(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の照合配列の各々は、二値符号のうち所定の一方の符号種別から途中で他方の符号種別へ変化する配列であって、当該変化が生じる符号間位置を互いに異ならせた配列であり、
前記取得手段は、
前記照合配列の周期ごとに照合された前記符号種別の配列の各符号種別と前記照合配列の各符号種別との一致の割合及び不一致の割合のうち大きい方に応じた適合の度合を示す適合合致度を算出し、
当該適合合致度を前記複数周期分積算した値のうち、最も大きいものに対応する最大適合照合配列における前記符号間位置を最大適合タイミングとして、当該最大適合タイミングを前記先頭タイミングの候補とする
ことを特徴とする請求項2記載の衛星電波受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の電波時計の実施形態である電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
【0014】
この電子時計1は、測位衛星(衛星)、少なくとも米国のGPS(Global Positioning System)に係る測位衛星(以下、GPS衛星と記す)からの電波を受信して信号(符号信号)を復調し、日時情報を取得することが可能な電波時計である。
電子時計1は、ホストCPU41(Central Processing Unit)と、ROM42(Read Only Memory)と、RAM43(Random Access Memory)と、発振回路44と、分周回路45と、計時回路46(計時手段)と、表示部47(表示手段)と、表示ドライバ48と、操作部49と、電力供給部50と、衛星電波受信装置としての衛星電波受信処理部60と、アンテナANなどを備える。
【0015】
ホストCPU41は、各種演算処理を行い、電子時計1の全体動作を統括制御する。ホストCPU41は、ROM42から制御プログラムを読み出し、RAM43にロードして日時の表示や各種機能に係る演算制御や表示などの各種動作処理を行う。また、ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60を動作させて測位衛星からの電波を受信させ、当該衛星電波受信処理部60で受信内容に基づいて求められた日時情報や位置情報を取得する。
【0016】
ROM42は、マスクROMや書き換え可能な不揮発性メモリなどであり、制御プログラムや初期設定データが記憶されている。制御プログラムの中には、測位衛星から各種情報を取得するための各種処理の制御に係るプログラム421が含まれる。
【0017】
RAM43は、SRAMやDRAMなどの揮発性のメモリであり、ホストCPU41に作業用のメモリ空間を提供して一時データを記憶すると共に、各種設定データを記憶する。各種設定データには、電子時計1における日時の計数、表示に係る地方時設定、即ち、タイムゾーンに係るホーム都市設定や、夏時間の適用有無に係る設定が含まれる。RAM43に記憶される各種設定データの一部又は全部は、不揮発性メモリに記憶されても良い。
【0018】
発振回路44は、予め定められた所定の周波数信号を生成して出力する。この発振回路44には、例えば、水晶発振器が用いられている。
【0019】
分周回路45は、発振回路44から入力された周波数信号を計時回路46やホストCPU41が利用するクロック信号の周波数の信号に分周して出力する。この出力信号の周波数は、ホストCPU41による設定に基づいて変更されることが可能であっても良い。
【0020】
計時回路46は、分周回路45から入力された所定の周波数信号(クロック信号)の入力回数を計数して初期値に加算することで現在の日時を計数する。計時回路46としては、ソフトウェア的にRAMに記憶させる値を変化させるものであっても良いし、或いは、専用のカウンタ回路を備えていても良い。計時回路46の計数する日時は、特には限られないが、所定のタイミングからの累積時間、UTC日時(協定世界時)、又は予め設定されたホーム都市の日時(地方時)などのうち何れかである。また、この計時回路46の計数する日時自体は、必ずしも年月日、時分秒の形式で保持される必要がない。分周回路45から計時回路46に入力されるクロック信号には、正確な時間経過とは若干のずれが含まれ得る。計時回路46が計数する日時の1日当たりのずれの大きさ(歩度)は、動作環境、例えば温度によって変化するが、通常では、±0.5秒以内である。
【0021】
表示部47は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイなどの表示画面を備え、ドットマトリクス方式及びセグメント方式の何れか又はこれらの組み合わせにより日時や各種機能に係るデジタル表示動作を行う。
表示ドライバ48は、表示画面の種別に応じた駆動信号をホストCPU41からの制御信号に基づいて表示部47に出力して、表示画面上に表示を行わせる。
【0022】
操作部49は、ユーザからの入力操作を受け付けて、当該入力操作に応じた電気信号を入力信号としてホストCPU41に出力する。この操作部49には、例えば、押しボタンスイッチやりゅうずスイッチが含まれる。
或いは、表示部47の表示画面に重ねてタッチセンサが設けられ、当該タッチセンサによるユーザの接触動作に係る接触位置や接触態様の検出に応じた操作信号を出力するタッチパネルとして表示画面を機能させることで、表示部47と操作部49とが一体的に設けられても良い。
【0023】
電力供給部50は、バッテリを備え、電子時計1の動作に係る電力を所定の電圧で各部に供給する。電力供給部50のバッテリとしては、ここでは、ソーラパネルと二次電池が用いられている。ソーラパネルは、入射した光により起電力を生じてホストCPU41などの各部に電力供給を行うと共に、余剰電力が生じた場合には、当該電力を二次電池に蓄電する。一方、ソーラパネルへの外部からの入射光量により発電可能な電力が消費電力に対して不足している場合には、二次電池から各部に電力が供給される。或いは、バッテリとしてボタン型乾電池などの一次電池が用いられても良い。
【0024】
衛星電波受信処理部60は、アンテナANを介して測位衛星から送信される符号化された信号(符号信号)を含む電波に同調して、当該符号信号をスペクトラム拡散しているC/Aコード(疑似ランダム符号列)及びその位相を同定し、信号を捕捉する。衛星電波受信処理部60は、当該捕捉された符号信号を復調、符号列を同定して必要な処理を行い、所望の情報を取得する。衛星電波受信処理部60は、LNA61(低雑音増幅器)と、BPF62(狭帯域フィルタ)と、RF部63と、ベースバンド部64(取得手段)と、発振回路65などを備える。
【0025】
RF部63は、受信された電波信号(RF信号)を中間周波数帯の信号(IF信号)に変換して所定のサンプリング周波数でデジタル変換する。アンテナANで受信された所定の周波数帯、ここでは、例えば、GPS衛星からのL1帯(1.57542GHz)のRF信号は、高利得のLNA61で増幅され、SAWフィルタ(表面弾性波フィルタ)などのBPF62で受信目標の周波数幅のみが選択的に通過されて、RF部63に入力される。LNA61、BPF62及びRF部63が衛星電波受信処理部60のフロントエンド60a(受信手段)をなす。
【0026】
RF部63は、ミキサ631と、LPF632(低域通過フィルタ)と、ADC633(アナログデジタル変換器)と、分周回路634などを備える。
分周回路634は、局部発振器として動作し、発振回路65から入力された所定周波数のクロック信号を適切な周波数の信号に分周してミキサ631に入力させる。
【0027】
ミキサ631は、BPF62から入力されたRF信号と分周回路634から入力された分周後のクロック信号とを混合してRF信号をIF信号に変換する。
LPF632は、IF信号のうち受信対象の周波数信号に対応した範囲の信号を選択的に通過させる。測位衛星からの電波は、当該測位衛星と受信位置との相対速度によりドップラー効果で受信周波数がシフトするので、受信周波数は、送信周波数(L1帯)に対して想定されるシフト量の範囲で変更可能となっている。
【0028】
ADC633は、LPF632を通過した信号を所定のサンプリング周波数でデジタル離散値に変換する。ここでは、ADC633は、IF信号の周波数に応じた周波数(即ち、C/Aコードの各符号(チップ)の送信周波数(1023kHz))以上のサンプリング周波数でデジタル離散値として取得してベースバンド部64の捕捉部641又は追尾部642に出力する。
【0029】
ベースバンド部64は、デジタル離散値化されたIF信号データを処理して所望の情報を取得、算出する。
ベースバンド部64は、捕捉部641(捕捉手段)と、追尾部642(符号種別判別手段、符号同期検出手段、符号同定手段)と、C/Aコード生成部643と、分周回路644と、モジュールCPU645と、記憶部646(記憶手段)などを備える。
【0030】
モジュールCPU645は、ホストCPU41からの制御信号や設定データの入力に応じて衛星電波受信処理部60の動作を制御する。モジュールCPU645は、記憶部646から必要なプログラムや設定データを読み出して、RF部63及びベースバンド部64の各部を動作させ、受信された各測位衛星からの電波を復調(逆スペクトラム拡散及び各符号の同定)させて日時情報や位置情報を取得する。このモジュールCPU645は、復調された符号信号を復号して所望の情報を取得する他、復号せずに、復調された符号列を航法メッセージのフォーマットに従って予め設定された比較照合用の符号列と比較照合して一致検出することで受信内容及びそのタイミングの同定を行うことが出来る。
【0031】
記憶部646は、フラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの各種不揮発性メモリと、RAMとを有する。記憶部646の不揮発性メモリには、測位や日時情報の取得に係る各種プログラム646a、設定データや、測位及び日時情報取得の履歴を記憶する。不揮発性メモリに記憶されるデータには、各測位衛星の精密軌道情報(エフェメリス)、予測軌道情報(アルマナック)、前回の測位日時及び位置や、符号の同定に係る検定に用いられるBER記憶部646b(Bit error rate;符号誤り率;誤同定発生率)が含まれる。ここでは、BER記憶部646bには、衛星電波の複数段階の受信強度と各々対応付けられた符号誤り率のデータ(受信強度と符号誤り率の対応関係)が記憶されている。また、RAMは、衛星電波受信処理部60におけるモジュールCPU645に作業用のメモリ空間を提供し、各種一時データを記憶する。
【0032】
捕捉部641は、RF部63から入力されたIF信号のデジタル離散値に対して各測位衛星の各位相でのC/Aコードとの間で各々相関値を算出してそのピークを検出することで、受信されている測位衛星の種別、即ち、C/Aコードと当該C/Aコードの位相とを同定する。この捕捉動作には、例えば、マッチドフィルタが用いられ、複数の測位衛星のC/Aコードに対して同時並列的に相関値の算出がなされる。
【0033】
追尾部642は、同定された測位衛星のC/Aコードとその位相とを維持して、当該測位衛星からの航法メッセージに係る符号信号を継続的に取得する。追尾部642は、受信信号におけるC/Aコードの位相とC/Aコード生成部643から入力されるC/Aコードの位相との差分情報を取得してフィードバックを行い、位相ずれを微調整しながら受信電波を逆スペクトラム拡散、復調して各符号(メッセージ符号)を同定する。追尾部642の各構成は、並列に処理可能とする測位衛星の数に応じて複数並列に設けられる。この追尾部642の構成については、後に詳述する。
【0034】
C/Aコード生成部643は、受信対象となり得る測位衛星のC/Aコードのチップ配列情報を予め保持しており、受信候補となる測位衛星、又は同定された測位衛星のC/Aコードを順次生成して適切な速さで捕捉部641及び追尾部642の何れかに選択的に出力する。C/Aコード生成部643は、捕捉部641及び追尾部642に対して、複数の測位衛星に係るC/Aコードを同時に生成して並列的に出力させることが可能である。また、追尾部642に出力されるC/Aコードは、後述するように、追尾部642からの制御信号に従って位相が変更され得る。
【0035】
分周回路644は、ベースバンド部64の各部に所定のクロック信号を供給する。分周回路644の生成するクロック信号は、例えば、追尾部642に入力されたIF信号をIQ分離したI相信号(In-phase)及びQ相信号(Quadrature-phase)を生成するのに用いられる。
ベースバンド部64の各部、特に、捕捉部641及び追尾部642は、専用のハードウェア構成(プロセッサ)を備えることで効率良く処理が行われるが、プロセッサとしてのCPUがソフトウェア制御により各部の機能動作の一部又は全部を行っても良い。
【0036】
この衛星電波受信処理部60は、電力供給部50から直接電力が供給され、そのオンオフがホストCPU41の制御信号により切り替えられる。即ち、衛星電波受信処理部60は、測位衛星からの電波受信及び日時取得や測位に係る算出動作が行われている期間以外には、常時動作しているホストCPU41などとは別個に電力供給が遮断される。
【0037】
次に、GPS衛星から送信される航法メッセージのフォーマットについて説明する。
GNSSでは、複数の測位衛星を複数の軌道上に分散配置させ、観測地点から同時に複数の異なる測位衛星の送信電波を受信可能とすることで、当該受信可能な測位衛星から送信されている当該測位衛星の現在位置に係る情報や日時情報を4機以上の測位衛星(地表面であるとの仮定の上では3機)から取得して、これらの取得データと、取得タイミングのずれ、即ち、各測位衛星からの伝播時間(距離)の差と、を用いることにより三次元空間における位置座標及び日時を決定することが出来る。また、1機の測位衛星からの日時情報が取得されるだけであっても、当該測位衛星からの伝播時間の誤差範囲(100msec未満程度)で現在日時を取得することが出来る。
【0038】
測位衛星では、日時に係る情報と、衛星の位置に係る情報と、衛星の健康状態などのステータス情報などを示す二値符号の配列(航法メッセージ)が生成され、この航法メッセージが測位衛星ごとに固有のC/Aコード(疑似ランダムノイズ)により位相変調(BPSK)されることでスペクトラム拡散されて送信されている。これらの符号信号のフォーマット(航法メッセージのフォーマット)は、測位システムごとに定められている。
【0039】
図2は、GPS衛星から送信されている航法メッセージについて説明する図である。
GPSでは、各GPS衛星からそれぞれ30秒単位のフレームデータが合計25ページ送信されることで、12.5分周期で全てのデータが出力されている。GPSでは、GPS衛星ごとに固有のC/Aコードが用いられており、このC/Aコードは、1.023MHzで符号(チップ)が1023個配列されて1msec周期(送信周期)で繰り返されている。航法メッセージをなす符号列の各符号(メッセージ符号)の送信時間は、20msec、即ち、C/Aコードの20周期分の長さであり、メッセージ符号の先頭タイミングは、C/Aコードの送信周期の先頭のタイミングと同期している。
【0040】
このメッセージ符号30個が配列されて0.6秒のワード(WORD)が構成され、WORD10個により6秒周期のサブフレームが構成される。そして、5サブフレームのデータが1フレーム分のデータとなる。各サブフレームの先頭、即ち、1ワード目の先頭には、固定された符号列であるプリアンブルを含むTLM(テレメトリワード)が含まれ、符号列の同期に用いられ得る。また、2ワード目には、日時情報を含むHOW(ハンドオーバワード)が含まれ、日時情報の取得に用いられる。2番目以降のサブフレームには、測位衛星の軌道情報が含まれ、現在位置の特定(測位)を行う場合にはこれらの情報が用いられる。
【0041】
次に、本実施形態の電子時計1において受信された衛星電波から航法メッセージを得るための構成について説明する。
図3は、追尾部642の構成を示すブロック図である。
追尾部642は、IQ変換部6421と、位相制御部6422と、符号出力部6423などを備える。
【0042】
IQ変換部6421は、IF信号をI相信号及びQ相信号に分離して出力する。IQ変換部6421は、2つのミキサ6421a、6421bと、90度移相器6421cと、NCO6421d(数値制御発振器)などを有する。ADC633のサンプリング周波数で取得され、入力されたIF信号には、分周回路644から入力されたIF周波数のクロック信号に応じてNCO6421dから出力される正弦波信号をミキサ6421aで混合することでI相信号を生成して出力する。また、IQ変換部6421は、NCO6421dから出力される正弦波信号を90度移相器6421cで移相させて余弦波信号とした後にミキサ6421bでIF信号と混合することで、Q相信号を生成して出力する。
【0043】
位相制御部6422は、入力されたI相信号及びQ相信号に対し、同定されている位相のC/Aコード(チップ)とその前後に所定間隔(例えば、±0.5チップ)ずれた位相のチップとをそれぞれ用い、これら3つの位相のC/AコードとI相信号及びQ相信号との相関値を算出することで位相ずれを検出してフィードバックする。
位相制御部6422は、I相信号に対する3つのミキサ6422a〜6422cと、これらに各々対応するLPF6422d〜6422fと、Q相信号に対する3つのミキサ6422g〜6422iと、これらに各々対応するLPF6422j〜6422lと、3bitシフトレジスタ6422mと、ループフィルタ6422nと、差分算出部6422oなどを有する。
【0044】
捕捉された測位衛星のC/Aコードは、C/Aコード生成部643により生成されて、同定されている位相に対して上記所定間隔前の位相となるタイミングで3bitシフトレジスタ6422mに1ビットずつ順次入力される。入力された符号データは、この所定間隔で2ビット目の位置に移動され、更に、3ビット目の位置に移動される。即ち、これら3bitシフトレジスタ6422mに記憶される3ビットの符号は、それぞれ、同定されている位相の所定間隔前の時間における符号(Early Phase)、同定されている位相の符号(Punctual Phase)、及び同定されている位相の所定間隔後の時間における符号(Late Phase)の3つである。
【0045】
これらの3つの符号は、それぞれ、ミキサ6422a〜6422cでI相信号と混合され、また、ミキサ6422g〜6422iでQ相信号と混合される。ミキサ6422a〜6422cの出力信号は、各々LPF6422d〜6422fに入力されて、C/Aコードの1周期分に対応する約1msの平均値(コード平均値)に変換される。また、ミキサ6422g〜6422iの出力信号は、各々LPF6422j〜6422lに入力されて、同様に、約1msの平均値に変換される。なお、平均値ではなく加算値を求める構成であっても良い。
【0046】
3つのチップのうち進んだ位相(Early Phase)のものとIF信号とが混合されるミキサ6422a、6422gの出力信号のコード長平均値である信号IE、QE、及び、遅れた位相(Late Phase)のものとIF信号とが混合されるミキサ6422c、6422iの出力信号のコード長平均値である信号IL、QLとは、それぞれ、差分算出部6422oに入力される。C/Aコードは、位相が等しい場合に自己相関が最大(相関係数が「1」)となり、位相がずれると急激に相関が低下して相関係数が「0」に近づく。測位衛星からの電波は、測位衛星と受信位置との相対距離に応じて伝播時間が変化するので、これに伴って位相のずれが生じる。この位相制御部6422では、進んだ位相の信号に係る相関値を示す値(IE
2+QE
2)と遅れた位相の信号に係る相関値を示す値(IL
2+QL
2)との差分を算出することで、比較された3つのチップの位相に対する実際のIF信号の僅かな位相ずれとその向きが検出される。
【0047】
差分算出部6422oの算出結果は、ループフィルタ6422nを介してC/Aコード生成部643にフィードバックされて、当該C/Aコード生成部643から3bitシフトレジスタ6422mへの各符号データの出力タイミングが微調整される。
【0048】
3bitシフトレジスタ6422mから出力される3つの符号のうち、中央の位相(Punctual Phase)のものとI相信号とが混合されるミキサ6422bの出力信号の時間平均値である信号IPと、Q相信号とが混合されるミキサ6422hの出力信号の時間平均値である信号QPとは、符号出力部6423に出力される。
【0049】
符号出力部6423は、符号算出部6423aと、20ms同期回路6423bとを有する。
符号算出部6423aは、入力された信号IPと信号QPとを用いて逆スペクトラム拡散されて得られた元の航法メッセージの符号種別を1msec単位(C/Aコードの送信周期に応じた時間ごと)で算出する。算出された受信符号は、20ms同期回路6423bに出力されて、更に、モジュールCPU645に出力される。また、20ms同期回路6423bでは、この符号種別の配列に基づいてメッセージ符号の長さである20msecの同期点(即ち、各符号の先頭タイミング)が検出される。この1msec単位の先頭タイミング(チップ同期点)は、C/Aコード生成部643から3bitシフトレジスタ6422mにレプリカ符号列の符号が出力されるタイミングと同期して定められる。
【0050】
図4は、20ms同期回路6423bの構成を示すブロック図である。
20ms同期回路6423bは、データ取得部681と、レプリカコード生成部682と、排他論理和算出部683と、照合結果保存部684と、一致タイミング抽出部685と、基準値設定部686と、検定部687などを備える。
【0051】
データ取得部681は、符号算出部6423aから入力された1msec単位の符号種別データをモジュールCPU645及び排他論理和算出部683に出力する。
【0052】
レプリカコード生成部682は、航法メッセージにおける20msec同期点を同定するための1msec単位のレプリカ符号の配列(レプリカ符号列r)を生成して排他論理和算出部683に出力する。
図5は、レプリカコード生成部682から出力される20種類の符号列を示す図表である。
【0053】
航法メッセージの各符号は、20msec長であるので、1msec周期のC/Aコード20周期分、即ち、1msec単位の符号種別データ20個ごとに符号の切り替わりが生じ得る。この20ms同期回路6423bでは、20個のレプリカ符号間の互いに異なる位置(符号間位置)で符号が「1」(所定の一方の符号種別)から「0」(他方の符号種別)に切り替わる(先頭で切り替わる、即ち、全て「0」となるものを含む)20通りのレプリカ符号列r(0)〜r(19)(複数の照合配列)を、実際に同定された1msec単位の符号種別の配列と照合される対象とする。なお、レプリカコード生成部682は、これらのレプリカ符号列r(0)〜r(19)のデータを全てテーブルとして予め保持する必要はなく、適切に出力が可能であれば良い。
【0054】
排他論理和算出部683は、入力された1msec単位の符号種別と、レプリカコード生成部682から入力された各レプリカ符号列のレプリカ符号との排他論理和を算出して算出結果、即ち、一致不一致を示す値を照合結果保存部684に出力する。
【0055】
照合結果保存部684は、排他論理和算出部683から出力されたレプリカ符号列r(0)〜r(19)の各符号と入力符号との一致不一致を示す値をレプリカ符号列r(0)〜r(19)ごとに各々積算して照合結果積算値E(i)(i=0〜19)として保持する。照合結果積算値E(i)は、20回の照合で20回一致すれば「20」(完全一致)となり、一度も一致しなければ「0」(完全不一致)となる。上述のように、レプリカ符号列r(0)〜r(19)は、符号種別が「1」から「0」に変化する場合の変化パターンのみを示しているので、レプリカ符号列rの「1」から「0」への変化タイミングと同時に1msec単位の符号種別が「0」から「1」に変化する場合には、20個の符号が全て不一致(完全不一致)となる。即ち、全ての入力符号の符号種別が正確に判別され、且つ20msec同期点で符号が変化する場合には、当該20msec同期点と一致するレプリカ符号列に対応する照合結果積算値が20msec間で「20」又は「0」となり、20msec同期点から1msecずれるごとに照合結果積算値E(i)が1つずつ20から減少、又は0から増加していくことになる。なお、隣接符号が変化しない場合、これらの隣接符号間の切り替わりタイミングを含む20msec間では、照合結果積算値E(19)が完全一致又は不完全一致となる。
【0056】
また、照合結果保存部684は、適合度数F(i)(i=0〜19)(適合合致度)を保持する。適合度数F(i)は、20回の照合ごとにE(i)の値が換算されて積算される値であり、完全一致と完全不一致とを同等に扱った適合の度合を示す指標である。適合度数F(i)は、以下の数式(1)により求められる。
F(i)=Σm|N−2×E(i)| … (1)
ここで、Σmは、20msec周期数mについての和を示す。
即ち、適合度数F(i)は、完全一致及び不完全一致の何れの場合でも最大となり、一致数と不一致数とが等しい場合に最小となる。これにより、符号種別が「0」から「1」に変化する周期と、符号種別が「1」から「0」に変化する周期との合致の度合を区分せずに容易に複数周期分重ね合わせて(合算して)評価することが可能となる。
【0057】
一致タイミング抽出部685は、照合結果保存部684に保持された各レプリカ符号列r(0)〜r(19)と入力符号との照合結果に応じて一致タイミング候補となるレプリカ符号列を判別し、当該一致タイミング候補の情報を検定部687に出力すると共に、レプリカ符号列における符号切り替わりタイミング情報(タイミングデータ)をモジュールCPU645に出力する。
【0058】
検定部687は、一致タイミング候補の情報に基づいて当該一致タイミングが正しいと判断できるか否かの検定を行い、検定結果をモジュールCPU645に出力する。
基準値設定部686は、検定部687における一致タイミングの検定に係る基準値を設定して当該検定部687に出力する。
なお、一致タイミング抽出部685、基準値設定部686及び検定部687は、各々専用のハードウェア構成(プロセッサ)で構成されていても良いし、その一部又は全部の機能がプロセッサとしてのCPU及びRAMなどを用いたプログラムによるソフトウェア制御で実現されても良い。このCPU及びRAMは、20ms同期回路6423b専用のものであっても良いし、モジュールCPU645であっても良い。
【0059】
次に、電子時計1における衛星電波の受信による情報取得動作について説明する。
本実施形態の電子時計1では、ホストCPU41の命令により衛星電波受信処理部60が起動され、取得対象とされる情報の種別、即ち、現在の日時や位置の情報などが適宜設定される。衛星電波受信処理部60は、衛星電波の受信を開始し、設定された取得対象の情報の種別に応じた測位衛星からの電波を受信して必要な演算処理を行い、当該取得対象の情報を取得してホストCPU41に送信する。
【0060】
図6は、本実施形態の電子時計1で実行される情報取得処理のホストCPU41による制御手順を示すフローチャートである。
【0061】
この情報取得処理は、ユーザの操作部49への所定の入力操作や、所定の開始条件、例えば1日に一回且つ図示略の光センサによる基準値以上の入射光の検出などに応じて起動される。
【0062】
情報取得処理が開始されると、ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60を起動させ(ステップS101)、取得対象情報の設定をモジュールCPU645に送信する(ステップS102)。それから、ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60(モジュールCPU645)からの取得情報送信を待ち受ける。
【0063】
ホストCPU41は、モジュールCPU645からの送信データを受信し、取得対象の情報を取得し、当該情報に応じた動作を各部に行わせる(ステップS103)。この動作としては、例えば、表示部47への結果の表示動作、或いは、RAM43や計時回路46などのデータの更新動作などが挙げられる。
【0064】
ホストCPU41は、衛星電波受信処理部60の動作を停止させると共に(ステップS104)、受信履歴を更新してRAM43に記憶させる(ステップS105)。そして、ホストCPU41は、情報取得処理を終了する。
【0065】
図7は、電子時計1の衛星電波受信処理部60で実行される情報受信処理の処理手順を示すフローチャートである。
この情報受信処理は、上述の情報取得処理で衛星電波受信処理部60が起動されると自動的に立ち上げられる。
【0066】
情報受信処理が開始されると、モジュールCPU645は、初期設定及び起動チェックを行う(ステップS201)。この初期設定には、ホストCPU41から取得された受信対象情報の設定を含む。また、このとき、上述のカウント数N、照合結果積算値E(i)及び適合度数F(i)がそれぞれ「0」に初期化される。モジュールCPU645は、測位衛星(ここでは、GPS衛星)からの電波受信を開始する(ステップS202)。
【0067】
モジュールCPU645は、捕捉部641において各GPS衛星のC/Aコードとして知られているチップ配列(レプリカコード)と、受信されたC/Aコードの各チップデータとを各受信周波数で照合する捕捉動作を行わせる(ステップS203)。捕捉部641では、レプリカコードと受信データの各チップとの相関を算出し、相関値が高くなるC/Aコード及び位相を何れかの周波数で同定することで受信された測位衛星からの電波信号を捕捉する。このとき、捕捉部641は、複数の所定数の測位衛星に対して同時並列的にレプリカコードとの相関算出を行うことが可能である。
【0068】
初期設定で設定された受信対象数以上の測位衛星からの電波が捕捉されると、モジュールCPU645は、捕捉部641により捕捉された各測位衛星の電波を追尾部642に追尾させる動作を開始させる(ステップS204)。追尾部642は、C/Aコードの位相を適切に維持しながら1msec周期で信号の符号種別の判定を行い、また、各測位衛星の信号中における各符号の先頭タイミング(符号同期点)を確定する符号同期点確定処理を実行する(ステップS205)。この符号同期点確定処理については後述する。
【0069】
符号同期点が確定されると、モジュールCPU645は、追尾部642により追尾されている各測位衛星から送信された20msec単位のメッセージ符号の配列(符号列)を取得する(ステップS206)。モジュールCPU645は、1msecごとに得られる符号種別を符号同期点から20個ずつ用いて各符号を同定していく。
【0070】
モジュールCPU645は、当該取得された符号列を復号し、取得対象の情報を取得する(ステップS207)。或いは、モジュールCPU645は、取得された符号列と、予め受信されるものと想定された符号列とを照合して一致を確認することで、当該想定符号列の内容と一致が確認されたタイミングとに応じて取得対象の情報を得ても良い。
【0071】
モジュールCPU645は、取得された取得対象情報をホストCPU41に出力し(ステップS208)、上述のステップS104による命令に従って測位衛星からの電波受信を終了する(ステップS209)。そして、モジュールCPU645は、情報受信処理を終了する。その後、衛星電波受信処理部60は、上述のステップS105の処理に従って電力供給が遮断されて動作を停止する。
【0072】
次に、上述のステップS205の処理で呼び出される符号同期点確定処理の動作内容について説明する。
上述のように、GPS衛星から送信される信号(航法メッセージ)は、20msec長、即ち、C/Aコード20周期分の長さのメッセージ符号が配列されたものである。従って、C/Aコードの受信周期に同期して1msecごと(1kHz)に符号種別が同定される場合、当該同定された符号種別は20個ごとに変化し得ることになり、当該符号の同定には、変化し得るタイミングを定める必要がある。本実施形態の電子時計1では、電波受信強度が低く、符号種別の誤同定が若干想定される状態を考慮して、電子時計1に要求される精度に応じて確率的に正しいといえる先頭タイミングの同定を行う。
【0073】
図8は、符号同期点確定処理の処理手順を示すフローチャートである。
符号出力部6423において、符号算出部6423aは、1msecごとに符号種別を同定して、排他論理和算出部683に出力する。また、一致タイミング抽出部685(又は20ms同期回路6423bのCPU若しくはモジュールCPU645)は、当該排他論理和算出部683の出力と各レプリカ符号列r(i)との照合結果(排他論理和)が得られるごとに、当該照合結果の値を照合結果保存部684の照合結果積算値E(i)に積算して更新し、これら照合結果積算値E(i)が全て更新されるごとに、カウント数Nに1を加算する(ステップS801)。
【0074】
一致タイミング抽出部685は、カウント数Nが20であるか否かを判別する(ステップS802)。一致タイミング抽出部685は、カウント数Nが20ではないと判別された場合には(ステップS802で“NO”)、処理をステップS801に戻す。
【0075】
カウント数Nが20であると判別された場合には(ステップS802で“YES”)、一致タイミング抽出部685は、照合結果保存部684の照合結果積算値E(i)を適合度数F(i)への加算値に変換し、照合結果保存部684に記憶されている適合度数F(i)に当該加算値を加える。また、一致タイミング抽出部685は、照合結果積算値E(i)及びカウント数Nを初期化して「0」に戻し、20msec周期数mに1を加算する(ステップS803)。
【0076】
一致タイミング抽出部685は、算出されている適合度数F(i)のうち最も大きい値max1(F(i))を最大適合値Fm1として抽出し、2番目に大きい値max2(F(i))を次点適合値Fm2として抽出する(ステップS804)。また、一致タイミング抽出部
685は、最大適合値Fm1及び次点適合値Fm2を対応する最大照合結果積算値Em1=(m×N−Fm1)/2、及び次点照合結果積算値Em2=(m×N−Fm2)/2にそれぞれ戻し、カウント数N、20msec周期数mと共に検定部687に出力する(ステップS805)。ここで得られる最大照合結果積算値Em1及び次点照合結果積算値Em2は、元の照合結果積算値E(i)によらず、Em1、Em2≧m×N/2となる。これにより、最大適合値Fm1に対応するレプリカ符号列rにおける符号の切り替わりタイミングが各符号の先頭タイミングの候補となる。
【0077】
検定部687は、最大照合結果積算値Em1及び次点照合結果積算値Em2が入力されると、符号誤り率ε(BER)を取得する(ステップS806)。符号誤り率εは、ここでは、上述のように、衛星電波の受信強度に応じた値として定義されて記憶部646のBER記憶部646bに記憶されており、検定部687は、BER記憶部646bを参照する(又は、モジュールCPU645を介して取得させる)ことで、受信している測位衛星からの電波受信強度に応じた符号誤り率εを取得する。対応する電波受信強度に係るデータが無い場合には、上下に両隣の電波受信強度と符号誤り率εとを用いて所定の関数、例えば、直線で補間することで符号誤り率εが求められる。或いは、BER記憶部646bに記憶されている中で実際の受信強度に最も近い電波受信強度に対応する符号誤り率や、得られた受信強度より低い側で最も近い電波受信強度に対応する符号誤り率をそのまま用いても良い。
【0078】
検定部687は、最大照合結果積算値Em1の出現確率P1(第1不適合出現確率)と、次点照合結果積算値Em2の出現確率P2(第2不適合出現確率)との比(確率比Pd)を算出する(ステップS807)。出現確率P1、P2は、それぞれ、以下の数式(2)、(3)であり、確率比Pdは、数式(4)で示される。
P1=(1−ε)
m・N−Em1・ε
Em1・
m・NC
Em1 … (2)
P2=(1−ε)
m・N−Em2・ε
Em2・
m・NC
Em2 … (3)
Pd=P1/P2 … (4)
【0079】
この確率比Pdは、即ち、正しい符号の先頭タイミングが次点照合結果積算値Em2に対応するレプリカ符号列r(次点適合照合配列)における符号の切り替わりタイミングであった場合に、符号の誤同定により誤って異なった位置、即ち、最大照合結果積算値Em1に対応するレプリカ符号列rにおける符号の切り替わりタイミングであると同定する確率を示している。即ち、この確率比Pdが低いほど、最大照合結果積算値Em1に対応するレプリカ符号列rにおける符号の切り替わりタイミングが正しい符号の先頭タイミングである確率が高くなる。
【0080】
ここでは、検定部687は、計算処理量を低減するために、出現確率P1、P2を各々個別に計算してから確率比Pdを求めるのではなく、上述の確率比Pdの数式を展開して得られる数式により当該確率比Pdを直接計算することとして良い。また、確率比Pdは、必ずしも厳密に求められる必要はなく、精度が大きく低下しない範囲において適宜近似式を用いて計算されても良い。近似としては、例えば、直線近似が用いられる。或いは、ここでは、二項分布である出現確率P1、P2に対応してスターリングの近似が好ましく用いられる。検定部687は、予め確率比Pdを符号誤り率ε、最大照合結果積算値Em1、次点照合結果積算値Em2及びカウント数Nをパラメータとした簡易式で算出可能としておき、これらのパラメータが取得され場合に、当該パラメータを代入して確率比Pdを求める。
【0081】
検定部687は、基準値設定部686から確率比Pdに対する基準値を取得し、求められた確率比Pdが当該基準値以下であるか(所定の適合条件を満たすか)否かを判別する(ステップS808)。基準値は、電子時計1に要求される正確性などによって適宜設定され得るが、固定値であっても良く、この場合には、予め符号同期点確定処理のプログラム内に組み込まれ、基準値設定部686を有しなくても良い。固定値としては、例えば、10
−8などが用いられる。この検定部687による処理が、例えば、1日一回であれば、この固定値により各符号の先頭タイミングの同定を誤る頻度は、10
8日に1回、即ち、約27万年に1回となり、製品寿命上ほぼ無視可能となる。
なお、上述のように、符号の変化がない場合には、レプリカ符号列r(19)と見かけ上一致するので、確率及び確率比Pdの計算に影響を与え得る。従って、隣接する周期で得られるレプリカ符号列r(19)との照合結果積算値E(19)との関係や、隣接する周期における最大照合結果積算値Em1や次点照合結果積算値Em2に対応するレプリカ符号列との関係に応じて、適合度数F(i)に加算させるのを止めたり、或いは、レプリカ符号列r(19)と合致すると見込まれる場合には、他の完全一致による従来の方法を併用したりするなどとしても良い。
【0082】
基準値以下ではないと判別された場合には(ステップS808で“NO”)、検定部687の処理は、ステップS809に移行する。検定部687は、処理を一致タイミング抽出部685に戻し、一致タイミング抽出部685は、カウント数Nの計数を開始してから所定の上限時間が経過したか否かを判別する(ステップS809)。上限時間が経過していないと判別された場合には(ステップS809で“NO”)、一致タイミング抽出部685の処理がステップS801に戻される。上限時間が経過したと判別された場合には(ステップS809で“YES”)、一致タイミング抽出部685は、符号同期点の確定に失敗したものとしてエラー終了し、検定結果をモジュールCPU645に出力する(ステップS812)。そして、符号同期点確定処理を終了して処理を情報受信処理に戻す。
【0083】
ステップS808の判別処理で、求められた確率比Pdが基準値以下であると判別された場合には(ステップS808で“YES”)、検定部687は、最大照合結果積算値Em1に対応するレプリカ符号列(最大適合照合配列)における符号の切り替わりタイミング(最大適合タイミング)に符号同期点を決定(確定)し(ステップS811)、検定結果をモジュールCPU645に出力すると共に、符号同期点確定処理を終了して処理を情報受信処理に戻す。
【0084】
以上のように、本実施形態の電子時計1が備える衛星電波受信処理部60は、測位衛星から送信される符号化された信号を含む電波を受信するフロントエンド60aと、受信した電波から前記符号信号を取得するベースバンド部64と、を備え、ベースバンド部64は、符号信号をスペクトラム拡散している疑似ランダム符号列及びその送信周期内の位相を同定する捕捉手段としての捕捉部641と、疑似ランダム符号列の送信周期に応じた時間ごとの符号信号の符号種別を同定する符号算出部6423a(及びIQ変換部6421、位相制御部6422)と、同定された符号種別の配列と、当該符号種別の配列として出現が想定され得る複数のレプリカ符号列r(i)とを照合して、当該照合の結果が所定の条件を満たすレプリカ符号列r(i)に応じて符号信号における各符号の先頭タイミングを同定する20ms同期回路6423bと、同定した当該先頭タイミングに同期して各符号を同定するモジュールCPU645などを有する符号種別判別手段、符号同期検出手段、及び符号同定手段としての追尾部642と、を備える。
これらの構成により、特に、衛星電波の受信強度が十分でなく符号種別の同定に若干の誤りが混入し得る場合でも、確率的に必要な精度以上が得られた段階で符号同期点を確定させることが出来るので、衛星電波の受信時間が長くなる可能性を低減させ、従来よりも負荷の増大を抑えつつ、容易且つ短時間で必要な情報を取得することが出来る。
【0085】
また、レプリカ符号列r(i)は、符号信号における各符号の送信時間である20msecに応じた20ビットの符号配列であり、追尾部642は、符号種別の配列とレプリカ符号列r(i)との照合結果を20msecごとに複数周期分重ね合わせて、各符号の先頭タイミングを同定する。
従って、レプリカ符号列r(i)の長さや数を必要以上に大きくする必要がないので、記憶容量を大きく増大させたり、その読出しなどで処理負荷を増加させたりしない。
【0086】
また、複数のレプリカ符号列r(i)の各々は、二値符号のうち「1」から途中で「0」へ変化する配列であって、当該変化が生じる符号間位置を互いに異ならせた配列であり、追尾部642は、レプリカ符号列r(i)の周期ごとに照合された符号種別の配列の各符号種別とレプリカ符号列r(i)の各符号種別との一致の割合及び不一致の割合のうち大きい方に応じた適合の度合を示す適合度数F(i)を算出し、当該適合度数F(i)を複数周期分積算した値のうち、最も大きい最大適合値Fm1に対応するレプリカ符号列における符号間位置を符号の先頭タイミングの候補とする。
従って、若干の符号種別の誤同定が存在しても、確率的に尤もらしい位置を先頭タイミングの候補として先頭タイミングの同定処理を行うので、処理を複雑化させたり処理時間を長引かせたりしない。
【0087】
また、追尾部642は、符号種別の同定について、衛星電波の受信強度に基づいて定められる符号誤り率εに基づいて、最大適合値Fm1に対応するレプリカ符号列における符号種別の配列と適合しない(一致の方が多い場合には一致しない、不一致の方が多い場合には不一致しない)符号種別数の出現に係る出現確率P1の、2番目に大きい適合度数F(i)である次点適合値Fm2に対応するレプリカ符号列における符号種別の配列と適合しない符号種別数の出現に係る出現確率P2に対する確率比Pdを算出し、当該確率比Pdが所定の基準値以下であるという適合条件を満たすか否かにより定められている先頭タイミングの候補を先頭タイミングと同定するか否かを決定する。
従って、要求される精度に従って符号種別の誤同定が原因で偶然2番目に適合度が高いレプリカ符号列の符号間位置を誤って正しい符号間位置であると誤認定する確率が十分に低いという条件を満たす符号間位置を正しい符号の先頭タイミングであると同定することが出来る。即ち、符号同期点の誤認定の可能性を要求精度に応じて十分に低減することが出来る。
【0088】
また、衛星電波の受信強度と符号誤り率との対応関係をBER記憶部646bとして記憶する記憶部646を備えるので、受信強度から容易に符号誤り率を得ることが出来る。
【0089】
また、記憶部646は、予め設定された複数の受信強度と当該受信強度における符号誤り率とを対応付けたデータを記憶し、追尾部642の検定部687は、このデータに基づいて、電波の受信強度に応じた符号誤り率を所定の関数で補間することで算出する。
従って、BER記憶部646bのサイズを必要以上に大きくする必要がなく、また、直線補間などの容易な計算処理で実用上問題のない符号誤り率を取得することが出来る。
【0090】
また、出現確率P1及び出現確率P2は二項分布であり、追尾部642は、確率比Pdを所定の近似式により算出する。即ち、厳密に計算すると計算量が大きくなる処理について、精度に悪影響を及ぼさない範囲で計算を簡略化するので、処理負荷や処理時間を低減しつつ適切に符号同期点を同定することが出来る。
【0091】
また、本実施形態の電子時計1は、上述の衛星電波受信処理部60と、日時を計数する計時回路46と、計時回路46が計数する日時に基づく時刻の表示を行う表示部47と、を備え、ベースバンド部64は、取得された信号から現在の日時を求め、求められた現在の日時に応じて計時回路46が計数する日時を修正するためのデータを出力する。
従って、この電子時計1では、衛星電波受信処理部60による受信時間を必要以上に延長させずに負荷を抑制しつつ、より容易且つ確実に日時情報を取得し、計時回路46の日時を修正して正しい日時に保つことが出来る。
【0092】
また、本実施形態の符号信号取得方法は、測位衛星から送信される符号化された信号を含む電波の受信信号から符号信号を取得する符号信号取得方法であって、符号信号をスペクトラム拡散している疑似ランダム符号列及びその送信周期内の位相を同定する捕捉ステップ、疑似ランダム符号列の送信周期に応じた時間ごとの符号信号の符号種別を同定する符号種別判別ステップ、同定された符号種別の配列と、当該符号種別の配列として出現が想定され得る複数のレプリカ符号列とを照合して、当該照合の結果が所定の条件を満たすレプリカ符号列に応じて符号信号における各符号の先頭タイミングを同定する符号同期検出ステップ、同定した先頭タイミングに同期して各符号を同定する符号同定ステップ、を含む。
即ち、符号同期点の同定にレプリカ符号列との照合を用いて条件判定により最適な符号間位置を符号同期点として定めるので、特に受信強度の低い場合などで、符号同期点を同定する間誤認定なく完全に符号種別が同定出来なくても、再受信などで必要以上に受信時間が延びていく割合を抑制することが出来、これによりL2帯の受信やPコードの同定といった構成や負荷の増大を抑制しつつ容易且つ短時間でより確実に符号信号を取得することが出来る。
【0093】
また、本実施形態の日時取得及び測位動作に係るプログラム646aは、測位衛星から送信される符号信号(航法メッセージ)を含む電波の受信信号から当該符号信号を取得するコンピュータを、符号信号をスペクトラム拡散している疑似ランダム符号列及びその送信周期内の位相を同定する捕捉手段、送信周期に応じた時間ごとの符号信号の符号種別を同定する符号種別判別手段、同定された符号種別の配列と、当該符号種別の配列として出現が想定され得る複数の照合配列とを照合して、当該照合の結果が所定の条件を満たす前記照合配列に応じて前記符号信号における各符号の先頭タイミングを同定する符号同期検出手段、同定した当該先頭タイミングに同期して各符号を同定する符号同定手段、として機能させることを特徴とする。
従って、L2帯の受信やPコードの同定に必要な構成や処理を行わず、負荷を増大させずに容易且つ短時間の動作で符号信号を取得することが出来る。
【0094】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、疑似ランダム符号列の送信周期ごとに符号種別を取得したが、当該送信周期を更に複数分割して各々で符号種別を取得しても良い。この場合、レプリカ符号列rとしては、疑似ランダム符号の各周期の先頭に同期したタイミングのものだけが生成されれば良い。
【0095】
また、上記実施の形態では、C/Aコード複数周期分の照合結果を加算して、当該複数周期分の結果に応じて尤もらしい符号間位置を符号同期点に定めたが、十分に受信感度が高く、且つ各レプリカ符号列との照合結果から誤同定がないと判定し得る場合には確率によらず1周期または短い周期の照合結果に応じて符号同期点を確定させても良い。
【0096】
また、上記実施の形態では、C/Aコードの各送信周期における適合しない符号種別数の絶対値によらず以降の処理を必ず行うものとして説明したが、適合しない符号種別の最低値が所定の基準値以上(例えば、20個中3つ以上など)の場合には、明らかに十分な精度で符号種別の判定がなされていないとして当該送信周期の結果を以降の処理に用いず(加算せず)、また、当該周期における検定部687の処理を省略しても良い。
【0097】
また、上記実施の形態では、レプリカ符号列r(i)として、「1」から「0」に変化する20パターンを用いる場合を例に挙げて説明したが、「0」から「1」に変化するパターンであっても良いし、これらが混在していても良い。或いは、「1」から「0」の変化パターンと、「0」から「1」の変化パターンとを両方合わせて40通り保持して、不一致と一致とを別個に処理したり、一致数の分散を用いたりするなどにより、符号間位置が等しいものについて合算して当該符号間位置を同定することとしても良い。
【0098】
また、上記実施の形態では、BER記憶部646bとして、複数段階の受信強度と当該受信強度に対応する符号誤り率とを記憶させ、必要に応じて適宜補間して符号誤り率を得ることとしたが、数式などを記憶させておいて受信強度に応じて算出させる形であっても良い。
【0099】
また、上記実施の形態では、電波時計である電子時計1に衛星電波受信処理部60を搭載する場合を例に挙げて説明したが、時計機能をメインとしない電子機器、例えば、測位機器やナビゲーション機器などに搭載される場合でも、同様に本発明を適用することが出来る。
【0100】
また、上記実施の形態では、GPS衛星からの電波受信の場合を例に挙げて説明したが、GPS衛星と同様の電波送信方式を用いる日本のみちびきや、欧州のGalileoなどにも本発明を適用することが出来る。また、ロシアのGLONASSについても、周波数、変調方式やC/Aコード長(511チップ)などを対応させることで同様に本発明を適用することが出来る。
【0101】
また、以上の説明では、本発明に係る衛星電波受信処理部60における情報受信処理、特に、符号同期点確定処理に係る各部の動作制御プログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体(記憶媒体)として記憶部646の不揮発性メモリを例に挙げて説明したが、これに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、HDD(Hard Disk Drive)や、CD−ROMやDVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、動作の内容や手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0103】
[付記]
<請求項1>
衛星から送信される符号信号を含む電波を受信する受信手段と、
受信した電波から前記符号信号を取得する取得手段と、
を備え、
前記取得手段は、
前記符号信号をスペクトラム拡散している疑似ランダム符号列及びその送信周期内の位相を同定し、
前記送信周期に応じた時間ごとの前記符号信号の符号種別を同定し、
同定された符号種別の配列と、当該符号種別の配列として出現が想定され得る複数の照合配列とを照合して、当該照合の結果が所定の条件を満たす前記照合配列に応じて前記符号信号における各符号の先頭タイミングを同定し、
同定した当該先頭タイミングに同期して各符号を同定する
ことを特徴とする衛星電波受信装置。
<請求項2>
前記照合配列は、前記符号信号における各符号の送信時間に応じた長さであり、
前記取得手段は、前記符号種別の配列と前記照合配列との照合結果を前記照合配列の長さについて複数周期分重ね合わせて、前記先頭タイミングを同定する
ことを特徴とする請求項1記載の衛星電波受信装置。
<請求項3>
前記複数の照合配列の各々は、二値符号のうち所定の一方の符号種別から途中で他方の符号種別へ変化する配列であって、当該変化が生じる符号間位置を互いに異ならせた配列であり、
前記取得手段は、
前記照合配列の周期ごとに照合された前記符号種別の配列の各符号種別と前記照合配列の各符号種別との一致の割合及び不一致の割合のうち大きい方に応じた適合の度合を示す適合合致度を算出し、
当該適合合致度を前記複数周期分積算した値のうち、最も大きいものに対応する最大適合照合配列における前記符号間位置を最大適合タイミングとして、当該最大適合タイミングを前記先頭タイミングの候補とする
ことを特徴とする請求項2記載の衛星電波受信装置。
<請求項4>
前記取得手段は、
前記符号種別の同定について、前記電波の受信強度に応じて定められる誤同定発生率に基づいて、前記最大適合照合配列における適合しない符号種別数の出現に係る第1不適合出現確率の、前記適合合致度を前記複数周期分積算した値のうち2番目に大きいものに対応する次点適合照合配列における適合しない符号種別数の出現に係る第2不適合出現確率に対する確率比を算出し、
当該確率比が所定の適合条件を満たすか否かにより前記最大適合タイミングを前記先頭タイミングと同定するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項3記載の衛星電波受信装置。
<請求項5>
前記受信強度と前記誤同定発生率との対応関係を記憶する記憶手段を備えることを特徴とする請求項4記載の衛星電波受信装置。
<請求項6>
前記記憶手段は、予め設定された複数の受信強度と当該受信強度における前記誤同定発生率とを対応付けたデータを記憶し、
前記取得手段は、前記電波の受信強度に応じた前記誤同定発生率を前記記憶手段に記憶された前記データに基づいて所定の関数で補間することで算出する
ことを特徴とする請求項5記載の衛星電波受信装置。
<請求項7>
前記第1不適合出現確率及び前記第2不適合出現確率は二項分布であり、
前記取得手段は、前記確率比を所定の近似式により算出する
ことを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項8>
請求項1〜7の何れか一項に記載の衛星電波受信装置と、
日時を計数する計時手段と、
前記計時手段が計数する日時に基づく時刻の表示を行う表示手段と、
を備え、
前記取得手段は、前記取得された信号から現在の日時を求め、当該求められた現在の日時に応じて前記計時手段が計数する日時を修正する
ことを特徴とする電波時計。
<請求項9>
衛星から送信される符号信号を含む電波の受信信号から前記符号信号を取得する符号信号取得方法であって、
前記符号信号をスペクトラム拡散している疑似ランダム符号列及びその送信周期内の位相を同定する捕捉ステップ、
前記送信周期に応じた時間ごとの前記符号信号の符号種別を同定する符号種別判別ステップ、
同定された符号種別の配列と、当該符号種別の配列として出現が想定され得る複数の照合配列とを照合して、当該照合の結果が所定の条件を満たす前記照合配列に応じて前記符号信号における各符号の先頭タイミングを同定する符号同期検出ステップ、
同定した当該先頭タイミングに同期して各符号を同定する符号同定ステップ、
を含むことを特徴とする符号信号取得方法。
<請求項10>
衛星から送信される符号信号を含む電波の受信信号から当該符号信号を取得するコンピュータを、
前記符号信号をスペクトラム拡散している疑似ランダム符号列及びその送信周期内の位相を同定する捕捉手段、
前記送信周期に応じた時間ごとの前記符号信号の符号種別を同定する符号種別判別手段、
同定された符号種別の配列と、当該符号種別の配列として出現が想定され得る複数の照合配列とを照合して、当該照合の結果が所定の条件を満たす前記照合配列に応じて前記符号信号における各符号の先頭タイミングを同定する符号同期検出手段、
同定した当該先頭タイミングに同期して各符号を同定する符号同定手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。