(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
スクロール圧縮機を容量制御の低運転容量時に、容量制御をしないときと比較して高速回転させるようにすると、容量制御をしないときと比較して性能低下を抑えることはできるものの、低運転容量のため圧縮室へ供給される油が不足しており、圧縮機構内部の油膜が十分に形成されないことで十分な性能が確保できていなかった。
【0007】
つまり、高運転容量時の油上がりを減少させると、低運転容量時の圧縮機構内部の油膜形成に必要な油供給量も不足するため、圧縮機の低運転容量時の性能低下を抑えるのと同時に高運転容量時の油上がりを抑制することは実際には困難であった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、
スクロール圧縮機の高運転容量時の油上がりを抑制したまま、低運転容量時の性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を収納するケーシング(10)とを備え、該圧縮機構(20)は、吸入行程における圧縮室(25a,25b)の吸入閉じ切り位置を第1位置と該第1位置よりも吸入容積が小さくなる第2位置とに切り換えることにより吸入容積を調整可能な吸入容積調整機構(30)を備え、該吸入容積調整機構(30)は、吸入閉じ切り位置が第1位置になる閉位置と第2位置になる開位置とに切り換え可能なプランジャ(33)を備えた
スクロール圧縮機を前提としている。
【0010】
そして、この
スクロール圧縮機は、上記ケーシング(10)内に形成された油溜まり(18,50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)とに連通する油通路(51)を備え、上記プランジャ(33)が、上記油通路(51)の途中に配置されるとともに、上記閉位置において上記油通路(51)を閉鎖して上記油溜まり(18,50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)とを遮断し、上記開位置において上記油通路(51)を開放して上記油溜まり(18,50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)とを連通させる切換部(65)を有して
いる。
【0011】
この第1の発明では、吸入閉じ切り位置が第1位置の状態では、プランジャ(33)は閉位置になる。このときには油通路(51)が遮断されるので、油は油溜まり(18,50)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ供給されない。一方、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態になって吸入容積が小さくなると、プランジャ(33)は開位置になる。このときには油通路(51)が開放されるので、油が油溜まり(18,50)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ、該吸入側空間(25s)の負圧の作用によって供給される。
【0012】
また、第1の発明では、上記圧縮機構(20)が、固定スクロール(21)と該固定スクロール(21)に噛み合って作動流体を圧縮する可動スクロール(22)とを備えたスクロール圧縮機構(20)で
ある。
【0013】
この
第1の発明では、スクロール圧縮機において、吸入閉じ切り位置が第1位置の状態でプランジャ(33)が閉位置になるときには、油通路(51)が遮断されるので油は油溜まり(18,50)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ供給されず、一方、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるプランジャ(33)が開位置になるときには、油通路(51)が開放されるので油が油溜まり(18,50)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ負圧の作用で供給される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記油通路(51)が、上記圧縮機構(20)のハウジング(23)内の空間(クランク室(23e))に形成された油溜まり(18,50)に一端が連通し、該圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通していることを特徴としている。
【0015】
この
第2の発明では、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるときには、プランジャ(33)が開位置になり、油通路(51)が開放されるので、圧縮機構(20)のハウジング内の空間(クランク室(23e))に形成された油溜まり(18,50)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ油が負圧の作用で供給される。
【0016】
第3の発明は、第1の発明において、上記油通路(51)は、可動スクロール側油通路(55)と該可動スクロール側油通路(55)に連通する固定スクロール側油通路(52)とを備え、可動スクロール側油通路(55)は、固定スクロール側油通路(52)との連通端と反対側の端部が上記油溜まり(18,50)に連通し、固定スクロール側油通路(52)は、可動スクロール(22)側連通路との連通端と反対側の端部が上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に連通していることを特徴としている。
【0017】
この
第3の発明では、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるときには、プランジャ(33)が開位置になり、可動スクロール側油通路(55)と固定スクロール側油通路(52)とからなる油通路(51)が開放されるので、油溜まり(18,50)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ油が負圧の作用で供給される。
【0018】
第4の発明は、第1の発明において、上記油通路(51)が、上記ケーシング(10)内に形成された油溜まり(18,50)に一端が連通し、上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通する給油管(56)を有していることを特徴としている。
【0019】
この
第4の発明では、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるときには、プランジャ(33)が開位置になり、油通路(51)が開放されるので、上記ケーシング(10)内に形成された油溜まり(18,50)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ油が負圧の作用で供給される。
【0020】
第5の発明は、第1の発明において、上記油通路(51)が、上記圧縮機構(20)の駆動軸に設けられた給油ポンプ(43a)に一端が連通し、上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通する給油管(57)を有していることを特徴としている。
【0021】
この
第5の発明では、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるときには、プランジャ(33)が開位置になり、油通路(51)が開放されるので、上記給油ポンプ(43a)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ油が供給される。
【0022】
第6の発明は、第2から第5の発明のいずれか1つにおいて、上記油通路(51)が、上記固定スクロール(21)の内部を通って上記プランジャ(33)と上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)とに連通する固定スクロール内通路(53)を有することを特徴としている。
【0023】
この
第6の発明では、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるときには、プランジャ(33)が開位置になり、油通路(51)が開放されるので、上記固定スクロール(21)の内部の固定スクロール内通路(53)を通って圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ油が供給される。
【0024】
第7の発明は、第2から第5の発明のいずれか1つにおいて、上記油通路(51)が、上記ケーシング(10)内で固定スクロール(21)の外部に形成されている空間を通って上記プランジャ(33)と上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)とに連通する固定スクロール外通路(58)を有することを特徴としている。
【0025】
この
第7の発明では、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるときには、プランジャ(33)が開位置になり、油通路(51)が開放されるので、上記ケーシング(10)内で固定スクロール(21)の外部に形成されている空間を通って圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ油が供給される。
【0026】
第8の発明は、第2から第5の発明のいずれか1つにおいて、上記吸入容積調整機構(30)は、上記第2位置にある上記プランジャ(33)から上記ケーシング(10)内で固定スクロール(21)の外部に形成されている空間へ作動流体を排出する流出通路(60)を備え、上記油通路(51)は、上記プランジャ(33)に一端が連通し、上記流出通路(60)に他端が連通する油合流通路(53a)を備えていることを特徴としている。
【0027】
この
第8の発明では、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるときには、プランジャ(33)が開位置になり、上記流出通路(60)に連通する油合流通路(53a)を備えた油通路(51)が開放されるので、上記ケーシング(10)内で固定スクロール(21)の外部に形成されている空間を通って圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ油が供給される。
【0028】
第9の発明は、第1から第8の発明のいずれか1つにおいて、上記プランジャ(33)は円柱形の弁体であり、外周面に、上記第2位置で上記油通路(51)の経路上に位置し、上記第1位置で上記油通路(51)の経路上から外れる円周溝(33d)を有することを特徴としている。
【0029】
第10の発明は、第9の発明において、上記プランジャ(33)が、外周面における上記円周溝(33d)の両側にシール部材(33e)を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、吸入閉じ切り位置が第1位置の状態で容量制御をしないときは、プランジャ(33)が閉位置になって油通路(51)が遮断される。この運転状態は高運転容量状態であり、
スクロール圧縮機の内部の冷媒流速が上昇するため、圧縮室(25a,25b)への油の吸入量が十分となり、かつ油通路(51)から圧縮室(25a,25b)へ過剰な油が供給されないために油上がりは抑制され、性能も維持される。
【0031】
一方、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるように容量制御をするときは、プランジャ(33)が開位置になって油通路(51)が開放される。この運転状態は低運転容量状態であり、
スクロール圧縮機の内部の冷媒流速が低下するため、圧縮室(25a,25b)への油の吸入量が不足することとなるが、油通路(51)から圧縮室(25a,25b)へ十分な油が供給される。本発明によれば、このときには
スクロール圧縮機を容量制御しないときと比較して、圧縮機機構内部で十分な油膜を形成できるため
スクロール圧縮機の性能を向上させることができる。
【0032】
また、本発明によれば、スクロール圧縮機において、吸入閉じ切り位置が第1位置の状態で容量制御をしないときは、プランジャ(33)が閉位置になって油通路(51)が遮断される。この運転状態は高運転容量状態であり、
スクロール圧縮機の内部の冷媒流速が上昇するため、圧縮室(25a,25b)への油の吸入量が十分となり、かつ油通路(51)から圧縮室(25a,25b)へ過剰な油が供給されないために油上がりは抑制され、性能も維持される。
【0033】
一方、吸入閉じ切り位置が第2位置の状態で吸入容積が小さくなるように容量制御をするときは、プランジャ(33)が開位置になって油通路(51)が開放される。この運転状態は低運転容量状態であり、
スクロール圧縮機の内部の冷媒流速が低下するため、圧縮室(25a,25b)への油の吸入量が不足することとなるが、油通路(51)から圧縮室(25a,25b)へ十分な油が供給される。本発明によれば、このときには
スクロール圧縮機を容量制御しないときと比較して、圧縮機機構内部で十分な油膜を形成できるため
スクロール圧縮機の性能を向上させることができる。
【0034】
上記
第2の発明によれば、圧縮機構(20)のハウジング内の空間(クランク室(23e))に形成された油溜まり(18,50)に一端が連通し、上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通する油通路(51)を用いて、吸入容積の調整時に油を圧縮室(25a,25b)へ供給することができる。したがって、スクロール圧縮機の性能向上を簡単な構造で実現できる。
【0035】
上記
第3の発明によれば、可動スクロール側油通路(55)と固定スクロール側油通路(52)とから構成され、油溜まり(18,50)に一端が連通し、上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通する油通路(51)を用いて、吸入容積の調整時に油を圧縮室(25a,25b)へ供給することができる。したがって、スクロール圧縮機の性能低下を抑えられると同時に油上がりも抑える効果を簡単な構造で実現できる。
【0036】
上記
第4の発明によれば、
スクロール圧縮機のケーシング(10)内に形成された油溜まり(18,50)に一端が連通し、上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通する油通路(51)を用いて、吸入容積の調整時に油を圧縮室(25a,25b)へ供給することができる。したがって、スクロール圧縮機の性能向上を簡単な構造で実現できる。
【0037】
上記
第5の発明によれば、上記給油ポンプ(43a)に一端が連通し、上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通する油通路(51)を用いて、吸入容積の調整時に油を圧縮室(25a,25b)へ供給することができる。したがって、スクロール圧縮機の性能向上を簡単な構造で実現できる。
【0038】
上記
第6の発明によれば、上記固定スクロール(21)の内部を通って上記プランジャ(33)と上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)とに連通する固定スクロール内通路(52)を有する油通路(51)を用いて、吸入容積の調整時に油を圧縮室(25a,25b)へ供給することができる。したがって、スクロール圧縮機の性能向上を簡単な構造で実現できる。
【0039】
上記
第7の発明によれば、上記ケーシング(10)内で固定スクロール(21)の外部に形成されている空間を通って上記プランジャ(33)と上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)とに連通する固定スクロール外通路(58)を有する油通路(51)を用いて、吸入容積の調整時に油を圧縮室(25a,25b)へ供給することができる。したがって、スクロール圧縮機の性能向上を簡単な構造で実現できる。
【0040】
上記
第8の発明によれば、上記プランジャ(33)から上記ケーシング(10)内で固定スクロール(21)の外部に形成されている空間へ作動流体を排出する流出通路(60)に連通する油合流通路(53a)を備えた油通路(51)を用いて、吸入容積の調整時に油を圧縮室(25a,25b)へ供給することができる。したがって、スクロール圧縮機の性能向上を簡単な構造で実現できる。
【0041】
上記
第9の発明によれば、円柱形の弁体であるプランジャ(33)を用いた簡単な構造で吸入容積調整機構(30)を実現でき、上記
第10の発明によれば、プランジャ(33)にシール部材(33e)を設けることにより油の漏れを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0044】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
【0045】
本実施形態のスクロールは、例えば、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う空気調和装置の冷媒回路に設けられ、蒸発器から吸入した低圧の冷媒を圧縮して凝縮器へ吐出するものである。
【0046】
図1に示すように、上記スクロール圧縮機(1)は、いわゆる全密閉型に構成されている。このスクロール圧縮機(1)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(10)を備えている。ケーシング(10)は、縦長円筒部材である胴部(11)と、胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。
【0047】
このケーシング(10)内には、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を駆動する電動機(45)とが収納されている。電動機(45)は、圧縮機構(20)の下方に配置され、回転軸である駆動軸(40)を介して圧縮機構(20)に連結されている。この電動機(45)には、インバータ制御により回転速度を可変に調整することが可能なブラシレスDCモータが用いられている。
【0048】
上記ケーシング(10)の頂部である上部鏡板(12)には、吐出管(15)が貫通して取り付けられている。この吐出管(15)は、終端(図の下端)が圧縮機構(20)に接続されている。上記ケーシング(10)の胴部(11)には、吸入管(14)が貫通して取り付けられている。この吸入管(14)は、終端(図の右端)がケーシング(10)内の圧縮機構(20)と電動機(45)の間に開口している。
【0049】
上記駆動軸(40)は、ケーシング(10)の上下方向の中心線上に配置されている。この駆動軸(40)は、主軸部(41)と偏心部(42)とを備えたクランク軸である。上記偏心部(42)は、主軸部(41)よりも小径に形成され、主軸部(41)の上端面に形成されている。そして、この偏心部(42)は、主軸部(41)の軸心に対して所定寸法だけ偏心しており、偏心ピンを構成している。なお、
図1,
図2では、主軸部(41)と偏心部(42)が同心上に位置している状態を表しているが、これは、
図1,
図2を、主軸部(41)の中心と偏心部(42)の中心が一直線上に位置する方向から視た断面図にしているためであり、例えば
図1,
図2をその側面から視れば、主軸部(41)と偏心部(42)は中心がずれた状態となる。
【0050】
上記ケーシング(10)の胴部(11)内には、その下端付近に、下部軸受部材(48)が固定されている。この下部軸受部材(48)は、滑り軸受(48a)を介して駆動軸(40)の主軸部(41)の下端部を回転自在に支持している。
【0051】
なお、上記駆動軸(40)の内部には、上下方向へ延びる給油通路(44)が形成されている。また、主軸部(41)の下端部には、給油ポンプ(43)が設けられている。この給油ポンプ(43)によってケーシング(10)の底部から冷凍機油が吸い上げられ、その冷凍機油は、駆動軸(40)の給油通路(44)を通って圧縮機構(20)の摺動部や駆動軸(40)の軸受部へ供給される。
【0052】
上記電動機(45)は、ステータ(46)とロータ(47)とによって構成されている。ステータ(46)は、ケーシング(10)の胴部(11)に固定されている。ロータ(47)は、駆動軸(40)の主軸部(41)に連結され、駆動軸(40)を回転駆動する。
【0053】
上記圧縮機構(20)は、固定スクロール(21)と可動スクロール(22)とを備えると共に、固定スクロール(21)を固定支持するハウジング(23)を備えている。固定スクロール(21)と可動スクロール(22)は、後述するように、互いに噛み合う渦巻き状のラップ(21b,22b)を鏡板(21a,22a)上に備えている。そして、上記圧縮機構(20)は、可動スクロール(22)が固定スクロール(21)に対して偏心回転運動をするように構成されている。
【0054】
上記ハウジング(23)は、本体部(23a)と軸受部(23b)とによって構成されている。これら本体部(23a)および軸受部(23b)は、上下に連続して形成され、本体部(23a)がケーシング(10)の胴部(11)に嵌合して接合されている。軸受部(23b)は、本体部(23a)よりも小径に形成され、本体部(23a)から下方へ突出している。この軸受部(23b)は、滑り軸受(23c)を介して駆動軸(40)の主軸部(41)を回転自在に支持している。
【0055】
上記固定スクロール(21)は、固定側鏡板(21a)と、固定側ラップ(21b)と、縁部(21c)とを備えている。上記固定側鏡板(21a)は略円板状に形成されている。上記固定側ラップ(21b)は、固定側鏡板(21a)の下面の中央部分寄りに立設され、該固定側鏡板(21a)に一体形成されている。この固定側ラップ(21b)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されている。上記縁部(21c)は、固定側鏡板(21a)の外周縁部から下方へ向かって延びる壁状の部分であり、下面がハウジング(23)の本体部(23a)の上面に重なる状態で該ハウジング(23)に固定されている。
【0056】
上記可動スクロール(22)は、可動側鏡板(22a)と、可動側ラップ(22b)と、ボス部(22c)とを備えている。上記可動側鏡板(22a)は略円板状に形成されている。上記可動側ラップ(22b)は、可動側鏡板(22a)の上面に立設され、該可動側鏡板(22a)に一体形成されている。この可動側ラップ(22b)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成され、固定スクロール(21)の固定側ラップ(21b)に噛合するように構成されている。上記ボス部(22c)は、可動側鏡板(22a)の下面から下方へ延設され、該可動側鏡板(22a)に一体形成されている。
【0057】
このボス部(22c)には、滑り軸受(22d)を介して駆動軸(40)の偏心部(42)が挿入されている。このため、上記駆動軸(40)が回転すると、可動スクロール(22)が主軸部(41)の軸心を中心として公転する。この可動スクロール(22)の公転半径は、偏心部(42)の偏心量、すなわち主軸部(41)の軸心から偏心部(42)の軸心までの寸法と同じである。
【0058】
上記可動側鏡板(22a)はハウジング(23)の上端部に設けられた第1凹部(23d)内に位置し、上記ボス部(22c)はハウジング(23)の本体部(23a)に設けられた第2凹部(クランク室)(23e)内に位置している。なお、図示していないが、上記可動側鏡板(22a)とハウジング(23)との間には、可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手が配設されている。また、上記第1凹部(23d)は可動側鏡板(22a)の偏心回転運動を許容する大きさに形成され、上記第2凹部(23e)はボス部(22c)の偏心回転運動を許容する大きさに形成されている(図面上はこれら各部の大小関係は考慮していない)。
【0059】
図2は
図1のII−II線断面における固定スクロールと可動スクロールの形状を表した図である。この
図2に示すように、本実施形態のスクロール圧縮機(1)では、いわゆる非対称渦巻き構造が採用されており、固定側ラップ(21b)と可動側ラップ(22b)とで渦巻きの巻き数(渦巻きの長さ)が相違している。具体的には、上記固定側ラップ(21b)は可動側ラップ(22b)よりも約1/2巻き分だけ渦巻きの巻き数が長くなっている。ただし、固定側ラップ(21b)の最外周の一巻き分には外周面は形成されておらず、その範囲で固定側ラップ(21b)が固定スクロール(21)の縁部(21c)につながっている。そして、固定側ラップ(21b)の巻き終わり端は、外周側端部とそれよりも一巻き分だけ長く巻かれたところに位置する内周側端部とが向き合った形で終結しており、その近傍に可動側ラップ(22b)の外周側端部(巻き終わり端)が位置している。
【0060】
上記圧縮機構(20)は、固定側鏡板(21a)と可動側鏡板(22a)の間で固定側ラップ(21b)と可動側ラップ(22b)が噛合して区画形成された複数の圧縮室(25a,25b)を備えている。これら複数の圧縮室(25a,25b)は、固定側ラップ(21b)の内周面と可動側ラップ(22b)の外周面との間に構成される第1圧縮室(25a)と、固定側ラップ(21b)の外周面と可動側ラップ(22b)の内周面との間に構成される第2圧縮室(25b)とから構成され、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)のそれぞれが複数形成されている。この実施形態では、上記固定側ラップ(21b)の巻き数が可動側ラップ(22b)の巻き数よりも多いため、第1圧縮室(25a)の最大容積が第2圧縮室(25b)の最大容積よりも大きい。
【0061】
図1,
図2に示すように、上記固定スクロール(21)の外周側には、吸入ポート(29)が形成されている。この吸入ポート(29)は、圧縮機構(20)の上方の空間に開口している。この吸入ポート(29)は、可動スクロール(22)の公転運動に伴って、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)のそれぞれに間欠的に連通する。
【0062】
上記固定側鏡板(21a)の上端部には凹陥部(21g)が形成され、該固定側鏡板(21a)の上面には、上記凹陥部(21g)を覆う吐出カバー(27)が取り付けられている。そして、この凹陥部(21g)が吐出カバー(27)で覆われた空間が、吐出管(15)に連通する吐出室(28)として構成されている。また、固定側鏡板(21a)の中央下部には、吐出室(28)に連通する吐出ポート(26)が形成されている。この吐出ポート(26)は、可動スクロール(22)の公転運動に伴って第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)のそれぞれに間欠的に連通する。なお、本実施形態では、ケーシング(10)内は、ハウジング(23)の下方の空間(16)と上方の空間(17)の両方が、低圧冷媒で満たされる低圧空間になっている。
【0063】
この実施形態では、圧縮機構(20)の拡大図である
図3に示すように、圧縮機構(20)の吸入行程における圧縮室(25a,25b)の吸入閉じ切り位置を調節することにより吸入容積を調整することのできる吸入容積調整機構(30)が設けられている。この吸入容積調整機構(30)は、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)の両方で吸入閉じ切り位置(吸入行程が完了し、圧縮行程が開始される位置)を調節できるものであり、
図2に示すように渦巻きの外周側一巻き範囲内の1箇所のみに設けられている。吸入容積調整機構(30)は、吸入行程における圧縮室(25a,25b)の吸入閉じ切り位置を第1位置と該第1位置よりも吸入容積が小さくなる第2位置とに切り換えることにより吸入容積を調整可能にする機構である。この吸入容積調整機構(30)は、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)とを連通状態と遮断状態とに切り換え可能な開閉機構(31)により構成されている。
【0064】
上記開閉機構(31)は、その断面構造を表した
図4に示すように、具体的には、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)とが連通状態にあるときに両圧縮室(25a,25b)間での冷媒の流れを許容する連通路(32)と、この連通路(32)を閉鎖して吸入閉じ切り位置が第1位置になる閉位置と、該連通路(32)を開放して吸入閉じ切り位置が第2位置になる開位置とに切り換え可能なプランジャ(33)と、このプランジャ(33)を開位置と閉位置とに位置変化させる開閉駆動機構(34)とを備えている。
【0065】
図5に示すように、上記プランジャ(33)は円柱形の弁体であり、外周面に、上記第2位置で上記油通路(44)の経路上に位置し、上記第1位置で上記油通路(44)の経路上から外れる円周溝(33d)を有している。
【0066】
上記連通路(32)は、固定側鏡板(21a)に形成された段付き穴(32)により構成されている。この段付き穴(32)は、
図2に示すように、渦巻きの外周側一巻き範囲内で、図において渦巻き中心の左側斜め下方の位置に形成されている。この段付き穴(32)は、
図3に示すように、固定側鏡板(21a)の上面に開口した大径部(32a)と、それよりも直径の小さな小径部(32b)とから構成されていて、小径部(32b)が上記連通路(32)を構成している。この段付き穴(32)は、小径部(32b)が固定側ラップ(21b)の歯と歯の間に位置するように形成されている。この小径部(32b)は、可動側ラップ(22b)の歯の厚さよりも直径が大きい円形の穴である。
【0067】
上記段付き穴(32)の中には、圧縮コイルバネ(付勢部材)(35)と、先端部で上記小径部(32b)を開閉する上記プランジャ(33)(
図5参照)とが装填されている。このプランジャ(33)は、
図5に示すように、上記小径部(32b)と嵌合する寸法のプラグ部(33a)と、このプラグ部(33a)よりも大径で上記圧縮コイルバネ(35)が装着されるバネ受け部(33b)と、このバネ受け部(33b)よりも大径のシール部(33c)とが、先端(図の下端)側から連続するように一体的に形成されたものである。また、シール部(33c)には上記円周溝(33d)が形成されている。
【0068】
図3,4に示すように、上記開閉駆動機構(34)は、プランジャ(33)を開放位置に向かって付勢する上記圧縮コイルバネ(35)と、プランジャ(33)に低圧圧力を印加する状態と該プランジャ(33)に圧縮コイルバネ(35)の付勢力に抗して高圧圧力を印加する状態とを切り換える切換弁(切換部材)(36)とから構成されている。切換弁(36)によりプランジャ(33)の後端面(上端面)に低圧圧力を印加した状態では、プランジャ(33)を押し下げようとする力よりも圧縮コイルバネ(35)がプランジャ(33)を押し上げる力が勝って上記連通路(32)が開き、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)とが連通状態になる。一方、切換弁(36)によりプランジャ(33)の後端面に高圧圧力を印加した状態では、プランジャ(33)を押し下げる力が、圧縮コイルバネ(35)によりプランジャ(33)を押し上げようとする力よりも勝って上記連通路(32)が閉じ、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)とが遮断状態となる。
【0069】
吸入容積調整機構(30)(開閉機構(31))の動作の詳細については後述するが、プランジャ(33)を閉鎖位置にして運転を行うと、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)とが遮断状態になるため、設計値通りの吸入容積で冷媒を圧縮する通常運転となる。これに対して、プランジャ(33)を開放位置にして運転を行うと、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)とが連通状態になるため、設計値よりも少ない吸入容積で冷媒を圧縮する調整運転となる。この調整運転を行うとき、本実施形態では、電動機(45)の回転速度を通常運転時よりも速めるようにしている。
【0070】
上記ケーシング(10)内には、第2凹部(クランク室)(23e)の底部に油溜まり(50)が形成され、駆動軸(41)の軸受部等を潤滑した後の油が溜まるようになっている。そして、この実施形態の圧縮機構(20)には、上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)とに連通する油通路(51)が形成されている。上記油通路(51)は、上記圧縮機構(20)のハウジング(23)内のクランク室(23e)に形成された油溜まり(50)に一端が連通し、該圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通している。上記油通路(51)は、
図3及び
図6に示すように、油溜まり側の縦方向通路(52)と、圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)側の横方向通路(円弧状通路)(53)とから構成されている。
【0071】
上記プランジャ(33)は、上記油通路(51)の横方向通路(53)の途中に配置されている。また、上記プランジャ(33)は、上記閉位置において上記油通路(51)を閉鎖して上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)とを遮断し、上記開位置において上記油通路(51)を開放して上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)とを連通させる切換部(55)を有している。この切換部(55)は、上記シール部(33c)に形成された円周溝(33d)により構成されている。つまり、
図3の開位置の状態では油通路(51)が円周溝(33d)を介して上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)とに連通する一方、図示していない閉位置の状態ではシール部(33c)により油通路(51)が遮断されるので、上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)は連通せず、油溜まり(50)から圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)へ油は供給されない。
【0072】
−運転動作−
次に、上述したスクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0073】
まず、上記電動機(45)を駆動すると、駆動軸(40)が回転し、可動スクロール(22)(22)が固定スクロール(21)に対して公転運動を行う。その際、固定スクロール(21)は、オルダム継手(図示せず)によって自転が阻止される。
【0074】
上記可動スクロール(22)の公転運動に伴って、圧縮室(25a,25b)の容積が周期的に増減を繰り返す。上記圧縮室(25a,25b)では、吸入ポート(29)に連通した部分の容積が増大するときに、冷媒回路の冷媒が吸入管(14)から吸入経路(図示せず)と吸入ポート(29)を通って圧縮室(25a,25b)に吸い込まれ、吸入側が閉じ切られた部分の容積が減少するときに冷媒が圧縮された後、吐出ポート(26)から吐出室(28)に吐出される。吐出室(28)の冷媒は、吐出管(15)から冷媒回路の凝縮器に供給される。
【0075】
(通常運転時の圧縮機構の動作)
ここで、吸入容積調整機構(30)が作動していないとき(通常運転時)の圧縮機構(20)の冷媒吸入動作及び冷媒圧縮動作について、
図7から
図12を参照して説明する。この通常運転時は、開閉機構(31)のプランジャ(33)が閉鎖位置にあって連通路(32)を閉鎖しており、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)とが遮断状態になっている。なお、
図7から
図12は、圧縮機構(20)の動作状態を6つの段階に分けて示す断面図であり、可動スクロール(22)が図の時計回り方向に所定の角度間隔で公転している様子を表している。
【0076】
まず、
図7に示した第1の動作状態では、可動側ラップ(22b)の巻き終わり端が固定側ラップ(21b)の歯と歯の間に位置しており、最外周の第1圧縮室(25a-0)と第2圧縮室(25b-0)の両方が低圧側に開放された状態で、両圧縮室(25a-0,25b-0)が吸入ポート(29)に連通している。なお、第1圧縮室(25a)に関し、図の中心線Y上のポイントP1で可動側ラップ(22b)の外周面と固定側ラップ(21b)の内周面とが実質的に接触しており(ここで言う「接触」はミクロンオーダーの隙間はあるが、油膜が形成されるために冷媒の漏れが問題にならない状態のことである)、その接触位置(シールポイント)P1よりも内周側(渦巻きの巻始め側)の部分(25a-1)は既に圧縮行程に入っている。
【0077】
ここから可動スクロール(22)が図において時計回り方向に公転し、
図8の第2の動作状態になると、可動側ラップ(22b)の巻き終わり端の内周面が固定側ラップ(21b)の外周面に接触し、その接触位置(シールポイント)P2が第2圧縮室(25b-1)の吸入閉じ切り位置となる。このとき、最外周の第1圧縮室(25a-0)では容積が拡大する吸入行程の途中であり、まだ巻き終わり側のシールポイントは形成されていない。
【0078】
そこから可動スクロール(22)が公転して
図9の第3の動作状態になると、第2圧縮室(25b-1)では容積が縮小して冷媒の圧縮行程が始まり、最外周の第1圧縮室(25a-0)では容積がさらに拡大して冷媒の吸入行程が進む。
図10の第4の動作状態では、第2圧縮室(25b-1)での圧縮行程と最外周の第1圧縮室(25a-0)での吸入行程がさらに進んでいる。なお、第2圧縮室(25b)に関しては、既に圧縮途中の第2圧縮室(25b-1)に対して渦巻きの巻き終わり側に新たな第2圧縮室(25b-0)が形成され、そこで吸入行程が開始されている。
【0079】
図11に示す第5の動作状態になると、最外周の第2圧縮室(25b-0)での吸入行程がさらに進む一方、可動側ラップ(22b)の巻き終わり端の外周面が固定側ラップ(21b)の内周面に接触し、その接触位置(シールポイント)P1が第1圧縮室(25a-1)の吸入閉じ切り位置となる。
図12に示す第6の動作状態になると、
図11の状態で形成された第1圧縮室(25a-1)での圧縮行程が進むとともに、最外周の第2圧縮室(25b-0)での吸入行程が進む。そして、
図7に示す第1の動作状態に戻って、圧縮途中の第1圧縮室(25a-1)の外周側(渦巻きの巻き終わり側)に新たな第1圧縮室(25a-0)が形成される。
【0080】
その後は、
図7から
図12の動作が繰り返され、圧縮途中の第1圧縮室(25a-1)及び第2圧縮室(25b-1)が容積を縮小しながら渦巻きの内周側へ移動して、それぞれ吐出直前の第1圧縮室(25a-2)及び第2圧縮室(25b-2)へ変化していく。そして、第1圧縮室(25a-2)及び第2圧縮室(25b-2)は、最も内周側へ移動して容積が最小になったときに吐出ポート(26)と連通し、冷媒が圧縮機構(20)から吐出される。
【0081】
通常運転時、吸入容積調整機構(30)ではプランジャ(33)が閉状態となり油通路(51)が遮断されて上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)は連通しない。したがって、高容量の通常運転時には油の吐出量が多くはないのに対応して、上記油溜まり(50)から圧縮室(25a,25b)へ油が供給されないので、圧縮室への油の供給が過多になることはない。
【0082】
(調整運転時の圧縮機構の動作)
次に、吸入容積調整機構(30)が作動しているとき(調整運転時)の圧縮機構(20)の冷媒吸入動作及び冷媒圧縮動作について、同じく
図7から
図12を参照して説明する。この調整運転時は、吸入容積調整機構(30)である開閉機構(31)はプランジャ(33)が開放位置にあって連通路(32)である小径部(32b)を開放しており、第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)とが連通状態(連通可能な状態)になっている。
【0083】
まず、
図7に示した第1の動作状態において、最外周の第1圧縮室(25a-0)と第2圧縮室(25b-0)の両方が低圧側に開放された状態で、両圧縮室(25a-0,25b-0)が吸入ポート(29)に連通している点は通常運転時と同じである。一方、通常運転時には可動側ラップ(22b)の外周面と固定側ラップ(21b)の内周面が図の中心線Y上のポイントP1で接触し、このポイント(シールポイント)P1よりも内周側(渦巻きの巻始め側)の第1圧縮室(25a-1)が既に閉じ切られていたのに対して、この第1圧縮室(25a-1)は連通路(32)を介して、吸入行程の途中にある最外周の第2圧縮室(25b-0)に連通している。したがって、この第1圧縮室(25a-1)はまだ吸入閉じ切り位置の手前の状態であり、上記第2圧縮室(25b)と同様に吸入行程の途中の段階である。
【0084】
図8の第2の動作状態になると、固定側ラップ(21b)の内周面と可動側ラップ(22b)の外周面との接触点P1が開閉機構(31)の連通路(32)を通過した直後の位置に変位している。したがって、このときの接触位置(シールポイント)P1が第1圧縮室(25a-1)の吸入閉じ切り位置となる。一方、この状態で通常運転時には閉じ切られていた最外周の第2圧縮室(25b-1)は、圧縮行程に入った第1圧縮室(25a-1)の渦巻き外周側に形成されている最外周の第1圧縮室(25a-0)に連通路(32)を通じて連通している。そして、この最外周の第1圧縮室(25a-0)が吸入行程の途中であるため、上記第2圧縮室(25b)は吸入閉じ切り前である。
【0085】
この状態は
図9に示す第3の運転状態と
図10に示す第4の運転状態でも同じであり、第2圧縮室(25b-1)は吸入閉じ切り前の状態で、まだ巻き終わり側のシールポイントは形成されていない。このとき、最外周の第1圧縮室(25a-0)も吸入行程の途中である。なお、
図10に示す第4の動作状態では、上記第2圧縮室(25b-1)の渦巻き外周側に、新たな第2圧縮室(25b-0)が形成され始めている。
【0086】
図11に示す第5の動作状態になると、固定側ラップ(21b)の外周面と可動側ラップ(22b)の内周面との接触点P2が開閉機構(31)の連通路(32)を通過する。したがって、このときの接触点P2が第2圧縮室(25b-1)のシールポイントとなり、第2圧縮室(25b-1)での圧縮行程が開始される。この状態で、通常運転時には最外周の第1圧縮室(25a-1)が閉じ切られた状態になっていたが、調整運転時には最外周の第1圧縮室(25a-1)が最外周の第2圧縮室(25b-0)を通じて低圧側に連通しているため、まだ吸入行程の途中である。このことは
図12の第6の動作状態でも同じであり、
図7の第1の動作状態に戻っても同じである。
【0087】
以上のように、開閉機構(31)の連通路(32)を開いておくことにより、第1圧縮室(25a)及び第2圧縮室(25b)の両方の吸入容積が通常運転時に比べて小さくなる。その結果、通常運転時よりも圧縮比が小さくなり、吸入圧力が通常運転時と同じとすると吐出圧力が下がることになる。
【0088】
なお、この調整運転を行うとき、本実施形態では、電動機(45)の回転速度を通常運転時よりも速めるようにしているため、スクロール圧縮機(1)の能力を通常運転時と同等に保つことができる。
【0089】
調整運転時、吸入容積調整機構(30)ではプランジャ(33)が開状態となり油通路(51)が開放されて上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)が連通する。したがって低容量の調整運転時には、調整運転しない場合と同容量になるように能力を調整するために、調整しない場合と比較して高速回転になるので、圧縮室(25a,25b)への油供給量が多くなるのに加えて、上記油溜まり(18,50)から圧縮室(25a,25b)へ油が供給されるので、圧縮室への油の供給が不足することはない。
【0090】
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、調整運転時(低容量運転時)だけでは圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給されず、圧縮機構部に十分な油膜が形成されないために性能が抑制されるが、油通路(51)が開放されて上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)が連通することにより、圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給される。したがって、調整運転時の性能を向上させることができる。
【0091】
−実施形態1の変形例−
図13,
図14に示すように、上記油通路(51)は、その通路の全体が、上記固定スクロール(21)の内部を通って上記プランジャ(33)と上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)とに連通する通路(固定スクロール内通路)で構成してもよい。この実施形態2では、上記吸入管(14)が吸入ポート(29)に接続されており、吸入ポート(29)に上記油通路(51)の横方向通路(53)が連通している。このように構成することにより、油溜まり(50)の油は、吸入冷媒に合流して圧縮室(25)に供給される。
【0092】
この変形例においても、調整運転時(低容量運転時)だけでは圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給されず、圧縮機構部に十分な油膜が形成されにくいために性能が抑制されるが、本発明では油通路(51)が
図13の状態になって開放されて上記油溜まり(50)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)が連通することにより、圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給される。したがって、調整運転時の性能を向上させることができる。
【0093】
《発明の実施形態2》
次に、実施形態2について説明する。
【0094】
この実施形態2では、
図15,
図16に示すように、油通路(51)が、可動スクロール側油通路(55)と、該可動スクロール側油通路(55)に連通する固定スクロール側油通路(固定スクロール内通路)(52)とを備えている。可動スクロール側油通路(55)は、固定スクロール側油通路(51)との連通端と反対側の端部が油溜まり(18)に連通している。具体的には、可動スクロール側油通路(55)は、固定スクロール側油通路(52)との連通端と反対側の端部が、駆動軸(41)の内部に形成された給油通路(44)を介してケーシング(10)の下部の油溜まり(18)に連通している。また、固定スクロール側油通路(52)は、可動スクロール側連通路(55)との連通端と反対側の端部が上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に連通している。
【0095】
この実施形態2においても、調整運転時(低容量運転時)だけでは圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給されず、圧縮機構部に十分な油膜が形成されにくいために性能が抑制されるが、本発明では油通路(51)が
図16の状態になって開放され、上記油溜まり(18)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)が連通することにより、圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給される。したがって、調整運転時の性能を向上させることができる。
【0096】
《発明の実施形態3》
次に、実施形態3について説明する。
【0097】
この実施形態3では、
図17に示すように、上記油通路(51)は、上記ケーシング(10)内に形成された油溜まり(18)に一端が連通し、上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通している。油通路(51)は、具体的には、ケーシング(10)内の油溜まり(18)から上方へのびて上記プランジャ(33)に連通する給油管(56)を有し、この給油管(56)が上記横方向通路(53)に連通している。油通路(51)は、プランジャ(33)と圧縮室(25)の吸入側との間の部分(上記横方向通路(53))は、実施形態1の変形例及び実施形態2と同様に構成されている。
【0098】
また、その他の構成は、実施形態2と同じである。
【0099】
この実施形態3においても、調整運転時(低容量運転時)だけでは圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給されず、圧縮機構部に十分な油膜が形成されにくいために性能が抑制されるが、本発明では油通路(51)が
図17の状態になって開放され、上記油溜まり(18)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)が連通することにより、圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給される。したがって、調整運転時の性能を向上させることができる。
【0100】
《発明の実施形態4》
次に、実施形態4について説明する。
【0101】
この実施形態4では、
図18に示すように、上記油通路(51)は、上記駆動軸(41)に設けられた給油ポンプ(43a)に一端が連通し、上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)に他端が連通している。油通路(51)は、具体的には、駆動軸(41)の下端部に設けられた給油ポンプ(43a)から上方へのびて上記プランジャ(33)に連通する給油管(57)を有し、この給油管(56)が上記横方向通路(53)に連通している。油通路(51)は、プランジャ(33)と圧縮室(25)の吸入側との間の部分(上記横方向通路(53))は、実施形態1の変形例及び実施形態2と同様に構成されている。
【0102】
また、その他の構成は、実施形態3と同じである。
【0103】
この実施形態4においても、調整運転時(低容量運転時)だけでは圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給されず、圧縮機構部に十分な油膜が形成されにくいために性能が抑制されるが、本発明では油通路(51)が
図18の状態になって開放され、上記油溜まり(18)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)が連通することにより、圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給される。したがって、調整運転時の性能を向上させることができる。
【0104】
《発明の実施形態5》
次に、実施形態5について説明する。
【0105】
この実施形態5では、
図19〜
図21に示すように、上記油通路(51)は、上記ケーシング(10)内で固定スクロール(21)の外部に形成されている空間(17)を通って上記プランジャ(33)と上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)とに連通する固定スクロール外通路(58)を有している。また、この実施形態5では、圧縮室(25a,25b)から上記空間(17)へ冷媒ガスが流出するガス流出路(60)が固定スクロール(21)に形成されている。
【0106】
この構成においては、
図20に示すようにプランジャ(33)が開いているときは圧縮室からガスが流出するとともに油も横方向通路(53)から上記空間(17)へ流出し、冷媒ガスと油が混合して上記吸入側空間(25s)に吸入される。一方、
図21に示すようにプランジャ(33)が閉じているときは圧縮室(25a,25b)から上記空間(17)へガスは流出しないし、油も横方向通路(53)から上記空間(17)へ流出しない。
【0107】
この実施形態5においても、調整運転時(低容量運転時)だけでは圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給されず、圧縮機構部に十分な油膜が形成されにくいために性能が抑制されるが、本発明では油通路(51)が
図20の状態になって開放され、上記油溜まり(18)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)が連通することにより、圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給される。したがって、調整運転時の性能を向上させることが
できる。
【0108】
《発明の実施形態6》
本発明の実施形態6は、油通路(51)の構造を実施形態5とは異ならせた例である。具体的には、
図22,
図23に示すように、上記油通路(51)は、上記ケーシング(10)内で固定スクロール(21)の外部に形成されている空間(17)を通って上記プランジャ(33)と上記圧縮機構(20)の吸入側空間(25s)とに連通する固定スクロール外通路(58)を有している。また、この実施形態5では、圧縮室(25a,25b)から上記空間(17)へ冷媒ガスが流出するガス流出路(60)が固定スクロール(21)に形成されている。そして、この実施形態6では、横方向通路(53)の端部が閉塞されるとともに、該横方向通路
(53)とガス流出路(60)が油合流通路(53a)によって連通している。
【0109】
この構成においては、
図23に示すようにプランジャ(33)が開いているときは圧縮室からガスが流出するとともに、油がガス流出路(60)を流れるガスと合流して上記空間(17)へ流出し、冷媒ガスと油が混合して流れ、上記吸入側空間(25s)に吸入される。一方、図示していないが、プランジャ(33)が閉じているときは圧縮室(25a,25b)から上記空間(17)へガスは流出しないし、上記空間(17)へ流出しない。
【0110】
この実施形態6においても、調整運転時(低容量運転時)だけでは圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給されず、圧縮機構部に十分な油膜が形成されにくいために性能が抑制されるが、本発明では油通路(51)が
図23の状態になって開放され、上記油溜まり(18)と圧縮室(25a,25b)の吸入側空間(25s)が連通することにより、圧縮室(25a,25b)へ十分な量の油が供給される。したがって、調整運転時の性能を向上させることができる。
【0111】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0112】
例えば、上記実施形態は本発明を非対称渦巻き構造に適用した例であるが、本発明は、対象渦巻き構造のスクロール圧縮機に適用してもよい。その場合、吸入容積調整機構(30)は、渦巻きの中心に対して対称となる位置に1つずつ、上記実施形態と同様の構造のものを設けるとよい。そのようにすれば、対称渦巻き構造の圧縮機構(20)において、渦巻き中心に対して対称に存在する第1圧縮室(25a)と第2圧縮室(25b)のそれぞれについて吸入閉じ切り位置を調整することができ、同時に油の流れも制御できるので、上記実施形態と同様の効果を得ることが
できる。
【0113】
さらに、上記実施形態においては、
図24に示すように、上記プランジャ(33)の外周面における上記円周溝(33d)の両側にシール部材(33e)を設けてもよい。この場合、上記プランジャ(33)の上記シール部(33c)には、上記円周溝(33d)の両側に、周方向に沿ってシール装着溝(33f)が形成され、このシール装着溝(33f)にリング状のシール部材(33e)が装着される。
【0114】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。