向に延びる頂面部41cと、略水平方向に延びる両側の側面部41dとを備えている。
【0072】
一方、第2補強部材42についても、第2補強部材22と同様に、インナパネル12に沿って略垂直方向に延びる基部42aと、基部42aから断面略矩形状に突出する凸部42bとを備え、凸部42bは、略垂直方向に延びる頂面部42cと、略水平方向に延びる両側の側面部42dとを備えている。
【0073】
第1補強部材41と第2補強部材42とは、凸部41bの頂面部41cと凸部42bの頂面部42cとが接合されることにより接合される。これにより、補強体40は、補強体20と同様に、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成される2つの閉断面部45と、隣り合う閉断面部45を連結する連結部46とを有する。
【0074】
2つの閉断面部45は、フレーム本体10の長手方向に延びるように設けられ、互いに離間して上下方向に配置され、閉断面部45はそれぞれ、対向する一対の略垂直方向に延びる第1面部45aと、対向する一対の略水平方向に延びる第2面部45bとを備えて断面略長方形状に形成されている。
【0075】
補強体40では、凸部41bの側面部41dの水平方向における断面長さが凸部42bの側面部42dの水平方向における断面長さより小さく設定されているが、補強体20と同様に、第2面部45bの断面長さは、第1面部45aの断面長さの4倍に設定されている。第2面部45bの断面長さは、好ましくは第1面部45aの断面長さの2倍以上に設定される。
【0076】
補強体40は、第1補強部材41の基部41aがアウタパネル11の側面部11cに接合され、第2補強部材42の基部42aがインナパネル12の側面部12cに接合されてフレーム本体10の内部に接合され、閉断面部45は、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略直交する方向に第2面部45bが配置され、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略平行に第1面部45aが配置されるように設けられている。
【0077】
連結部46は、第1補強部材41の凸部41bの頂面部41cと第2補強部材42の凸部42bの頂面部42cとが接合されて形成され、第1補強部材41の凸部41bの頂面部41cと第2補強部材42の凸部42bの頂面部42cとは、曲げの中立軸L1より引張側において接合されている。
【0078】
フロントサイドフレーム31ではまた、補強体40とフレーム本体10とによって閉断面部47、48が形成されている。閉断面部47は、補強体40の上方側に位置する第1補強部材41の基部41a及び該基部41aから突出する凸部41bの側面部41d並びに第2補強部材42の基部42a及び該基部42aから突出する凸部42bの側面部42dと、アウタパネル11の上面部11a及び側面部11c並びにインナパネル12の上面部12a及び側面部12cとによって、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成されている。
【0079】
閉断面部48は、補強体40の下方側に位置する第1補強部材41の基部41a及び該基部41aから突出する凸部41bの側面部41d並びに第2補強部材42の基部42a及び該基部42aから突出する凸部42bの側面部42dと、アウタパネル11の下面部11b及び側面部11c並びにインナパネル12の下面部12b及び側面部12cとによって、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成されている。
【0080】
閉断面部47、48についても、フレーム本体10の長手方向に延びるように設けられ、対向する一対の略垂直方向に延びる第1面部47a、48aと、対向する一対の略水平方向に延びる第2面部47b、48bとを備えて断面略長方形状に形成されている。閉断面部47、48についても、第2面部47b、48bの水平方向における断面長さは、第1面部47a、48aの垂直方向における断面長さの4倍に設定されている。第2面部47b、48bの断面長さは、好ましくは第1面部45aの断面長さの2倍以上に設定される。
【0081】
閉断面部47、48は、凸部41bの頂面部41cと凸部42bの頂面部42cとによって形成された連結部46によって、閉断面部47、48とそれぞれ隣り合う閉断面部45に連結されている。閉断面部47、48と閉断面部45とを連結する連結部46についても、凸部41bの頂面部41cと凸部42bの頂面部42cとは曲げの中立軸L1より引張側において接合されている。
【0082】
補強体40とフレーム本体10とを用いて形成された閉断面部47、48についても、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略直交する方向に第2面部47b、48bが配置され、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略平行に第1面部47a、48aが配置されるように設けられる。
【0083】
このようにして構成されるフロントサイドフレーム31を製造する場合においても、先ず、第1補強部材41と第2補強部材42とを溶接接合して補強体40を形成する。そして、補強体40をアウタパネル11に溶接接合し、その後に、補強体40が接合されたアウタパネル11をインナパネル12と溶接接合すると共に補強体40をインナパネル12に溶接接合し、フロントサイドフレーム31を製造する。
【0084】
フロントサイドフレーム31についても、補強体40は、少なくとも曲げの中立軸L1より引張側においてフレーム本体10に接合され、例えば、第1補強部材41の基部41aのみをアウタパネル11の側面部11cに溶接接合し、第2補強部材42の基部42aとインナパネル12の側面部12cとは接着部材を用いて取り付けるようにしてもよい。
【0085】
このように、本実施形態に係る車体フレーム31においても、第1及び第2補強部材41、42が接合された補強体40を、フレーム本体10に荷重が入力される際にフレーム本体10の引張側に配置されるアウタパネル11に接合し、その後にアウタパネル11及びインナパネル12を接合することによって車体フレーム31を比較的容易に製造することが可能であり、生産性を高めることが可能である。
【0086】
また、補強体40及びフレーム本体10によって形成される閉断面部45、47、48は、第2面部45b、47b、48bが第1面部45a、47a、48aより長い断面略長方形状に形成されると共に、第2面部45b、47b、48bが曲げの中立軸L1と略直交する方向に配置されている。これにより、第2面部が曲げの中立軸と略平行に配置される閉断面部や断面略正方形状に形成された閉断面部を用いる場合に比べて、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができる。
【0087】
さらに、第1補強部材41の凸部41bの頂面部41cと第2補強部材42の凸部42bの頂面部42dとは、曲げの中立軸L1より引張側において接合されることにより、曲げの中立軸より圧縮側において接合される場合に比べて、フレーム本体に荷重が入力される際に引張に対して強くすることができ、エネルギ吸収量を高めることができる。
【0088】
図5は、本発明の第3実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したフロントサイドフレームの断面図である。第3実施形態に係るフロントサイドフレーム51は、第2実施形態に係るフロントサイドフレーム31と、第2補強部材の凸部の数が異なること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
フロントサイドフレーム51においても、アウタパネル11及びインナパネル12によってフレーム本体10が閉断面状に形成され、フレーム本体10の内部に補強体60が配設され、補強体60は、第1補強部材41と第2補強部材62とから構成されている。
【0090】
第1補強部材41は、補強体40の第1補強部材41と同様に形成されているが、第2補強部材62は、補強体40の第2補強部材42に比べて凸部の数が少なく、インナパネル12に沿って略垂直方向に延びる基部62aと、基部62aから断面略矩形状に突出する1つの凸部62bとを備え、凸部62bは、略垂直方向に延びる頂面部62cと、略水平方向に延びる両側の側面部62dとを備えている。
【0091】
第2補強部材62の凸部62bの頂面部62cは、第1補強部材41の3つの凸部41bの頂面部41cに接合されるように略垂直方向に延び、第2補強部材62の凸部62bの一方の側面部62dは、第1補強部材41の上方側の凸部41bの側面部41dと上下方向略同位置で略略水平方向に延び、第2補強部材62の凸部62bの他方の側面部62dは、第1補強部材41の下方側の凸部41bの側面部41dと上下方向略同位置で略水平方向に延びるように設けられている。
【0092】
第1補強部材41と第2補強部材62とは、凸部41bの頂面部41cと凸部62bの頂面部62cとが接合されることにより接合され、補強体60が、第1補強部材41と第2補強部材62とによって形成される。補強体60はまた、第1補強部材41の基部41aがアウタパネル11の側面部11cに接合され、第2補強部材62の基部62aがインナパネル12の側面部12cに接合されてフレーム本体10の内部に接合され、第1補強部材41の凸部41bの頂面部41cと第2補強部材62の凸部62bの頂面部62cとは、曲げの中立軸L1より引張側において接合されている。
【0093】
フロントサイドフレーム51ではまた、補強体60とフレーム本体10とによって閉断面部67、68が形成されている。閉断面部67は、補強体60の上方側に位置する第1補強部材41の基部41a及び該基部41aから突出する凸部41bの側面部41d並びに第2補強部材62の基部62a及び該基部62aから突出する凸部62bの側面部62dと、アウタパネル11の上面部11a及び側面部11c並びにインナパネル12の上面部12a及び側面部12cとによって、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成されている。
【0094】
閉断面部68は、補強体60の下方側に位置する第1補強部材41の基部41a及び該基部41aから突出する凸部41bの側面部41d並びに第2補強部材62の基部62a及び該基部62aから突出する凸部62bの側面部62dと、アウタパネル11の下面部11b及び側面部11c並びにインナパネル12の下面部12b及び側面部12cとによって、フレーム本体10の長手方向と直交する直交断面において閉断面状に形成されている。
【0095】
閉断面部67、68についても、フレーム本体10の長手方向に延びるように設けられ、対向する一対の略垂直方向に延びる第1面部67a、68aと、対向する一対の略水平方向に延びる第2面部67b、68bとを備えて断面略長方形状に形成されている。閉断面部67、68についても、第2面部67b、68bの水平方向における断面長さは、これに限定されるものではないが、第1面部67a、68aの垂直方向における断面長さの4倍に設定されている。
【0096】
閉断面部67、68は、凸部41bの頂面部41cと凸部62bの頂面部62cとによって形成された連結部66によって連結されている。閉断面部67、68を連結する連結部66についても、凸部41bの頂面部41cと凸部62bの頂面部62cとは曲げの中立軸L1より引張側において接合されている。
【0097】
補強体60とフレーム本体10とを用いて形成された閉断面部67、68についても、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略直交する方向に第2面部67b、68bが配置され、フレーム本体10の曲げの中立軸L1と略平行に第1面部67a、68aが配置されるように設けられる。
【0098】
このようにして構成されるフロントサイドフレーム51を製造する場合においても、第1補強部材41と第2補強部材62とを溶接接合して補強体60を形成し、そして、補強体60をアウタパネル11に溶接接合し、その後に、補強体60が接合されたアウタパネル11をインナパネル12と溶接接合すると共に補強体60をインナパネル12に溶接接合し、フロントサイドフレーム51を製造する。
【0099】
フロントサイドフレーム51についても、補強体60は、少なくとも曲げの中立軸L1より引張側においてフレーム本体10に接合され、例えば、第1補強部材41の基部41aのみをアウタパネル11の側面部11cに溶接接合し、第2補強部材62の基部62aとインナパネル12の側面部12cとは接着部材を用いて取り付けるようにしてもよい。
【0100】
このように、本実施形態に係る車体フレーム51においても、第1及び第2補強部材41、62が接合された補強体60を、フレーム本体10に荷重が入力される際にフレーム本体10の引張側に配置されるアウタパネル11に接合し、その後にアウタパネル11及びインナパネル12を接合することによって車体フレーム51を比較的容易に製造することが可能であり、生産性を高めることが可能である。
【0101】
また、補強体60及びフレーム本体10によって形成される閉断面部67、68は、第2面部67b、68bが第1面部67a、68aより長い断面略長方形状に形成されると共に、第2面部67b、68bが曲げの中立軸L1と略直交する方向に配置されている。これにより、第2面部が曲げの中立軸と略平行に配置される閉断面部や断面略正方形状に形成された閉断面部を用いる場合に比べて、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を高めることができる。
【0102】
さらに、第1補強部材41は複数の凸部41bを有し、第2補強部材62は1つの凸部62bを有し、第1補強部材41の凸部41bの頂面部41cと第2補強部材62の凸部62bの頂面部62cとは曲げの中立軸L1より引張側において接合される。フレーム本体10に荷重が入力される際にフレーム本体10の圧縮側に配置される第2補強部材62は、フレーム本体10の引張側に配置される第1補強部材41に比してエネルギ吸収量の向上への寄与が少ないことから凸部の数を少なくして、重量の増加を抑制しつつエネルギ吸収量を効率的に高めることができる。
【0103】
図6は、本発明の第4実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したフロントサイドフレームの断面図である。第4実施形態に係るフロントサイドフレーム71は、第3実施形態に係るフロントサイドフレーム51と、閉断面部の内部に充填材料が充填されること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0104】
フロントサイドフレーム71では、フロントサイドフレーム51と同様に形成された閉断面部67、68の内部に充填部材72が充填されている。充填部材72としては、例えば発泡ウレタン材等を用いることができ、充填部材72は、シート状の未発泡充填材を補強体60に設置した状態で、アウタパネル11とインナパネル12と補強体60とを接合してフロントサイドフレーム71を形成した後に、未発泡充填材を加熱することにより発泡させて閉断面部67、68の内部に充填される。
【0105】
このように、本実施形態に係る車体フレーム71では、第2補強部材62の凸部62bの側面部62cとフレーム本体10とを用いて形成された閉断面部67、68の内部に充填部材72が充填されることにより、フレーム本体10に荷重が入力される際にフレーム本体10の圧縮側に配置される第2補強部材62の凸部62bが座屈することを抑制することができる。
【0106】
図7は、本発明の第5実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したフロントサイドフレームの断面図である。第5実施形態に係るフロントサイドフレーム91は、第3実施形態に係るフロントサイドフレーム51と、第2補強部材の凸部の頂面部にビード部が形成されること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0107】
フロントサイドフレーム91では、フレーム本体10の内部に配設される補強体100は、第1補強部材41と第2補強部材102とから構成され、第1補強部材41は、補強体60の第1補強部材41と同様に形成されているが、第2補強部材102は、補強体60の第2補強部材62の凸部62bの頂面部62cに第2補強部材62を補強するためのビード部102aが形成されている。
【0108】
ビード部102aは、凸部62bの頂面部62cにフレーム本体10の直交断面に略平行に略垂直方向に延びると共に、頂面部62cから断面略半円状に車内側に膨出するように形成されている。本実施形態では、第2補強部材62の凸部62bの頂面部62cに、フレーム本体10の長手方向に離間して複数のビード部102aが設けられている。
【0109】
このように、本実施形態に係る車体フレーム91では、第2補強部材102は、凸部62bの頂面部62dに直交断面に略平行に延びるビード部102aを備えていることにより、フレーム本体10に荷重が入力される際にフレーム本体10の圧縮側に配置される第2補強部材102の凸部62bが座屈することを抑制することができる。
【0110】
図8は、本発明の第6実施形態に係る車両用フレーム構造を適用したフロントサイドフレームの断面図である。第6実施形態に係るフロントサイドフレーム111は、第2実施形態に係るフロントサイドフレーム31と、第1補強部材の上下方向両端部に車内側に延びる延設部及び該延設部から上下方向に延びるフランジ部が設けられること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0111】
フロントサイドフレーム111では、フレーム本体10の内部に配設される補強体120は、第1補強部材121と第2補強部材42とから構成され、第2補強部材42は、補強体40の第2補強部材42と同様に形成されているが、第1補強部材121は、補強体40の第1補強部材41に対し、上方側の基部41aからアウタパネル11の上面部11aに沿って車内側に延びる延設部121aと、該延設部121aから上方へ延びる上フランジ部121bとが形成されている。
【0112】
第1補強部材121はまた、補強体40の第1補強部材41に対し、下方側の基部41aからアウタパネル11の下面部11bに沿って車内側に延びる延設部121cと、該延設部121cから下方へ延びる下フランジ部121dとが形成されている。
【0113】
このようにして構成されるフロントサイドフレーム111を製造する場合においても、第1補強部材121と第2補強部材42とを溶接接合して補強体120を形成し、そして、補強体120をアウタパネル11に溶接接合し、その後に、補強体120が接合されたアウタパネル11をインナパネル12と溶接接合すると共に補強体120をインナパネル12に溶接接合し、フロントサイドフレーム111を製造する。
【0114】
フロントサイドフレーム111においてアウタパネル11をインナパネル12と溶接接合する際には、アウタパネル11の上フランジ部11dとインナパネル12の上フランジ部12dとの間に第1補強部材121の上フランジ部121bが挟まれると共に、アウタパネル11の下フランジ部11eとインナパネル12の下フランジ部12eとの間に第1補強部材102の下フランジ部121dが挟まれて接合される。
【0115】
このように、本実施形態に係る車体フレーム111では、曲げの中立軸L1より引張側に位置するアウタパネル11の上面部11b及び下面部11cに沿って第1補強部材121の延設部121a及び121cが設けられることにより、フレーム本体10に荷重が入力される際に引張に対してさらに強くすることができ、エネルギ吸収量をさらに高めることができる。
【0116】
なお、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。例えば、第5実施形態と第6実施形態とを組み合わせて第5実施形態に係る第2補強部材の凸部の頂面部にビード部を設けるなど、第1実施形態から第6実施形態に係る車両用フレーム構造を適宜組み合わせて構成するようにしてもよい。