(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る描画装置の実施形態の一例を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
また、以下の実施形態では、描画装置は手の指の爪を描画対象として、これに描画するものとして説明するが、本発明の描画対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪を描画対象としてもよい。
【0012】
図1は、描画装置の正面図であり、
図2は
図1に示す描画装置の一部を断面にして内部構造を示した側面図である。
図1及び
図2に示すように、この描画装置1は、プロッタ方式のネイルプリント装置であり、ケース本体2と、このケース本体2に収容される装置本体10と、を備えている。なお、
図1及び
図2において、ケース本体を二点鎖線で示している。
【0013】
ケース本体2の前面上部一端には、後述する描画部40のペン等の筆記具41を交換するために開閉可能に構成された筆記具交換用蓋部23が設けられている。筆記具交換用蓋部23は、例えばヒンジ等を介して、
図2に示すように閉状態から開状態まで回動自在となっている。
さらに、ケース本体2の一側面(本実施形態では、
図1において左側面)であって後述する筆記具慣書部61に対応する位置には、筆記具慣書部61に載置される被描画媒体(図示せず)を入れ替え可能な媒体挿出口24が形成されている。
【0014】
ケース本体2の上面(天板)には操作部25(
図4参照)が設置されている。
操作部25は、ユーザが各種入力を行う入力部である。
操作部25には、例えば、描画装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、爪Tに描画するデザイン画像を選択するデザイン選択釦、描画開始を指示する描画開始釦等、各種の入力を行うための図示しない操作釦が配置されている。
【0015】
また、ケース本体2の上面(天板)のほぼ中央部には表示部26が設置されている。
表示部26は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
本実施形態において、この表示部26には、例えば、印刷指U1を撮影して得た爪画像(爪Tの画像を含む指画像)、この爪画像中に含まれる爪Tの輪郭線等の画像、爪Tに描画すべきデザイン画像を選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面等が適宜表示される。
なお、表示部26の表面にタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、例えば、指先等でタッチパネル表面にタッチすることにより各種選択や指示を行うことができる。指以外でも例えばスタイラスペンや、先の尖った棒状の筆記具等によって表示部26の表面をタッチするタッチ操作によっても各種の入力を行うことができるように構成される。
【0016】
装置本体10は、ほぼ箱状に形成され、ケース本体2の内部下方に設置された下部機枠11と、この下部機枠11の上方で且つケース本体2の内部上方に設置されている上部機枠12と、を備えている。
【0017】
まず、下部機枠11について説明する。
下部機枠11は、背面板111、底板112、左右一対の側板113a,113b、X方向移動ステージ収容部114、Y方向移動ステージ収容部115及び隔壁116を有する。
側板113a,113bの下端部は、底板112の左右両端部にそれぞれ連結され、側板113a,113bが底板112に対して立てられた状態に設けられている。
図2に示すように、背面板111の下部は、前方(指挿入方向手前側)に向かって2段に窪むように形成されている。背面板111の下端部は底板112の前端部に連結されており、背面板111は、底板112と側板113a,113bによって囲われた領域を前後に区切っている。
この窪んだ背面板111の後ろ側に形成される空間がX方向移動ステージ収容部114、Y方向移動ステージ収容部115(
図2参照)となっている。X方向移動ステージ収容部114内には、描画部40(
図6参照)が前方(指挿入方向手前側)に移動した際に描画部40のX方向移動ステージ45が収容される。また、Y方向移動ステージ収容部115内には、描画部40のY方向移動ステージ47が配置されている。
また、隔壁116は、下部機枠11の内部前方側の空間(背面板111、底板112及び側板113a,113bによって囲われた指挿入方向手前側の空間)を上下に区切るように下部機枠11の内側に設けられている。隔壁116はほぼ水平に設けられ、隔壁116の左右両端部が側板113a,113bにそれぞれ連結され、隔壁116の後端部が背面板111に連結されている。
【0018】
この下部機枠11には、指固定部30が一体的に設けられている。
図3を参照して、指固定部30について説明する。
図3は
図1に示されたIII−III線に沿った断面を矢印方向に見て示した断面図である。
【0019】
指固定部30は、描画対象である、描画を施す爪Tに対応する指(以下、これを「印刷指U1」という。)を受け入れる指受入部31と、描画対象でない、この印刷指U1以外の指(以下、これを「非印刷指U2」という。)を退避させる指退避部32と、から構成されている。
指受入部31は、隔壁116の上側であって下部機枠11の幅方向のほぼ中央部に配置されている。また、隔壁116によって下部機枠11の下側に区分けられた空間が指退避部32を構成している。
例えば、薬指の爪Tに描画を施す場合には、
図3に示すように、指受入部31に印刷指U1としての薬指を挿入し、非印刷指U2であるその他の4指(親指、人差し指、中指、小指)を指退避部32に挿入する。
指受入部31は、下部機枠11の前面側(印刷指挿入方向の手前側)に開口しており、下側が隔壁116の一部を構成する指載置部116a、両側が仕切り31a、奥側が仕切り31cによって区画されている。指載置部116aは、描画を施す爪Tの指(印刷指U1)をXY平面上に載置するものである。
また、指受入部31の上側は天井部31dによって区画されている。天井部31dには、指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tを露出させるための窓31eが形成されている。
【0020】
また、隔壁116の上面であって下部機枠11の前面側の両側部には、下部機枠11の前面側を塞ぐ前壁31f(
図1参照)が立設されている。また、隔壁116の上面には、この前壁31fの中央部寄りの端部から前記指受入部31に向けて狭窄し、印刷指U1を指受入部31内に案内する一対のガイド壁31gが立設されている。
ユーザは指受入部31に挿入した印刷指U1と指退避部32に挿入した非印刷指U2との間に隔壁116を挟むことができる。そのため、指受入部31内に挿入された印刷指U1が安定して固定される。
なお、本実施形態では、隔壁116の前端部に下方向に張り出した突出部116bが形成されている。突出部116bは、手前側に向かうにつれてその厚さが漸減し、奥側に向かうにつれて漸増するテーパー部となっていてもよいし、突出部116bの厚さが、隔壁116の奥側の窪みに対して全体が厚い構造になっていてもよい。隔壁116の前端部に突出部116bが形成されていることにより、非印刷指U2が指退避部32に挿入された際、描画済みの指の爪Tと隔壁116との間に空間が確保され、爪Tが隔壁116の下面に接触して装置側にインクが付着したり、爪Tに描画された絵柄が擦れて損なわれたりするのを防止することができる。
【0021】
隔壁116の上面であって、指受入部31の横(ケース本体2の媒体挿出口24に対応する位置であり、本実施形態では、
図1において左側)には、後述する印刷ヘッド42による描画可能範囲内に、後述する筆記具41の慣らし書きをするための筆記具慣書部61が設けられている。なお、筆記具慣書部61は、印刷指U1が指受入部31に挿入された際の爪Tの高さとほぼ同じとなる高さに設けられていることが好ましい。
筆記具慣書部61は、平板状の部分であり、前述のケース本体2の媒体挿出口24から挿入された図示しない被描画媒体が載置されるようになっている。
筆記具慣書部61に載置される被描画媒体は、ペン先412を慣らすことができるものであればよく、例えば紙片である。
筆記具慣書部61は、ペン先412が乾いていたりインクの乗りが悪い等により書き始めがかすれたりするのを防止するために、爪Tに画像データによる描画を開始する前に被描画媒体の上に筆記具41を下ろして「○」や「∞」等の所定の図形を描画して慣らし書きを行い、ペン先412の状態を良好にするためのものである。慣らし書きを行う際に描画する所定の図形は特に限定されないが、インクを無駄に使いすぎないよう、「○」や「∞」等の単純な図形であることが好ましい。「○」や「∞」等の慣らし書きは、筆記具慣書部61の範囲内で、慣らし書きを行う度に少しずつずらしながら書くようにすることが好ましい。なお、被描画媒体のほぼ全面に書いてしまったときには、表示部26に「紙を交換して下さい」等の被描画媒体の交換を促す表示画面を表示させるようにする。この場合、ユーザが媒体挿出口24から被描画媒体を取り出して新しいものと交換することにより新しい被描画媒体に慣らし書きができる状態となる。もし、被描画媒体がロール紙である場合は、描画スペースが無くなったときには、ロール紙から被描画媒体を繰り出し、新しい描画面に慣らし書きを行えるようにする。
【0022】
また、本実施形態ではゴム製の筆記具キャップ62が筆記具慣書部61の前方(指挿入方向の手前側)に設置されている。筆記具キャップ62は、描画部40に装着される筆記具41に対応する数(本実施形態では4つ)だけ設けられており、描画部40に筆記具41を装着後であって描画を行っていないとき(非描画時)には、筆記具41は筆記具キャップ62に収容される。筆記具キャップ62等が配置されている領域は、非描画時に、筆記具41が待機しているホームスペースとなっている。
すなわち、非描画時には、筆記具41を筆記具キャップ62の真上に筆記具41を移動させ後、後述するソレノイド440によって筆記具41を下降させ、ペン先412を筆記具キャップ62内に収容する。このようにすることにより、非描画時におけるペン先412の乾燥を防止できるようになっている。なお、筆記具キャップ62の形状等は図示例に限定されず、例えば、描画部40に装着される全ての筆記具41のペン先412を受け入れることのできる長尺な溝状の筆記具キャップ等であってもよい。
なお、本実施形態では、このように、筆記具キャップ62が筆記具慣書部61の傍に設けられているので、描画を開始するときには、筆記具41を上昇させてすぐ傍の筆記具慣書部61で慣らし書きを行い、描画を開始することができる。このため、筆記具41の移動等にかかる時間を最小限に抑えることができ、迅速な描画動作を行うことができる。
【0023】
描画部40は、複数種類のインクを用いて、選択されたデザイン画像の画像データに基づき爪に描画を施すものであり、筆記具41を備える印刷ヘッド42、印刷ヘッド42を支持するユニット支持部材44、印刷ヘッド42をX方向(
図1におけるX方向、描画装置1の左右方向)に移動させるためのX方向移動ステージ45、X方向移動モータ46、印刷ヘッド42をY方向(
図2におけるY方向、描画装置1の前後方向)に移動させるためのY方向移動ステージ47、Y方向移動モータ48等を備えて構成されている。
【0024】
本実施形態において、印刷ヘッド42は、それぞれ1本ずつ筆記具41を保持する筆記具キャリッジ43を4つ備えている。
【0025】
描画用具である筆記具41は、爪Tの表面にインクを塗布して描画を施すものである。
各筆記具キャリッジ43に保持される筆記具(描画用具)41は、ペン軸部411の先端側にペン先412が設けられたものである。ペン軸部411の内部は、各種インクを収容するインク収容部となっている。ペン軸部411の内部に収容されるインクは、粘度や色材の粒径(粒子の大きさ)等は特に限定されず、例えば、金銀のラメ入りのインクや白色のインク、UV硬化型のインクやジェルネイル、アンダーコート用、トップコート用やマニキュア等も用いることができる。
【0026】
筆記具41は、例えばペン先412を爪Tの表面に押し当てることでペン軸部411内に収容されているインクが染み出して描画する、ペン先412がボールペンタイプとなったペンである。なお、筆記具41は、ボールペンタイプのものに限定されず、例えばフェルト状のペン先にインクを染み込ませて描画するサインペンタイプや、束ねた毛にインクを染み込ませて描画する筆ペンタイプのもの等であってもよい。また、ペン先412の太さも各種のものを用意することができる。
各筆記具キャリッジ43に保持される筆記具41は、同じタイプのペン先412を有するペンでもよいし、異なるタイプのペン先412を有する筆記具であってもよい。
【0027】
なお、本実施形態では、筆記具41を保持する筆記具キャリッジ43が装置の幅方向(左右方向、
図1におけるX方向)に4つ並んでいるため、ペン先412の位置がX方向(装置の左右方向)にずれているが、このずれは描画動作における1ステップの整数倍になっており、描画に使われる筆記具41に応じて当該ずれている分のステップ数だけ補正して描画を行うため、4つの筆記具41は、同じ位置に描画を行うことができるようになっている。
【0028】
各筆記具キャリッジ43には、筆記具41をほぼ垂直に保持する、描画用具ホルダである筆記具ホルダ431が設けられている。筆記具ホルダ431は、筆記具41をほぼ垂直に保持した状態でばね433とソレノイド440との協働によって筆記具41を上下移動させるようになっている。具体的には、ソレノイド440が駆動されている状態ではばね433の付勢力に抗して筆記具41が降下して、描画対象である爪Tの表面や被描画媒体と接触可能な描画状態となる。また、ソレノイド440が開放された状態では、ばね433の付勢力によって筆記具41が上昇し、爪Tの表面や被描画媒体と接触しない非描画状態となる。
なお、本実施形態では、筆記具41を上下させるためのアクチュエータとしてソレノイド440を用いているが、筆記具41を上下させるためのアクチュエータは、ソレノイド440に限定されない。筆記具41は軽量であるため、ソレノイドの他、各種小型の駆動装置により筆記具41を上下させるためのアクチュエータを構成することができる。
【0029】
印刷ヘッド42を支持するユニット支持部材44は、X方向移動ステージ45に取り付けられたX方向移動部451に固定されている。X方向移動部451は、X方向移動モータ46の駆動によりX方向移動ステージ45上を図示しないガイドに沿ってX方向に移動するようになっており、これにより、印刷ヘッド42がX方向(
図1におけるX方向、描画装置1の左右方向)に移動するようになっている。
また、X方向移動ステージ45は、Y方向移動ステージ47のY方向移動部471に固定されている。Y方向移動部471は、Y方向移動モータ48の駆動によりY方向移動ステージ47上を図示しないガイドに沿ってY方向に移動するようになっており、これにより、印刷ヘッド42がY方向(
図2におけるY方向、描画装置1の前後方向)に移動するようになっている。
なお、本実施形態において、X方向移動ステージ45及びY方向移動ステージ47は、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48と、図示しないボールネジ及びガイドとを組み合わせることで構成されている。本実施形態のX方向移動モータ46及びY方向移動モータ48としては、1パルス送られるごとに所定量ずつ移動するステップモータが適用される。
本実施形態では、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48等により、爪Tに描画を施す筆記具41を備える印刷ヘッド42をX方向及びY方向に駆動するヘッド駆動部49(
図4参照)が構成されている。
【0030】
描画部40における筆記具41を上下移動させるためのソレノイド440、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48は、後述する制御装置80の描画制御部815(
図4参照)に接続され、該描画制御部815によって制御されるようになっている。
【0031】
図1及び
図2に示すように、撮影部50は、上部機枠12に設けられている。
すなわち、上部機枠12には基板13が設置されており、この基板13の中央部下面には、撮像装置としてのカメラ51が2つ設置されている。カメラ51は、例えば200万画素程度以上の画素を有するものであることが好ましい。
カメラ51は、指受入部31内に挿入されている印刷指U1の爪Tを撮影して、印刷指U1の爪Tの画像である爪画像(爪Tの画像を含む指画像)を得るものである。
本実施形態では、2つのカメラ51は、指受入部31に挿入されている印刷指U1の爪Tの幅方向にほぼ並んで設けられている。2つのカメラ51のうち、一方のカメラ51は、指受入部31の底面に対向して設けられており、爪Tを真上から撮影するものである。また、他方のカメラ51は、指受入部31の底面に対して僅かに傾けて配置されており、爪Tを斜め上方向から撮影するものである。
また、基板13には、カメラ51を囲むように白色LED等の照明灯(照明装置)52が設置されている。照明灯52は、カメラ51による撮影の際に、印刷指U1の爪Tを照明するものである。撮影部50は、このカメラ51及び照明灯52を備えて構成されている。
この撮影部50は、後述する制御装置80の撮影制御部811(
図4参照)に接続され、該撮影制御部811によって制御されるようになっている。
撮影部50によって撮影された画像の画像データは、後述する記憶部82の爪画像記憶領域821に記憶される。
【0032】
本実施形態では、撮像装置としての2つのカメラ51によって少なくとも2つの異なった位置・角度から爪Tを撮影することができ、少なくとも2枚の爪画像が取得される。
そして、これらの爪画像に基づいて、後述する爪情報検出部812が、爪Tの輪郭(爪Tの形状)の他、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(以下「爪Tの傾斜角度」又は「爪曲率」という。)や爪Tの垂直位置等の爪情報を検出できるようになっている。すなわち、例えば、爪Tの真上からの画像と、爪Tの斜め上方向からの画像と、を取り込むことにより、爪Tの輪郭だけでなく、位置、爪Tの表面の傾斜角度を正確に検出することができる。
なお、撮像装置として2つのカメラ51を備え、爪Tの傾斜角度又は爪曲率を検出できるように構成することは必須の構成ではなく、カメラ51を一つだけ備え、爪Tを上方向のみから撮影して爪Tの輪郭(爪Tの形状)を爪情報として検出するようにしてもよい。
【0033】
また、制御装置80は、例えば上部機枠12に配置された基板13等に設置されている。
図4は、本実施形態における制御構成を示す要部ブロック図である。
制御装置80は、
図4に示すように、図示しないCPU(Central Processing Unit)により構成される制御部81と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0034】
記憶部82には、描画装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部82のROMには、爪画像から爪Tの形状や位置、爪Tの曲率等の爪情報を検出するための爪情報検出プログラム、印刷データを生成するための印刷データ生成プログラム、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、これらのプログラムが制御装置80によって実行されることによって、描画装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、本実施形態において記憶部82には、撮影部50によって取得されたユーザの印刷指U1の爪Tの爪画像を記憶する爪画像記憶領域821、爪情報検出部812によって検出された爪情報が記憶される爪情報記憶領域822、爪Tに印刷されるデザイン画像の画像データを記憶するデザイン記憶領域823、デザイン領域設定部816によって設定されたデザイン領域が記憶されるデザイン領域記憶領域824及び背景領域設定部817によって設定された背景領域が記憶される背景領域記憶領域825が設けられている。
なお、画像データには、デザイン要素D1と、このデザイン要素D1の背景となる背景デザインD2とが含まれている(
図6参照)。
【0035】
制御部81は、機能的に見た場合、撮影制御部811、爪情報検出部812、描画データ生成部813、表示制御部814、描画制御部815及びデザイン領域設定部816等を備えている。これら撮影制御部811、爪情報検出部812、描画データ生成部813、表示制御部814、描画制御部815、デザイン領域設定部816及び背景領域設定部817等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82のROMに記憶されたプログラムとの共働によって実現される。
【0036】
撮影制御部811は、撮影部50のカメラ51及び照明灯52を制御してカメラ51により、指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tの画像を撮影させるものである。
本実施形態において、撮影制御部811は、撮影部50のカメラ51及び照明灯52を制御して、印刷指U1の爪Tについて撮影を行い、爪Tの画像を取得する。
【0037】
爪情報検出部812は、カメラ51によって撮影された印刷指U1の爪Tの画像に基づいて、印刷指U1の爪Tについての爪情報を検出するものである。
ここで、爪情報とは、爪Tの輪郭(爪形状と水平位置)、爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置、以下「爪Tの垂直位置」又は単に「爪Tの位置」ともいう。)、爪Tの曲率(爪曲率)であり、爪情報検出部812は、これら爪Tの形状、爪Tの位置、爪Tの曲率を爪情報として検出する。ここで、爪Tの輪郭がなす領域の全体を爪領域(描画領域)とする。
【0038】
具体的には、爪情報検出部812は、カメラ51により取得された印刷指U1の爪Tの爪画像を含む指画像から、爪Tの輪郭(形状や大きさ)、位置を検出し、この輪郭をx,y座標等で表される情報として取得する。爪情報検出部812は、例えば、カメラ51により取得された印刷指U1の爪Tの爪画像を含む指画像から爪Tとそれ以外の指部分との色の違い等に基づいて爪Tの輪郭(形状)を検出するものである。なお、爪情報検出部812が爪Tの輪郭(形状)を検出する手法は特に限定されず、ここに挙げたものに限られない。
また、爪情報検出部812は、カメラ51によって撮影された爪Tの画像に基づいて、爪Tについて爪高さを検出する。ここで、爪高さとは、爪Tの垂直方向の位置である。
さらに、爪情報検出部812は、カメラ51によって撮影された爪Tの画像に基づいて、爪Tについて爪曲率を検出する。爪曲率とは、爪Tの幅方向における曲率である。
例えばカメラ51によって2つの異なる角度から爪Tを撮影させることにより、爪情報検出部812は、爪画像に現われる陰影の変化等から爪Tについての爪高さや爪曲率を推定することができる。
そして、爪情報検出部812は、取得した爪曲率から爪の円弧レベルを複数段階に分類する。円弧レベルを例えば三段階に分類する場合には、曲率が最も小さい範囲のものをレベル1とし、曲率が最も大きい範囲のものをレベル3とし、曲率がこれらの中間の範囲のものをレベル2とする。
なお、爪情報検出部812が爪Tの爪高さや爪曲率を検出する手法は特に限定されず、ここに挙げたものに限られない。
【0039】
描画データ生成部813は、爪情報検出部812により検出された爪情報に基づいて、印刷ヘッド42により印刷指U1の爪Tに施される印刷用のデータを生成する。
具体的には、描画データ生成部813は、爪情報検出部812により検出された爪Tの形状等の爪情報に基づいてデザイン画像の画像データを縮小又は拡大する等による合せ込み処理(フィッティング処理)を行い、爪Tに、背景デザイン上に配置される、少なくとも1つのデザイン要素の印刷を施すための印刷用のデザイン要素データを生成する。
また、描画データ生成部813は、デザイン画像の画像データに基づいて背景データも生成する。この背景データとは、印刷用のデータに基づく画像(デザイン要素)の背景をなすものであり、画像データに含まれる、その領域全体に塗りつぶし領域が配置される背景デザインに基づいて生成される。
【0040】
表示制御部814は、表示部26を制御して表示部26に各種の表示画面を表示させるものである。本実施形態では、表示制御部814は、例えばデザイン画像の選択画面やデザイン確認用のサムネイル画像、印刷指U1を撮影した指画像や指画像に含まれる爪画像、各種の指示画面等を表示部26に表示させるようになっている。
【0041】
描画制御部815は、描画データ生成部813によって生成されたデザイン要素データ及び背景データを描画部40に出力し、爪Tに対してこのデザイン要素データ及び背景データにしたがった印刷を施すように、描画部40のヘッド駆動部49であるX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、筆記具41を上下させるソレノイド440の動作を制御する。
【0042】
背景領域設定部817は、爪情報検出部812で検出された爪領域の全体を背景領域として設定する。
デザイン領域設定部816は、爪情報検出部812で検出された爪領域のうち、幅方向の両縁部側の一部の領域を除いた、残りの領域をデザイン領域として設定する。具体的には、爪領域の幅方向の両端から所定の長さだけ内側の部分を左右の縁部領域とし、その両方の縁部領域を爪領域から除いた領域をデザイン領域とする。ここで、除かれる縁部の、爪領域の幅方向の両端から爪領域の幅方向に沿って内側に向かう方向の幅は爪の形状等により最適な値が決定されるが、例えば100μm〜200μmの範囲に収まる値であることが好ましい。
そして、デザイン領域設定部816は、その爪Tの曲率のレベルに応じて、除かれる縁部領域の幅を決定する。具体的な例としては、レベル1の爪Tに対しては縁部の幅を100μmとし、レベル2の爪Tに対しては縁部の幅を150μmとし、レベル3の爪Tに対しては縁部の幅を200μmとする。
【0043】
次に、本実施形態における描画装置1の動作及び描画制御方法について説明する。
図5は描画制御方法の流れを示すフローチャートである。
【0044】
この描画装置1により印刷を行う場合、ユーザはまず、電源スイッチを入れて制御装置80を起動させる。
次に、ユーザは、印刷指U1を指受入部31に挿入し、非印刷指U2を指退避部32に挿入して、印刷指U1を固定した上で、印刷スイッチを操作する。
印刷スイッチから指示が入力されると、印刷動作を開始する前に、まず撮影制御部811が撮影部50を制御して、照明灯52により印刷指U1を照明しながらカメラ51により印刷指U1を撮影させる。これにより、撮影制御部811は、指受入部31に挿入された印刷指U1の指画像を取得する(ステップS1)。
【0045】
次に、爪情報検出部812は、指画像に基づいて爪Tの輪郭(爪領域)、爪の位置(爪の垂直位置を含む)、爪曲率を検出(算出)し、爪情報を取得する(ステップS2)。
次に、表示制御部814は、表示部26にデザイン選択画面を表示させる。ユーザは操作部25を操作して、デザイン選択画面に表示された複数のデザイン画像の中から所望のデザイン画像を選択し、これにより、操作部25から選択指示信号が出力されて爪Tに印刷すべきデザイン画像が選択される(ステップS3)。
【0046】
図6はデザイン画像の一例を示す説明図であり、(a)はデザイン画像全体を示し、(b)は背景デザインを示し、(c)はデザイン要素を示している。
図6に示すように、デザイン画像Dは、例えば鳥を模した複数のキャラクターからなるデザイン要素D1と、そのデザイン要素D1の背景となり、その領域全体が塗りつぶし領域となっている、背景デザインD2とを含んでおり、これらが一体化された形で画像データとして生成されている。
【0047】
爪情報検出部812により爪情報が検出されると、これらの爪情報に基づいて、背景領域設定部817が爪領域の全体を背景領域として設定する(ステップS4)。
また、その後、爪情報検出部812に検出された爪情報に基づいて、デザイン領域設定部816が、爪情報検出部812で検出された爪領域のうち、幅方向の両縁部を除いた領域をデザイン領域として設定する(ステップS5)。このとき、デザイン領域設定部816は、爪Tの曲率のレベルに応じて、除かれる縁部領域の幅を決定している。
【0048】
図7は、爪Tの背景領域R1と、デザイン領域R2とを模式的に示す説明図である。
図7に示すように、背景領域R1は図中点線で示されており、爪領域の全体に対応している。他方、デザイン領域R2は図中実線で示されており、爪領域の全体から幅方向の両側の縁部領域が除かれている。符号Hは、除かれる縁部領域の幅を示している。
【0049】
次いで、描画データ生成部813は、背景デザインD2が背景領域R1にフィッティングされるように画像データを処理し、背景デザインD2の印刷用のデータ(背景データ)を生成する(ステップS6)。
次いで、描画データ生成部813は、デザイン要素D1がデザイン領域R2にフィッティングされるように画像データを処理し、デザイン要素D1の印刷用のデータ(デザイン要素データ)を生成する(ステップS7)。
つまり、描画データ生成部813が本発明に係る画像データ処理部である。
【0050】
図8は、各領域に各デザインをフィッティングする際のイメージを示す説明図であり、(a)は背景領域R1に背景デザインD2をフィッティングする際のイメージを示し、(b)はデザイン領域R2にデザイン要素D1をフィッティングする際のイメージを示している。
図8(a)に示すように、画像データ中の背景デザインD2に対して背景領域R1を重ね、当該背景領域R1からはみ出る部分を除去することで、背景デザインD2が背景領域R1にフィッティングされる。他方、
図8(b)に示すように、画像データ中のデザイン要素D1に対してデザイン領域R2を重ね、当該デザイン領域R2からはみ出る部分を除去することで、デザイン要素D1がデザイン領域R2にフィッティングされる。
【0051】
次いで、描画制御部815は、背景デザインデータを描画部40に出力し、爪Tに対してこの背景デザインデータにしたがった背景デザインD2を描画する(ステップS8)。具体的には、描画制御部815は、ソレノイド440を駆動させて筆記具41を描画可能状態とするとともに、背景デザインデータに基づいてヘッド駆動部49を動作させ、筆記具41をXY方向に適宜移動させて爪Tに描画を行わせる。このとき、筆記具41は自重により爪Tの表面に押し当てられ、爪Tの表面形状に追従して上下動しながら描画を行う。
【0052】
次いで、描画制御部815は、背景デザインD2が乾燥する時間が経過するまで印刷動作を一時的に停止する(ステップS9)。なお、本実施形態では、単に時間を経過することで背景デザインD2の乾燥を行っているが、例えばファンなどの乾燥手段を設け、その乾燥手段を駆動することによって背景デザインD2の乾燥を行ってもよい。さらに、背景デザインD2用のインクが紫外線硬化型のインクである場合には、乾燥手段としてUV光源を用いることも可能である。
【0053】
次いで、描画制御部815は、デザイン要素データを描画部40に出力し、爪Tに対してこのデザイン要素データにしたがったデザイン要素D1を描画する(ステップS10)。具体的には、描画制御部815は、ソレノイド440を駆動させて筆記具41を描画可能状態とするとともに、デザイン要素データに基づいてヘッド駆動部49を動作させ、筆記具41をXY方向に適宜移動させて爪Tに描画を行わせる。
【0054】
図9は、描画後の爪Tの状態を示す模式図である。
図9に示すように、爪Tの全体(爪領域:背景領域R1)に対しては背景デザインD2が描画されていて、爪Tの幅方向の両縁部が除かれた領域(デザイン領域R2)に対してはデザイン要素D1が描画されている。
【0055】
印刷が完了すると、描画制御部815は、印刷ヘッド42を印刷保守部60の上に移動させ、筆記具41に筆記具キャップ62を取り付けて乾燥を防止する。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、爪領域の全体に背景デザインD2が配置され、爪領域の幅方向の両側の縁部を除いてデザイン要素D1が配置されるので、背景デザインD2よりも細やかなデザイン要素D1は爪領域の両縁部には描画されないこととなる。しかしながら、この縁部領域の幅は100μm〜200μm程度であって、非常に狭い領域であるので、爪領域の縁部領域にデザイン要素D1がなくとも背景さえ塗られていれば見た目上それほど目立つことはない。つまり、このような配置で背景デザインD2とデザイン要素D1とが描画されていれば、爪の幅方向の中央部と、幅方向の両端部分との見た目上の違いは抑制される。
したがって、爪の幅方向の中央部分と、幅方向の両端部分との違いを意識させずにデザイン作成を容易にすることができる。
【0057】
また、指画像から検出された爪領域に基づいて、背景領域R1とデザイン領域R2とが設定されるので、実際の爪Tの形状に対応するように背景領域R1及びデザイン領域R2を設定することができる。
【0058】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、デザイン要素D1と背景デザインD2とが予め画像データに含まれている場合を例示して説明したが、デザイン要素だけからなる画像データに対しても本発明の構成を適用可能である。例えば、画像データに背景デザインが含まれていない場合には、描画データ生成部813は、デザイン要素に基づいて背景デザインを作成する。具体的には、デザイン要素の内容からそれに適した背景色を選択して、当該背景色からなる背景デザインデータを作成する。背景色の選択方法としては、デザイン要素D1の幅方向の縁付近で最も割合多く用いられている色を背景色とする方法や、デザイン要素D1で最も割合多く用いられている色を背景色とする方法、デザイン要素D1で最も割合多く用いられている色を際立たせる色を背景色とする方法などが挙げられる。
なお、描画データ生成部813で背景デザインが作成される場合には、その背景デザインのみ、或いは背景デザインとデザイン要素とを一体化したものを表示部26に表示して、ユーザにその背景デザインを確認させたり、他の色を選択可能としたりすることが好ましい。
【0060】
また、本実施形態では描画装置1としてプロッタ方式のネイルプリント装置を例示して説明したが、インクジェット方式のネイルプリント装置や、これらのハイブリット式のネイルプリント装置であっても本発明の構成を用いることは可能である。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲をその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0062】
〔付記〕
<請求項1>
デザイン画像の画像データの、幅方向に沿って湾曲した描画対象の描画領域へのフィッティングを処理する画像データ処理部と、
前記画像データ処理部による前記画像データの前記描画領域へのフィッティングに基づいて、前記描画領域に画像の描画を施す描画部と、
を備え、
前記画像データ処理部は、
前記画像データに基づいて、前記描画領域全体に塗り潰し領域が配置された背景デザインを形成する背景デザインデータと、前記背景デザイン上に配置される少なくとも1つのデザイン要素を形成するデザイン要素データと、を生成し、
前記背景デザインデータによる前記背景デザインを前記描画領域の全体にフィッティングし、前記デザイン要素データによる前記デザイン要素を、前記描画領域から、該描画領域の幅方向の両側に設定される縁部領域を除いた領域にフィッティングすることを特徴とする描画装置。
<請求項2>
請求項1記載の描画装置において、
前記描画領域を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって取得された画像から、前記描画領域の幅方向の湾曲の程度を検出する情報検出部と、
前記情報検出部により検出された前記描画領域の幅方向の湾曲の程度に基づいて、前記縁部領域の、該描画領域の幅方向の両端から前記描画領域の幅方向に沿って内側に向かう方向の幅を設定する領域設定部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
<請求項3>
請求項1又は2記載の描画装置において、
前記画像データ処理部は、前記デザイン要素データに基づいて前記背景デザインデータを作成することを特徴とする描画装置。
<請求項4>
請求項1〜3のいずれか一項に記載の描画装置において、
前記描画部は、前記描画対象に接触して前記描画領域に前記描画を施す描画用具を有することを特徴とする描画装置。
<請求項5>
請求項1〜4のいずれか一項に記載の描画装置において、
前記描画部は、インクジェット方式により前記描画領域に前記描画を施す印刷ヘッドを有することを特徴とする描画装置。
<請求項6>
デザイン画像に基づいて、描画対象の幅方向に湾曲した描画領域に画像を描画する描画装置の描画制御方法であって、
前記デザイン画像の画像データの、前記描画領域へのフィッティングを処理する画像データ処理ステップと、
前記画像データ処理ステップによる前記画像データの前記描画領域へのフィッティングに基づいて、前記描画領域に画像の描画を施す描画ステップと、
を含み、
前記画像データ処理ステップは、
前記画像データに基づいて、前記描画領域全体に塗り潰し領域が配置された背景デザインを形成する背景デザインデータと、前記背景デザイン上に配置される少なくとも1つのデザイン要素を形成するデザイン要素データと、を生成するデータ生成ステップと、
前記背景デザインデータによる前記背景デザインを前記描画領域の全体にフィッティングし、前記要素デザインデータによる前記デザイン要素を、前記描画領域から、該描画領域の幅方向の両側に設定される縁部領域を除いた領域にフィッティングするフィッティングステップと、
を含むことを特徴とする描画装置の描画制御方法。