(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとの混合物に対して、前記第3領域よりも前記第4領域の方の紫外線強度または紫外線積算量が多くなるようにして紫外線を照射することにより形成されたものである
請求項1に記載の照明装置。
前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとの混合物に対して、前記第3領域よりも前記第4領域の方が紫外線透過率の高いグレーマスクを介して紫外線を照射することにより形成されたものである
請求項2に記載の照明装置。
前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとの混合物に対して、前記第3領域よりも前記第4領域の方の紫外線強度または紫外線積算量が多くなるように紫外域のLED光を照射することにより形成されたものである
請求項2に記載の照明装置。
前記第1配向膜および前記第2配向膜の配向方向は、前記第3領域において前記端面と交差する方向を向いており、前記第4領域において前記端面と平行な方向を向いている
請求項7に記載の照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(照明装置)
2つの水平配向膜(0°配向)が用いられている例
高分子領域の割合が光源からの距離に応じて異なる光変調層が
用いられている例
2.第2の実施の形態(照明装置)
水平配向膜(0°配向)と、垂直配向膜および水平配向膜(0°配向
)の混合膜が用いられている例
3.第3の実施の形態(照明装置)
2つの水平配向膜(0°配向,θ1配向)が用いられている例
4.第4の実施の形態(照明装置)
水平配向膜(0°配向,θ1配向)と、水平配向膜(0°配向)が
用いられている例
5.第5の実施の形態(照明装置)
高分子領域の材料が光源からの距離に応じて異なる光変調層が
用いられている例
6.第6の実施の形態(照明装置)
高分子領域の配向性が光源からの距離に応じて異なる光変調層が
用いられている例
7.変形例(照明装置)
8.第7の実施の形態(表示装置)
【0016】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1は、本技術の第1の実施の形態に係る照明装置1の断面構成の一例を表したものである。
図2は、
図1の照明装置1内の光変調素子30の概略構成の一例を表す断面図である。なお、
図1、
図2は、模式的に表したものであり、実際の寸法や形状と同一であるとは限らない。照明装置1は、上面から照明光を出力するものであり、例えば、液晶表示パネルなどを背後から照明する用途などに使用されるものである。照明装置1は、例えば、導光板10と、導光板10の側面に配置された光源20と、導光板10の背後に配置された光変調素子30および反射板40と、光変調素子30を駆動する駆動回路50とを備えている。
【0017】
導光板10は、導光板10の側面に配置した光源20からの光を照明装置1の上面に導くものである。導光板10は、導光板10の上面に配置される表示パネル(図示せず)に対応した形状、例えば、上面、下面および側面で囲まれた直方体状となっている。なお、以下では、導光板10の側面のうち光源20からの光が入射する側面を光入射面10Aと称するものとする。導光板10は、例えば、上面および下面の少なくとも一方の面に、所定のパターン化された形状を有しており、光入射面10Aから入射した光を散乱し、均一化する機能を有している。導光板10は、例えば、表示パネルと照明装置1との間に配置される光学シート(例えば、拡散板、拡散シート、レンズフィルム、偏光分離シートなど)を支持する支持体としても機能する。導光板10は、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)やアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの透明熱可塑性樹脂を含んで構成されている。
【0018】
光源20は、導光板10の側面に光を照射するものである。光源20は、線状光源であり、具体的には、複数のLEDを一列に配置したもので構成されている。LEDは、ホワイトLEDであることが好ましい。なお、複数のLEDが、例えば、赤色LED、緑色LEDおよび青色LEDを含んで構成されていてもよい。光源20は、例えば、
図1に示したように、導光板10の一の側面にだけ設けられている。なお、光源20は、例えば、図示しないが、導光板10の両側面に設けられていてもよい。
【0019】
反射板40は、導光板10の背後から光変調素子30を介して漏れ出てきた光を導光板10側に戻すものであり、例えば、反射、拡散、散乱などの機能を有している。これにより、光源20からの射出光を効率的に利用することができ、また、正面輝度の向上にも役立っている。この反射板40は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)や銀蒸着フィルム、多層膜反射フィルム、白色PETなどからなる。
【0020】
光変調素子30は、本実施の形態において、導光板10の背後(下面)に空気層を介さずに密着しており、例えば接着剤(図示せず)を介して導光板10の背後に接着されている。光変調素子30は、例えば、
図2に示したように、透明基板31、下側電極32、配向膜33、光変調層34、配向膜35、上側電極36および透明基板37を反射板40側から順に配置されたものである。
【0021】
透明基板31,37は、離間して互いに対向配置されたものである。透明基板31,37は、光変調層34を支持するものであり、一般に、可視光に対して透明な基板、例えば、ガラス板や、プラスチックフィルムによって構成されている。下側電極32は、透明基板31のうち透明基板37との対向面上に設けられたものである。下側電極32および上側電極36は、例えば、透明な導電性材料、例えば、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなる。透明な導電性材料は、可能な限り可視光の吸収が小さい材料であることが好ましい。
【0022】
下側電極32は、例えば、面内の一の方向に延在する帯状の複数の部分電極32Aを互いに並列配置したものである。上側電極36は、透明基板37のうち透明基板31との対向面上に設けられたものである。上側電極36は、例えば、面内の一の方向であって、かつ部分電極32Aの延在方向と交差(直交)する方向に延在する帯状の複数の部分電極36Aを互いに並列配置したものである。
【0023】
下側電極32および上側電極36のパターンは、駆動方式に依存するものである。例えば、これらが上述したような帯状の部分電極を並列配置したものとなっている場合には、例えば、各部分電極は単純マトリクス駆動され得る。一方の電極がシート状(ベタ膜)となっており、他方の電極が微小な方形状となっている場合には、例えば、各電極はアクティブマトリクス駆動され得る。また、一方の電極がシート状(ベタ膜)となっており、他方の電極が細かな引出線のついたブロック状となっている場合には、例えば、それぞれの分割ブロックがセグメント方式で駆動され得る。
【0024】
下側電極32および上側電極36を光変調素子30の法線方向から見たときに、光変調素子30のうち下側電極32および上側電極36が互いに対向する箇所に対応する部分が光変調セル30−1を構成している。各光変調セル30−1は、下側電極32および上側電極36に所定の電圧を印加することにより別個独立に駆動することの可能なものであり、下側電極32および上側電極36に印加される電圧値の大きさに応じて、光源20からの光に対して透明性を示したり、散乱性を示したりする。なお、透明性、散乱性については、光変調層34を説明する際に詳細に説明する。
【0025】
配向膜33,35は、光変調層34を挟み込むように配置されている。配向膜33,35は、例えば、光変調層34に用いられる液晶やモノマーを配向させるものである。配向膜の種類としては、例えば、垂直配向膜および水平配向膜があるが、本実施の形態では、配向膜33,35には水平配向膜が用いられる。配向膜33,35に用いられる水平配向膜は、ともに、
図3に示したように、光入射面10A(または線状光源)と平行または略平行な方向に配向方向を有している。配向膜33,35に用いられる水平配向膜が、ラビング処理を用いて形成されたものである場合、配向膜33,35のラビング方向は、光入射面10A(または線状光源)と平行な方向を向いている。
【0026】
水平配向膜としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコールなどをラビング処理することにより形成された配向膜、転写やエッチングなどにより溝形状が付与された配向膜が挙げられる。また、水平配向膜としては、例えば、酸化ケイ素などの無機材料を斜方蒸着することにより形成された配向膜、イオンビーム照射により形成されたダイヤモンドライクカーボン配向膜、電極パターンスリットの形成された配向膜が挙げられる。透明基板31,37としてプラスチックフィルムを用いる場合には、製造工程において、透明基板31,37の表面に配向膜33,35を塗布した後の焼成温度ができるだけ低いことが好ましいことから、配向膜33,35として、100℃以下の温度で形成可能なポリアミドイミドを用いることが好ましい。
【0027】
なお、水平配向膜として、当該水平配向膜に接する液晶分子にプレチルトを付与する機能を有するものが用いられていることが好ましい。水平配向膜にプレチルト機能を発現させる方法としては、例えば、ラビングなどが挙げられる。プレチルトとは、例えば、配向膜に近接する液晶分子の長軸が「配向膜の表面と平行な面」または「配向膜の法線」と僅かな角度で交差することを意味している。上記の水平配向膜は、例えば、当該水平配向膜に近接する液晶分子の長軸を光入射面10Aと平行な面内であって、かつ当該水平配向膜の表面と僅かな角度で交差させる機能を有していることが好ましい。そのような機能を有する水平配向膜は、例えば、ラビング方向を光入射面10Aと平行にすることで実現することができる。
【0028】
配向膜33,35に用いられる水平配向膜は、液晶とモノマーを配向させる機能があれば十分であり、通常の液晶ディスプレイに要求される電圧の繰り返し印加による信頼性などは必要ない。デバイス作成後の電圧印加による信頼性は、モノマーを重合したものと液晶との界面で決まるためである。また、配向膜を用いなくても、例えば、下側電極32および上側電極36間に電場や磁場を印加することによっても、光変調層34に用いられる液晶やモノマーを配向させることが可能である。つまり、下側電極32および上側電極36間に電場や磁場を印加しながら、紫外線照射して電圧印加状態での液晶やモノマーの配向状態を固定させることができる。配向膜の形成に電圧を用いる場合には、配向用と駆動用とで別々の電極を形成するか、液晶材料に周波数によって誘電率異方性の符号が反転する二周波液晶などを用いることができる。また、配向膜の形成に磁場を用いる場合、配向膜として磁化率異方性の大きい材料を用いることが好ましく、例えば、ベンゼン環の多い材料を用いることが好ましい。
【0029】
光変調層34は、電場の大きさに応じて、光源20からの光に対して全体的もしくは部分的に散乱性もしくは透明性を示すものである。光変調層34は、例えば、部分電極32Aおよび部分電極36A間に電圧が印加されていない時(以下、単に「電圧無印加時」と称する。)に光源20からの光に対して透明性を示すようになっている。光変調層34は、さらに、例えば、部分電極32Aおよび部分電極36A間に電圧が印加されている時(以下、単に「電圧印加時」と称する。)に光源20からの光に対して散乱性を示すようになっている。本明細書において、「電圧無印加時」とは、光変調層34が散乱性を示す電圧よりも小さな電圧であって、かつ光変調層34が透明性を示す電圧が印加されている時も含む概念である。本明細書において、「電圧印加時」は、光変調層34が散乱性を示す電圧が印加されている時を意味するものとする。
【0030】
光変調層34は、例えば、
図2に示したように、高分子領域34Aと、高分子領域34A内に分散された複数の液晶領域34Bとを含んだ複合層となっている。高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、形状異方性を有しており、さらに、光学異方性も有している。なお、液晶領域34Bは本技術の第1領域の一具体例に相当し、高分子領域34Aは本技術の第2領域の一具体例に相当する。
【0031】
(形状異方性)
図4は、光変調層34のXY平面での断面構成の一例を表したものである。高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、ともに、光入射面10Aと平行または略平行な方向であって、かつ透明基板31の表面と平行または略平行な方向に延在している。つまり、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、ともに、線状光源と平行または略平行な方向に延在している。高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、ともに、例えば、光変調層30の一端から他端に渡って連続して延在していたり、断続して延在していたりする。また、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、例えば、
図4に示したように、光入射面10Aと直交する方向に、交互に並んで配置されている。
【0032】
図5A,
図5Bは、光変調層34のうち光源20寄りの領域(近傍領域30a)におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の構造上の周期を表したものである。
図6A,
図6Bは、光変調層34のうち光源20から離れた領域(遠方領域30b)におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の構造上の周期を表したものである。なお、近傍領域30aは本技術の第3領域の一具体例に相当し、遠方領域30bは本技術の第4領域の一具体例に相当する。
【0033】
光変調層34において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のうち少なくともX軸方向の構造上の周期が、光源20からの距離に応じて異なっており、近傍領域30aと遠方領域30bとで互いに異なっている。光変調層34は、例えば、
図5A,
図5Bに示したように、近傍領域30aにおいて、X軸方向に周期Ph2、Y軸方向に周期Ph1、Z軸方向に周期Pv1の規則的な構造を有している。光変調層34は、また、例えば、
図6A,
図6Bに示したように、遠方領域30bにおいて、X軸方向に周期Ph4、Y軸方向に周期Ph3、Z軸方向に周期Pv2の規則的な構造を有している。
【0034】
近傍領域30aおよび遠方領域30bにおいて、高分子領域34Aと液晶領域34Bとの界面が、配向膜33,35の配向方向と直交する方向において相対的に密に形成され、配向膜33,35の配向方向において相対的に疎に形成されている。さらに、高分子領域34Aと液晶領域34Bとの界面は、近傍領域30aの方が遠方領域30bよりも疎に配置されている。光変調層34内の構造上の周期は、例えば、製造過程における紫外線の照射の仕方や、照射する紫外線の偏光成分、光変調層34の原料に含まれる低分子モノマーの重量比などを調整することにより、調整可能である。なお、光変調層34内の構造上の周期の具体的な調整方法については、後に詳述する。
【0035】
高分子領域34Aの、光変調層34に占める割合α1は、光源20からの距離に応じて異なっており、近傍領域30aと遠方領域30bとで互いに異なっている。割合α1は、例えば、
図7〜
図9に示したように、近傍領域30aで相対的に低く、遠方領域30bで相対的に高くなっている。
【0036】
例えば、
図7に示したように、割合α1は、近傍領域30aにおいて一定値(a%)となっており、遠方領域30bにおいてa%よりも大きな一定値(b%)となっている。割合α1は、例えば、
図8に示したように、近傍領域30aにおいて光源20から遠ざかるにつれてc%からb%へ滑らかに上昇し、遠方領域30bにおいて一定値(b%)となっていてもよい。なお、c%は、a%と同じであってもよいし、a%よりも低くても高くてもよい。また、
図9に示したように、割合α1は、近傍領域30aにおいて光源20から遠ざかるにつれてc%からb%へ断続的(階段状)に上昇し、遠方領域30bにおいて一定値(b%)となっていてもよい。
【0037】
高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、電場に対する応答速度が互いに異なっている。高分子領域34Aは、電場に対する応答性が相対的に低く、液晶領域34Bは、電場に対する応答性が相対的に高い。高分子領域34Aは、高分子材料を含んで構成されている。高分子領域34Aは、例えば、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または液晶領域34Bの応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている。高分子領域34Aにおける筋状構造、多孔質構造または棒状構造は、光入射面10Aと平行または略平行な方向であって、かつ透明基板31の表面と平行または略平行な方向に延在している。つまり、高分子領域34Aにおける筋状構造、多孔質構造または棒状構造は、線状光源と平行または略平行な方向に延在している。
【0038】
高分子領域34Aは、低分子モノマーを重合化することにより得られた高分子材料によって形成されている。高分子領域34Aは、配向膜33,35の配向方向に沿って配向した、配向性および重合性を有する低分子モノマーを熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている。液晶領域34Bは、液晶材料を含んで構成されており、高分子領域34Aの応答速度よりも十分に早い応答速度を有している。液晶領域34B内に含まれる液晶材料(液晶分子)は、例えば棒状分子である。液晶領域34B内に含まれる液晶分子として、正の誘電率異方性を有するもの(いわゆるポジ型液晶)を用いることが好ましい。
【0039】
上述の低分子モノマーは、配向性および重合性を有する低分子モノマーであることが好ましい。配向性および重合性を有する低分子モノマーとしては、光学的に異方性を有しており、かつ液晶と複合する材料であればよいが、本実施の形態では紫外線で硬化する低分子モノマーであることが好ましい。電圧無印加の状態で、液晶と、低分子モノマーを重合化することにより形成されたもの(高分子材料)との光学的異方性の方向が一致していることが好ましいので、紫外線硬化前において、液晶と低分子モノマーが同一方向に配向していることが好ましい。液晶領域34Bとして液晶が用いられる場合に、その液晶が棒状分子であるときには、使用する低分子モノマーの形状も棒状であることが好ましい。以上のことから、低分子モノマーとしては、重合性と液晶性を併せ持つもの(重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマー)を用いることが好ましい。重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーは、例えば、重合性官能基として、アクリレート基、メタクリレート基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルエーテル基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。これらの官能基は、紫外線、赤外線または電子線を照射したり、加熱したりすることによって重合させることができる。紫外線照射時の配向度低下を抑制するために、多官能基をもつ液晶性材料を添加することもできる。高分子領域34Aを上述した筋状構造とする場合には、光変調層34の原料として、2官能のモノマー(重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマー)を用いることが好ましい。また、高分子領域34Aの原料に対して、液晶性を示す温度の調整を目的に単官能モノマーが添加されたり、架橋密度向上を目的に3官能以上のモノマーが添加されたりし得る。
【0040】
(光学異方性)
図10は、電圧無印加時の、高分子領域34Aおよび液晶領域34B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図10中の楕円体134Aは、電圧無印加時の、高分子領域34Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図10中の楕円体134Bは、電圧無印加時の、液晶領域34Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。この屈折率楕円体は、様々な方向から入射した直線偏光の屈折率をテンソル楕円体で表したものであり、光が入射する方向からの楕円体の断面を見ることによって、幾何的に屈折率を知ることができるものである。
【0041】
図11は、電圧印加時の、高分子領域34Aおよび液晶領域34B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図11中の楕円体134Aは、電圧印加時の、高分子領域34Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図11中の楕円体134Bは、電圧印加時の、液晶領域34Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0042】
高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、例えば、
図10に示したように、電圧無印加時に、高分子領域34Aの光軸AX1(具体的には楕円体134Aの長軸)および液晶領域34Bの光軸AX2(具体的には楕円体134Bの長軸)の向きが互いに一致する(平行となる)構成となっている。なお、光軸AX1,AX2とは、偏光方向によらず屈折率が1つの値になるような光線の進行方向と平行な線を指している。また、電圧無印加時に、光軸AX1および光軸AX2の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX1の向きと光軸AX2の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0043】
液晶領域34Bでは、光軸AX2は、電圧無印加時に、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。配向膜33,35がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX2は、電圧無印加時に、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。
【0044】
一方、高分子領域34Aでは、光軸AX1は、電圧印加の有無に拘らず、一定となっている。具体的には、光軸AX1は、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。つまり、光軸AX1は、電圧無印加時に、光軸AX2と平行または略平行となっている。配向膜33,35がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX1は、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。つまり、この場合にも、光軸AX1は、電圧無印加時には、光軸AX2と平行または略平行となっている。
【0045】
高分子領域34Aおよび液晶領域34Bの常光屈折率が互いに等しく、かつ高分子領域34Aおよび液晶領域34Bの異常光屈折率が互いに等しいことが好ましい。この場合に、例えば、電圧無印加時には、あらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、高い透明性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層34内で散乱されることなく、光変調層34を透過する。その結果、例えば、
図12A,
図12Bに示したように、光源20からの光L(斜め方向からの光)は、光変調素子30内で透明となった領域(透明領域30A)を伝播し、光変調素子30と空気との界面において全反射され、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、輝度を均一にした場合(
図12B中の一点鎖線)と比べて下がる。なお、
図12Bのグラフは、
図12Aに示したように導光板10の上に拡散シート(図示せず)を配置した状態で、正面輝度を計測したときのものである。
【0046】
また、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、電圧印加時には、例えば、
図11に示したように、光軸AX1および光軸AX2の向きが互いに異なる(交差もしくは直交する)構成となっている。具体的には、液晶領域34Bでは、光軸AX2は、電圧印加時に、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の法線と平行または略平行となっている。
【0047】
したがって、光変調層34では、電圧印加時には、あらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層34内で散乱される。その結果、例えば、
図12A,
図12Bに示したように、光源20からの光L(斜め方向からの光)は、光変調素子30内で散乱状態となった領域(散乱領域30B)で散乱され、その散乱光が直接、導光板10に入射するか、または反射板40で反射された後に導光板10に入射し、導光板10の上面(光出射面)から出射される。従って、散乱領域30Bの輝度は、輝度を均一にした場合(
図12B中の一点鎖線)と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0048】
なお、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bの常光屈折率は、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。また、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bの異常光屈折率についても、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0049】
また、高分子領域34Aの屈折率差(=異常光屈折率−常光屈折率)や、液晶領域34Bの屈折率差(=異常光屈折率−常光屈折率)は、できるだけ大きいことが好ましく、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。これは、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bの屈折率差が大きい場合には、光変調層34の散乱能が高くなり、導光条件を容易に破壊することができ、導光板10からの光を取り出しやすいからである。
【0050】
駆動回路50は、各光変調セル30−1の一対の電極(部分電極32A,36A)へ印加する電圧を制御することにより、各光変調セル30−1の発光、非発光を制御するものである。
【0051】
(異方性散乱)
次に、本実施の形態における異方性散乱について説明する。本実施の形態において、異方性散乱は、(a)散乱領域30Bにおける、高分子領域34Aと液晶領域34Bとの界面(散乱界面)の存在確率の不均一性と、(b)散乱領域30Bにおける複屈折性とに起因して生じている。そこで、以下では、散乱領域30Bにおける散乱界面の存在確率の不均一性と、散乱領域30Bにおける複屈折性とについて詳細に説明する。
【0052】
---散乱界面の存在確率の不均一性---
散乱領域30Bでは、高分子領域34Aと液晶領域34Bとの界面は、配向膜33の配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜33の配向方向と平行な方向において疎に配置されている。配向膜33の配向方向と直交する方向とは、光入射面10Aと垂直な方向(以下、「第1の方向」と称する。)、または透明基板31に垂直な方向(以下、「第2の方向」と称する。)を指している。配向膜33の配向方向と平行な方向とは、光入射面10Aと平行な方向であって、かつ透明基板31の表面と平行な方向(以下、「第3の方向」と称する。)を指している。散乱領域30Bを、第1の方向または第2の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射するので、大きく散乱される。一方、散乱領域30Bを、第3の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射するので、あまり散乱されない。
【0053】
---複屈折性---
また、散乱領域30Bでは、第1の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域34Bの異常光屈折率と高分子領域34Aの常光屈折率との差、および液晶領域34Bの常光屈折率と高分子領域34Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。そのため、散乱領域30Bを、第1の方向に伝播する光は、大きく散乱される。
【0054】
一方で、散乱領域30Bでは、第2の方向または第3の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の短軸方向または長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域34Bの常光屈折率と高分子領域34Aの異常光屈折率との差、または液晶領域34Bの異常光屈折率と高分子領域34Aの常光屈折率との差だけを感じながら伝播する。その結果、散乱領域30Bでは、第2の方向または第3の方向に伝播する光の散乱は、第1の方向に伝播する光の散乱と比べて小さい。
【0055】
つまり、光変調層34は、散乱領域30Bにおいて(当該光変調層34が散乱性を示すとき)、第1の方向に伝播する光に対する散乱(以下、「第1の散乱」と称する。)が、第3の方向に伝播する光に対する散乱(以下、「第3の散乱」と称する。)よりも大きい異方性散乱を示す構成となっている。また、光変調層34は、散乱領域30Bにおいて(当該光変調層34が散乱性を示すとき)、第2の方向に伝播する光に対する散乱(以下、「第2の散乱」と称する。)が、第3の散乱よりも大きい異方性散乱を示す構成となっている。
【0056】
ここで、第1の散乱の大きさをAとし、第2の散乱の大きさをBとし、第3の散乱の大きさをCとする。光変調層34のうち近傍領域30aにおける第1の散乱の大きさをA1とし、光変調層34のうち近傍領域30aにおける第3の散乱の大きさをC1とする。光変調層34のうち遠方領域30bにおける第1の散乱の大きさをA2とし、光変調層34のうち遠方領域30bにおける第3の散乱の大きさをC2とする。このとき、光変調層34は、当該光変調層34が散乱性を示すとき、以下の式を満たす構成となっている。A1/C1は、近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(後述)に相当しており、A2/C2は、遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(後述)に相当している。
A>B>C
A1/C1<A2/C2
【0057】
次に、光変調層34がこのような異方性散乱を示すときのメリットについて説明する。光学等方性を有する光変調層は、等方的な散乱特性を示す。そのような光変調層を本実施の形態の光変調層34の代わりに用いた場合、導光板10面内と平行方向にも散乱する光が多く、導光条件を破壊するまでに光の伝播方向を変える確率が小さくなる。一方、本実施の形態では、上の式からわかるように、光変調層34に入射した光は、導光板10の上面に対して垂直な方向によく散乱するので、導光条件を破壊する方向に優先的に散乱する。従って、光変調層34が異方性散乱を示すことで、導光板10からの光取り出し効率が高くなると考えられる。
【0058】
導光光の散乱性を高くするという観点からは、高分子領域34Aの、短軸方向の平均的な筋状組織サイズは、0.1μm以上10μm以下となっていることが好ましく、0.2μm以上2.0μm以下の範囲であることがより好ましい。
【0059】
次に、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおける異方性散乱の大きさについて説明する。
【0060】
散乱の異方性の大きさは、第1の方向(X軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさ、第3の方向(Y軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさ、および第2の方向(Z軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさの3軸間の商を指している。3軸間の商は、具体的には、以下の3つ((A)〜(C))の総和を指している。3軸間の商が大きい場合には、散乱の異方性が大きく、3軸間の商が小さい場合には、散乱の異方性が小さい。言い換えると、3軸間の商が1から離れるほど散乱の異方性が大きく、3軸間の商が1に近いほど散乱の異方性が小さい。なお、以下の(A)〜(C)は、分子の値が分母の値よりも大きくなっていることを前提としている。したがって、分子の値が分母の値よりも小さくなっている事例では、以下の(A)〜(C)において分子と分母を互いに入れ替えることが好ましい。
【0061】
(A)(第1の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第3の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
(B)(第2の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第3の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
(C)(第1の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第2の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
【0062】
散乱の異方性の大きさは、(a)散乱領域30Bにおける、高分子領域34Aと液晶領域34Bとの界面(散乱界面)の存在確率の不均一性と、(b)散乱領域30Bにおける複屈折性とによって決まる。散乱の異方性の大きさでは、上記の(a)の要素が支配的である。それは、散乱界面の存在確率を考えたときに、理想的には第3の方向には同じ媒体が続いているので第3の方向には散乱せず、第1の方向および第2の方向のみで散乱するからである。このとき、机上では、第3の方向の散乱はゼロとなるので、第3の方向と、第1の方向および第2の方向との散乱比は無限大になる。一方、複屈折性を考えたときに、第1の方向では2つの偏光成分が散乱するが、第2の方向および第3の方向では1つの偏光成分しか散乱しない。このとき、第1の方向と、第2の方向および第3の方向との散乱比は、高々2倍にしかならない。従って、散乱の異方性の大きさでは、上記の(a)の要素が支配的となる。そこで、以下では、散乱界面の存在確率と、散乱の異方性の大きさとの関係について説明し、複屈折性と、散乱の異方性の大きさとの関係についての説明は割愛する。
【0063】
散乱の異方性の大きさは、光変調層34における第1の方向の周期、光変調層34における第3の方向の周期、および光変調層34における第2の方向の周期の3軸間の商に対応している。3軸間の商は、具体的には、以下の3つ((D)〜(F))の総和を指している。なお、以下の(D)〜(F)は、分子の値が分母の値よりも大きくなっていることを前提としている。したがって、分子の値が分母の値よりも小さくなっている事例では、以下の(D)〜(F)において分子と分母を互いに入れ替えることが好ましい。
【0064】
(D)(光変調層34における第3の方向の周期)/(光変調層34における第1の方向の周期)
(E)(光変調層34における第3の方向の周期)/(光変調層34における第2の方向の周期)
(F)(光変調層34における第2の方向の周期)/(光変調層34における第1の方向の周期)
【0065】
近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(A1/C1)は、Ph1/Ph2+Ph1/Pv1+Pv1/Ph2に対応した値となっている。また、遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(A2/C2)は、Ph3/Ph4+Ph3/Pv2+Pv2/Ph4に対応した値となっている。ここで、各周期は、例えば、以下の関係となっている。
Ph1/Ph2<Ph3/Ph4
Ph1/Pv1<Ph3/Pv2
Ph2≒Pv1
Ph4≒Pv2
従って、光変調層34は、当該光変調層34が散乱性を示すとき、A>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たす構成となっていると言える。
【0066】
ところで、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおいて散乱の異方性の大きさが互いに相違しているのは、近傍領域30aと遠方領域30bとで、高分子領域34Aの、光変調層34に占める割合α1が互いに異なるからである。高分子領域34Aの、光変調層34に占める割合α1が近傍領域30aで相対的に低く、遠方領域30bで相対的に高くなっている。割合α1が相対的に低い領域(近傍領域30a)では、割合α1が相対的に高い領域(遠方領域30b)と比べて、散乱の異方性の大きさが相対的に低くなっている。
【0067】
割合α1は、例えば、製造過程における紫外線の照射の仕方で調整可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物に対して照射する紫外線の強度または紫外線の積算量を調整することより、割合α1を調整することが可能である。従って、光変調層34(近傍領域30aおよび遠方領域30b)は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線強度または紫外線積算量が多くなるようにして紫外線を照射することにより形成されたものであってもよい。高分子領域34Aの割合α1が例えば
図7に示したようになっている場合には、紫外線の強度または紫外線の積算量は、
図7と同様の分布(例えば
図13)となっている。また、高分子領域34Aの割合α1が例えば
図8に示したようになっている場合には、紫外線の強度または紫外線の積算量は、
図8と同様の分布(例えば
図14)となっている。また、高分子領域34Aの割合α1が例えば
図9に示したようになっている場合には、紫外線の強度または紫外線の積算量は、
図9と同様の分布(例えば
図15)となっている。
【0068】
紫外線強度の調整は、例えば、グレーマスクを使うことによって可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物に対して、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方が紫外線透過率の高いグレーマスクを介して、紫外線を照射することにより、割合α1を調整することが可能である。従って、光変調層34(近傍領域30aおよび遠方領域30b)は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方が紫外線透過率の高いグレーマスクを介して紫外線を照射することにより形成されたものであってもよい。
【0069】
紫外線強度の調整は、例えば、紫外光を発するLEDを使うことによっても可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物に対して、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線強度が多くなるように紫外域のLED光を照射することにより、割合α1を調整することが可能である。従って、光変調層34(近傍領域30aおよび遠方領域30b)は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線強度が多くなるように紫外域のLED光を照射することにより形成されたものであってもよい。
【0070】
紫外線積算量の調整は、例えば、紫外光を発するLEDを使うことによって可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物に対して、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線積算量が多くなるように紫外域のLED光をパルス照射することにより、割合α1を調整することが可能である。従って、光変調層34(近傍領域30aおよび遠方領域30b)は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線積算量が多くなるように紫外域のLED光をパルス照射することにより形成されたものであってもよい。また、製造工程の搬送にベルトコンベアなどを使用して、上記混合物を移動させながら露光する場合は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線積算量が多くなるようにベルトコンベアのスピードを調整してもよい。
【0071】
なお、光変調層34は、例えば、偏光光を用いて露光を行うことによっても作成可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物に対して、偏光成分が光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方が多くなるように紫外域の偏光光を照射することにより、散乱の異方性の度合いが近傍領域30aで相対的に小さく、遠方領域30bで相対的に大きな光変調層34を形成することが可能である。従って、光変調層34(近傍領域30aおよび遠方領域30b)は、偏光成分が光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方が多くなるように紫外域の偏光光を照射することにより形成されたものであってもよい。なお、このようにして光変調層34を形成した場合には、割合α1が、遠方領域30bよりも近傍領域30aの方が小さくなっていてもよいし、近傍領域30aと遠方領域30bとで同一または略同一となっていてもよい。
【0072】
また、光変調層34は、例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの重量比を調整することによっても作成可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとを、これらの重量比が98:2〜75:25の範囲内となるように混合し、その混合物に紫外線を照射して上記低分子モノマーを硬化させることにより、近傍領域30aに含まれる、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bを形成することが可能である。さらに、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとを、これらの重量比が95:5〜50:50の範囲内であって、かつ、上記低分子モノマーの重量%が近傍領域30aにおける上記低分子モノマーの重量%よりも大きくなるように混合し、その混合物に紫外線を照射して上記低分子モノマーを硬化させることにより、遠方領域30bに含まれる、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bを形成することが可能である。従って、光変調層34(近傍領域30aおよび遠方領域30b)は、液晶材料の、混合物に対する重量比が光源20から離れた領域よりも光源20近傍の領域の方が多くなるように、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物を塗布したのち、その混合物に対して紫外線を照射することにより形成されたものであってもよい。
【0073】
以下に、本実施の形態の照明装置1の製造方法について、
図16から
図18を参照しながら説明する。
【0074】
まず、ガラス基板またはプラスチックフィルム基板からなる透明基板31上に、ITOなどの透明導電膜32Eを形成する(
図16A)。次に、透明導電膜32E上に、パターニングされたレジスト層(図示せず)を形成したのち、レジスト層をマスクとして透明導電膜32Eを選択的にエッチングする。その結果、下側電極32が形成される(
図16B)。
【0075】
次に、表面全体に配向膜33を塗布したのち、乾燥させ、焼成する(
図16C)。配向膜33としてポリイミド系材料を用いる場合には、溶媒にNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いることが多いが、そのときには、大気下では200℃程度の温度が必要である。なお、この場合に、透明基板31としてプラスチック基板を用いる場合には、配向膜33を100℃で真空乾燥させ、焼成することもできる。その後、配向膜33に対してラビング処理を行う。これにより、配向膜33が水平配向用の配向膜として機能し得る。
【0076】
次に、配向膜33上に、セルギャップを形成するためのスペーサ38を乾式または湿式で散布する(
図17A)。なお、真空貼り合わせ法にて光変調セル30−1を作成する場合には、滴下する混合物中にスペーサ38を混合しておいてもよい。また、スペーサ38の替わりとして、フォトリソ法によって柱スペーサを形成することもできる。
【0077】
続いて、上記と同様の方法で作製しておいた配向膜35上に、貼り合わせおよび液晶の漏れを防止するためのシール剤パターン39を、例えば額縁状に塗布する(
図17B)。このシール剤パターン39はディスペンサー法やスクリーン印刷法にて形成することができる。
【0078】
以下に、真空貼り合わせ法(One Drop Fill法、ODF法)について説明するが、真空注入法やロール貼合方式などで光変調セル30−1を作成することも可能である。
【0079】
まず、セルギャップ、セル面積などから決まる体積分にあたる液晶と、モノマーの混合物44を面内に均一に滴下する(
図17C)。混合物44の滴下にはリニアガイド方式の精密ディスペンサーを用いることが好ましいが、シール剤パターン39を土手として利用して、ダイコータなどを用いてもよい。
【0080】
液晶とモノマーは前述の材料を用いることができるが、液晶と低分子モノマーの重量比は98:2〜50:50、好ましくは95:5〜75:25、より好ましくは92:8〜85:15である。液晶の比率を多くすることで駆動電圧を低くすることができるが、あまり液晶を多くしすぎると電圧印加時の白色度が低下したり、電圧オフ後に応答速度が低下するなど透明時に戻りにくくなったりする傾向がある。
【0081】
混合物44には、液晶および低分子モノマーの他には、重合開始剤を添加する。使用する紫外線波長に応じて、添加する重合開始剤のモノマー比を0.1〜10重量%の範囲内で調整する。混合物44には、この他に、重合禁止剤や可塑剤、粘度調整剤なども必要に応じて添加可能である。モノマーが室温で固体やゲル状である場合には、口金やシリンジ、基板を加温することが好ましい。
【0082】
透明基板31および透明基板36を真空貼り合わせ機(図示せず)に配置したのち、真空排気し、貼り合わせを行う(
図18A)。その後、貼り合わせたものを大気に解放し、大気圧での均一加圧によってセルギャップを均一化する。セルギャップは白輝度(白色度)と駆動電圧の関係から適宜選定できるが、1〜40μm、好ましくは1〜20μm、より好ましくは1〜10μmである。
【0083】
貼り合わせ後、必要に応じて配向処理を行うことが好ましい(図示せず)。クロスニコル偏光子の間に、貼り合わせたセルを挿入した際に、光り漏れが生じている場合には、セルをある一定時間加熱処理したり、室温で放置したりする。これにより、配向膜33,35の配向作用により、混合物44内の液晶および低分子モノマーを配向させる。その後、紫外線L3を照射して低分子モノマーを重合させてポリマー化する(
図18B)。このときに、上述したように、紫外線強度や紫外線積算量を調整することにより、高分子領域34Aの割合α1を調整する。また、上述したように、偏光光を用いて露光を行うようにしてもよい。このようにして、散乱性を示すときにA>B>C、A1/C1<A2/C2を満たす変調層34を有する光変調素子30が製造される。
【0084】
紫外線を照射している時には、セルの温度が変化しないようにすることが好ましい。赤外線カットフィルターを用いたり、光源にUV−LEDなどを用いたりすることが好ましい。紫外線照度は複合材料の組織構造に影響を与えるので、使用する液晶材料やモノマー材料、これらの組成から適宜調整することが好ましく、0.1〜500mW/cm
2の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜30mW/cm
2である。紫外線照度が低いほど駆動電圧が低くなる傾向にあり、生産性と特性の両面から好ましい紫外線照度を選定することができる。
【0085】
そして、導光板10に光変調素子30を貼り合わせる(
図18C)。貼り合わせには、粘着、接着のいずれでもよいが、導光板10の屈折率と光変調素子30の基板材料の屈折率とにできるだけ近い屈折率の材料で粘着、接着することが好ましい。最後に、下側電極32および上側電極36に引き出し線(図示せず)を取り付ける。このようにして、本実施の形態の照明装置1が製造される。
【0086】
上記では、光変調素子30を作成し、最後に導光板10に光変調素子30を貼り合わせるプロセスを説明したが、導光板10の表面に、配向膜35を形成した透明基板36を予め貼り合わせてから、照明装置1を作成することもできる。また、枚葉方式、ロール・ツー・ロール方式のいずれでも照明装置1を作成することができる。
【0087】
[作用・効果]
次に、本実施の形態の照明装置1の作用および効果について説明する。
【0088】
本実施の形態の照明装置1では、例えば、光変調セル30−1において液晶領域34Bの光軸AX2が高分子領域34Aの光軸AX1と平行もしくはほぼ平行となり、別の光変調セル30Bにおいて液晶領域34Bの光軸AX2が高分子領域34Aの光軸AX1と交差もしくは直交するように、各光変調セル30−1の一対の電極(部分電極32A,36A)に電圧が印加される。これにより、光源20から射出され、導光板10内に入射した光は、光変調素子30のうち、光軸AX1と光軸AX2とが互いに平行もしくはほぼ平行となっている透明領域30Aを透過する。一方、光源20から射出され、導光板10内に入射した光は、光変調素子30のうち、光軸AX1と光軸AX2とが互いに交差もしくは直交している散乱領域30Bにおいて散乱される。この散乱光のうち散乱領域30Bの下面を透過した光は反射板40で反射され、再度、導光板10に戻されたのち、照明装置1の上面から射出される。また、散乱光のうち、散乱領域30Bの上面に向かった光は、導光板10を透過したのち、照明装置1の上面から射出される。このように、本実施の形態では、透明領域30Aの上面からは光はほとんど射出されず、散乱領域30Bの上面から光が射出される。このようにして、正面方向の変調比を大きくしている。
【0089】
一般に、PDLCは、液晶材料と等方性の低分子材料とを混合し、紫外線照射や溶媒の乾燥などにより相分離を起こさせることによって形成され、液晶材料の微小粒子が高分子材料中に分散された複合層となっている。この複合層中の液晶材料は、電圧無印加時にはランダムな方向を向いているので散乱性を示すが、電圧印加時には電場方向に配向するので、液晶材料の常光屈折率と高分子材料の屈折率とが互いに等しい場合には、正面方向(PDLCの法線方向)において高い透明性を示す。しかし、この液晶材料では、斜め方向においては、液晶材料の異常光屈折率と高分子材料の屈折率との差が顕著となり、正面方向が透明性であっても斜め方向において散乱性が発現してしまう。
【0090】
通常、PDLCを使った光変調素子は、表面に透明導電膜の形成された2枚のガラス板の間にPDLCを挟み込んだ構造となっていることが多い。上述したような構造を有する光変調素子に対して空気中から斜めに光が入射した場合には、その斜め方向から入射した光は空気とガラス板の屈折率差によって屈折し、より小さな角度でPDLCに入射することになる。そのため、このような光変調素子においては、大きな散乱は生じない。例えば、空気中から80°の角度で光が入射した場合には、その光のPDLCへの入射角はガラス界面での屈折によって40°程度にまで小さくなる。
【0091】
しかし、導光板を用いたエッジライト方式では、導光板越しに光が入射するので、光が80°程度の大きな角度でPDLC中を横切ることになる。そのため、液晶材料の異常光屈折率と高分子材料の屈折率との差が大きく、さらに、より大きな角度で光がPDLC中を横切るので、散乱を受ける光路も長くなる。例えば、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶材料の微小粒子が屈折率1.5の高分子材料中に分散されている場合には、正面方向(PDLCの法線方向)においては屈折率差がないが、斜め方向においては屈折率差が大きくなる。このため、斜め方向の散乱性を小さくすることができないので、視野角特性が悪い。さらに、導光板上に拡散フィルムなどの光学フィルムを設けた場合には、斜め漏れ光が拡散フィルムなどによって正面方向にも拡散されるので、正面方向の光漏れが大きくなり、正面方向の変調比が低くなってしまう。
【0092】
一方、本実施の形態では、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bが光学異方性材料を含んで形成されているので、斜め方向において、散乱性が小さくなり、透明性を向上させることができる。例えば、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bが、互いに常光屈折率が等しく、かつ互いに異常光屈折率も等しい光学異方性材料を含んで構成され、かつ、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない領域では、これらの光軸の向きが一致もしくはほぼ一致する。これにより、正面方向(光変調素子30の法線方向)および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差が少なくなるか、またはなくなり、高い透明性が得られる。その結果、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくすることができ、視野角特性を良くすることができる。
【0093】
例えば、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶と、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶性モノマーとを混合し、配向膜または電界によって液晶と液晶性モノマーを配向させた状態で液晶性モノマーを重合させると、液晶の光軸と、液晶性モノマーが重合することによって形成されたポリマーの光軸とが互いに一致する。これにより、あらゆる方向で屈折率を一致させることができるので、そのようにした場合には、透明性が高い状態を実現でき、より一層、視野角特性を良くすることができる。
【0094】
また、本実施の形態では、例えば、
図12A,
図12Bに示したように、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、輝度を均一にした場合(
図12B中の一点鎖線)と比べて下がっている。他方、散乱領域30Bの輝度は、輝度を均一にした場合(
図12B中の一点鎖線)と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0095】
ところで、輝度突き上げとは、全面白表示した場合に比べて、部分的に白表示を行った場合の輝度を高くする技術である。CRTやPDPなどでは一般によく使われている技術である。しかし、液晶ディスプレイでは、バックライトは画像にかかわらず全体に均一発光しているので、部分的に輝度を高くすることはできない。もっとも、バックライトを、複数のLEDを2次元配置したLEDバックライトとした場合には、LEDを部分的に消灯することは可能である。しかし、そのようにした場合には、LEDを消灯した暗領域からの拡散光がなくなるので、全てのLEDを点灯した場合と比べて、輝度が低くなってしまう。また、部分的に点灯しているLEDに対して流す電流を大きくすることにより、輝度を増やすことも可能であるが、そのようにした場合には、非常に短時間に大電流が流れるので、回路の負荷や信頼性の点で問題が残る。
【0096】
一方、本実施の形態では、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bが光学異方性材料を含んで形成されているので、斜め方向の散乱性が抑制され、暗状態での導光板からの漏れ光が少ない。これにより、部分的な暗状態の部分から部分的な明状態の部分に導光するので、照明装置1への投入電力を増やすことなく、輝度突き上げを実現することができる。
【0097】
また、本実施の形態では、電圧無印加の領域において、液晶領域34B内に含まれる液晶分子が、プレチルト角が付与された状態で配向している場合には、電圧印加時に、液晶領域34B内に含まれる液晶材料は、ランダムな方位に立ち上がることはなく、光入射面10Aと平行な面内で立ち上がる。このとき、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bの光軸AX1,AX2が、光入射面10Aと平行な面内において互いに交差もしくは直交する。従って、電圧印加の領域において、正面方向(光変調素子30の法線方向)および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。その結果、表示輝度を向上させることができる。また、上記の輝度突き上げの効果により、表示輝度をさらに向上させることができる。
【0098】
従って、本実施の形態では、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。その結果、正面方向の変調比を高くすることができる。
【0099】
上述の水平配向型のPDLCでは、高分子材料と液晶材料との界面は、筋状構造の短軸方向において密に形成され、筋状構造の長軸方向において疎に形成されている。そのため、筋状構造が線状光源と平行な方向に延在している場合には、PDLC内を上述の筋状構造の短軸方向に伝播する光は、筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射し、その結果、大きく散乱される。一方で、PDLC内を上述の筋状構造の長軸方向に伝播する光は、界面に入射する機会が少ないため、あまり散乱されない。
【0100】
さらに、PDLC内を筋状構造の短軸方向であって、かつ光入射面に対して垂直に伝播する光は、筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶材料の異常光屈折率と高分子材料の常光屈折率との差、および液晶材料の常光屈折率と高分子材料の異常光屈折率との差を感じながら伝播する。一方で、PDLC内を上述の筋状構造の長軸方向またはPDLCの厚さ方向に伝播する光は、液晶材料の異常光屈折率と高分子材料の常光屈折率との差、または液晶材料の常光屈折率と高分子材料の異常光屈折率との差だけを感じながら伝播する。そのため、PDLC内を筋状構造の短軸方向であって、かつ光入射面に対して垂直に伝播する光は大きく散乱され、PDLC内を上述の筋状構造の長軸方向またはPDLCの厚さ方向に伝播する光は、あまり散乱されない。
【0101】
このように、水平配向型のPDLCでは、上述した2つの要因によって、筋状構造の短軸方向であって、かつ光入射面に対して垂直な方向に伝播する光と、筋状構造の短軸方向であって、かつPDLCの厚さ方向に伝播する光および筋状構造の長軸方向と平行な方向に伝播する光とで、散乱に異方性がある。その結果、PDLCの厚さ方向に伝播する光が、導光条件を破壊する方向に優先的に散乱し、光取り出し効率が高くなるので、高輝度および高コントラストが得られる。
【0102】
ところが、水平配向型のPDLCをエッジライト方式のバックライトに適用した場合には、X方向に伝播する光とY方向に伝播する光とで、散乱に異方性があることに起因して輝度分布が不均一になり易い。特に、線状光源内の個々の点状光源の配列ピッチが疎となっているときには、線状光源近傍に、明暗のストライプが生じてしまう。
【0103】
一方、本実施の形態では、光変調層34のうち光源20寄りの近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(A1/C1)が、光変調層34のうち光源20から離れた遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(A2/C2)よりも小さくなっている。これにより、光変調層34内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。ここで、光源20の配列に起因する明暗のストライプは、第1の散乱と第3の散乱との差が大きいことに起因して起こる。従って、上記の異方性散乱が、光源20近傍において緩和されることにより、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。また、本実施の形態では、光変調層34のうち光源20近傍だけで、上記の異方性散乱が緩和されているので、光変調層34全体において、上記の異方性散乱が緩和されている場合よりも、高輝度を得ることができる。さらに、本実施の形態では、第2の散乱が第3の散乱よりも強くなっていることから、光源20からの光は導光条件を破壊する方向に優先的に散乱し、光取り出し効率が高くなる。従って、本実施の形態では、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。
【0104】
また、本実施の形態では、配向膜33,35の配向方向が互いに等しくなっているので、後述の他の照明装置と比べて、より多くの偏光成分を有する光を出力することが可能である。そのため、例えば、照明装置1を表示パネルのバックライトとして用いた場合に、配向膜33,35の配向方向と、表示パネルのうち照明装置1側の偏光板の透過軸とが互いに平行となるように、照明装置1を設置したときには、照明装置1から出力された光の、表示パネルでの利用効率を高くすることができる。
【0105】
<2.第2の実施の形態>
次に、本技術の第2の実施の形態に係る照明装置2について説明する。本実施の形態の照明装置2は、
図19に示したように、光変調素子30に代わって光変調素子60を設けた点で、上記実施の形態の照明装置1の構成と相違する。そこで、以下では、上記実施の形態の構成との共通点についての説明を適宜、省略し、上記実施の形態の構成との相違点について主に説明する。
【0106】
図20は、光変調素子60の断面構成の一例を表したものである。光変調素子60は、例えば、透明基板31、下側電極32、配向膜33、光変調層64、配向膜65、上側電極36および透明基板37を反射板40側から順に配置されたものである。
【0107】
配向膜33,65は、光変調層64を挟み込むように配置されている。配向膜33,65は、例えば、光変調層64に用いられる液晶や低分子モノマーを配向させるものである。配向膜33,65は、光変調層64が散乱性を示すとき、後述する2つの式(A>B>CおよびA1/C1<A2/C2)を満たすように形成されたものである。配向膜33は上記実施の形態と同様、水平配向膜であり、光入射面10Aと平行または略平行な方向に配向方向を有している。配向膜33に用いられる水平配向膜が、ラビング処理を用いて形成されたものである場合、配向膜33のラビング方向は、光入射面10Aと平行な方向を向いている。
【0108】
一方、配向膜65は、水平配向膜および垂直配向膜の複合膜である。配向膜65は、例えば、
図21に示したように、近傍領域30aにおいて垂直配向膜となっており、遠方領域30bにおいて、配向膜33と同一の水平配向膜となっている。なお、配向膜65は、例えば、
図22に示したように、近傍領域30aと遠方領域30bとの境界付近において、光源20から遠ざかるにつれて水平配向膜の配向特性から垂直配向膜の配向特性に徐々に変化する移行領域30Cを有していてもよい。
【0109】
光変調層64は、電場の大きさに応じて、光源20からの光に対して全体的もしくは部分的に散乱性もしくは透明性を示すものである。光変調層64は、例えば、電圧無印加時に、光源20からの光に対して透明性を示すようになっている。光変調層64は、さらに、例えば、電圧印加時に、光源20からの光に対して散乱性を示すようになっている。光変調層64は、例えば、
図20に示したように、高分子領域64Aと、高分子領域64A内に分散された複数の液晶領域64Bとを含んだ複合層となっている。高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、形状異方性を有しており、さらに、光学異方性も有している。なお、液晶領域64Bは本技術の第1領域の一具体例に相当し、高分子領域64Aは本技術の第2領域の一具体例に相当する。
【0110】
(形状異方性)
図23は、光変調層64のうち配向膜65近傍のXY平面での断面構成の一例を表したものである。
図24は、光変調層64のうち配向膜33近傍のXY平面での断面構成の一例を表したものである。
【0111】
高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、近傍領域30aのうち配向膜65の近傍において、透明基板31の表面と交差する方向に延在している。液晶領域64Bは、例えば、
図23に示したように、透明基板31の法線方向から見たときに、近傍領域30aのうち配向膜65の近傍において、高分子領域64A内に点在している。高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、近傍領域30aのうち配向膜33の近傍において、光入射面10Aと平行または略平行な方向であって、かつ透明基板31の表面と平行または略平行な方向に延在している。つまり、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、近傍領域30aのうち配向膜33の近傍において、線状光源と平行または略平行な方向に延在している。また、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行な方向であって、かつ透明基板31の表面と平行または略平行な方向に延在している。つまり、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、遠方領域30bにおいて、線状光源と平行または略平行な方向に延在している。
【0112】
高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、例えば、近傍領域30aにおいて、光変調層60の一端から他端に渡って連続して延在していたり、断続して延在していたりする。高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、例えば、遠方領域30bにおいて、光変調層60の一端から他端に渡って連続して延在していたり、断続して延在していたりする。高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、例えば、近傍領域30aのうち配向膜33の近傍において、光入射面10Aと直交する方向に、交互に並んで配置されている。高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、例えば、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと直交する方向に、交互に並んで配置されている。
【0113】
図25A,
図25Bは、光変調層64のうち近傍領域30aにおけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の構造上の周期を表したものである。
図26A,
図26Bは、光変調層64のうち遠方領域30bにおけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の構造上の周期を表したものである。光変調層64は、例えば、
図25A,
図25Bに示したように、近傍領域30aのうち配向膜65の近傍において、X軸方向に周期Ph7、Y軸方向に周期Ph5、Z軸方向に周期Pv3の規則的な構造を有している。光変調層64は、また、例えば、
図25A,
図25Bに示したように、近傍領域30aのうち配向膜33の近傍において、X軸方向に周期Ph8、Y軸方向に周期Ph6、Z軸方向に周期Pv4の規則的な構造を有している。
【0114】
近傍領域30aのうち配向膜65近傍において、高分子領域64Aは、上述の低分子モノマーを配向膜63の作用によって配向させた状態で重合化することにより得られた高分子材料によって構成されている。そのため、近傍領域30aのうち配向膜65近傍において、高分子領域64Aと液晶領域64Bとの界面は、配向膜65の配向方向と直交する方向において密に形成され、配向膜65の配向方向において疎に形成されている。
【0115】
近傍領域30aのうち配向膜33近傍において、高分子領域64Aは、上述の低分子モノマーを配向膜33の作用によって配向させた状態で重合化することにより得られた高分子材料によって構成されている。そのため、近傍領域30aのうち配向膜33近傍において、高分子領域64Aと液晶領域64Bとの界面は、配向膜33の配向方向と直交する方向において密に形成され、配向膜33の配向方向において疎に形成されている。
【0116】
遠方領域30bにおいて、高分子領域64Aは、上述の低分子モノマーを配向膜33,63の作用によって配向させた状態で重合化することにより得られた高分子材料によって構成されている。そのため、遠方領域30bにおいて、高分子領域64Aと液晶領域64Bとの界面は、配向膜33,63の配向方向と直交する方向において密に形成され、配向膜33,63の配向方向において疎に形成されている。
【0117】
高分子領域64Aの、光変調層64に占める割合α2は、
図27に示したように、光源20からの距離に拘らず、一定(均一)または略一定(略均一)となっている。割合α2は、例えば、50〜98重量%であり、好ましくは75〜95重量%であり、より好ましくは85〜92である。割合α2は、例えば、光変調層64の原料の1つとして用いられる低分子モノマーの重量比や、低分子モノマーに照射する紫外線の強度もしくは積算量などによって調整可能なものである。
【0118】
高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、電場に対する応答速度が互いに異なっている。高分子領域64Aは、電場に対する応答性が相対的に低く、液晶領域64Bは、電場に対する応答性が相対的に高い。高分子領域64Aは、高分子材料を含んで構成されている。高分子領域64Aは、例えば、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または液晶領域64Bの応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている。高分子領域64Aは、低分子モノマーを重合化することにより得られた高分子材料によって形成されている。高分子領域64Aは、液晶領域64Bの配向方向または配向膜33,65の配向方向に沿って配向した、配向性および重合性を有するモノマーを熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている。
【0119】
液晶領域64Bは、液晶材料を含んで構成されており、高分子領域64Aの応答速度よりも十分に早い応答速度を有している。液晶領域64B内に含まれる液晶材料(液晶分子)は、例えば棒状分子である。液晶領域64B内に含まれる液晶分子として、正の誘電率異方性を有するもの(いわゆるポジ型液晶)を用いることが好ましい。
【0120】
(光学異方性)
図28は、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域64Aおよび液晶領域64B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図28中の楕円体164Aは、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域64Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図28中の楕円体164Bは、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける液晶領域64Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0121】
図29は、電圧印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域64Aおよび液晶領域64B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図29中の楕円体164Aは、電圧印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域64Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図29中の楕円体164Bは、電圧印加時の、遠方領域30bにおける液晶領域64Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0122】
図30は、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域64Aおよび液晶領域64B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図30中の楕円体164Aは、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域64Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図30中の楕円体164Bは、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける液晶領域64Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0123】
図31は、電圧印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域64Aおよび液晶領域64B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図31中の楕円体164Aは、電圧印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域64Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図31中の楕円体164Bは、電圧印加時の、近傍領域30aにおける液晶領域64Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0124】
高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、例えば、
図28に示したように、電圧無印加時に、遠方領域30bにおける高分子領域64Aの光軸AX3(具体的には楕円体164Aの長軸)および液晶領域64Bの光軸AX4(具体的には楕円体164Bの長軸)の向きが互いに一致する(平行となる)構成となっている。なお、光軸AX3,AX4とは、偏光方向によらず屈折率が1つの値になるような光線の進行方向と平行な線を指している。また、電圧無印加時に、光軸AX3および光軸AX4の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX3の向きと光軸AX4の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0125】
液晶領域64Bでは、光軸AX4は、電圧無印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。配向膜33,65がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX4は、電圧無印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。
【0126】
一方、高分子領域64Aでは、光軸AX3は、電圧印加の有無に拘らず、一定となる構成となっている。具体的には、光軸AX3は、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。つまり、光軸AX3は、電圧無印加時に、遠方領域30bにおいて、光軸AX4と平行または略平行となっている。配向膜33,65がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX3は、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。つまり、この場合にも、光軸AX3は、電圧無印加時に、光軸AX4と平行または略平行となっている。
【0127】
高分子領域64Aおよび液晶領域64Bの常光屈折率が互いに等しく、かつ高分子領域64Aおよび液晶領域64Bの異常光屈折率が互いに等しいことが好ましい。この場合に、例えば、電圧無印加時には、あらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、高い透明性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層64内で散乱されることなく、光変調層64を透過する。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子60内で透明となった領域(透明領域30A)の界面において全反射され、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、輝度を均一にした場合と比べて下がる。
【0128】
また、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、例えば、電圧印加時には、
図29に示したように、遠方領域30bにおいて、光軸AX3および光軸AX4の向きが互いに異なる(交差もしくは直交する)構成となっている。液晶領域64Bでは、光軸AX4は、電圧印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に透明基板31の法線と平行または略平行となっている。
【0129】
したがって、電圧印加時には、光変調層64において、あらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層64内で散乱される。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子60内で散乱状態となった領域(散乱領域30B)の界面を透過すると共に、反射板40側に透過した光は反射板40で反射され、光変調素子60を透過する。従って、散乱領域30Bの輝度は、輝度を均一にした場合と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0130】
なお、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bの常光屈折率は、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。また、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bの異常光屈折率についても、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0131】
また、高分子領域64Aの屈折率差(=異常光屈折率−常光屈折率)や、液晶領域64Bの屈折率差(=異常光屈折率−常光屈折率)は、できるだけ大きいことが好ましく、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。これは、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bの屈折率差が大きい場合には、光変調層64の散乱能が高くなり、導光条件を容易に破壊することができ、導光板10からの光を取り出しやすいからである。
【0132】
高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、例えば、
図30に示したように、電圧無印加時に、近傍領域30aにおける高分子領域64Aの光軸AX3および液晶領域64Bの光軸AX4の向きが互いに一致する(平行となる)構成となっている。なお、電圧無印加時に、光軸AX3および光軸AX4の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX3の向きと光軸AX4の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0133】
近傍領域30aにおける液晶領域64Bでは、光軸AX4の向きは、電圧無印加時に、配向膜33側から配向膜65側に向かうにつれて、立ち上がる方向に変化している。具体的には、光軸AX4は、配向膜33側において、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。配向膜33がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX4は、電圧無印加時に、配向膜33側において、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。つまり、電圧無印加時に、光軸AX4は、配向膜33側において、線状光源と平行または略平行となっている。また、光軸AX4は、電圧無印加時に、配向膜65側において、透明基板31の法線と平行または略平行となっている。配向膜65がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX4は、配向膜65側において、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の法線と所定のプレチルト角で交差している。つまり、電圧無印加時に、光軸AX4は、配向膜65側において、線状光源と直交または略直交している。
【0134】
近傍領域30aにおける高分子領域64Aでは、光軸AX3の向きは、電圧印加の有無に拘らず、配向膜33側から配向膜65側に向かうにつれて、立ち上がる方向に変化している。具体的には、光軸AX3は、配向膜33側において、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。つまり、電圧無印加時に、光軸AX3は、配向膜33側において、線状光源と平行または略平行となっており、光軸AX4と平行または略平行となっている。配向膜33がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX3は、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。つまり、この場合にも、電圧無印加時に、光軸AX3は、配向膜33側において、光軸AX4と平行または略平行となっている。また、光軸AX3は、配向膜65側において、透明基板31の法線と平行または略平行となっている。つまり、電圧無印加時に、光軸AX3は、配向膜65側において、透明基板31の法線と平行または略平行となっており、光軸AX4と平行または略平行となっている。配向膜65がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX3は、配向膜65側において、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の法線と所定のプレチルト角で交差している。つまり、この場合にも、電圧無印加時に、光軸AX3は、配向膜65側において、光軸AX4と平行または略平行となっている。
【0135】
また、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bでは、電圧印加時には、例えば、
図31に示したように、近傍領域30aの配向膜33側において、光軸AX3および光軸AX4の向きが互いに異なって(直交もしくは略直交して)いる。液晶領域64Bでは、電圧印加時に、光軸AX4が、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に透明基板31の法線と平行または略平行となっている。
【0136】
したがって、電圧印加時には、光変調層64の配向膜33側において、あらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層64の配向膜33側で散乱される。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子60内で散乱状態となった領域(散乱領域30B)の界面を透過すると共に、反射板40側に透過した光は反射板40で反射され、光変調素子60を透過する。従って、散乱領域30Bの輝度は、輝度を均一にした場合と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。ただし、電圧印加時に、光変調層64の配向膜65側において、あらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、高い透明性が得られる。そのため、電圧印加時に、光変調層64の配向膜65側は、光源20からの光の散乱には寄与しない。
【0137】
(異方性散乱)
次に、本実施の形態における異方性散乱について説明する。本実施の形態において、異方性散乱は、(a)散乱領域30Bにおける、高分子領域64Aと液晶領域64Bとの界面(散乱界面)の存在確率の不均一性と、(b)散乱領域30Bにおける複屈折性とに起因して生じている。そこで、以下では、散乱領域30Bにおける散乱界面の存在確率の不均一性と、散乱領域30Bにおける複屈折性とについて詳細に説明する。
【0138】
---散乱界面の存在確率の不均一性---
遠方領域30bにおける散乱領域30Bでは、高分子領域64Aと液晶領域64Bとの界面は、配向膜33の配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜33の配向方向と平行な方向において疎に配置されている。近傍領域30aのうち配向膜33側の散乱領域30Bでは、高分子領域64Aと液晶領域64Bとの界面は、配向膜33の配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜33の配向方向と平行な方向において疎に配置されている。近傍領域30aのうち配向膜65側の散乱領域30Bでは、高分子領域64Aと液晶領域64Bとの界面は、配向膜65のうち近傍領域30aの配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜65のうち近傍領域30aの配向方向と平行な方向において疎に配置されている。
【0139】
配向膜33の配向方向と直交する方向とは、第1の方向または第2の方向を指している。配向膜33の配向方向と平行な方向とは、第3の方向を指している。配向膜65のうち近傍領域30aの配向方向と直交する方向とは、透明基板31の表面と平行な方向を指している。配向膜65のうち近傍領域30aの配向方向と平行な方向とは、第2の方向を指している。
【0140】
近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。同様に、近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、散乱領域30Bを第2の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。そのため、これらの光は、大きく散乱される。
【0141】
近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。そのため、この光の散乱は、近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱と比べて小さい。
【0142】
---複屈折性---
一方で、近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、散乱領域30Bを、第1の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域34Bの異常光屈折率と高分子領域34Aの常光屈折率との差、および液晶領域34Bの常光屈折率と高分子領域34Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。そのため、散乱領域30Bを、第1の方向に伝播する光は、大きく散乱される。
【0143】
近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、第2の方向または第3の方向に伝播する光は、高分子領域34Aにおける筋状構造の短軸方向または長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域34Bの異常光屈折率と高分子領域34Aの常光屈折率との差だけを感じながら伝播する。その結果、散乱領域30Bでは、散乱領域30Bを、光入射面10Aと平行な方向であって、かつ透明基板31の表面と平行な方向に伝播する光の散乱は、散乱領域30Bを、光入射面10Aと直交する方向に伝播する光の散乱と比べて小さい。
【0144】
つまり、光変調層64は、近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、第1の散乱が第3の散乱よりも大きい異方性散乱を示す構成となっている。
【0145】
ここで、第1の散乱の大きさをAとし、第2の散乱の大きさをBとし、第3の散乱の大きさをCとする。近傍領域30aにおける第1の散乱の大きさをA1とし、近傍領域30aにおける第3の散乱の大きさをC1とする。遠方領域30bにおける第1の散乱の大きさをA2とし、遠方領域30bにおける第3の散乱の大きさをC2とする。このとき、光変調層64は、当該光変調層64が散乱性を示すとき、以下の式を満たす構成となっている。
A>B>C
A1/C1<A2/C2
【0146】
次に、光変調層64がこのような異方性散乱を示すときのメリットについて説明する。光学等方性を有する光変調層は、等方的な散乱特性を示す。そのような光変調層を本実施の形態の光変調層64の代わりに用いた場合、導光板10面内と平行方向にも散乱する光が多く、導光条件を破壊するまでに光の伝播方向を変える確率が小さくなる。一方、本実施の形態では、上の式からわかるように、光変調層64に入射した光は、導光板10の上面に対して垂直な方向によく散乱するので、導光条件を破壊する方向に優先的に散乱する。従って、光変調層64が異方性散乱を示すことで、導光板10からの光取り出し効率が高くなると考えられる。
【0147】
導光光の散乱性を高くするという観点からは、高分子領域64Aの、短軸方向の平均的な筋状組織サイズは、0.1μm以上10μm以下となっていることが好ましく、0.2μm以上2.0μm以下の範囲であることがより好ましい。
【0148】
次に、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおける異方性散乱の大きさについて説明する。
【0149】
散乱の異方性の大きさは、第1の方向(X軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさ、第3の方向(Y軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさ、および第2の方向(Z軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさの3軸間の商を指している。3軸間の商は、具体的には、以下の3つ((A)〜(C))の総和を指している。3軸間の商が大きい場合には、散乱の異方性が大きく、3軸間の商が小さい場合には、散乱の異方性が小さい。なお、以下の(A)〜(C)は、分子の値が分母の値よりも大きくなっていることを前提としている。したがって、分子の値が分母の値よりも小さくなっている事例では、以下の(A)〜(C)において分子と分母を互いに入れ替えることが好ましい。
【0150】
(A)(第1の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第3の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
(B)(第2の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第3の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
(C)(第1の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第2の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
【0151】
散乱の異方性の大きさは、(a)散乱領域30Bにおける、高分子領域64Aと液晶領域64Bとの界面(散乱界面)の存在確率の不均一性と、(b)散乱領域30Bにおける複屈折性とによって決まる。散乱の異方性の大きさでは、上記の(a)の要素が支配的である。それは、散乱界面の存在確率を考えたときに、理想的には第3の方向には同じ媒体が続いているので第3の方向には散乱せず、第1の方向および第2の方向のみで散乱するからである。このとき、机上では、第3の方向の散乱はゼロとなるので、第3の方向と、第1の方向および第2の方向との散乱比は無限大になる。一方、複屈折性を考えたときに、第1の方向では2つの偏光成分が散乱するが、第2の方向および第3の方向では1つの偏光成分しか散乱しない。このとき、第1の方向と、第2の方向および第3の方向との散乱比は、高々2倍にしかならない。従って、散乱の異方性の大きさでは、上記の(a)の要素が支配的となる。そこで、以下では、散乱界面の存在確率と、散乱の異方性の大きさとの関係について説明し、複屈折性と、散乱の異方性の大きさとの関係についての説明は割愛する。
【0152】
散乱の異方性の大きさは、光変調層64における第1の方向の周期、光変調層64における第3の方向の周期、および光変調層64における第2の方向の周期の3軸間の商に対応している。3軸間の商は、具体的には、以下の3つ((D)〜(F))の総和を指している。なお、以下の(D)〜(F)は、分子の値が分母の値よりも大きくなっていることを前提としている。したがって、分子の値が分母の値よりも小さくなっている事例では、以下の(D)〜(F)において分子と分母を互いに入れ替えることが好ましい。
【0153】
(D)(光変調層64における第3の方向の周期)/(光変調層64における第1の方向の周期)
(E)(光変調層64における第3の方向の周期)/(光変調層64における第2の方向の周期)
(F)(光変調層64における第2の方向の周期)/(光変調層64における第1の方向の周期)
【0154】
近傍領域30aおよび遠方領域30bのうち配向膜33近傍における散乱の異方性の大きさは、Ph6/Ph8+Ph6/Pv4+Pv4/Ph8に対応した値となっている。近傍領域30aのうち配向膜65近傍における散乱の異方性の大きさは、Ph5/Ph7+Pv3/Ph5+Pv3/Ph7に対応した値となっている。遠方領域30bのうち配向膜65近傍における散乱の異方性の大きさは、Ph6/Ph8+Ph6/Pv4+Pv4/Ph8に対応した値となっている。ここで、各周期は、例えば、以下の関係となっている。
Ph5/Ph7<Ph6/Ph8
Pv3/Ph5<Ph6/Pv4
Pv3/Ph7≒Pv4/Ph8
従って、光変調層64は、当該光変調層64が散乱性を示すとき、A>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たす構成となっていると言える。
【0155】
ところで、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおいて散乱の異方性が互いに相違しているのは、近傍領域30aと遠方領域30bとで、高分子領域64Aの光軸AX3の向きが光変調層64の厚さ方向において変化しているからである。具体的には、近傍領域30aの一部の散乱の異方性が、光変調層64のうちその他の部分の散乱の異方性よりも小さくなっているからである。本実施の形態では、高分子領域64Aの光軸AX3の向きを光変調層64の厚さ方向において変化させる方法として、透明基板31側の配向膜33として水平配向膜が用いられ、透明基板37側の配向膜65として垂直配向膜が用いられている。
【0156】
[効果]
このように、本実施の形態では、光変調層64のうち光源20寄りの近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(A1/C1)が、光変調層64のうち光源20から離れた遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(A2/C2)よりも小さくなっている。これにより、光変調層64内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。ここで、光源20の配列に起因する明暗のストライプは、第1の散乱と第3の散乱との差が大きいことに起因して起こる。従って、上記の異方性散乱が、光源20近傍において緩和されることにより、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。また、本実施の形態では、光変調層64のうち光源20近傍だけで、上記の異方性散乱が緩和されているので、光変調層64全体において、上記の異方性散乱が緩和されている場合よりも、高輝度を得ることができる。さらに、本実施の形態では、第2の散乱が第3の散乱よりも強くなっていることから、光源20からの光は導光条件を破壊する方向に優先的に散乱し、光取り出し効率が高くなる。従って、本実施の形態では、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。
【0157】
<3.第3の実施の形態>
次に、本技術の第3の実施の形態に係る照明装置3について説明する。本実施の形態の照明装置3は、
図32に示したように、光変調素子30に代わって光変調素子70を設けた点で、上記実施の形態の照明装置1の構成と相違する。そこで、以下では、上記各実施の形態の構成との共通点についての説明を適宜、省略し、上記各実施の形態の構成との相違点について主に説明する。
【0158】
図33は、光変調素子70の断面構成の一例を表したものである。光変調素子70は、例えば、透明基板31、下側電極32、配向膜73、光変調層74、配向膜75、上側電極36および透明基板37を反射板40側から順に配置されたものである。
【0159】
配向膜73,75は、光変調層74を挟み込むように配置されている。配向膜73,75は、例えば、光変調層74に用いられる液晶や低分子モノマーを配向させるものである。配向膜73,75は、光変調層74が散乱性を示すとき、後述する2つの式(A>B>CおよびA1/C1<A2/C2)を満たすように形成されたものである。配向膜73,75は、それぞれ、配向方向の互いに異なる2種類の水平配向膜の複合膜である。配向膜73,75は、
図34に示したように、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向に配向方向を有する水平配向膜となっており、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行な方向に配向方向を有する水平配向膜となっている。配向膜73,75の配向方向は、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向を向いており、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行な方向を向いている。配向膜73,75に用いられる水平配向膜が、ラビング処理を用いて形成されたものである場合、配向膜73,75のラビング方向は、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向を向いており、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行な方向を向いている。近傍領域30aにおいて、配向膜73の角度θ1と、配向膜75の角度θ1とが、設計のし易さの観点から、互いに等しくなっていることが好ましいが、互いに異なっていてもよい。
【0160】
なお、配向膜73,75は、例えば、
図35に示したように、近傍領域30aと遠方領域30bとの境界付近において、光源20から遠ざかるにつれて配向方向が光入射面10Aと平行または略平行な方向に徐々に変化する移行領域30Dを有していてもよい。
【0161】
光変調層74は、電場の大きさに応じて、光源20からの光に対して全体的もしくは部分的に散乱性もしくは透明性を示すものである。光変調層74は、例えば、電圧無印加時に、光源20からの光に対して透明性を示すようになっている。光変調層74は、さらに、例えば、電圧印加時に、光源20からの光に対して散乱性を示すようになっている。光変調層74は、例えば、
図33に示したように、高分子領域74Aと、高分子領域74A内に分散された複数の液晶領域74Bとを含んだ複合層となっている。高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、形状異方性を有しており、さらに、光学異方性も有している。なお、液晶領域74Bは本技術の第1領域の一具体例に相当し、高分子領域74Aは本技術の第2領域の一具体例に相当する。
【0162】
(形状異方性)
図36は、光変調層74のXY平面での断面構成の一例を表したものである。
【0163】
高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、ともに、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向であって、かつ透明基板31の表面と平行または略平行な方向に延在している。つまり、高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、ともに、近傍領域30aにおいて、線状光源と角度θ1で交差する方向に延在している。また、高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、ともに、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行な方向であって、かつ透明基板31の表面と平行または略平行な方向に延在している。つまり、高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、ともに、遠方領域30bにおいて、線状光源と平行または略平行な方向に延在している。
【0164】
高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、ともに、例えば、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおいて、光変調層70の一端から他端に渡って連続して延在していたり、断続して延在していたりする。また、高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、例えば、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aと角度θ1で交差する方向と直交する方向に、交互に並んで配置されている。また、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、例えば、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと直交する方向に、交互に並んで配置されている。
【0165】
図37A,
図37Bは、光変調層74のうち近傍領域30aにおけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の構造上の周期を表したものである。
図38A,
図38Bは、光変調層74のうち遠方領域30bにおけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の構造上の周期を表したものである。光変調層74は、例えば、
図37A,
図37Bに示したように、近傍領域30aにおいて、X軸方向に周期Ph10、Y軸方向に周期Ph9、Z軸方向に周期Pv5の規則的な構造を有している。光変調層74は、また、例えば、
図38A,
図38Bに示したように、遠方領域30bにおいて、X軸方向に周期Ph12、Y軸方向に周期Ph11、Z軸方向に周期Pv6の規則的な構造を有している。
【0166】
近傍領域30aにおける高分子領域74Aは、上述の低分子モノマーを配向膜73,75のうち近傍領域30aの作用によって配向させた状態で重合化することにより得られた高分子材料によって構成されている。そのため、近傍領域30aにおいて、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面は、配向膜73,75の配向方向と直交する方向において密に形成され、配向膜73,75の配向方向において疎に形成されている。
【0167】
遠方領域30bにおける高分子領域74Aは、上述の低分子モノマーを配向膜73,75のうち遠方領域30bの作用によって配向させた状態で重合化することにより得られた高分子材料によって構成されている。そのため、遠方領域30bにおいて、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面は、配向膜73,75の配向方向と直交する方向において密に形成され、配向膜73,75の配向方向において疎に形成されている。
【0168】
高分子領域74Aの、光変調層74に占める割合α3は、
図39に示したように、光源20からの距離に拘らず、一定(均一)または略一定(略均一)となっている。割合α3は、例えば、50〜98重量%であり、好ましくは75〜95重量%であり、より好ましくは85〜92である。割合α3は、例えば、光変調層74の原料の1つとして用いられる低分子モノマーの重量比や、低分子モノマーに照射する紫外線の強度もしくは積算量などによって調整可能なものである。
【0169】
高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、電場に対する応答速度が互いに異なっている。高分子領域74Aは、電場に対する応答性が相対的に低く、液晶領域74Bは、電場に対する応答性が相対的に高い。高分子領域74Aは、高分子材料を含んで構成されている。高分子領域74Aは、例えば、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または液晶領域74Bの応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている。高分子領域74Aは、低分子モノマーを重合化することにより得られた高分子材料によって形成されている。高分子領域74Aは、配向膜73,75の配向方向に沿って配向した、配向性および重合性を有する低分子モノマーを熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている。
【0170】
液晶領域74Bは、液晶材料を含んで構成されており、高分子領域74Aの応答速度よりも十分に早い応答速度を有している。液晶領域74B内に含まれる液晶材料(液晶分子)は、例えば棒状分子である。液晶領域74B内に含まれる液晶分子として、正の誘電率異方性を有するもの(いわゆるポジ型液晶)を用いることが好ましい。
【0171】
(光学異方性)
図40は、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域74Aおよび液晶領域74B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図40中の楕円体174Aは、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域74Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図40中の楕円体174Bは、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける液晶領域74Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0172】
図41は、電圧印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域74Aおよび液晶領域74B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図41中の楕円体174Aは、電圧印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域74Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図41中の楕円体174Bは、電圧印加時の、遠方領域30bにおける液晶領域74Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0173】
図42は、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域74Aおよび液晶領域74B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図42中の楕円体174Aは、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域74Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図42中の楕円体174Bは、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける液晶領域74Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0174】
図43は、電圧印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域74Aおよび液晶領域74B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図43中の楕円体174Aは、電圧印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域74Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図43中の楕円体174Bは、電圧印加時の、近傍領域30aにおける液晶領域74Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0175】
高分子領域64Aおよび液晶領域64Bは、例えば、
図40に示したように、電圧無印加時に、遠方領域30bにおける高分子領域74Aの光軸AX5(具体的には楕円体174Aの長軸)および液晶領域74Bの光軸AX6(具体的には楕円体174Bの長軸)の向きが互いに一致する(平行となる)構成となっている。なお、光軸AX5,AX6とは、偏光方向によらず屈折率が1つの値になるような光線の進行方向と平行な線を指している。また、電圧無印加時に、光軸AX5および光軸AX6の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX5の向きと光軸AX6の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0176】
液晶領域74Bでは、光軸AX6は、電圧無印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。配向膜73,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX6は、電圧無印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。
【0177】
一方、高分子領域74Aでは、光軸AX5は、電圧印加の有無に拘らず、一定となっている。具体的には、光軸AX5は、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。つまり、光軸AX5は、電圧無印加時に、遠方領域30bにおいて、光軸AX6と平行または略平行となっている。配向膜73,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX5は、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。つまり、この場合にも、光軸AX5は、電圧無印加時に、光軸AX6と平行または略平行となっている。
【0178】
高分子領域74Aおよび液晶領域74Bの常光屈折率が互いに等しく、かつ高分子領域74Aおよび液晶領域74Bの異常光屈折率が互いに等しいことが好ましい。この場合に、例えば、電圧無印加時には、あらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、高い透明性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層74内で散乱されることなく、光変調層74を透過する。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子70内で透明となった領域(透明領域30A)の界面において全反射され、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、輝度を均一にした場合と比べて下がる。
【0179】
また、高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、例えば、電圧印加時には、
図41に示したように、遠方領域30bにおいて、光軸AX5および光軸AX6の向きが互いに異なる(交差もしくは直交する)構成となっている。液晶領域74Bでは、光軸AX6は、電圧印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に透明基板31の法線と平行または略平行となっている。つまり、電圧印加時に、光軸AX6は、遠方領域30bにおいて、部分電極32Aまたは部分電極36Aを含む面と直交もしくは略直交している。
【0180】
したがって、電圧印加時には、光変調層74において、あらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層74内で散乱される。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子70内で散乱状態となった領域(散乱領域30B)の界面を透過すると共に、反射板40側に透過した光は反射板40で反射され、光変調素子70を透過する。従って、散乱領域30Bの輝度は、輝度を均一にした場合と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0181】
なお、高分子領域74Aおよび液晶領域74Bの常光屈折率は、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。また、高分子領域74Aおよび液晶領域74Bの異常光屈折率についても、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0182】
また、高分子領域74Aの屈折率差(=異常光屈折率−常光屈折率)や、液晶領域74Bの屈折率差(=異常光屈折率−常光屈折率)は、できるだけ大きいことが好ましく、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。これは、高分子領域74Aおよび液晶領域74Bの屈折率差が大きい場合には、光変調層74の散乱能が高くなり、導光条件を容易に破壊することができ、導光板10からの光を取り出しやすいからである。
【0183】
高分子領域74Aおよび液晶領域74Bは、例えば、
図42に示したように、電圧無印加時に、近傍領域30aにおける高分子領域74Aの光軸AX5および液晶領域74Bの光軸AX6の向きが互いに一致する(平行となる)構成となっている。なお、電圧無印加時に、光軸AX5および光軸AX6の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX5の向きと光軸AX6の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0184】
近傍領域30aの液晶領域74Bでは、光軸AX6は、電圧無印加時に、角度θ1の方向(配向方向)と平行または略平行な方向を向いている。配向膜73,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX6は、電圧無印加時に、近傍領域30aの配向膜73側において、角度θ1の方向(配向方向)と平行または略平行な方向を向くと共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差する方向を向いている。
【0185】
高分子領域74Aでは、光軸AX5は、電圧印加の有無に拘らず、角度θ1の方向(配向方向)と平行または略平行な方向を向いている。配向膜73,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX5は、角度θ1の方向(配向方向)と平行または略平行な方向を向くと共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差する方向を向いている。つまり、この場合にも、光軸AX5は、電圧無印加時には、光軸AX6と平行または略平行となっている。
【0186】
高分子領域74Aおよび液晶領域74Bでは、電圧印加時には、
図43に示したように、近傍領域30aにおいて、光軸AX5および光軸AX6の向きが互いに異なって(直交もしくは略直交して)いる。また、液晶領域74Bでは、光軸AX6は、電圧印加時に、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に透明基板31の法線と平行または略平行となっている。
【0187】
したがって、電圧印加時には、光変調層74において、あらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層74で散乱される。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子70内で散乱状態となった領域(散乱領域30B)の界面を透過すると共に、反射板40側に透過した光は反射板40で反射され、光変調素子70を透過する。従って、散乱領域30Bの輝度は、輝度を均一にした場合と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0188】
角度θ1(例えばラビング角)が、60°以上90°未満となっている場合には、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストが大幅に低減され、光源20近傍における輝度ムラをほとんどなくすことができる。なお、光変調層74の原料に単官能のモノマー(重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマー)を添加するか、または光変調層74の原料に対して照射する紫外線の強度や積算量を下げて、光変調層74がA>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たし易くした場合には、角度θ1(例えばラビング角)の好適な範囲が、30°以上90°未満となり得る。また、光変調層74の原料に単官能のモノマー(重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマー)を添加すると共に、光変調層74の原料に対して照射する紫外線の強度や積算量を下げて、より一層、光変調層74がA>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たし易くした場合には、角度θ1(例えばラビング角)の好適な範囲が、10°以上90°未満となり得る。
【0189】
(異方性散乱)
次に、本実施の形態における異方性散乱について説明する。本実施の形態において、異方性散乱は、(a)散乱領域30Bにおける、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面(散乱界面)の存在確率の不均一性と、(b)散乱領域30Bにおける複屈折性とに起因して生じている。そこで、以下では、散乱領域30Bにおける散乱界面の存在確率の不均一性と、散乱領域30Bにおける複屈折性とについて詳細に説明する。
【0190】
---散乱界面の存在確率の不均一性---
遠方領域30bにおける散乱領域30Bでは、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面は、配向膜73,75のうち遠方領域30bの配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜73,75のうち遠方領域30bの配向方向と平行な方向において疎に配置されている。近傍領域30aにおける散乱領域30Bでは、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面は、配向膜73,75のうち近傍領域30aの配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜73,75のうち近傍領域30aの配向方向と平行な方向において疎に配置されている。
【0191】
配向膜73,75のうち遠方領域30bの配向方向と直交する方向とは、第1の方向または第2の方向を指している。配向膜73,75のうち遠方領域30bの配向方向と平行な方向とは、第3の方向を指している。配向膜73,75のうち近傍領域30aの配向方向と直交する方向とは、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向と直交する方向であって、かつ透明基板31の表面と平行な方向を指している。配向膜73,75のうち近傍領域30aの配向方向と平行な方向とは、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向であって、かつ透明基板31の表面と平行な方向を指している。
【0192】
遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。同様に、遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第2の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。そのため、これらの光は、大きく散乱される。
【0193】
遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。そのため、この光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0194】
近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期と、高分子領域74Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期との間の周期で界面に入射する。そのため、この光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0195】
近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期と、高分子領域74Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期との間の周期で界面に入射する。そのため、この光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを光入射面10Aと直交する方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0196】
なお、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱と、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光の散乱との大小関係は、それらの光の進行方向における、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面の周期の大小関係に依る。
【0197】
---複屈折性---
遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域74Bの異常光屈折率と高分子領域74Aの常光屈折率との差、および液晶領域74Bの常光屈折率と高分子領域74Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。そのため、遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、大きく散乱される。
【0198】
遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域74Bの異常光屈折率と高分子領域74Aの常光屈折率との差だけを感じながら伝播する。そのため、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0199】
近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期と、高分子領域74Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期との間の周期で、液晶領域74Bの異常光屈折率と高分子領域74Aの常光屈折率との差、および液晶領域74Bの常光屈折率と高分子領域74Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。また、ここでいう異常光屈折率の値は角度θ1で交差する分、常光屈折率に近くなるため、偏光による散乱性も弱くなる。そのため、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱は、遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0200】
近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域74Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期と、高分子領域74Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期との間の周期で、液晶領域74Bの異常光屈折率と高分子領域74Aの常光屈折率との差、および液晶領域74Bの常光屈折率と高分子領域74Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。また、ここでいう異常光屈折率の値は角度θ1で交差する分、常光屈折率に近くなるため、偏光による散乱性も弱くなる。
【0201】
角度θ1が45°より大きく90°未満となっている場合、第1の方向における、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面の周期が、第3の方向における、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面の周期よりも長くなる。そのため、この場合には、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを、第1の方向に伝播する光の散乱は、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを、第3の方向に伝播する光の散乱よりも小さくなる。
【0202】
また、角度θ1が0°より大きく45°より小さい場合、第1の方向における、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面の周期が、第3の方向における、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面の周期よりも短くなる。そのため、この場合には、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを、第1の方向に伝播する光の散乱は、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを、第3の方向に伝播する光の散乱よりも大きくなる。
【0203】
つまり、光変調層74は、遠方領域30bにおいて、第1の方向に伝播する光に対する散乱の方が、第3の方向に伝播する光に対する散乱よりも大きい異方性散乱を示す構成となっている。また、光変調層74は、近傍領域30aにおいて、角度θ1が45°より大きく90°未満となっている場合、第1の方向に伝播する光に対する散乱の方が、第3の方向に伝播する光に対する散乱よりも小さな異方性散乱を示す構成となっている。また、光変調層74は、近傍領域30aにおいて、角度θ1が0°より大きく45°より小さい場合、第1の方向に伝播する光に対する散乱の方が、第3の方向に対する散乱よりも大きい異方性散乱を示す構成となっている。
【0204】
ここで、第1の散乱の大きさをAとし、第2の散乱の大きさをBとし、第3の散乱の大きさをCとする。光変調層74のうち近傍領域30aにおける第1の散乱の大きさをA1とし、光変調層74のうち近傍領域30aにおける第3の散乱の大きさをC1とする。光変調層74のうち遠方領域30bにおける第1の散乱の大きさをA2とし、光変調層74のうち遠方領域30bにおける第3の散乱の大きさをC2とする。このとき、光変調層74は、当該光変調層74が散乱性を示すとき、以下の式を満たす構成となっている。
A>B>C
A1/C1<A2/C2
【0205】
次に、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおける異方性散乱の大きさについて説明する。
【0206】
散乱の異方性の大きさは、第1の方向(X軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさ、第3の方向(Y軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさ、および第2の方向(Z軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさの3軸間の商を指している。3軸間の商は、具体的には、以下の3つ((A)〜(C))の総和を指している。3軸間の商が大きい場合には、散乱の異方性が大きく、3軸間の商が小さい場合には、散乱の異方性が小さい。なお、以下の(A)〜(C)は、分子の値が分母の値よりも大きくなっていることを前提としている。したがって、分子の値が分母の値よりも小さくなっている事例では、以下の(A)〜(C)において分子と分母を互いに入れ替えることが好ましい。
【0207】
(A)(第1の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第3の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
(B)(第2の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第3の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
(C)(第1の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第2の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
【0208】
散乱の異方性の大きさは、(a)散乱領域30Bにおける、高分子領域74Aと液晶領域74Bとの界面(散乱界面)の存在確率の不均一性と、(b)散乱領域30Bにおける複屈折性とによって決まる。散乱の異方性の大きさでは、上記の(a)の要素が支配的である。それは、散乱界面の存在確率を考えたときに、理想的には第3の方向には同じ媒体が続いているので第3の方向には散乱せず、第1の方向および第2の方向のみで散乱するからである。このとき、机上では、第3の方向の散乱はゼロとなるので、第3の方向と、第1の方向および第2の方向との散乱比は無限大になる。一方、複屈折性を考えたときに、第1の方向では2つの偏光成分が散乱するが、第2の方向および第3の方向では1つの偏光成分しか散乱しない。このとき、第1の方向と、第2の方向および第3の方向との散乱比は、高々2倍にしかならない。従って、散乱の異方性の大きさでは、上記の(a)の要素が支配的となる。そこで、以下では、散乱界面の存在確率と、散乱の異方性の大きさとの関係について説明し、複屈折性と、散乱の異方性の大きさとの関係についての説明は割愛する。
【0209】
散乱の異方性の大きさは、光変調層74における第1の方向の周期、光変調層74における第3の方向の周期、および光変調層74における第2の方向の周期の3軸間の商に対応している。3軸間の商は、具体的には、以下の3つ((D)〜(F))の総和を指している。なお、以下の(D)〜(F)は、分子の値が分母の値よりも大きくなっていることを前提としている。したがって、分子の値が分母の値よりも小さくなっている事例では、以下の(D)〜(F)において分子と分母を互いに入れ替えることが好ましい。
【0210】
(D)(光変調層74における第3の方向の周期)/(光変調層74における第1の方向の周期)
(E)(光変調層74における第3の方向の周期)/(光変調層74における第2の方向の周期)
(F)(光変調層74における第2の方向の周期)/(光変調層74における第1の方向の周期)
【0211】
近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(A1/C1)は、Ph9/Ph10+Ph9/Pv5+Pv5/Ph10に対応した値となっている。また、遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(A2/C2)は、Ph11/Ph12+Ph11/Pv6+Pv6/Ph12に対応した値となっている。ここで、各周期は、例えば、以下の関係となっている。
Ph9/Ph10<Ph11/Ph12
Ph9/Pv5<Ph11/Pv6
Pv5/Ph10<Pv6/Ph12
従って、光変調層74は、当該光変調層74が散乱性を示すとき、A>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たす構成となっていると言える。
【0212】
ところで、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおいて散乱の異方性が互いに相違しているのは、近傍領域30aと遠方領域30bとで、配向方向が互いに異なっているからである。本実施の形態では、近傍領域30aと遠方領域30bとで、配向方向を互いに異ならせる方法として、近傍領域30aと遠方領域30bとで配向方向が互いに異なる一組の配向膜73,75が用いられている。具体的には、透明基板31側の配向膜73として、遠方領域30bの配向方向が0°となっており、かつ近傍領域30aに配向方向がθ1(0°<θ1≦90°)となっている水平配向膜が用いられている。透明基板37側の配向膜75として、遠方領域30bの配向方向が0°となっており、かつ近傍領域30aに配向方向がθ1となっている水平配向膜が用いられている。
【0213】
このように、本実施の形態では、光変調層74のうち光源20寄りの近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(A1/C1)が、光変調層74のうち光源20から離れた遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(A2/C2)よりも小さくなっている。これにより、光変調層74内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。ここで、光源20の配列に起因する明暗のストライプは、第1の散乱と第3の散乱との差が大きいことに起因して起こる。従って、上記の異方性散乱が、光源20近傍において緩和されることにより、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。また、本実施の形態では、光変調層74のうち光源20近傍だけで、上記の異方性散乱が緩和されているので、光変調層74全体において、上記の異方性散乱が緩和されている場合よりも、高輝度を得ることができる。さらに、本実施の形態では、第2の散乱が第3の散乱よりも強くなっていることから、光源20からの光は導光条件を破壊する方向に優先的に散乱し、光取り出し効率が高くなる。従って、本実施の形態では、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。
【0214】
<4.第4の実施の形態>
次に、本技術の第4の実施の形態に係る照明装置4について説明する。本実施の形態の照明装置4は、
図44に示したように、光変調素子30に代わって光変調素子80を設けた点で、上記実施の形態の照明装置1の構成と相違する。そこで、以下では、上記各実施の形態の構成との共通点についての説明を適宜、省略し、上記各実施の形態の構成との相違点について主に説明する。
【0215】
図45は、光変調素子80の断面構成の一例を表したものである。光変調素子80は、例えば、透明基板31、下側電極32、配向膜33、光変調層84、配向膜75、上側電極36および透明基板37を反射板40側から順に配置されたものである。
【0216】
配向膜33,75は、光変調層84を挟み込むように配置されている。配向膜33,75は、例えば、光変調層84に用いられる液晶やモノマーを配向させるものである。配向膜33,75は、光変調層84が散乱性を示すとき、後述する2つの式(A>B>CおよびA1/C1<A2/C2)を満たすように形成されたものである。配向膜33は、上記実施の形態と同様、
図46に示したように、光入射面10Aと平行な方向に配向方向を有する水平配向膜である。一方、配向膜75は、上記実施の形態と同様、
図46に示したように、配向方向の互いに異なる2種類の水平配向膜の複合膜である。具体的には、配向膜75の配向方向は、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向を向いており、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行な方向を向いている。なお、配向膜75は、上記実施の形態と同様、例えば、
図47に示したように、近傍領域30aと遠方領域30bとの境界付近において、光源20から遠ざかるにつれて配向方向が光入射面10Aと平行または略平行な方向に徐々に変化する移行領域30Dを有していてもよい。
【0217】
光変調層84は、電場の大きさに応じて、光源20からの光に対して全体的もしくは部分的に散乱性もしくは透明性を示すものである。光変調層84は、例えば、電圧無印加時に、光源20からの光に対して透明性を示すようになっている。光変調層84は、さらに、例えば、電圧印加時に、光源20からの光に対して散乱性を示すようになっている。光変調層84は、例えば、
図45に示したように、高分子領域84Aと、高分子領域84A内に分散された複数の液晶領域84Bとを含んだ複合層となっている。高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、形状異方性を有しており、さらに、光学異方性も有している。なお、液晶領域84Bは本技術の第1領域の一具体例に相当し、高分子領域84Aは本技術の第2領域の一具体例に相当する。
【0218】
(形状異方性)
図48は、光変調層84のうち配向膜75側の部分のXY平面での断面構成の一例を表したものである。
図49は、光変調層84のうち配向膜33側の部分のXY平面での断面構成の一例を表したものである。高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、ともに、近傍領域30aのうち配向膜75側において、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向であって、かつ透明基板31の表面と平行または略平行な方向に延在している。つまり、高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、ともに、近傍領域30aのうち配向膜75側において、線状光源と角度θ1で交差する方向に延在している。また、高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、ともに、近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、光入射面10Aと平行または略平行な方向であって、かつ透明基板31の表面と平行または略平行な方向に延在している。つまり、高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、ともに、近傍領域30aのうち配向膜33側の部分と、遠方領域30bとにおいて、線状光源と平行または略平行な方向に延在している。
【0219】
高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、ともに、例えば、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおいて、光変調層80の一端から他端に渡って連続して延在していたり、断続して延在していたりする。また、高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、例えば、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aと角度θ1で交差する方向と直交する方向に、交互に並んで配置されている。また、高分子領域34Aおよび液晶領域34Bは、例えば、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと直交する方向に、交互に並んで配置されている。
【0220】
図50A,
図50Bは、光変調層84のうち近傍領域30aにおけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の構造上の周期を表したものである。
図51A,
図51Bは、光変調層84のうち遠方領域30bにおけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の構造上の周期を表したものである。光変調層84は、例えば、
図50A,
図50Bに示したように、近傍領域30aのうち配向膜75側において、X軸方向に周期Ph10、Y軸方向に周期Ph9、Z軸方向に周期Pv5の規則的な構造を有している。光変調層84は、例えば、
図50A,
図50Bに示したように、近傍領域30aのうち配向膜33側において、X軸方向に周期Ph12、Y軸方向に周期Ph11、Z軸方向に周期Pv6の規則的な構造を有している。光変調層84は、また、例えば、
図51A,
図51Bに示したように、遠方領域30bにおいて、X軸方向に周期Ph12、Y軸方向に周期Ph11、Z軸方向に周期Pv6の規則的な構造を有している。
【0221】
近傍領域30aにおける高分子領域84Aは、上述の低分子モノマーを配向膜33,75のうち近傍領域30aの作用によって配向させた状態で重合化することにより得られた高分子材料によって構成されている。そのため、近傍領域30aのうち配向膜75側において、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面は、配向膜75の配向方向と直交する方向において密に形成され、配向膜75の配向方向において疎に形成されている。従って、周期Pv5,Ph10は短く、周期Ph9が長くなっている。また、近傍領域30aのうち配向膜33側において、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面は、配向膜33の配向方向と直交する方向において密に形成され、配向膜33の配向方向において疎に形成されている。
【0222】
遠方領域30bにおける高分子領域84Aは、上述の低分子モノマーを配向膜33,75のうち遠方領域30bの作用によって配向させた状態で重合化することにより得られた高分子材料によって構成されている。そのため、遠方領域30bにおいて、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面は、配向膜33,75の配向方向と直交する方向において密に形成され、配向膜33,75の配向方向において疎に形成されている。
【0223】
高分子領域84Aの、光変調層84に占める割合α4は、
図52に示したように、光源20からの距離に拘らず、一定(均一)または略一定(略均一)となっている。割合α3は、例えば、50〜98重量%であり、好ましくは75〜95重量%であり、より好ましくは85〜92である。割合α3は、例えば、光変調層84の原料の1つとして用いられる低分子モノマーの重量比や、低分子モノマーに照射する紫外線の強度もしくは積算量などによって調整可能なものである。
【0224】
高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、電場に対する応答速度が互いに異なっている。高分子領域84Aは、電場に対する応答性が相対的に低く、液晶領域84Bは、電場に対する応答性が相対的に高い。高分子領域84Aは、高分子材料を含んで構成されている。高分子領域84Aは、例えば、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または液晶領域84Bの応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている。高分子領域84Aは、低分子モノマーを重合化することにより得られた高分子材料によって形成されている。高分子領域84Aは、液晶領域84Bの配向方向または配向膜33,75の配向方向に沿って配向した、配向性および重合性を有するモノマーを熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている。
【0225】
液晶領域84Bは、液晶材料を含んで構成されており、高分子領域84Aの応答速度よりも十分に早い応答速度を有している。液晶領域84B内に含まれる液晶材料(液晶分子)は、例えば棒状分子である。液晶領域84B内に含まれる液晶分子として、正の誘電率異方性を有するもの(いわゆるポジ型液晶)を用いることが好ましい。
【0226】
(光学異方性)
図53は、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域84Aおよび液晶領域84B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図53中の楕円体184Aは、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域84Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図53中の楕円体184Bは、電圧無印加時の、遠方領域30bにおける液晶領域84Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0227】
図54は、電圧印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域84Aおよび液晶領域84B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図54中の楕円体184Aは、電圧印加時の、遠方領域30bにおける高分子領域84Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図54中の楕円体184Bは、電圧印加時の、遠方領域30bにおける液晶領域84Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0228】
図55は、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域84Aおよび液晶領域84B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図55中の楕円体184Aは、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域84Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図55中の楕円体184Bは、電圧無印加時の、近傍領域30aにおける液晶領域84Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0229】
図56は、電圧印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域84Aおよび液晶領域84B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。
図56中の楕円体184Aは、電圧印加時の、近傍領域30aにおける高分子領域84Aの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
図56中の楕円体184Bは、電圧印加時の、近傍領域30aにおける液晶領域84Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。
【0230】
高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、例えば、
図53に示したように、電圧無印加時に、遠方領域30bにおける高分子領域84Aの光軸AX7(具体的には楕円体184Aの長軸)および液晶領域84Bの光軸AX8(具体的には楕円体184Bの長軸)の向きが互いに一致する(平行となる)構成となっている。なお、光軸AX7,AX8とは、偏光方向によらず屈折率が1つの値になるような光線の進行方向と平行な線を指している。また、電圧無印加時に、光軸AX7および光軸AX8の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX7の向きと光軸AX8の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0231】
液晶領域84Bでは、光軸AX8は、電圧無印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。配向膜33,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX8は、電圧無印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。
【0232】
一方、高分子領域84Aでは、光軸AX7は、電圧印加の有無に拘らず、一定となっている。具体的には、光軸AX7は、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。つまり、電圧無印加時に、光軸AX7は、遠方領域30bにおいて、光軸AX8と平行または略平行となっている。配向膜33,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX7は、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。つまり、この場合にも、電圧無印加時には、光軸AX7は、光軸AX8と平行または略平行となっている。
【0233】
高分子領域84Aおよび液晶領域84Bの常光屈折率が互いに等しく、かつ高分子領域84Aおよび液晶領域84Bの異常光屈折率が互いに等しいことが好ましい。この場合に、例えば、電圧無印加時には、あらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、高い透明性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層84内で散乱されることなく、光変調層84を透過する。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子80内で透明となった領域(透明領域30A)の界面(透明基板31または導光板10と空気との界面)において全反射され、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、輝度を均一にした場合と比べて下がる。
【0234】
また、高分子領域84Aおよび液晶領域84Bでは、電圧印加時には、例えば、
図54に示したように、遠方領域30bにおいて、光軸AX7および光軸AX8の向きが互いに異なる(交差もしくは直交する)構成となっている。液晶領域84Bでは、光軸AX8は、電圧印加時に、遠方領域30bにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に透明基板31の法線と平行または略平行となる構成となっている。
【0235】
したがって、電圧印加時には、光変調層84において、あらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層84内で散乱される。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子80内で散乱状態となった領域(散乱領域30B)の界面を透過すると共に、反射板40側に透過した光は反射板40で反射され、光変調素子80を透過する。従って、散乱領域30Bの輝度は、輝度を均一にした場合と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0236】
なお、高分子領域84Aおよび液晶領域84Bの常光屈折率は、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。また、高分子領域84Aおよび液晶領域84Bの異常光屈折率についても、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0237】
また、高分子領域84Aの屈折率差(=異常光屈折率−常光屈折率)や、液晶領域84Bの屈折率差(=異常光屈折率−常光屈折率)は、できるだけ大きいことが好ましく、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。これは、高分子領域84Aおよび液晶領域84Bの屈折率差が大きい場合には、光変調層84の散乱能が高くなり、導光条件を容易に破壊することができ、導光板10からの光を取り出しやすいからである。
【0238】
高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、例えば、
図55に示したように、電圧無印加時に、近傍領域30aにおける高分子領域84Aの光軸AX7および液晶領域84Bの光軸AX8の向きが互いに一致する(平行となる)構成となっている。なお、電圧無印加時に、光軸AX7および光軸AX8の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX7の向きと光軸AX8の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0239】
近傍領域30aの液晶領域84Bでは、光軸AX8の向きは、電圧無印加時に、配向膜33側から配向膜75側に向かうにつれて、ねじれの方向に変化している。具体的には、光軸AX8は、近傍領域30aの配向膜33側において、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。配向膜33,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX8は、電圧無印加時に、近傍領域30aの配向膜33側において、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。また、光軸AX8は、電圧無印加時に、近傍領域30aの配向膜75側において、角度θ1の方向(配向方向)と平行または略平行な方向を向いている。なお、配向膜33,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX8は、電圧無印加時に、近傍領域30aの配向膜33側において、光入射面10Aと平行または略平行な方向を向くと共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差する方向を向いている。
【0240】
高分子領域84Aでは、光軸AX7の向きは、電圧印加の有無に拘らず、配向膜33側から配向膜75側に向かうにつれて、ねじれの方向に変化している。具体的には、光軸AX7は、近傍領域30aの配向膜33側において、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と平行または略平行となっている。つまり、光軸AX7は、電圧無印加時に、近傍領域30aの配向膜33側において、光軸AX8と平行または略平行となっている。なお、配向膜33,75がプレチルト機能を有している場合には、光軸AX7は、光入射面10Aと平行または略平行となると共に、透明基板31の表面と所定のプレチルト角で交差している。つまり、この場合にも、光軸AX7は、電圧無印加時には、光軸AX8と平行または略平行となっている。また、光軸AX7は、近傍領域30aの配向膜75側において、角度θ1の方向(配向方向)と平行または略平行な方向を向いている。つまり、光軸AX7は、電圧無印加時に、近傍領域30aの配向膜75側において、光軸AX8と平行または略平行となっている。
【0241】
高分子領域84Aおよび液晶領域84Bは、例えば、電圧印加時には、
図56に示したように、近傍領域30aにおいて、光軸AX7および光軸AX8の向きが互いに異なる(交差もしくは直交する)構成となっている。液晶領域84Bdでは、光軸AX8が、電圧印加時に、近傍領域30aにおいて、光入射面10Aと平行または略平行となると共に透明基板31の法線と平行または略平行となっている。
【0242】
したがって、電圧印加時には、光変調層84において、あらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、光源20からの光は、光変調層84で散乱される。その結果、例えば、光源20からの光(斜め方向からの光)は、光変調素子80内で散乱状態となった領域(散乱領域30B)の界面を透過すると共に、反射板40側に透過した光は反射板40で反射され、光変調素子80を透過する。従って、散乱領域30Bの輝度は、輝度を均一にした場合と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0243】
角度θ1(例えばラビング角)が、60°以上90°未満となっている場合には、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストが大幅に低減され、光源20近傍における輝度ムラをほとんどなくすことができる。なお、光変調層84の原料に単官能のモノマー(重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマー)を添加するか、または光変調層84の原料に対して照射する紫外線の強度や積算量を下げて、光変調層84がA>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たし易くした場合には、角度θ1(例えばラビング角)の好適な範囲が、30°以上90°未満となり得る。また、光変調層84の原料に単官能のモノマー(重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマー)を添加すると共に、光変調層84の原料に対して照射する紫外線の強度や積算量を下げて、より一層、光変調層84がA>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たし易くした場合には、角度θ1(例えばラビング角)の好適な範囲が、10°以上90°未満となり得る。
【0244】
(異方性散乱)
次に、本実施の形態における異方性散乱について説明する。本実施の形態において、異方性散乱は、(a)散乱領域30Bにおける、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面(散乱界面)の存在確率の不均一性と、(b)散乱領域30Bにおける複屈折性とに起因して生じている。そこで、以下では、散乱領域30Bにおける散乱界面の存在確率の不均一性と、散乱領域30Bにおける複屈折性とについて詳細に説明する。
【0245】
---散乱界面の存在確率の不均一性---
遠方領域30bにおける散乱領域30Bでは、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面は、配向膜33の配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜33の配向方向と平行な方向において疎に配置されている。近傍領域30aにおける散乱領域30Bでは、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面は、配向膜33側において、配向膜33の配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜33の配向方向と平行な方向において疎に配置されている。近傍領域30aにおける散乱領域30Bでは、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面は、配向膜75側において、配向膜75のうち近傍領域30aの配向方向と直交する方向において密に配置され、配向膜75のうち近傍領域30aの配向方向と平行な方向において疎に配置されている。
【0246】
配向膜33の配向方向と直交する方向とは、第1の方向または第2の方向を指している。配向膜33の配向方向と平行な方向とは、第3の方向を指している。配向膜75のうち近傍領域30aの配向方向と直交する方向とは、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向と直交する方向であって、かつ透明基板31の表面と平行な方向を指している。配向膜75のうち近傍領域30aの配向方向と平行な方向とは、光入射面10Aに対して角度θ1で交差する方向であって、かつ透明基板31の表面と平行な方向を指している。
【0247】
遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。同様に、遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第2の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。そのため、これらの光は、大きく散乱される。
【0248】
遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。そのため、この光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0249】
近傍領域30aのうち配向膜33側において、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。同様に、近傍領域30aのうち配向膜33側において、散乱領域30Bを第2の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で界面に入射する。そのため、これらの光は、大きく散乱される。
【0250】
近傍領域30aのうち配向膜75側において、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期と、高分子領域84Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期との間の周期で界面に入射する。そのため、この光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0251】
近傍領域30aのうち配向膜75側において、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期と、高分子領域84Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期との間の周期で界面に入射する。そのため、この光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0252】
なお、近傍領域30aのうち配向膜75側において、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱と、近傍領域30aのうち配向膜75側において、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光の散乱との大小関係は、それらの光の進行方向における、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面の周期の大小関係に依る。
【0253】
---複屈折性---
遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域84Bの異常光屈折率と高分子領域84Aの常光屈折率との差、および液晶領域84Bの常光屈折率と高分子領域84Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。そのため、遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、大きく散乱される。
【0254】
遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域84Bの異常光屈折率と高分子領域84Aの常光屈折率との差だけを感じながら伝播する。そのため、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0255】
近傍領域30aのうち配向膜33側において、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域84Bの異常光屈折率と高分子領域84Aの常光屈折率との差、および液晶領域84Bの常光屈折率と高分子領域84Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。そのため、遠方領域30bのうち配向膜33側において、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、大きく散乱される。
【0256】
近傍領域30aのうち配向膜33側において、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期で、液晶領域84Bの異常光屈折率と高分子領域84Aの常光屈折率との差だけを感じながら伝播する。そのため、近傍領域30aのうち配向膜33側において散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光の散乱は、遠方領域30bにおいて散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。
【0257】
近傍領域30aのうち配向膜75側において、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期と、高分子領域84Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期との間の周期で、液晶領域84Bの異常光屈折率と高分子領域84Aの常光屈折率との差、および液晶領域84Bの常光屈折率と高分子領域84Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。そのため、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱は、遠方領域30bにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱よりも小さい。ただし、ここでいう異常光屈折率の値は角度θ1で交差する分、常光屈折率に近くなるので、偏光による散乱性が弱くなる。
【0258】
近傍領域30aのうち配向膜75側において、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光は、高分子領域84Aにおける筋状構造の短軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期と、高分子領域84Aにおける筋状構造の長軸方向の平均的な筋状組織サイズの周期との間の周期で、液晶領域84Bの異常光屈折率と高分子領域84Aの常光屈折率との差、および液晶領域84Bの常光屈折率と高分子領域84Aの異常光屈折率との差を感じながら伝播する。ただし、ここでいう異常光屈折率の値は角度θ1で交差する分、常光屈折率に近くなるので、偏光による散乱性が弱くなる。
【0259】
角度θ1が45°より大きく90°未満となっている場合、第1の方向における、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面の周期が、第3の方向における、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面の周期よりも長くなる。そのため、この場合には、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第1の方向に伝播する光の散乱は、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光の散乱よりも小さくなる。
【0260】
また、角度θ1が0°より大きく45°より小さい場合、第1の方向における、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面の周期が、第3の方向における、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面の周期よりも短くなる。そのため、この場合には、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを、第1の方向に伝播する光の散乱は、近傍領域30aにおいて、散乱領域30Bを第3の方向に伝播する光の散乱よりも大きくなる。
【0261】
つまり、光変調層84は、遠方領域30bにおいて、第1の方向に伝播する光に対する散乱の方が、第3の方向に伝播する光に対する散乱よりも大きい異方性散乱を示す構成となっている。また、光変調層84は、近傍領域30aにおいて、角度θ1が45°より大きく90°未満となっている場合、第1の方向に伝播する光に対する散乱の方が、第3の方向に伝播する光に対する散乱よりも小さな異方性散乱を示す構成となっている。また、光変調層84は、近傍領域30aにおいて、角度θ1が0°より大きく45°より小さい場合、第1の方向に伝播する光に対する散乱の方が、第3の方向に伝播する光に対する散乱よりも大きい異方性散乱を示す構成となっている。
【0262】
次に、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおける異方性散乱の大きさについて説明する。
【0263】
散乱の異方性の大きさは、第1の方向(X軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさ、第3の方向(Y軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさ、および第2の方向(Z軸方向)に伝播する光に対する散乱の大きさの3軸間の商を指している。3軸間の商は、具体的には、以下の3つ((A)〜(C))の総和を指している。3軸間の差が大きい場合には、散乱の異方性が大きく、3軸間の商が小さい場合には、散乱の異方性が小さい。なお、以下の(A)〜(C)は、分子の値が分母の値よりも大きくなっていることを前提としている。したがって、分子の値が分母の値よりも小さくなっている事例では、以下の(A)〜(C)において分子と分母を互いに入れ替えることが好ましい。
【0264】
(A)(第1の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第3の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
(B)(第2の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第3の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
(C)(第1の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)/(第2の方向に伝播する光に対する散乱の大きさ)
【0265】
散乱の異方性の大きさは、(a)散乱領域30Bにおける、高分子領域84Aと液晶領域84Bとの界面(散乱界面)の存在確率の不均一性と、(b)散乱領域30Bにおける複屈折性とによって決まる。散乱の異方性の大きさでは、上記の(a)の要素が支配的である。それは、散乱界面の存在確率を考えたときに、理想的には第3の方向には同じ媒体が続いているので第3の方向には散乱せず、第1の方向および第2の方向のみで散乱するからである。このとき、机上では、第3の方向の散乱はゼロとなるので、第3の方向と、第1の方向および第2の方向との散乱比は無限大になる。一方、複屈折性を考えたときに、第1の方向では2つの偏光成分が散乱するが、第2の方向および第3の方向では1つの偏光成分しか散乱しない。このとき、第1の方向と、第2の方向および第3の方向との散乱比は、高々2倍にしかならない。従って、散乱の異方性の大きさでは、上記の(a)の要素が支配的となる。そこで、以下では、散乱界面の存在確率と、散乱の異方性の大きさとの関係について説明し、複屈折性と、散乱の異方性の大きさとの関係についての説明は割愛する。
【0266】
散乱の異方性の大きさは、光変調層84における第1の方向の周期、光変調層84における第3の方向の周期、および光変調層84における第2の方向の周期の3軸間の商に対応している。3軸間の商は、具体的には、以下の3つ((D)〜(F))の総和を指している。なお、以下の(D)〜(F)は、分子の値が分母の値よりも大きくなっていることを前提としている。したがって、分子の値が分母の値よりも小さくなっている事例では、以下の(D)〜(F)において分子と分母を互いに入れ替えることが好ましい。
【0267】
(D)(光変調層84における第3の方向の周期)/(光変調層84における第1の方向の周期)
(E)(光変調層84における第3の方向の周期)/(光変調層84における第2の方向の周期)
(F)(光変調層84における第2の方向の周期)/(光変調層84における第1の方向の周期)
【0268】
近傍領域30aおよび遠方領域30bのうち配向膜33側における散乱の異方性の大きさは、Ph11/Ph12+Ph11/Pv6+Pv6/Ph12に対応した値となっている。近傍領域30aのうち配向膜75側における散乱の異方性の大きさは、Ph9/Ph10+Ph9/Pv5+Pv5/Ph10に対応した値となっている。遠方領域30bのうち配向膜75側における散乱の異方性の大きさは、Ph11/Ph12+Ph11/Pv6+Pv6/Ph12に対応した値となっている。ここで、各周期は、例えば、以下の関係となっている。
Ph9/Ph10<Ph11/Ph12
Ph9/Pv5<Ph11/Pv6
Pv5/Ph10≒Pv6/Ph12
従って、光変調層84は、当該光変調層84が散乱性を示すとき、A>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たす構成となっていると言える。
【0269】
ところで、近傍領域30aおよび遠方領域30bにおいて散乱の異方性が互いに相違しているのは、近傍領域30aと遠方領域30bとで、配向方向が互いに異なっているからである。本実施の形態では、近傍領域30aと遠方領域30bとで、配向方向を互いに異ならせる方法として、近傍領域30aにおいて配向方向が互いに異なる一組の配向膜33,75が用いられている。具体的には、透明基板31側の配向膜33として配向方向が0°の水平配向膜が用いられ、透明基板37側の配向膜75として、遠方領域30bの配向方向が0°となっており、かつ近傍領域30aに配向方向がθ1(0°<θ1≦90°)となっている水平配向膜が用いられている。
【0270】
このように、本実施の形態では、光変調層84のうち光源20寄りの近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(A1/C1)が、光変調層84のうち光源20から離れた遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(A2/C2)よりも小さくなっている。これにより、光変調層84内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。ここで、光源20の配列に起因する明暗のストライプは、第1の散乱と第3の散乱との差が大きいことに起因して起こる。従って、上記の異方性散乱が、光源20近傍において緩和されることにより、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。また、本実施の形態では、光変調層84のうち光源20近傍だけで、上記の異方性散乱が緩和されているので、光変調層84全体において、上記の異方性散乱が緩和されている場合よりも、高輝度を得ることができる。さらに、本実施の形態では、第2の散乱が第3の散乱よりも強くなっていることから、光源20からの光は導光条件を破壊する方向に優先的に散乱し、光取り出し効率が高くなる。従って、本実施の形態では、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。
【0271】
<5.第5の実施の形態>
次に、本技術の第5の実施の形態に係る照明装置5について説明する。本実施の形態の照明装置5は、
図57に示したように、光変調素子30に代わって光変調素子90を設けた点で、上記実施の形態の照明装置1の構成と相違する。そこで、以下では、上記各実施の形態の構成との共通点についての説明を適宜、省略し、上記各実施の形態の構成との相違点について主に説明する。
【0272】
図58は、光変調素子90の断面構成の一例を表したものである。光変調素子90は、例えば、透明基板31、下側電極32、配向膜33、光変調層94、配向膜35、上側電極36および透明基板37を反射板40側から順に配置されたものである。配向膜33,35は、光変調層94を挟み込むように配置されている。光変調層94は、当該光変調層94が散乱性を示すとき、A>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たす構成となっている。
【0273】
光変調層94は、電場の大きさに応じて、光源20からの光に対して全体的もしくは部分的に散乱性もしくは透明性を示すものである。光変調層94は、例えば、電圧無印加時に、光源20からの光に対して透明性を示すようになっている。光変調層94は、さらに、例えば、電圧印加時に、光源20からの光に対して散乱性を示すようになっている。光変調層94は、例えば、
図58に示したように、高分子領域94Aと、高分子領域94A内に分散された複数の液晶領域94Bとを含んだ複合層となっている。高分子領域94Aおよび液晶領域94Bは光学異方性を有している。なお、液晶領域94Bは本技術の第1領域の一具体例に相当し、高分子領域94Aは本技術の第2領域の一具体例に相当する。
【0274】
高分子領域94Aおよび液晶領域94Bは、電場に対する応答速度が互いに異なっている。高分子領域94Aは、電場に対する応答性が相対的に低く、液晶領域94Bは、電場に対する応答性が相対的に高い。高分子領域94Aは、高分子材料を含んで構成されている。高分子領域94Aは、例えば、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または液晶領域94Bの応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている。高分子領域94Aは、低分子モノマーを重合化することにより得られた高分子材料によって形成されている。高分子領域94Aは、液晶領域94Bの配向方向または配向膜33,35の配向方向に沿って配向した、配向性および重合性を有するモノマーを熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている。
【0275】
液晶領域94Bは、液晶材料を含んで構成されており、高分子領域94Aの応答速度よりも十分に早い応答速度を有している。液晶領域94B内に含まれる液晶材料(液晶分子)は、例えば棒状分子である。液晶領域94B内に含まれる液晶分子として、正の誘電率異方性を有するもの(いわゆるポジ型液晶)を用いることが好ましい。
【0276】
液晶領域94Bは、上記実施の形態の液晶領域34Bと同一の材料で構成されている。高分子領域94Aも、上記実施の形態の高分子領域34Aと同一の材料で構成されている。ただし、高分子領域94Aにおいて、近傍領域30aと遠方領域30bとで、使われた原料が互いに異なっている。具体的には、高分子領域94Aの原料に添加された、重合性および液晶性を併せ持つモノマー(単官能および多官能の少なくとも一方のモノマー)の重量比が、光源20に近づくにつれて大きくなっている。
【0277】
近傍領域30aの高分子領域94Aが、例えば、上述の低分子モノマーの1つである2官能のモノマーと、単官能および多官能の少なくとも一方のモノマーとを重合させることにより形成されている。一方、遠方領域30bの高分子領域94Aが、例えば、上述の低分子モノマーの1つである2官能のモノマーを重合させることにより形成されたものであり、単官能や多官能のモノマーが添加されずに形成されたものである。なお、遠方領域30bの高分子領域94Aが、例えば、上述の低分子モノマーの1つである2官能のモノマーと、近傍領域30aに含まれる高分子領域94Aを形成する際の重量%よりも少ない重量%の、単官能および多官能の少なくとも一方のモノマーとを重合させることにより形成されたものであってもよい。
【0278】
なお、近傍領域30aと遠方領域30bとの境界近傍に、移行領域が設けられていてもよい。この移行領域には、近傍領域30aの高分子領域94Aの原料の重量比と、遠方領域30bの高分子領域94Aの原料の重量比との間の重量比となっている原料で形成された高分子領域94Aが含まれている。
【0279】
2官能のモノマーは、架橋密度の向上に寄与するものであり、筋状構造の形成に適した材料である。一方、多官能のモノマーは、2官能モノマーよりもより一層、架橋密度の向上に寄与するものである。多官能のモノマーは、筋状構造よりも複雑な3次元構造の形成に適した材料であり、筋状構造を崩すのに適した添加剤である。また、単官能のモノマーは、架橋密度の低下に寄与するものであり、筋状構造を崩すのに適した添加剤である。従って、上述したように、高分子領域94Aの原料に添加された、重合性および液晶性を併せ持つモノマーの重量比が光源20に近づくにつれて大きくなっていることにより、高分子領域94Aの、光変調層94に占める割合が、例えば、
図5〜
図7に示した分布と同様に、近傍領域30a側で相対的に低く、遠方領域30b側で相対的に高くなる。
【0280】
従って、本実施の形態では、光変調層94のうち光源20寄りの近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(A1/C1)が、光変調層94のうち光源20から離れた遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(A2/C2)よりも小さくなっている。これにより、光変調層94内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。ここで、光源20の配列に起因する明暗のストライプは、第1の散乱と第3の散乱との差が大きいことに起因して起こる。従って、上記の異方性散乱が、光源20近傍において緩和されることにより、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。また、本実施の形態では、光変調層94のうち光源20近傍だけで、上記の異方性散乱が緩和されているので、光変調層94全体において、上記の異方性散乱が緩和されている場合よりも、高輝度を得ることができる。さらに、本実施の形態では、第2の散乱が第3の散乱よりも強くなっていることから、光源20からの光は導光条件を破壊する方向に優先的に散乱し、光取り出し効率が高くなる。従って、本実施の形態では、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。
【0281】
<6.第6の実施の形態>
次に、本技術の第6の実施の形態に係る照明装置6について説明する。本実施の形態の照明装置6は、
図59に示したように、光変調素子30に代わって光変調素子91を設けた点で、上記実施の形態の照明装置1の構成と相違する。そこで、以下では、上記各実施の形態の構成との共通点についての説明を適宜、省略し、上記各実施の形態の構成との相違点について主に説明する。
【0282】
図60は、光変調素子91の断面構成の一例を表したものである。光変調素子91は、例えば、透明基板31、下側電極32、配向膜33、光変調層98、配向膜35、上側電極36および透明基板37を反射板40側から順に配置されたものである。光変調層98は、当該光変調層98が散乱性を示すとき、A>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たす構成となっている。
【0283】
光変調層98は、電場の大きさに応じて、光源20からの光に対して全体的もしくは部分的に散乱性もしくは透明性を示すものである。光変調層98は、例えば、電圧無印加時に、光源20からの光に対して透明性を示すようになっている。光変調層98は、さらに、例えば、電圧印加時に、光源20からの光に対して散乱性を示すようになっている。光変調層98は、例えば、
図60に示したように、高分子領域98Aと、高分子領域98A内に分散された複数の液晶領域98Bとを含んだ複合層となっている。高分子領域98Aおよび液晶領域98Bは光学異方性を有している。なお、液晶領域98Bは本技術の第1領域の一具体例に相当し、高分子領域98Aは本技術の第2領域の一具体例に相当する。
【0284】
高分子領域98Aおよび液晶領域98Bは、電場に対する応答速度が互いに異なっている。高分子領域98Aは、電場に対する応答性が相対的に低く、液晶領域98Bは、電場に対する応答性が相対的に高い。高分子領域98Aは、例えば、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または液晶領域98Bの応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている。高分子領域98Aは、低分子モノマーを重合化することにより得られた高分子材料によって形成されている。高分子領域98Aは、液晶領域98Bの配向方向または配向膜33,35の配向方向に沿って配向した、配向性および重合性を有する低分子モノマーを熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている。
【0285】
液晶領域98Bは、液晶材料を含んで構成されており、高分子領域98Aの応答速度よりも十分に早い応答速度を有している。液晶領域98B内に含まれる液晶材料(液晶分子)は、例えば棒状分子である。液晶領域98B内に含まれる液晶分子として、正の誘電率異方性を有するもの(いわゆるポジ型液晶)を用いることが好ましい。
【0286】
液晶領域98Bは、上記実施の形態の液晶領域34Bと同一の材料で構成されている。高分子領域98Aも、上記実施の形態の高分子領域34Aと同一の材料で構成されている。ただし、高分子領域98Aは、近傍領域30aと遠方領域30bとで、筋状構造、多孔質構造もしくは棒状構造において構造上の乱れ(崩れ)方において互いに異なっている。具体的には、
図61、
図62、
図63に示したように、高分子領域94Aの近傍領域30aでは、上記乱れ(崩れ)が相対的に多く、高分子領域94Aの遠方領域30bでは、上記乱れ(崩れ)が相対的に少なくなっている。なお、
図55では、上記乱れ(崩れ)が近傍領域30a内で一定となっており、さらに遠方領域30b内でも一定となっている場合が例示されている。また、
図56では、上記乱れ(崩れ)が近傍領域30a内で、光源20から遠ざかるにつれて滑らかに減少している場合が例示されている。また、
図57では、上記乱れ(崩れ)が近傍領域30a内で、光源20から遠ざかるにつれて断続的(階段状)に減少している場合が例示されている。
【0287】
上記乱れ(崩れ)が少ないということは、高分子領域98Aの配向性が高いことを意味しており、上記乱れ(崩れ)が多いということは、高分子領域98Aの配向性が低いことを意味している。従って、上述したように、高分子領域94Aにおける構造上の乱れ(崩れ)を光源20に近づくにつれて多くすることにより、近傍領域30aの異方性散乱を、遠方領域30bの異方性散乱よりも緩和することができる。
【0288】
上記乱れ(崩れ)を形成する方法としては、例えば、光変調層98を製造する際に、紫外線強度や紫外線積算量の調整を行うことが挙げられる。
【0289】
紫外線強度の調整は、例えば、グレーマスクを使うことによって可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物に対して、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方が紫外線透過率の高いグレーマスクを介して、紫外線を照射することにより、上記乱れ(崩れ)を形成することが可能である。従って、光変調層98は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方が紫外線透過率の高いグレーマスクを介して紫外線を照射することにより形成されたものであってもよい。
【0290】
紫外線強度の調整は、例えば、紫外光を発するLEDを使うことによっても可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物に対して、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線強度が多くなるように紫外域のLED光を照射することにより、上記乱れ(崩れ)を形成することが可能である。従って、光変調層98は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線強度が多くなるように紫外域のLED光を照射することにより形成されたものであってもよい。
【0291】
紫外線積算量の調整は、例えば、紫外光を発するLEDを使うことによって可能である。例えば、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つ低分子モノマーとの混合物に対して、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線積算量が多くなるように紫外域のLED光をパルス照射することにより、上記乱れ(崩れ)を形成することが可能である。従って、光変調層98は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線積算量が多くなるように紫外域のLED光をパルス照射することにより形成されたものであってもよい。また、製造工程の搬送にベルトコンベアなどを使用して、上記混合物を移動させながら露光する場合は、光源20近傍の領域よりも光源20から離れた領域の方の紫外線積算量が多くなるようにベルトコンベアのスピードを調整してもよい。
【0292】
本実施の形態では、光変調層98のうち光源20寄りの近傍領域30aにおける散乱の異方性の大きさ(A1/C1)が、光変調層98のうち光源20から離れた遠方領域30bにおける散乱の異方性の大きさ(A2/C2)よりも小さくなっている。これにより、光変調層98内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。ここで、光源20の配列に起因する明暗のストライプは、第1の散乱と第3の散乱との差が大きいことに起因して起こる。従って、上記の異方性散乱が、光源20近傍において緩和されることにより、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。また、本実施の形態では、光変調層98のうち光源近傍だけで、上記の異方性散乱が緩和されているので、光変調層98全体において、上記の異方性散乱が緩和されている場合よりも、高輝度を得ることができる。さらに、本実施の形態では、第2の散乱が第3の散乱よりも強くなっていることから、光源20からの光は導光条件を破壊する方向に優先的に散乱し、光取り出し効率が高くなる。従って、本実施の形態では、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる
【0293】
<7.変形例>
[変形例1]
上記各実施の形態では、光変調素子30,60,70,80,90,91は、導光板10の背後(下面)に空気層を介さずに密着して接合されていたが、例えば、
図64に示したように、導光板10の上面に空気層を介さずに密着して接合されていてもよい。また、光変調素子30,60,70,80,90,91は、例えば、
図65に示したように、導光板10の内部に設けられていてもよい。ただし、この場合でも、光変調素子30,60,70,80,90,91は、導光板10と空気層を介さずに密着して接合されていることが必要である。
【0294】
[変形例2]
上記各実施の形態およびそれらの変形例では、導光板10が設けられていたが、例えば、
図66に示したように、省略されてもよい。ただし、この場合には、透明基板31および透明基板37が導光板10の役目を果たす。従って、光源20は、透明基板31または透明基板37の側面に配置されることとなる。
【0295】
[変形例3]
上記各実施の形態およびそれらの変形例では、反射板40が設けられていたが、例えば、
図67に示したように、省略されてもよい。ただし、この場合には、下側電極32が、透明な材料ではなく、例えば、金属によって構成されていることが好ましい。下側電極32が金属によって構成されている場合には、下側電極32は、反射板40と同様、導光板10の背後から光変調素子30に入射する光を反射する機能も兼ね備えることになる。なお、本変形例において、上記変形例2と同様に、導光板10が省略されてもよい。
【0296】
[変形例4]
上記各実施の形態およびそれらの変形例では、光出射面に何らかの光学シートが設けられていなかったが、例えば、
図68に示したように、光学シート92(例えば、拡散板、拡散シート、レンズフィルム、偏光分離シートなど)が設けられていてもよい。このようにした場合には、導光板10から斜め方向に射出した光の一部が正面方向に立ち上がるので、変調比を効果的に向上させることができる。なお、本変形例において、上記変形例2と同様に、導光板10が省略されてもよい。また、本変形例において、上記変形例3と同様に、反射板40が省略されてもよい。また、本変形例において、導光板10および反射板40が省略されてもよい。
【0297】
[変形例5]
上記各実施の形態およびそれらの変形例において、例えば、
図69に示したように、導光板10、透明基板31または透明基板37の端面(光入射面10A)が、光源20からの光の発散角を広げる立体形状を有していてもよい。例えば、光入射面10Aが、光源20の配列に対応してシリンドリカル形状、プリズム形状、または凸形状となっていてもよい。光入射面10Aが上記のような形状となっていることにより、光変調素子30,60,70に入射した光の発散角を広げることができる。これにより、発散角が広がった分だけ、光変調層34,64,74,84,94,98内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。その結果、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。
【0298】
[変形例6]
上記各実施の形態およびそれらの変形例において、例えば、
図70に示したように、光入射面10Aと光源20との間隙を埋め込むマッチングオイル93(屈折率マッチング用のオイル)が設けられていてもよい。このように、光入射面10Aと光源20との間隙にマッチングオイル93を設けることにより、光変調素子30,60,70,80,90,91に入射した光の発散角を広げることができる。これにより、発散角が広がった分だけ、光変調層34,64,74,84,94,98内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。その結果、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。
【0299】
[変形例7]
上記各実施の形態およびそれらの変形例において、例えば、
図71に示したように、導光板10、透明基板31または透明基板37のうち、少なくとも光源20近傍の部分に、導光板10、透明基板31または透明基板37とは異なる屈折率の材料で形成されたスペーサ94が設けられていてもよい。このように、透明基板31または透明基板37のうち、少なくとも光源20近傍の部分にスペーサ82を設けることにより、光板10、透明基板31または透明基板37のうち、少なくとも光源20近傍の部分を伝播する光がスペーサ82によって屈折したり、散乱したりする。これにより、スペーサ82による屈折、散乱の分だけ、光変調層34,64,74,84,94,98内を伝播する光に対する異方性散乱を、光源20近傍において緩和することができる。その結果、高輝度を維持しつつ、光源20の配列に起因する明暗のストライプのコントラストを低減することができる。
【0300】
<8.第7の実施の形態>
次に、本技術の第7の実施の形態に係る表示装置7について説明する。本実施の形態の表示装置7は、
図72に示したように、光を変調することにより映像を表示する表示パネル8と、表示パネル8を背後から照明する照明装置1,2,3,4,5,6と、表示パネル8および照明装置1,2,3,4,5,6を駆動する駆動回路(図示せず)とを備えている。
【0301】
表示パネル8は、マトリクス状に配置された複数の画素を有しており、複数の画素が画像信号に基づいて駆動されることにより、映像を表示するものである。表示パネル8は、例えば、映像信号に応じて各画素が駆動される透過型の表示パネルであり、液晶層を一対の透明基板で挟み込んだ構造となっている。具体的には、表示パネル8は、照明装置1,2,3,4,5,6と側から順に、偏光子、透明基板、画素電極、配向膜、液晶層、配向膜、共通電極、カラーフィルタ、透明基板および偏光子を有している。
【0302】
透明基板は、可視光に対して透明な基板、例えば板ガラスからなる。なお、バックライト211側の透明基板には、図示しないが、画素電極に電気的に接続されたTFT(Thin
Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。画素電極および共通電極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなる。画素電極は、透明基板上に2次元配列されたものであり、画素ごとの電極として機能する。他方、共通電極は、カラーフィルタ上に一面に形成されたものであり、各画素電極に対して対向する共通電極として機能する。配向膜は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。
【0303】
液晶層は、例えば、VA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶からなり、駆動回路(図示せず)からの印加電圧により、照明装置1,2,3,4,5,6からの出射光の偏光軸の向きを画素ごとに変える機能を有する。なお、液晶の配列を多段階で変えることにより画素ごとの透過軸の向きが多段階で調整される。カラーフィルタは、液晶層を透過してきた光を、例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離したり、または、R、G、Bおよび白(W)などの四色にそれぞれ色分離したりするカラーフィルタを、画素電極の配列と対応させて配列したものである。
【0304】
偏光板は、光学シャッタの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。なお、偏光板は、透過軸以外の振動方向の光(偏光)を吸収する吸収型の偏光素子であってもよいが、照明装置1,2,3,4,5,6側に反射する反射型の偏光素子であることが輝度向上の観点から好ましい。2枚の偏光板はそれぞれ、偏光軸が互いに90°異なるように配置されており、これにより照明装置1,2,3,4,5,6からの出射光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
【0305】
ところで、光軸AX1,AX3,AX5,AX7は、照明装置1,2,3,4,5,6側の偏光板の透過軸と平行となっていてもよい。特に、バックライトとして、より多くの偏光成分を有するバックライト光を出力する照明装置1を用いた場合には、バックライト光の、表示パネル8での利用効率を高くすることができる。
【0306】
また、例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
離間して互いに対向配置された第1透明基板および第2透明基板と、
前記第1透明基板の端面に光を照射する光源と、
前記第1透明基板および前記第2透明基板の間隙に設けられ、かつ電場の大きさに応じて、前記光源からの光に対して散乱性もしくは透明性を示す光変調層と
を備え、
前記光変調層は、光学異方性を有すると共に電場に対する応答性が相対的に高い第1領域と、光学異方性を有すると共に電場に対する応答性が相対的に低い第2領域とを含み、
前記光変調層は、当該光変調層が散乱性を示すとき、以下の式を満たす構成となっている
照明装置。
A>B>C
A1/C1<A2/C2
A:前記光入射面と垂直な第1の方向に伝播する光に対する第1の散乱の大きさ
B:前記第1透明基板に垂直な第2の方向に伝播する光に対する第2の散乱の大きさ
C:前記光入射面と平行な方向であって、かつ前記第1透明基板の表面と平行な第3の方向に伝播する光に対する第3の散乱の大きさ
A1:前記光変調層のうち前記光源寄りの第3領域における前記第1の散乱の大きさ
C1:前記第3領域における前記第3の散乱の大きさ
A2:前記光変調層のうち前記光源から離れた第4領域における前記第1の散乱の大きさ
C2:前記第4領域における前記第3の散乱の大きさ
(2)
前記第1領域は、液晶材料を含んで構成され、
前記第2領域は、高分子材料を含んで構成され、
前記第2領域の、前記光変調層に占める割合が、前記第3領域で相対的に低く、前記第4領域で相対的に高くなっている
(1)に記載の照明装置。
(3)
前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとの混合物に対して、前記第3領域よりも前記第4領域の方の紫外線強度または紫外線積算量が多くなるようにして紫外線を照射することにより形成されたものである
(2)に記載の照明装置。
(4)
前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとの混合物に対して、前記第3領域よりも前記第4領域の方が紫外線透過率の高いグレーマスクを介して紫外線を照射することにより形成されたものである
(3)に記載の照明装置。
(5)
前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとの混合物に対して、前記第3領域よりも前記第4領域の方の紫外線強度または紫外線積算量が多くなるように紫外域のLED光を照射することにより形成されたものである(3)に記載の照明装置。
(6)
前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとの混合物に対して、紫外線偏光成分が前記第3領域よりも前記第4領域の方が多くなるように偏光紫外光を照射することにより形成されたものである
(1)に記載の照明装置。
(7)
前記第1配向膜および前記第2配向膜の配向方向は、前記端面と平行な方向を向いている
(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の照明装置。
(8)
前記光変調層を挟み込む第1配向膜および第2配向膜を備え、
前記第1配向膜および前記第2配向膜は、前記光変調層がA>B>CおよびA1/C1<A2/C2を満たすように形成されたものである
(1)に記載の照明装置。
(9)
前記第1配向膜は、前記第3領域において垂直配向膜となっており、前記第4領域において水平配向膜となっており、
前記第2配向膜は、水平配向膜となっている
(8)に記載の照明装置。
(10)
前記第1配向膜および前記第2配向膜の配向方向は、前記第3領域において前記端面と交差する方向を向いており、前記第4領域において前記端面と平行な方向を向いている
(8)に記載の照明装置。
(11)
前記第1配向膜および前記第2配向膜の、前記第3領域における配向方向が、前記端面に対して60°以上90°未満となっている
(10)に記載の照明装置。
(12)
前記第1配向膜および前記第2配向膜の配向方向が、前記第3領域において互いに等しくなっている
(11)に記載の照明装置。
(13)
前記第1配向膜の配向方向は、前記第3領域において前記端面と交差する方向を向いており、前記第4領域において前記端面と平行な方向を向いており、
前記第2配向膜の配向方向は、前記端面と平行な方向を向いている
(8)に記載の照明装置。
(14)
前記第1配向膜の、前記第3領域における配向方向が、前記端面に対して60°以上90°未満となっている
(13)に記載の照明装置。
(15)
前記第1領域は、液晶材料を含んで構成され、
前記第2領域は、高分子材料を含んで構成され、
前記第1領域の、前記光変調層に占める割合が、当該光変調層全体において均一となっている
(8)ないし(14)のいずれか1つに記載の照明装置。
(16)
前記第1領域は、液晶材料を含んで構成され、
前記第3領域に含まれる前記第2領域は、2官能のモノマーと、単官能および多官能の少なくとも一方のモノマーとを重合させることにより形成されたものであり、
前記第4領域に含まれる前記第2領域は、2官能のモノマーを重合させることにより形成されたものであるか、または、2官能のモノマーと、前記第3領域に含まれる前記第2領域を形成する際の重量%よりも少ない重量%の、単官能および多官能の少なくとも一方のモノマーとを重合させることにより形成されたものである
(1)に記載の照明装置。
(17)
前記第3領域に含まれる、前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとを、これらの重量比が98:2〜75:25の範囲内となるように混合し、その混合物に紫外線を照射して前記モノマーを硬化させることにより形成されたものであり、
前記第4領域に含まれる、前記第1領域および前記第2領域は、液晶材料と、重合性および液晶性を併せ持つモノマーとを、これらの重量比が95:5〜50:50の範囲内であって、かつ、前記モノマーの重量%が近傍領域30aにおける前記モノマーの重量%よりも大きくなるように混合し、その混合物に紫外線を照射して前記モノマーを硬化させることにより形成されたものである
(1)に記載の照明装置。
(18)
前記端面は、前記光源からの光の発散角を広げる立体形状を有している
(1)ないし(17)のいずれか1つに記載の照明装置。
(19)
前記端面と前記光源との間隙を埋め込む屈折率マッチング用のオイルを備える
(1)ないし(17)のいずれか1つに記載の照明装置。
(20)
光を変調することにより映像を表示する表示パネルと、
前記表示パネルを背後から照明する照明装置と
を備え、
前記照明装置は、
離間して互いに対向配置された第1透明基板および第2透明基板と、
前記第1透明基板の端面に光を照射する光源と、
前記第1透明基板および前記第2透明基板の間隙に設けられ、かつ電場の大きさに応じて、前記光源からの光に対して散乱性もしくは透明性を示す光変調層と
を有し、
前記光変調層は、光学異方性を有すると共に電場に対する応答性が相対的に高い第1領域と、光学異方性を有すると共に電場に対する応答性が相対的に低い第2領域とを含み、前記光変調層は、以下の式を満たす構成となっている
表示装置。
A>B>C
A1/C1<A2/C2
A:前記光入射面と垂直な第1の方向に伝播する光に対する第1の散乱の大きさ
B:前記第1透明基板に垂直な第2の方向に伝播する光に対する第2の散乱の大きさ
C:前記光入射面と平行な方向であって、かつ前記第1透明基板の表面と平行な第3の方向に伝播する光に対する第3の散乱の大きさ
A1:前記光変調層のうち前記光源寄りの第3領域における前記第1の散乱の大きさ
C1:前記第3領域における前記第3の散乱の大きさ
A2:前記光変調層のうち前記光源から離れた第4領域における前記第1の散乱の大きさ
C2:前記第4領域における前記第3の散乱の大きさ
【0307】
本出願は、日本国特許庁において2012年5月11日に出願された日本特許出願番号2012−109523号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0308】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。