(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スクリュー搬送路が延びているベント室を使用し、該スクリュー搬送路を利用してポリ乳酸と解重合触媒とキャリヤ樹脂とを含む溶融樹脂混合物を、減圧下に保持された前記ベント室内に導入し、該溶融樹脂混合物中に含まれるラクチドをガス化し、ガス状ラクチドを該ベント室から捕集するラクチドの回収方法において、
前記ベント室内のスクリュー搬送路上に、前記ラクチドのガス化と共に生成する樹脂塊を前記スクリュー搬送路に戻すための戻し部材を設けたことを特徴とするラクチドの回収方法。
【背景技術】
【0002】
近年におけるプラスチック使用量の増大に伴うプラスチック廃棄物の異常な増大を解決する手段として、バクテリヤや真菌類が体外に放出する酵素の作用で崩壊する生分解性プラスチックが注目されている。このような生分解性プラスチックの中でも、工業的に量産されて入手が容易であり、環境にも優しい脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸が注目され、広範囲の分野での使用が種々提案されている。
【0003】
ポリ乳酸(PLA)は、トウモロコシなどの穀物でんぷんを原料とする樹脂であり、でんぷんの乳酸発酵物、L−乳酸をモノマーとする直接重縮合の重合体や、そのダイマーであるラクチドの開環重合により製造される重合体である。この重合体は、自然界に存在する微生物により、水と炭酸ガスに分解され、生物的な完全リサイクルシステム型の樹脂としても着目されている。
【0004】
最近では、ポリ乳酸のリサイクルシステムとして、ポリ乳酸を分解して再利用し得るケミカルリサイクル法が最も注目を浴びている。この方法は、ポリ乳酸を解重合触媒の存在下で加熱することにより解重合を行い、得られるラクチドを再度開環重合に供してポリ乳酸として再利用するというものである。
【0005】
このようなケミカルリサイクルに適用されるポリ乳酸からのラクチド回収装置は、例えば特許文献1及び2で提案されている。これら特許文献で提案されている装置では、ポリ乳酸と解重合触媒及びキャリヤ樹脂が、二軸押出機中に投入されて溶融混練され、溶融混練物は、二軸押出機中のスクリューによりベント室(ベントゾーン)に搬送され、このベント室でポリ乳酸の解重合により生成したラクチドがガス化して他の成分と分離して回収される。即ち、ポリ乳酸の解重合により生成する低分子量のラクチド
は、標準大気圧下の沸点が255℃と高いため、減圧下に保持されたベント室にポリ乳酸と解重合触媒とを含む溶融混練物を供給することにより、生成するラクチドを
ガス化して回収するというものである。
【0006】
このような回収装置で実施されるラクチドの回収方法は、実験室レベルでの実施には問題は無いのであるが、大量のポリ乳酸が投入される工業的実施には、解決すべき問題が残されている。例えば、押出機
中では、キャリヤ樹脂が溶融圧縮されながら移動しており、このキャリヤ樹脂によって溶融粘度の小さなポリ乳酸の溶融物や解重合触媒が搬送されるのであるが、溶融圧縮されたキャリヤ樹脂が減圧されているベント室に導入されたとき、圧力開放によって膨張、及び解重合ラクチドの膨張により、キャリヤ樹脂が樹脂塊となってスクリュー搬送路から浮いてしまうという現象を生じることが本発明者等による研究により判っている。このような樹脂塊が大きく成長すると、キャリヤ樹脂表面全面を覆いガス状ラクチドが揮発しなくなったり、ポリ乳酸の解重合により生成し
ガス化したラクチドの流路を塞いでしまい、ラクチドの回収効率が大幅に低下してしまったり、さらには、樹脂塊が飛散してベント室から捕集されたラクチドに混ざってしまうという重大な問題が生じることもある。
上記のようなキャリヤ樹脂の樹脂塊によりガス状ラクチドが揮発しにくい状態、あるいは揮発しなくなった状態を、一般に「ベントアップ」と呼んでいる。
【0007】
また、ベントアップの原因としては、ラクチドの還流も考えられる。
即ち、減圧下に保持されているベント室の壁部(特にスクリュー搬送路を形成しているシリンダー壁)はヒーターにより加熱され、これにより、解重合により生成したラクチドが
ガス化し、キャリヤ樹脂や触媒と分離して捕集されるのであるが、
ガス化したラクチドが、温度の低い覗き窓(天窓)や上部内壁面に接触して結露し、液滴となって、再びスクリュー搬送路に戻ってしまうことがある。このような還流が著しく生じると、スクリューやシリンダー壁表面が液状物質で被覆されてしまい、この結果、キャリヤ樹脂(溶融樹脂)がスリップして前走しなくなり、樹脂塊が成長する原因となり、ベントアップの原因となってしまう。
さらに、還流現象は、気化と液化とを繰り返す行程となるため、目的とするラクチドのラセミ化を進行させることとなる。例えば、L−ラクチドからmeso−ラクチドへの光学異性転移、及びmeso−ラクチドからD−ラクチドへの光学異性転移が生じ、得られるL−ラクチドの純度(光学的純度)が低下してしまうこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、ポリ乳酸の解重合により生成するラクチドを、樹脂塊を有効に回避し、ベントアップを発生することなく、有効に回収することが可能なラクチドの回収方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、高純度(光学的純度)のL−ラクチドを回収することが可能なラクチドの回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、スクリュー搬送路が延びているベント室を使用し、該スクリュー搬送路を利用してポリ乳酸と解重合触媒とキャリヤ樹脂とを含む溶融樹脂混合物を、減圧下に保持された前記ベント室内に導入し、該溶融樹脂混合物中に含まれるラクチドをガス化し、ガス状ラクチドを該ベント室から捕集するラクチドの回収方法において、
前記ベント室内のスクリュー搬送路上に、前記ラクチドのガス化と共に生成する樹脂塊を前記スクリュー搬送路に戻すための戻し部材を設けたことを特徴とするラクチドの回収方法が提供される。
【0011】
本発明のラクチドの回収方法においては、
(1)前記戻し部材が、前記スクリュー搬送路を延びている搬送スクリューと係合して設けられている落とし込み用スクリューであること、
(2)前記ベント室には、前記ガス状ラクチドを捕集するための捕集装置が連結されていること、
(3)前記ベント室の上部壁には、該上部壁に沿って流れ落ちる還流液を受ける槽が前記スクリュー搬送路とは区画して設けられていること、
(4)前記ベント室の上部壁には、傾斜覗き窓が設けられていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のラクチドの回収方法では、ベント室内のスクリュー搬送路上に、ラクチドのガス化と共に生成した樹脂塊が、該スクリュー搬送路に戻すための戻し部材(例えば該スクリュー搬送路を延びている搬送用スクリューに係合している落とし込みスクリュー)によって、スクリュー搬送路中に戻されて搬送される。このため、このような樹脂塊が成長して大きくなることがなく、かかる樹脂塊によるベントアップ、即ち、ベント室での閉塞や樹脂塊の捕集ラクチドへの混入等の問題を有効に防止することができる。
【0013】
また、本発明の回収方法では、ラクチドの還流により生じる不都合を有効に抑制する手段を採用することもできる。
具体的には、ベント室から流れ落ちる還流液を受ける槽を、仕切り壁等により、前記スクリュー搬送路と区画して設けることにより、この還流液がスクリュー搬送路に滴下することを防止することができる。例えば、前記スクリュー搬送路を観察するための傾斜覗き窓(天窓に相当)を設けたとき、結露などにより液化したラクチドが該覗き窓上に生成した場合においても、この覗き窓に沿って流れ落ちる還流液はスクリュー搬送路に流れ落ちることがなく、これにより、スクリュー搬送路を延びているスクリューや該スクリューを収容しているシリンダー壁の表面が液状物質で覆われることが有効に回避され、キャリヤ樹脂のスリップなどによる樹脂塊の発生を防止でき、従って、ベントアップをより確実に回避できる。しかも、気化と液化の繰り返しを有効に抑制できるため、ポリ乳酸の解重合により生成するラクチドのラセミ化を有効に防止でき、ラセミ化によるラクチドの純度(光学的純度)低下も効果的に回避することができる。
【0014】
このように、本発明の回収方法によれば、ベントアップの問題を有効に回避でき、安定した連続運転による効率よく
ガス化したラクチドを安定的に回収することができ、回収率も向上し、さらには高純度(光学的純度)のラクチドを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のラクチド回収方法を実施するために使用される回収装置は、大まかに言って、押出機(溶融混練装置)1、押出機1に連なるベント室3、及びベント室3に連なる捕集装置5から構成されており、通常、捕集装置5側に設けられている真空ポンプ7により、ベント室3が所定の減圧度に保持されるようになっている。
【0017】
本発明では、このような回収装置を使用し、ポリ乳酸、
解重合触媒及びキャリヤ樹脂を、押出機1のホッパーに投入し、押出機1のシリンダー内で溶融混練し、溶融混練物をベント室3に供給し、このベント室3において、ポリ乳酸の解重合により生成したラクチドを
ガス化し、
ガス化したラクチドは、ベント室3に連なる捕集装置5に導入され、液化して回収されることとなる。
【0018】
ラクチド回収のために使用されるポリ乳酸としては、市場回収品(Post Consumer)や樹脂加工メーカー工場から排出される産業廃棄物、或いはポリ乳酸樹脂の製造工程で発生するスペックアウト樹脂などが使用される。さらに、L−乳酸(PLLA)とD−乳酸(PDLA)とを混合したステレオコンプレックスタイプでもよいし、分子鎖中のL−乳酸単位とD−乳酸単位とが混在するメソタイプのものであっても差し支えない。勿論、バージンのポリ乳酸であっても問題はない。
また、用いるポリ乳酸は、少量の共重合単位が組みこまれているもの、例えば、50モル%以上が乳酸単位であることを条件として、ラクチドと共重合可能なラクトン類、環状エーテル類、環状アミド類、各種アルコール類、カルボン酸類などに由来する単位を含んでいてもよい。
【0019】
ポリ乳酸の
解重合触媒としては、MgOが代表的であり、最も好適に使用されるが、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物なども使用し得る。更に、重合触媒に使用される
Tin(II)2−ethyl hexanoateや難燃剤である水酸化アルミニウムAl(OH)3も好適に使用することができる。かかる解重合触媒は、ポリ乳酸の解重合温度を低下させるものであり、解重合触媒の使用により、ポリ乳酸の熱分解が促進され、ポリ乳酸の低分子量化が進行し、例えば押出機1のホッパー投入時に約20万の分子量を有していたポリ乳酸が、分子量が144のラクチドまで分解する。また、MgOなどは、熱反応時のラセミ化現象を抑制する効果もある。
【0020】
上記のポリ乳酸の
解重合触媒は、通常、ポリ乳酸100質量部当り、0.1〜5質量部の量で使用される。
【0021】
キャリヤ樹脂は、ポリ乳酸の溶融物をスクリュー搬送するために使用されるものであると同時に、シール材としての機能も有している
。
【0022】
即ち、ラクチドを含んだポリ乳酸は、その分子量によっても異なるが、概して溶融粘度が通常のポリマーに比してかなり低いため、スクリューによるポリ乳酸溶融物の搬送を効率よく行うことが困難である。スクリューが空回りに近い状態となってしまうからである。このため、キャリヤ樹脂を併用することにより、押出機中でのポリ乳酸溶融物の粘性を高め、効率よく、ポリ乳酸の溶融物をスクリュー搬送することができる。
また、キャリヤ樹脂は、ポリ乳酸に比して溶融粘度が高いことから、これをある程度以上の量で使用してポリ乳酸と溶融混合することにより、押出機のシリンダー内面とスクリューとの間の空隙を溶融混合物が充満した状態を維持しながら、該溶融混合物をスクリュー搬送することができる。即ち、キャリヤ樹脂の使用により、シリンダー内面とスクリューとの間の空隙が常にシールされている状態を保持することが可能となり、これにより、ベント室3の減圧を効果的に行うことができる。
また、溶融粘度が低いキャリヤ樹脂の場合においても、PLAの解重合温度より高い熱分解温度を有する樹脂(PET・PC・PSなど)であれば、それ自体が熱分解することがないため、ポリ乳酸、及び、その解重合物をスクリュー搬送(前走)させることができ、適用することが可能である。
【0023】
このようなキャリヤ樹脂としては、ポリ乳酸の解重合に悪影響を与えず、且つポリ乳酸の解重合により生成するラクチドに対して反応性を示さない限りにおいて、種々の熱可塑性樹脂を使用することができるが、一般的には、
高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)などが好適に使用されるが、なかでも溶融粘度の高いHDPE、LDPE、PPがより好適に使用される。またこれらの樹脂は、上述した機能を発揮するに十分な分子量を有するものが使用される。
【0024】
本発明において、上記のキャリヤ樹脂は、装置の仕様等にもよるが、一般に、ポリ乳酸100質量部当り20〜10000質量部程度、より好適には40〜600質量部程度の量で使用される。この範囲を下回ると溶融樹脂が前走しにくくなり、この範囲を上回るとラクチド回収効率が落ちる虞がある。
【0025】
上述したポリ乳酸、解重合触媒及びキャリヤ樹脂は、その所定量が押出機1のホッパーから投入され、この押出機1のシリンダー内で溶融混合されることとなる。
即ち、押出機1のシリンダーを覆うように設けられているヒーターによりシリンダー内部が加熱され、シリンダー内部を走行しているスクリューにより、撹拌及び搬送されながら、溶融混合が行われることとなる。押出機1としては、通常、2本以上のスクリューを備えた2軸押出機が使用され、シリンダー内部を250℃〜350℃に加熱して溶融混合が行われ、この溶融混合に伴い、ポリ乳酸の解重合が始まり、ポリ乳酸の低分子量化が進行していくこととなる。
【0026】
上記の溶融混合によりポリ乳酸の低分子量化が進行していき、ポリ乳酸の基本単位を形成しているラクチド(乳酸2量体)が得られるが、このラクチドの標準大気圧下での沸点は255℃であるため、このままでは、これを
ガス化して捕集することができない。即ち、ラクチドが液状のままでは、キャリヤ樹脂の溶融物等と分離して捕集することができないため、この溶融混練物は、減圧状態に保持されたベント室3内に導入され、ラクチドの
ガス化を行うことが必要となる。
【0027】
図2を
図1と併せて参照して、ベント室3は、底部にスクリュー搬送路11を備えており、このスクリュー搬送路11から上方に立ち上がっている側壁13の上部には、捕集装置5に連なる捕集管15が連結されている。
また、このベント室3の天井壁17は、傾斜構造を有しており、この傾斜した部分に覗き窓19が取り付けられており、この覗き窓19からベント室3の内部、特にスクリュー搬送路11の状態を常時観察できるようになっている。
さらに、上記の覗き窓19の下方端部は、スクリュー搬送路11から上方に立ち上がっている側壁13の外側部分にまで延びており、その下側には、還流液の受け槽21が設けられている。即ち、この受け槽21は、上記の側壁13によってスクリュー搬送路11とは区画されており、還流液がスクリュー搬送路11に混ざらないようになっている。
【0028】
このような構造のベント室3において、スクリュー搬送路11は、同方向に回転する一対の搬送スクリュー23a,23bと、一方の搬送スクリュー23aの上部に配置された落とし込みスクリュー25と、搬送スクリュー23a,23bを収容しているシリンダー壁(バレル)27とから構成されている。
【0029】
上記のシリンダー壁27は、押出機1のシリンダー壁が延長して伸びているものであり、同様に、搬送スクリュー23a,23bは、押出機1のスクリューが延長しているものであり、前述した溶融混合物は、押出機1から
図2の紙面手前に搬送され、ベント室3内に導入されるようになっている。
また、落とし込みスクリュー25は、ベント室3内に選択的に設けられているものであり、搬送スクリュー23aと係合しており且つ搬送スクリュー23aとは逆方向(ニップ位置では同方向)に回転するように設けられている。
【0030】
即ち、ベント室3は、真空ポンプ7の作動により、0.1〜8kPaA程度に減圧される。また、シリンダー壁27に取り付けられているヒーター(図示せず)によって、スクリュー搬送路11内は、押出機1内のシリンダー部分と同様、250℃〜350℃程度に加熱されている。これにより、スクリュー搬送路11内を走行している上記の搬送スクリュー23a,23bによってベント室3内に導入された溶融混合物に含まれるポリ乳酸の解重合により生成したラクチドが
ガス化され、
ガス化したラクチドは、上記の捕集管15から捕集装置5に導入される。
【0031】
ところで、スクリュー搬送される溶融混合物は、蒸気圧の高いポリ乳酸解重合物を含有し、かつ圧縮されながら減圧されているベント室3内に導入
され、このベント室3内で膨張するため、スクリュー23a,23bから樹脂塊30が浮いてしまうことがある。従って、この回収装置の運転を続けていくと、ベント室3内で、一対の搬送スクリュー23a,23bから浮いてしまった樹脂塊30を連続して生じてしまう。この樹脂塊30は、主としてキャリヤ樹脂により形成されたカサブタのようなものであり、この樹脂塊30が成長して大きくなっていくと、ラクチドガス回収が妨げられるばかりか、飛散した樹脂塊30が捕集管15を通って捕集装置5内に入り込んでしまい、捕集管15全体を閉塞してしまうこともある。
【0032】
しかるに本発明においては、上記の搬送スクリュー23aの上側に、該スクリュー23aと係合する落とし込みスクリュー25が設けられている。この落とし込みスクリュー25は、
図2から理解されるように、搬送スクリュー23aとは逆方向に回転するように設けられている。このため、スクリュー搬送路11から浮いてしまった状態の樹脂塊30は、この落とし込みスクリュー25によって再び搬送スクリュー23a上に戻され、他方の搬送スクリュー23bとのニップ位置で粉砕されながら搬送され、スクリュー搬送路11の端部11a(
図1参照)から押し出されて排出される。
このように、落とし込みスクリュー25は、樹脂塊30をスクリュー搬送路11に戻すための戻し部材として機能し、これにより、樹脂塊30の成長を抑制し、樹脂塊30の成長による不都合を有効に防止することができる。
【0033】
尚、上記の落とし込みスクリュー25は、他方の搬送スクリュー23b上に設けることもできるし、一対の搬送スクリュー23a,23bの両方に、落とし込みスクリュー25を設けることも可能である。
【0034】
また、
図3に示されているように、スクリュー羽根の代わりに、楕円形上の羽根26が複数配列されている回転シャフト
127を、戻し部材として使用することもできる。即ち、この回転シャフト
127を、搬送スクリュー23a或いは23bと並走させ、搬送スクリュー23a或いは23bと点接触させることにより、樹脂塊30をスクリュー搬送路11に押し込むことができる。この態様では、溶融樹脂との接触面積あるいは接触時間を少なくすることができ、溶融樹脂の搬送阻害が極めて少ないという利点がある。
【0035】
上述した戻し部材として使用される落とし込むスクリュー25や回転シャフト
127の回転は、搬送スクリュー23a・23bと同期する回転であってもよく、同期しない回転であってもよい。
【0036】
また、スクリュー搬送路11から浮いてしまった樹脂塊30をスクリュー搬送路11に戻すことができる限り、落とし込みスクリュー25や上記の回転シャフト
127以外の部材を戻し部材として用いることもできる。例えば、スクリュー23a,23bにより搬送されている溶融混合物から
ガス化して捕集管15に流れるラクチドの流路を阻害しないように、搬送スクリュー23a及び/または23bの上方を覆うようにプレート状の戻し部材や点接触の戻し部材を設けることもできる。
例えば、
図4のように、エアシリンダー28により、押し込み用のプレート29を側壁13に添って上下動させることにより、樹脂塊30をスクリュー搬送路11内に押し込むこともできる。この場合、プレート29の下端面は、押し込みを効果的に行うために湾曲した面となっていることが好ましく、さらには溶融樹脂の溶着を避けるために、この下端面を、ジルコニアで焼結被膜したり、DLC蒸着膜を形成したり、テフロン
(登録商標)被膜を形成するなど、平滑性の高い非極性皮膜を形成しておくことが好ましい。
【0037】
また、上記のような構造のベント室3では、還流液による不都合も有効に防止することができる。
即ち、ポリ乳酸、解重合触媒及びキャリヤ樹脂を含む溶融混合物を、スクリュー搬送路11により押出機1からベント室3に導入していき、ラクチドの
ガス化を連続して行っていくと、覗き窓19の面で結露による液滴31(即ち、還流液)を生じていく。この液滴31がスクリュー搬送路11に滴下していくと、この搬送路11を走行している搬送スクリュー23a,23bの表面或いはシリンダー壁27の内表面を覆うように液膜が形成されてしまい、溶融混合物がスリップし易くなり、結果として、前述した樹脂塊30を生成し易くなってしまう。
【0038】
しかるに、
図2に示されているような構造のベント室3では、覗き窓19が傾斜して設けられており、結露による液滴31は、覗き窓19の面に沿って流れ落ち、側壁13によってスクリュー搬送路11とは完全に区画された受け槽21に収容されることとなる。即ち、液滴31がスクリュー搬送路11内に滴下し、樹脂塊30の発生を促してしまうという不都合を有効に回避することができる。
また、液滴31のスクリュー搬送路11への落下は、ラクチドの気化と液化の繰り返しをもたらし、ラクチドのラセミ化を促進させ、得られるラクチドの光学的純度を低下させるが、上記のような構造のベント室3では、このような不都合も有効に回避することができる。
【0039】
本発明において、上述した覗き窓19は、
図2に示されているように二重窓とし、Oリング33a,33bを備えたガスケット35により、天井壁17に取り付けられていることが好適である。このような構造により、覗き窓19の保温性を高め、結露を防止でき、還流液の生成を有効に回避することができる。
【0040】
また、上述した液滴31(還流液)を捕集する受け槽21の底部には、受け槽21に溜まった還流液31aを回収する回収ライン37が設けられており、その側壁の上部には、ベント室3の真空度を保持し或いは真空をブレイクするための真空ブレイク/復旧ライン39が設けられている。このような構造により、受け槽21に溜まった還流液31aを回収することができる。
【0041】
さらに、受け槽21に溜まった還流液31aを真空系を破壊せずに回収するために、
図5に示すように、受け槽21の底部に、捕集ライン41を介して一時的捕集槽43を連結し、この一時的捕集槽43に真空ブレイク/復旧ライン45及び回収ライン47を設けることもできる。この構造では、真空ブレイク/復旧ライン45を閉じた状態で、受け槽21に溜まった還流液31aを捕集ライン41を通して一時的捕集槽43に移動させれば、還流液31aを受け槽21から排出する際の真空系の破壊をより確実に防止することができる。勿論、一時的捕集槽43に捕集された液31bを回収ライン47により回収する際に、上記の捕集ライン41を閉じておけば、この時に真空系が破壊されることもない。
【0042】
本発明において、ベント室3により
ガス化されたラクチドは、側壁13の上部に設けられている捕集管15を介して捕集装置5に導入されるが、
図2に示されているように、この捕集管15は、上方に傾斜して延びており且つ、真空ブレイク防止弁50が設けられており、異常時等に、この弁50を開閉し得るようになっている。
【0043】
また、この捕集管15の入り口部分にも、還流液を受けるための受け槽15aを設けておくことが望ましい。即ち、捕集管15内で液化した還流液は、この受け槽15aで捕集され、スクリュー搬送路11内に流れ落ちないような構造としておくことが好適である。尚、この受け槽15aにも、真空ブレイク/復旧ライン15b及び回収ライン15cが設けられる。
【0044】
上記の捕集管15が連結している捕集装置5においては、気液分離塔51、第1の凝縮器53、第2の凝縮器55及び深冷トラップ57を備えており、これにより、ベント室3から捕集されたラクチドの
ガス化物から気液分離により不純物を除き、高純度のラクチドが回収されるようになっている。即ち、ベント室3から捕集されたラクチドの
ガス化物には、ラクチド以外に、乳酸のオリゴマー、ポリ乳酸或いはキャリヤ樹脂に配合されていた重合開始剤等に由来する各種の低分子化合物などが含まれているため、これらを除去する必要がある。
【0045】
具体的には、ガス回収したラクチドを、気液分離塔(整流塔)51に通し気液分離塔内のデミスターで高分子量オリゴマー成分を除去後、第1の
凝縮器(熱交換器)53に導入し、ラクチドのみ相転換(Phase change)させ液状ラクチドとして回収する。
相転移の適正熱交換温度は真空度に依存し変化するが、一般に、標準大気圧下のラクチド(L−ラクチド/D−ラクチド)の沸点と融点がそれぞれ、255℃、及び、92℃〜94℃であることから、相転移に必要な冷却温度は、0.1KPaA〜8KPaAの真空度範囲で熱交換温度は60℃〜140℃が好ましく、真空度範囲が0.5PaA〜4KPaAで熱交換温度は80℃〜90℃がより好ましい。
この範囲を下回ると、前述ベント部の真空度が高くなりすぎ溶融樹脂による「ベントアップ」発生の虞があり、この範囲を上回ると、ベント部の真空度が低すぎラクチドの沸点降下が不十分で、ラクチドを回収できない虞がある。
また、ポリ乳酸解重合物(ラクチド)をガス回収するため、捕集装置5内の設備(気液分離塔51,第1の
凝縮器53、第2の
凝縮器55など)はベント室3よりも高い位置に設置することが好ましい。
【0046】
このようにしてオリゴマーが除かれたガスは、第1の凝縮器(熱交換器)53により80℃程度に冷却され、これにより、目的とするラクチドが液化され、受け器59に回収される。残ったガスは、第2の凝縮器(
熱交換器)55で5℃程度に冷却され、低沸点の低分子化合物が除去され、最後に、深冷トラップ57により−50℃程度まで冷却され、残存化合物も液体として除去されることとなる。
【0047】
尚、前述した受け槽21に溜まった還流液31aや捕集管15に設けられている受け槽15aの底部に溜まった液などは、そのまま廃棄することもできるし、問題が無ければ、受け器59で回収された液状ラクチドと合わせて、精製工程に導入することができる。
【0048】
かかる本発明によれば、ベント室3内で生成する樹脂塊30に由来するベントアップの問題を有効に回避することができ、装置の安定稼働により、純度の高いラクチドをポリ乳酸から安定して連続回収することができる。