特許第6206500号(P6206500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206500
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   H02M3/155 W
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-540488(P2015-540488)
(86)(22)【出願日】2014年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2014075984
(87)【国際公開番号】WO2015050093
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2016年1月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-207254(P2013-207254)
(32)【優先日】2013年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-237284(P2013-237284)
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 良之
【審査官】 戸次 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−527961(JP,A)
【文献】 特開2013−138557(JP,A)
【文献】 特開2013−192296(JP,A)
【文献】 特開2004−328945(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0013304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続された電源システムにおいて、
前記電源装置は、電力変換を行うコンバータ部と、前記コンバータ部の出力電圧と基準電圧との比較結果により前記電源装置の出力電圧を一定に制御する定電圧制御部と、前記電源装置の出力電流を検出する出力電流検出部と、前記出力電流が大きくなるにともなって前記電源装置の出力電圧を小さくするドループ特性生成部と、通信相手の電源装置との間で通信を行う通信部と、出力電圧補正指令値に応じて前記電源装置の出力電圧を変更する出力電圧変更部を備え、
前記複数の電源装置のうち少なくとも1つの電源装置は、前記出力電圧補正指令値を算出し、前記通信部により前記通信相手の電源装置に前記出力電圧補正指令値を与える出力電圧補正指令部を備え
前記出力電圧補正指令部は、少なくとも前記出力電圧補正指令値を、ディザリングしたDA変換またはPWMで発生させる、
電源システム。
【請求項2】
複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続された電源システムにおいて、
出力電圧補正指令値を算出し、前記複数の電源装置に前記出力電圧補正指令値を与える出力電圧補正指令部を備え、
前記電源装置は、電力変換を行うコンバータ部と、前記コンバータ部の出力電圧と基準電圧との比較結果により前記電源装置の出力電圧を一定に制御する定電圧制御部と、前記電源装置の出力電流を検出する出力電流検出部と、前記出力電流が大きくなるにともなって前記電源装置の出力電圧を小さくするドループ特性生成部と、通信相手の電源装置との間で通信を行う通信部と、前記出力電圧補正指令値に応じて前記電源装置の出力電圧を変更する出力電圧変更部を備え
前記出力電圧補正指令部は、少なくとも前記出力電圧補正指令値を、ディザリングしたDA変換またはPWMで発生させる、
電源システム。
【請求項3】
複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続された電源システムにおいて、
前記電源装置は、電力変換を行うコンバータ部と、前記コンバータ部の出力電圧と目標値との比較結果により前記電源装置の出力電圧を一定に制御する定電圧制御部と、前記電源装置の出力電流を検出する出力電流検出部と、前記出力電流が大きくなるにともなって前記電源装置の出力電圧を小さくするドループ特性生成部と、通信相手の電源装置との間で通信を行う通信部と、出力電圧変更指令値に応じて前記目標値を変更する目標値変更部とを備え、
前記複数の電源装置のうち少なくとも1つの電源装置は、並列接続された他の電源装置に対して、前記通信部により前記出力電圧変更指令値を一斉に与える出力電圧変更指令部を備え、
前記並列接続された前記1つの電源装置および前記他の電源装置の前記目標値変更部は、前記出力電圧変更指令値の通信が終了した後、前記目標値を一斉に変更
前記出力電圧変更指令部は、少なくとも前記出力電圧変更指令値を、ディザリングしたDA変換またはPWMで発生させる、
電源システム。
【請求項4】
複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続された電源システムにおいて、
前記複数の電源装置に出力電圧変更指令値を一斉に与える出力電圧変更指令部を備え、
前記電源装置は、電力変換を行うコンバータ部と、前記コンバータ部の出力電圧と目標値との比較結果により前記電源装置の出力電圧を一定に制御する定電圧制御部と、前記電源装置の出力電流を検出する出力電流検出部と、前記出力電流が大きくなるにともなって前記電源装置の出力電圧を小さくするドループ特性生成部と、通信相手の電源装置との間で通信を行う通信部と、前記出力電圧変更指令値に応じて前記目標値を変更する目標値変更部とを備え、
前記複数の電源装置の前記目標値変更部は、前記出力電圧変更指令値の通信が終了した後、前記目標値を一斉に変更
前記出力電圧変更指令部は、少なくとも前記出力電圧変更指令値を、ディザリングしたDA変換またはPWMで発生させる、
電源システム。
【請求項5】
前記出力電圧補正指令部は、前記出力電流が大きくなるにともなって前記電源装置の出力電圧が大きくなるように前記出力電圧補正指令値を設定することにより、前記ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補う、請求項1に記載の電源システム。
【請求項6】
前記出力電圧変更指令部は、前記出力電流が大きくなるにともなって前記電源装置の出力電圧が大きくなるように前記出力電圧変更指令値を設定することにより、前記ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補う、請求項3に記載の電源システム。
【請求項7】
前記電源システムの出力電流を検出または取得する電源システム出力電流検知部を備え、
前記出力電圧補正指令部は、前記電源システム出力電流検知部が検知した出力電流が大きくなるにともなって前記電源システムの出力電圧が大きくなるように前記出力電圧補正指令値を設定することにより、前記ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補う、請求項2に記載の電源システム。
【請求項8】
前記電源システムの出力電流を検出または取得する電源システム出力電流検知部を備え、
前記出力電圧変更指令部は、前記電源システム出力電流検知部が検知した出力電流が大きくなるにともなって前記電源システムの出力電圧が大きくなるように前記出力電圧変更指令値を設定することにより、前記ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補う、請求項4に記載の電源システム。
【請求項9】
前記電源システムの出力電圧を検出する出力電圧検出部を備え、
前記出力電圧補正指令部は、前記電源システムの出力電圧を制御量、前記電源システムの前記出力電圧補正指令値を操作量としてフィードバック制御されるように、前記出力電圧補正指令値を求める、請求項1または2に記載の電源システム。
【請求項10】
前記電源システムの出力電圧を検出する出力電圧検出部を備え、
前記出力電圧変更指令部は、前記電源システムの出力電圧を制御量、前記電源システムの前記出力電圧変更指令値を操作量としてフィードバック制御されるように、前記出力電圧変更指令値を求める、請求項3または4に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続された電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高出力化や回路の冗長化を目的として、複数の電源装置を並列接続して構成される電源システムが利用される。複数の電源装置を用いる場合、各電源装置から負荷へ電力を均等に供給することが重要である。例えば特許文献1には、各電源装置に電流バランス端子を設け、これらを電流バランス線で相互接続することで、出力電流をバランス制御することが示されている。特許文献2には、並列運転において各電源装置から供給される電流のバランスがくずれないように,各電源装置が出力電圧を検出して基準電圧を調整するとともに、出力電圧が基準電圧とは異なる電源回路部の出力電圧を基準電圧に一致させるように電源装置に指示を与えることが示されている。また、特許文献3には、出力電流が大きくなるにつれて前記出力電圧が小さくなる特性、すなわちドループ特性を各電源装置にもたせ、各電源装置を並列運転することで共通の負荷への出力電流を分担することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−143292号公報
【特許文献2】特開2009−159692号公報
【特許文献3】特開平8−289468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているように、出力電流情報を出力及び入力する電流バランス端子を設けてそれらを接続し、各電源装置がその端子の信号に相当する電流となるように制御する手法では、特別な電流バランス端子が必要となり、端子数が増加する。また、電流バランス線がノイズを受けることによる誤動作が課題となる。
【0005】
特許文献2に示されているように、適宜のタイミングで電源装置の出力電圧を基準電圧に一致させる指示をデータ通信で与える手法では、複数の電源装置が相互に送受信することになるので、通信線を伝送する全体のデータ量は膨大なものとなってしまう。
【0006】
特許文献3に示されているように、出力電流の増大に伴い出力電圧を低下させるドループ特性を各電源装置に持たせる手法では、出力電圧が出力電流によって変化してしまう。すなわち、ロードレギュレーション特性が低下する。また出力電圧を変更する場合、出力電圧の変更タイミングにばらつきが生じると電流がバランスできなくなり、ひとつの電源装置に大きな電流が流れる現象が起きる。
【0007】
本発明の目的は、電流バランスのための特別な端子や信号線を必要とせず、少ないデータ通信量でバランスよく並列運転できるようにした電源システムを提供することにある。また、ドループ特性を利用して各電源装置の出力電流を分担する場合でも、ドループ特性による出力電圧の低下を補うことによりロードレギュレーション特性を良好に保てるようにした電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源システムは、複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続され、前記電源装置は、電力変換を行うコンバータ部と、コンバータ部の出力電圧と基準電圧との比較結果により電源装置の出力電圧を一定に制御する定電圧制御部と、出力電流を検出する出力電流検出部と、出力電流が大きくなるにともなって出力電圧を小さくするドループ特性生成部と、通信相手の電源装置との間で通信を行う通信部と、出力電圧補正指令値に応じて出力電圧を変更する出力電圧変更部を備え、複数の電源装置のうち少なくとも1つの電源装置は、出力電圧補正指令値を算出し、通信部により通信相手の電源装置に出力電圧補正指令値を与える出力電圧補正指令部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電源システムは、複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続され、出力電圧補正指令値を算出し、複数の電源装置に出力電圧補正指令値を与える出力電圧補正指令部を備え、前記電源装置は、電力変換を行うコンバータ部と、コンバータ部の出力電圧と基準電圧との比較結果により電源装置の出力電圧を一定に制御する定電圧制御部と、出力電流を検出する出力電流検出部と、出力電流が大きくなるにともなって出力電圧を小さくするドループ特性生成部と、通信相手の電源装置との間で通信を行う通信部と、出力電圧補正指令値に応じて出力電圧を変更する出力電圧変更部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電源システムは、複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続され、前記電源装置は、電力変換を行うコンバータ部と、コンバータ部の出力電圧と目標値との比較結果により電源装置の出力電圧を一定に制御する定電圧制御部と、出力電流を検出する出力電流検出部と、出力電流が大きくなるにともなって出力電圧を小さくするドループ特性生成部と、通信相手の電源装置との間で通信を行う通信部と、出力電圧変更指令値に応じて目標値を変更する目標値変更部とを備え、複数の電源装置のうち少なくとも1つの電源装置は、並列接続された他の電源装置に対して、通信部により出力電圧変更指令値を一斉に与える出力電圧変更指令部を備え、並列接続された1つの電源装置および他の電源装置の前記目標値変更部は、出力電圧変更指令値の通信が終了した後、目標値を一斉に変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電源システムは、複数の電源装置を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続され、前記複数の電源装置に出力電圧変更指令値を与える出力電圧変更指令部を備え、前記電源装置は、電力変換を行うコンバータ部と、コンバータ部の出力電圧と目標値との比較結果により電源装置の出力電圧を一定に制御する定電圧制御部と、出力電流を検出する出力電流検出部と、出力電流が大きくなるにともなって出力電圧を小さくするドループ特性生成部と、通信相手の電源装置との間で通信を行う通信部と、出力電圧変更指令値に応じて目標値を変更する目標値変更部と、を備え、出力電圧変更指令部は、複数の電源装置に対して、通信部により出力電圧変更指令値を一斉に与える出力電圧変更指令部を備え、複数の電源装置の目標値変更部は、出力電圧変更指令値の通信が終了した後、目標値を一斉に変更することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、電流バランスのための特別な端子や信号線を必要とせず、少ないデータ通信量でバランスよく並列運転できるようにした電源システムを構成できる。
【0013】
前記出力電圧補正指令部または前記出力電圧変更指令部は、出力電流が大きくなるにともなって電源装置の出力電圧が大きくなるように前記出力電圧補正指令値または前記出力電圧変更指令値を設定することにより、ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補うように構成することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、電源システムのロードレギュレーション特性を低下させることなく、また、電流バランス端子を設けることもなく、出力電流を均等にすることができる。
【0015】
上記電源システムは、電源装置の出力電流または電源システムの出力電流を検出または取得する出力電流検知部を備え、前記出力電圧補正指令部または前記出力電圧変更指令部は、前記出力電流が大きくなるにともなって前記電源装置の出力電圧が大きくなるように前記出力電圧補正指令値または前記出力電圧変更指令値を設定することにより、前記ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補うものであることが好ましい。この構成により、少ない演算量で出力電圧補正指令値または出力電圧変更指令値を設定することができる。
【0016】
前記電源システムの出力電圧を検出する出力電圧検出部を備え、前記出力電圧補正指令部または前記出力電圧変更指令部は、出力電圧を制御量、出力電圧補正指令値または出力電圧変更指令値を操作量としてフィードバック制御するものであることが好ましい。この構成により、出力電圧を高精度に制御できる。
【0017】
前記出力電圧補正指令部または出力電圧変更指令部は、出力電圧補正指令値または出力電圧変更指令値をディザリングしたDA変換またはPWMで発生させることが好ましい。この構成により、出力電圧の変更を高分解能で行うことができる。またディザリングしたPWM変調波の場合、単なるPWM変調波を生成し、それを平滑することにより直流電圧を得るようにしたものに比べ、PWM変調の周期を短くでき、平滑フィルタによる応答性の低下が抑えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電流バランスのための特別な端子や信号線を必要とせず、少ないデータ通信量でバランスよく並列運転できるようにした電源システムを構成できる。また、ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補うように出力電圧を補正することができ、そのことによってロードレギュレーション特性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は第1の実施形態に係る電源システムの回路図である。
図2図2は電源ユニットからの出力電流に対する出力電圧の関係を示す図である。
図3図3は出力電圧変更指令値ΔVrefとドループ特性との関係を示す図である。
図4図4はマスターとして動作するコントローラ10Aおよびスレーブとして動作するコントローラ10Bの、各コントローラ内の回路または機能をブロック化して表した図である。
図5図5は第2の実施形態に係る電源システムの回路図である。
図6図6はマスターとして動作するコントローラ10Aおよびスレーブとして動作するコントローラ10Bの、各コントローラ内の回路または機能をブロック化して表した図である。
図7図7は第3の実施形態に係る電源システムの回路図である。
図8図8は第4の実施形態に係る電源システムのブロック図である。
図9図9は電源システムが備える1つの電源ユニット100の回路図である。
図10図10(A)(B)は第5の実施形態に係る目標値変更部の構成を示す図である。
図11図11は第6の実施形態に係る目標値変更部に対して与える目標値の電圧信号を発生する構成を示す図である。
図12図12はコントローラ10によるディザリングPWMの実現例を示す波形図である。
図13図13は出力電圧VoとPWMデューティとの関係を示す図である。
図14図14は第7の実施形態に係る電源システムの各部の波形図である。
図15図15は、図14に示した破線で囲んだ部分の拡大図であり、クロック信号とデータ信号の波形図およびデータのパケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0021】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る電源システムの回路図である。この電源システム201は、複数の電源装置ユニット(以下、単に「ユニット」)100A,100B・・・を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続されて構成されている。図1では3つめ以降のユニットの図示は省略している。ユニット100A,100B・・・のそれぞれは基本的に同一構成であるが、この例では、ユニット100Aがマスター、他のユニット100B等はスレーブとして動作する。
【0022】
ユニット100Aを例に挙げると、ユニット100Aは、コンバータ部1、PWM制御部2、コントローラ10A、出力電圧検出回路3、出力電流検出回路5、ドループ生成回路6および加算回路7を備えている。コンバータ部1はスイッチ素子Q1、ダイオードD1、インダクタL1およびキャパシタC1を備えて、非絶縁の降圧コンバータ回路を構成している。PWM制御部2は、誤差増幅器OPAMP1,PWMコンパレータCMP1、三角波生成回路21を備えている。
【0023】
出力電圧検出回路3は抵抗R1,R0による分圧回路である。誤差増幅器OPAMP1は目標値Vrと出力電圧検出回路3の出力電圧とを比較し、誤差電圧をPWMコンパレータCMP1の非反転端子へ与える。誤差増幅器OPAMP1の反転入力端と出力端との間には、キャパシタC2および抵抗R2が接続されている。この回路は制御系の発振防止のための位相補償回路として作用する。
【0024】
三角波生成回路21はPWM変調用の三角波信号を発生し、これをPWMコンパレータCMP1の反転端子へ与える。PWMコンパレータCMP1は、非反転端子への入力電圧と三角波信号とを比較することでPWM変調信号をスイッチ素子Q1へ与える。PWM制御部2は本発明に係る「定電圧制御部」に相当する。
【0025】
ドループ生成回路6はユニット100Aの出力電流Ioを検出し、出力電流Ioが大きくなるにともなって出力電圧を小さくする電圧電流特性、すなわちドループ特性をもたせるためのドループ用補正値ΔVoを生成する回路である。加算回路7は、コントローラ10Aから出力される出力電圧補正指令値Vmodを基準目標値Vrefに加算し、上記ドループ用補正値ΔVoを減算することで目標値Vrを定める。この目標値Vrが誤差増幅器OPAMP1の非反転入力端に与えられる。
【0026】
コントローラ10AはマイクロコントロールユニットMCUで構成されている。コントローラ10Aは出力電圧補正指令値Vmodを算出する。コントローラ10Aおよび加算回路7は本発明に係る「出力電圧変更部」に相当する。
【0027】
スイッチ素子Q1は上記PWM変調された信号で制御される。スイッチ素子Q1のオン期間にインダクタL1に励磁電流が流れ、オフ期間にダイオードD1を通して還流電流が流れる。
【0028】
コントローラ10Aはシリアルバス4を介して、通信相手のユニットのコントローラ(10B等)に対して、出力電圧補正指令値Vmodを伝送する。コントローラ10Aは本発明に係る「出力電圧補正指令部」に相当する。
【0029】
図2はユニットからの出力電流に対する出力電圧の関係を示す図である。実線はコントローラ10Aが定めた出力電圧補正指令値Vmodが或る値であるとき、ドループ生成回路6の作用による特性である。すなわち、出力電流Ioが増大するほど、出力電圧Voは一定勾配で減少する。コントローラ10Aが定めた出力電圧補正指令値Vmodが増減すると、それに伴い、図2の破線で示すとおり、上記ドループ特性を示すラインは傾き一定のまま上下にΔVc移動する。すなわち、ドループ特性の傾き自体は変化しないが、所定の出力電流における出力電圧レベルは変化する。上記ΔVcは出力電圧補正指令値Vmodの比例値である。
【0030】
図3は上記出力電圧補正指令値Vmodとドループ特性との関係を示す図である。上記出力電圧補正指令値Vmodは、この電圧上昇とドループ特性による電圧降下が相殺するように設定する。すなわち、出力電流Ioが増大するほど上記出力電圧補正指令値Vmodを大きくし、図3において電圧一定の破線で示すように、出力電流によらず出力電圧が一定となるようにする。この出力電流に対する上記出力電圧補正指令値Vmodは、Vmod=a・Ioの関係をテーブルまたは関数式でコントローラに設定しておく。
【0031】
図4はマスターとして動作するコントローラ10Aおよびスレーブとして動作するコントローラ10Bの、各コントローラ内の回路または機能をブロック化して表した図である。コントローラ10Aにおいて、ADコンバータ13は、出力電流Ioの大きさを表す電圧信号を入力してディジタルデータに変換する。テーブル14は、ADコンバータ13により求められた値を基に、出力電圧補正指令値Vmodを生成する。また、シリアル通信部12は、この出力電圧補正指令値Vmodをデータとして他のコントローラ(10B等)へシリアルバス4を介して伝送する。DAコンバータ11は出力電圧補正指令値Vmodを電圧信号に変換してユニット100A内の加算回路7へ出力する。
【0032】
コントローラ10Bにおいて、シリアル通信部12はシリアルバス4を介して上記出力電圧補正指令値Vmodを受信し、DAコンバータ11は出力電圧補正指令値Vmodを電圧信号に変換してユニット100B内の加算回路7へ出力する。
【0033】
コントローラ10Aは、出力電流Ioの変動に対応するため、出力電流Ioの検出、出力電圧補正指令値Vmodの算出およびシリアル通信による指令を定期的または断続的に繰り返し行う。
【0034】
以上に示したように、出力電圧の変更はユニット内の各コントローラが行うのではなく、1つのコントローラが他のコントローラに指令する。すなわち複数のコントローラのうち1つのコントローラが他のコントローラへ出力電圧の変更の指令を行うマスターとなる。マスターはシリアル通信でスレーブへ出力電圧補正指令値Vmodを送信し、これを受信したスレーブは指令値Vmodに基づいて出力電圧を変更する。同時にマスターもスレーブと同様に出力電圧を変更する。上記出力電圧補正指令値Vmodの指令の際はブロードキャスト送信(一斉送信)を用いれば、複数のコントローラへ一斉に指令することができる。また、シリアル通信にエラー検出やエラー訂正を適用することでノイズによるエラーを低減できる。
【0035】
このように、すべての電源ユニットで出力電圧の変更が同時に行われることにより、すべてのユニットが、同じ傾き及び同じ電圧レベルのドループ特性となる。これにより、各ユニットの出力電流はバランスする。
【0036】
また、出力電流Ioの変動に応じてドループ特性により出力電圧Voは変動しようとするが、上記出力電圧補正指令値Vmod分の補正により、出力電圧Voの変動は相殺される。
【0037】
本実施形態によれば、電源システムのロードレギュレーション特性を低下させることなく、また、電流バランス端子を設けることもなく、出力電流を均等にすることができる。また、マスターからスレーブへの片方向通信でよいので、通信回線および通信制御の負荷が小さい。
【0038】
なお、上記「出力電流」は、マスターのユニット100Aの出力電流または電源システム201全体の出力電流のいずれであってもよい。電源システム201全体の出力電流は、各電源ユニットがコントローラで検出した出力電流を、シリアル通信を介して取得し、それらを合計することで得られる。
【0039】
本実施形態では、出力電圧を変更するために、PWM変調を行う目標値Vrを変更するように構成したが、出力電圧検出回路3側を制御してもよい。例えば、誤差増幅器OPAMP1の非反転入力端に抵抗を介してDAコンバータを接続し、それに制御信号を与えてもよい。
【0040】
《第2の実施形態》
図5は第2の実施形態に係る電源システムの回路図である。この電源システム202は、第1の実施形態と異なり、マスターのコントローラ10Aが出力電流ではなく出力電圧を検出する。電源ユニット100Aは、出力電圧検出回路8を備えている。コントローラ10Aは出力電圧検出回路8の検出信号を入力する。コントローラ10Aの機能については次に示す。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0041】
図6はマスターとして動作するコントローラ10Aおよびスレーブとして動作するコントローラ10Bの、各コントローラ内の回路または機能をブロック化して表した図である。コントローラ10Aにおいて、ADコンバータ13は、出力電圧Voの大きさを表す電圧信号を入力してディジタルデータに変換する。加算回路15は、目標出力値Vo_refと出力電圧Voとの差(出力電圧誤差)evを求める。位相補償回路16は、この出力電圧誤差evを基に、出力電圧補正指令値Vmodを生成する。また、シリアル通信部12は、この出力電圧補正指令値Vmodをデータとして他のコントローラ(10B等)へ伝送する。DAコンバータ11は出力電圧補正指令値Vmodを電圧信号に変換してユニット100A内の加算回路7へ出力する。
【0042】
コントローラ10Bにおいて、シリアル通信部12はシリアルバスを介して上記出力電圧補正指令値Vmodを受信し、DAコンバータ11は出力電圧補正指令値Vmodを電圧信号に変換してユニット100B内の加算回路7へ出力する。
【0043】
コントローラ10Aは、出力電圧Voの変動に対応するため、出力電圧Voの検出、出力電圧補正指令値Vmodの算出およびシリアル通信による指令は定期的または断続的に繰り返し行う。
【0044】
上記位相補償回路16は、出力電圧Voを制御量、前記出力電圧補正指令値Vmodを操作量とするフィードバック制御が行われるように伝達関数が定められている。この位相補償回路16の伝達関数は、K(s) = Kp + KI / s + KDs で表される。ここでKp は比例要素の係数、KIは積分要素の係数、KD は微分要素の係数である。このようにしてPIDのフィードバック制御(またはKDをゼロとしたPIのフィードバック制御)を行うことが好ましい。
【0045】
本実施形態の場合も、出力電圧の変更はユニット内の各コントローラが行うのではなく、1つのコントローラが他のコントローラに指令する。すなわち複数のコントローラのうち1つのコントローラが他のコントローラへ出力電圧の変更の指令を行うマスターとなる。マスターはシリアル通信でスレーブへ出力電圧補正指令値Vmodを送信し、これを受信したスレーブは指令値Vmodに基づいて出力電圧を変更する。同時にマスターもスレーブと同様に出力電圧を変更する。上記出力電圧補正指令値Vmodの指令の際はブロードキャスト送信を用いれば、複数のコントローラへ一斉に指令をすることができる。また、シリアル通信にエラー検出やエラー訂正を適用することでノイズによるエラーを低減できる。
【0046】
このように、すべての電源ユニットで出力電圧増加が同時に行われることにより、すべてのユニットが、同じ傾き及び同じ電圧レベルのドループ特性となる。これにより、各ユニットの出力電流はバランスする。
【0047】
また、出力電流Ioの変動に応じてドループ特性により出力電圧Voは変動しようとするが、上記フィードバック制御により、出力電圧Voは安定化される。
【0048】
本実施形態によれば、出力電圧がフィードバック制御されるため,出力電圧の精度が高めることができる。
【0049】
《第3の実施形態》
図7は第3の実施形態に係る電源システムの回路図である。この電源システム203は、第1・第2の実施形態と異なり、電源ユニット100A,100B以外に外部コントローラ20を備えている。また、電源システム203の出力電流Ioを検出する出力電流検出回路9を備えている。この外部コントローラ20の構成は、図4に示したコントローラ10AからDAコンバータ11を除いたものである。外部コントローラ20は電源システム203の出力電流の検出値を入力し、第1の実施形態で示したコントローラ10Aと同様の動作を行う。このように、コントローラをユニットの外部に設けてもよい。
【0050】
また、このコントローラを外部に設ける形態を第2の実施形態で示した電源システムに適用してもよい。すなわち、その場合の外部コントローラは、図6に示したコントローラ10AからDAコンバータ11を除いたものである。この外部コントローラは出力電圧の検出値を入力し、第2の実施形態で示したコントローラ10Aと同様の動作を行う。
【0051】
《第4の実施形態》
図8は第4の実施形態に係る電源システムのブロック図である。この電源システム204は、複数の電源ユニット100を備え、それらの入力部および出力部がそれぞれ並列接続され、構成されている。各電源ユニット100はコンバータ部とコントローラ10を備えている。各電源ユニット100の基本構成は同一であるが、1つの電源ユニットのコントローラ10がマスターとして動作し、他の電源ユニットのコントローラ10がスレーブとして動作する。
【0052】
本実施形態では、マスター動作するコントローラ10へシリアルバス41を介して負荷から出力電圧変更指令値ΔVrefが送信され、マスター動作するコントローラ10はスレーブ動作する複数のコントローラ10へシリアルバス42を介して出力電圧変更指令値ΔVrefが送信される。
【0053】
図9は上記電源システム204が備える1つの電源ユニット100の回路図である。本実施形態の電源システムは、ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補う目的とは別に、指令により出力電圧を変更できるようにした電源システムである。本実施形態において、出力電圧変更指令値ΔVrefは、図8において負荷または他の電源ユニットのコントローラ10から指令された値であるが、ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補う目的の出力電圧変更指令値ではない。出力電圧を所定範囲内で任意に設定するための値である。
【0054】
コントローラ10は、出力電圧変更指令値ΔVrefに、ドループ特性生成部による出力電圧の低下を補う補正値Vmodおよびキャリブレーション用の補正値Vcalを加算した値である目標値変更量ΔVaを目標値変更部へ与える。これにより出力電圧が変更される。なお、キャリブレーション用の補正値Vcalは、出力電圧変更の精度をより向上させるため、出荷時に工場において書き込まれる値である。
【0055】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、目標値変更部に対して目標値を与える他の構成例を示す。
【0056】
図10(A)(B)は第5の実施形態に係る目標値変更部の構成を示す図である。図10(A)の例では、コントローラ10はPWM制御部2へ、基準目標値Vrefと出力電圧変更指令値ΔVrefを合計した目標値を出力する。以上に示した各実施形態では、基準目標値Vrefを変更して目標値を定める加算回路7をアナログ回路的に表したが、本実施形態では、この変更をコントローラ10内でディジタル処理によって行う。
【0057】
なお、図9に示したように、ドループ用補正値Vmodおよびキャリブレーション用補正値Vcalも考慮する場合には、コントローラ10は、
Vref+ΔVref+Vmod+Vcal
の演算を行い、その結果をDA変換してアナログ電圧としての目標値を出力すればよい。
【0058】
図10(B)の例では、誤差増幅器OPAMP1の非反転入力端に基準電圧を印加し、反転入力端に出力電圧検出回路3の検出信号を入力するとともに、この反転入力端への入力電圧に、抵抗を介して目標値の反転信号を重畳する。このように出力電圧の検出値側を変化させてもよい。
【0059】
なお、図10(A)(B)いずれの構成においても、ドループ特性を持たせるためのドループ生成回路6の出力電圧を誤差増幅器OPAMP1の反転入力端側に入力する構成としてもよい。その場合には、出力電流変化に対する出力電圧変化の方向を逆の関係にする。
【0060】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、目標値をPWMにより出力する構成例を示す。
【0061】
図11は目標値変更部に対して与える目標値の電圧信号を発生する構成を示す図である。図11に示すコントローラ10は、ドループ特性を持たせるためのドループ用補正値以外の目標値に相当するPWM信号を出力する。その出力端子には抵抗RおよびコンデンサCによる平滑回路およびバッファ回路Bが接続されている。
【0062】
目標値の変更を高分解能で行うためには、図10(A)(B)に示したDA変換や図11に示したPWMを高分解能にする必要がある。しかし高分解能なDAコンバータやPWMを用いると、コスト高になる。さらに、PWMおよび平滑回路によって目標値のアナログ信号を発生させると、PWMの周期を長くしないと所定の電圧分解能が確保できない。そのため、応答性が悪化する。例えば、時間軸上の最小単位が10nsの場合、PWM分解能を10段階にするには、PWM周期としては100ns必要であり、PWM分解能を100段階にするには、PWM周期としては1000ns必要である。PWM信号は平滑フィルタで平滑されるため、周期が長くなると、それに応じて平滑フィルタの時定数が大きくなり、出力電圧の変更を高速に行えなくなる。
【0063】
上記問題を解消するため、本実施形態では、上記目標値に相当する信号をディザリングしたDA変換またはPWMにより発生させ、目標値の変更を高分解能で行う。
【0064】
図12はコントローラ10によるディザリングPWMの例を示す波形図である。ここで三角波状に変化する「タイマカウンタ」はコントローラ10内のタイマカウンタの値、「周期コンペア」はタイマカウンタの値と比較する値であり、タイマカウンタの値は周期コンペアの値に達したときクリアされる。これにより、タイマカウンタの値は三角波状に繰り返し変化する。「デューティコンペア」はタイマカウンタに対する比較対象の値である。この例では、M→M→M+1→M+1→M+1→N→N+1→N+1の順に変位している。「DMA転送用メモリ[1]〜[5]」はDMA(Direct Memory Access)転送用に確保されたメモリの値を示している。「タイマ割り込み」は一定周期で発生される割り込み信号、「DMA割り込み」は一定周期で発生されるDMA転送のための割り込み信号である。この例ではタイマ割り込み5回に1回の割合で発生される。「PWM出力」はタイマカウンタの値とデューティコンペアの値との比較結果の2値信号である。
【0065】
本実施形態のディザリングPWMの動作は次のとおりである。
【0066】
タイマカウンタは常に一定タイミングでインクリメントされ、周期コンペアと一致するとゼロにクリアされる。
【0067】
タイマカウンタがデューティコンペア未満であるとPWM出力をH(ハイ)、デューティコンペア以上であるとPWM出力はL(ロー)となる。すなわち、デューティコンペアを変化させることでPWMのデューティを変更する。
【0068】
DMAコントローラは、タイマカウンタがゼロにクリアされると発生するタイマ割り込みをトリガとして、DMA転送用メモリ[1]〜[5]に格納されているデータをデューティコンペアへ順に転送する。
【0069】
DMAコントローラはDMA転送メモリの個数(またはその整数倍)毎にDMA割り込みを行い、DMA転送用メモリの内容を更新する。
【0070】
実効デューティの整数部をi、小数部をdで表すと、DMA転送用メモリに格納される値はiまたはi+1であり、iとi+1の数の比はd/10に最も近い値である。例えば、実効デューティが15.6の場合、i=15、d=6であり、DMA転送用メモリには、iが2個、i+1が3個格納される。
【0071】
図13は出力電圧VoとPWMデューティとの関係を示す図である。この出力電圧VoとPWMデューティとの関係はテーブルに予め設定されている。例えば、現在の出力電圧Voが12.7Vであり、ドループ用補正値ΔVoが0.3Vになったとき、このドループによる出力電圧の低下を補って、出力電圧を13Vにするためには、PWMデューティを15.6にする。PWMデューティが15.6であるときのディザリングPWMの動作は既に示したとおりである。
【0072】
以上に示したディザリングPWMにより目標値を出力することにより、次のような効果を奏する。
【0073】
(1)ディザリングをハードウェアで構成しなくてもよいため、特別なハードウェアは不要である。またディザリング周期をソフトウェアで変更できるなど柔軟性が高い。
【0074】
(2)PWM毎に処理を行う必要はないため、CPUの処理負荷は軽い。
【0075】
(3)コンバータのスイッチング制御信号を生成するPWMに直接ディザリングを適用すると、コンバータの出力(電圧や電流)にディザリングの影響が現れることがあるのに対し、上記のように、PWM制御部2へ与える信号にディザリングを適用する場合には、コンバータの出力の前にRCフィルタや制御回路が介在するため、ディザリングの影響は出力に現れない。
【0076】
なお、コントローラ10は基準目標値Vrefと出力電圧変更指令値ΔVrefを加算した目標値を発生するものに限らない。例えば、図1図5図7に示した出力電圧補正値VmodをディザリングPWMにより発生してもよいし、図9に示した目標値変更量ΔVaをディザリングPWMにより発生してもよい。
【0077】
以上に示した例はPWMでのディザリングによる高分解能化の例を示したが、DAコンバータで、同様にディザリングにより高分解能化してもよい。すなわち、例えば図12に示したデータM→M→M+1→M+1→M+1→N→N+1→N+1の順にDA変換した信号を出力し、それを回路で平滑する。
【0078】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、各電源ユニットのコントローラの同期動作について示す。
【0079】
図14は第7の実施形態に係る電源システムの各部の波形図である。電源システムの回路構成は図8に示したとおりである。例えば図8に示した電源システム204において、電源ユニット100のマスター動作するコントローラ10は負荷と通信〈通信1〉して、負荷から出力電圧変更指令値ΔVrefを受信する。この〈通信1〉はマスター動作するコントローラ10から一定周期または所定タイミングで行われる。この〈通信1〉はコントローラ10から負荷への要求、または負荷からコントローラ10への要求で開始される。
【0080】
上記〈通信1〉とは別に、〈通信2〉により、出力電圧変更指令値ΔVrefの指令、出力のオン/オフの指令、スレーブ動作するコントローラ10の情報の取得等が一定周期で行われる。
【0081】
マスター動作するコントローラ10はスレーブ動作するコントローラ10へ〈通信2〉により、出力電圧変更指令値を一斉に与えると、各電源ユニット100の目標値変更部は、出力電圧変更指令値の通信(受信)が終了した後、目標値を一斉に変更する。このとき、マスター動作するコントローラ10を含む電源ユニット100の目標値変更部も、出力電圧変更指令値の通信(送信)が終了した後、目標値を変更する。
【0082】
図14において、時刻t1での〈通信2〉で出力電圧変更指令値が変更され、それに伴い、時刻t2で出力電圧Voが変化している。このタイムラグTlは、各電源ユニット100のコントローラ10が出力電圧変更指令値の通信が終了した後、目標値変更部が目標値を一斉に変更するまでに要する時間である。この時間は全ての電源ユニット100について同じであるので、各電源ユニット100の出力電圧は出力電圧変更指令値に応じて同時に変更される。
【0083】
図15は、図14に示した破線で囲んだ部分の拡大図であり、上記クロック信号とデータ信号の波形図およびデータのパケットを示す図である。この例では、一連のデータ(パケット)は5つのデータバイトで成り立っている。先頭のデータ00はジェネラルコールアドレスであり、全てのスレーブに対するコマンドであることを示す。データ21は出力電圧変更の指令であることを示すコマンドである。これに続く2バイトのコードA101(01A1)は出力電圧変更指令値の値である。最後のデータ22は誤り検出バイトである。
【0084】
このようにして、出力電圧変更指令に応じて全ての電源ユニット100が同期して出力電圧Voを変化させるので、電流バランスを保ったまま並列運転ができる。
【0085】
《他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、コンバータ部が非絶縁の降圧コンバータ回路である例を示したが、コンバータ部は昇圧コンバータや昇降圧コンバータであってもよい。また絶縁トランスを用いた絶縁型であってもよい。
【0086】
また、以上に示した各実施形態では、定電圧制御部を誤差増幅器および受動素子の組み合わせで構成したアナログ制御の例を示したが、これをMCUで処理するディジタル制御としてもよい。
【0087】
また、図1,5,7等では、電源装置の通信部が複数線のバスラインを介して通信する例を示したが、通信に用いる線数は単線であってもよい。また、シリアルバスを用いた通信に限らない。
【符号の説明】
【0088】
C1…キャパシタ
CMP1…PWMコンパレータ
D1…ダイオード
L1…インダクタ
OPAMP1…誤差増幅器
Q1…スイッチ素子
1…コンバータ部
2…PWM制御部
3…出力電圧検出回路
4…シリアルバス
5…出力電流検出回路
6…ドループ生成回路
7…加算回路
8…出力電圧検出回路
9…出力電流検出回路
10A,10B…コントローラ
11…DAコンバータ
12…シリアル通信部
13…ADコンバータ
14…テーブル
15…加算回路
16…位相補償回路
20…外部コントローラ
21…三角波生成回路
41,42…シリアルバス
100A,100B…電源ユニット
201〜204…電源システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15