(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、現像ローラーや感光体ドラム、定着ローラー等の複数の回転体が設けられている。これらの回転体は一般的に、駆動源であるモーターの出力軸にギアトレインを介して連結されて、駆動源の駆動力が伝達されて回転するようになっている。
【0003】
このようなギアトレインにおいては、ギア間の連結部から発生する騒音(噛み合い音)が問題になる場合がある。特に、近年の画像形成装置の高速化に伴って回転体の回転速度も高速化すると、回転速度に比例して騒音が大きくなる傾向にある。さらに、カラー対応の画像形成装置においては、モノクロ対応の画像形成装置よりも回転体の数が増加し、これに伴いギアトレインの数も増加しているので、騒音の発生箇所も多くなっている。
【0004】
ギア間の連結部から発生する騒音を低減するために、特許文献1には、装置本体の側板との間に空間を形成する駆動カバーを備え、駆動カバーと側板との間に、ギアトレインの各ギアの回転軸を両持ち支持するように構成された画像形成装置が提案されている。また、特許文献2には、遮音壁を有する遮音ケースでギアトレインの外周部を覆った画像形成装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載されている画像形成装置のように、駆動カバーと側板との間の空間にギアトレインを収容するのみでは、遮音効果が十分ではない虞がある。また、駆動カバーと側板との間に各ギアの回転軸を両持ち支持しているので、駆動カバーの構造が複雑化してしまい、製造コストが上昇する。
【0007】
また、特許文献2に記載されている画像形成装置では、ギアの外周部を遮音ケースで覆う構成であり、ギア連結部の手前側に遮音壁が設けられていないため、十分な遮音効果が得られない虞がある。さらに、遮音壁が複数の仕切り壁によって構成されているので、遮音カバーの構造が複雑化して製造コストが上昇する。
【0008】
そこで本発明は上記事情を考慮し、簡易な構成でギアトレインから発生する騒音を静音化した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、連結された複数の駆動力伝達部材を介して駆動源から回転体へ駆動力を伝達するように構成された画像形成装置であって、前記駆動源及び前記回転体が支持される支持部材に設けられ、該支持部材との間に前記駆動力伝達部材を収容する閉空間を形成する駆動ケースを備え、該駆動ケースには、前記駆動力伝達部材の連結部に最も近い部分に、凹部及び凸部の少なくとも一方を有する遮音部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成を採用することにより、ギア等の駆動力伝達部材の連結部から発生する騒音が遮音部の凹部又は凸部に当たって拡散するので、駆動ケースから外部ヘ漏れる騒音を静音化できる。
【0011】
本発明の画像形成装置において、前記駆動力伝達部材の連結部は、前記支持部材の前方に設けられ、前記駆動ケースには、前記駆動力伝達部材の連結部の前方の最も近い部分に、前記遮音部が形成されていることを特徴としても良い。
【0012】
このような構成を採用することにより、使用者が画像形成装置の前方に立って操作する際に、駆動力伝達部材の連結部から前方へ伝わる音を静音化することができるので、使用者が騒音を感じにくくなる。
【0013】
本発明の画像形成装置において、前記遮音部は、前記支持部材に対して後方に投影された投影面内に、前記連結部が含まれるように形成されていることを特徴としても良い。
【0014】
このような構成を採用することにより、連結部から発生して前方に進行する音が確実に遮音部に向かい、遮音部の凹部又は凸部で音を拡散しやすくなるので、より静音化できる。
【0015】
本発明の画像形成装置において、前記遮音部は、前記連結部に向かう方向に凹んだ半球状又は多角錐状の凹部であることを特徴としても良い。
【0016】
このような構成を採用することにより、駆動ケースを簡易な方法で加工して遮音部を形成することができるので、製造コストの上昇を抑えることができる。また、駆動ケースの外側に配置される部品と干渉しないように遮音部を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構造の凹部又は凸部によって遮音部を形成しているので、製造コストの上昇を抑えつつ、駆動力伝達部材の連結部から発生する音の静音化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0020】
まず、
図1を用いてカラープリンター1(画像形成装置)の全体の主な構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るカラープリンターの概略を示す模式図である。以下、
図1における紙面手前側を、カラープリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きは、プリンター1の正面から見た方向を基準として説明する。
【0021】
カラープリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えている。プリンター本体2の下部には、給紙カセット3から用紙を給紙する給紙部4が設けられており、プリンター本体2の上部には排紙トレイ5が設けられている。プリンター本体2の内部において、上方には、それぞれ異なる色(例えば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色)のトナーを収容したトナーコンテナ6が配置されている。トナーコンテナ6の下方には、中間転写ベルト7が複数のローラー間に架設されている。中間転写ベルト7の一端(
図1の右端)には、二次転写部8が形成されており、中間転写ベルト7の下方には、4個の画像形成部10がトナーの色ごとに設けられている。
【0022】
画像形成部10には、像担持体である感光体ドラム11が回転可能に設けられている。感光体ドラム11の周囲には、帯電装置12と、現像装置13と、転写ローラー14と、クリーニング装置15、除電装置16とが、感光体ドラム11の回転方向に沿って順に配置されている。さらに、各画像形成部10の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光装置17が配置されている。また、画像形成部10の右側の上方には定着装置18が設けられている。定着装置18の上方には、排紙トレイ5に面した用紙排出部19が設けられている。
【0023】
また、プリンター本体2の内部には、給紙部4から、二次転写部8、定着装置18を通って用紙排出部19へ向かって縦方向に延びる用紙の主搬送経路20が設けられている。
【0024】
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作を説明する。プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力されると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0025】
まず、帯電装置12によって感光体ドラム11の表面が帯電された後、露光装置17からのレーザー光(
図1の鎖線p参照)により感光体ドラム11に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム11の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置13により対応する色のトナー像に現像される。トナー像は、転写ローラー14によって中間転写ベルト7の表面に一次転写される。以上の動作を各画像形成部10が順次繰り返すことによって、中間転写ベルト7上にフルカラーのトナー像が形成される。なお、感光体ドラム11上に残留したトナー及び電荷は、クリーニング装置15及び除電装置16によって除去される。
【0026】
一方、給紙部4によって給紙カセット3又は手指しトレイ(図示省略)から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて二次転写部8へと搬送され、二次転写部8において、中間転写ベルト7上のフルカラーのトナー像が用紙に二次転写される。トナー像を二次転写された用紙は、主搬送経路20を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、用紙排出部19から排紙トレイ5上に排出される。
【0027】
このようなカラープリンター1においては、感光体ドラム11や、現像装置13に備えられた現像ローラー、定着装置18に備えられた定着ローラー、給紙部4に備えられた給紙ローラー等の回転体には、連結された複数の駆動力伝達部材を介して、モーター等の駆動源から駆動力が与えられる。
【0028】
図2及び
図3を参照して、連結された複数の駆動力伝達部材を介して駆動源から回転体へ駆動力を伝達する機構について説明する。
図2は回転体と駆動源と駆動力伝達部材を示す側面図であり、
図3は駆動力伝達部材を示す正面図である。プリンター本体2は、前後方向に対向して配置された前側板(図示省略)と後側板2a(支持部材)とを有し、駆動力伝達機構30は、後側板2aに支持されている。
【0029】
駆動力伝達機構30は、回転力(駆動力)を発生するモーター31(駆動源)と、回転力が伝達される出力軸33と、モーター31の回転力を出力軸33に伝達するモーター軸ギア35と出力ギア36及び中間ギア37(駆動力伝達部材)と、各ギアを収容する駆動ケース39と、を備える。
【0030】
モーター31は、回転軸31aが前方を向く姿勢でモーター取り付け板41にビスB1で固定されている。モーター取り付け板41は、モーター31の回転軸31aが、後側板2aに形成された貫通孔2bから前方に突き出るように、後側板2aの後側の面にビスB2で固定されている。モーター31の回転軸31aには、モーター軸ギア35が同軸上に設けられている。
【0031】
出力軸33は、後側板2aの前方において、前後方向に延びる軸を中心として回転可能に軸受43を介して後側板2aに支持されている。出力軸33には、出力ギア36が同軸上に設けられている。
【0032】
中間ギア37は、後側板2aの前方に配置されており、同軸上に設けられた回転軸37aが前後方向に延びる軸を中心として回転可能に軸受45を介して後側板2aに支持されている。中間ギア37は、真上よりもやや右寄りの位置でモーター軸ギア35と噛み合い(連結され)、真上よりもやや左寄りの位置で出力ギア36と噛み合う(連結される)ように設けられている。したがって、出力軸33には、モーター軸ギア35と中間ギア37と出力ギア36とを介して、モーター31の回転力が減速されて伝達される。
【0033】
駆動ケース39は、後側の面が開口した直方体状の箱状の部材であり、前板39aと、上下方向に及び左右方向に対向する側板39bと、を有する。駆動ケース39は、前板39aが後側板2aと平行となる姿勢で、後側板2aの前側の面に対向してビス等によって固定される。これによって、駆動ケース39と後側板2aとの間に直方体状の閉空間Sが形成される。駆動ケース39は、例えば、樹脂で形成される。
【0034】
駆動ケース39と後側板2aとの間に形成された閉空間Sには、モーター軸ギア35と中間ギア37と出力ギア36とが収容されている。駆動ケース39の前板39aには、出力軸33が貫通する貫通孔(図示省略)が形成されている。貫通孔から突き出た出力軸33には、例えば、現像装置13の現像ローラー等の回転体47がカップリング48を介して接続されている。
【0035】
駆動ケース39の前板39aには、モーター軸ギア35と中間ギア37との噛み合い部G1(連結部)と、中間ギア37と出力ギア36との噛み合い部G2(連結部、
図3参照、
図2には図示省略)と、の前方(連結方向と交差する方向)の部分に、それぞれ遮音部50が形成されている。各遮音部50には、後方に凹んだ半球状の凹部51、52が形成されている。
図3に示されるように、各凹部51、52は、後側板2aに対して後方に投影された投影面(
図3の二点鎖線で囲んだ範囲)内に、モーター軸ギア35と中間ギア37との噛み合い部G1の全範囲と、中間ギア37と出力ギア36との噛み合い部G2の全範囲と、がそれぞれ含まれるように形成されている。特には、凹部51、52は、投影面の中心に、各噛み合い部G1、G2が位置するように形成されている。
【0036】
上記構成を有する駆動力伝達機構30においては、モーター31が駆動されると、モーター軸ギア35と中間ギア37と出力ギア36とを介して出力軸33が回転する。この際、モーター軸ギア35と中間ギア37との噛み合い部G1及び中間ギア37と出力ギア36とのG2から、噛み合い音が発生する。
【0037】
噛み合い部G1で発生した噛み合い音の進行について
図4を参照して説明する。
図4は、噛み合い音の進行を説明する側面図である。
図4の矢印Aで示されるように、噛み合い部G1から前方に進行した噛み合い音は、駆動ケース39の遮音部50において、凹部51、52の後側の面に当たる。そして、一部は閉空間S内に反射し(
図4の矢印B参照)、一部は前板39aに吸収される。また、一部は前板39aを透過する。透過した音は、凹部51、52の前側の面から、
図4の矢印Cで示されるように進行する。すなわち、凹部51、52の前側の面から直進するだけでなく、様々な方向に拡散する。これにより、各噛み合い部G1、G2から発生する噛み合い音は、遮音部50を通過することによって静音化される。
【0038】
上記説明したように本実施形態に係る駆動力伝達機構30においては、噛み合い部G1、G2の前方に遮音部50を形成したので、噛み合い部G1、G2から前方へ進行する音が遮音部50に設けた凹部51、52において拡散される。これにより、駆動ケース39から外部へ漏れる音を静音化でき、特に前方へ向かう音を静音化できる。カラープリンター1を操作する際、使用者はカラープリンター1の前方に立つ場合が多いので、カラープリンター1の前方へ伝わる噛み合い音を静音化することによって、使用者が騒音を感じにくくなる。
【0039】
また、遮音部50は、噛み合い部G1、G2のそれぞれの全範囲を含むように形成されているので、噛み合い部G1、G2から発生する噛み合い音の前方への進行方向のほぼ全域に対して、凹部51、52による拡散作用を与えることができ、より確実に静音化できる。
【0040】
さらに、遮音部50を半球状の凹部51、52とすることにより、駆動ケース39を簡易な加工によって形成することができる。また、専用の部材を別途設ける必要もない。したがって、駆動ケース39の量産性を向上させることができ、製造コストを低減できる。このため、特に回転体を多く備えたカラープリンター1に有効である。なお、凹部51、52の形状は四角錐や三角錐等の多角錐状でもよい。また、駆動ケース39の前板39aから前方へ突出する中空の凸部を形成してもよい。ただし、凸部を形成した場合は、駆動ケース39の前方に配置される回転体47等の部品と干渉する虞があるので、後方へ凹んだ凹部を形成することが好ましい。あるいは、一か所の遮音部50に、凹部や凸部を複数個形成してもよい。
【0041】
また、遮音部50は、モーター軸ギア35と中間ギア37との噛み合い部G1の一箇所だけに設けても良い。モーター軸ギア35は回転速度が速いので、モーター軸ギア35と中間ギア37との噛み合い部G1から発生する噛み合い音は、他の噛み合い部G2から発生する噛み合い音よりも大きい。このため、モーター軸ギア35と中間ギア37との噛み合い部G1のみに遮音部50を形成しても、十分な静音効果を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、モーター軸ギア35と出力ギア36との間に一つの中間ギア37が設けられている駆動力伝達機構30について説明したが、モーター軸ギア35と出力ギア36との間に介装される中間ギア37は複数個であってもよい。この場合は、駆動ケース39は、全ての中間ギア37とモーター軸ギア35及び出力ギア36が収容されるように形成される。
【0043】
また、本実施形態では、モーター31や出力軸33が後側板2aに支持されている場合について説明したが、モーター31や出力軸33は、プリンター本体2の左右方向において対向する左右の側板に支持されてもよい。この場合は、駆動ケース39において、噛み合い部G1、G2から最も近い部分に遮音部50を形成することで、駆動ケース39から漏れる音を静音化することができる。
【0044】
また、本実施形態では駆動力伝達部材がギアの場合について説明したが、他にプーリーやタイミングベルトを使用することができる。タイミングベルトの場合は、タイミングベルトが巻き回されるプーリーとギア等の噛み合い部に対向する部分に遮音部50を形成する。
【0045】
さらに、本発明の実施形態では、カラープリンター1に本発明の構成を適用した場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、複合機等のカラープリンター1以外の画像形成装置に本発明の構成を適用しても良い。
【0046】
さらに、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係る画像形成装置における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。