(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206341
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】車両の動力伝達構造
(51)【国際特許分類】
B60K 17/30 20060101AFI20170925BHJP
F16D 3/12 20060101ALI20170925BHJP
F16D 3/50 20060101ALI20170925BHJP
F16F 15/10 20060101ALI20170925BHJP
F16F 15/12 20060101ALI20170925BHJP
F16F 15/126 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B60K17/30 C
F16D3/12 A
F16D3/50 C
F16F15/10 B
F16F15/12 L
F16F15/126 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-131139(P2014-131139)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-8696(P2016-8696A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】西村 憲一郎
【審査官】
増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−144629(JP,U)
【文献】
特開平9−240494(JP,A)
【文献】
特開2011−2032(JP,A)
【文献】
実公昭64−6408(JP,Y2)
【文献】
特開2010−36821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/30
F16D 3/12
F16D 3/50
F16F 15/10
F16F 15/12
F16F 15/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるドライブシャフトを備え、
該ドライブシャフトは、
一端が動力源に連結された第1動力伝達軸と、
一端が駆動輪に連結された第2動力伝達軸と、
前記第1動力伝達軸の他端に設けられた第1自在継手と、
前記第2動力伝達軸の他端に設けられた第2自在継手と、
一端が前記第1自在継手に連結され、該第1自在継手との連結部から車幅方向の外側に向かって延びる第3動力伝達軸と、
一端が前記第2自在継手に連結され、該第2自在継手との連結部から車幅方向の内側に向かって延びる第4動力伝達軸と、
前記第3、第4動力伝達軸のいずれか一方の他端に設けられた筒部内に前記第3、第4動力伝達軸の他方の他端に設けられた軸部を収容すると共に、該筒部と軸部との間に弾性部材を介在させてなるダンパと、を有する車両の動力伝達構造であって、
前記筒部と前記軸部との間に、第1軸受、前記弾性部材、第2軸受、及び、前記筒部と前記軸部との相対回転を所定角度範囲に規制する規制部が、車幅方向の内側からこの順で介装されており、
前記筒部における前記第2軸受よりも車幅方向外側部分は、前記筒部における前記第2軸受よりも車幅方向内側部分に比べて小さな外径を有する小径部とされ、
前記規制部は、前記小径部に設けられ、
前記弾性部材の外径は、前記小径部の外径よりも大きい、ことを特徴とする車両の動力伝達構造。
【請求項2】
軸方向において、前記ダンパと前記第1自在継手との距離が、前記ダンパと前記第2自在継手との距離に比べて小さいことを特徴とする請求項1に記載の車両の動力伝達構造。
【請求項3】
前記第1軸受は、前記第2軸受よりも大径であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の動力伝達構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブシャフトにダンパが設けられた車両の動力伝達構造に関し、車両の動力伝達技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃費性能の改善を図ることを目的として、運転状態に応じて減筒運転を行うことがある。また、ガソリンエンジンにおいて所定領域で自己着火燃焼を行う予混合圧縮着火(HCCI)技術の開発が進められており、該HCCI燃焼を行うことによっても、燃費性能を改善することができる。
【0003】
ところが、減筒運転やHCCI燃焼を行うと、エンジンの燃焼が不安定化し、トルク変動等による振動が増大しやすくなる。エンジンの振動は、変速機及び差動装置を介して、差動装置と駆動輪とを連結するドライブシャフトに伝達される。ドライブシャフトに伝達された振動がサスペンションアーム等を介して車体に伝達されると、車室内の不快な振動及び騒音の原因となる。
【0004】
エンジンから変速機に伝達される振動は、トルクコンバータによって吸収可能であるが、トルクコンバータのロックアップ状態又はそもそもトルクコンバータが搭載されないパワートレインでは、エンジンと変速機とが直結されることになるため、トルクコンバータによる振動吸収を実現できない。そのため、燃費向上のためにロックアップ領域を拡大したり、自動変速機の多段化等によってトルクコンバータを廃止したりした場合、上記の振動及び騒音の問題を助長することになる。
【0005】
また、動力伝達系の振動には、上記のようにエンジンを起振源とするもののほか、変速機や差動装置におけるギヤの噛み合い振動、ドライブシャフト上の自在継手におけるトルク反転時の衝撃によるねじり振動などがあり、これらの振動がドライブシャフトを介して車体に伝わると、上記と同様の問題が起こる。
【0006】
以上のような動力伝達系の振動を抑制するために、特許文献1には、差動装置と駆動輪とを連結するドライブシャフト上にダンパを配置し、このダンパによって、エンジンや変速機、差動装置等でなる動力源からの振動を吸収するようにした技術が開示されている。具体的に、このダンパは、ドライブシャフトに配置された一対の自在継手間に設けられ、これらのうち動力源側の自在継手から車輪側に延びるシャフトの先端に設けられた軸部と、車輪側の自在継手から動力源側に延びるシャフトの先端に設けられた筒部とを備え、これら軸部と筒部とは弾性部材を介して互いに嵌合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−181011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ドライブシャフト上に一対の自在継手を配置する場合、該ドライブシャフトにおける動力源側の自在継手よりも車輪側の部分は、路面の凹凸に起因する車輪の上下動に伴って、動力源側の自在継手を中心として上下に大きく振れる。そのため、このドライブシャフト部分の近傍には、フロントサイドフレーム等の車体側部材との干渉を避けるための隙間を十分に確保しておく必要がある
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術のようにドライブシャフト上の一対の自在継手間にダンパを配置する場合、例えば、車体側部材の配置によっては、或いは、伝達トルクの増大又は軸方向寸法の制約等に伴うダンパの大径化によって、ダンパと車体側部材との干渉を回避することが困難になる場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、車両の動力伝達系の振動を吸収するためのダンパを、周辺の車体側部材に干渉することなく、ドライブシャフト上の一対の自在継手間に配置することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両の動力伝達構造は、次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
車幅方向に延びるドライブシャフトを備え、
該ドライブシャフトは、
一端が動力源に連結された第1動力伝達軸と、
一端が駆動輪に連結された第2動力伝達軸と、
前記第1動力伝達軸の他端に設けられた第1自在継手と、
前記第2動力伝達軸の他端に設けられた第2自在継手と、
一端が前記第1自在継手に連結され、
該第1自在継手との連結部から車幅方向の外側に向かって延びる第3動力伝達軸と、
一端が前記第2自在継手に連結され、
該第2自在継手との連結部から車幅方向の内側に向かって延びる第4動力伝達軸と、
前記第3、第4動力伝達軸のいずれか一方の他端に設けられた筒部内に前記第3、第4動力伝達軸の他方の他端に設けられた軸部を収容すると共に、該筒部と軸部との間に弾性部材を介在させてなるダンパと、
を有する車両の動力伝達構造であって、
前記筒部と前記軸部との間に、第1軸受、前記弾性部材、第2軸受、及び、前記筒部と前記軸部との相対回転を所定角度範囲に規制する規制部が、車幅方向の内側からこの順で介装されており、
前記筒部における前記第2軸受よりも車幅方向外側部分は、前記筒部における前記第2軸受よりも車幅方向内側部分に比べて小さな外径を有する小径部とされ、
前記規制部は、前記小径部に設けられ、
前記弾性部材の外径は、前記小径部の外径よりも大きい、ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
軸方向において、前記ダンパと前記第1自在継手との距離が、前記ダンパと前記第2自在継手との距離に比べて小さいことを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、
前記第1軸受は、前記第2軸受よりも大径であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
まず、請求項1に記載の発明に係る車両の動力伝達構造では、ドライブシャフトにおける第1自在継手とこれよりも駆動輪側の第2自在継手との間にダンパが設けられているため、路面の凹凸に応じてドライブシャフトにおける第1自在継手よりも駆動輪側の部分が上下に揺動するとき、仮にダンパの外径が均一であれば、上下方向のダンパの可動範囲は、第1自在継手から最も遠い駆動輪側端部において最大となる。本発明によれば、ダンパにおける弾性部材よりも駆動輪側の部分が小径部とされていることによって、ダンパの可動範囲の最大幅が抑制されるため、ダンパとその周辺の車体側部材との干渉を回避しやすくなる。
【0018】
しかも、小径部が弾性部材から軸方向にずらして設けられていることにより、弾性部材の厚みに関わらず小径部の外径を効果的に低減できる。したがって、弾性部材による効果的な振動吸収を実現しつつ、ダンパの小径部と車体側部材との干渉を容易に回避することができる。
また、ダンパにおける筒部と軸部との相対回転を所定角度範囲で許容することで、弾性部材による振動吸収を効果的に実現しつつ、小径部に設けられた規制部によって、前記所定角度範囲を超える相対回転を阻止することで、動力源側から伝えられた第3動力伝達軸の回転を、ダンパを介して駆動輪側の第4動力伝達軸へ確実に伝達することができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、第1自在継手と第2自在継手との間においてダンパが動力源側に寄せて配置されるため、上述したダンパの可動範囲を更に抑制することができ、ダンパと車体側部材との干渉を更に回避しやすくなる。
【0020】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、
動力源側の動力が入力されるダンパの車幅方向内側部分を、第2軸受よりも大径の第1軸受によって安定的に支持することができる。そのため、エンジンの燃焼変動等による大きなトルク変動が動力源側からダンパに入力されて、該ダンパにねじり方向や曲げ方向の大きな力が作用する場合でも、動力が入力されるダンパの大径部分を第1軸受によって安定的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る車両の動力伝達装置を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す動力伝達装置に設けられたダンパの構造を示す部分断面図である。
【
図3】
図2に示すダンパの要部を軸方向から見た
図2のA−A線断面図である。
【
図4】
図2のB−B線断面に設けられたストッパ機構の一部を示す断面図である。
【
図5】
図2に示すダンパを含むドライブシャフトの駆動輪側部分が上下に振れた状態を車両後方側から見た図である。
【
図6】第2の実施形態に係る車両の動力伝達装置の一部を車両後方側から見た図である。
【
図7】
図6に示す動力伝達装置におけるドライブシャフトの駆動輪側部分が上下に振れた状態を車両後方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」、「右」、「左」、「左右」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の進行方向を向いた姿勢で見た方向を指すものとする。
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る車両の動力伝達装置1を示す平面図である。
【0026】
図1に示すように、該動力伝達装置1は、フロントエンジン・フロントドライブ式の車両(FF車)に搭載されるものであり、例えばエンジンルームに搭載される動力源2と、左右の駆動輪28を動力源2に連結する左右一対のドライブシャフト10(10a,10b)とを備えている。
【0027】
動力源2は、横置き式のエンジン3と、該エンジン3の車幅方向の例えば左側に並設されたトランスアクスル4とを備えている。トランスアクスル4は、例えばトルクコンバータ(図示せず)を介してエンジン3の出力軸に連結された変速機6と、該変速機6の出力を左右のドライブシャフト10に伝達する差動装置8とを備えている。変速機6及び差動装置8は、車幅方向において中央よりも左側にオフセットして配置されている。
【0028】
各ドライブシャフト10上には、第1自在継手としてのデフ側等速ジョイント21、及び、第2自在継手としてのホイール側等速ジョイント22が車幅方向に間隔を空けて設けられている。これにより、ドライブシャフト10におけるデフ側等速ジョイント21よりも駆動輪側の部分は、路面の凹凸に応じてデフ側等速ジョイント21を軸として上下に揺動可能となっている(
図5参照)。
【0029】
各ドライブシャフト10は、差動装置8からデフ側等速ジョイント21まで延びる第1動力伝達軸としてのデフ側シャフト11(11a,11b)と、ホイール側等速ジョイント22から駆動輪28まで延びる第2動力伝達軸としてのホイール側シャフト12とを備えている。また、各ドライブシャフト10は、一対の等速ジョイント21,22を繋ぐ中間シャフト15を備え、該中間シャフト15は、デフ側等速ジョイント21から駆動輪側に向かって延びる第3動力伝達軸としてのデフ側中間シャフト13と、ホイール側等速ジョイント22から差動装置側に向かって延びる第4動力伝達軸としてのホイール側中間シャフト14とで構成されている。
【0030】
デフ側及びホイール側の等速ジョイント21,22はそれぞれ左右対称に配置されており、これにより、左右の中間シャフト15の長さ、及び、左右のホイール側シャフト12の長さは、それぞれ等しくなっている。したがって、上述した路面の凹凸に応じたドライブシャフト10の揺動に関して、左右のドライブシャフト10a,10bで同様の挙動が可能となっている。
【0031】
上述のように差動装置8は左側にオフセットして配置されているため、右側のドライブシャフト10aは、デフ側シャフト11a,11bの長さの違いによって、左側のドライブシャフト10bよりも長くなっている。なお、比較的長尺の右側のデフ側シャフト11aは、ブラケット29を介して車体に固定されている。
【0032】
また、各ドライブシャフト10上において、一対の等速ジョイント21,22の間、すなわち中間シャフト15上にはダンパ30が配設されている。該ダンパ30が動力源2からドライブシャフト10に伝わる振動を効果的に吸収することで、サスペンションアーム(図示せず)等を介した車体への振動伝達、ひいては車室内の不快な振動及び騒音が抑制される。
【0033】
図2は、右側のダンパ30及びその周辺部の構造を示す部分断面図である。なお、左側のダンパ30は、
図2に示す右側のダンパ30と左右対称の構造を有する。
【0034】
図2に示すように、ダンパ30の軸方向両側に配置された各等速ジョイント21,22は、内輪(図示せず)等の各種構成部品を収容する筒状の外輪23,26と、該外輪23,26内への異物の侵入を阻止する蛇腹状のブーツ24,27とを備えている。デフ側等速ジョイント21のブーツ24の差動装置側端部はブーツバンド75によって外輪23の外周に固定され、該ブーツ24の駆動輪側端部はブーツバンド76によってデフ側中間シャフト13の外周に固定されている。ホイール側等速ジョイント22のブーツ27の差動装置側端部はブーツバンド77によってホイール側中間シャフト14の外周に固定され、該ブーツ27の駆動輪側端部はブーツバンド78によって外輪26の外周に固定されている。
【0035】
ダンパ30は、ホイール側中間シャフト14の差動装置側先端に設けられた筒部32と、デフ側中間シャフト13の駆動輪側先端に設けられた軸部50とを備えている。
【0036】
筒部32は、軸方向の駆動輪側の端部に底部34を有し、差動装置側に向かって開放している。筒部32は、ダンパ30の外周を形成しており、筒部32の外径はダンパ30の外径に等しい。
【0037】
筒部32は、底部34から軸方向差動装置側に延びる小径部36と、該小径部36よりも大径であり且つ小径部36よりも軸方向差動装置側に配置された大径部37とを備えている。
【0038】
ダンパ30の駆動輪側部分に設けられた小径部36は、ダンパ30における残りの部分よりも小径とされている。また、該小径部36の外径は、ホイール側中間シャフト14の外径よりも大きく、ブーツバンド77の外径よりも小さい。
【0039】
大径部37は、小径部36よりも大径であり且つ小径部36の差動装置側端部に連なる第1大径部38と、該第1大径部38よりも大径であり且つ第1大径部38の差動装置側端部に連なる第2大径部39とを備えている。このように、ダンパ30は、軸方向の駆動輪側に向かって段階的に小さくなる外径を有する。
【0040】
軸部50は、筒部32内に収容されている。軸部50は、筒部32の小径部36に内嵌された小径部51と、該小径部51よりも大径であり且つ小径部51よりも軸方向差動装置側に配置された大径部52とを備えている。小径部51の外径は、ホイール側中間シャフト14の外径に略等しい。小径部51は、筒部32に対する軸部50の相対回転を所定角度範囲に規制する後述のストッパ機構40を介して、筒部32の小径部36の内側に嵌合されている。
【0041】
軸部50の大径部52は、小径部51よりも大径であり且つ小径部51の差動装置側端部に連なる第1大径部53と、該第1大径部53よりも大径であり且つ第1大径部53の差動装置側端部に連なる第2大径部54とを備えている。軸部50の第1大径部53は、筒部32の第1大径部38に内嵌されており、軸部50の第2大径部54は、筒部32の第2大径部39に内嵌されている。
【0042】
軸部50には、第1大径部53から第2大径部54にかけて中空部59が設けられており、これにより、軸部50の軽量化が図られている。一方、小径部51は、中実部で構成されており、大径部54に比べて剛性が高められている。
【0043】
ダンパ30は、筒部32と軸部50との間に介装された弾性部材60を更に備えている。弾性部材60は、軸方向において小径部36よりも差動装置側に配置され、筒部32の第1大径部38と軸部50の第1大径部53との間に介装されている。軸方向において、弾性部材60は、デフ側等速ジョイント21までの距離がホイール側等速ジョイント22までの距離に比べて小さくなるように、差動装置側にオフセットして配置されている。
【0044】
図2及び
図3に示すように、弾性部材60は、略筒状の部材であり、小径部36の外径よりも大きな外径を有する。また、弾性部材60の内径も小径部36の外径よりも大きくなっている。弾性部材60は、例えば、径方向に間隔を空けて配置された内筒61及び外筒62と、内筒61と外筒62との間に介在するブッシュ部63とを備えている。内筒61及び外筒62は、それぞれ例えば金属からなり、ブッシュ部63は、例えばゴムからなる。ブッシュ部63は、例えば焼き付けによって内筒61の外周面及び外筒62の内周面にそれぞれ接合されている。
【0045】
弾性部材60は、軸部50の第1大径部53の外周面と筒部32の第1大径部38の内周面との間に圧入されている。これにより、内筒61は軸部50の外周に固定され、外筒62は筒部32の内周に固定されている。ブッシュ部63は、内筒61と外筒62との相対回転を許容するように弾性変形可能となっている。このように構成された弾性部材60によって、動力源2からドライブシャフト10に伝わるねじり振動等の各種振動を吸収可能となっている。
【0046】
ダンパ30は、軸方向において弾性部材60よりも差動装置側に配置された第1軸受としてのデフ側軸受71と、弾性部材60よりも駆動輪側に配置された第2軸受としてのホイール側軸受72とを更に備えており、これらの軸受71,72は、筒部32と軸部50との間に介装されている。具体的に、デフ側軸受71は、筒部32及び軸部50の各第2大径部39,54間に介装されており、ホイール側軸受72は、筒部32及び軸部50の各小径部36,51の差動装置側端部間に介装されている。ホイール側軸受72の外径は、デフ側軸受71の外径よりも小さい。
【0047】
ところで、ダンパ30には、エンジン3の燃焼変動等による大きなトルク変動が入力されて、ねじり方向や曲げ方向の大きな力が作用することがある。本実施形態によれば、このような大きな力がダンパ30に作用しても、エンジン3の動力が入力されるダンパ30の差動装置側部分を、ホイール側軸受72よりも大径のデフ側軸受71によって安定的に支持することができる。
【0048】
図4に示すように、筒部32の小径部36の内周には、筒部32と軸部50との相対回転を所定角度範囲に規制するストッパ機構40が設けられている。ストッパ機構40は、筒部32の小径部36の内周に設けられたスプライン42と、軸部50の小径部51の外周に設けられたスプライン44とを備えている。筒部32のスプライン42と、軸部50のスプライン44とは、周方向に交互に配置されており、隣接するスプライン42,44間に間隙46が設けられている。
【0049】
このように構成されたストッパ機構40によれば、隣接するスプライン42,44間に間隙46が設けられていることによって筒部32と軸部50との相対回転が所定角度範囲で許容されると共に、該範囲を超える相対回転は、スプライン42,44の干渉によって阻止される。したがって、筒部32と軸部50との相対回転が所定角度範囲で許容されることで、弾性部材60による振動吸収を効果的に実現しつつ、該範囲を超える相対回転が阻止されることで、動力源2側から伝えられたデフ側中間シャフト13の回転を、ダンパ30を介してホイール側中間シャフト14へ確実に伝達することができる。
【0050】
図5は、ドライブシャフト10の駆動輪側部分、具体的には、デフ側等速ジョイント21から駆動輪側部分が、路面の凹凸に応じて上下に振れた状態を車両後方側から見た図である。
【0051】
図5に示すようにドライブシャフト10の駆動輪側部分が上下に揺動するとき、ダンパ30は、所定の可動範囲H内で上下方向に揺動する。この可動範囲Hは、仮にダンパ30の外径が均一であれば、ダンパ30におけるデフ側等速ジョイント21から最も遠い部分、すなわち、ダンパ30の駆動輪側端部において最大となる。
【0052】
本実施形態によれば、上述のように、ダンパ30の駆動輪側端部が小径部36で構成されている。また、ダンパ30の弾性部材60は小径部36よりも差動装置側にずらして設けられていると共に、ホイール側軸受72がデフ側軸受71よりも小径であることによって、小径部36の外径は効果的に低減されている。したがって、ダンパ30の可動範囲Hは効果的に抑制されており、これにより、ダンパ30の駆動輪側部分の例えば上方近傍に配設されたフロントサイドフレーム等の車体側部材100とダンパ30との干渉を回避しやすくなる。
【0053】
[第2の実施形態]
続いて、
図6及び
図7を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、
図6及び
図7において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成要素には同符号を付してある。
【0054】
第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて、ダンパ30の軸方向位置が異なっており、その他の構成は第1の実施形態と同様である。具体的に、第2の実施形態では、軸方向において、ダンパ30とホイール側等速ジョイント22との距離に比べてダンパ30とデフ側等速ジョイント21との距離が小さくなっており、この点で、2つの等速ジョイント21,22の略中央にダンパ30が配置された第1の実施形態と異なっている。
【0055】
第2の実施形態によれば、2つの等速ジョイント21,22間において、ダンパ30がデフ側等速ジョイント21側にオフセットして配置されているため、
図7に示すように、デフ側等速ジョイント21を軸としてドライブシャフト10の駆動輪側部分が上下方向に揺動するときのダンパ30の可動範囲Hを更に低減できる。これにより、ダンパ30の駆動輪側部分の例えば上方近傍に配設されたフロントサイドフレーム等の車体側部材100とダンパ30との干渉を更に回避しやすくなる。
【0056】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、ダンパ30の筒部32が、第3動力伝達軸(ホイール側中間シャフト14)の動力源側先端に設けられ、軸部50が、第4動力伝達軸(デフ側中間シャフト13)の駆動輪側先端に設けられる場合について説明したが、本発明は、第3動力伝達軸の動力源側先端にダンパの軸部が設けられ、第4動力伝達軸の駆動輪側先端にダンパの筒部が設けられる場合にも適用できる。
【0058】
また、上述の実施形態では、ドライブシャフト上に設けられる自在継手として等速ジョイントを用いる場合について説明したが、本発明は、等速ジョイント以外の自在継手を備えた動力伝達装置にも適用できる。
【0059】
さらに、上述の実施形態では、エンジン横置き式のFF車に搭載される動力伝達装置について説明したが、本発明は、フロントエンジン・リヤドライブ式の車両(FR車)等、FF式以外の車両や、エンジン縦置き式の車両に搭載される動力伝達装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明によれば、車両の動力伝達系の振動を吸収するためのダンパを、周辺の車体側部材に干渉することなく、ドライブシャフト上の一対の自在継手間に配置することが可能となるから、ドライブシャフト上にダンパが配設された車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0061】
1:動力伝達装置
2:動力源
3:エンジン
4:トランスアクスル
6:変速機
8:差動装置
10:ドライブシャフト
11:デフ側シャフト(第1動力伝達軸)
12:ホイール側シャフト(第2動力伝達軸)
13:デフ側中間シャフト(第3動力伝達軸)
14:ホイール側中間シャフト(第4動力伝達軸)
15:中間シャフト
21:デフ側等速ジョイント(第1自在継手)
22:ホイール側等速ジョイント(第2自在継手)
28:駆動輪
30:ダンパ
32:筒部
36:小径部
37:大径部
38:第1大径部
39:第2大径部
40:ストッパ機構(規制部)
60:弾性部材
61:内筒
62:外筒
63:ブッシュ部
71:デフ側軸受(第1軸受)
72:ホイール側軸受(第2軸受)