(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定スクロールが一体化された第1ハウジング構成部材と、複数の連結部材により前記第1ハウジング構成部材に連結された第2ハウジング構成部材とを有して、スクロール圧縮機構部を収容するハウジングが構成されており、
取付対象に連結する取付脚が、前記第2ハウジング構成部材から前記第1ハウジング構成部材の軸方向に対して径方向外側まで延在しており、
前記複数の連結部材の少なくとも一つは、前記取付脚の根元に配置されており、
前記取付脚には、前記第1ハウジング構成部材の軸方向に対する径方向に沿って前記第1ハウジング構成部材の外周面から離れる方向に凹む逃がし部が設けられているスクロール型圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、スクロール型圧縮機の一実施形態について説明する。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジング11は、有底円筒状であるセンターハウジング(シェル)12の一端に有蓋円筒状のフロントハウジング21が連結されるとともに、センターハウジング12の他端に有蓋円筒状のリヤハウジング60が連結されて構成されている。
【0014】
第1ハウジング構成部材としてのセンターハウジング12は、フロントハウジング21側に開口しており、その内部に固定スクロール13が一体形成されている。固定スクロール13は、センターハウジング12の底壁を形成する円板状の固定側基板13aと、固定側基板13aからフロントハウジング21に向けて立設された固定側渦巻壁13bとから構成されている。
【0015】
図2及び
図3に示すように、センターハウジング12の外周面におけるフロントハウジング21側の端部には、ハウジング11の軸方向に直交する方向であるハウジング11の径方向に沿ってセンターハウジング12の外周面から離れる方向に突出する第1フランジ14が設けられている。本実施形態において、第1フランジ14は、センターハウジング12の外周面全周に亘って設けられる環状のフランジではなく、センターハウジング12の外周面の一部から突出するフランジであり、四箇所に設けられている。第1フランジ14には、センターハウジング12の軸方向に沿って延びる第1ボルト穴15及び第1ピン穴16が設けられている。第1ボルト穴15の内周面には、雌ネジが形成されている。第1ボルト穴15及び第1ピン穴16は、第1フランジ14におけるフロントハウジング21側の端面から凹設されている。
【0016】
センターハウジング12の周方向に隣り合う第1フランジ14同士の間隔は、非均一であり、各第1フランジ14は、センターハウジング12の外周面上で周方向に互いに隣り合う両隣の第1フランジ14のうち、一方に隣り合う第1フランジ14との間隔が、他方に隣り合う第1フランジ14との間隔よりも短い。センターハウジング12の径方向のうち、1つの方向を第1方向D1とし、この第1方向D1に直交する方向を第2方向D2としたときに、センターハウジング12において、第1方向D1の両端側となる位置に第1フランジ14が一対ずつ配置されている。また、第1フランジ14は、第2方向D2の両端に位置する外形線の範囲内に収まるように設けられている。
【0017】
図1及び
図4に示すように、第2ハウジング構成部材としてのフロントハウジング21の外周面におけるセンターハウジング12側の端部には、フロントハウジング21の径方向に沿って外周面から離れる方向に突出する一対の第2フランジ22及び一対の取付脚25が設けられている。第2フランジ22と取付脚25は、フロントハウジング21の外周面上で、周方向に交互に配置されている。
【0018】
本実施形態において、第2フランジ22は、第1フランジ14と同様に、フロントハウジング21の外周面の一部から突出するフランジである。第2フランジ22には、フロントハウジング21の軸方向に沿って延びる第2ボルト孔23及び第2ピン穴24が設けられている。
【0019】
取付脚25は、フロントハウジング21の径方向に沿ってフロントハウジング21の外周面から離れる方向に延びる支持部26に支持されている。すなわち、支持部26は、フロントハウジング21から延びる取付脚25の根元となる。支持部26には、フロントハウジング21の軸方向に沿って延びる第2ボルト孔27及び第2ピン穴28が設けられている。第2フランジ22及び支持部26のそれぞれに設けられた第2ボルト孔23,27及び第2ピン穴24,28同士の間隔は、第1フランジ14に設けられた第1ボルト穴15及び第1ピン穴16同士の間隔と同一となっている。このため、2つの第1フランジ14と第2フランジ22、残り2つの第1フランジ14と支持部26とを重ね合わせたときには、第1ボルト穴15と第2ボルト孔23,27が連通し、第1ピン穴16と第2ピン穴24,28とが連通する。
【0020】
取付脚25は、フロントハウジング21の軸方向に沿って、フロントハウジング21から離れるように支持部26から立設している。取付脚25は、フロントハウジング21の軸方向に沿ってリヤハウジング60から見てU字状である。取付脚25は、U字のうち互いに対向する部位を形成する第1壁部29及び第2壁部30と、それらを繋ぐ部位を形成する第3壁部31とを有する。取付脚25において、第1壁部29及び第2壁部30は、第3壁部31からフロントハウジング21の軸線に向けて延びる。第1壁部29、第2壁部30及び第3壁部31に囲まれる領域は、センターハウジング12の径方向に沿ってセンターハウジング12の外周面から離れる方向に凹んでおり、逃がし部32として機能している。逃がし部32内には、第3壁部31に沿って第4壁部33が立設している。第4壁部33は、第3壁部31に比べて、立設方向の寸法が短く、これにより、逃がし部32内には、段差が形成されている。
【0021】
第1壁部29及び第2壁部30には、互いに対向する方向に貫通する貫通孔34が設けられている。貫通孔34は、第4壁部33と対向しない位置に設けられている。この貫通孔34には、図示しない取付ボルトが挿通され、この取付ボルトによって取付脚25が取付対象(例えば、車両のエンジンなど)に連結され、ハウジング11と取付対象が連結される。
【0022】
第1壁部29と第2壁部30との対向方向を第3壁部31の幅方向とすると、支持部26に設けられた第2ボルト孔27及び第2ピン穴28は、第3壁部31の幅内に設けられている。また、第2ピン穴28の一部は、逃がし部32内に位置している。
【0023】
図2及び
図3に示すように、センターハウジング12と、フロントハウジング21とは、第1フランジ14と第2フランジ22、及び、第1フランジ14と支持部26とを連結部材としてのボルト41及び連結部材としてのピン(平行ピン)42によって一体に固定することで連結されている。したがって、本実施形態では、取付脚25の根元である支持部26は、第2フランジとしても機能している。
【0024】
センターハウジング12とフロントハウジング21との連結は、第1ピン穴16(又は第2ピン穴24,28)に挿入されたピン42を第2ピン穴24,28(又は第1ピン穴16)に挿入することでセンターハウジング12とフロントハウジング21との位置決めを行った状態で行われる。ピン42による位置決めが行われた後には、第2ボルト孔23,27から挿入したボルト41を第1ボルト穴15に螺合することで固定が行われる。ボルト41及びピン42は、軸方向がハウジング11の軸方向に沿う状態に設けられている。
【0025】
センターハウジング12とフロントハウジング21とが固定された状態では、取付脚25は、センターハウジング12の外方まで延在しており、センターハウジング12の外周面と対向している。また、取付脚25は、センターハウジング12を介して、固定側渦巻壁13bの外周面と対向している。逃がし部32は、センターハウジング12の外周面に向けて開口している。また、第1フランジ14は、逃がし部32内にその一部が位置している。同様に、ピン42は、逃がし部32内にその一部が位置している。
【0026】
リヤハウジング60は、センターハウジング12側の端部とは反対側の端部の端面から挿通された固定ボルトB1が、センターハウジング12に螺合されることでセンターハウジング12と連結されている。
【0027】
図1に示すように、センターハウジング12内には、可動スクロール51が収容されている。可動スクロール51は、円板状をなす可動側基板51aと、可動側基板51aから固定側基板13aへ向かって立設される可動側渦巻壁51bとから構成されている。固定スクロール13と可動スクロール51とは対向配置されている。固定側渦巻壁13bと可動側渦巻壁51bとは互いに噛み合わされている。固定側渦巻壁13bの先端面は可動側基板51aに接触しているとともに、可動側渦巻壁51bの先端面は固定側基板13aに接触している。そして、固定側基板13a及び固定側渦巻壁13bと、可動側基板51a及び可動側渦巻壁51bとによって圧縮室17が区画されている。本実施形態において、固定スクロール13及び可動スクロール51によって、冷媒ガスを圧縮するスクロール圧縮機構部Cが構成されている。
【0028】
フロントハウジング21には、回転軸52の大径部52aがラジアルベアリング53を介して回転可能に支持されている。回転軸52の小径部52bの先端には、動力伝達機構PTを介して外部駆動源としての車両のエンジンEが作動連結されている。回転軸52の大径部52aにおいて、可動スクロール51側の端面52cには、回転軸52の回転軸線に対して偏心した位置から可動スクロール51に向けて突出する偏心軸54が一体形成されている。
【0029】
偏心軸54にはバランスウエイト55及びブッシュ56が相対回転可能に支持されている。ブッシュ56には、可動スクロール51が固定スクロール13と対向するようにベアリング57を介して相対回転可能に支持されている。
【0030】
固定側基板13aには、吐出ポート13cが形成されるとともに、吐出ポート13cは圧縮室17に連通している。この吐出ポート13cは、固定側基板13aに固定された吐出弁58によって開閉されるとともに、吐出弁58は固定側基板13aに固定されたリテーナ59によって開度が規制される。
【0031】
吐出ポート13cは、センターハウジング12とリヤハウジング60によって区画された吐出室61に連通している。センターハウジング12の外周壁と可動スクロール51の可動側渦巻壁51bの最外周部との間には、スクロール圧縮機構部Cの吸入側となる吸入室62が区画形成されている。すなわち、ハウジング11内では、吸入室62は、スクロール圧縮機構部Cの外周側に配置されている。また、センターハウジング12の外周壁には、吸入室62に連通する吸入口12aが形成されている。
【0032】
可動側基板51aとフロントハウジング21との間には、自転阻止機構63が配設されている。自転阻止機構63は、可動側基板51aにおける可動側渦巻壁51bとは反対側の端面の外周部に複数設けられた円孔状の凹部51cと、フロントハウジング21における可動側基板51aと対向する側の端面の外周部に突設された自転阻止ピン64と、各凹部51cに嵌着されたリング部材65とから構成されている。各リング部材65内には自転阻止ピン64が挿入されている。そして、回転軸52及び偏心軸54の回転に伴い、可動スクロール51が公転し、吸入口12aから吸入室62に吸入された冷媒は、固定側基板13aと可動側基板51aとの間へ流入する。可動スクロール51の公転に伴い、自転阻止ピン64の周面がリング部材65の内周面に沿って摺接し、可動スクロール51は、自転することなく公転する。圧縮室17は、可動スクロール51の公転に伴って容積減少しつつ両スクロール13,51の渦巻壁13b,51bの内終端部間に向けて収束していく。圧縮室17の容積減少によって圧縮された冷媒ガスは、吐出ポート13cから吐出室61へ吐出される。
【0033】
次に、本実施形態のスクロール型圧縮機10の作用について説明する。
取付脚25を避けた位置に第2フランジ22を設け、フロントハウジング21の外周面から突出する部材が、4つの第2フランジ22及び2つの取付脚25となるハウジングを想定する。この場合、取付脚25を避けた位置に第2フランジ22を設けようとすると、
図3に二点鎖線で示すように、第2フランジ22が、第2方向D2の外形線から突出する。スクロール型圧縮機10が取り付けられる取付対象の制約上、第2方向D2の両端に位置する外形線から突出することなく第2フランジ22を設けることが望まれる場合もある。本実施形態では、支持部26に連結部材を配置することで、取付脚25を避けた位置に設けられる第2フランジ22の数を減らすことができ、第2フランジ22が第2方向D2の両端に位置する外形線から突出することを抑制している。
【0034】
また、連結部材を支持部26に配置することで、支持部26に配置された連結部材は、取付脚25よりも突出しない。
更に、取付脚25は、逃がし部32がハウジング11の外周面に向けて開口しており、この逃がし部32内に連結部材が位置している。これにより、連結部材と取付脚25との干渉を抑制している。また、連結部材が、逃がし部32内に位置していない場合であっても、第1フランジ14側からボルト41を締結する場合には、取付脚25とハウジング11の外周面との間でボルト41を締結するための器具を用いてボルト41の締結作業を行う必要がある。このため、逃がし部32を設けることで、ボルト41を締結するための器具と取付脚25との干渉を抑制することができる。
【0035】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)一部のボルト41、及び、一部のピン42は、取付脚25の根元である支持部26に配置されている。ボルト41及びピン42が設けられている位置に取付脚25を設けているため、全てのボルト41とピン42を支持部26以外の位置に配置した場合に比べて、スクロール型圧縮機10のハウジング11の径方向への大型化が抑制されている。
【0036】
(2)取付脚25には、逃がし部32が設けられているため、この逃がし部32によって、ボルト41及びピン42と取付脚25との干渉が抑制されている。また、ボルト41を締結するための器具と取付脚25との干渉も抑制されている。
【0037】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図5に示すように、取付脚25は、連結部材を間に挟むように分割されていてもよい。詳細にいえば、取付脚25は、実施形態における間隔を空けて対向する第1壁部29及び第2壁部30を有していればよく、第1壁部29及び第2壁部30を繋ぐ第3壁部31及び第4壁部33を有していなくてもよい。この場合であっても、連結部材と取付脚25との干渉を抑止することができる。
【0038】
○取付脚25には、逃がし部32が設けられていなくてもよい。また、第4壁部33は設けられていなくてもよい。すなわち、取付脚25の形状は、スクロール型圧縮機10を取付対象に取り付けることができればどのような構造でもよく、実施形態の形状に限られない。
【0039】
○実施形態では、支持部26を第2フランジ22として兼用したが、これに限られない。例えば、第2フランジ22と支持部26とを別に設けて、第2フランジ22が取付脚25とハウジング11の外周面との間に位置するようにしてもよい。
【0040】
○第2フランジ22の個数は、スクロール型圧縮機10の取り付け対象の制約の範囲内で適宜変更してもよい。同様に、第1フランジ14の個数は、第2フランジ22の個数に合わせて適宜変更してもよい。
【0041】
○取付脚25の個数は、スクロール型圧縮機10の取り付け対象の制約の範囲内で適宜変更してもよい。
○ピン42を設けることなく、治具などによってセンターハウジング12とフロントハウジング21とを位置決めした状態で、ボルト41を締結してもよい。この場合、ボルト41のみが連結部材となる。
【0042】
○ボルト41は、逃がし部32内に位置していてもよい。
○全てのボルト41及びピン42が、支持部26に配置されていてもよい。
○ボルト41は、第1フランジ14から第2フランジ22及び支持部26に向けて挿通され、第2フランジ22に螺合されてもよい。
【0043】
○電動モータの駆動力によって回転軸52を回転駆動させるようにしてもよい。
○取付脚25は、リヤハウジング60の外周面からセンターハウジング12の外周面まで延在してもよい。この場合、第2ハウジング構成部材は、リヤハウジング60となる。
【0044】
○第1ボルト穴15を貫通したボルト41にナットを螺合することでセンターハウジング12とフロントハウジング21を連結してもよい。
○各ハウジング構成部材は、筒状であればよく、四角筒状などでもよい。
【0045】
次に、上記実施形態及び変形例から把握することができる技術的思想について追記する。
(イ)前記第1ハウジング構成部材には、第1フランジが設けられ、前記第2ハウジング構成部材には、第2フランジが設けられている請求項1
又は請求項2に記載のスクロール型圧縮機。